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【プレビュー】グランプリタシケントきょう開幕、90kg級にベイカー茉秋、100kg超級にグラム・ツシシヴィリ参戦

(2019年9月20日)

※ eJudoメルマガ版9月19日掲載記事より転載・編集しています。
【プレビュー】グランプリ・タシケントきょう開幕、90kg級にベイカー茉秋、100kg超級にグラム・ツシシヴィリ参戦。
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ツアー2連勝を狙うベイカー茉秋

東京世界柔道選手権(8月25日~9月1日)終了後初のワールドツアーとなるグランプリ・タシケント大会がきょう20日からウズベキスタン・タシケントで開催される。昨日ドローが行われ参加選手がようやく判明、組み合わせは即日公開された。

→グランプリ・タシケント2019組み合わせ

年間最大のイベントからまだ3週間、どれだけの選手が参加するものか危惧されたが、男子は90kg級のリオ五輪王者ベイカー茉秋(日本中央競馬会)、100kg超級の2018年世界王者グラム・ツシシヴィリ(ジョージア)などどの階級も核になる選手がおり、なかなか面白いトーナメントが組まれている。女子は世界選手権に一線級を派遣しなかった韓国が52kg級のジョン・ボキョンや57kg級のクォン・ユジョンなど主力を多数派遣、これがトーナメントを盛り上げる形となった。

全体としては、欧州タイトルを取りながら世界選手権では早期敗退の73kg級トミー・マシアス(スウェーデン)のように世界選手権で思うような成績が残せなかった強者、また国内の層が厚いために世界選手権の出場叶わなかったツアーの実力者という2つの勢力がトーナメントの軸。プレビューとして各階級の様相をひとことずつ、書き出してみたい。

■ 男子60kg級
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古賀玄暉は優勝の力十分

(エントリー26名)

第1シードに世界選手権で大活躍、5位入賞したばかりのヤン・ユンウェイ(台湾)が座った。順当に行けば準々決勝でヤゴ・アブラゼ(ロシア)との対戦が組まれるはずで、これが非常に楽しみ。何が何でも巻き込みで勝負をつける「力」のアブラゼと、いかにも東アジアの強者らしく柔らかさと強さを合わせもつヤン、非常な好カードだ。

優勝候補の筆頭はディヨルベク・ウロズボエフ(ウズベキスタン)。世界選手権では2番手シャラフディン・ルトフィラエフが王者髙藤直寿を食って銀メダルを獲得する一方、自身は4回戦でヤンに小外刈「一本」で食われて入賞なしという辛酸をなめた。地元とはいえ、華々しい世界選手権直後に組まれたこの「オフシーズンのグランプリ」に出ねばならない立場にも相当辛いものがあるはず。配置はプールB、第6シード。準決勝でヤンに勝利して、優勝まで辿り着きたい。

日本の古賀玄暉(日本体育大学3年)は上記2人とも、さらに第2シードのイ・ハリン(韓国)とも山が分かれてプールDに配置。初戦でおそらくカラマット・フセイノフ(アゼルバイジャン)と戦うが、これは2017年世界ジュニアで敗れた(古賀は2017年3位、2018年優勝)因縁の相手。しっかりリベンジして上位に勝ち上がりたい。古賀、アジアパシフィック選手権決勝ではヤンに熱戦の末勝利を収めており、力自体は優勝に十分手が届くはずだ。

■ 男子66kg級
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相田勇司はシニアワールドツアー初参戦

(エントリー38名)

第1シードは東京世界選手権でベスト8まで勝ち上がったモハメド・アブデルマウグド(エジプト)。シード選手にはドフドン・アルタンスフ(モンゴル)、ニジャット・シハリザダ(アゼルバイジャン)、ヤクブ・シャミロフ(ロシア)、アラム・グリゴリアン(ロシア)、シード外にもツァイ・ミンイェン(台湾)、そして世界選手権には出場叶わなかったダヴァドルジ・ツムルフレグ(モンゴル)がエントリーしてなかなか骨の太いトーナメントとなった。ロシアとモンゴルの強国2つがツアーの主役級かつ世界選手権に手の届かなかった選手を複数投入したことで、一気に密度が高くなったという体。

日本からは相田勇司(國學院大2年)がシニア国際大会初参戦。配置はプールB、最初の山場は2戦目のグリゴリアン戦。ここさえ抜ければ一気のベスト4入りが見えてくる。

■ 男子73kg級
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ソモン・マフマドベコフ。世界選手権ではマシアスに勝利するなど大物食いを続けて5位に入った

(エントリー35名)

第1シードは、世界選手権で「うまく行かなかった」グループの代表格であるトミー・マシアス(スウェーデン)が座った。マシアスは今季の欧州王者だが本番の東京では初戦敗退。あれからまだ3週間だが早くも出直し戦を組んだ形となる。

