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【即日レポート】エース坂口稜の活躍テコに埼玉栄が2連覇、東海大相模はまたもや僅差で頂点届かず・第50回全国中学校柔道大会男子団体戦

(2019年8月18日)

※ eJudoメルマガ版8月18日掲載記事より転載・編集しています。
エース坂口稜の活躍テコに埼玉栄が2連覇、東海大相模はまたもや僅差で頂点届かず
第50回全国中学校柔道大会男子団体戦即日レポート
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開会式。各都道府県の代表計48校が集った。

日時:2019年8月18日
会場:兵庫県姫路市「ウインク武道館(兵庫県立武道館)」
取材・撮影:eJudo編集部

今年度の中学柔道日本一を決める大会にして中学「三冠」の最高峰イベント、第50回全国中学校柔道大会の男子団体戦が19日、兵庫県姫路市「ウインク武道館(兵庫県立武道館)」に、全国の予選を勝ち抜いた精鋭48校が集って開催された。

優勝候補は12月のサニックス旗福岡国際中学生大会と近代柔道杯を制した地元兵庫の第1代表・望海中、そして同じく兵庫の強豪南淡中、さらにこの2大会でいずれも2位の東海大相模高中等部(神奈川)、その東海大相模に競り勝って関東大会を制した前年度の覇者埼玉栄中(埼玉)、毎年夏に合わせてしっかりチームを作ってくる国士舘中(東京)、九州ブロックの強豪大蔵中(福岡)など。

3チームによる予選リーグ、さらに同リーグの1位校による決勝トーナメント2試合を経てベスト4に残ったのは国士舘中埼玉栄中南淡中東海大相模高中等部。まずはこの4チームの勝ち上がりを紹介することで、大会全体の様相を簡単に追いかけてみたい。

■ 準決勝まで
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予選リーグ第1巡、望海中の副将村乾渡が宮古第一中・中村陸から内股でまず「技有」

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予選リーグ第1巡、1点失った国士舘だが続く副将若崎喜志が名張中・福尾進悟からあっという間の小外掛「一本」。態勢を立て直す

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予選リーグ第2巡、国士舘中の先鋒長尾虎次郎が長岡南中・磯部遥哉から開始20秒内股「一本」

国士舘中の配置はシード校の望海中と同山。トーナメント左上に組まれたこの山では、両校の勝ち上がりと、ベスト8における対決に注目が集まった。

望海中は副将中村乾渡を軸とした攻撃型のチーム。予選リーグは宮古第一中(岩手)と長崎日大中(長崎)をともに5-0、オール一本勝ち(2試合の「指導3」反則を含む)で撃破して順当に決勝トーナメント進出。決勝トーナメント1回戦は足利第一中(栃木)と対戦、2戦引き分けを受けた中堅戦では相手方のエース・齋五澤凌生の鮮やかな内股に永澤慎悟が「一本」を献上したが、ここからエース中村の小外刈「一本」、さらに大将村瀬浩樹の小外刈「一本」と連勝して逆転。しっかり国士舘中との対戦に辿り着いた。

国士舘中は名張中(三重)を相手に厳しい立ち上がり。先鋒戦を引き分け、次鋒戦は横手和輝が手順通りの縦四方固「一本」で勝利して先制したが、中堅戦では唐木康大が吉田燦太の払腰を食って「技有」失陥で優勢負け。3戦消化して1-1という接戦である。ここから副将若崎喜志が開始10秒の小外掛「一本」、畠山凱が払巻込「技有」から抑え込んでの合技「一本」と2年生の重量コンビの連勝で勝ち越しを果たしスコア3-1で着実に勝利は得たものの、ライバルたちの華々しい出だしに比べると一段出遅れた感は否めず。続く第2試合は気合いを入れなおし、長岡南高(新潟)を圧倒。前戦不首尾の先鋒長田虎次郎が開始20秒の内股「一本」でチームを鼓舞し、そのまま一気の5連勝で勝負を決めた。

迎えた準々決勝のブロック2強対決は国士舘が理想の試合運び。後ろ重心の望海中に対してリード必須の試合であったが、先鋒長田虎次郎が高森和から1分21秒合技「一本」、さらにこの流れを受けた次鋒横手和輝が高橋憲司から17秒内股「一本」とあっという間に2連勝。中堅戦の引き分けを受けた副将戦は若崎喜志が中村乾渡を相手に1点を失うも、大将戦では畠山凱が形成不利の試合展開を得意の深い外巻込一発でひっくり返し村瀬浩樹から「技有」確保。そのまま優勢勝ちを果たしてスコアを3-1まで伸ばし、勢いづいた形で準決勝へと進む。

