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【ROAD TO 高校選手権】【レポート】大混戦世代、開幕戦の勝者は埼玉栄高・第43回黒潮旗武道大会高校男子団体レポート

(2019年12月10日)

※ eJudoメルマガ版12月8日掲載記事より転載・編集しています。
【ROAD TO 高校選手権】大混戦世代、開幕戦の勝者は埼玉栄高・第43回黒潮旗武道大会高校男子団体レポート
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高校男子優勝の埼玉栄高

高校カテゴリ冬の招待試合シリーズの開幕戦と位置付けられる第43回黒潮旗武道大会(主催:学校法人東海大学)柔道の部が8日、東海大学付属静岡翔洋高体育館(静岡市清水区)で行われ、40校が参加した高校男子団体は埼玉栄高(埼玉)が初優勝を飾った。決勝では今代の本命と噂の高い東海大相模高(神奈川)を3-1で破った。

3位には前代「高校三冠」を達成した国士舘高(東京)と、東海大仰星高(大阪)が入賞した。

戦評および、入賞者一覧、記録、優勝監督のコメントは下記。

取材・撮影:eJudo編集部
文責:古田英毅

■ 戦評
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東海大相模高・工藤海人による選手宣誓

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予選リーグ1回戦、東海大相模高の中堅金子竜士が城南静岡高・副地颯太から内股「一本」

【決勝まで】

準決勝に勝ち残ったチームは、戦前の組み合わせから予想された通り。まず久々頂点を狙える陣容を揃えて今代の本命と目される東海大相模高(神奈川)、続いて昨年度高校3冠の国士舘高(東京)、重量級の大物中村雄太を押し立てる東海大仰星高(大阪)、そして1年生世代が全国中学校大会を獲って全体の粒が揃った埼玉栄高(埼玉)の4チームだ。新人戦期らしくどのチームもまだまだ粗削りで試合運びの要所で綻びが見られるが、ゆえにかえって地力と潜在能力が見えやすい。世代全体としては小粒だが、このあたりは例年通り見どころの多い大会である。

東海大相模はエースの全日本カデ90kg超級の覇者・菅原光輝を腰の負傷で欠く苦しい布陣。
近藤那生樹と工藤海人の前代主力を務めた2年生2人に金鷲旗大会で前衛を務めた金子竜士、さらに尼田光志朗を入れ、これに山本航勢と軽量の滝本大翔を絡めて試合を進める。スターティングは滝本、近藤、山本、金子、尼田。予選リーグ2試合は松本第一高(長野)と城南静岡高(静岡)をいずれも5-0で下して大過なく勝ち抜けるも、準々決勝の育英高(兵庫)戦は先鋒近藤の先制を受けた次鋒山本が辻本翔真に1点を献上。中堅金子も引き分けて意外なロースコアゲームの様相となる。しかし副将工藤海人が執念の大内刈「一本」で山本颯太郎を抜いて勝ち越し。通算スコア2-1で準決勝進出を決めた。近藤、工藤、金子の前代から畳に立って計算の立つメンバーのほか、この日目立っていたのはここまでローテーション起用されている滝本。いかにも東海大相模の軽量選手らしく切れ味ある投技を連発し、チームを勢いづけていた。

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予選リーグ1回戦、国士舘高の大将入来院大樹が水戸葵陵高・小澤美紀から出足払「一本」

国士舘は岡田陸と磯田海成の2年生2人がエース格。これに同じく2年生の全日本カデ73kg級王者小田桐美生と1年生世代の全中最重量級王者入来院大樹がレギュラーを張り、今大会は1年生の金澤聡悟、2年生の小谷優太の軽重量級2人が登録されている。固定は岡田、磯田と入来院の3人で序盤戦は他選手をローテーション起用。このチームもまだまだ粗削りだが予選リーグは水戸葵陵高(茨城)と作新学院高(栃木)をいずれもあっという間の5点奪取で問題なく退け、決勝トーナメント1回戦は静岡学園高(静岡)に大将入来院が「指導2」で星を落としたもののスコア3-1で勝ち抜け決定。この試合は先鋒戦で肩車と崩袈裟固の合技「一本」をマークした小田桐の小気味よい動きが印象的であった。準々決勝はこの日健闘の東海大甲府高(山梨)を前に先鋒小田桐(vs北尾大樹)、次鋒齋城龍世(八田京磨)、中堅岡田陸(富田裕太)と3試合連続の引き分けも、副将磯田が出足払「技有」に小外掛「一本」と連取して貴重な先制点。最後は入来院がしっかり引き分け、スコア1-0でぶじ東海大相模の待つ準決勝へと駒を進めることとなった。

