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【レポート】2019年度講道館杯全日本柔道体重別選手権マッチレポート④最終日女子4階級

(2019年11月17日)

※ eJudoメルマガ版11月12日掲載記事より転載・編集しています。
2019年度講道館杯全日本柔道体重別選手権マッチレポート④最終日女子4階級
(48kg級、52kg級、57kg級、63kg級)
→女子7階級全試合結果(eJudoLITE)
→女子7階級プレビュー
→女子第1日速報ニュース

文責:古田英毅
撮影:辺見真也/eJudo編集部

■ 48kg級 角田夏実圧勝、全試合一本勝ちでグランドスラム大阪進出決定
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48kg級2回戦、稲毛ゆかが近藤亜美から横四方固「一本」

【決勝まで】

第1シードの近藤亜美(三井住友海上)が初戦(2回戦)敗退。稲毛ゆか(アセットサービス)を相手に序盤はかつての得意技である「回り払腰」で投げに掛かるなど鋭い動きを見せていたが、本戦終了間際の寝勝負で「横三角」を試みたところで足を外され、崩上四方固で抑え込まれてしまう。激しく抵抗するが稲毛はその動きを捉えてかえって拘束を強め、体を入れ替えて横四方固に連絡すると近藤もはやまったく動けず。4分5秒「一本」で試合決着となった。近藤は4月の全日本選抜体重別、5月のグランドスラム・バクーに続いて3大会連続の初戦負け。いずれもたしかに試合運びのミスはあったが、もはやその因を現場での局所的なミスという範疇に収めて考えるのは難しい。修正すべきところと伸ばすべきところを見極め切れず、柔道の方向性自体に自信が持てなくなっている印象。精神的な閉塞が感じられる試合だった。これまでの実績や稽古での強さに鑑みる形でグランドスラム大阪代表には選考されたが、苦しい戦いが続く。

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2回戦、角田夏実が伴由梨奈から巴投「一本」

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3回戦、角田が古賀若菜から腕挫十字固「一本」

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準決勝、角田が遠藤宏美から巴投「技有」

その一方で、階級を下げて参加した2017年ブダペスト世界選手権52kg級銀メダリスト・角田夏実(了徳寺大職)が快進撃。誰もがその武器は巴投と腕挫十字固と知りながら、しかしまったく止めることができない。2回戦でまず伴由梨奈(帝京大3年)を巴投「一本」に仕留めると、続く準々決勝では世界ジュニアを制したばかりの古賀若菜(南筑高3年)とマッチアップ。古賀は4月の全日本選抜体重別で優勝、今年初めて参加したワールドツアー大会(グランプリ・モントリオール)でも初出場初優勝の快挙を成し遂げたこの階級の新たな主役。準々決勝にして、早くもトーナメント最大の山場である。

この試合は左相四つ。古賀は組み手厳しく迫るが、角田は「どこを持たれてもいい」とばかりに一種鷹揚。最初の展開は先んじて攻めたい古賀が低い左大内刈を打ち込む。角田潰して腕挫十字固を試みると古賀慌てて立ち上がり、体を寄せて来た角田から腕を引き抜いて「待て」。経過時間は41秒。

そして続く展開。角田が敢えて襟を空けて持ちどころを晒すと、古賀は吸い込まれるように釣り手でこの右襟を掴み、片手の大内刈、続いて片手の左体落で展開を切る。角田は待ってましたとばかりに躊躇なく寝勝負、このまま腕挫十字固に絡みつく。正対して立とうとした古賀を横に転がし、互いに伏せたまま腕を捩じ上げると体を屈して耐えた古賀観念して「参った」。事実上の決勝と目された大一番は僅か1分12秒で決着、角田の圧勝である。

角田は続く準決勝でも遠藤宏美(ALSOK)をまったく寄せ付けず。「指導1」ずつで迎えた1分30秒にまず巴投「技有」をマーク。後のなくなった遠藤が突進するとその出端を捉えて2分54秒にまたもや巴投。遠藤は手を着こうとバランスした姿勢のまま横から畳に墜落「技有」。角田は3試合連続の一本勝ち、この間巴投を3度、腕挫十字固を1度決めるという完璧な内容で決勝進出決定。

