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【レポート】第68回インターハイ柔道競技・男子個人試合7階級マッチレポート

(2019年8月15日)

※ eJudoメルマガ版8月15日掲載記事より転載・編集しています。
第68回インターハイ柔道競技・男子個人試合7階級マッチレポート
日時:2019年8月10日~11日
会場:鹿児島アリーナ(鹿児島市)

→男子個人戦プレビュー
→男子個人全試合結果(eJudoLITE)
→男子第1日3階級速報ニュース
→男子第2日4階級速報ニュース

文責:古田英毅
撮影:eJudo編集部

■ 60kg級 近藤隼斗が3つ目の高校タイトル獲得、一皮むけた大人の柔道披露
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1回戦、近藤隼斗が平山舞人から裏投でまず「技有」

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2回戦、近藤は宮田賢作の小内巻込を冷静に捩じり返し「一本」

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準々決勝、辻岡慶次が糸数未来斗を「やぐら投げ」で抱え上げ、内股「一本

(エントリー48名)

【決勝まで】

高校選手権の覇者・福田大晟(滋賀・比叡山高)が初戦で中島瑞貴(福岡・西日本短大附高)にGS延長戦「技有」で敗れるという波乱のスタートとなった60kg級であるが、決勝には優勝候補として名の挙がっていた有力2選手が勝ち上がることとなった。

決勝に進んだのは近藤隼斗(佐賀・佐賀工高)と辻岡慶次(愛知・大成高)の2名。

昨年の全国高校選手権に優勝、このインターハイも2連覇を狙う近藤の勝ち上がりは順調。1回戦は平山舞人(愛媛・新田高)を裏投で2度投げて「技有」「一本」、2回戦は宮田賢作(福井・福井工大福井高)をGS延長戦の末に小内巻込を振り返しての浮落「一本」、3回戦もGS延長戦の末に古志侑樹(奈良・天理高)をGS延長戦の内股返「一本」で破り、準々決勝は福田虎輝(大阪・東海大仰星高)の大外刈を抱き返しての小外掛「一本」。準決勝は城野琉来(三重・四日市中央工高)を残り4秒に奪った肩車「技有」による優勢で下して決勝まで勝ち上がった。かつての強引さ、力とスピードに任せた戦いぶりに比べて、非常に落ち着いた戦いぶり。徹底マークにあう中、無理をし過ぎず、組み手と作りをしっかり行いながらチャンスを待つという、冷静さの光る勝ち上がりだ。

一方の辻岡は今季の全日本カデ王者、2年生世代の旗手である。一種悟った感のある近藤の勝ち上がりに比べ、こちらはまさに上り調子の若手の勢いを感じさせるもの。1回戦は草野響(熊本・九州学院高)を49秒内股「一本」、2回戦は髙橋陸(岩手・盛岡南高)を合技「一本」、3回戦はGS延長戦の内股透「一本」で多田風太(埼玉・埼玉栄高)を下し、準々決勝は糸数未来斗(沖縄・沖縄尚学高)を僅か20秒の「やぐら投げ」(内股)「一本」で瞬殺。準決勝は加藤遼馬(静岡・静岡学園高)と「指導2」ずつを奪い合う競り合いとなったが残り3秒送襟絞「一本」で勝ち抜け。中学、カデに続く3つめの全国タイトルを狙って王者・近藤との決戦に挑む。

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決勝、辻岡の支釣込足を近藤が振り返す

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近藤が奥襟を叩かんとすると機先を制した辻岡が抱きつきの大内刈に打って出る

【決勝】

近藤隼斗○GS技有・隅落(GS2:00)△辻岡慶次

左相四つ。近藤が引き手でまず襟を掴み、辻岡は応じて横変形にずれて組み合うと大きく左脚を伸ばして支釣込足。近藤慌てず浮落で捩じり返して応じる。以後は辻岡が横変形にずれては跳ねる勢いで技を仕掛け、近藤は両襟を握って落ち着いて対処するという展開。1分を過ぎたところで近藤が左大外刈、さらに奥襟確保を晒しての「一本大外」を見せて抜け出す気配を見せるが、辻岡は近藤が奥襟を叩く瞬間を狙って良いタイミングの左大内刈。これに手ごたえをえると、片手の袖釣込腰で攻防を続けたのちの2分35秒、同じく引き手で襟を掴んだ近藤が奥襟を叩かんと手を逃した瞬間思い切って抱きつきの左大内刈に身を躍らせる。カウンターを食った形の近藤大きく崩れて会場沸くも、これは反転して腹ばい「待て」。

近藤展開を取り戻さんと左大外刈に出るが組み手不十分、この技は片襟を握った辻岡が両の手をまとめるようにして大外返で切り返す。ここまでは近藤の組み力をうまく剥がし、高い身体能力とスピードを利して攻める辻岡がやや優位。

しかし残り1分を過ぎたあたりから近藤が着実に反撃。引き手で襟を得ると奥襟確保を晒しながら打点の高い左一本背負投、さらに引き手で袖を織り込んでの左大外刈、続いて巧みに肩の拘束を外しての左小内刈と攻め続け、流れを完全に取り返して4分間を終える。試合はGS延長戦へ。

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横変形で釣り手を落とし合っての攻防。辻岡はここから左小外刈を狙う構え

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長い組み合いに焦れた辻岡が先に動き、左小内刈。

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近藤冷静に透かして突進。

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飛び込んで隅落「技有」

延長戦も近藤が片襟の左体落、さらに両襟を掴んでの左袖釣込腰と思い切った投げに出て攻勢。展開を取り返さんと辻岡は右袖釣込腰を狙うが不十分、クロス組み手から左小内巻込を狙うがこれも十分心得た近藤に退いて捌かれ、背を丸めて膝をついてしまう。辻岡徐々に手が詰まり始めた印象。

近藤が両襟を掴むと、辻岡は横変形にずれる。近藤は敢えて組ませたままじっくりこれに対峙。辻岡の狙いは頭を下げて相手の釣り手を噛み殺して重心を固定、ここから遠い足を狙って放つ左小外刈である。これで相手が崩れればそのまま一気に押し込んで捲ろうという構えだが、近藤は敢えて組み合いに応じたまま自身も頭を下げてこれに応じる。互いが組み合って相手の釣り手を噛み殺したまま、小外刈を狙い合うスタティックな展開。互いが切らず、敢えて組み合ったまま時折左小外刈を入れ、もし相手が崩れれば走らんという緊張の時間帯。長い時間がこのまま流れ、時計が延長2分を刻まんとしたところで焦れた辻岡がついに動いて、左小内刈。脚を差し入れてそのまま巻き込まんという技だが、近藤これを透かして迎え撃ち、刈り足の膝を付いた辻岡の腹に体をめりこませるようにして突進。めくられた辻岡の体が持ち上がると、その胴を乗り越えて飛び込み回旋を与える。近藤がそのままクルリと前転して立ち上がり、その背後で畳に押し付けられた辻岡が敗戦を悟って天井をみやる。主審は迷わず「技有」を宣告。