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決勝トーナメント1回戦、東海大仰星の大将中村雄太が体重150キロの湯川魁(小杉高)から大外刈「一本」

東海大仰星は身長184センチ体重130キロの偉丈夫・中村雄太が獅子奮迅の働き。足技で作って大技で投げ切る筋目の良い柔道でこの日も「一本」を連発、周囲も大将中村の1点獲得を前提に意思統一が出来ており大きく言ってその戦いぶり危なげなし。決勝トーナメント1回戦では、予選リーグで桐蔭学園高(神奈川)を倒した小杉高(富山)を大将中村の得点をテコに1-0で倒し、準々決勝は日体大荏原高(東京)をこれも最後に中村の1点を上積みする形のスコア2-1で撃破。前評判に違わぬ戦いで準決勝進出決定。

埼玉栄の序盤戦はどちらかというと煮え切らない戦いぶり。予選リーグ第1試合の開志国際高(新潟)戦は3-0で勝利したが圧倒的な爆発力を見せたとまでは言い難く、予選リーグ第2試合の修徳高(東京)戦も、副将戦で岩﨑雄大が竹下博隆から挙げた「技有」優勢のみのスコア1-0という辛勝。しかし一貫して試合を失うような危ない場面はなく、決勝トーナメント1回戦では東海大翔洋高(静岡)を4-0、準々決勝は予選リーグで木更津総合高(千葉)を破った津幡高(石川)を2-1で破ってベスト4入り決定。

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準決勝、東海大相模の先鋒滝本大翔が国士舘・小田桐美生から左内股「技有」

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滝本は続いて大内刈「技有」を追加して快勝

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次鋒戦、近藤那生樹が左足を踏み込んで金澤聡悟の体を制する。このまま右後隅に乗り込んで「一本」。センスと反射神経の良さが垣間見えた一撃だった。

[準決勝第1試合]

東海大相模高 2-1 国士舘高
(先)滝本大翔〇合技[内股・大内刈](1:14)△小田桐美生
(次)近藤那生樹〇隅落(2:30)△金澤聡悟
(中)金子竜士×引分×岡田陸
(副)工藤海人△優勢[技有・支釣込足]〇磯田海成
(大)尼田光志朗×引分×入来院大樹

この日の目玉というべき大一番。

先鋒戦は左相四つ。小田桐美生の隅返で攻めが終わったシークエンスの直後、組み際に滝本大翔が跳ねる勢いで左内股を捩じ入れて37秒早くも「技有」奪取。掛けの勢いだけで小田桐が吹っ飛ぶ強烈な一撃だった。続いて滝本は腰車を狙い、小田桐は出足払でその出籠手を抑えて反撃のチャンスを伺う。そして迎えた1分14秒、腰の入れ合いから小田桐が支釣込足を放つと瞬間迎え撃った滝本は上体に捩じりを呉れ、同時に軸足に大内刈を差し込んで勢いよく投げ切りまたもや「技有」。カデ王者小田桐を相手にあっという間の投げ2発。滝本が斬り込み役を存分に果たし、合技「一本」で東海大相模が先制。

次鋒戦は近藤那生樹が左、金澤聡悟が右組みのケンカ四つ。金澤は内股モーションからの右出足払、さらに出足払のフェイントからの右内股と腰を切り返しながらの組み立てで試合を進め、序盤戦は差がつかず。しかしポイントゲッターの自覚高い近藤が中盤から攻勢に出、ケンケンの左大内刈から袖釣込腰と良く攻めて2分3秒金澤に「指導」。そして続く展開、近藤はケンケンで前に出ると、窮した金澤が放った中途半端な左背負投を見逃さない。片膝を着いた相手の左腰裏に大きく左足を踏み込むと、これで両膝を着かされた金澤は両足ともに「死に爪」、完全に下半身が死んでしまう。残る上半身で時計回りに振り返そうとするが近藤は両手の制動を効かせて胸を合わせ、右後隅めがけて飛び込む形で押し倒して2分30秒鮮やか隅落「一本」。東海大相模は2連勝、試合の行方は早くも見えた感あり。

