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【レポート】第68回インターハイ柔道競技・女子個人試合7階級マッチレポート

(2019年8月15日)

※ eJudoメルマガ版8月15日掲載記事より転載・編集しています。
第68回インターハイ柔道競技・女子個人試合7階級マッチレポート
→女子個人戦プレビュー
→女子個人全試合結果(eJudoLITE)
→女子第1日3階級速報ニュース
→女子第2日4階級速報ニュース

文責:古田英毅
撮影:eJudo編集部

■ 48kg級 古賀若菜が3連覇達成、決勝は白石響に辛勝
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2回戦、古賀若菜が野中里奈から隅落で2つ目の「技有」

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3回戦、「技有」を得た白石響はすかさず腕を括って抑え込みに繋ぐ

(エントリー48名)

これぞと目された注目選手4名が順当にベスト4に残り、その中から古賀若菜(福岡・南筑高)と白石響(熊本・熊本西高)が決勝に勝ち残った。昨年度大会決勝の、再戦カードである。

3連覇を狙う古賀は4月の全日本選抜体重別に優勝して、シニアを含めた今年度体重別国内最強選手の称号を得たばかり。7月のグランプリ・モントリオールでは初出場にしてワールドツアー初優勝を飾り、リオ五輪王者パウラ・パレト(アルゼンチン)をも倒しており、今大会は一段ステージの違う注目を集めての登場だ。1回戦は市原遥(岐阜・鶯谷高)を1分2秒得意の大内刈に沈めて「一本」、2回戦は野中里奈(群馬・常磐高)を3分48秒「韓国背負い」(背負投)と隅落の合技「一本」、3回戦は宮井杏(大阪・東大阪大学敬愛高)を背負投で逆側に抜け落として1分46秒「一本」、準々決勝は原田瑞希(大分・柳ヶ浦高)を開始20秒の送襟絞に捉えて「一本」とおおむね順調な勝ち上がり。高校選手権の覇者・吉岡光(千葉・八千代高)との準決勝はGS延長戦まで持ち込まれたが、延長53秒に背負投で逆側に抜け落として「技有」確保。徹底マークを跳ねのけてしっかり決勝まで勝ち残った。

昨年の準優勝者、3月の高校選手権では52kg級でも優勝を飾っている白石は2回戦で山口さき(埼玉・埼玉栄高)をGS延長戦「指導2」(僅差)で破り、3回戦は千葉美月(宮城・東北高)を合技「一本」、準々決勝は佐藤暖心(神奈川・横須賀学院高)を背負投と横四方固の合技「一本」で退ける。勝負どころの中馬梨歩(鹿児島・国分中央高)との準決勝は、「技有」優勢でしっかり勝ち抜け、再び古賀への挑戦権を得ることとなった。

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決勝、序盤から白石が押し込みパワーでは上の印象

【決勝】

古賀若菜〇GS反則[指導3](GS2:36)△白石響

古賀が左、白石が右組みのケンカ四つ。白石が前に出て右小外刈、迎え撃った古賀が低く左体落を仕掛けてもろとも潰れ、しかし白石が先に立って捲らんと体を突っ込んだところで「待て」。続く展開も白石の出足払に古賀が腹ばい、白石は立ったまま引き上げんとし「待て」。さらに続く攻防も白石の強烈な右小内刈に古賀が場外に弾き出され、ここまでを見る限りパワーでは白石が上の印象。白石が力で押し込み、古賀が散発ながら技を仕掛けてこれを凌ぐという展開と解釈される。試合時間は50秒。

白石が場外際まで陣地を進め、両者が前屈する形での探り合いが続く。押し込まれた古賀再びノーステップからの体落に身を躍らせ、白石が膝をついて「待て」。以後の腰の入れ合いもどちらかというと白石の体の力が勝るように思われたが、1分40秒白石に袖口を握り込んだ咎で「指導」。意外なテクニカルファウルでスコア上は古賀がリード。

以後は互いに前屈して腰で蓋をしながら、白石が展開を引っ張る形で技の仕掛け合い。2分過ぎには白石の右小外刈を古賀が左背負投に切り返して流し、2分32秒には白石が組み際の右小外刈で追いかけて古賀が腹ばい。2分44秒白石の片襟を差しての右小内刈を古賀が左大内刈に切り返して潰れ、3分過ぎには白石の右大内刈を古賀が片手の左背負投で流す。

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古賀が仕掛けた縺れ際の攻防も白石が弾き返すことが続く

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古賀が相手の小外刈を素早い反応で左内股、しかし白石は透かして捩じり返す

この白石の技を古賀がなんとか切り返す展開のハイライトは3分13秒。白石が奥襟を叩いて右小外刈に入らんとしたその出籠手を古賀が吸い込むように抱きついて左浮腰に切り返す。非常に巧みなタイミングの一撃だったが、白石が腹を出して踏ん張ったまま尻餅をついてこの攻防は収束、力で技を押しとどめた格好で「待て」。3分23秒には双方に「取り組まない」咎による「指導」が与えられ、累積警告が「2」となった白石は形上後がなくなる。

白石は加速。奥襟を握っての右小外刈、さらに引き手に相手の注意を逸らしながらの右小外刈で腹ばいに落とし、横三角で攻める。ここで本戦4分が終了、試合はGS延長戦へ。

古賀は勝負どころと見て明らかに加速。開いた立ち位置から鋭く低い左体落、立ち直るなりすかさず同じモーションからの左大内刈を放つが、白石は耐え切る。白石続いて片手の小外刈で追い掛けると古賀すかさず反応、勢いよく左内股で跳ねるが、一瞬舞い掛けた白石空中で脚を外すと着地しながら右背負投の形で体を突っ込み、両者着地の時点での優位は白石。古賀がしっかり手立てを尽くしているにも関わらずことごとく白石が防いで、しかも攻め返すという状況。

試合時間はGS2分を超え、それでも古賀は集中を切らずに攻め続ける。しかし片手の左背負投は白石が潰し、抱きつきに出れば絡みつくような小外刈で腹ばいに落とされ、ならばと支釣込足で引き寄せながら放った左の片手背負投も、白石は立ったまま耐え切る。繰り出す引き出しがことごとく弾かれるという、非常に苦しい状況。