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準決勝、渡邉愛子が山﨑珠美から小外掛「一本」

もう1人の決勝進出者は全日本ジュニア王者・渡邉愛子(東海大1年)。初戦は高校選手権52kg級の覇者白石響(熊本西高3年)から得意の小内刈で「技有」を奪って優勢勝ち。続く準々決勝では前戦で近藤亜美を破った稲毛ゆかから開始54秒で「指導2」までを得ると、1分48秒に大内刈で「技有」、直後の2分2秒に3つ目の「指導」を奪う快勝。準決勝は第4シードの山﨑珠美(自衛隊体育学校)を攻めまくり開始27秒大内刈「技有」を奪取、以降も「指導」2つを一方的に奪うと、3分32秒にはとどめの小外掛「一本」。渡邉らしい強気の柔道を貫き、素晴らしい出来で初の講道館杯決勝の畳へと駒を進めた。

若手ではもう1人、吉岡光(八千代高2年)の健闘が光った。1回戦を一本勝ちして迎えた2回戦では2013年度大会優勝をはじめ表彰台に5度上がっている森﨑由理江(宮崎大教)とマッチアップ。思い切りの良い背負投で開始早々に「技有」を奪うが、その思い切りの良さを利用されて中盤背負投を返され横車で「技有」失陥。この後の試合姿勢が問われるところであったが、左で背中を抱いての捨身技勝負という巧みな作戦を採ったベテランに対し、あくまでこの背負投で一発勝負。以後も様々組み手の形を変える相手に対し、状況噛み合わずとも思い切った担ぎ技を仕掛け続け総試合時間5分44秒を掛けて「指導3」を獲り切った。準々決勝で遠藤に苦杯、敗者復活戦でも全日本ジュニアに続いて古賀に敗れたが、今後に期待を抱かせる内容だった。

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決勝、角田が早々に巴投「技有」

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再度の巴投は「一本」

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勝利を決めた角田は表情を変えず。次はグランドスラム大阪で日本代表・渡名喜風南との対戦が待ち受ける。

【決勝】
角田夏実(了徳寺大職)○巴投(1:32)△渡邉愛子(東海大1年)

決勝はともに左組みの相四つ。渡邉は相手の右から接近、左の「ケンカ四つクロス」の形を経由して先に引き手で左袖を得る巧さを見せるがこれは角田が切り離してあっという間にリセット。渡邉続いて奥襟を叩くと角田これも絞り落として、35秒からはもっとも得意な両袖の形で下向きの圧を掛ける。いったん上げようとした渡邉、それでは角田得意の巴投の好餌とばかりにその衝動を引っ込め、敢えて絞らせたまま体を斜めにずらして我慢。しかしその際前傾して腰を引く形になってしまい、瞬間その股下のスペースめがけて角田が巴投を閃かせる。正面から体を滑り込ませた「真巴」、左足で腹ではなくまず膝のあたりを蹴り上げ、次いで両足で力を籠めると渡邉は縦回転で吹っ飛び「技有」。ここまで僅か53秒、上下体を入れ替えて渡邉の体を制した角田は「待て」の声を聞いて悠然と立ち上がり、当然とばかりに顔色も変えず。

続く展開も角田は組み手を交換しながらあっという間に両袖を作り出す。止まっては巴投を食うばかりと距離を取らんとした渡邉は両袖の左払腰の形で回転して相手を剥がすが、この大きな動きも角田の狙いどころ。技の戻り際に再び巴投一撃、浮いた相手の体勢に応じて今度は自身の右後隅方向に投げ捨てて鮮やか「一本」。油断なく腕挫十字固に移行せんと相手をまたいでいた角田はこの宣告を聞いてようやく矛を収めて立ち上がる。階級変更の角田、圧勝でグランドスラム大阪進出決定。

52kg級でも際立っていた角田の体の強さは健在。1階級上で国際大会のトップだった角田に、国内の48kg級選手たちはまったく歯が立たなかった。角田の巴投は引き出し多く、理の裏付けが確かで癖の強い技。受けたことがなければ対応出来ない。変化球主体型ゆえに発生するこの「初見」のアドバンテージは割り引かなければならないが、そもそものパワー自体で48kg級の選手たちとは一段レベルが違った印象。思った通りに相手を動かし、欲しい形に無理やり嵌める「やりたい放題」の大会だった。来るグランドスラムを飛び越え、誰もが「ビロディドと戦わせてみたい」と夢を膨らませるであろう圧勝劇だった。

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48kg級メダリスト。左から2位の渡邉愛子、優勝の角田夏実、3位の小倉葵と古賀若菜。

【入賞者】
優 勝:角田夏実(了徳寺大職)
準優勝:渡邉愛子(東海大1年)
第三位:小倉葵(環太平洋大4年)、古賀若菜(南筑高3年)
第五位:遠藤宏美(ALSOK)、山﨑珠美(自衛隊体育学校)
第七位:稲毛ゆか(アセットホームサービス)、吉岡光(八千代高2年)