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予選リーグ第1巡、埼玉栄中の大将坂口稜が大和中・早坂真一から内股「一本」

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決勝トーナメント1回戦、埼玉栄中の副将峰優月が紀見北中・野口育吹から背負投「技有」

埼玉栄中もベスト8に山場あり。この左下の山は埼玉栄中と大蔵中という2強の勝ち上がりを軸に試合が進んだ。

埼玉栄の初戦は大和中(宮城)を相手にまさに圧勝。先鋒杉野瑛星が1分5秒小外掛「一本」で試合を決めたが、1分超えの試合はこれのみ。次鋒粂田和樹が開始7秒内股「一本」、中堅新井道大が同じく7秒に内股「一本」、副将峰優月が大木爽太郎から15秒内股「一本」、大将のエース坂口稜が10秒内股「一本」と4試合すべて20秒かからず、ファーストアタックで勝負を決めての5-0フィニッシュ。続く第2試合も南風原中(沖縄)を5-0であっさり退け、まったく浴び投げなくリーグ1位勝ち抜け決定。決勝トーナメント1回戦の紀見北中(和歌山)との一番も、先鋒戦の引き分け以降はすべて合技「一本」で4連勝。3戦15試合で14勝1分けと他を寄せ付けぬ強さでベスト8入り決定。

一方の大蔵中は箕蚊屋中(鳥取)をオール一本勝ちの5-0とこちらも素晴らしい滑り出し。続く予選リーグ第2試合は東海大浦安中(千葉)を3-0で下し、決勝トーナメント1回戦は小名浜第一中(福島)を圧倒。先鋒四元羅生の合技「一本」を皮切りに5連勝、これもスコア5-0で勝ち抜けて埼玉栄との決戦に挑む。

前述望海中-国士舘中の一番と並んでひときわ会場の注目を集めたこの試合は我慢比べの様相。先鋒戦と次鋒戦を引き分けて流れを作った形の埼玉栄が、中堅新井道大の粘り強い攻めで「指導3」で貴重な先制点を得る。副将戦も峰優月が踏ん張って引き分け、大将戦は坂口稜が無理をせず、石川諒太郎から手堅く「指導」2つを奪ってフィニッシュ。最終スコアは2-0、埼玉栄はこれでベスト8入り決定。無理に力押しせず、しかし地力で着実に差をつけるという非常に手堅い試合だった。

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予選リーグ第2巡、南淡中の中堅出口功馬が松山西中・笠井敢太から内股「一本」

南淡中は兵庫県予選2位、開催地枠での出場。地元勢同士の決勝対決を願う観客席の大声援を受け、予選リーグ第1試合は竜王中(山梨)を全試合一本勝ちの5-0で一蹴。第2試合もしぶとい松山西中(愛媛)を相手に着々加点、先鋒向野翔大の「技有」優勢、中堅出口巧馬の払腰「一本」、大将澤谷魁人の小外刈「一本」と繋いでスコア3-0で走り抜け、ぶじ予選リーグ突破決定。

決勝トーナメント1回戦は山形第四中(山形)に4-1とこれも圧勝。迎えた準々決勝も九州学院中(熊本)を相手に先鋒向野の「技有」優勢、次鋒鳥海廉の合技「一本」、中堅出口の払巻込「一本」と一気の3連勝。後衛もしっかり引き分け、スコア3-0で準決勝進出を果たした。組み合わせにも恵まれ、まったく躓きないままのベスト4入り。

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予選リーグ第1巡、東海大相模中の次鋒木原慧登が北辰中・福田悠真から送襟絞「一本」

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決勝トーナメント1回戦、東海大相模中の中堅田中詩音が藍住中・秋場瑛寿から大外刈「一本」

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決勝トーナメント1回戦、大成中の中堅三並壮太が崇徳中・中租俊輔から谷落「一本」

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準々決勝、東海大相模の先鋒服部辰成が大成中・鈴木恵介に片手の右背負投。残った手で襟を拾って逆落とし「技有」

東海大相模高中等部はサニックス旗と近代柔道杯のビッグゲーム2大会でともに準優勝、1週間前の関東大会では2-2の内容差という僅差で埼玉栄中に屈したものの、もちろんこの大会は優勝候補の一角である。この右下の山は、勝ち上がり候補筆頭の東海大相模に、大成中(愛知)と崇徳中(広島)の勝者が準々決勝で挑むという密度の高いブロック。