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古賀が突進、一瞬集中を切った白石が畳を割る

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白石に3つ目の「指導」で古賀の勝利が決まった

しかし古賀はめげずに内股、体落、さらに片手の左背負投からの左体落と攻めの姿勢を緩めない。白石は弾き返し続け、片手の右小内刈で対抗。しかし延長2分半を超えたところで古賀が前に出ると、集中のエアポケットに嵌ったか意外なほどあっさり、畳を割ってしまう。

「思わず出た」「フラリと出た」としか形容しようのない、しかし決定的なアクション。主審は白石に場外の「指導」を宣し、これで白石の累積警告は「3」。押していたのは白石だが、テクニカルファウル2つが命取り。これで古賀のインターハイ3連覇が決まった。

決勝の苦戦。古賀の心の強さを改めて見せつけられたという印象。力が強い相手に押しこまれながら、攻防一致のタイミングでの腰技に、前技フェイントの後技、片手技で入り込んで拾い直しての両手技、さらに組み手襲来に合わせての抱きつき技と手立てを尽くしたにも関わらず、まったく投げが決まる気配がない。そして自身の優位は絶対視されており、長引けば長引くほど会場が相手の善戦に沸く状況。それでも休むことなく仕掛け続け、ついに一瞬相手が集中が切り、ミスを犯すところまで辿りついた。ここまで厳しい試合をテクニカルファウルで拾うという試合力の高さは尋常ではない。形上大苦戦の大会であったが、単に才能ある選手というカテゴリに収まらない、古賀の心の強さが垣間見えた大会であったと総括したい。

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3連覇の偉業を達成した古賀若菜

【入賞者】
優 勝:古賀若菜(福岡・南筑高)
準優勝:白石響(熊本・熊本西高)
第三位:中馬梨歩(鹿児島・国分中央高)、吉岡光(千葉・八千代高)
第五位:宮城杏優菜(沖縄・沖縄尚学高)、佐藤暖心(神奈川・横須賀学院高)、原田瑞希(大分・柳ヶ浦高)、吉田さくら(北海道・札幌北斗高)

古賀若菜選手のコメント
「中学では3連覇出来なかったので、高校で達成出来て本当に嬉しいです。決勝はポイントが取れなかったですが、まずは目標の3連覇が出来たことが嬉しい。(-決勝について?)前に試合をしたこともあって研究されていると思いましたし、足技が上手い相手。ポイントを取られそうでしたが、勝ちたいという気持ちだけで頑張りました。(-既にワールドツアーで優勝、パウラ・パレトを振り回すような選手が高校カテゴリで苦戦する。何が違うんでしょう?)シニアと違って研究されているということもあるし、海外の選手と違って日本は足技の上手い選手がいっぱいいる。危なかったと思います。(-昨年までと比べての成長は?)先に『指導』を取られると焦るので、こちらが反則ポイントでも先行するような展開を心掛けています。それが少し出来るようになってきたかなと思います。(-この先は?)全日本ジュニアでしっかり勝って、全ての大会で優勝。そして東京五輪に出て、勝ちたいです。」

【準々決勝】
中馬梨歩〇GS小外刈(GS0:34)△宮城杏優菜
白石響〇優勢[技有]△佐藤暖心
古賀若菜〇送襟絞(0:20)△原田瑞希
吉岡光〇袖釣込腰(1:16)△吉田さくら

【準決勝】
白石響〇優勢[技有]△中馬梨歩
古賀若菜〇GS技有・背負投(GS0:53)△吉岡光

【決勝】
古賀若菜〇GS反則[指導3](GS2:36)△白石響

■ 52kg級 川田歩実が初優勝、得意の背負投で「一本」連発
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2回戦、川田歩実が塩原未々から袖釣込腰「一本」

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決勝まで勝ち上がった東玲奈

(エントリー48名)

決勝に進んだのは川田歩実(東京・修徳高)と東玲奈(大分・柳ヶ浦高)の2名。

3月の全国高校選手権で3位入賞の川田は優勝候補の一角。この日は2回戦で塩原未々(長野・松商学園高)を2分0秒袖釣込腰「一本」、3回戦で吉田涼(沖縄・沖縄尚学高)を1分0秒背負投「一本」、準々決勝は山﨑朱音(石川・金沢高)を1分54秒小内刈と背負投の合技「一本」と出色の勝ち上がり。事実上の決勝と目された高校選手権準優勝者・藤城心(富士学苑高)との準決勝もあくまで立って勝負、背負投「技有」で勝ち抜けて見事決勝進出決定。

一方の東は混戦ブロックをしぶとく勝ち上がっての決勝進出。1回戦は野上莉来奈(宮城・東北高)を「技有」優勢、2回戦は永吉梓(兵庫・高砂高)を1分36秒合技「一本」、3回戦は古里幸永羽(長崎・長崎明誠高)をGS延長戦崩上四方固「一本」で破ってベスト8入り。準々決勝は川西陽菜(岡山・創志学園高)をGS延長戦の末僅差の優勢で下し、準決勝は島田莉子(埼玉・獨協埼玉高)をこれも僅差の優勢で退け、インターハイファイナリストの栄を得た。

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決勝、開始早々の川田得意の背負投が決まり「一本」

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【決勝】

川田歩実〇背負投(1:03)△東玲奈

右相四つ。川田手先が接触するなり右小内刈で押し込み、東たまらず膝を屈して「待て」。川田続く展開も両手を張って体ごと接近、右背負投と右小内刈を放つ。東苦しい体勢ながらも両襟の内股で打開を期するが川田に押し込まれながらの技で反転し切れず、これは効かず。川田引き手を絞ると背負投フェイントの右小内刈で大きく崩し、東は腹這い。54秒東に消極的との咎で「指導」。

試合が再開されると川田突進、間髪入れずに二本を持ち、東が横変形の位置にややずれた瞬間畳を蹴って右背負投。軸足から回転を起こして低く座り込むと体ごと持っていかれた東は前傾、背中に相手を吸い込んだ川田は甲を畳に着けた姿勢からジャンプするように膝を伸ばし、体を深く折りながら投げ切り「一本」。

まさに一方的展開。相手に何もさせぬまま、試合をまるごと呑み込んだ川田の完勝。川田、見事初の全国タイトルを手にした。

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52kg級優勝の川田歩実

【入賞者】
優 勝:川田歩実(東京・修徳高)
準優勝:東玲奈(大分・柳ヶ浦高)
第三位:藤城心(山梨・富士学苑高)、島田莉子(埼玉・獨協埼玉高)
第五位:山崎朱音(石川・金沢高)、足立光(滋賀・比叡山高)、川西陽菜(岡山・創志学園高)、白土涼乃(茨城・土浦日大高)