【グランドスラム大阪代表選手】
渡名喜風南(パーク24)、角田夏実(了徳寺大職)、古賀若菜(南筑高3年)、近藤亜美(三井住友海上)

角田夏実選手のコメント
「凄く自分の中でも不安があった。回りの方々とチームの応援のおかげで戦い切ることが出来ました。戦うということに関しては52kg級と一緒、落ち着いて自分の柔道をしようと考えていました。(-オール一本勝ちですね?)言われて初めて気付いたのですが、とにかく勝つことに必死でした。52kg級に未練もあったりするので、勝てたことは素直に嬉しいです。日本でしっかり勝たないとこの先はないので、この大会で勝てたことは大きいと思います。期間は短いですが、2020年東京五輪に向けて全力で頑張っていきます。」

【準々決勝】
渡邉愛子○反則[指導3](2:02)△稲毛ゆか
山﨑珠美○小外掛(1:27)△小倉葵
角田夏実○腕挫十字固(1:12)△古賀若菜
遠藤宏美○GS技有・小外掛(GS4:29)△吉岡光

【敗者復活戦】
小倉葵○GS技有・内股(GS0:22)△稲毛ゆか
古賀若菜○合技[大内刈・縦四方固](2:08)△吉岡光

【準決勝】
渡邉愛子○小外掛(3:32)△山﨑珠美
角田夏実○合技[巴投・巴投](2:54)△遠藤宏美

【3位決定戦】
小倉葵○GS技有・大外刈(GS5:23)△遠藤宏美
古賀若菜○不戦△山﨑珠美

【決勝】
角田夏実○巴投(1:32)△渡邉愛子

■ 52kg級 内尾真子が初優勝、長時間試合の連続をしぶとく制す
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準決勝、内尾真子が前田千島を攻める

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準決勝、立川莉奈が武田亮子の左背負投に右内股を差し込み「技有」

【決勝まで】

決勝に進んだのは内尾真子(自衛隊体育学校)と立川莉奈(福岡県警察)の2名。

内尾は第3シード。2回戦で萩野乃花(国士舘大4年)に内股「技有」による優勢で勝利すると、以降の3試合はすべてGS延長戦の長時間試合をしぶとく勝ち抜く。3回戦は渡邊真珠美(センコー)を大内刈「技有」(GS0:14)、準々決勝は全日本ジュニア王者川田歩実(修徳高2年)を「指導3」の反則(GS6:32)、準決勝は第1シードの前田千島(三井住友海上)を大内刈「技有」(GS7:58)で仕留めた。ここまで実に30分44秒を戦いぬいての決勝進出である。

立川は第2シードから大会をスタート。2回戦で阪部りり子(鹿屋体育大4年)を2分43秒支釣込足と大内刈の合技「一本」、3回戦で常見海琴(コマツ)を払巻込「技有」、準々決勝は郡司風花(帝京大4年)を内股「技有」優勢で破ると。勝負どころの準決勝は今季の学生王者武田亮子(龍谷大3年)の左背負投の潰れ際に右内股を突っ込んで、2分40秒に「技有」確保。これをテコに優勢勝ちを果たした。内尾とは対照的に、全試合を時間内に終わらせての決勝進出。

昨年高校3年生にして48kg級を制した芳田真(コマツ)が階級を上げて参加、しかし初戦で浅岡美名(淑徳大4年)に「指導2」対「指導3」で敗れて入賞には絡めなかった。

インターハイと全日本ジュニアを制した高校2年生川田歩実は、2回戦で今期の全日本実業個人2位の甫木実咲(JR東日本)にGS延長戦「指導3」、3回戦でもと学生王者の米田愛理子(埼玉県警察)に小内刈と隅落の合技「一本」と強豪を立て続けに下して堂々ベスト8まで勝ち進んだ。前述の通り準々決勝では内尾と10分超えの激戦を戦った末に敗退、これで力を使い果たしたか敗者復活戦は坪根菜々子(福岡大2年)に僅か53秒で小外掛と横四方固の合技「一本」で敗れたが、持ち味を十分に発揮した大会であった。

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決勝、立川が袖釣込腰から後隅に押し込むが、脚に手を触れてしまい2つ目の「指導」

【決勝】
内尾真子(自衛隊体育学校○GS反則[指導3](GS4:35)△立川莉奈(福岡県警察)

ともにしぶとさが売りの両選手による決勝は、右相四つ。立川は完全な左構えで試合をスタート、組み手争いの中から右釣り手一本で袖を流しての片手右袖釣込腰、そのまま体を沈めて片手の右体落でひとまず攻める。組み手不十分でもまず手数で先行しようといういかにも立川らしい組み立てだが、この形から投げる意志は汲み取れない。主審は的確に裁定、27秒立川に偽装攻撃の「指導」。