東海大相模は初戦で藍住中(徳島)とマッチアップ。北辰中(石川)を相手に66kg級の斬り込み隊長服部辰成が得意の出足払「技有」から抑え込んであっという間に合技の一本勝ち。この先鋒戦を皮切りに、次鋒木原慧登が「技有」奪取から送襟絞に捉えて「一本」、中堅田中詩音が合技「一本」、副将金杉元太が大外刈「一本」、大将手塚春太朗が合技「一本」とオール一本勝ちの5-0で順調に大会を滑り出す。第2試合の東海中(宮崎)戦も服部の小外刈「一本」を合図に全員が早い時間の一本勝ちの5-0で勝利。決勝トーナメント1回戦の藍住中(徳島)戦も服部が僅か12秒の抱分「一本」で会場を沸かせると、以降は木原慧登の合技「一本」、中堅田中詩音の大外刈「一本」、副将金杉元太の合技「一本」、大将手塚春太朗の崩上四方固「一本」と全員が、これもすべて早い時間で試合を決め続ける。この試合も5-0、ここまでの全15試合すべて「一本」という素晴らしい内容でベスト8まで進む。

下側の山からは大成中が準々決勝進出。予選リーグ第1試合はしぶとい丘中(長野)を力でねじ伏せて5-0、第2試合は里中(鹿児島)をオール一本勝ちの5-0で突破して予選リーグは全勝。中堅三並は2試合合計38秒という素晴らしい取り味を披露。

勝負どころの決勝トーナメント1回戦は崇徳中を相手に、先鋒鈴木恵佑が田中虎之介から合技「一本」で貴重な先制点獲得。次鋒戦を引き分け、迎えた中堅戦ではエース三並が中租俊輔からこれも27秒という早い勝負で谷落「一本」。この時点でスコアは2-0まで伸びる。崇徳は副将の高原健伸が「技有」優勢で1点を返したが、大成は大将鈴木魁斗の合技「一本」で突き放し、スコア3-1で勝利決定。

この山のまとめの試合、東海大相模と大成の準々決勝は前衛に得点源のある東海大相模ペース。先鋒服部が鈴木から背負投「技有」でしぶとく得点、次鋒木原も縺れ際に素晴らしい反応を披露して隅落「技有」獲得。この優勢勝ちによる2点先行でほぼ流れは決した。大成はここから2戦引き分けを経た大将戦で鈴木魁人が合技「一本」で勝利したが時すでに遅し、最終スコア2-1で東海大相模がベスト4入りを決めた。

■ 準決勝
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準決勝、先鋒戦で杉野瑛星が長田虎次郎から小内刈「技有」

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杉野は長田の引込返を空中でかわし、膝から着地すると崩上四方固に移行「一本」。

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中堅新井道大が唐木康大を内股と大内刈のコンビネーションで攻めまくる

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内股「一本」から抑え込み、新井が合技の一本勝ち。

[第1試合]
埼玉栄中(埼玉) 2-0 国士舘中(東京)
(先)杉野瑛星〇合技(3:10)△長田虎次郎
(次)粂田和樹×引分×横手和輝
(中)新井道大〇合技(2:35)△唐木康大
(副)峰優月×引分×若崎喜志
(大)坂口稜×引分×畠山凱

国士舘の後衛を務める若崎喜志と畠山凱の重量2選手は2年生。埼玉栄がエース坂口稜を大将に置く後重心という配列上の事情からも、国士舘としては前衛でリードを得たいところ。しかし埼玉栄の先鋒杉野瑛星が奮闘、第1試合で大枠の流れを決めてしまった。

先鋒戦は右相四つ。国士舘の長田虎次郎はベンチの「取ってこい!」の声に背中を押されるように前に出るが杉野は冷静。1分29秒、足先の攻防から右小内刈を閃かせて押し込み「技有」確保。

取らねばならぬ状況でのビハインドに、ベンチは長田に攻めを急き立てる。残り5秒を過切り、切迫した長田思い切って背中を叩き引込返に打って出るが高く舞い上がった杉野はくるりと反転、逆に崩上四方固で抑え込む。あわやポイントか、と思われたところから状況暗転。長田動けずそのまま10秒が過ぎ去り、「一本」。貴重な先制点は埼玉栄の手に落ちる。