川田歩実選手のコメント
「得意技の背負投で『一本』決められたし、本当に嬉しいです。春(高校選手権)で勝ち切れず3位に終わり、それからインターハイの優勝目指して頑張ってきました。あの悔しさを忘れず、そして目の前の試合を1つ1つ、集中を切らずに戦ったことが勝因だと思います。1回戦から強い相手が続きましたが、緊張せずに、楽しくやろうとも考えていました。高校に入ってから、楽しくやろうとすることが冷静な判断を生んだり、自分の柔道を出すきっかけになることを知って、これが今日も生きたと思います。(-準決勝の藤城選手との試合を振り返ってください?)寝技が上手い選手で、高校選手権でも抑え込まれて負けています。寝技に引き込まれないよう、あくまで立って勝負したことが良かった。(-好きな選手、尊敬する選手などはいますか?)阿部詩選手です。一度、練習が終わったあとに我儘で無理に稽古をお願いしたことがあるんですが、快く受けてくれて、それでボコボコにされてしまいました。スピードと技の豪快さに憧れます。阿部選手みたいになりたいし、いつの日か追い抜きたい。(-将来は?)世界で活躍したいというのは勿論ですが、将来は教員になって柔道を教えたい。松本あゆみ先生に色々教えてもらったことが今日の勝ちに繋がりました。自分もそういう先生になりたいです。(-柔道の面白いところは?)私は、考えた技が練習で本当に決まった時に何より面白さを感じます。そういうことを、伝えられるようになりたい。」

【準々決勝】
川田歩実〇合技(1:54)△山﨑朱音
藤城心〇合技(2:45)△足立光
東玲奈〇GS僅差(GS2:04)△川西陽菜
島田莉子〇優勢[技有]△白 涼乃

【準決勝】
川田歩実〇優勢[技有・背負投]△藤城心
東玲奈〇優勢[僅差]△島田莉子

【決勝】
川田歩実〇背負投(1:03)△東玲奈

■ 57kg級 中水流りりが2冠達成、切れ味鋭い投げは今大会も健在
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2回戦、中水流りりが西川みはるから小外刈でまず「技有」

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3回戦、岡田恵里佳が井田侑希から大外刈「技有」

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準決勝、GS延長戦で中水流が岡田から「技有」

(エントリー48名)

決勝に進んだのは中水流りり(東京・渋谷教育学園渋谷高)と袴田佳名瑚(静岡・藤枝順心高)の2名。

3月の全国高校選手権を制した中水流は今大会優勝候補の筆頭。2回戦は西川みはる(広島・広島皆実高)を小外刈と内股で立て続けに投げて3分6秒合技「一本」、3回戦は武田優香(愛知・大成高)を僅か16秒の内股「一本」に仕留め、準々決勝は大森朱莉(福岡・敬愛高)から払腰「技有」を奪って快勝。昨年度インターハイ王者・岡田恵里佳(京都・立命館宇治高)との準決勝に辿り着く。

岡田もここまで大西慧(徳島・板野高)を2分21秒袖釣込腰「一本」、大場遥加(鳥取・米子高専高)を49秒一本背負投「一本」、井田侑希(埼玉・児玉高)を2分29秒大外刈と崩上四方固の合技「一本」、林莉子(茨城・土浦日大高)を背負投から繋いでの横四方固「一本」と他をまったく寄せ付けず。まさにこの試合が事実上の決勝戦である。

この試合は右相四つ。横変形で組み合ったところから中水流の内股、岡田の巴投と技の応酬。岡田得意の左袖釣込腰を封じ続けて攻める中水流やや優位と観察されたが、GS延長戦30秒に中水流の大外刈を岡田が袖釣込腰の形で返し、主審は「技有」を宣告。しかしこれが映像チェックの結果取り消され、試合は継続。GS1分8秒に岡田がおそらく出足払に足を延ばすと、中水流加速してこれを出足払に捉え返し、間髪置かずに浴びせて押し込み「技有」確保。大一番にみごと勝利し、決勝への切符を掴んだ。

もう1人の決勝進出者・袴田は1回戦で佐藤和夏子(山形・山辺高)から57秒大外刈「一本」、2回戦は髙浜莉香(熊本・熊本西高)から32秒内股「一本」と出色の立ち上がり。勝負どころの3回戦は全日本カデ王者の1年生・江口凛(神奈川・桐蔭学園高)からGS延長戦50秒「指導3」をもぎ取って勝ち抜け、準々決勝は三﨑茉莉(鹿児島・鹿児島南高)から1分32秒大外刈「一本」で快勝。準決勝はここまで全試合一本勝ちの中橋優香(岡山・創志学園高)から1分35秒払巻込「技有」を得て快勝。5戦して4つの「一本」、1つの「技有」と混戦ブロックを素晴らしい内容で制して、見事決勝進出決定。

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決勝まで進んだ袴田佳名瑚

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決勝、中水流得意の内股が閃き鮮やか「一本」

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57kg級優勝の中水流りり

【決勝】

中水流りり〇内股(0:18)△袴田佳名瑚

決勝はまさにあっという間の決着。中水流が組むなり作用足を振り上げて探りを入れると、体を大きく使って右内股。もっとも威力のある技を初弾に持って来た中水流の思い切りの良さが奏功、受けの強い袴田だがこれを捌けず、まさに吹っ飛んで「一本」。

この間僅か18秒。激戦ブロックを勝ち上がって来た中水流が「山の差」を見せつけた形で快勝。高校選手権に続く2冠獲得の偉業を成し遂げた。

日本の57kg級はあらゆるカテゴリに様々なタイプの強者が揃い、まさしく多士済々。その中にあって、長身痩躯かつここまで技の「切れ味」を前面に押し出して出世する中水流のようなタイプの出現は珍しい。この伸びやかな柔道のままでシニアのトップに伍していくことは階級の状況的になかなか難しいのではないかと思われるが、久々、単に結果を残すだけでなくその勝ちぶり自体に夢を託せる、スター候補が現れたと捉えて良いのではないだろうか。まずはこのままのスタイルでどこまでトップと戦えるのかを楽しみに、また何を上積みすることで次の成長を図るのか、その方向性自体を注目したい。未完の大器、中水流のこれからに注目である。