立川は両袖組み手から引き込み、巴投崩れの隅返、さらに両袖を絞り込んで座り込みの左体落と以後も手数の積み上げを狙った変化球で攻め続ける。さらに片手で低く右袖釣込腰一撃。ここからそのまま左肘で相手の腿を挟んで左後隅に押し込もうとするが、この際相手の下半身に触れたと判断され、1分35秒2つ目の「指導」失陥。早くも後がなくなってしまう。

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試合はGS延長戦へと突入。

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内尾の背負投。直後立川に3つ目の「指導」が宣告される。

あと1つの「指導」で勝利となる内尾は加速。まず片襟の右払腰、続いて引き手で襟、釣り手で奥襟の強気の組み手から右大外刈と技を積む。立川が抱きつくとこれを振り落とすが、この際自ら場外に出る動きがあったようで、映像チェックを経た2分33秒内尾に場外の「指導」。

以降は地力に勝る内尾が右背負投に小外刈、打点の高い右袖釣込腰で攻めて陣地を進める。しかし立川は残り1分から左手を背中に回しての左大腰に活路を見出して譲らず。試合はこのままGS延長戦へ。

内尾両襟で圧を掛けると立川頭を下がってしまうが、いったん上げると左大腰で打開。この後も内尾が担ぎ技で攻め、立川は両袖組み手で粘りながら機を見て左大腰の奇襲を見せるという展開が続く。GS2分17秒に内尾が右一本背負投を放ち、続く展開で立川が出足払フェイントから右袖釣込腰、ここから「モラエイ」ばりに背中で後隅に押し込まんとする動きを見せて、試合は大枠拮抗。

しかしこのあたりから地力の差が出始めたか。内尾がペースアップ。組み際の右大外刈、さらに大外刈から繋いでの右一本背負投、右の片襟背負投と有効打を重ね、続いて引き手で袖を折り込んでの奥襟確保、ここから右一本背負投と技を積む。内尾の攻撃で終わる展開が2度、3度と重なり立川は苦しい情勢。

続くGS4分30秒過ぎ、引き手から先に得た内尾が思い切った右背負投。投げ切らんと力を籠めるが、崩された立川先に立ち上がり、相手の立ち際に脚を差し込んで右内股の形で展開を終える。相手の攻めが強ければ必ず1回攻め返して自身の攻めに変換して終わる、立川最大の特徴である「試合を続ける能力」が端的に現れた場面であったが、審判団の目は的確だった。映像チェックを経、先に攻めて、かつ有効打で終えるシーンを続けていた内尾の攻勢を評価する格好でGS4分35秒立川に3つ目の「指導」。大消耗戦は内尾の勝利に終わった。

決勝の試合時間は8分35秒。内尾が5戦戦ってGS延長戦が4試合、総試合時間39分23秒いう凄まじい粘戦の末に講道館杯初優勝を達成した。

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52kg級メダリスト。左から2位の立川莉奈、優勝の内尾真子、3位の前田千島と武田亮子。

【入賞者】
優 勝:内尾真子(自衛隊体育学校)
準優勝:立川莉奈(福岡県警察)
第三位:武田亮子(龍谷大3年)、前田千島(三井住友海上)
第五位:坪根菜々子(福岡大2年)、郡司風花(帝京大4年)
第七位:川田歩実(修徳高2年)、柴田紗希(大阪府警察)

【グランドスラム大阪代表選手】
阿部詩(日本体育大1年)、志々目愛(了徳寺大職)、内尾真子(自衛隊体育学校)、前田千島(三井住友海上)

内尾真子選手のコメント
「きょうは1日厳しい戦いになりましたが、たくさんの方の応援を力に換えて勝つことが出来ました。長い試合でしたが、きついというよりも勝ちたいという気持ちの方が強かったです。もちろん『一本』で決められるのが最高の勝ち方ですが、泥臭く、なんとしてでも勝とうと一個一個技を積み重ねて戦いました。今年で8回目の挑戦ですがなかなか決勝まで上がることが出来なくて。きょうやっと頂点に立つことが出来て本当にうれしいです。52kg級は2人強い選手がいるので、まずそこに追いついて、自分もいるんだと少しづつアピール出来れば良いかなと思います。」

【準々決勝】
前田千島○合技[巴投・横四方固](3:56)△坪根菜々子
内尾真子○GS反則[指導3](GS6:32)△川田歩実
立川莉奈○合技[腰車・内股](2:19)△郡司風花
武田亮子○反則[指導3](3:53)△柴田紗希