近藤の我慢勝ち。インターハイ2連覇、高校カテゴリ3つめの全国タイトル獲得ここに成った。

投げて勝つとのアイデンティティを追求するあまり、そして王者としてのプレッシャーから昨年までは「投げ急ぎ」が目立った近藤。背を抱き、組み際の虚をつき、スピードを生かして、あるいはパワーを直接伝えんとしての状況構わぬ密着と、このアグレッシブ過ぎるスタイルが逆に隙を生むことになって前回大会では一時相手の「一本」が宣せられるなど危ない場面もあったのだが、今大会はまったく違う戦いぶり。投げの豪快さはそのままだが、一言で言って、大人の柔道だった。切り合いを最小限に、相手に多少持たせても自分が持ち、慌てず試合を進めてチャンスを待つ。到達点は同じ「投げて勝つ」でもアプローチの角度がまったく違う、余程の自信がなければできない強者の戦い方である。高校選手権を「心の問題」(本人談)で欠場した近藤だが、明らかに一皮むけ、一段大きくなって畳に帰って来た。今後もまだまだ伸びるのではないだろうか。

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60kg級優勝の近藤隼斗

【入賞者】
優 勝:近藤隼斗(佐賀・佐賀工高)
準優勝:辻岡慶次(愛知・大成高)
第三位:城野琉来(三重・四日市中央工高)、加藤遼馬(静岡・静岡学園高)
第五位:福田虎輝(大阪・東海大仰星高)、大坪剣斗(栃木・白鴎大足利高)、糸数未来斗(沖縄・沖縄尚学高)、中島瑞貴(福岡・西日本短大附高)

近藤隼斗選手のコメント
「まず、勝ててうれしいです。(-物凄く落ち着いているように見えましたが?)これまで『圧倒的に勝つ』というのを求められていると決めつけているところがあったのですが、それは違うな、と思えるようになりました。技を掛けられて、崩れて転がるとそれだけで会場が沸く。そういうことにいちいち動じて、揺さぶられて焦るよりも、自分らしい柔道をすればそれで大丈夫なのかなと。攻める柔道、『一本』獲る柔道が自分の柔道であることは変わりませんが、足技を繋げて、大技に繋げる、それで十分勝てるのではと思えるようになりました。(-組み手の考え方が変わったようにも思えますが?)そう言われてみれば、という感じですね。アジアジュニアで海外選手対策のために組み手や足技はかなり練習したので、それが生きているのかもしれません。(-高校選手権を欠場したのは、負傷でしたか?)怪我ではなく、心の部分で休むことを決めました。(-今後の目標は?)大きな目標はオリンピックに出て勝つことですが、まずはジュニアで優勝して、シニアに出て、徐々に、着実にステップアップしていきたいと思います。」

【準々決勝】
近藤隼斗○小外掛(1:25)△福田虎輝
城野琉来○一本背負投(0:14)△大坪剣斗
辻岡慶次○内股 (0:20)△糸数未来斗
加藤遼馬○優勢[技有]△中島瑞貴

【準決勝】
近藤隼斗○優勢[技有・肩車]△城野琉来
辻岡慶次○送襟絞(3:57)△加藤遼馬

【決勝】
近藤隼斗○GS技有・隅落(GS2:00)△辻岡慶次

■ 66kg級 「高校入学以来最高の出来」、王者対決制したのは田中龍馬
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3回戦、唯野己哲が光岡岳人から背負投「技有」

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準決勝、田中龍馬が幸田朗から袖釣込腰「一本」

(エントリー48名)

3月の全国高校選手権を制した唯野己哲(千葉・木更津総合高)と、全国中学大会55kg級の覇者で昨年の全日本カデ王者田中龍馬(佐賀・佐賀商高)。2人のチャンピオンが素晴らしい出来で決勝まで勝ち上がった。

唯野は速さと巧さで相手を翻弄。1回戦は高森陸右(岡山・作陽高)を「指導3」の反則で退け、2回戦は西村武留(京都・京都共栄高)を得意の「横返し」からの肩固「一本」で下す。3回戦は光岡岳人(福岡・大牟田高)からGS延長戦「技有」を得て勝ち抜け、準々決勝では都立高所属ながら激戦区・東京を勝ち抜いて話題を攫った冨永雄太郎(東京・都立駒場高)を僅か14秒の小外掛「一本」で撃破。準決勝は松森秀磨(広島・広陵高)を背負投「一本」に斬り落として今大会も決勝まで駒を進めた。

一方の田中は背負投一撃の威力を存分に見せつけての決勝進出。1回戦は射羽陸(群馬・前橋育英高)を1分20秒背負投「一本」、2回戦で鈴木太陽(香川・坂出第一高)からは僅差の優勢勝ちだったが、勝負どころの3回戦は今季の全日本カデを圧勝している福田大和(島根・平田高)を1分35秒背負投「一本」に仕留める快勝。準々決勝も羽田野啓太(三重・四日市中央工高)を1分51秒背負投「一本」に斬り落とし、幸田朗(鹿児島・明桜館高)との準決勝も1分8秒袖釣込腰「一本」で圧勝。2回戦以外の4試合をすべて2分掛からず、いずれも担ぎ技による「一本」で決める素晴らしい出来でファイナリストの栄を勝ち得た。

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決勝、田中が袖釣込腰をねじ込んで「技有」先制

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担ぎ技で攻めまくった田中は一転、組み際に大内刈。「技有」で決着

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この日の田中の担ぎ技の勢いはすさまじかった。写真は羽田野啓太との準々決勝。

【決勝】

田中龍馬○合技[袖釣込腰・大内刈](2:04)△唯野己哲

この日絶好調の田中が試合開始から猛ダッシュ。「はじめ」が宣されるなり片手の右袖釣込腰に飛び込んで唯野を大きく崩す。これはポイントにはならず唯野が寝勝負に持ち込んで「待て」となったが、田中の勢い際立つ立ち上がり。そして続く展開の44秒、組み手争いの中で田中一歩下がって襟を掴まんとする唯野の左手を力の圏内に引き込むと、伸びたこの腕を捉えて右袖釣込腰一撃。崩された唯野右手を畳について側転回避を試みるが、田中頭を突っ込みながら掴んだ右手を強く引き付けて決め切り、早くも「技有」獲得。

以後も田中は唯野をまさに翻弄。1分過ぎには右袖釣込腰で大きく崩し、1分20秒には思い切った右背負投で宙に舞わす。両足を天井に向けて吹っ飛んだ唯野は掌、頭と順に着地してなんとか凌ぐが、寝技の時間帯以外はまさに手も足も出ない苦境。田中続く展開も始まるなり今度は組み際の左背負投で唯野を大きく崩し、まさに手の付けられない勢い。唯野引き込んで寝技を展開、田中が二重絡みで耐え切った1分56秒「待て」が宣せられるが、ここで唯野に消極的の咎による「指導」。