【入賞者】
優 勝:中水流りり(東京・渋谷教育学園渋谷高)
準優勝:袴田佳名瑚(静岡・藤枝順心高)
第三位:岡田恵里佳(京都・立命館宇治高)、中橋優香(岡山・創志学園高)
第五位:大森朱莉(福岡・敬愛高)、林莉子(茨城・土浦日大高)、中村苑美(長野・松商学園高)、三崎茉莉(鹿児島・鹿児島南高)

中水流りり選手のコメント
「2冠を獲れて本当に嬉しいです。コーチの上村(凛歩)先生からは、春を取って回りからの印象が変わるけど、自分の柔道を貫きなさいと声を掛けて頂いていました。投げて勝つ、攻めの柔道をやり切ろうと思っていましたし、ただ1度の勇気を振り絞れるかどうかがポイントだとも言っていただいたことが心に響いていました。ここまで来ればレベルの差はなく、どの選手とも力は紙一重。たった1回の勇気を振り絞れるかどうかで大きく結果が変わる。それを逃すか取るかで決まる、と。思い切り行けたのはその言葉のおかげもあると思います。(-準決勝では昨年度王者の岡田選手に、高校選手権に続いて勝利しましたね?)レベルは遥かに上、自分より明らかに強い選手だと思っていて、前回勝てたのは自分が挑戦する立場で勢いに乗っていたから。ですので今回も自分が挑戦者だという考えを貫きました。(-ポイントを巡って合議がありましたね?)返されたかな?でも掛けての結果だから仕方ないかな、などと考えていました。ただ、貰ったチャンスを逃がさないよう、その後はいっそう必死に戦えたと思います。(-将来の目標は?)日本を代表するような選手になりたいです。」

【準々決勝】
中水流りり〇優勢[技有]△大森朱莉
岡田恵里佳〇GS横四方固(GS1:43)△林莉子
中橋優香〇内股(0:55)△中村苑美
袴田佳名瑚〇大外刈(1:32)△三崎茉莉

【準決勝】
中水流りり〇GS技有・出足払(GS1:06)△岡田恵里佳
袴田佳名瑚〇優勢[技有・払巻込]△中橋優香

【決勝】
中水流りり〇内股(0:18)△袴田佳名瑚

■ 63kg級 山口葵良梨が初優勝、決勝は鮮やか「秒殺」
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注目の準々決勝、山口葵良梨は高校選手権の覇者畑田暁菜を「指導3」で破る

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1回戦、松田日和を相手に「技有」を失った小齊穂奈美だが内股で2つの「技有」を得て逆転。

(エントリー48名)

決勝に勝ち進んだのは山口葵良梨(福岡・大牟田高)と小齊穂奈美(山梨・富士学苑高)の2名。

3月の全国高校選手権で3位、6月の九州大会を全試合一本勝ちで制している山口は素晴らしい勝ち上がり。2回戦は本田詩乃(広島・広島皆実高)に合技「一本」、3回戦で伊藤くらら(岐阜・美濃加茂高)に背負投「一本」で勝利すると、ここからは優勝候補と連戦。準々決勝は全国高校選手権準決勝で苦杯を喫した王者・畑田暁菜(兵庫・須磨学園夙川高)をGS延長戦2分42秒「指導3」を得て畳から追いやり、準決勝は渋谷萌々音(埼玉・埼玉栄高)をこれもGS延長戦「指導」を得て僅差で勝利。決勝の畳へと辿り着いた。

一方の小齊は高校選手権で準優勝者、こちらも2年生ながら優勝候補の一角。1回戦は松田日和(富山・小杉高)に小外刈を返されて「技有」を失う難しいスタートだったが、すぐさま内股で2つの「技有」を取り返して1分56秒合技「一本」。2回戦は和田あおい(山口・西京高)を「技有」優勢、3回戦は中間瑞紀(大分・大分西高)を僅差の優勢、準々決勝は鹿歩夏(佐賀・佐賀商高)を2分12秒合技「一本」と順調な勝ち上がり。準決勝は関東大会の覇者、同じ2年生の谷岡成美(東京・渋谷教育学園渋谷高)から57秒に得た小外刈「技有」をテコに勝ち抜け。高校選手権に続いて決勝の畳へと駒を進めることとなった。

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決勝、試合が始まるなり山口の払腰が決まり「一本

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63kg級優勝の山口葵良梨

【決勝】

山口葵良梨○払腰(0:14)△小齊穂奈美

決勝はあっという間の決着。山口が右、小齊が左組みのケンカ四つ。遠間から小齊が左小外刈を当て、これをきっかけに上から釣り手で奥襟を掴む。山口下から回して後襟を掴み前して応じ、反時計回りに体を開く。小齊が引き手で襟を掴まんとこの回転を追いかける形で右手を伸ばすと、山口この右袖を左引き手で捉えて右払腰。相手の運動方向にぴたりかち合ったこの技見事に決まり、小齊ほとんど縦に一回転「一本」。

試合時間は僅か14秒、鮮やかな一撃で山口が日本一の座を手にした。

【入賞者】
優 勝:山口葵良梨(福岡・大牟田高)
準優勝:小齊穂奈美(山梨・富士学苑高)
第三位:渋谷萌々音(埼玉・埼玉栄高)、谷岡成美(東京・渋谷教育学園渋谷高)
第五位:畑田暁菜(兵庫・須磨学園夙川高)、古城菜南美(鹿児島・国分中央高)、石岡来望(岡山・創志学園高)、鹿歩夏(佐賀・佐賀商高)

山口葵良梨選手のコメント
「(-あっという間の勝利でしたね?)自分でもびっくりです(笑)。うれしい。ふたつしっかり組んで投げるのが得意で、そういう稽古を積んできました。その成果が決勝で出て良かったです。春に個人戦で負け、金鷲旗も大将で出ましたがチームを勝たせることが出来なかった。その悔しさをバネに頑張ってきました。松岡亮先生が中高6年間親身になって指導してくれて常に心配してくれたこと、家族がどんなに遠いところでの試合でも応援に来てくれたことなど、支えてくれた皆さんのおかげです。体力面に課題があると思いますし、寝技もまだまだ。二本持って投げに行くことはもちろん、こういう弱点もしっかり克服していきたいです。五輪で金メダルを獲ることが夢です」