【敗者復活戦】
坪根菜々子○合技[小外掛・横四方固](0:53)△川田歩実
郡司風花○小外掛(2:43)△柴田紗希

【準決勝】
内尾真子○GS反則[指導3](GS7:58)△前田千島
立川莉奈○優勢[技有・内股]△武田亮子

【3位決定戦】
武田亮子○GS技有・大内刈(GS5:16)△坪根菜々子
前田千島○合技[谷落・巴投](2:13)△郡司風花

【決勝】
内尾真子○GS反則[指導3](GS4:35)△立川莉奈

■ 57kg級 玉置桃が優勝、決勝は秘密兵器の左袖釣込腰で試合決める
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3回戦、玉置桃が渡部優花から左背負投「技有」

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3回戦、舟久保遥香が柳楽祐里から崩袈裟固「一本」

(エントリー37名)

【決勝まで】

決勝に進んだのは玉置桃(三井住友海上)と舟久保遥香(三井住友海上)の2人。第1シード選手と第2シード選手が順調に勝ち上がった形となった。

昨年のアジア大会王者・玉置はまず2回戦で黒木七都美(龍谷大4年)と対戦。初戦から難しい相手であったが、この試合をGS44秒「指導3」の反則で勝ち抜けると、3回戦は渡部優花(ALSOK)を1分30秒に奪った左背負投「技有」で破る。準々決勝は高校カテゴリの覇者中水流りり(渋谷教育学園渋谷)の挑戦を3分18秒腕挫十字固「一本」で退け、準決勝は全日本学生体重別2連覇者竹内鈴(東海大4年)を最終盤に抑え込み、縦四方固「技有」を得てそのまま終了のブザーを聞く。玉置らしいしぶとい戦いぶりで、しっかり決勝まで勝ち残った。

一方の舟久保はまず2回戦で古賀ひより(環太平洋大1年)と対戦、2分40秒しっかり横四方固「一本」で勝利を得る。3回戦は柳楽祐里(JR東日本)を3分43秒崩袈裟固「一本」に仕留め、準々決勝はしぶとい鶴岡来雪(コマツ)との消耗戦を11分4秒という長時間試合の末に「指導2」対「指導3」で制する。準決勝は柴田理帆(JR東日本)をこれも得意の崩袈裟固に捉えて3分38秒「一本」。全試合一本勝ち、4試合中3試合が抑込技による「一本」と持ち味をしっかり発揮して決勝の畳まで辿り着いた。

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2回戦、中水流りりが枠谷菜々から内股「一本」

注目選手が多すぎる階級だが、ここまででフォローできなかった選手たちについて少し触れておく。

今年の高校選手権とインターハイを制した中水流りりは全日本ジュニアで負った足の負傷癒えずも、前述の通り準々決勝まで勝ち残って7位入賞。世界カデ王者の江口凜(桐蔭学園高1年)は初戦でもと世界王者宇高菜絵(コマツ)からテクニカルファウルで2つの「指導」をリードしてあわやと思われたが、GS延長戦15秒の小外掛「一本」で沈んだ。宇高は準々決勝で竹内鈴に大外刈と隅落の合技「一本」で敗れ、中水流との敗者復活戦に一本勝ちして迎えた3位決定戦は柴田理帆に小外掛「技有」で苦杯。最終成績は5位だった。もう1試合の3位決定戦は鶴岡来雪が竹内鈴をGS延長戦「技有」で破って表彰台に上ることとなった。

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決勝、玉置が手先を纏めて右内股

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舟久保が得意の「腹包み」を狙うが玉置はがっちりガード。

【決勝】
玉置桃(三井住友海上)○GS技有・袖釣込腰(GS4:05)△舟久保遥香(三井住友海上)

ともに右組みの相四つ。玉置が相手の釣り手の袖口を強烈に絞り込み、舟久保が応じる形で両袖の攻防が続く。27秒、玉置に袖口を絞り込んだ咎による「指導」。追いかける立場となった玉置再びの両袖から巴投、さらに組み際に片襟を差しての右大内刈、次いで再び両袖の絞り合いから手先を前方に纏めての右内股と技を積む。一方の舟久保はなかなか技が出せないが、2分11秒に右釣り手で脇を差すことに成功、ここから玉置の左手を巻き込む形で右一本背負投崩れの大外刈に飛び込む。これがこの試合のファーストアタック、ようやく反撃開始である。

