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グランドスラム・パリ第1日男子3階級プレビュー(60kg級、66kg級、73kg級)

(2020年2月8日)

※ eJudoメルマガ版2月8日掲載記事より転載・編集しています。
グランドスラム・パリ第1日男子3階級プレビュー
(60kg級、66kg級、73kg級)
文責:古田英毅/eJudo編集部

■ 60kg級 第1シードは永山竜樹、「強者への強さ」示すに十分な好組み合わせ
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日本代表・永山竜樹が優勝候補の筆頭

(エントリー44名)

「有力選手」と括られる選手の絶対数が多い60kg級らしく、今回もかなりの数の強豪がトーナメントに名を連ねた。第1シードは日本代表の永山竜樹(了徳寺大職)。ライバルとしては当初東京世界選手権2位のシャラフディン・ルトフィラエフ(ウズベキスタン)が最有力であったが、意外にもドローの段階で出場を取り止めた。国内のライバルであるディヨルベク・ウロズボエフ(ウズベキスタン)が今回突如66kg級に出場していることから考えると、代表争いには既に一応の決着がついており、ここで無理をして手の内を見せる必要なしと判断したのではないかと推理される。

ウズベキスタンに限らずこの階級はレベルの高い国がハッキリしており、国内にメダルクラスの強豪を2人以上抱えていることが多いのだが、今大会に同時派遣策を採ったのはカザフスタンと韓国の2カ国のみ。日本も含めたそれ以外の国ではある程度評価に差がついており、2週間後のグランドスラム・デュッセルドルフとの分散派遣に舵を切ったということだろう。今回の顔ぶれを見る限り、日本と同様デュッセルドルフ大会に1番手を送る国が多いのではないかと予想される。

優勝候補はもちろん永山。各国の代表争いが佳境を迎えるなかで誰がどこまで調子を上げてきているかという不確定要素はあるものの、ベースとなる地力で明らかに頭ひとつ抜け出している。組み合わせは初戦から東京世界選手権5位の好選手クバニチュベク・アイベク=ウール(キルギスタン)、以降もワリード・キア(フランス)、キム・ウォンジン(韓国)、グスマン・キルギズバエフ(カザフスタン)と強豪と連戦せねばならない厳しい配置。しかし、これまでなぜか一線級との対戦がなかなか実現しなかった永山からすれば、むしろ願ってもないアピールのチャンスと捉えられる。許される成績は優勝のみ。少しでも良い内容で勝利して、2週間後のデュッセルドルフ大会に出場するであろう髙藤直寿(パーク24)にプレッシャーを与えたい。

優勝争い以外のトピックとしては、先月のグランプリ・テルアビブで決勝進出を果たしてついにブレイクを果たしたトルコの若手有望株、ミフラジ・アックスの戦いぶりに注目したい。組み合わせ的には十分に上位進出が可能な位置に置かれており、準決勝まで勝ち上がった場合には永山と対戦することになる。代名詞である「サンボ式谷落」(73kg級の項でも触れる、腕の制し方に特徴のある技法)はすでに国際シーンでは標準的な技術になりつつあるが、その嚆矢となったのは間違いなくこのアックス。今大会でもこの技が炸裂するのか、その変速ど真ん中な柔道スタイルを是非チェックしていただきたい。

【プールA】
第1シード:永山竜樹(了徳寺大職)
第8シード:キム・ウォンジン(韓国)
有力選手:クバニチュベク・アイベク=ウール(キルギスタン)、ワリード・キア(フランス)、ヨーレ・フェルストラーテン(ベルギー)、フェリペ・ペリム(ブラジル)、アルベルト・オグゾフ(ロシア)

【プールB】
第4シード:グスマン・キルギズバエフ(カザフスタン)
第5シード:アシュリー・マッケンジー(イングランド)
有力選手:レニン・プレシアド(エクアドル)、ラグワジャムツ・ウヌボルド(モンゴル)、ミフラジ・アックス(トルコ)、ルカ・ムヘイゼ(フランス)

【プールC】
第2シード:イェルドス・スメトフ(カザフスタン)
第7シード:ダシュダワー・アマルツヴシン(モンゴル)
有力選手:ヤニスラフ・ゲルチェフ(ブルガリア)、モリッツ・プラフキー(ドイツ)、アドニス・ディアス(アメリカ)、アルテム・レシュク(ウクライナ)