次鋒戦はこのリードを受けた埼玉栄・粂田和樹が横手和樹を前に「指導」1つを失ったのみでしっかり引き分け。中堅戦は新井道大が左内股と大内刈のコンビネーションを軸に良く攻め、1分54秒まず「指導1」を得る。以後も妥協せず攻め続け、取り返さねばならぬ唐木の焦りに付け込んで2分25秒には決定的な左内股「技有」奪取。そのまま袈裟固に抑え込んで合技「一本」。スコアは2-0、盤面を考えればここで試合は実質終了である。

副将戦は右相四つ。埼玉栄の峰優月が組み手で粘り、時折思い切った左袖釣込腰を放って若崎喜志を封殺。きちんと柔道を組み立てるタイプの若崎はかえってこの防壁を崩せず、見せ場を作れぬまま3分経過を受け入れて引き分け。大将戦は大量リードを受けた坂口稜が無理をせず、この日ここまで外巻込一発で度々力関係を覆す勝利を見せて来た畠山凱に取り合わず。畠山に「指導」、引き手争いで双方に「指導」が与えられたのみでこの試合は引き分け。埼玉栄がスコア2-0で決勝進出を決めた。

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先鋒戦、服部辰成が向野翔大から出足払「技有」

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東海大相模は副将金杉元太が内股で2つ目の「技有」、これで3点目を確保する。

[第2試合]
東海大相模高中等部(神奈川) 3-1南淡中(開催地)
(先)服部辰成〇合技(0:56)△向野翔大
(次)木原慧登〇優勢[技有]△鳥海廉
(中)田中詩音×引分×出口巧馬
(副)金杉元太〇合技(1:17)△福村飛翔
(大)手塚春太朗△合技(0:55)〇澤谷魁人

取るべきポジションをしっかり取った東海大相模が快勝。
先鋒戦は服部辰成が左、向野翔大が右組みのケンカ四つ。42秒、服部は右の足先を当てると、止めたところから相手の後退に合わせて思い切って払い上げて出足払「技有」。そのまま崩上四方固に抑え込み、56秒合技「一本」で快勝。続く次鋒戦も木原慧登が鳥海廉から「技有」優勢で勝利してあっという間にスコア2-0、大枠の流れを決めてしまう。

中堅戦は田中詩音が体格差のある相手に組み手で粘り、出口巧馬と「指導2」対「指導1」でしぶとく引き分け。迎えた副将戦は金杉元太が18秒内股巻込「技有」、55秒内股「技有」と立て続けに投げる快勝で、東海大相模はここで勝利を決定づける3点目を確保。

南淡中は大将澤谷魁人が意地の合技「一本」で1点を返したが時すでに遅し。スコア3-1で東海大相模が12月のサニックス旗、3月の近代柔道杯に続く決勝進出を決めた。

■ 決勝
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決勝が開始される

埼玉栄中(埼玉) - 東海大相模高中等部(神奈川)
(先)杉野瑛星 - 服部辰成
(次)粂田和樹 - 木原慧登
(中)新井道大 - 田中詩音
(副)峰優月 - 金杉元太
(大)坂口稜 - 手塚春太朗

関東大会決勝の再現カード。この際は2-2の内容差で埼玉栄に凱歌が上がっている。

埼玉栄はエース坂口稜の得点を絶対条件に試合を組み立てる。前2つを止め、出来得れば中堅新井道大で得点、そして大将坂口で勝負を決めようという肚。大きく言って、大将戦スタート時点で、坂口の活躍による点の積み上げで試合が決まる状況を作っておくこと。これが勝利への道だ。

一方の東海大相模は前述の通り、ここまでの得点源である先鋒服部辰成と次鋒木原慧登でなんとしても得点が欲しい。これをテコにして中堅戦を粘り、副将戦で相手が前に出てこざるを得ない状況を作って出来れば加点、大将戦の前に勝負を決めようというのが理想のシナリオ。

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先鋒戦、服部辰成が出足払で杉野瑛星を大きく崩す。しかし終わってみればこれが最大のチャンスだった。

先鋒戦は埼玉栄・杉野瑛星が右、東海大相模・服部辰成が左組みのケンカ四つ。開始早々杉野が攻め込むが、続く組み際に服部が相手をツイと寄せながらの左出足払。杉野吹っ飛ぶ勢いで宙を舞うが腹這いに落ちて「待て」。

体格の小さい服部が団体戦を戦う上でもっとも取り味がある技がこの出足払であるが、結局この序盤に放たれた一撃がこの先鋒戦最大の見せ場。以降杉野は警戒を一段強め、後ろ向きの重心移動を最小限に抑えて前進、引き手争いに持ち込んで容易に隙を見せない。服部強気に両襟で迫り、1分4秒には杉野に片手の「指導」。服部はこの両襟をベースに引き手を高くさらして誘うが、杉野は片手状態と機を見ての両襟を使い分けながらあくまで深追いはせず、腰の入れ合い、大内刈での攻勢演出と巧みに進退。服部がこれぞというチャンスをつかめぬまま時間が過ぎ去り、3分間はあっという間に終了。この試合は引き分けに終わった。

