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【レポート】2019年度講道館杯全日本柔道体重別選手権マッチレポート②第1日女子3階級

(2019年11月11日)

※ eJudoメルマガ版11月11日掲載記事より転載・編集しています。
2019年度講道館杯全日本柔道体重別選手権マッチレポート②第1日女子3階級
(70kg級、78kg級、78kg超級)
→女子7階級全試合結果(eJudoLITE)
→女子7階級プレビュー
→女子第1日速報ニュース

文責:古田英毅
撮影:辺見真也/eJudo編集部

■ 70kg級 田中志歩が2連覇、準決勝では新添左季に「一本」で完勝
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70kg級2回戦、宇野友紀子が大野陽子からGS延長戦の末に隅落「技有」で勝利。

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2試合一本勝ちの朝飛真実だが、準々決勝では新添左季の払巻込「技有」に沈んだ。

(エントリー31名)

【決勝まで】

第1シードの大野陽子(コマツ)が早々に陥落。2回戦の宇野友紀子(JR東日本)戦でともに「指導2」を失って迎えたGS4分48秒、内股を返されて隅落「技有」を奪われ、失意の初戦敗退に終わった。これまでの実績からグランドスラム大阪代表には選ばれたものの、評価の大幅ダウンは避けられない情勢。苦しい戦いが続く。

10月の世界ジュニア制覇をはじめ今季ジュニアカテゴリ以下で全勝の朝飛真実(桐蔭学園高3年)は2試合を一本勝ちして準々決勝でアジア大会王者・新添左季(自衛隊体育学校)に挑戦。しかしこの試合は新添の規格外の手足の長さと力に苦戦、「指導2」を失った末に残り15秒に食らった払巻込をさばき切れずに「技有」失陥。ここで本戦トーナメントから脱落した。朝飛は杉山歌嶺(桐蔭横浜大4年)との敗者復活戦も払腰「一本」で落とし、最終成績は7位だった。

決勝に進んだのは宇野友紀子と田中志歩(環太平洋大3年)の2名。

宇野は1回戦で山本楓(徳島県警察)を一本背負投「一本」で破ると、前述の通り2回戦は大野陽子を破る殊勲。準々決勝は寺田宇多菜(桐蔭横浜大3年)を隅落「技有」の優勢で下し、準決勝は試合最終盤に青柳麗美(環太平洋大4年)の内股の潰れ際を押し込み返しての隅落「技有」優勢で勝ち抜ける。見事初めての講道館杯決勝に駒を進めることとなった。

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新添と田中志歩による準決勝

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田中が新添の大内刈をきっかけに自らの大内刈に繋いで抱き落とし「一本」

連覇を狙う田中は第3シードで試合をスタート。赤嶺麻佑(沖縄県警察)との初戦はGS延長戦1分43秒の大腰「技有」で勝利、2回戦は佐藤みずほ(三井住友海上)をこれもGS延長戦の末に小外掛「技有」で突破。準々決勝は今季の学生王者杉山歌嶺との長い延長戦を肩車「技有」(GS4:17)で制し、大一番である新添左季との準決勝を迎える。新添はここまで安松春香(JR九州)を1分48秒小内刈と袈裟固の合技「一本」で一蹴、遠藤沙季(仙台大3年)を1分13秒払腰「一本」、そして前述の通り朝飛真実を払腰「技有」優勢で下して充実の出来。
この準決勝は左相四つ。双方相譲らぬ攻め合いが続き試合時間は8分を超えたが、GS4分26秒に新添が左大内刈。これを引き手で背中を抑えた田中が時計回りに捩じり返し、自身の左大内刈に変換する形で抱き落として「一本」。事実上の決勝と目された大一番を見事制した田中が今年もファイナリストの座を勝ち得ることとなった。

新添は3位決定戦に回り、世界カデ代表の桑形萌花(須磨学園夙川高2年)から内股「技有」を得て勝利。高く脚を差し上げ、耐えさせておいて自ら縦回転。最後は脚で相手の体を押して回し切った。桑形は準々決勝で敗れたライバル朝飛同様、新添の規格外の手足の長さとパワー、そして後からインパクトがやってくる独特の間合いをさばき切れずにポイント失陥。若い世代のスター2人に立ちはだかったシニア強化選手・新添の「やりにくさ」が際立つ結果となった。