【準々決勝】
山口葵良梨○GS反則(GS2:42)△畑田暁菜
渋谷萌々音○優勢[僅差]△古城菜南美
谷岡成美○巴投(3:37)△石岡来望
小齊穂奈美○合技(2:12)△鹿歩夏

【準決勝】
山口葵良梨○GS僅差(GS0:43)△渋谷萌々音
小齊穂奈美○優勢[技有]△谷岡成美

【決勝】
山口葵良梨○払腰(0:14)△小齊穂奈美

■ 70kg級 朝飛真実圧勝、高校選手権無差別に続く2冠獲得なる
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70kg級3回戦、朝飛真実が髙木水月から内股「技有

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準々決勝、桑形萌花は瀬戸亜香音を攻めて「指導」差の勝利

(エントリー48名)

高校選手権無差別決勝を争い、ともに4月の皇后盃全日本女子選手権出場を果たしている朝飛真実(神奈川・桐蔭学園高)と桑形萌花(兵庫・須磨学園夙川高)の対決が準決勝で組まれた。事前評としては、間違いなくこれがトーナメント最重要試合。

無差別王者・朝飛の勝ち上がりは圧倒的。1回戦は富永実希(徳島・徳島北高)から49秒の間に小外刈「技有」に内股「一本」と連取する快勝、2回戦は山下朱音(長野・松商学園高)を僅か18秒の合技「一本」に仕留め、3回戦は髙木水月(福岡・敬愛高)を2分4秒内股と崩上四方固の合技「一本」、準々決勝は澤崎凜(愛知・大成高)を1分57秒内股「一本」に斬り落とし、まさしく無敵の強さでベスト4入り。

インターハイ2連覇を狙う桑形は強敵と連戦も着実な勝ち上がり。1回戦は松村優海(三重・名張高)を僅か25秒の合技「一本」に仕留め、2回戦は村井杏弥(香川・高松商高)から僅差の優勢で勝利。3回戦は田嶋海佳(東京・帝京高)を「指導3」の反則で下し、勝負どころの準々決勝は団体戦三冠メンバーの瀬戸亜香音(山梨・富士学苑高)をGS延長戦「指導1」を奪って僅差の勝利。ライバル朝飛との対決へと駒を進めることとなった。

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準決勝の注目対決は朝飛の内股「技有」で決着

この準決勝はやはり激しい鍔迫り合い。互いに決定打ないまま試合はGS延長戦に縺れ込むこととなったが、GS48秒、ついに良い形で釣り手を得た朝飛が得意の左内股。桑形を頭から畳に突っ込ませる形で投げ切り劇的「技有」確保。王者対決に勝利した朝飛が決勝に進むこととなった。

もう1人の決勝進出者は、今夏躍進の藤枝順心高のレギュラー山本杏(静岡・藤枝順心高)。2回戦で小鮒未来(群馬・前橋育英高)をGS延長戦の僅差優勢、3回戦は辻なつ美(富山・小杉高)を1分25秒大外刈「一本」で下し、準々決勝は立川真奈(愛媛・新田高)を「技有」優勢で下す。迎えた準決勝は佐々木南(北海道・北海高)から2分2秒腕緘「一本」。大混戦ブロックを制して見事決勝への勝ち上がりを決めた。

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決勝に臨む山本杏

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朝飛次々左内股に入り込むが、山本はことごとく落ち際で回避

【決勝】

朝飛真実○優勢[技有・小外掛]△山本杏

朝飛が左、山本が右組みのケンカ四つ。試合が始まるなり朝飛が軸足を外に回しこんでの左内股。釣り手は奥襟、引き手は肩口を握っての威力ある一発であったが、引き手が深すぎたゆえか山本は回り切らず。脚は側面から落ちたが上半身は体側の接地直前に腹が下を向き、着地は腹這い。これはノーポイントとなる。続く展開も山本の腹を出しての左小外掛を朝飛が体捌き良く乗り越えてかわし、そのまま左内股。バランスの極めて良い山本、これも両足が畳を離れたが腹這いに接地してノーポイント「待て」。ここで主審は朝飛の攻勢をスコアに反映、41秒山本に消極的の咎による「指導」。

朝飛は両襟を掴んで寄せる。ここから脚を突っ込んで左内股で投げんとの構えだが、山本は頭を低く、右背負投に入りこまんと動きを起こす。朝飛その上体を前に引っ張り出すと、掌で山本の後頭を押し下げる巧みな動きで左内股。体が前に伸ばされてしまった山本だがまたもや驚異的な粘り、左手を畳について体を畳に平行にしたまま浮き、膝から着地。朝飛すかさず片手絞を試みるが山本すばやく防御して「待て」。

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山本が腹を突き出して右小外掛

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朝飛はかわして隅落様に脚を踏み出す

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小外掛の位置まで足が入り、朝飛は釣り手を強く引き付けて決め切る。「技有」

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朝飛が投げを決めんと様々取り味のあるアプローチを試み、それを山本がことごとく防いだという形。流れの変化を感じた山本ここで一計を案じ、朝飛に両襟を掴ませたまま腹を突き出して右小外掛。右膝と腹を突き上げることでそのまま相手を引っこ抜こうという野心的な一撃、じゅうぶん取り味の感じられる技であったが、朝飛は腰を切ってこれを透かすと、左足を大きく一歩踏み込んで隅落で捩じり返す。踏み込みが深く左小外掛の形となった一発、自らの体が仰け反るほど思い切って技に入っていた山本さすがにこれには耐えられない。朝飛相手が崩れるとみるや釣り手をグイと引き寄せ、頭で相手の顎を固定して突進。狭い空間に頭を押し込められた山本は反転回避叶わず落下、1分37秒「技有」。

朝飛は以後もあくまで「一本」奪取を狙って攻め続け、2分13秒には打点の高い左内股でこれもあと一歩で「技有」という場面を演出。2分28秒には両襟から思い切った左小外掛で引っこ抜き、これで四たび山本を腹ばいに落とす。直後山本はには消極的との咎で2つ目の「指導」。朝飛は続いて飛び込みの左内股を見せるがこれが弾かれ、かつ奮起した山本が「韓国背負い」、さらに左背負投と立て続けに危険な技を見せたことで、明らかにここから試合をまとめに掛かる。両襟から膝を狙った小外刈で手堅く崩し、山本の右背負投もしっかり捌いて取り合わず。吶喊攻撃に出た山本が組み際の左内股に潰れると、残り時間は僅か3秒。このまま終了ブザーとなり、朝飛の高校選手権無差別に続く今季2度目の全国制覇が決まった。