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副将戦、工藤海人は敢えてがっぷり組み合って磯田海成と圧を掛け合う

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磯田の支釣込足に工藤が吹っ飛んで「技有」

中堅戦は金子竜士が左、岡田陸が右組みのケンカ四つ。岡田得意の右大内刈を出口に据えてさまざま引き出しを開けるが決定打には繋がらない。時折敢えて踏み込まずにまず刈り足を届かせんという動きを見せるが、互いが「人」の字に傾いて上体で圧を掛けあう腰の遠い形が崩れず、得点の気配はない。1分7秒には双方に「指導」。終盤得点必須の岡田が大内刈からの左一本背負投を幾度か見せるがこれも迫力不足で展開を動かすには至らず。この試合はそのまま引き分けとなった。

副将戦は工藤海人、磯田海成ともに右組みの相四つ。リードを背にした工藤はやや横変形気味に、敢えてがっぷり組み合って相手と止め合う攻防一致の構え。釣り手は首裏か横襟。相手の技のインパクトの直前に自身が前に出ることで勢いを潰し、後の先に繋ぐという工藤得意の形である。あたかもボクシングにおける、相手のパンチの腕が伸びる前に額を当ててしまうディフェンスのごとし。磯田はなかなかこれを突破出来ず、1分3秒には工藤の思い切った大内刈を返しに掛かるも自らがたたらを踏む形で投げ切れず「待て」。工藤は機を見ての大技で展開に楔を入れる巧さを見せ、危なげない進退。
しかし残り18秒、磯田の突進を受け入れて引き付け合ったこの工藤得意の構えが裏目に出る。終盤磯田が釣り手を上から回して背中を叩くと、工藤はほとんど相手の腋から顔を出すほどに間合いを詰めて圧力対抗、しかし踏ん張ったまま崩れて片膝を着いてしまう。磯田は相手の前向きの力に合わせて引き起こすと、支釣込足を呉れるなり思い切って体を投げ出す。想定より一間早く体を捨てる磯田独特のタイミングで襲来したこの技を工藤受け切れず、その力をまともに食って一回転「技有」。このまま試合は終了となり、国士舘が1点を返すこととなった。

東海大相模の勝利自体はここで確定。大将戦の1年生対決は尼田光志朗が入来院大樹と引き分けて最終スコアは2-1。東海大相模が決勝に進むこととなった。

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準決勝、埼玉栄の中堅岩﨑雄大が東海大仰星・永竿慶弥から小外掛「技有」。なんとしても欲しい2点目を獲得する。

[準決勝第2試合]

埼玉栄高 2-1 東海大仰星高
(先)松崎渡×引分×岩本莉樹
(次)長濱佑飛〇反則[指導3](0:53)△高橋力也
(中)岩﨑雄大〇優勢[技有・小外掛]△永竿慶弥
(副)中井貴道×引分×鉄川大雅
(大)野村陽光△合技[小外刈・横四方固]〇中村雄太

相手方に大駒・中村雄太が座る大将戦での失点を想定し、先に2点取って試合を決めんと突っ込んだ埼玉栄の積極姿勢が功を奏した試合。先鋒戦が引き分けに終わるとこの危機感はさらに高まって次鋒長濱は徹底前進、高橋力也から2分7秒の間に3つの「指導」をもぎ取って値千金の先制点を得る。中堅戦は残り47秒となったところで岩﨑雄大が抱きつきの小外掛で「技有」、そのまま優勢勝ちを果たしてここで合格ラインの2点目を獲得。

埼玉栄は副将中井貴道が手堅く引き分けてこの時点で勝利を確定。大将戦は東海大仰星のエース中村が野村陽光に位押しに組み勝ち、得意の小外刈「技有」から横四方固に抑え込んで合技「一本」。一矢を報いて最終スコアは2-1となった。埼玉栄、ミッション達成でぶじ決勝進出決定。