そしてこの再開直後、組み際に田中の前技フェイントを入れた右大内刈が閃く。ここまで背負投で崩され続けた唯野対応出来ず真裏に転がり「技有」。まさに攻めっぱなしの2分4秒。田中が素晴らしい内容でインターハイ制覇を成し遂げた。

背負投系の選手はどうしても調子の波があるものだが、この日の田中はまさにこの波に乗っていた。掛ける技ことごとくタイミングぴたり、巧者唯野をしてもこれを止め切ることは叶わなかった。「高校入学以来、きょうが一番調子が良かった」という本人のコメントも納得。組み手と連続攻撃でタイトル(55kg級)をもぎ取った全国中学校大会、投げの威力を盛って全試合一本勝ちを果たした全日本カデ(66kg級)と次々ビッグタイトルを手にしてきた田中だが、この日のパフォーマンスはいずれの大会をも凌駕。一段確実に進化したと思わせる、素晴らしい内容だった。

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66kg級優勝の田中龍馬

【入賞者】
優 勝:田中龍馬(佐賀・佐賀商高)
準優勝:唯野己哲(千葉・木更津総合高)
第三位:幸田朗(鹿児島・明桜館高)、松森秀磨(広島・広陵高)
第五位:大久保竜之介(宮崎・延岡学園高)、羽田野啓太(三重・四日市中央工高)、冨永雄太郎(東京・都立駒場高)、岡田悠之介(埼玉・埼玉栄高)

田中龍馬選手のコメント
「うれしいです。いままで取ったタイトルの中で、一番うれしい。春(高校選手権)負けてから絶対にインターハイでは優勝してやろうとじっくり技を作り込んで来たので、きょうは自分の技に自信を持って、思い切り戦うことが出来ました。袖釣込腰を警戒されていることがわかったので、最後は大内刈で仕留めに行きました。(-相当調子が良く見えましたが?)はい!高校に入って、今日が一番調子のいい日でした(笑)。(-中学から少しづつ戦い方が変わっているように思いますが、自分ではどう思いますか?)相手のペースに合わせて柔道をしてしまうところがあったので、このあたりは考えて直して来ました。練習中はよく考えて、試合になったらあまり考えず思い切りいくというのが自分のやり方です。(-団体戦からどう気持ちを切り替えましたか?)自分が負けてしまって不甲斐なかった。チームのメンバーのためにもあすは絶対勝つ、と心に決めました。団体戦の負けで、個人戦でも何があるかわからない、一戦一戦集中を切らずにやらないとダメだとあらためて心が引き締まりました。(-将来は?)オリンピックで金メダルを取るのが目標です。気持ち、筋肉量とシニアのトップ選手と戦うにはまだまだ足りないところが一杯ですが、日本らしい『一本』柔道を目指して、目標に届くように頑張ります。」

【準々決勝】
幸田朗○GS僅差(GS6:59)△大久保竜之介
田中龍馬○背負投(1:51)△羽田野啓太
唯野己哲○小外掛(0:14)△冨永雄太郎
松森秀磨○優勢[技有]△岡田悠之介

【準決勝】
田中龍馬○袖釣込腰(1:08)△幸田朗
唯野己哲○背負投(3:42)△松森秀磨

【決勝】
田中龍馬○合技[袖釣込腰・大内刈](2:04)△唯野己哲

■ 73kg級 有馬雄生が初優勝、決勝は王者田中裕大との投げ合い制す
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3回戦、有馬雄生が薮井雷土から背負投「一本」

(エントリー48名)

人材多き激戦階級。これぞと事前評で名を挙げられた強豪選手がベスト4を占め、決勝には有馬雄生(神奈川・東海大相模高)と田中裕大(福岡・大牟田高)の2名が勝ち上がった。

有馬は1回戦で河本侑大(岡山・関西高)からGS延長戦「技有」を得て勝利というスタート。2回戦は早川潤(沖縄・沖縄尚学高)を1分40秒の大外巻込「一本」に仕留め、3回戦は薮井雷土(和歌山・初芝橋本高)を1分22秒背負投「一本」に斬り落とす。準々決勝は大久保竜希(愛知・大成高)を2分14秒肩車「一本」に仕留め、そして勝負どころの準決勝では北條嘉人(千葉・木更津総合高)を相手に、残り1分30秒北條得意の抱き勝負に応じて左大外刈「技有」を奪って快勝。見事決勝の畳まで辿り着いた。

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準決勝、田中裕大が小田桐美生から外巻込「一本」

高校選手権で大物ぶりを見せつけた同大会の覇者・田中は1回戦で石田皇志郎(京都・京都共栄高)を崩上四方固「一本」、2回戦で伊藤栄都(三重・四日市中央工高)を「技有」優勢、3回戦は岩見倖汰(石川・津幡高)を合技「一本」で下し、準々決勝は本田祥万(滋賀・比叡山高)をGS延長戦「技有」で下す。そして今季の全日本カデ王者・小田桐美生(東京・国士舘高)を畳に迎えた準決勝は、抱き勝負に来た相手の支釣込足に応じて左外巻込で巧みにもたれかかり1分25秒鮮やか「一本」。すべての選手にマークされながら、しっかり決勝まで勝ち上がった。

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攣ったのか、田中は指を曲げ伸ばしする動作を断続的に繰り返す

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有馬の肩車。田中が崩れて直後「指導2」

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両者の担ぎ技がかち合い、有馬が田中を持ち上げる

【決勝】

有馬雄生○GS技有・内股(GS2:35)△田中裕大

左相四つ。お互いに引き手を先に掴まんと左襟を狙い合い、掴まれかけては切るという組み手の探り合い。しかし33秒に田中が指に違和感を感じた模様で離れた位置で曲げ伸ばし、次いで組み合おうと手を伸ばすと相手に触った瞬間指を抑えて座り込んでしまう。あるいは指が攣ったか、しばし曲げ伸ばして試合に復帰するが当然ながら試合は加速せず、1分12秒両者に「取り組まない」咎による「指導」。

有馬片手の袖釣込腰で攻め、指の違和感を払拭できない田中は主審にしばしの中断を要求。指を曲げ伸ばして必死に回復を試みる。有馬ここから左大内刈、左背負投、さらに左への肩車と技を繰り出し、この技に回され掛けた田中が膝をついた2分10秒、田中に消極的の咎で「指導2」。

田中自らを鼓舞するかのように手を叩き、思い切って打点の高い左袖釣込腰。一瞬両足が浮いた有馬しかし腹を出し、体重を抜いて着地してこの技はブレイク。以後は有馬が肩車に左一本背負投、田中は指の違和感を抱えたまましかし時折迫力ある大技一発を狙って対抗。田中が3分26秒に思い切った左袖釣込腰を見せ、続く展開では両者の高い背負投が正面からかち合う。この際田中は有馬の背中に載ってしまったが、有馬が投げ切らんと肩車の形で落とそうとしたところに上から被り、そのまま相手をまたいで背中を押し付ける。これはノーポイントだったが、試合は必ずいずれかの投げで決まるはず、と感じさせる激しい攻防。試合はGS延長戦へ。