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決勝、宇野は低い前技で手数を積む

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GS延長戦に至っても試合は拮抗が続く

【決勝】
田中志歩(環太平洋大3年)○GS反則[指導3](GS3:54)△宇野友紀子(JR東日本)

宇野が右、連覇を狙う田中が左組みのケンカ四つ。
環太平洋大の先輩後輩、互いをよく知る同士の試合の様相は厳しい組み手争い。宇野は下から釣り手を突く形を徹底、これをベースに引き手争いで大枠優位に立つ。田中は釣り手で上から肘を載せ、あるいは背中を掴んで距離を詰めようとするが、宇野は引き手で袖を与えれば釣り手を整え、釣り手で陣地を譲れば一方的に引き手で袖の外側を掴んで、と決して相対的優位を崩さない。38秒には低い左体落で潰れて先制攻撃。この宇野による「組み手で優位を作っては低い技で先手攻撃」という戦術構成がこの試合の基調となる。1分29秒に宇野が前に出ると田中まっすぐ畳を割って場外の「指導1」。田中以後低い体落、さらに思い切った内股と技を出すが、組み勝っている宇野はいずれの攻撃も先に間を詰めることでインパクトを潰して揺るがず。機を見ては左一本背負投も繰り出して試合を引っ張る。

しかし終盤に田中が両襟から釣り手で後帯を掴むことに成功すると、宇野は前傾したまま歩を進め、自ら前にべしゃりと潰れる形で試合を切ってしまう。押された田中が場外に出、3分12秒主審は宇野に「押し出し」による「指導1」を宣告。ここでスコアはタイとなる。このまま4分間が終了し、試合はGS延長戦へ。

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宇野が組み際に痛恨の掛け潰れ

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「指導3」で勝敗が決した

GS42秒、膠着を打開せんと田中が相手の右へ思い切った横落。力のこもった技であったが深く入り切れず宇野は揺るがない。田中小外刈を膝裏に入れて相手を止める「外サリハニ」とでも言うべき動きから左内股に繋ぐが、これも組み勝っている田中が姿勢を低くして防御し、効かず。GS延長戦2分を過ぎても、宇野の相手の組み手を少しずつ上回るという基調はしっかり継続。局地戦では田中が有利を得ても、総体の情勢にこれが反映しない。しかしここから再び引き手争いが繰り広げられるとさすがに試合を動かさざるを得ない主審はGS2分42秒、双方に「取り組まない」咎の「指導2」を宣告。
ともに後がなくなったこの状況で、3分35秒の組み際に宇野が相手と掌が触れるなり右払巻込の形で低く潰れる。田中が組みに来たと確信したかのような技であったが実際のコンタクトはなし。両手を離して畳に潰れた宇野の行為にエクスキューズはなく、主審は偽装攻撃の咎で「指導3」を宣告。これで試合が終わった。

宇野の練れた組み手に怖じず、背中、奥襟と手立てを繰り出しながらひたひたと前に詰めた田中の我慢勝ちという形。宇野は、組み手で優位を取っては低く先手攻撃という戦略を崩さぬまま、まさにその低い先手攻撃を失敗して自滅。形としては独り相撲となってしまった。

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70kg級メダリスト。左から2位の宇野友紀子、優勝の田中志歩、3位の新添左季と杉山歌嶺。

【入賞者】
優 勝:田中志歩(環太平洋大3年)
準優勝:宇野友紀子(JR東日本)
第三位:新添左季(自衛隊体育学校)、杉山歌嶺(桐蔭横浜大4年)
第五位:桑形萌花(須磨学園夙川高2年)、青柳麗美(環太平洋大4年)
第七位:寺田宇多菜(桐蔭横浜大3年)、朝飛真実(桐蔭学園高3年)

【グランドスラム大阪代表選手】
新井千鶴(三井住友海上)、田中志歩(環太平洋大3年)、新添左季(自衛隊体育学校)、大野陽子(コマツ)

田中志歩選手のコメント
「うれしいです。(-決勝はいかがでしたか?)環太平洋大の先輩で、力が強く組み手が巧い。釣り手を制されて苦しかったですが、先に攻めることを意識して、冷静に戦おうと思っていました。グランドスラム大阪で優勝してその先に行けたらいいなと思います。」