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先鋒戦、松崎渡が滝本大翔から出足払「一本」。この試合の流れを決めた一撃だった。

【決勝】
埼玉栄高 3-1 東海大相模高
(先)松崎渡〇出足払(0:35)△滝本大翔
(次)長濱佑飛△内股〇近藤那生樹
(中)岩﨑雄大〇裏投△金子竜士
(副)中井貴道×引分×工藤海人
(大)野村陽光〇内股(2:01)△尼田光志郎

双方準決勝と同じメンバーのまま布陣。体重順レギュレーションゆえ、配列も変わらず。

まず先鋒戦で埼玉栄が強烈な先制パンチ、松崎渡が左相四つの滝本大翔に強烈な出足払を見舞う。軽量の滝本まともにその質量を食ってしまい、叩き落とされて「一本」。ここまで僅か35秒である。埼玉栄にとってはこれ以上ない出だし、東海大相模は斬り込み役が早い時間で、それも鮮やかな技を食って一本負けを喫するという準決勝とは真逆のスタートとなった。

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次鋒戦、「技有」ビハインドの近藤那生樹が長濱佑飛から内股「一本」

次鋒戦は長濱佑飛が右、東海大相模のポイントゲッター近藤那生樹が左組みのケンカ四つ。近藤両袖を交えながら軽やかに進退も、左一本背負投の戻りに合わせて長濱が繰り出した鋭い右小内刈に捕まってしまう。反応良く身を捻ったものの初動の崩れがあまりに大きく横倒し、主審は「技有」を宣告。経過時間は1分2秒、2点連取の予感に埼玉栄ベンチが沸き返る。

近藤左背負投で攻めるも長濱的確に技を打ち返して動ぜず。しかし中盤から近藤がラッシュをかけると徐々に手が詰まり始めて2分12秒には場外の「指導」失陥、以後も組み際の左内巻込に低い右体落の掛け潰れと状況を流すための技が増え始める。そして残り時間1分を切った3分8秒、近藤が両袖の左内股一撃。吹っ飛んだ松崎が頭頂を畳に着くブリッジの形で着地、合議を経てこの技に「一本」が宣せられる。近藤なんとか逆転して面目を保ち、ここでスコアは1-1のタイ。

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岩﨑雄大が金子竜士の大外刈を待ち構え、軸足を小外掛に捉えて「技有」

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金子の「一本大外」を、背をつきながらも岩﨑が振り返す。判定は岩﨑の「一本」。

試合が揺れ動いた前2戦を受けた分水嶺の中堅戦は、岩﨑雄大と金子竜士ともに左組みの相四つ。22秒、金子ツイと作用足を伸ばして左大外刈を引っ掛けるがこれはやや安易。岩﨑まったく崩れぬまま右小外掛の形で体を捨て、軸足にインパクトをまともに受けた金子は身を固めたまま後方に吹っ飛び「技有」。金子は金鷲旗大会でもまず作用足を差し込んでから相手を後隅か前隅、あるいは釣り手側にケンケンで重心移動させながら抜き上げる内股を連発していたが、このやり口はあくまで力で勝る場合に有効な手立て。崩しのないまままず片足を振り上げるという弱点がわかりやすく出た形となってしまった。

金子取り返さんと激しい攻め、角度を変えながら左大外刈に左内股と大技を連発して逆襲に掛かる。岩﨑は手堅く試合を進めるものの、攻めさせ過ぎて少々場を煮えさせてしまった感あり。この攻撃を持て余し始めた印象。

残り32秒、金子手立てを変えて左の「一本大外」。膝裏を捕まえるなり迷いなく体を前に捨てて投げ切りに掛かる。岩﨑は倒れながら時計回りの裏投の形で応じるも背中から激しく畳に落下。まず岩﨑の背中が落ち、次いで捩じられた金子が先に頭、次いで体側から畳に着地する。主審はまず「一本」を宣告、次いで副審のアピールを受けて合議を招集する。金子の技を採るなら「一本」が妥当、岩﨑の裏投を採るなら「技有」相当と思われたが、下された裁定は岩﨑の「一本」。金子のブリッジと判定されたのかもしれないが、いずれかなり微妙な判定であった。

