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【プレビュー】グランドスラム・ブラジリアきょう開幕、100kg超級は影浦心が初戦でリネールに挑戦

(2019年10月6日)

※ eJudoメルマガ版10月5日掲載記事より転載・編集しています。
【プレビュー】グランドスラム・ブラジリアきょう開幕、100kg超級は影浦心が初戦でリネールに挑戦
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テディ・リネールが参戦。7月のGPモントリオールに続き、新設大会の目玉としての登場。

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ついにリネール挑戦の機会を得た影浦心

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57kg級の第1シードは地元ラファエラ・シウバ。

今年から新設されたグランドスラム・ブラジリア大会がきょう6日から、ブラジルの首都ブラジリアで55か国317名の選手が集って行われる。ドロー(組み合わせ抽選)は5日に行われ、即日発表された。

→グランドスラム・ブラジリア組み合わせ

全体としては、世界選手権で活躍し切れなかった選手、あるいはギリギリで出場かなわなかった強豪国の2番手選手がエントリーの中心。一部例外はあるが、多くの選手が冬季シーズンにやってくる五輪代表争い本番に向けた「作り」と位置付けて参加する大会、と理解しておいて間違いなさそうだ。

そんな中にあって飛び抜けて面白い階級が男子100kg超級。第1シードは東京世界選手権で金メダルを獲得したばかりのルカシュ・クルパレク(チェコ)、そして同大会を欠場した絶対王者テディ・リネール(フランス)がエントリーを為したのだ。7月のグランプリ・モントリオールにおける大熱戦はファンの記憶に新しいところ、リネールにとってはまったく油断のならない戦いである。加えて、リネールの初戦には日本代表の影浦心(日本中央競馬会)が配された。リネールはかねてより左組みの相手、かつ担ぎ技系を苦手にしているという観察があり、これに嵌るタイプの影浦をリネールに当てることは、日本の強化陣にとってもおそらく長年の宿願であったはず。いったいどのような戦いになるのか、勝敗はもちろんその内容から決して目が離せない。

男子は90kg級も熱い。ともに世界選手権は不首尾に終わったニコロス・シェラザディシヴィリ(スペイン)とイワン=フェリペ・シルバ=モラレス(キューバ)の2018年度世界選手権金銀メダリストコンビが第1シードと第2シードを張り、さらに2017年度世界王者で今年も銅メダルを獲得したネマニャ・マイドフ(セルビア)が参戦。先日のグランプリ・タシケントでベイカー茉秋(日本中央競馬会)を破って優勝したマーカス・ナイマン(スウェーデン)もエントリーし、上位対戦は相当なレベル。81kg級はもっか絶好調の永瀬貴規(旭化成)の連勝続くかどうかに世界の目が注がれる。

女子はなんと言っても57kg級が面白い。第1シードのラファエラ・シウバ(ブラジル)と気鋭の新人サハ=レオニー・シシク(フランス)が戦うであろう準決勝は大会全体を通じた最注目カード。東京世界選手権ではシウバがうまく得意の後の先に嵌めて一本勝ちしているが、団体戦で芳田司を秒殺「一本」に沈めたシシクの資質の高さと成長スピードの速さを考えれば一筋縄ではいかないカードのはず。大げさでなく東京五輪のメダルの行方を占うカードだ。

日程と各階級のみどころは下記。

※ブラジリアは日本との時差12時間

6日(日) [男子]60kg級、66kg級 [女子]48kg級、52kg級、57kg級
7日(月) [男子]73kg級、81kg級 [女子]63kg級、70kg級
8日(火) [男子]90kg級、100kg級、100kg超級 [女子]78kg級、78kg超級

■ 男子60kg級
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第1シードはフランシスコ・ガリーゴス。

(エントリー24名)
第1シードがフランシスコ・ガリーゴス(スペイン)ということでわかる通り、スケール感には欠けるトーナメント。このところ柔道の質的向上の著しい地元ブラジル勢、具体的にはフェリペ・キタダイとエリック・タカバタケの活躍がみどころということになる。キタダイはプールB、タカバタケはプールCに配置。コンディション次第では地元勢同士の決勝も夢ではない。