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延長戦、指のアクシデントにめげず田中は迫力ある内股で投げに掛かる。

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脇を差しての投げ合いを挑んだ有馬が「やぐら投げ」から押し込み。勝負を決める「技有」

「待て」の度に指を曲げ伸ばして苦しい情勢の田中だが、一発投げればそれで試合は終わりとここから大技の鉈を振るう。1分30秒には両襟から相手の身体を伸ばすように左内股、頭を下に畳に突き刺さった有馬はかろうじて反転しポイントを逃れる。続く展開では有馬が釣り手をクロスに入れて優位を作りかかるが田中逆に思い切り引込返を放って投げに掛かり、GS2分25秒には釣り手で片襟付近を握ったまま迫力ある左内股。いったん浮いた有馬辛うじて外足から着地して難を逃れる。

散発ながら威力ある技と肚の据わった後の先で田中が優位という状況だが、ここで有馬一計を案じ、先んじて両手で背を抱き、正面から投げ合いを挑む。田中は有馬の右肩を包むように背中を持ち返して対抗するがやや出遅れ、両者腹を出し合った体勢で下から重心を捉えるベクトルを得たのは有馬。有馬そのまま反時計回りの「やぐら投げ」に連絡、田中落ち際に右の爪先を畳に着いて粘るが有馬そのまま胸を合わせて飛び込み、GS2分35秒「技有」。

熱戦ここに決着。有馬がうれしいインターハイ初優勝を決めた。田中の膂力に怖じず試合を決めにいった有馬の度胸は見事。また敗れた田中も指にトラブルを抱えながら「投げれば解決」とばかりに大技で仕留めにいくその様は迫力十分、大物感漂う戦いぶりだった。

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73kg級優勝の有馬雄生

【入賞者】

(エントリー48名)

優 勝:有馬雄生(神奈川・東海大相模高)
準優勝:田中裕大(福岡・大牟田高)
第三位:北條嘉人(千葉・木更津総合高)、小田桐美生(東京・国士舘高)
第五位:石原樹(群馬・前橋商高)、大久保竜希(愛知・大成高)、小原龍太郎(奈良・天理高)、本田祥万(滋賀・比叡山高)

有馬雄生選手のコメント
「父(昇さん)が2月に亡くなってから、必ず日本一になると誓ってやってきました。嬉しいです。決勝は相手がどうというより、自分のやりたいことをやり切った試合でした。最後に決めた『やぐら投げ』は得意技。リスクはありますが、かなり疲労があったのでこのまま続けるよりは思い切って先に仕掛けたほうがいいと判断しました。まさに、先に(脇を)差せたことが投げ合いに勝てた原因だと思います。(-金鷲旗大会では好調とは見えませんでしたが、今日はコンディションも良さそうでしたね?)自分は左相四つの大きな相手が得意ではなく、金鷲旗は団体戦でまさにそういう相手とばかりの戦いでした。ただ、今大会も団体戦に出るつもりで左の大きな相手と練習を続けて来たので、それが決勝では役に立ったと思います。練習試合では戦ったことがあって、その時は組み手でやられた。それでも、寝技が強い相手だし、あくまで立って勝負をつけようと思っていました。講道館杯では1つでも多く勝てるように頑張りますが、なにより、大学に行くまでにまだまだ見に着けておかなければいけないことがたくさんあると思います。もっともっと稽古して地力をつけたいです。」。

【準々決勝】
北條嘉人○崩袈裟固(3:11)△石原樹
有馬雄生○肩車(2:14)△大久保竜希
小田桐美生○合技(2:41)△小原龍太郎
田中裕大○GS技有(GS0:13)△本田祥万

【準決勝】
有馬雄生○優勢[技有・大外刈]△北條嘉人
田中裕大○外巻込(1:25)△小田桐美生

【決勝】
有馬雄生○GS技有・内股(GS2:35)△田中裕大

■ 81kg級 今大会の主役竹市大祐が圧勝、高校3度目の日本一に輝く
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2回戦、竹市大祐はファーストアタックで巴投からの巧みな連携技を見せる。片手絞「一本」

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準決勝、菅原幸大と竹市が投げ合い。同体と判断されたかポイントはなし

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竹市が菅原を叩き落とし、左背負投「技有」

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決勝進出を果たした老野祐平

(エントリー47名)

この階級も多士済々。4月の全日本カデを制した大竹龍之介(愛知・大成高)が東北の強豪・五十嵐勁太(山形・羽黒高)との2回戦を僅か10秒の小外掛「一本」で落とすという序盤の事件を経て、強豪同士による迫力あるサバイバルゲームが続いた。

そんな中、高校選手権2連覇者の大本命・竹市大祐(福岡・大牟田高)がしっかり決勝まで勝ち上がる。2回戦で丹波弘太郎(京都・龍谷大平安高)を28秒片手絞「一本」、3回戦は難敵杉本将一朗(北海道・北海高)を一方的に攻め続けて僅差の優勢で下し、準々決勝は柴田蓮音(静岡・東海大静岡翔洋高)からまず浮落「技有」、間を置かずに1分17秒腕緘「一本」を奪って一蹴。

最大の勝負どころと目された菅原幸大(宮城・柴田高)との準決勝は竹市の巴投に菅原の内股と互いが得意技で投げに掛かり、激戦。GS延長戦では菅原が脇を差して投げ合いを挑み、ここから放った菅原の小外掛があわや「技有」という場面もあったが、捩じり返した竹市と同体と判断されたかこれはノーポイント。これで一瞬集中力が切れた菅原に対し、竹市が左背負投を逆側に抜け落としてGS1分28秒「技有」確保。これで竹市の決勝進出が決まった。

一方逆側の山からはダークホース老野祐平(長崎・長崎日大高)が勝ち上がり。1回戦は西垣紫穏(島根・開星高)から「技有」優勢、2回戦は藏本仁(香川・高松商高)から合技「一本」、3回戦は濱田聖良(鹿児島・鹿児島情報高)を「指導3」の反則で破ると、ここからは大物食いを連発。準々決勝では高校選手権準優者の小畑大樹(佐賀・佐賀商高)をGS延長戦「技有」で下し、準決勝では激戦ブロックを勝ち上がって来た増地遼汰朗(東京・安田学園高)を開始41秒に奪った背負投「技有」で撃破。強者2名をいずれも投げて下し、インターハイ決勝という大舞台に辿り着いた。

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決勝、竹市が体側を押し付け、ここから帯取返様に腹を突き出して持ち上げる

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そのまま回転して袖釣込腰

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深く体を折って投げ切り「一本」

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81kg級優勝の竹市大祐

【決勝】

竹市大祐○袖釣込腰(2:30)△老野祐平

決勝は左相四つ。竹市まず左へ肩車、さらに引き手で裾を掴んで右への背負投を見せ「待て」。続いて引き手で袖を掴んで腹側に織り込むと、老野巻き込みの形で潰れて回避「待て」。竹市組み手争いから今度は巴投、着地と同時に「ネクタイチョーク」を試みる得意の形で攻め、一方的展開。1分39秒老野に「指導」。