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3位決定戦、新添左季が桑形萌花から内股「技有」

【準々決勝】
宇野友紀子○優勢[技有・隅落]△寺田宇多菜
青柳麗美○大外刈(3:15)△桑形萌花
新添左季○優勢[技有・払巻込]△朝飛真実
田中志歩○GS肩車(GS4:17)△杉山歌嶺

【敗者復活戦】
桑形萌花○GS反則[指導3](GS3:59)△寺田宇多菜
杉山歌嶺○払腰(1:22)△朝飛真実

【準決勝】
宇野友紀子○優勢[技有・内股透]△青柳麗美
田中志歩○GS大内刈(GS4:26)△新添左季

【3位決定戦】
新添左季○優勢[技有・内股]△桑形萌花
杉山歌嶺○GS技有・大内返(GS1:22)△青柳麗美

【決勝】
田中志歩○GS反則[指導3](GS3:54)△宇野友紀子

■ 78kg級 梅木真美がしっかり優勝、新鋭和田梨乃子が決勝まで勝ち上がる健闘
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準々決勝、佐藤瑠香が和田梨乃子から小外掛「技有」。しかしこの一撃は勝利に結びつかず。

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「指導3」で和田に凱歌が上がった。

(エントリー30名)

【決勝まで】

復権を目指す佐藤瑠香(コマツ)がベスト4に残れず。世界ジュニア2連覇者和田梨乃子(三井住友海上)を畳に迎えた準々決勝は開始57秒で「指導2」失陥も、1分21秒に小外掛「技有」を奪って持ち直す。しかし序盤の消極姿勢が祟り、2分39秒に相手の下半身に触れるミスを犯して痛恨の「指導3」失陥。これで本戦トーナメントから脱落することとなった。戦術的な失敗を攻撃力の高さで糊塗して来た、佐藤の来し方が凝集されたような経過の試合となってしまった。

以降は平野友萌(富士学苑高2年)を大外刈「一本」、そして泉真生(コマツ)を総試合時間9分を超える消耗戦の末に「指導2」対「指導3」で破って3位に滑り込んだが、グランドスラム大阪代表最後の1枠に選ばれたのは直接対決で破ったはずの泉。代表発表会見では強化サイドから選考全体に2020年以降を見据えてのパースペクティブがあること、そして「既に何度もチャンスがあったが結果が出し切れていない(註:無差別1回を含め4度世界選手権に出場、メダルなし)」旨の評価が示される厳しい状況。2009年から8回出場して来た日本開催のグランドスラム出場の権利をついに失うとともに、2020年東京五輪代表の芽も事実上潰えた。

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準々決勝、梅木真美が佐々木ちえから小外掛「一本」

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準決勝、和田が髙山莉加から隅落「技有」

決勝に進んだのは梅木真美(ALSOK)と和田梨乃子の2名。

第1シードの梅木は2回戦で吉田菜美(山梨学院大2年)を1分48秒小外掛と縦四方固の合技「一本」に仕留める好スタート。準々決勝は今季の学生王者佐々木ちえ(東京学芸大2年)から「指導」2つを一方的に奪うと、最後は2分39秒貫録の小外掛「一本」。勝負どころの準決勝も泉真生を3分23秒「指導1」対「指導3」の反則累積で退け、しっかり決勝進出決定。

一方の和田は1回戦で脇田麻誇(福岡大4年)を抑え込み、中途で1度「解けた」を貰ったものの横四方固で2つ「技有」を奪う形の合技「一本」(1:18)で快勝スタート。2回戦は昨年のインターハイ王者長谷川瑞紀(近畿大1年)を1分25秒小外掛と横四方固の合技「一本」で退け、準々決勝は前述の通り佐藤瑠香を「指導3」で食ってベスト4入り。準決勝は優勝候補の第3シード選手、同門の先輩髙山莉加(三井住友海上)を中盤に奪った隅落「技有」で破り、見事講道館杯決勝進出の栄を得ることとなった。

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決勝、接近戦志向の梅木は強気の技を連発。

【決勝】
梅木真美(ALSOK)○小外掛(3:30)△和田梨乃子(三井住友海上)

左相四つ。梅木両襟から引き手で袖、釣り手で奥襟の完璧な組み手を作り出して迫力の寄せ。和田は押し返して距離を取ろうとするが梅木はあくまで譲らず、にじり寄る。最初のシークエンスは梅木の前進圧力を和田が左内股の形で反転して逃がし、場外に出でて、「待て」。