【プールD】
第3シード:フランシスコ・ガリーゴス(スペイン)
第6シード:トルニケ・チャカドア(オランダ)
有力選手:ケムラン・ヌリラエフ(ウズベキスタン)、イ・ハリン(韓国)、ヤゴ・アブラゼ(ロシア)、アラン・クワバラ(ブラジル)、ヴァンサン・リマール(フランス)、カラマット・フセイノフ(アゼルバイジャン)

■ 66kg級 ヴィエル、アンバウルら密集のプールAが「死のブロック」
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テルアビブ大会で復活Vを遂げたばかりのアン・バウル

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同じブロックにデニス・ヴィエルが入った。

(エントリー69名)

ワールドマスターズで一皮むけた力強い柔道を披露、もっか危険な選手ナンバーワンと評価すべきマニュエル・ロンバルド(イタリア)が直前でエントリー取り消し。この人の性格だと「日本人の一番手とやりたい」とわざわざデュッセルドルフに場を移したのではないかとすら考えてしまうが、しかし、このロンバルドを欠いてなお人材だらけの豪華階級。

エントリー69名のビッグトーナメントであるが、しかしその中にあってプールAの、それも「その上側」という極めて狭い空間に役者が集中した。第1シードの業師、東京世界選手権3位のデニス・ヴィエル(モルドバ)に、力から言えばこの選手と決勝を争うべき格の2015年世界王者アン・バウル(韓国)。この今大会2強に加えてニジャット・シハリザダ(アゼルバイジャン)、さらに突如60kg級から階級を上げた狂気の自爆ファイター、2017年ブダペスト世界選手権3位のディヨルベク・ウロズボエフ(ウズベキスタン)までが配された。繰り返すが、これはプールの「上側」(ベスト16)までである。ここを勝ってようやく順位決定ラウンドに進むことができ、その準々決勝ではタル・フリッカー(イスラエル)と戦わねばならない。

柔かいヴィエルと「剛」を以て鳴るシハリザダの3回戦も興味深いが、実現なればアンとウロズボエフの3回戦がやはり面白い。組み手と担ぎの技巧派アン、そもそもの間合いから変調でどこから飛び道具が出てくるか読めないウロズボエフ。ちょっとした夢のカード。必見である。

この偏りを受けて、以降はプールBの「体力お化け」ヨンドンペレンレイ・バスフー(モンゴル)、プールCのガンボルド・ヘルレン(モンゴル)とキム・リマン(韓国)というように勝ちあがり候補の顔が見えやすい印象。日本の相田勇司(國學院大2年)も比較的戦い易いプールD配置、シード選手のバルチ・シュマイロフ(イスラエル)とゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)を倒してベスト4入りを狙う。グランドスラム大阪の出来とこの組み合わせを考えれば、決勝進出までが十分射程内だ。

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日本代表は相田勇司が務める。

(エントリー69名)

【プールA】
第1シード:デニス・ヴィエル(モルドバ)
第8シード:タル・フリッカー(イスラエル)
有力選手:ニジャット・シハリザダ(アゼルバイジャン)、マッテオ・メドヴェス(イタリア)、アン・バウル(韓国)、オルランド・ポランコ(キューバ)、CHOPANOV, Murad(ロシア)、ディヨルベク・ウロズボエフ(ウズベキスタン)、セルジュ・オレイニック(ポルトガル)、モハメド・アブデルマウグド(エジプト)

【プールB】
第4シード:イェルラン・セリクジャノフ(カザフスタン)
第5シード:ヨンドンペレンレイ・バスフー(モンゴル)
有力選手:ボグダン・イアドフ(ウクライナ)、ネイサン・カッツ(オーストラリア)、マニュエル・シャイベル(ドイツ)、キリアン・ルブルーシュ(フランス)

【プールC】
第2シード:ガンボルド・ヘルレン(モンゴル)
第7シード:キム・リマン(韓国)
有力選手:イェルドス・ジューマカノフ(カザフスタン)、サルドル・ヌリラエフ(ウズベキスタン)、アルベルト・ガイテロ=マルティン(スペイン)、パヴェル・ペトリコフ(チェコ)、トルニケ・ナグリアシヴィリ(ジョージア)

【プールD】
第3シード:バルチ・シュマイロフ(イスラエル)
第6シード:ゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)
有力選手:セバスティアン・ザイドル(ドイツ)、アラム・グリゴリアン(ロシア)、ツァイ・ミンイェン(台湾)
日本代表選手:相田勇司(國學院大2年)

■ 73kg級 重心は日本勢、橋本壮市と海老沼匡が準決勝で対決濃厚
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第1シードは橋本壮市