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次鋒戦、残り1秒で木原慧登が執念の大内返「技有」。先制点は東海大相模。

次鋒戦は埼玉栄の粂田和樹、東海大相模・木原慧登ともに左組みの相四つ。木原の大外刈を粂田が大外返で乗り切り、しかしこれに手ごたえを感じた木原はノーステップの大外刈で立て続けに相手の裏側に進出。攻勢をとる。木原が引き手の袖を腹側に織り込んで一方的に組むと粂田が潰れ、1分15秒偽装攻撃の「指導」。しかし粂田もここが我慢のしどころと、木原の左内股を抱きついてあきらめさせ、さらに勇を鼓しての払巻込で潰れてと中盤戦を粘り強く乗り切る。残り1分を過ぎると木原足技を多用し始め、小内刈と小外刈のコンビネーションで潰し、次いで足を開かせる形の小内刈で蹴り崩し、粂田を畳に潰すこと2度。あるいは2つ目の「指導」失陥かと焦った粂田は終了直前、釣り手を肩越しに入れる強気の組み手を敢行。ここから左大内刈に打って出る。木原がこれを返さんと腹を出して持ち上げたが難しいとみたか下ろし、粂田がそのまま前に潰れんとして一瞬互いが中途半端な姿勢のまま「待て」を待つ体勢。しかし木原妥協せず片足のままの相手の呼吸に合わせて、相手が体重を抜いた瞬間に思い切り体を使って大内返。低い軌道で粂田は一回転、「技有」。技の効果の宣告とほぼ同時に試合が終わり、粂田に挽回のチャンスは与えられず。木原執念の「技有」奪取で東海大相模が先制。

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中堅戦、新井道大が次々大外刈に飛び込んで「指導2」まで得る。

中堅戦も左相四つ。埼玉栄・新井道大は自身の仕事と、「チームの失点直後」という状況を良く弁え、「はじめ」の声とともに突進。作りもそこそこに思い切った左大外刈で相手の裏側に歩を進め、田中詩音に圧を掛ける。田中は技に入らせてしまってから体を前に倒して耐えるという場面が続き、この形で前に潰れた53秒に「指導」失陥。新井は攻撃姿勢を緩めずまたもや左大外刈で耐えさせると、今度はそのまま左大内刈に連絡してプレッシャー。田中時折内股を放つが技が軽く、新井にまっすぐ弾かれて攻勢を演出するには届かない。奮起した田中残り1分で意地の大外刈を見せて相手を腹ばいに崩すが、新井ならばとまたもや左大外刈。田中は返そうとしたまま前に倒れて粘るが、残り時間を意識したか続く展開では左一本背負投でまっすぐ潰れてしまう。両手が離れたこの技に、展開の推移を良く踏まえた審判は的確に偽装攻撃の「指導2」を宣告。これで優勢勝ちの権利を得た新井であるが、妥協せずあと1つの「指導」を求めて大外刈、大内刈、足車と連発。攻めっぱなしのまま3分間が終わり、この試合は新井の僅差優勢に収着。スコアは1-1、東海大相模の内容差リードに詰まる。

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副将戦、峰優月が金杉元太の猛攻を耐え切り引き分け。

副将戦は埼玉栄・峰優月が右、東海大相模・金杉元太が左組みのケンカ四つ。得点必須の金杉は序盤から良く攻め、圧を掛けての蹴り崩しから左内股、さらに1分10秒には思い切った小外掛も見せてあわやポイントという場面を作る。しかし中盤は峰が粘り、相手の支釣込足を一本背負投に切り返して潰れ、金杉が組み際に放った取り味ある右一本背負投はなんとか回避するなり素早く行動、「腰絞め」で攻め返して拮抗を保ったまま時間を使う。

これに「待て」が掛かったところで気付けば残る試合時間は僅か53秒。金杉大内刈と内股を連携させて激しく追うが峰は崩れ切らず、残り36秒には打点の高い右背負投を放つ勇を奮い、潰れて「待て」。続く展開では金杉の圧力に負けて防御姿勢の「指導」1つを失うが、この時点で残り時間は僅か12秒。峰がこのまま戦い切って引き分けをもぎ取ることとなった。タイムアップの瞬間に埼玉栄ベンチから沸き起こった拍手が状況を良く示す。1-1、東海大相模が内容差リードだが、ギリギリながら「坂口で決められる状況を作って大将戦を迎える」という埼玉栄側のシナリオで4戦が終了したという形。