しかし玉置は続く展開で低い位置ながらも釣り手で前襟を得、粘り強くこれを持ち続けると左一本背負投を放って展開を一歩進める。横変形でこの技を迎え撃った舟久保揺るがずも、3分12秒舟久保に消極的の咎で「指導」。

奮起した舟久保、一瞬で奥襟を得ると小内刈からケンケンの大内刈、さらに支釣込足に繋いで玉置を伏せさせる。間髪入れずに寝勝負で腹を包むが、心得た玉置が耐え切って「待て」。ここで本戦4分が終了、試合はGS延長戦へ。

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延長開始早々、舟久保の大内刈に玉置は尻餅。しかしこれはノーポイント。

延長開始早々大きな山場。先ほどと同じく舟久保が一呼吸で釣り手で横襟を掴むと、嫌った玉置はこの釣り手を両手で押す形で右大外刈。舟久保が揺るがないと見ると下がった頭を戻しながら釣り手で背中を叩くが、この伸びあがった瞬間舟久保が右大内刈。刈り足が相手の脛の前面に当たってしまったがタイミングの良さ自体で玉置大崩れ、真裏にひっくり返る。ポイントの予感に場内沸き返るが、尻餅の判断でこれはスルー。玉置、命拾い。

これで警戒を強めた玉置、続く展開はしっかり釣り手を落として再び組み手に意識を傾ける。それでも徐々に舟久保が釣り手で襟を持てる場面が増えて来た印象だが展開は大きく動かず、GS1分6秒には双方に「取り組まない」咎による「指導2」。

以後も組み手争いが続くが、GS1分33秒に舟久保釣り手を肘下に入れての右大内刈、さらに「サリハニ」でいったん止めての組み手など持ち味が出始めた気配。GS2分43秒には奥襟から背中を掴んで背後に回り込み、玉置は前のめりに崩れて耐え「待て」。舟久保はさらに低いながらも釣り手で襟を得て右大内刈、大外刈と具体的な技も出始める。玉置内股巻込に潰れて展開を留保も、緩やかに流れは舟久保。

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玉置の左袖釣込腰が「技有」

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同門対決は先輩玉置の勝利に終わった。

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57kg級メダリスト。左から2位の舟久保遥香、優勝の玉置桃、3位の柴田理帆と鶴岡来雪。

しかし試合展開の文脈と関係なくチャンスを掴むのが玉置の真骨頂。GS4分、互いに絞り合った両袖組み手から玉置が左袖釣込腰。これは投げ切れなかったが虚を突かれた舟久保が深く侵入を許すと、手ごたえありと見た玉置間髪入れずに2発目の左袖釣込腰。股中に潜られた舟久保今度は外側へ体を運んで逃れたかに見えたが、その際右脚の爪先が玉置の腰に引っ掛かってしまう。回避運動はここで止められ、玉置が自ら縦回転するとこの爪先を支点にする形で舟久保もつられて回転。これは「技有」。

これまで1度も見せていない左袖釣込腰。しかも効くと見るや駆け引きなしに、躊躇なく思い切った二の矢。勝負勘の良さを見せつけた玉置が後輩舟久保を退けて今大会の頂点に立った。

【入賞者】
優 勝:玉置桃(三井住友海上)
準優勝:舟久保遥香(三井住友海上)
第三位:柴田理帆(JR東日本)、鶴岡来雪(コマツ)
第五位:宇髙菜絵(コマツ)、竹内鈴(東海大4年)
第七位:中水流りり(渋谷教育学園渋谷高3年)、西尾果連(山梨学院大1年)

【グランドスラム大阪代表選手】
芳田司(コマツ)、玉置桃(三井住友海上)、舟久保遥香(三井住友海上)、鶴岡来雪(コマツ)

玉置桃選手のコメント
「久々個人戦での優勝、今年に入って初めてのタイトルなのですごく嬉しいです。(舟久保は)後輩で一緒に稽古やトレーニングもしている中なのでお互い手の内もわかっている。試合前から楽しみでした。(決まり技となった左袖釣込腰は)練習ではあまり掛けずに見せないようにしていた技なので、今回掛かって良かったと思います。内容はまだまだ良かったとは言えない。気を引き締めて次に向かっていきたいです。自分の目指しているのは『積極性のある緻密な柔道』、これを譲らずに頑張っていきたい。」

【準々決勝】
玉置桃○腕挫十字固(3:18)△中水流りり
竹内鈴○GS合技[大外刈・隅落](GS1:08)△宇髙菜絵
舟久保遥香○GS反則[指導3](GS7:04)△鶴岡来雪
柴田理帆○優勢[技有・内股]△西尾果連