かくて勝ち越し点は埼玉栄に配される。スコアは2-1、2試合を残して埼玉栄が1点をリード。

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工藤海人が小外掛、しかし隅に追い込まれていたはずの中井貴道が待ち構えてかわし、振り返す。

副将戦は中井貴道が左、工藤海人が右組みのケンカ四つ。早く点が欲しい工藤は釣り手で背中を横抱きに捕まえて迫るが、中井は迷いなく内村直也ばりの「いったん振り向いて間合いを空ける」左背負投で攻撃。投げ切ることはできないものの度々この技を見せて工藤の接近を剥がす。3分12秒、またしても同じ展開から中井が左背負投。工藤さすがに予期してしっかり受け止めるが、明確な対応を見出したこの段階で試合時間は僅か48秒を残すのみ。工藤は試合場の隅に中井を押し込めてリアクションを待つが、満を持して放った小外掛は芯を捕まえられぬまま振り返されて潰れてしまう。この時点で残り時間は25秒。3分35秒、中井に偽装攻撃の「指導」1つが与えられたが大勢には影響なし。この試合は引き分けに終わることとなった。スコア2-1のまま、試合は大将戦へと引き継がれる。

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埼玉栄の大将野村陽光が尼田光志郎から内股「一本」。これでスコアは3-1となった。

ともに1年生が畳に上がる大将戦は埼玉栄・野村陽光が左、東海大相模の尼田光志郎が右組みのケンカ四つ。野村は先んじて左の内股巻込に潰れ、尼田は時折タイミングの良い出足払を出して対抗。野村は左払巻込に相手の出足払を受けての左内股、さらに相手の両襟による前進を受けての左払腰と立て続けに前技を放つがいずれもあっさり潰れてしまう。作りにもこれという企みは見られず、得点の予感は感じられない。2分25秒には双方に消極的の咎で「指導」。

しかし散発の中でも、たとえ得点の予感が感じられなくても突如文脈と関係なしに一発が飛び出すのが野村の持ち味。3分1秒、思い切った左内股を放つと受け止めた尼田の両足がフワリと地を離れ、一気に縦に吹っ飛んで豪快「一本」。埼玉栄がトドメの一撃を見舞った形で最終スコアは3-1。ここに埼玉栄の初優勝が決まった。

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開幕戦を獲った埼玉栄高。

【評】

それぞれ収穫のあった大会だが、もっとも自信を得たのは間違いなく埼玉栄。弟分である埼玉栄中が全国中学大会を連覇する中、高校カテゴリにもその勢いを持ち込めると手ごたえを得た大会だったのではないだろうか。絶対的なポイントゲッターがいるわけではないが、結果を残すことでチーム全体が勢いづくループを繰り返せれば非常に面白い。カギは5番手の成長と、上位対戦で計算できるエース1枚の養成。おそらく総合力型で勝ち抜かんとのビジョンがあるのではと推察するが、最後は必ず軸が必要。結果的に総合力で勝ちを得るにしても、この段階ではポイントゲッター3枚全員に、絶対のエースとして抜け出そうという貪欲さを求めたいところ。

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東海大相模。エース菅原を欠いた今大会は優勝ならず。

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予選リーグ、滝本大翔の鮮やかな内股「一本」。

本命視されている東海大相模にとっては課題の多く残った大会。菅原、近藤といったポイントゲッターがその攻撃力と裏腹の脆さを持つことは織り込みずみのはずであるが、ゆえに重石として今代のキーマンになるはずだった工藤が失点したことは、イメージ的にもかなりの痛手なのではないか。菅原不在の中で止め役として機能し切れず、かつ追いかける展開で取り味を見せられなかったこの日の試合は東海大相模全体の戦力評価にかなりの影響を及ぼしたとみる。金子も、本来であれば強さはもちろん格上相手に何かを起こすような梯子を見せて欲しかったところだが、結果はまさにこれまで格下を攻め落としていた方法論を弾き返されての失点。露払い役を任された金鷲旗の職掌から抜け出すところまでは達していない。
エース菅原抜きとはいえ、そして大一番の国士舘戦を乗り越えて気が緩んだことも否めないが、主力の近藤と工藤が失点(近藤は逆転勝ちのため黒星はつかず)してのV逸は世代全体としての混戦模様を端的に示したと総括されて然るべきだろう。今代の中心はここだと宣言することが出来ず、他チームに手ごたえを与えてしまった悔しい開幕戦であった。