朝飛は強かった。組み手の質の高さに支えられて力以上のスコアが出ている可能性もあるが、今大会はもはや「脚を突っ込めば相手が飛ぶ」一方的な様相。観戦者としてフォーカスすべきはもはや勝敗自体にはなく、どう仕留めるかというその方法論にあったとすら言える。準決勝の桑形戦以外は力の差がありすぎ、同階級の高校生相手ではその強さが正確に測定できなかった印象。新井千鶴に新添左季、大野陽子に田中志歩とフィジカル的な怪物級が揃う日本のシニアで戦うには有無を言わさぬ体の力が必要で、さすがにこれにはまだ達していないと思われるが、少なくとももはや朝飛が戦うフィールドはシニア以外にありえない。

組み手、投げ、寝技、フィジカルが高いレベルで揃い、競り合いを制する精神力の強さも十分。団体戦から測るにここ一番で仕事が出来る責任感もあり、周囲の頑張りを自身の力に換える感性もある。敢えて言えば、長所も短所も飛び抜けたところがあるほうが伸びしろが感じられるこの世代にして、圧倒的な長所や決定的な欠陥という「破れ」が見られずバランスが良すぎることが不安といえば不安というのが、現時点での朝飛に対する筆者の評価。強者居並ぶシニアの戦いで朝飛がどのような傾き、どんな尖りを見せてくれるのか、今から非常に楽しみである。

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70kg級優勝の朝飛真実

【入賞者】
優 勝:朝飛真実(神奈川・桐蔭学園高)
準優勝:山本杏(静岡・藤枝順心高)
第三位:佐々木南(北海道・北海高)、桑形萌花(兵庫・須磨学園夙川高)
第五位:立川真奈(愛媛・新田高)、松本紗枝(奈良・奈良育英高)、沢崎凜(愛知・大成高)、瀬戸亜香音(山梨・富士学苑高)

朝飛真実選手のコメント
「(-声が嗄れている?)試合で声を出し過ぎました(笑)。高校選手権の無差別で優勝した、その日からもうインターハイがある、インターハイで勝つんだとこの大会のことばかり考えて来たので、物凄く嬉しいです。勝ちたいと思うぶん、緊張して稽古でも不安で、調子が上がらないなと葛藤することも多かった。ようやく勝つことが出来ました。(-準決勝の桑形選手との試合を振り返って頂けますか?)金鷲旗での対戦からして、背中を持って来るだろうと思っていました。しっかり釣り手を持つことと、自分は弱気になると膝をつく癖があるのでとにかく膝をつかないこと、そして技を掛けて崩れてしまっても、縺れ際では何が何でも上になること。最終的には得意の内股で投げることが出来て良かったです。(-決勝については?)練習で何回もやったことがあって、1回『韓国背負い』で投げられたことがあります。なので、とにかく早く2つしっかり持つことが大事と思っていました。本当は『一本』で決めるべき、あの場面で取り切るべきだったし、もう1度投げに行くべきでしたが、リードもあったし、最後は冷静に判断しました。先にポイントを取って、相手に前に出て来ていたので、そのぶんのやりにくさもありました。(-去年のインターハイ時点と比べて、上積みはどこと自己分析しますか?)内股だけだったところが、内股のバリエーションが増えて、小外刈や袖釣込腰など、すこしずつ、それ以外の技が出来るようになってきました。まだほんの少しですが。(-お姉さんの七海選手と乱取りをやると、どうですか?)日によって違います(笑)。(-将来は?)一番大きな目標は、オリンピックで金メダルを獲ることです。きょうは、姉が持って帰ってきてくれた優勝旗を自分も持ち帰ることが出来て、最高の1日です。」

【準々決勝】
山本杏○優勢[技有]△立川真奈
佐々木南○GS僅差(GS1:53)△松本紗枝
朝飛真実○内股(1:57)△澤崎凜
桑形萌花○GS僅差(GS1:05)△瀬戸亜香音

【準決勝】
山本杏○腕緘(2:02)△佐々木南
朝飛真実○GS技有・内股(GS0:48)△桑形萌花

【決勝】
朝飛真実○優勢[技有・小外掛]△山本杏

■ 78kg級 黒田亜紀が団体戦と併せて2冠、「富士学苑に入って良かった」
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準々決勝、黒田亜紀が芝原和花から大外巻込「一本」

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準決勝、池田紅が松本りづの肘を腕緘で極めながらの横四方固「一本」

(エントリー48名)

決勝に進んだのは黒田亜紀(山梨・富士学苑高)と池田紅(東京・藤村女子高)の2名。

エースとして富士学苑高の「三冠」達成を牽引した黒田は優勝候補の筆頭。この日は2回戦で中倉由恵(北海道・北海高)からわずか17秒の大外刈「一本」、3回戦で渡邉花胤(熊本・熊本西高)を1分3秒横三角からの崩上四方固「一本」、準々決勝は芝原和花(鹿児島・鹿児島南高)を37秒大外巻込「一本」に仕留め、そして準決勝はここまで全試合一本勝ちの強敵・杉村美寿希(滋賀・比叡山高)をも1分1秒内股「一本」で一蹴。貫録の全試合一本勝ちで決勝進出を決めた。

池田は今季の関東高校大会王者、同大会決勝では黒田の同僚平野友萌を釣込腰「一本」で下している2年生の強者。こちらも1回戦で鎌田咲弥香(岩手・盛岡南高)を54秒横四方固「一本」、2回戦は田中美佐(鹿児島・国分中央高)を47秒合技「一本」と素晴らしい立ち上がり。3回戦は佐藤香菜(京都・京都文教高)を1分26秒合技「一本」で下し、勝負どころの準々決勝も丸山みかの(福岡・敬愛高)をGS延長戦横四方固「一本」。準決勝は松本りづ(愛知・大成高)をも1分52秒横四方固「一本」で下し、こちらも全試合一本勝ちでの決勝進出である。