【敗者復活戦】
宇髙菜絵○合技[大外刈・肩固](2:44)△中水流りり
鶴岡来雪○袖釣込腰(3:26)△西尾果連

【準決勝】
玉置桃○優勢[技有・縦四方固]△竹内鈴
舟久保遥香○崩袈裟固(3:38)△柴田理帆

【3位決定戦】
柴田理帆○GS技有・小外掛(GS1:33)△宇髙菜絵
鶴岡来雪○GS技有・大内刈(GS4:39)△竹内鈴

【決勝】
玉置桃○GS技有・袖釣込腰(GS4:05)△舟久保遥香

■ 63kg級 鍋倉那美が優勝、3連覇挑んだ土井雅子を「指導」差で退ける
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準決勝、鍋倉那美が幸田奈々を大外刈「一本」

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2回戦、土井雅子が小柳穂乃果を縦四方固「一本」

【決勝まで】

決勝に進んだのは鍋倉那美(三井住友海上)と土井雅子(JR東日本)の2人。この階級も第1シード選手と第2シード選手が順当に決勝まで勝ち上がった形だ。

鍋倉は2回戦で塔本葵葉(鹿屋体育大3年)を2分6秒上四方固「一本」で下す良い立ち上がり。3回戦は岡田萌(山梨学院大2年)を1分52秒腕挫十字固「一本」に斬り落とし、勝負どころと目された準々決勝は津金恵(パーク24)をGS延長戦の末に変則の谷落(※公式記録は隅落)「技有」で下す。迎えた準決勝は激戦ブロックを勝ち上がって来た第4シード選手幸田奈々(帝京科学大4年)を開始46秒大外刈「一本」に仕留める快勝。常に比べて落ち着いた、これが仕事といわんばかりの戦いぶりが印象的。堂々の決勝進出である。

3連覇を狙う土井はこの日も得意の寝技を前面に押し出しての勝ち上がり。2回戦は小柳穂乃果(龍谷大3年)を3分31秒縦四方固「一本」、3回戦は小齊穂奈美(富士学苑高2年)をこれも3分52秒縦四方固「一本」に仕留め、準々決勝でも全日本ジュニア2連覇者浦明澄(日本体育大1年)から貫録の縦四方固「一本」。準決勝は山本杏(パーク24)を3分46秒「指導3」対「指導1」で押し切って試合を決め、今年も決勝の畳へ駒を進めることとなった。

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2回戦、朝飛七海が明石ひかるから隅落「技有」

昨年度大会70kg級2位、今大会から階級を下げてエントリーの朝飛七海(横浜桐蔭大2年)は初戦で難敵明石ひかる(筑波大2年)にGS延長戦の隅落「技有」で勝利も、3回戦は佐藤史織(ミキハウス)の壁を突破出来ず背負投「技有」で敗戦。入賞はならなかった。70kg級時代は強気の柔道が売り、力自慢の田中志歩ともがっぷり組み合って勝負し続け、たとえ超級選手が相手でも奥襟を叩き合うパワーファイトに活路を見出して来た朝飛だが、この日は同階級選手にも圧が効き切らず。体重が特徴を発揮できる閾値を下回ってしまった印象だった。

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決勝は右相四つ、相手の釣り手を絞り合う厳しい組み手争いが続く。

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土井が鍋倉の突進に右内股を合わせる。

【決勝】
鍋倉那美(三井住友海上)○GS反則[指導3](GS6:56)△土井雅子(JR東日本)

右相四つ。互いに相手の釣り手の袖を絞り込んで両袖となっての攻防、動きのないまま時間が過ぎる。33秒に、双方に袖を絞り込んで防御を続けた咎で「指導」。

続いて鍋倉が奥襟を叩きながらの大内刈を空振り、土井は釣り手で前襟を掴んで膝裏に右小外刈を入れ、双方試合を動かさんとする構え。しかし攻防はまたもや相手の釣り手を制しあっての両袖絞り合いに収着、横変形のまま動きが止まって1分38秒双方に消極的との咎で2つ目の「指導」。試合時間2分22秒を残してともにスコア上後がなくなってしまう。

以後も厳しい組み手争い。土井は鍋倉の前進に合わせて両袖を纏めての内股を2度、鍋倉もいったん前に追い込んでおいての両袖内股と互いに技を見せるがいずれも決定打にはならず。土井が得意の寝技に持ち込むチャンスもないまま時間が過ぎ去り、またもや双方が両袖を絞り合った形で終了のブザーが鳴り響く。試合はGS延長戦へ。