注目はベフルジ・ホジャゾダとソモン・マフマドベコフのタジキスタン勢2人。東京世界選手権ではともに3位決定戦まで進んで5位入賞、この2人だけでの2人でツェンドオチル・ツォグトバータル(モンゴル)とマシアス、アキル・ヤコヴァ(コソボ)、サイインジリガラ(中国)、トハル・ブトブル(イスラエル)を沈めるという大戦果を挙げた。今大会は、インパクトなら間違いなくメダルに値した世界選手権の「追試験」。ここでしっかり力を見せ、まずは階級の上位常連の位置に座ることが出来るかどうか。配置はホジャゾダがプールB、マフマドベコフがプールD。あの日の力を出せればともに決勝進出という展開すら十分に考えられる。非常に楽しみ。

このタジキスタン勢2人という不確定要素はあるが、第2シードが世界選手権7位のビラル・ジログル(トルコ)であることでわかる通り、トーナメント全体としては飛び抜けてレベルが高いわけではない。ディルク・ファンティシェル(ベルギー)やミクロス・ウングバリ(ハンガリー)らベテランには表彰台登攀の大チャンス。

■ 男子81kg級
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第1シードはデヴィト

(エントリー37名)

第1シードは世界選手権では2回戦敗退という意外な結果に終わったフランク・デヴィト(オランダ)で、これは明らかに「出直し」を期してのエントリー。このデヴィトと、同大会で3位決定戦まで進んで(5位)好調エジプトの象徴的存在だったモハメド・アブデラル(エジプト)、サミ・シュシ(ベルギー)、ニャムスレン・ダグワスレン(モンゴル)、昨年のアジア大会王者ディダル・ハムザ(カザフスタン)、東京で藤原崇太郎を倒したシャロフィディン・ボルタボエフ(ウズベキスタン)らで上位を争うこととなる。81g級らしいといえばらしい、派手さはないが勝ち上がるのは非常に大変という骨の太いトーナメントである。

■ 男子90kg級
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ベイカー茉秋

(エントリー39名)

ベイカー茉秋(日本中央競馬会)の参戦が最大のトピック。7月のグランプリ・モントリオールに続いてワールドツアー2連勝を狙う。

第1シードは世界選手権2回戦敗退の屈辱を舐めたコムロンショフ・ウストピリヨン(タジキスタン)、第2シードは世界選手権では団体戦の出場のみにとどまったフセン・ハルモルザエフ(ロシア)、ほか同大会5位のマーカス・ナイマン(スウェーデン)や欧州ジュニアを獲ったばかりのラシャ・ベカウリ(ジョージア)らの有望株が参加して、トーナメントのレベルは決して低くない。ただしこれはあくまで「世界選手権直後」という状況を加味しての評価で、グランプリ大会としてはベイカー以外の大物の数があと2,3枚足りないというレベル。

シード権のないベイカーはプールB、第4シードのザッカリー・バート(カナダ)の山に配された。2戦目でバートかダブラト・ボボノフ(ウズベキスタン)、準々決勝でナイマンかクエジュ・ナーバリ(ウクライナ)との対戦が待ち受ける。いずれベイカーが代表争いに絡んでいくのであれば、優勝以外はありえない陣容。健闘に期待したい。

■ 男子100kg級
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ゼリム・コツォイエフ

(エントリー28名)

第2シード配置となったゼリム・コツォイエフ(アゼルバイジャン)が優勝候補の筆頭。2017年に世界ジュニアとユニバーシアードを制しており、世界選手権では2回戦でウルフアロンに蟹挟を仕掛けた咎で反則負けしたが最終日の団体戦では大活躍。個人戦の覇者ジョルジ・フォンセカ(ポルトガル)を内股「一本」、100kg超級3位のキム・ミンジョン(韓国)を内股と袈裟固の合技「一本」、そして3位決定戦ではロシアの100kg超級の1番手候補イナル・タソエフを豪快な釣込腰「一本」に仕留めて会場の度肝を抜いた。

第1シードにロシアの3番手カズベク・ザンキシエフがいるが、今大会のトーナメントは強豪の影が薄い。コツォイエフが2018年グランプリ・アンタルヤに続くツアー2勝目を挙げることが濃厚、その得意の腰技の冴えに注目というところ。準決勝では第3シードのミクロス・サーイエニッチ(ハンガリー)とダニエル・ムケテ(ベラルーシ)の強豪2人の勝者とマッチアップ予定で、この試合が山場になるだろう。

■ 男子100kg超級
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グラム・ツシシヴィリ

第1シードになんと2018年の世界王者グラム・ツシシヴィリ(ジョージア)が座り、第4シードに同大会の銀メダリストであるウシャンギ・コカウリ(アゼルバイジャン)が配されて準決勝で対戦予定という謎の豪華さ。脇を固めるメンバーにも第2シードのステファン・ヘギー(オーストリア)、ヤキフ・ハモー(ウクライナ)、ユーリ・クラコヴェツキ(キルギスタン)らがおりこのシーズンとしては見どころ十分のトーナメントと言える。

とはいえやはり最大の見せ場はツシシヴィリとコカウリの準決勝、そしてどんな形でツシシヴィリが優勝を攫うか。世界選手権では充実の勝ち上がりも原沢久喜との準決勝に敗れると集中が切れ、ロイ・メイヤー(オランダ)との3位決定戦にも敗れてメダルまで逃すこととなったツシシヴィリ、どんな出直しを見せるかに注目である。