■ 男子66kg級
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注目はマニュエル・ロンバルド

(エントリー34名)

人材はいるのだがトーナメント全体のスケール感が足りず、みどころが拡散しているという印象。その中にあって、東京世界選手権で存在感を発揮したイタリア勢の活躍がまず大きな注目ポイント。同大会ではともに阿部一二三に敗れたマニュエル・ロンバルドとマッテオ・メドヴェスの2人いずれもプールCに配されたが、どのような戦いを見せてくれるか。このプールには66kg級転向3戦目のベスラン・ムドラノフ(ロシア)も配されており、激戦区である。

地元ブラジル勢からは寝技の巧みなダニエル・カルグニンが第1シード、同じプールAにこちらは投げがアイデンティティのチャールス・チバナが配された。カルグニンに代表の座を攫われたチバナは地元で力を見せつける大チャンス。

■ 男子73kg級
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日本から橋本壮市が参戦。

(エントリー28名)

遠隔地開催ではあるが、もと世界王者橋本壮市(パーク24)の参戦に吸い寄せられるかのように、数は少ないながらも第1シードのトミー・マシアス(スウェーデン)を筆頭に、ムサ・モグシコフ(ロシア)、ミクロス・ウングヴァリ(ハンガリー)らヨーロッパの強豪が集まった。ただし橋本の力が図抜けている。みどころは一に、橋本の勝ちぶりということになる。

■ 男子81kg級
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7月のGP2大会を凄まじい出来で制した永瀬貴規

(エントリー27名)

第1シードが2018年バクー世界選手権3位のヴェダット・アルバイラク(トルコ)、最注目選手がもと世界王者永瀬貴規というところで言えば、今大会の「世界選手権で勝ち切れなかった強豪と、出場叶わなかった強豪国の2番手」という基調を綺麗に満たした階級。しかし永瀬が7月のグランプリ・モントリオールとグランプリ・ザグレブですさまじい勝ちぶりを披露していることで、今大会屈指の注目階級としてクローズアップされることとなったと言える。混戦がようやく終息しつつある81kg級にあって、かつての盟主永瀬が当時と同等のスケール感を持って復帰するかどうかは階級の構図全体を揺るがす大問題。日本国内にあっては既に潜在的な第一候補として認識されつつある永瀬の上げ潮ムードがこの大会で決定づけられるのかどうか、というところ。組み合わせは2戦目で第2シードのイヴァイロ・イヴァノフ(ブルガリア)、勝てば準々決勝でエドゥアルド=ユウジ・サントス(ブラジル)かナシフ・エリアス(レバノン)、準決勝はハサン・ハルモルザエフ(ロシア)。いまの永瀬であれば優勝の可能性は非常に高いと言えるが、とにかくスタミナを奪うエリアスとの対戦がある場合は、消耗に気を付けたい。

■ 男子90kg級
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2018年度世界王者ニコロス・シェラザディシヴィリが第1シードを張る

(エントリー25名)

冒頭書かせて頂いた通り、100kg超級に次ぐ今大会の注目階級。ニコロス・シェラザディシヴィリ(スペイン)とイワン=フェリペ・シルバ=モラレス(キューバ)の2018年度世界選手権金銀メダリストコンビ、さらに2017年度世界王者で今年も銅メダルを獲得したネマニャ・マイドフ(セルビア)、先日ベイカー茉秋(日本中央競馬会)を2度投げたばかりのマーカス・ナイマン(スウェーデン)もエントリーし、どのプールにも観戦の軸がある。先日の世界選手権評に従えば、「柔道自体が強い本格派タイプ」のシェラザディシヴィリとシルバ=モラレス、「試合に強いタイプ」のナイマンとマイドフによる陣地争いという観点からもなかなか面白いトーナメント。

■ 男子100kg級
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飯田健太郎は第2シード

(エントリー22名)