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大将戦、坂口稜は足技を絡めた巧い組み手で優位を確保

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坂口が払巻込、優勝を決める見事な「一本」

迎えた大将戦は埼玉栄のエース坂口稜が試合が始まるなり猛攻。組むと左払腰、次いで一瞬背を丸めて相手を引き出すとケンカ四つの手塚春太朗は次に襲うであろう攻撃を予期して思わず潰れ、23秒「指導」。本来凌ぎやすいケンカ四つであるが、坂口は引き手争いを長く続けることを許さず。釣り手一本を畳んで前隅に崩し、相手が屈んだ瞬間に引き手を袖を得る巧い組み立てで距離を詰める。

そして1分25秒、両手で圧を掛けた坂口の前に手塚が試合場を割る。副審1人が状況を良く見極めて坂口の「押し出し」を主張。埼玉栄ベンチからも「出しちゃ駄目だ、引いてこい」とこの反則裁定を予期した激しい檄が飛ぶが、合議の結果下された裁定は手塚に対する場外の「指導2」。

これで決勝点の権利を得た坂口であるが、以降も前に出て攻勢を緩めず。最低1つの「指導」を取り返さねばチームの負けが決まってしまう手塚は坂口の組み手の上手さと圧力の強さに反撃のきっかけ掴めず、崩されて潰れてしまうこと2度。「指導3」失陥の危機である。

そして1分28秒、坂口まず釣り手を横襟に入れて一瞬ガッチリ組むと、ツイとこれを離して左払巻込。止められ、捨てられた手塚根こそぎ体重を持っていかれて一回転「一本」。

劇的決着、スコア2-1で全戦が終了。埼玉栄が2連覇達成、2年連続2度目の全国中学校大会制覇を成し遂げた。

埼玉栄中(埼玉) 2-1 東海大相模高中等部(神奈川)
(先)杉野瑛星×引分×服部辰成
(次)粂田和樹△優勢[技有・大内返]〇木原慧登
(中)新井道大〇優勢[僅差]△田中詩音
(副)峰優月×引分×金杉元太
(大)坂口稜〇払巻込(1:38)△手塚春太朗


前で潰し、中堅でスコアを整え、最後は坂口が決めるという埼玉栄のシナリオ通りに進んだ試合。チームの意思統一がしっかり取れていた。大野勝浩監督が「昨年のチームと違って体が小さく、当初はどうなるのかと心配だった」という代だが、エース坂口のみでなく残る4枚も非常に鍛えられていた。いわゆる強豪校の中に、序盤は圧勝、相手のレベルが上がると途端に我慢が効かなくなる「勝てる相手に徹底的に強い」タイプも多い中、取るべき試合の攻撃力はもちろん、ここぞの試合での凌ぐ力や攻め返す勇気がしっかり練られていた。前代の優勝のインパクトがまだ体験として体に残るうちに、その高い意識のままチームを鍛え上げてついに頂点レベルまでチーム全体が押しあがったという印象。サニックス旗ベスト8、近代柔道杯3位からの全国制覇劇、見事であった。

入賞者と両軍監督および坂口選手と新井選手のコメント、決勝トーナメント1回戦以降の対戦詳細は下記。

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2連覇を果たした埼玉栄中

【入賞者】
優 勝:埼玉栄中(埼玉)
準優勝:東海大相模高中等部(神奈川)
第三位:国士舘中(東京)、南淡中(兵庫)
第五位:望海中(兵庫)、大蔵中(福岡)、九州学院中(熊本)、大成中(愛知)
敢闘賞:足利第一中(栃木)、高川学園中(山口)、紀見北中(和歌山)、小名浜第一中(福島)、山形第四中(山形)、福井工大福井中(福井)、崇徳中(広島)、藍住中(徳島)