反応速度に勝る竹市、続く展開でもあっというまに引き手で袖を一方的に掴む。老野思わず右手でこれを叩き飛ばして切ってしまい、主審は的確にこの行為に2つ目の「指導」を宣告。老野は早くも後がなくなる。試合時間はここまで1分49秒。

竹市組み手を争いながら巧みに相手の足元を蹴り崩し、またもや引き手で袖を一方的に織り込むことに成功。ここから左体側を相手の胴に押し付けて首を抜き、右釣り手を背中に当てながら左袖釣込腰に飛び込む。有無を言わさず抱え上げるという体、帯取返様に相手の身体を高々抱え上げるとそのまま反転。深く体を折り曲げると、背中の上でクルリと回された老野にはもはや受け身を取るほか道はなし。着地は体側からに思われたが高さ、勢いと揃ったこの一撃に主審は迷わず「一本」を宣告。

まさに圧勝。高校選手権2連覇者竹市、見事インターハイも制して高校柔道に有終の美を飾った。

【入賞者】
優 勝:竹市大祐(福岡・大牟田高)
準優勝:老野祐平(長崎・長崎日大高)
第三位:菅原幸大(宮城・柴田高)、増地遼汰朗(東京・安田学園高)
第五位:柴田蓮音(静岡・東海大翔洋高)、白坂鉄郎(茨城・土浦第一高)、騰川雄一朗(兵庫・神戸国際大附高)、小畑大樹(佐賀・佐賀商高)

竹市大祐選手のコメント
「スタミナが勝因だと思います。400メートルダッシュをかなりやりこみました。(-優勝候補の筆頭とされて、プレッシャーはなかったですか?) ないと言えば嘘になりますが、あまりそういうことは気にせず。いつも団体戦で大きい選手と戦っているので、この階級では負けないと確信していました。先生の『2階級上の選手を投げられるようになれば負けない』という言葉を信じて、三人打ち込みをやり込むことで技を作ってきました。大きい相手と稽古して、研究も団体戦のことばかりやっていたんですが、自信はありました。当面はジュニアで勝って、講道館杯でも勝って、将来は世界で戦う選手になりたいです。柔道を通じて人格的に優れた人間になる、それが目標です。(-この先の課題は?)まだまだ『力』で勝っているから投げれてしまっているという面があり、大学ではそう簡単にはいかないと思っています。もっと技術的に追求しなければいけないことがたくさんあります。」

【準々決勝】
竹市大祐○腕緘(1:17)△柴田蓮音
菅原幸大○優勢[技有]△白坂鉄郎
増地遼汰朗○GS僅差△騰川雄一朗
老野祐平○GS技有(GS1:04)△小畑大樹

【準決勝】
竹市大祐○GS技有・背負投(GS1:28)△菅原幸大
老野祐平○優勢[技有・背負投]△増地遼汰朗

【決勝】
竹市大祐○袖釣込腰(2:30)△老野祐平

■ 90kg級 道下新大全試合一本勝ちで初優勝、決勝はカデ王者戸髙淳之介を破る
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3回戦、戸髙淳之介が松崎渡を「やぐら投げ」に捉えて「一本」

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3回戦、道下新大が榎本開斗から大内刈「一本」

(エントリー48名)

【決勝まで】

混戦と目された階級を決勝まで勝ち上がったのは戸髙淳之介(宮崎・延岡学園高)と道下新大(東京・国士舘高)の強者2名。

全日本カデ王者の戸髙は、2年生ながらも実績的に優勝候補の筆頭格。1回戦は弓矢健輔(三重・四日市中央工高)を僅差の優勢で凌ぎ、2回戦は竹嶌真慧(京都・京都学園高)からGS延長戦小外刈「技有」を得て勝利。3回戦は一発のある松崎渡(埼玉・埼玉栄高)をGS延長戦、「やぐら投げ」からの移腰「一本」に沈め、準々決勝は大谷大斗(北海道・北海道栄高)から「技有」を得て優勢勝ち。準決勝は田中航太(鹿児島・鹿児島情報高)を2分55秒に得た払巻込「技有」で破り、しっかり決勝へと勝ち上がった。丁寧な作りと、チャンスを見逃さぬ勝負眼という特徴をしっかり発揮しての決勝進出。

一方の道下はこの日好調。1回戦は辻五十雲(大阪・関大北陽高)に僅か35秒で払腰2発を決めての合技「一本」、2回戦は渡部智偉(秋田・秋田工高)をこれも僅か9秒の出足払「一本」で下し、3回戦も榎本開斗(岡山・作陽高)を1分0秒大内刈「一本」に仕留める快勝。勝負どころの準々決勝は寺島悠太(石川・津幡高)を相手に粘戦、GS延長戦に加速してGS35秒大内返「一本」で結果的には快勝。準決勝も山里健太(沖縄・沖縄尚学高)を1分31秒内股返「一本」に仕留めて、5戦全て一本勝ちという素晴らしい内容で決勝進出を決めた。

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決勝、戸髙の袖釣込腰は両手が離れて掛け潰れとなってしまう

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道下が足車から思い切って払巻込に連絡、「技有」

【決勝】

道下新大○合技[払巻込・崩袈裟固](1:18)△戸髙淳之介

左相四つ。互いに引き手を先に掴まんと素早く進退、ともに引き手で袖を持ちあったところから戸髙が右袖釣込腰に打って出る。しかしこれが空回り、戸髙は両の手が離れて畳に潰れてしまう。道下背について寝技に入らんとするが戸髙の防御が硬く展開出来ず。「待て」が掛かり、組み手の攻防が始まったところで主審再び試合を止める。ここで前段の戸髙の掛け潰れに対し、偽装攻撃の「指導」が宣告される。試合時間は31秒。

戸髙組み際に左袖釣込腰に打って出るが潰れ、そのまま立ち上がって両者攻防継続。道下引き手で襟を得るといったん大外刈を打ってこれを袖に持ち換え、奥襟を掴んだ釣り手を立てて肘を絞り込むと、得意の左足車に打って出る。戸髙やや前傾、体を固めて耐える形でこれを受け止めてしまい、道下は思い切って払巻込に連絡。腰を引いたまま剛体となってしまった戸髙は耐え切れず引っこ抜かれてしまい、左前隅に転がって53秒「技有」。

道下そのまま左腕一本を抱えて崩袈裟固。いったんは戸髙が足を絡んで「解けた」となったが、道下これを外し、右をも右で抱える形で抑えなおす。戸髙がこの右腕を外したゆえこの抑え込みは不完全な後袈裟固の形となり、ゆえに戸髙は後転してほとんど逃れかけるが、道下巧みにバランスを取って10秒を耐え切る。後ろに回り切れぬ戸髙がやむなく体を戻したところで終了ブザーが鳴り響き「一本」。試合時間1分18秒、道下がみごとインターハイ初制覇を決めた。全6試合すべて一本勝ちという素晴らしい内容での戴冠であった。