以後も梅木はまず右構えで引き手で襟を取り、次いで左にスイッチする王道の組み立てで奥襟と袖を掴んで寄せ続ける。距離が詰まるとやや横変形にずれ、思い切った左大外刈で和田を場外に弾き出し「待て」。梅木はこの後も同じ形で圧を掛け続け、和田が引き手で釣り手を絞り落とすと大外巻込の形に踏み込むことで外し、さらに再び奥襟を掴む超積極姿勢。1分半、梅木が奥襟を叩くと和田左大内刈で応じるが、梅木は時計回りに体を捌いて正対しなおすと右小外掛に踏み込み、この足を軸足にして左大外刈。大技から大技に繋ぐ迫力の攻めで、試合のステージは梅木の技がいつ決まるかに移り始めた感あり。続く展開でも奥襟を叩いて間合いを詰めるなり左大外刈、和田なんとか耐えるが直後の2分40秒には和田に1つ目の「指導」。

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梅木の左小外掛が決まり「一本」で試合終了。

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梅木の左大内刈を和田が捩じり返してもろとも潰れるという攻防一合を経た続く展開、梅木は釣り手を肩越しクロスに入れて相手を止めると、手を戻すなり二の矢で奥襟をガッチリ掌握。和田逃げずに払釣込足の形で前に踏み込みながら作用足を上げるが、前進を止めぬ梅木の前に上半身が反りかえってしまう。梅木この機を逃さず首を抱えて突進、和田それでも左大内刈に切り返さんとする動きを見せるが後退しながらでは力が籠められず、梅木が左小外掛で包み込むと仰け反った姿勢のまま畳に真っ逆さま。梅木の体の下で畳に埋まり、主審は迷わず「一本」を宣告。

アスタナ世界選手権優勝時を彷彿とさせる接近と掌握の連続。梅木、素晴らしい内容で2年連続3度目の講道館杯制覇を成し遂げた。

世界ジュニア王者の和田は格の違いを見せつけられた形だが、半端に試合を拾いに行くのではなく、投げにチャンスを見出して堂々組み合いに応じた試合姿勢は見事。この後の成長が楽しみである。

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78kg級メダリスト。左から2位の和田梨乃子、優勝の梅木真美、3位の髙山莉加と佐藤瑠香。

【入賞者】
優 勝:梅木真美(ALSOK)
準優勝:和田梨乃子(三井住友海上)
第三位:髙山莉加(三井住友海上)、佐藤瑠香(コマツ)
第五位:佐々木ちえ(東京学芸大2年)、泉真生(コマツ)
第七位:梅津志悠(三井住友海上)、平野友萌(富士学苑高2年)

【グランドスラム大阪代表選手】
濵田尚里(自衛隊体育学校)、梅木真美(ALSOK)、和田梨乃子(三井住友海上)、泉真生(コマツ)

梅木真実選手のコメント
「優勝することが出来てとてもうれしいです。東京を考えるとここは絶対に勝ちたかったですし、ずっともう一歩で勝てなかった自分を超えたいと思っていました。先生や家族が応援してくれる声にも応えたかったです。(-出来は何点ですか?)・・・まだまだなので。ここから頑張りたいです。グランドスラム大阪では、来年のオリンピックに出るのは自分だという強い気持ちを持って、一つ一つ歩んでいきたい。」

【準々決勝】
梅木真美○小外掛(2:39)△佐々木ちえ
泉真生○小外掛(1:51)△梅津志悠
和田梨乃子○反則[指導3](2:39)△佐藤瑠香
髙山莉加○巴投(2:21)△平野友萌

【敗者復活戦】
佐々木ちえ○GS技有・小外刈(GS5:41)△梅津志悠
佐藤瑠香○大外刈(2:35)△平野友萌

【準決勝】
梅木真美○反則[指導3](3:23)△泉真生
和田梨乃子○優勢[技有・隅落]△髙山莉加

【3位決定戦】
髙山莉加○GS払腰(GS4:32)△佐々木ちえ
佐藤瑠香○GS反則[指導3](GS1:13)△泉真生

【決勝】
梅木真美○小外掛(3:30)△和田梨乃子

■ 78kg超級 冨田若春初優勝、堂々グランドスラム大阪に進出
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1回戦、山部佳苗が中原爽から払腰「一本」