第2シードの飯田健太郎(国士舘大3年)がしっかり優勝してくれるかどうか、そしてどんな内容を見せてくれるか。この2点にみどころは尽きる。対戦予想は2戦目(プールファイナル)でミクロス・サーイエニッチ(ハンガリー)、準決勝でキリル・デニソフ(ロシア)、決勝で第1シードのラマダン・ダーウィッシュ(エジプト)。厄介なのはダーウィッシュだが、飯田としてはこの陣容で遅れをとっている時間はない。優勝以外には考えられない大会。

■ 男子100kg超級
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7月のモントリオール大会ではリネールとクルパレクが大激戦を繰り広げた。

(エントリー17名)

前述の通り、まさにこの大会の目玉階級。現役世界王者のルカシュ・クルパレク(チェコ)に絶対王者テディ・リネール(フランス)と世界王者2人が同時参戦。ロシアからはイナル・タソエフが、地元ブラジルからはラファエル・シウバとダヴィド・モウラの2トップがいずれもエントリーしており、エントリー人数は少ないが見どころには事欠かない。しかも、日本にとっては「一度は当ててみたい」影浦がついに、確実にリネールと戦うことが出来る(初戦でマッチアップ)という贅沢な組み合わせなのだ。

華々しい上位対戦カードはともかく、日本のファンにとってはとにかく影浦-リネール戦が最大の注目カード。リネールが苦手とされる「ケンカ四つの担ぎ技ファイター」に現状の日本の手持ちで唯一嵌る影浦がどんな試合をしてくれるのか。勝敗はもちろん、とにかく内容が楽しみな一番だ。

■ 女子48kg級
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第1シードのニコリッチに挑む地元ガブリエラ・チバナ。

(エントリー19名)

面子が揃っていないわけではないが目玉もまたいない、という渋いトーナメント。率直に言って競技レベルは「グランプリ」のそれにとどまる。第1シードのミリカ・ニコリッチ(セルビア)、第4シードのシラ・リショニー(イスラエル)、エヴァ・チェルノビツキ(ハンガリー)らが優勝候補。地元ブラジルは東京世界選手権でこの階級に代表を送っておらず、ニコリッチの直下に置かれたガブリエラ・チバナの活躍に期待したいところ。

■ 女子52kg級
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角田夏実が第1シードに配された。

(エントリー23名)

第1シードに角田夏実(了徳寺学園職員)が配された。間違いなく優勝候補の筆頭である。隣のプールBにはシード選手としてジェフェン・プリモ(イスラエル)とオデッテ・ジュッフリダ(イタリア)が配されており、このいずれかと戦う準決勝が山場。プリモは期待されながら東京世界選手権では初戦敗退、ジュッフリダは非常に微妙な判定の末3回戦で敗れており、今大会は再起戦。モチベーションは低くないはず。戦いやすいのは若いプリモ、体が強く足技もあるジュッフリダのほうが相手としては面倒と見る。

下側の山ではこれも世界選手権では3回戦で意外な敗退を喫したエヴェリン・チョップ(スイス)と、一番手アモンディーヌ・ブシャーの影ですっかり存在感が薄くなってしまったアストリーデ・ネト(フランス)が角田への挑戦権を掛けて戦う。

■ 女子57kg級
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東京世界選手権3位決定戦で相まみえたシウバとサハ=レオニー・シシク。

(エントリー25名)

今大会女子きっての注目階級。前述の通り山場はラファエラ・シウバとサハ=レオニー・シシク(フランス)が戦う準決勝だが、この2人を外したプールC-Dもなかなかの面白さ。

プールCにはBシード選手として、世界選手権で銅メダルを獲得したユリア・コヴァルツィク(ポーランド)が配されている。あの「引き手側の襟を持った韓国背負い」一本やりで芳田司からも「技有」を取った面白い選手である。このプールCは第2シードのテレザ・シュトル(ドイツ)にプリシラ・ネト(フランス)、ヨワナ・ロギッチ(セルビア)とそれなりに陣容厚いのだが注目すべきは間違いなくこのコヴァルツィク。プールDではネコダ・スミス=デイヴィス(イギリス)とテルマ・モンテイロ(ポルトガル)が準決勝進出を争う。

■ 女子63kg級
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第3シードのヤン・ジュインシア

(エントリー20名)