決勝は体の長さを生かした思い切りのよい足車、そしてバランスの良さを生かした抑え込みと道下の良さが良く出た一番。一方戸髙はここまでの融通無碍の試合ぶりとは打って変わって体が固まり、発想にも動きにも持ち前の柔らかさがなかった。インターハイ決勝という大舞台の怖さを感じさせる試合だった。

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90kg級優勝の道下新大

【入賞者】
優 勝:道下新大(東京・国士舘高)
準優勝:戸髙淳之介(宮崎・延岡学園高)
第三位:田中航太(鹿児島・鹿児島情報高)、山里健太(沖縄・沖縄尚学高)
第五位:大谷大斗(北海道・北海道栄高)、奈良信幸(栃木・國學院栃木高)、三谷雄大(香川・高松商高)、寺島悠太(石川・津幡高)

道下新大選手のコメント
「単純に、凄く嬉しいです。昨日の団体戦では作戦上自分が取らなければいけないのに、逆に取られてしまって『やってしまったな』と悔しい思いをしました。チームメートに試合を拾ってもらったので、恩返しをするつもりで頑張りました。(-1年生の時からレギュラーで全国大会に出ずっぱり。大変な3年間だったのでは?)1年生のときは準決勝で千野根(有我・桐蔭学園高)選手に一本負け、2年生のときも中野(寛太・天理高)選手に負けて、インターハイはなかなかいい思い出がありません。今回も団体戦で負けてしまったわけですが、今日最後に勝てて本当に良かったです。今日は全試合一本勝ちですが、準々決勝のように最初は泥臭く戦い、延長戦になって勝つような、あきらめない、やるべきことを徹底する試合が出来たことが良かった。あの試合は高校で自分はやってきたスタイルが出せた一番だったと思います。大学に進んでも日本一になれるよう、頑張ります。」

【準々決勝】
戸髙淳之介○優勢[技有]△大谷大斗
田中航太○内股(0:11)△奈良信幸
山里健太○大内刈(2:50)△三谷雄大
道下新大○GS大内返(GS0:35)△寺島悠太

【準決勝】
戸髙淳之介○優勢[技有]△田中航太
道下新大○内股返(1:31)△山里健太

【決勝】
道下新大○合技[大外巻込・崩袈裟固](1:18)△戸髙淳之介

■ 100kg級 森健心優勝、手堅い組み手と足技で激戦勝ち抜く
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準決勝、金澤聡瑠が増田良生から体落「技有」

(エントリー48名)

決勝に進んだのは金澤聡瑠(千葉・木更津総合高)と森健心(福岡・大牟田高)との強者2名。

金澤は強者を次々倒しての決勝進出。1回戦は塩谷丈(鳥取・鳥取東高)を2分0秒体落「一本」、2回戦は岩本敬太(佐賀・佐賀商高)を52秒の合技「一本」で退け、3回戦では前戦で酒井晃輝(福井・福井工大福井高)を一本背負投「一本」で破っている鈴木直登(福島・田村高)をGS延長戦の末に浮落「技有」で撃破。そして最大の勝負どころと目された準々決勝は高校選手権無差別準優勝者グリーンカラニ海斗(東京・日体大荏原高)を首を抱えて捩じり回しての浮落「一本」で見事撃破。準決勝は増田良生(三重・名張高)に体落を3連発、3度目で「技有」を得るとそのまま崩袈裟固に抑え込んで合技「一本」。みごと決勝まで勝ち残った。

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準々決勝、完全に組み勝った森健心が鈴木太陽から背負投「一本」

森は一方的に掴むことで相手を制し、嫌う相手のリアクションに技を叩き込む手堅い戦い方を徹底。1回戦は塚田大稀(茨城・水戸啓明高)を組み手で圧倒、僅か30秒の間に場外で2つの「指導」を得、1分14秒に3つ目の「指導」をもぎ取って圧勝。2回戦は笠井雄太(愛知・桜丘)をこれも組み手を完全に制して33秒払釣込足「一本」に斬り落とし、3回戦は上田泰介(京都・京都学園高)から「指導2」を先行、後のなくなった相手の技を待ち構えて内股透「一本」。準々決勝も鈴木太陽(奈良・天理高)を相手に10-0で一方的に組み勝ち、背負投「一本」で快勝。準決勝は、ここまで1回戦で福永夏生(広島・崇徳高)、準々決勝で嵐大地(岡山・作陽高)をリスク厭わぬ大外刈攻撃一択で下して来たファイター・石山陽太(兵庫・神戸国際大附高)をこれも組み手で圧倒。右大外刈を待ち構えての隅落「技有」から崩上四方固に抑え込んでこの試合も「一本」。全試合一本勝ちで決勝まで辿り着いた。

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森はこの試合も相手に持たせぬまま、自分だけが持つ形を徹底。

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金澤が大きく釣り手を巻き返すが、森は突いて離れ、間合いを近づけない。

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森が背負投に座り込み潰れ、止めた金澤が返さんとする

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組み勝った森が金澤の足元を蹴り崩し、直後3つ目の「指導」

【決勝】

森健心○GS反則[指導3](GS1:27)△金澤聡瑠

金澤が右、森が左組みのケンカ四つ。金澤が下から、森が上から釣り手を持っての引き手争いが続く。森は徹底して引き手で袖を一方的に持たんとし、金澤は敢えてこれに過剰反応せず、体ごと前に出ながらチャンスを探す。1分過ぎから引き手で袖を一方的に得た森がこれを折り込んだまま左足車の牽制、さらにこれに下がった金澤を左小外刈で追ってと続けて技を見せ、直後の1分17秒金澤に消極的との咎による「指導」。

金澤奮起して釣り手を大きく巻き返す策に出、これで後襟を得ての迫力ある右小外掛。しかし森は釣り手の肘を折り曲げて固め、拳で顎を突いてあと一段の踏み込みを許さず。森は続いて左、右と足を飛ばし、膝の外側を抑えられた金澤は大きく崩れてたたらを踏む。

金澤は前段で見せた釣り手の巻き返しに活路を見出し、大きく腕を回しては後襟を掴んで体を寄せ続ける。森は距離を詰めたまま攻防するリスクを嫌い、弾き、突き、離れて、近い間合いで組み合うことを決して許さない。この形が続き、2分42秒には双方に「取り組まない」咎による「指導」。累積警告が「2」となった金澤はこれで形上、後がなくなる。

金澤寄り続けて右の払巻込を見せるが、森は取り合わず。しかし組み手で有利の森の側も明確な攻めの手立ては見えず、座り込みの左背負投を見せるも金澤は崩れず立ったまま谷落で返さんとし、森はあっさり引き手を離して前のめりに潰れてこの攻防は収束。