GS41秒、土井が引き手の袖を押しこんで鍋倉を潰し、この試合初めての寝勝負で攻める。この横三角は決まらなかったが、土井は1分29秒にも片襟の右小内刈で鍋倉を場外まで弾き出して緩やかに攻勢。鍋倉の釣り手管理が甘くなり始めたこともあり、GS2分に差し掛かるあたりから低いながらも釣り手で襟を持ち、主導権を得始める。組み手で不利をかこち始めた鍋倉は前進することでなんとか展開を留保。土井はGS2分11秒に巴投、2分27秒には場外に押し出されながらも内股、3分0秒には片襟の小外刈から右小内刈と繋いで鍋倉を場外まで押し出し、この時間帯の主導権を掌握。鍋倉4分には手を放しての内股で場外に逃れ、巴投でひとまず展開を切る苦しい進退。あと一歩の攻めの積み上げあれば鍋倉に3つ目の「指導」付与があり得る満水状態が長い時間続く。

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展開を得た鍋倉は突進、土井を場外際まで追い詰める。

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直後土井に3つ目の「指導」

GS6分に差し掛かるところで鍋倉の右袖釣込腰を潰した土井が背中について「横三角」。しかしこれも取り切れず「待て」となると、肚を決めたか鍋倉が反撃開始。6分30秒にまず奥襟を叩いておいての巴投で横に転がす惜しい一撃を見舞うと、続く展開でも徹底前進。引き手で袖、釣り手で奥襟を叩いて押し込むと圧をまともに受けた土井は試合場の隅に追い詰められたまま頭が下がる。踏みとどまって前進は止めたものの前屈した姿勢のまま耐え続けることとなってしまい、鍋倉に前に引き落とされて膝を着いたタイミングで主審が試合に介入。GS6分56秒、土井に消極的との咎で3つ目の「指導」が与えられて試合終了。鍋倉、講道館杯初優勝なる。

3つ目の「指導」を得るまでの鍋倉の優位は2シークエンス、土井の寝技で終わった展開の直前の攻めから起算しても3シークエンスのみで、印象としては刹那的。一方の土井はGS2分過ぎから1分半近くにわたって主導権を得て幾度も3つ目の「指導」に手を掛けていたが、優位を作った時間帯の深さが勝負を分けた格好だ。土井にあと1歩の積み上げが足りなかったこと、そして鍋倉が不利な状況でも前進を続けてひとまず展開を留保した我慢が最後に大きく影響することとなった。

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63kg級メダリスト。左から2位の土井雅子、優勝の鍋倉那美、3位の山本杏と幸田奈々。

【入賞者】
優 勝:鍋倉那美(三井住友海上)
準優勝:土井雅子(JR東日本)
第三位:山本杏(パーク24)、幸田奈々(帝京科学大4年)
第五位:津金恵(パーク24)、浦明澄(日本体育大1年)
第七位:佐藤史織(ミキハウス)、山口葵良梨(大牟田高3年)

【グランドスラム大阪代表選手】
田代未来(コマツ)、鍋倉那美(三井住友海上)、土井雅子(JR東日本)、幸田奈々(帝京科学大4年)

鍋倉那美選手のコメント
「優勝しか目指していなかったので、凄く嬉しいです。相手も強い選手なので本当に苦しかったんですが、三井住友海上をはじめ観客席の皆さまの応援が力になりました。ありがとうございました。前の試合で先輩が長い試合を制して勝ったので、私も負けずに頑張りました。グランドスラムで負けてからずっと2位ばかりで、ゴールデンスコアでも勝てないことが多く悔しい思いをしていたので、厳しい戦いを勝つことが出来て良かったです。東京オリンピック、最後まであきらめずに食らいついて頑張ります。」

【準々決勝】
鍋倉那美○GS技有・隅落(GS0:16)△津金恵
幸田奈々○GS技有・大内刈(GS0:53)△佐藤史織
土井雅子○GS縦四方固(GS1:43)△浦明澄
山本杏○一本背負投(0:26)△山口葵良梨

【敗者復活戦】
津金恵○GS技有・小内刈(GS0:20)△佐藤史織
浦明澄○GS袈裟固(GS1:59)△山口葵良梨

【準決勝】
鍋倉那美○大外刈(0:46)△幸田奈々
土井雅子○反則[指導3](3:46)△山本杏

【3位決定戦】
山本杏○GS反則[指導3](GS0:47)△津金恵
幸田奈々○合技[出足払・肩固](0:59)△浦明澄

【決勝】
鍋倉那美○GS反則[指導3](GS6:56)△土井雅子

※ eJudoメルマガ版11月12日掲載記事より転載・編集しています。

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