とはいえ菅原、近藤、工藤と揃った陣容はやはり今代の軸。どの時点で菅原が復帰し、またどこまで周辺戦力が戦闘力を上げるのか、以後の成長を楽しみに待ちたい。好材料は滝本の吶喊ぶり。チームに何らか前向きの化学変化を起こさせるのではとの期待を抱かせる。

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準々決勝、磯田海成が内股で攻めこむ。

国士舘は、これも前代は5番手として加速装置の役割を果たした岡田陸がポイントゲッターへの羽化を遂げられていない模様。今代のエースは今のところ磯田海成と捉えられる。育成力が売りでむしろ追いかける戦いの得意な同校にとっては、ライバル東海大相模の重石役である工藤から挙げた1点は今後の戦いにかなり大きいのではないだろうか。この先は地力の涵養はもちろんであるが、今大会では入来院、金澤、磯田ら重量級選手全員に国士舘らしからぬ立ちから寝、あるいは寝技の分岐点でのチャンスの見逃しがあり、まずはこういったところの修正がポイントとなってくるはず。

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予選リーグ2回戦、東海大仰星の大将中村雄太が体重140キロの入来巨助から大外刈「技有」

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決勝トーナメント1回戦、東海大甲府の先鋒北尾大樹が習志野・関本賢太から「やぐら投げ」で「技有」。60kg級の強者に付け込む隙を与えなかった。

東海大仰星は、中村1枚の得点力の高さをあらためて確かめられた、意義のある大会であったと推察する。中村が徹底警戒される中でどう周囲が得点を挙げていくか、今大会から監督で登録された奥村達郎氏ら指導陣の手腕がみもの。

健闘が目立ったのは習志野高(千葉)、同校を倒してベスト8に進み国士舘と接戦を繰り広げた東海大甲府高(山梨)。中野智博を擁する桐蔭学園高は副将格の持田龍己が負傷で欠場し、今大会は前述の通り予選リーグで小杉高に屈した。木更津総合高(千葉)も予選リーグ敗退。身長204センチ体重150キロの巨漢、開志国際高(新潟)の花偉航は今大会畳に姿を現さなかった。

招待試合シリーズ、関東における次の大規模大会は22日の松尾三郎杯。今大会のベスト4校はすべて参加が予定されている。各校どう修正し、どのような成長を見せてくれるか。大混戦の今代、高校選手権本番を目指して強豪各校の奮闘は続く。

弊サイトは今年度も松尾三郎杯(22日)、水田三喜男杯(26日)、若潮杯(27日)を現地取材の上でレポート予定。他大会の結果も順次ニュースとしてお伝えさせて頂く。

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埼玉栄は中学、高校カテゴリを制覇。うれしい兄弟優勝となった。

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左から優秀選手賞の中村雄太、磯田海成、近藤那生樹、野村陽光、最優秀選手賞の岩﨑雄大。

【入賞者】
(エントリー40校)
優 勝:埼玉栄高(埼玉)
準優勝:東海大相模高(神奈川)
第三位:国士舘高(東京)、東海大仰星高(大阪)

最優秀選手賞:岩﨑雄大(埼玉栄高)
優秀選手賞:中村雄太(東海大仰星高)、磯田海成(国士舘高)、近藤那生樹(東海大相模高)、野村陽光(埼玉栄高)