■ 女子48kg級
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シラ・リショニー

(エントリー33名)

この時期のグランプリ、そして48kg級としては33名とエントリー数は多め。一方で世界選手権でメダルに絡み得るような選手の参加者はなく、第1シードが世界選手権では初戦敗退のマルサ・スタンガル(スロベニア)ということでレベルは推して知るべし。第2シードのシラ・リショニー(イスラエル)と、第3シードのウクライナの2番手マリーナ・チェルニアクが優勝候補であるが、率直に言ってみどころの薄いトーナメント。

■ 女子52kg級
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リオ五輪48kg級銀メダリストのジョン・ボキョン

(エントリー26名)

意外にも、と言ってはなんだがこの階級はなかなか面白い。世界選手権に姿を見せなかったジョン・ボキョン(韓国)がエントリー、ノーシード扱いでプールAに配され、2戦目で早くも第1シードのエヴェリン・チョップ(スイス)と対戦が予定されている。

第2シードにはツアーで好調、躍進が期待されながら東京世界選手権では失意の初戦敗退に終わった期待の19歳ジェフェン・プリモ(イスラエル)が配されて、出直し戦に挑む。実力的にもモチベーション的にも、この2人が優勝を争うと見て良いのではないだろうか。両者とも今後の52kg級戦線にとっては重要人物。その戦いぶり注目である。

■ 女子57kg級
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クォン・ユジョン

(エントリー32名)

この階級も韓国勢2人のエントリーが一大トピック。世界選手権に出場しなかったクォン・ユジョンが第3シードに配され、キム・ジャンディはノーシード扱いでプールAに配された。

トーナメントの重心はプールCとプールDにあり、プールDでは前述クォンとサブリナ・フィルツモザーが準々決勝で一騎打ち。プールCはヘドウィグ・カラカス(ハンガリー)とサンネ・フェルハーヘン(オランダ)がベスト4入りを争う。
プールA-Bは第1シードのティムナ・ネルソン=レヴィー(イスラエル)が有力。

■ 女子63kg級
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カトリン・ウンターヴルツァハー

(エントリー33名)

エントリーは33名と多めだが、主役級の参加はなし。東京世界選手権特集の「実力推測マップ」に従えば、「優勝候補」「トップグループ」に続く第3勢力以下で構成されたトーナメントということになる。

第1シードはカタリナ・ヘッカー(オーストリア)で、第2シードはルーシー・レンシャル(イギリス)。これにともにプールDに配されたカトリン・ウンターヴルツァハー(オーストリア)と世界選手権では代表落ちの屈辱を舐めたエカテリーナ・ヴァルコワ(ロシア)の2名、さらに第6シードで同じく世界選手権代表叶わなかったエイミー・リヴェシー(イギリス)を上位候補と規定し、第4シードの19歳ギリ・シャリル(イスラル)を注目の若手と考えてトーナメントの推移を見守る、ということになる。実力が素直に出せればウンターヴルツァハーを推したいところだがこの人は今季不調。今大会で浮上のきっかけをつかみたい。順当に勝ち上がれば準々決勝は同国対決、第3シードのマグダレナ・クルサコワとの1番手決定戦が待ち受ける。

■ 女子70kg級
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エルビスマル・ロドリゲス

(エントリー27名)

世界選手権では初戦で新井千鶴に敗れたアッスマ・ニアン(モロッコ)が第1シード。第2シードには東海大の学生エルビスマル・ロドリゲス(ベネズエラ)が配され、準々決勝でこれも世界選手権を休んでいた韓国のキム・ソンヨンと対決。この3名がそのまま優勝候補と考えていいだろう。

■ 女子78kg級
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ナタリー・パウエル

(エントリー23名)

世界選手権では優勝したマドレーヌ・マロンガ(フランス)に敗れて7位に終わったナタリー・パウエル(イギリス)が第1シード。ほか、同大会では上位候補に挙げられながら3回戦でマー・ジェンジャオ(中国)に内股「一本」で敗れたベルナデッテ・グラフ(オーストリア)が第3シードに配されており、この2人が優勝候補と考えられる。

第2シードのカレン・スティーフェンソン(オランダ)はフッシェ・ステインハウスとマルヒンデ・フェルケルクに蓋をされて檜舞台を踏めない身。ここまでツアーは2位2回、3位3回と計5回の表彰台があるが、いまだに優勝はなし。陣容揃い切らず、また世界選手権組に疲労があるであろうこのトーナメントで悲願の初優勝を目指す。

■ 女子78kg超級
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マリーナ・スルツカヤ

(エントリー17名)

世界選手権の入賞者はエントリーなし。同大会では3回戦でカイラ・サイート(トルコ)に敗れたマリーナ・スルツカヤ(ベラルーシ)が第1シード、第2シードは同1回戦敗退のサラ・アドリントン(イギリス)が第2シードを張るというやや寂しいトーナメントだ。他の有力選手としては、世界選手権では団体戦のみの出場(ロシアはこの階級に代表を座さず)だった第3シード配置、クセニーア・チビソワ(ロシア)を挙げておく。

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