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海老沼匡が準決勝で対決濃厚

(エントリー76名)

こちらもエントリー76名という超巨大トーナメント。ただし強豪の配置が比較的きれいに分かれており、勝ち上がり予想、あるいはみどころが定めやすい印象だ。

トーナメントの重心は日本勢2人にあり。第1シード(プールA)の橋本壮市(パーク24)と第5シード(プールB)の海老沼匡(パーク24)がトーナメントを引っ張る形になるだろう。

それぞれ山場があるが、準々決勝の難敵ビラル・ジログル(トルコ)までこれといった敵が見当たらない海老沼に対して、第1シードの橋本のほうが勝ち上がり難度は上。3回戦(2戦目)でガンバータル・オドバヤル(モンゴル)あるいはギヨション・ボボエフ(ウズベキスタン)、準々決勝ではヴィクトル・スクヴォトフ(UAE)かベフルジ・ホジャゾダ(タジキスタン)と戦わねばならない。組み手に付き合ってくれるガンバータルには過去5戦5勝、橋本の得意な片手状態を許しがちのスクヴォトフには2戦2勝とここは問題なし。まだ対戦がなく、かつ接近と掌握の繰り返しの中でいつの間にか力勝負を作り出してくるホジャゾダが上がって来た場合が一番面倒だが、それでも「ひと汗かかねばならない」くらいのレベル差があると考える。

プールCはAシード選手トミー・マシアス(スウェーデン)の山にツェンドオチル・ツォグトバータル(モンゴル)、逆サイドには第7シード選手ヒクマティロフ・ツラエフ(ウズベキスタン)とノーシード扱いのファビオ・バジーレ(イタリア)という陣形。そもそもの地力と、グランプリ・テルアビブにおける狂気ダダ漏れのハイパフォーマンスから、ここはバジーレの勝ち上がりと読むべきだろう。同大会では得意の出足払をさらしながら叩き込む右大内刈の威力がすさまじかった。立ち振る舞いにもこの人の強さの源泉である良い意味での自己愛があふれており、五輪に向けていよいよ内圧上がってきた印象。いい試合を見せてくれるだろう。

プールDは他ブロックに比べてやや人材が薄い。順当に見ればデニス・イアルツェフ(ロシア)を推すべきだろうが、注目はノーシードのマルティン・ホヤック(スロベニア)。グランプリ・テルアビブでは、サンボ式の谷落(60kg級のミフラジ・アックスが得意とする、腕の抑え方に特徴のある技法。近く一稿場を設けて解説するつもりである)で投げに投げまくり、なんと決勝までたどり着いた。相手に悟られてなお投げ切るというような絶対的な技ではなく刹那的な技法ではあるが、その工夫と進取の精神は買い。この技がまだ通用するか、また新たな技術的な創意工夫の気配あるか、に注目したい。

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テルアビブ大会を圧勝したファビオ・バジーレ。

【プールA】
第1シード:橋本壮市(パーク24)
第8シード:ヴィクトル・スクヴォトフ(アラブ首長国連邦)
有力選手:ガンバータル・オドバヤル(モンゴル)、ギヨション・ボボエフ(ウズベキスタン)、ジョヴァンニ・エスポージト(イタリア)、アルテム・ホムラ(ウクライナ)、ベフルジ・ホジャゾダ(タジキスタン)

【プールB】
第4シード:ビラル・ジログル(トルコ)
第5シード:海老沼匡(パーク24)
有力選手:マグディエル・エストラダ(キューバ)、マルセロ・コンティーニ(ブラジル)、アントワーヌ・ブシャー(カナダ)、ゲオルギオス・アゾイディス(ギリシャ)

【プールC】
第2シード:トミー・マシアス(スウェーデン)
第7シード:ヒクマティロフ・ツラエフ(ウズベキスタン)
有力選手:ツェンドオチル・ツォグトバータル(モンゴル)、ベンジャマン・アクスス(フランス)、ファビオ・バジーレ(イタリア)、イゴール・ヴァンドケ(ドイツ)

【プールD】
第3シード:アルチュール・マルジェリドン(カナダ)
第6シード:デニス・イアルツェフ(ロシア)
有力選手:ジャンサイ・スマグロフ(カザフスタン)、ヴィクトル・ステルプ(モルドバ)、ギヨーム・シェヌ(フランス)、マルティン・ホヤック(スロベニア)、モハメド・モハイルディン(エジプト)、ソモン・マフマドベコフ(タジキスタン)、ディルク・ファンティシェル(ベルギー)

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