埼玉栄高・川原篤監督のコメント
「他の学校がケガ人ばかりの中、うちはベストメンバー。喜んでいる余裕はないです。決勝は出来過ぎ、こんなに上手く嵌るのであれば本番で出て欲しかった(笑)。ただ、勝ったことで選手たちは自信を持ってくれると思います。1年生の全中王者3人の『勝った経験』が生きた大会でした。一番厳しい試合に一番良いところを出してくれるのはさすがだと思います。課題は一杯。野村も引き分けを前提に来られたら厳しいですし、長濱や岩崎も投げた後の試合運びがまだまだ。特に野村はまだ技が散発、一発一発が切り離されているので、技を繋げたり、きちんと作ったりということを覚えて欲しいです。全員に、スタミナとパワーがもう一歩欲しいという場面も多かった。(-チーム作りでの課題は?)今は松崎、野村、岩崎が安定していてこれに長濱という構成ですが、これから5番手をどうするか。今日出た中井ら5番手候補が単に5番手の座を得るのではなく、4番手や3番手を食うような成長を見せてくれれば、全体のレベルが一段上がると思います。3月に優勝することを目指して、頑張ります。」

【予選リーグ順位】

[Aブロック]①東海大相模高(神奈川) ②松本第一高(長野) ③城南静岡高(静岡)
[Bブロック]①東海大高輪台高(東京) ②京都学園高(京都) ③近江高(滋賀)
[Cブロック]①育英高(兵庫) ②東海大浦安高(千葉) ③足立学園高(東京)
[Dブロック]①習志野高(千葉) ②四日市中央工高(三重) ③東海大菅生高(東京)
[Eブロック]①東海大甲府高(山梨) ②常磐高(群馬) ③大垣日大高(岐阜)
[Fブロック]①静岡学園高(静岡) ②東海大熊本星翔高(熊本) ③相洋高(神奈川)
[Gブロック]①国士舘高(東京) ②作新学院高(栃木) ③水戸葵陵高(茨城)

[Hブロック]①日体大荏原高(東京) ②浜松商高(静岡) ③山形工高(山形) ④東海大市原望洋高(千葉)
[Iブロック]①東海大仰星高(大阪) ②中京学院大中京高(岐阜) ③同朋高(愛知)
[Jブロック]①小杉高(富山) ②桐蔭学園高(神奈川) ③飛龍高(静岡)
[Kブロック]①東海大翔洋高(静岡) ②北陸高(福井) ③前橋商高(群馬)
[Lブロック]①埼玉栄高(埼玉) ②修徳高(東京) ③開志国際高(新潟)
[Mブロック]①津幡高(石川) ②木更津総合高(千葉) ③浜松西高(静岡)

【決勝トーナメント1回戦】

育英高(兵庫) 3-1 東海大高輪台高(東京)
東海大甲府高(山梨) 2-1 習志野高(千葉)
国士舘高(東京) 3-1 静岡学園高(静岡)
東海大仰星高(大阪) 1-0 小杉高(石川)
埼玉栄高(埼玉) 4-0 東海大翔洋高(静岡)

【準々決勝】

東海大相模高(神奈川) 2-1 育英高(兵庫)
国士舘高(東京) 1-0 東海大甲府高(山梨)
東海大仰星高(大阪) 2-1 日体大荏原高(東京)
埼玉栄高(埼玉) 2-1 津幡高(石川)

【準決勝】

東海大相模高 2-1 国士舘高
(先)滝本大翔〇合技[内股・大内刈](1:14)△小田桐美生
(次)近藤那生樹〇隅落(2:30)△金澤聡悟
(中)金子竜士×引分×岡田陸
(副)工藤海人△優勢[技有・支釣込足]〇磯田海成
(大)尼田光志朗×引分×入来院大樹

埼玉栄高 2-1 東海大仰星高
(先)松崎渡×引分×岩本莉樹
(次)長濱佑飛〇反則[指導3](0:53)△高橋力也
(中)岩﨑雄大〇優勢[技有・小外掛]△永竿慶弥
(副)中井貴道×引分×鉄川大雅
(大)野村陽光△合技[小外刈・横四方固]〇中村雄太

【決勝】
埼玉栄高 3-1 東海大相模高
(先)松崎渡〇出足払(0:35)△滝本大翔
(次)長濱佑飛△内股〇近藤那生樹
(中)岩﨑雄大〇裏投△金子竜士
(副)中井貴道×引分×工藤海人
(大)野村陽光〇内股(2:01)△尼田光志郎

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