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【隔週刊・嘉納治五郎師範のひとこと】第93回

(2020年1月27日)

※ eJudoメルマガ版1月27日掲載記事より転載・編集しています。
【隔週刊・嘉納治五郎師範のひとこと】第93回
油断を誡(いまし)む。
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嘉納治五郎師範

資料提供 公益財団法人講道館
copyright:Kodokan Judo Institute

※写真の無断転載および転用を厳に禁じます

出典:「油断を誡む」国士5巻40号 
明治35年1月 (『嘉納治五郎大系』6巻110頁)

「油断」。これまでを振り返ってみたとき、あともう少しで勝てそう、あるいは、引き分けられそうだったのに、一瞬「油断」したばかりに…。そういった、今でも忘れられない、悔しい記憶が多かれ少なかれ、誰にでもあるのではないでしょうか。
「油断」という言葉を聞くとそういった、勝敗と絡んで連想しがちですが、今回の「ひとこと」は、そういった場面での<油断を戒める>ということなのでしょうか。

今回の出典元となる論考は、明治35年の初頭に「国士」に掲載されたものです。
皆さんそうだと思いますが、1年のはじめには、初心新たに、いろんな目標や計画を立てていると思います。遠い明治時代も同様だったようですが、そんな1年の目標や計画を立てる若者に向けて師範がおくったのが引用元の論考です。 

さて、皆さん、昨年の1月にも、同じように目標を立てたと思いますが、どれくらい達成できましたか?実現できた人は、とても素晴らしい、強い意志と実行力、計画性を持っている方だと思います。一方で、達成出来なかったという人も少なくないのではないでしょうか。
師範は、目標を立てても、それが実行出来ない理由として、目標設定時点での失敗(詳細は、書いていませんが他の史料から推測するに、能力や現状からあまりにもかけ離れた目標を設定することだと思われます)をあげると同時に、意外なことに「油断」をあげています。

例えば、身体が丈夫だからと言って、無理をしていると体調を崩してしまいます。ある程度、優れた能力を持っていても、それを過信すると本来出来ることも出来ずに終わります。そういったことを師範は「油断」と言います。
自分の本来の力を発揮できなければ、(それがかなり低く見積もった目標でない限り)目標達成は心許ないでしょう。直接は、言及していませんが、興味深いことに、「油断」しないことが、心身の力を有効に使うことにも繋がることを師範はにおわせています。
 
本来、持っている心身の力を有効に利用しようとすれば、当然、「無駄」は許されません。その「無駄」を生み出す原因の一つが「油断」というものでしょう。
「油断」を柔道に引き付けて考えると、冒頭の試合における油断を連想しがちですが、今回は、そこより、さらに広い範囲の話でした。

ただ、これらが全く無関係とも考えられません。心身の力を最も有効に利用するために「油断」を戒めるのであれば、その訓練は普段の稽古から必要なことでしょうし、その成果を試合や、日常生活に活かしてこその、講道館柔道の修行でしょう。
 
特に冒頭のような苦い思い出こそ、「油断」を戒める大事な材料にしたいものです。一度しかない人生、「油断」が原因で、悔しい思いをしたくないではないですか。

著者:元 敏季(ハジメ・トシキ)
1975年生まれ。柔道は中学校から始め、大学までは競技を中心に行うが、卒業論文を機に柔道の文化的側面に関心を持ち、大学院へ進学。凡そ10年、大学院・研究機関に所属するも、研究とは異なる分野の仕事に就き現在に至る。ライフワークとして嘉納治五郎に関する史料を蒐集・研究し、その成果を柔道振興のため発信しようとしている。

※ eJudoメルマガ版1月27日掲載記事より転載・編集しています。

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