(エントリー29名)

【決勝まで】

第1シードの稲森奈見(三井住友海上)が初戦敗退。浜未悠(環太平洋大4年)を畳に迎えた2回戦で、残り50秒に内股「技有」失陥。浜の独特のリズムに受けが噛み合わず、突如試合を壊してしまった。以後は追い掛ける展開における手立ての不足を露呈する形でエンジンをふかし切れず、残り11秒に「指導2」までを得るのが精一杯。今大会は入賞に絡めず、グランドスラム大阪の代表からも零れ落ちることとなった。

連覇を狙う秋場麻優(環太平洋大4年)もこのところの停滞から抜け出せず、2回戦で井上舞子(警視庁)にGS横四方固「一本」で苦杯。

第1シードの稲森奈見(三井住友海上)が初戦敗退。浜未悠(環太平洋大4年)を畳に迎えた2回戦で、残り50秒に内股「技有」失陥。浜の独特のリズムに受けが噛み合わず、突如試合を壊してしまった。以後は追い掛ける展開における手立ての不足を露呈する形でエンジンをふかし切れず、残り11秒に「指導2」までを得るのが精一杯。今大会は入賞に絡めず、グランドスラム大阪の代表からも零れ落ちることとなった。

連覇を狙う秋場麻優(環太平洋大4年)もこのところの停滞から抜け出せず、2回戦で井上舞子(警視庁)にGS横四方固「一本」で苦杯。

決勝に進んだのは山部佳苗(ミキハウス)と冨田若春(コマツ)の2名となった。

山部はこの日好調。初戦は中原爽(福岡大2年)を2分20秒コーナーに追い詰めるなり得意の「回り払腰」で鮮やか「一本」。2回戦は今季の世界カデ代表・八巻衣音(広陵高3年)をこれも見事な払腰「一本」と全盛期を思わせる技の切れ味。準々決勝は第4シードの井上あかり(JR東日本)を3分49秒「指導3」の反則で撃破し、準決勝はここまで実業王者橋本朱未(コマツ)と浜未悠を倒して来た世界ジュニア王者高橋瑠璃(山梨学院大1年)をGS延長戦1分33秒「指導3」対「指導2」で退ける。実に9年ぶりの優勝を目指して、見事決勝進出決定。

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準決勝、冨田若春が児玉ひかるから体落「一本」

一方、7月のグランプリ・ブダペストでワールドツアー初出場初優勝を飾って意気揚がる冨田は第2シード。2回戦は町純香(光仁会病院)を試合時間僅か36秒の袖釣込腰「一本」に沈め、準々決勝は粂田晴乃(筑波大3年)をGS延長戦2分52秒「指導3」の反則で退ける。今季の学生王者児玉ひかる(東海大1年)を畳に迎えた注目の準決勝は、児玉の中途半端な左内股を透かすなり鮮やか右体落「一本」。皇后盃準々決勝での対戦(※冨田が内股透「一本」)に続いてジュニア世代のホープをまったく寄せ付けず、素晴らしい出来で決勝の畳へ駒を進めることとなった。

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決勝、冨田は思い切った担ぎ技で主導権を得る

【決勝】
冨田若春(コマツ)○GS反則[指導3](GS3:14)△山部佳苗(ミキハウス)

ともに右組みの相四つ。山部がまず釣り手を高く持ち、すかさずこれを落とした冨田が左一本背負投に潜り込むという攻防から試合がスタート。潰した山部すかさず「腰絞め」を試みるがこれは冨田が両手で袖を引き落としてしっかり耐え「待て」。続く展開もまず右大外刈、さらに右袖を両手で押し込んでの右背負投と冨田の攻めで攻防が切れ、主審ここで山部に消極的との咎で「指導」を宣告。経過時間は44秒。

山部は両襟を掴んで激しく前に出、細かく足技を打ちながらチャンスを探す。しかし冨田は釣り手を相手の肘の上に載せて展開を制し、1分30秒には組み手争いの間隙を縫って右袖釣込腰を2連発。山部は直後引き手で一方的に袖を掴んで前に出るが、冨田は間合いを詰めさせぬまま相手の腕が伸び切るところまで後退、さらに一歩引いてこれをあっさり切り離してしまう。前に出る山部に対して冨田が場外を背負わされ、回り込んでこれを回避したところで主審が試合を止め、2分24秒双方に片手の「指導」。これで山部の反則累積は「2」となり形上後がなくなる。