※埼玉栄中は2連覇

埼玉栄中・大野勝浩監督のコメント
「うれしい。やった!という気持ちです(笑)。今年のチームは坂口以外は体も小さく、昨年優勝した時にはもう『来年はどうなるのか』と保護者の方々から心配する声があがったくらい。翌日から毎日『全中優勝』『2連覇』と敢えて言い続けて、とにかく口に出すこと、出させることで意識を高く持つというか、良い意味で勘違いさせながら、厳しい練習をしてきました。もちろん昨年同様、ノリノリのトレーニングも併せてですね(笑)。今年は根性のあるチーム。トレーニングをしっかり積んでいるのでスタミナにも自信ありで、競れば競るほどうちに有利になると思っています。技が切れるタイプはいませんし大人しい子が多いのですが、『スタミナと根性と、ノリ』の代ですね。(-決勝を振り返ってください。前で粘るプランだったと思いますが、次鋒戦で先制点を許しました)昨年、うちが優勝を決めたときが、ラスト1秒で決まった技だったんですね。それで普段から『全中は1秒(で決まる)』とこれもスローガン的に言い続けていたので、選手も慌てず以後を戦えたと思います。関東大会で戦っている相手ということもあり、個々が自分の役割をしっかりわかっていた。副将の峰が頑張って繋いでくれたことが大きかったですね。(-内容差ビハインドで坂口選手に回りましたね?)攻め切る稽古をしっかり積んで来たので、信頼していました。(-2連覇で、入学希望者も増えるのでは?)それがですね、敷居が高いと思われてしまっているのかなかなかそういうわけでもなく、地元の子がほとんど。強い子もまだまだそうでない子もいますので、ぜひ色々な選手に門を叩いてほしいと思います(笑)。次の目標は、この子たちが高校でも全国制覇してくれること、そして、まだ埼玉栄から出ていない、世界選手権の日本代表を育てることです。」

東海大相模高中等部・高橋陸監督のコメント
「サニックス旗と近代柔道杯に続いて2位。なかなか1番になれませんね。埼玉栄さんは良い稽古をしているなと感じました。うちは試合が粗削りで、まだまだ細かい部分が出来ていない。ただ、選手は本当に良く頑張りました。この試合を良い経験に、そして悔しさをバネに、高校、大学でも頑張ってもらいたいです。」

埼玉栄中・坂口稜選手のコメント
「2連覇出来てうれしい。プレッシャーはありましたが、全試合取るつもりで頑張りました。ただ準々決勝、引き分け以上で勝ちの状況で、まさに引き分け狙いの試合をしてしまい、これで集中力が切れて次の試合でもリズムが狂ってしまっていた。なのでその後は余計に攻める気持ちを強く持って戦いました。(-決勝はそのままでも勝ちなのに、投げに行きましたね?)最後なので、投げて勝ちたい、必ず取るんだと思っていました。(-自分の柔道の長所は?)技が物凄く切れるとは思わないのですが、技だけで決めることが出来なくても、組み手をしっかりやって、先に『指導』を作って、その上で投げにいけるところだと思います。(-今年のチームはどんなチーム?)昨年みたいにスタートから日本一を目指せるほど強くはなかったですし体も小さかったですが、食トレも頑張って、ここまでこれたと思います(笑)。将来はオリンピックで金メダルを獲るのが目標です。」

埼玉栄中・新井道大選手のコメント
「決勝はスコアで負けていたので、とにかく攻めるしかないと思って前に出続けました。スタミナには自信があるので、前に出ればなんとかなると信じて頑張りました。勝てて本当に良かったです。」

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準優勝の東海大相模中

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第3位の国士舘中

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第3位の南淡中

【決勝トーナメント1回戦】

望海中(兵庫) 2-1 足利第一中(栃木)
(先)高森和×引分×蓬田湧馬
(次)高橋憲司×引分×内藤智
(中)永澤慎悟△内股(0:12)〇齋五澤凌生
(副)中村乾渡〇小外刈(0:48)△萩原魁聖
(大)村瀬浩樹〇小外刈(0:14)△村瀬浩樹

国士舘中(東京) 4-1 高川学園中(山口)
(先)長田虎次郎〇優勢[技有]△川口大輝
(次)横手和輝〇合技(1:37)△山本昇岳
(中)唐木康大〇払巻込(1:33)△岡村颯馬
(副)若崎喜志△合技(1:52)〇嶧⽥遼太郎
(大)畠山凱〇払巻込(0:51)△末冨晴斗

埼玉栄中(埼玉) 4-0 紀見北中(和歌山)
(先)杉野瑛星×引分×西畑聡汰
(次)粂田和樹〇合技(2:32)△尾田碧羽
(中)新井道大〇合技(1:12)△松下颯太
(副)峰優月〇合技(1:39)△野口育吹
(大)坂口稜〇合技(2:22)△表野銀次