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袖を絞られた黒田はそのまま内股巻込も相手を引き出し切れず

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池田は打点の高い右大内刈で突進

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黒田は袖の折り込みと片襟に舵を切り、この形から大外刈を連発

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黒田は袖を折り込んだまま横を向かせ、出足払で池田を場外に弾き出す

【決勝】

黒田亜紀○反則[指導3](2:46)△池田紅

右相四つ。黒田すかさず引き手で袖を得て絞るが、池田も応じて袖を絞り返し容易に釣り手を与えぬ構え。両袖の大内刈で絡みついて黒田に粘着する。黒田は右大外刈、さらに袖を掴ませたまま大きく体を振って相手の身体を前方に伸ばし、右内股巻込。しかし自身の体勢が低すぎて相手を引き出し切れず、池田が腹ばいに畳に落ちて「待て」。

続いて黒田が引き手で袖を腹側に織り込み、後ろ頭越しに左肩裏を掴んで圧を呉れると池田たまらず膝を屈して潰れる。直後の46秒池田に「指導」。黒田優勢の情勢だが、池田は思い切って奥襟を得ると引き手を掴みながら内腿めがけて打点高く右大内刈。突進を食った黒田尻餅をついて反転、腹這いに逃れて「待て」。

池田は手先を張って黒田の袖に絡みつき、続いて黒田の組み手を剥がしながら右へ「韓国背負い」。しかし掴んだ両手のいずれも離れて掛け潰れてしまい、1分20秒偽装攻撃の「指導2」失陥。

形上後がなくなった池田だがその戦闘意欲は衰えず、引き手で黒田の釣り手の袖を絞り、またんもや担ぎ技を狙う構え。黒田は切り離し、引き手で袖を折り込んで奥襟を掴むが、奥を狙うことでこの先も袖を絞られると判断するや方針変更。釣り手を片襟に入れて煽り始める。

池田たまらず膝を屈して潰れ「待て」。黒田この手立てが有効と見て、両袖の絞り合いに誘う池田から背筋を立てて離脱。釣り手を片襟に入れて再び煽り潰す。池田突進して右の大内刈に飛び込む反撃を見せるが、解法を見つけた黒田は冷静。引き手で袖を折り込んで横を向かせては釣り手で右片襟を掴み、右大外刈、さらにそのまま煽りを呉れての右背負投と一方的に攻め続ける。

黒田は続く展開も一方的に引き手で袖を折り込み、絞り合いに誘いたい池田に一切付き合わず。このまま釣り手を肩越しのクロスに入れ、右大外刈。折り込み動作が効いて後を向かされてしまった池田はそのまま歩いて離れようとするが、黒田は追いかけて場外まで弾き飛ばす。

直後またもや黒田が片襟の右大外刈で相手の裏に抜け出し、この形のまま煽って膝をつかせたところで主審が試合を止める。2分46秒、池田に3つ目の「指導」が与えられ、この試合は終戦。これで黒田は優勝決定、見事団体戦に続くインターハイ2冠を達成した。

春以降内股の取り味が抜群に上がった黒田だが、この試合は相手のタイプを見定め、結果にこだわった手堅い戦いぶり。自身のベースを作った組み手と体の強さ、試合を優位に進める方法論の見極めの確かさで相手を置きざり。この試合に関しては、投げ合いに持ち込みたかったのは挑む池田のほうで、相手と同じ平面に降りずに戦った黒田の解は妥当であったと言える。黒田もう1つのモードである、これぞ富士学苑らしい手堅さを前面に押し出しての勝利だった。

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78kg級優勝の黒田亜紀

【入賞者】
優 勝:黒田亜紀(山梨・富士学苑高)
準優勝:池田紅(東京・藤村女子高)
第三位:杉村美寿希(滋賀・比叡山高)、松本りづ(愛知・大成高)
第五位:芝原和花(鹿児島・鹿児島南高)、小野寺美優(宮城・東北高)、丸山みかの(福岡・敬愛高)、中田杏子(埼玉・児玉高)

黒田亜紀選手のコメント
「勝ててうれしいです。相手は年下で、怖いもの知らず。冷静に対処して戦いました。2冠のプレッシャーというより、とにかく絶対に勝つと、それだけでした。投げて勝ちたかったですが、ここは『指導』でもいいからしっかり勝たなければと試合の中で作戦を変えました。釣り手を持たせてくれず、絞られてしまった。本当はそれでもしっかり持って投げに行かなければいけないのですが、ここは片襟に入れて手堅く勝ちにいきました。(-富士学苑に入った時に、ここまでの結果は考えていましたか?)まさか団体で三冠を取って、個人でも優勝するなんて思っていませんでした(笑)。1年生の頃は本当にきつくて、それでも我慢してやってきたことが結果に繋がった。富士学苑に入って良かったと思います(笑)。」

【準々決勝】
黒田亜紀○大外巻込(0:37)△芝原和花
杉村美寿希○払腰(1:07)△小野寺美優
池田紅○GS横四方固(GS1:12)△丸山みかの
松本りづ○崩袈裟固(1:38)△中田杏子

【準決勝】
黒田亜紀○内股(1:01)△杉村美寿希
池田紅○横四方固(1:52)△松本りづ

【決勝】
黒田亜紀○反則[指導3](2:46)△池田紅

■ 78kg超級 準優勝から1年、米川明穂が悲願の優勝
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1回戦、米川明穂が川原凜から内股「技有」

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準決勝、平野友萌が橋口茉央を抑え込む

エントリー48名)

決勝に進んだのは米川明穂(静岡・藤枝順心高)と平野友萌(山梨・富士学苑高)の2人。

昨年度インターハイ準優勝者、高校選手権無差別でも2年連続3位の米川はこの階級の本命。金鷲旗大会以来の好調はこの日も続き、1回戦は川原凜(北海道・北海高)を相手に「技有」優勢、2回戦では外間蘭(沖縄・沖縄尚学高)を内股「一本」、3回戦は山本菜月(大阪・星翔高)を大内刈「一本」と順調な勝ち上がり。準々決勝は波多江楽良(東京・淑徳高)を「技有」優勢で下し、準決勝は田中里沙(熊本・熊本西高)を試合時間7分を超える激戦の末に内股「一本」で退ける。見事2年連続で決勝の畳へと駒を進めることとなった。