奮起した山部前に出て低く右払腰、応じた冨田は左一本背負投でいったん展開を切る。山部のラッシュは30秒ほどでいったん終息するが、「待て」を貰うと再開直後突如激しく突進。虚を突かれたか冨田思わずまっすぐ畳を割ってしまい、3分30秒冨田に場外の「指導2」。これで双方のスコアが並ぶ。以後は組み手の取り合いのまま本戦4分が終了し、試合はGS延長戦へ。

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延長戦に入ると山部が加速

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冨田の袖釣込腰。山部は肘が極まったとアピールしたが、直後「指導3」で冨田の勝利が決まった。

延長が始まるなり山部奥襟を叩いて突進、冨田がこれを切ると構わず片襟の右大外刈を2度、3度と見せる。これは掛け潰れたが強烈な先制攻撃。しかし冨田は右袖釣込腰、右外巻込、さらに左背負投を打ち込んですぐさま展開を取り戻す。GS1分37秒、山部が激しく前に出ると冨田が吸い込まれるように右払腰、これを山部が左小外掛の形の谷落で返さんとするという見せ場が訪れるが、ここは冨田がたたらを踏んだのみで山部が畳に落ちて「待て」。GS延長戦開始以来の山部の攻勢はこの場面を過ぎると明らかに退潮。2分14秒に冨田が片手の内股を閃かせた直後には審判団がインカムを経由して合議を持った気配。これは流されたが、冨田はここから出足払に左一本背負投、右の「小内払い」からの左背負投、さらに相手の前進に合わせた片襟の右背負投と4度自分の攻撃で展開を終える。直後の「待て」は続行の判断が下されたが、続く展開も互いの大外刈のぶつかり合いを経て、冨田があと一息とばかりに右外巻込で展開を切る。

危機を感じた山部両襟で組み止めるが、冨田はその肘を外側から押す形で右袖釣込腰。この技も掛け潰れたが冨田の攻撃で終わる展開が6度続いたこととなる。山部は肘を抑えて、関節を極める形での投技の反則をアピールするがこれは形上整合性なし。主審は映像チェックを経て山部に3つ目の「指導」を宣告。試合時間はGS3分14秒、これで冨田の初優勝が決まった。

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78kg超級メダリスト。左から2位の山部佳苗、優勝の冨田若春、3位の児玉ひかると粂田晴乃。

【入賞者】
優 勝:冨田若春(コマツ)
準優勝:山部佳苗(ミキハウス)
第三位:児玉ひかる(東海大1年)、粂田晴乃(筑波大3年)
第五位:井上あかり(JR東日本)、髙橋瑠璃(山梨学院大1年)
第七位:浜未悠(環太平洋大4年)、井上舞子(警視庁)

【グランドスラム大阪代表選手】
素根輝(環太平洋大1年)、朝比奈沙羅(パーク24)、冨田若春(コマツ)、児玉ひかる(東海大1年)

冨田若春選手のコメント
「去年1回戦負けで悔しい思いをしてここまで頑張って来たので、今日優勝してホッとしています。決勝はここで絶対自分が勝つんだ、気持ちだけでは負けない、とがむしゃらにやりました。最終的には『指導』での勝ちになってしまったので、しっかり投げ切れるようにしないといけない。今年は色々な経験をさせてもらった、それを生かしていかねばと思います。やっとスタートラインに立てたと思うので、これから頑張りたい。」

【準々決勝】
髙橋瑠璃○GS反則[指導3](GS4:45)△浜未悠
山部佳苗○反則[指導3](3:49)△井上あかり
冨田若春○GS反則[指導3](GS2:52)△粂田晴乃
児玉ひかる○大外刈(0:51)△井上舞子

【敗者復活戦】
井上あかり○反則[指導3](3:14)△浜未悠
粂田晴乃○GS反則[指導3](GS4:30)△井上舞子

【準決勝】
山部佳苗○GS反則[指導3](GS1:33)△髙橋瑠璃
冨田若春○体落(1:56)△児玉ひかる

【3位決定戦】
児玉ひかる○GS横四方固(GS1:40)△井上あかり
粂田晴乃○不戦△髙橋瑠璃

【決勝】
冨田若春○GS反則[指導3](GS3:14)△山部佳苗

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