大蔵中(福岡) 5-0 小名浜第一中(福島)
(先)四元羅生〇合技(0:41)△加藤真那登
(次)田代大介〇優勢[僅差]△山田伊織
(中)髙口誠雄〇優勢[僅差]△中村快立
(副)熊谷諒也〇合技(0:36)△矢吹武流
(大)石川諒太郎〇横四方固(0:30)△石井聖

南淡中(開催地) 4-1 山形第四中(山形)
(先)向野翔大〇合技(1:06)△深瀬皓也
(次)鳥海廉〇優勢[技有]△澁谷悠吏
(中)出口巧馬〇払巻込(0:21)△小林健琉
(副)福村飛翔△優勢[技有]〇松田康孝
(大)澤谷魁人〇合技(1:55)△山﨑佑飛

九州学院中(熊本) ②-2 福井工大福井中(福井)
(先)高井陽平△払巻込(0:33)〇上口彪覇
(次)岩永達典△優勢[技有]〇宗広泰河
(中)大谷恭弘〇反則[指導3](2:04)△冨永拓真
(副)平見蓮×引分×板取将生
(大)牧野泰晟〇内股(0:40)△花澤真輝

大成中(愛知) 3-1 崇徳高(広島)
(先)鈴木恵介〇合技(1:06)△田中虎之介
(次)山科啓容×引分×田中竜之介
(中)三並壮太〇谷落(0:27)△中祖俊輔
(副)佐々木勇翔△優勢[技有]〇高原健伸
(大)鈴木魁人〇合技(1:13)△宮本颯大

東海大相模高中等部(神奈川) 5-0 藍住中(徳島)
(先)服部辰成〇抱分(0:12)△三ツ石大剛
(次)木原慧登〇合技(2:10)△志宇知稜斗
(中)田中詩音〇大外刈(0:41)△秋葉瑛寿
(副)金杉元太〇合技(1:06)△紙永雄大
(大)手塚春太朗〇崩上四方固(0:36)△吉田守利

【準々決勝】

国士舘中(東京) 3-1 望海中(兵庫)
(先)長田虎次郎〇合技(1:21)△高森和
(次)横手和輝〇内股(0:17)△高橋憲司
(中)唐木康大×引分×永澤慎悟
(副)若崎喜志△優勢[技有]〇中村乾渡
(大)畠山凱〇優勢[技有]△村瀬浩樹

埼玉栄中(埼玉) 2-0 大蔵中(福岡)
(先)杉野瑛星×引分×四元羅生
(次)粂田和樹×引分×田代大介
(中)新井道大〇反則[指導3](2:25)△髙口誠雄
(副)峰優月×引分×熊谷諒也
(大)坂口稜〇優勢[僅差]△石川諒太郎

南淡中(開催地) 3-0 九州学院中(熊本)
(先)向野翔大〇優勢[技有]△高井陽平
(次)鳥海廉〇合技(1:03)△岩永達典
(中)出口巧馬〇払巻込(2:08)△大谷恭弘
(副)福村飛翔×引分×平見蓮
(大)澤谷魁人×引分×牧野泰晟

東海大相模高中等部(神奈川) 2-1 大成中(愛知)
(先)服部辰成〇優勢[技有]△鈴木恵介
(次)木原慧登〇優勢[技有]△山科啓容
(中)田中詩音×引分×三並壮太
(副)金杉元太×引分×佐々木勇翔
(大)手塚春太朗△合技(3:05)〇鈴木魁人

【準決勝】

埼玉栄中(埼玉) 2-0 国士舘中(東京)
(先)杉野瑛星〇合技(3:10)△長田虎次郎
(次)粂田和樹×引分×横手和輝
(中)新井道大〇合技(2:35)△唐木康大
(副)峰優月×引分×若崎喜志
(大)坂口稜×引分×畠山凱

東海大相模高中等部(神奈川) 3-1南淡中(開催地)
(先)服部辰成〇合技(0:56)△向野翔大
(次)木原慧登〇優勢[技有]△鳥海廉
(中)田中詩音×引分×出口巧馬
(副)金杉元太〇合技(1:17)△福村飛翔
(大)手塚春太朗△合技(0:55)〇澤谷魁人

【決勝】

埼玉栄中(埼玉) 2-1 東海大相模高中等部(神奈川)
(先)杉野瑛星×引分×服部辰成
(次)粂田和樹△優勢[技有・大内返]〇木原慧登
(中)新井道大〇優勢[僅差]△田中詩音
(副)峰優月×引分×金杉元太
(大)坂口稜〇払巻込(1:38)△手塚春太朗

※ eJudoメルマガ版8月18日掲載記事より転載・編集しています。

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