残り30秒を過ぎると金澤の圧力が効き始め、奥襟を叩かれる森は苦しい体勢。引き手の袖を抱き込むことで相対的有利を作ろうとするが、どう攻めるいかに取るかというゴールが見え難い。金澤はこの良い体勢を生かしたいところだが、右体落を打つと森はこれをきっかけに引き手を切って離れてしまう。森が再び圧に屈して前技に潰れ、ここで本戦4分が終了。試合はGS延長戦へ。

金澤圧を掛けて小外掛で寄るが、一段元気を回復した森は左小内刈で外し、引き手で袖口を絞り込んで左小内刈から左体落の連絡技。歩かされた金澤が場外に出て「待て」。森は続く54秒には右へ肩車。受け止めた金澤に返されそうになるがあくまで投げ切らんとすることでなんとか回避に成功「待て」。

この攻防のあと、疲労したか明らかに金澤の集中が一段落ちる。一方の森はペースを変えず引き手で袖を一方的に絞り込み、足元を蹴り崩す。蹴られた金澤膝を屈してしまい、ここで主審が「待て」を宣して試合に介入。GS1分27秒、金澤に消極的との咎で3つ目の「指導」が与えられ、これで試合が終わった。

森は相手に持たせないまま自分だけが持ち、この「絞り」の強さと組み手技術を中核にすることで頂点まで辿り着いた。技も相手の防壁を技の威力で破壊するのではなく、持てない相手を一方的に崩し、そのリアクションに入れた技がほとんど。巧みな足技も、相手が持てていない、自由に相手をコントロールできる状況の上に立ったものだ。まさに10-0で組み勝つことが森の柔道の根幹であったと言える。

組み手をあくまで作りと考え、切り合いを最小限に、むしろ敢えて相手にある程度持たせることで自分がさらに良いところを持ち、そして自身が信じる投げ一発に繋げる組み手が現在の男子柔道の主流。森の戦い方はひと昔前の、ルール的に「指導」差で決着がつく時期に全盛を迎えたもの(あるいは女子柔道に多くみられる考え方)だが、戦術の徹底はそれ自体が力。持てる力を最大限に「持たせず持つ」戦術に投入して見事頂点まで辿り着いた。持たせず持つというハシゴを掛けたゆえ、力以上の圧勝で頂点を極めた森が次はどのような成長を志向するのか、興味深く見守りたい。

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100kg級優勝の森健心

【入賞者】
優 勝:森健心(福岡・大牟田高)
準優勝:金沢聡瑠(千葉・木更津総合高)
第三位:増田良生(三重・名張高)、石山陽太(兵庫・神戸国際大附高)
第五位:グリーンカラニ海斗(東京・日体大荏原高)、清水颯真(島根・開星高)、鈴木太陽(奈良・天理高)、嵐大地(岡山・作陽高)

森健心選手のコメント
「昨日(団体戦)負けたので、勝ててホッとしています。昨日のチームの負けはすべて自分の責任、きょうはどうしても優勝しなければいけないと覚悟を決めて臨みました。(-今日の試合のポイントは?)いつも初戦の出だしでその日の調子がわかるのですが、1回戦、圧を掛けて仕掛けていく自分のやり方がしっかり出せていた。それで波に乗れたところはあります。もちろん優勝するつもりで戦いましたが、自分はそんなに強くないし、絶対に優勝すると言える立場でもない。大牟田の柔道衣を着て出る最後の試合、一戦一戦、自分のやり方を貫いて思い切りやろうと戦いました。(-自分のやり方、長所を自己分析すると?)組み手と足技だと思います。(-将来の目標は?)個人としては、国内、海外で活躍して、最終的にはオリンピックで優勝する選手になりたい。」

【準々決勝】

金澤聡瑠○浮落(2:24)△グリーンカラニ海斗
増田良生○優勢[技有]△清水颯真
森健心○背負投(3:46)△鈴木太陽
石山陽太○GS反則(GS10:58)△嵐大地

【準決勝】

金澤聡瑠○合技[体落・崩袈裟固](3:18)△増田良生
森健心○合技[隅落・崩上四方固](1:26)△石山陽太

【決勝】

森健心○GS反則[指導3](GS1:27)△金澤聡瑠

■ 100kg超級 斉藤立が2連覇、決勝は無差別王者高橋翼の挑戦を退ける
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2回戦、斉藤立が屋田継心を開始10秒の大外刈「一本」

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2回戦、高橋翼が深井大雅を小外刈「一本」で退ける

【決勝まで】

当代の主役、2連覇を狙う斉藤立(東京・国士舘高)と高校選手権無差別の覇者高橋翼(岡山・作陽高)が順当に決勝に進出。人材揃った面白い階級であるが、この2人の力はやはり抜けていた。

斉藤の勝ち上がりは圧倒的。2回戦は九州大会2位の屋田継心(沖縄・沖縄尚学高)を開始10秒の大外刈「一本」、3回戦は小川快都(青森・青森北高)を15秒大内刈「一本」、準々決勝は九州王者服部大喜(福岡・大牟田高)を38秒大内刈「一本」。そして準決勝では全日本カデ90kg超級王者、2年生世代のホープ菅原光輝(神奈川・東海大相模高)をも、僅か37秒の足車「一本」で一蹴。40秒かかった試合が1試合もなし、足を振り上げればそのまま相手が飛んでいくまさに「投げ込み」、あたかも掛け試合のような、いや、大人が子どもに稽古をつけるかように相手を綺麗に投げ続け、当たり前のように決勝進出。

一方の高橋は確実に斉藤戦に辿り着くことを考えてか、持ち前の捨身技一発を封印して非常に手堅い戦い方。2回戦は今夏充実の難敵・深井大雅(静岡・加藤学園高)をGS延長戦小外刈「一本」で退け、3回戦は井上直弥(奈良・天理高)を「指導3」の反則で退ける。勝負どころの準々決勝は中村雄太(大阪・東海大仰星高)をGS延長戦「指導1」対「指導3」で下し、準決勝はこれもGS延長戦、園田陸斗(熊本・九州学院高)から大内刈「技有」をもぎ取って勝利。念願の斉藤との再戦に、しっかり勝ち残った。

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ついに斉藤との再戦に辿り着いた高橋、この試合も雄たけびを上げて入場。

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髙橋の「相撲」に斉藤場外際まで押し込まれる

【決勝】

斉藤立○GS反則[指導3](GS1:53)△髙橋翼

髙橋の傍らで川野一道監督が「歴史に名を残せ!」と猛烈な檄。ついで選手の入場がコールられる。

この試合は斉藤が左、高橋が右組みのケンカ四つ。互いが右、左と交互に手先を伸ばして組み手を争う。引き手、あるいは釣り手で良い位置を得掛ける瞬間もあるが相手がすぐに切り離し、一瞬で状況は流動化。組まぬまま、離れたままの攻防が続く。高橋は得意の抱き勝負をこの段階では志向せず、おそらくは「指導」が積みあがって試合が煮詰まることを待つ構え。