逆側の山では1回戦で八巻衣音(広島・広陵高)と松澤佑栞(福岡・敬愛高)の有力選手2名が潰し合い、この対決は2分23秒八巻が合技「一本」で勝利。八巻は以後も一本勝ちを重ねてこのブロックを引っ張ったが、準々決勝では近い間合いの組み合いから橋口茉央(佐賀・佐賀商高)の支釣込足を食って一本負けを喫した。

このブロックからは前述の通り平野が決勝進出。2回戦で内倉亜依莉(鹿児島・鹿児島情報高)を僅か19秒の払腰「一本」に仕留める素晴らしい立ち上がり。3回戦は金田麻央(京都・乙訓高)から2分12秒横四方固「一本」、準々決勝は前戦で新井万央(兵庫・須磨学園夙川高)に一本勝ちした川口鈴王(長崎・長崎明誠高)をこれも手堅く崩上四方固「一本」で下し、迎えた準決勝は橋口茉央に払巻込と崩上四方固の合技「一本」で快勝。激戦ブロックを見事制して決勝へと勝ち上がった。

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決勝、平野が両襟の大内刈で先制攻撃

【決勝】

米川明穂○GS払腰(GS4:25)△平野友萌

平野が右、米川は左組みのケンカ四つ。平野両襟を掴んで斜めから右大内刈。米川崩れかかるが釣り手で顎を突きながら態勢を立て直し、立って引き手を求める。そのまま思い切って左内股に入るが、これは自らの体が先に突っ込んで崩れ「待て」。

米川続いて引き手で袖、釣り手で前襟を掴んでケンケンの左内股。まず押し込み、ここぞで腰を切り返して投げ切らんとするが平野の懐は深く、米川は相手に背を向けたまま空転。平野が崩されながらも米川の体をまたいだところでこの技はブレイク「待て」。

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延長戦、米川が思い切りよく左払腰

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投げ切って「一本」

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加賀谷千保監督が感涙にむせぶ米川をねぎらう

以後は引き手争いが続いてやや試合膠着、1分25秒両者に片手の咎で「指導」。米川は以後も積極的、作用足を差し込むとケンケンしながら左大内刈と左内股を渡り歩き、迫力ある攻め。平野は組み手巧みに米川の力を逃がし続けるが、自身の攻撃は牽制の片手技、あるいは浅い右大内刈に留まる。2分30秒にはこの浅い大内刈を2度続けるがいずれも米川機敏に反応、大内返に捕まえ掛け、平野はますます思い切った技を出しにくい状況。

残り時間10秒に近いところで平野が両襟の右内股、米川に耐えさせておいて力を籠めなおして投げに掛かるが、米川釣り手を突いたままほとんど崩れず。試合はこのままGS延長戦へ。

そして延長戦最初のシークエンス、ここまでの組み手の展開からするとやや唐突に、米川が良い形を作る。引き手で袖、釣り手で深く奥襟を得るほぼ文句のない状況。平野頭をさげられながらも釣り手で下から背中越しに後襟を持つが、釣り手を下から上に通して持つ形になった米川の有利はまったく変わらず。米川すぐさま左大内刈で間合いを整え、本命の左内股一撃。結果として作用足の足裏が外足を捉えて左払腰となったこの一発は釣り手の制御が良く効いており、頭を前に下げられ、かつ足元を後に払い蹴られた平野に残す手段はもはやなし。平野が頭から畳に突っ込み、次いで背中から着地。その上に米川が決めの回旋を呉れながら乗っかりこれは文句なしの「一本」。

米川、ついにタイトル獲得。最後の夏をインターハイ個人戦制覇という最高の形で終えることとなった。

1年時の高校選手権3位、そしてインターハイ2位の後は長期にわたって低調。しかし最後の大会でついに本領を発揮した米川は試合後、思わず涙。期待されながら思うような成績が出なかった、この間の葛藤が偲ばれた。

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78kg超級優勝の米川明穂

【入賞者】
優 勝:米川明穂(静岡・藤枝順心高)
準優勝:平野友萌(山梨・富士学苑高)
第三位:橋口茉央(佐賀・佐賀商高)、田中里沙(熊本・熊本西高)
第五位:川口鈴王(長崎・長崎明誠高)、八巻衣音(広島・広陵高)、谷地望(宮城・東北高)、波多江楽良(東京・淑徳高)

米川明穂選手のコメント
「もう、優勝しか見ていませんでした。ただそこだけを見ては足元をすくわれるので、一戦一戦をしっかり戦いました。試合をやるにつれて調子が良くなっていくことがわかり、決勝は何が何でも勝とう、と強い気持ちで戦えました。(-新シーズンになってから思うように成績が残りませんでしたが、今夏はひさびさ本領発揮。何が変わったんですか?)去年の選手権で3位、インターハイも2位でなかなかタイトルが獲れず。自分の中では一生懸命やっているつもりだったので、なぜ勝てないのかと本当に柔道が嫌いな時期がありました。でも先生に『明穂はやっているつもりかもしれないけど、もっとやっている人がいる』と諭して頂いて。そういう浮き沈みを何度か繰り返しました。自分の性格では、弱いところを言われると受け入れられず反発してしまう。でも、自分の中で考えたり、同級生に『一緒に先生に話しにいこう』と励ましてもらったり、それで前向きになることが出来ました。技術的には持ってすぐ掛けることを意識したりと色々ありますが、自分の中では、なにより気持ちの問題だったと思っています。(-決勝、延長戦ではまさに持つなりすぐに大技で勝負にいきましたね?)体力がそんなにないので、このまま延長戦を戦っているとペースを持っていかれる可能性があると思いました。ここは行くしかないと覚悟を決めました。(-理想の選手は?)杉本美香さんです!自分も杉本さんのように技が切れるタイプの選手になりたいです。」

【準々決勝】
平野友萌○崩上四方固(2:21)△川口鈴王
橋口茉央○支釣込足(2:38)△八巻衣音
田中里沙○内股(0:20)△谷地望
米川明穂○優勢[技有]△波多江楽良

【準決勝】
平野友萌○合技(1:01)△橋口茉央
米川明穂○GS内股(GS3:18)△田中里沙

【決勝】
米川明穂○GS払腰(GS4:25)△平野友萌

※ eJudoメルマガ版8月15日掲載記事より転載・編集しています。

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