トップ数名のみが突出しているこの階級、その「数名」いずれの参加もないことで今大会は極めて見どころが少ない。世界選手権評では、女子52kg級や70kg級、男子66kg級などリオ五輪後全体的なレベルが落ち気味だった階級がこぞってハイレベル化しつつある中、この階級だけが取り残されている、と書かせて頂いたばかりであるが、まさにその様相がまっすぐ反映されたトーナメントとなった。

第1シードのマイリン・デルトロ=カルバハル(キューバ)、第2シードのダリア・ダヴィドワ(ロシア)、第3シードのヤン・ジュインシア(中国)はいずれも東京世界選手権では2回戦敗退、第4シードのタン・ジン(中国)も3回戦で大会を去っている。強豪選手としてはエドウィッジ・グウェン(イタリア・同3回戦敗退)、アガタ・オズドバ=ブラフ(ポーランド・同1回戦敗退)らが挙げられるが、いずれの選手も「優勝候補」としてまっすぐ推すことは難しい。勝った選手を見るほかに観戦の軸が定めにくいトーナメント。

■ 女子70kg級
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第1シードはアンナ・ベルンホルム。

(エントリー23名)

東京世界選手権のメダリストは参加せず、入賞者(7位以上)まで広げても2名のみが出場という一見脆弱なトーナメントだが、南米と中米に有力選手が多いという階級自体の組成もあって陣容はなかなかに骨太。ジュリ・アルベール(コロンビア)、マリア・ポルテラ(ブラジル)、マリア・ペレス(プエルトリコ)、加えて北米からケリタ・ズパンシック(カナダ)とこの地域からのシード選手を見るだけでレベルの高さがお分かりいただけると思う。これにヨーロッパから第1シード選手アンナ・ベルンホルム(スウェーデン)、マリア・ベルナベウ(スペイン)、ジェンマ・ハウエル(イギリス)らが加わって、グランドスラムの名に恥じない陣容だ。

優勝争いを牽引するのはベルンホルム。珍しくワールドツアーに出場、かつ世界選手権では不首尾に終わった(3回戦でベルンホルムに腕挫十字固「一本」で敗退)のアルベールがどんな試合を見せてくれるかが楽しみ。

■ 女子78kg級
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第1シードは地元のマイラ・アギアール。最終日の女子2階級はいずれもブラジル勢が優勝候補の筆頭だ。

(エントリー18名)

東京世界選手権でも銅メダルを獲得した地元のスター、もと世界王者マイラ・アギアール(ブラジル)が第1シード。第2シードが同7位のナタリー・パウエル(イギリス)で、第3シードと第4シードには同大会でともに代表を張ったアナ=マリア・ヴァグナーとルイーズ・マルツァーンのドイツコンビが配された。これにフランスの「代表漏れ」2人組が絡むというのが大枠の様相。

優勝候補はもちろんアギアールだが、注目すべきは世界タイトルを取ったマドレーヌ・マロンガの影で悔しい思いをしたオドレイ・チュメオとファニー=エステル・ポスヴィトのフランス勢2名。もと70kg級のポスヴィトはともかく、檜舞台の出場すらならなかったもと世界王者チュメオにとってはもはや1試合たりとも負けることが許されない状況のはず。メンタルの不安定さを指摘され続けたチュメオだが、ここで終わるのか、来年に向けてもう1度マロンガと勝負させてもらえる状況を作るのか。キャリアの分水嶺になり得る大会だ。

■ 女子78kg超級
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マリア=スエレン・アルセマンに優勝の期待が掛かる。

(エントリー14名)

参加者僅か14名であるが、マリア=スエレン・アルセマンにベアトリス・ソウザ、そしてポルトガルに移籍したホシェリ・ヌネスまで含めて地元ブラジル勢が充実していること、そして東京世界選手権で朝比奈沙羅とソウザに勝利して銅メダルを獲得したカイラ・サイート(トルコ)が参加したことで、実はなかなかレベルの高いトーナメント。準決勝のサイート対ソウザ、決勝のアルセマン対サイート戦の実現に期待。

※ eJudoメルマガ版10月5日掲載記事より転載・編集しています。

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