この手先の攻防から、斉藤が引き手で袖を一方的に持つ形が生まれる。高橋離れて切らんとするが斉藤が離さぬと見ると、右釣り手を背中に回して押し込みに出る。このまま相撲を挑む形で前に出ると斉藤が場外際まで詰まり、しかし両者ともに決定的な技は出ず。高橋が腰を切る牽制を見せるが1分20秒主審は試合を止め、双方に消極的の咎で「指導」。

続く展開、両者引き手で袖を持ちあうと、釣り手でしっかり前襟を得た斉藤のそれとは裏腹に、高橋の釣り手は中途半端。空を掻き、持ちどころを背中浅くに定めるが、相対的に組み手の優位を得たのは斉藤。しかし双方が浅く内股を打ちあうのみでなかなか試合は展開しない。腰を引いた体勢からの高橋の右内股は出し投げ風の崩し技に留まり、斉藤の左内股は防御姿勢の高橋に弾かれて投げに繋ぐはずの二歩目の踏み込みで引き手が切れてしまう。再び攻防のステージは引き手争いに堕ち、2分59秒双方に片手の咎で「指導2」。どちらかがあと1つでも「指導」を失えばその時点で試合終了である。

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この試合最大のハイライト。延長戦で斉藤の不十分な内股を高橋が狙いすまして返す。惜しくもポイントとは判定されず。

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奮起した斉藤はここから猛攻。

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明らかに投げて試合を決めんとする大技を連発する

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髙橋に3つ目の「指導」。斉藤の勝利が決まった。

髙橋これを待っていたかのように突進、この試合初めて釣り手で上から背中を叩く。危機を感じた斉藤がすかさず左内股で剥がし、両者が腹ばい「待て」。高橋続く展開も上から背中を叩くが、斉藤が襟を持ち返して体勢を正すと腰を引いて待ちに出、後の先を狙う構え。

この、斉藤が前襟、高橋は腰のあたりを突いてこれを守るという形上斉藤優位の形が続く。斉藤時折左内股を狙うも間合いが遠いためとらえきれず、引き手を絞りなおし、釣り手を取り直してと形を整える間にあっという間に本戦4分間が終了。試合はGS延長戦へ。

ここでこの試合最大の見せ場が訪れる。高橋が奥襟を叩くと斉藤の頭が下がり、斉藤はこの不利を打開せんと少々無理な体勢から左内股。これを待っていた高橋背中を抱いて浴びせ返し、片脚でバランスを崩した斉藤は右体側から畳に落ちる。上体、下半身とも側面が接地したようにも見えたが斉藤の体が流れのなかですぐさま腹這いに回転したこと、そして審判の位置もあってかこれにポイントは付与されず。しかし場内は大歓声。高橋が「何か」を起こすために望んだであろう、異様な雰囲気が会場に溢れる。

しかしここからは奮起した斉藤の独擅場。高橋に奥襟を叩かれるも背筋を伸ばし、釣り手を脇から回して襟を得たまま左大外刈。この試合初めての外側への技、そして強気の技に高橋大きく崩れて腹ばい。ここで高橋が顔面から出血、止血のための中断が挟まったことでいったん勢いは収まるかと思われたが、以後も斉藤は矛を収めること一切なし。ベンチからの「釣り手を生かして!」との声に背中を押されるように前進、引き手で襟を得、釣り手で奥を掴むなり前隅に体を投げ出すような左内股で高橋を伏せさせ、続いて背中を抱きに来た高橋を迎え撃ち、脇から背中を抱え返したままの左内股で腹ばいに落とす。さらに釣り手で横襟を得、大外刈フェイントからの左大内刈で激しく追い、みたび高橋を畳に這わせる。

一方的に攻めたシークエンスが3つ続いたことを受けて、客観的にも機は熟したとばかりにここで主審が試合を止める。服装を正させ、高橋に消極的との咎で3つ目の「指導」を宣告。これで試合は終了、斉藤のインターハイ2連覇が決まった。両者の熱戦に、会場からはこの日いちばんの大拍手が沸き上がった。

手首の負傷が癒えず、稽古を詰め切れなかった斉藤はこと高橋戦に関しては詰めの甘い試合ぶり。GS延長戦に食らった後の先の一撃は「技有」を宣されてもおかしくないものであった。それでも勝ってしまう圧倒的な地力はさすがというほかはないが、力に見合った結果、たとえば「以後シニア、国際大会とも全勝でついに東京五輪まで辿り着く」というような確変シナリオに至るにはまだまだ積むべきものが多いように思われる。

一方の高橋、今大会は団体・個人を含めて、この最終戦に辿り着くまで体を捨てて投げに出る場面は1回もなし。高校選手権や金鷲旗大会で見せた「当てたら捨てる」「抱いたら放る」というような奔放な柔道とはかなり印象が違った。おそらくは確実に斉藤と戦うために、また斉藤にプレッシャーを与えるために己に全勝を課し、戦いぶりに自制するところ相当大きかったのではないかと観察される。決勝における「指導2」を積んでからの組み手の変更など、なにより「本気で斉藤に勝つつもりだった」というところが大いに買える。あまりにも強すぎる斉藤に、本気で勝とうと挑んだ同級生が存在すること自体が価値。金鷲旗決勝における豪快過ぎる内股「一本」決着からわずか3週間、高橋の健闘も大いに讃えたい。

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100kg超級2連覇の斉藤立

【入賞者】
優 勝:斉藤立(東京・国士舘高)
準優勝:高橋翼(岡山・作陽高)
第三位:園田陸斗(熊本・九州学院高)、菅原光輝(神奈川・東海大相模高)
第五位:山元隆一(鹿児島・鹿児島実高)、中村雄太(大阪・東海大仰星高)、小林大輝(愛知・大成高)、服部大喜(福岡・大牟田高)

斉藤立選手のコメント
「釣り手の取り合い、相手は上手かった。総合的に負けているとは思いませんが、自分は怪我で筋力が落ちていて、腕(かいな)力ではすこし負けていた。世界ジュニアの相手(ゲラ・ザアリシヴィリ)もそうでしたが、ああいう相手にやられないようにしっかり組まなければならない。シニアでこういうことをしたら負けてしまいます。焦りはないですが、自分に対して、上手く戦えなかったことが悔しいです。筋力をつけて、怪我なく丈夫な体で、組み手もしっかり。自分が納得できる柔道を突き詰めたいです。」

【準々決勝】

園田陸斗○崩上四方固(3:22)△山元隆一
髙橋翼○GS反則(GS0:45)△中村雄太
菅原光輝○支釣込足(1:49)△小林大輝
斉藤立○内股(0:38)△服部大喜

【準決勝】

髙橋翼○GS技有・大内刈(GS2:10)△園田陸斗
斉藤立○足車(0:37)△菅原光輝

【決勝】

斉藤立○GS反則[指導3](GS1:53)△髙橋翼

※ eJudoメルマガ版8月15日掲載記事より転載・編集しています。

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