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【プレビュー】第68回インターハイ柔道競技・女子個人戦7階級ひとこと展望

(2019年8月8日)

※ eJudoメルマガ版8月7日掲載記事より転載・編集しています。
【プレビュー】第68回インターハイ柔道競技・女子個人戦7階級ひとこと展望
→第68回インターハイ柔道競技組み合わせ(公式サイト)

文責:古田英毅

■ 48kg級 3連覇に挑む古賀若菜が主役
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3連覇を狙う古賀若菜。いまや活躍の舞台は世界に移りつつある。

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白石響が対抗一番手

4月の全日本選抜体重別を制して体重別国内最強選手の称号を手にしたばかりか、先月初旬のグランプリ・モントリオールでワールドツアー初出場・初優勝の偉業を成し遂げた古賀若菜(南筑高)が主役。この大会でインターハイ3連覇の偉業に挑む。

かつてはその運動能力の高さや反応速度の速さを前面に押し出し、誰もが田村(谷)亮子を想起する組み際ベースの担ぎ技ファイターであった古賀だが、中学時代後半の失速を経てスタイルチェンジ。反応の速さはそのままに異常なほどの体幹の強さを前面に押し出し、前述のグランプリ・モントリオールでは五輪王者パウラ・パレト(アルゼンチン)やカタリナ・コスタ(ポルトガル)ら名だたるパワーファイターを振り回し、潰して圧倒して見せた。強い体幹で弾き続け、多彩な形の大内刈を使いこなすその様は軽量級の強者というより、むしろ南筑高の先輩・78kg超級日本代表の素根輝を彷彿とさせる。アップセットが起こりやすい切った張ったの組み手争いや技比べとは一段異なるステージに登った古賀に、高校カテゴリにもはや敵はいないと観測しておくのが事前観測としては妥当。

対抗一番手は昨年度インターハイで決勝を争い、3月の高校選手権では52kg級で優勝を飾った白石響(熊本西高)。さらに古賀不在の高校選手権を制した吉岡光(八千代高)、同2位の中馬梨歩(国分中央高)が後を追う。綺麗にブロックの分かれたこの4人で準決勝以降が争われることとなるだろう。

■ 52kg級 藤城心が優勝候補筆頭
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V候補筆頭は藤城心

高校選手権の覇者白石響が48kg級に出戻り、同大会2位の藤城心(富士学苑高)がこの階級の優勝候補筆頭ということになる。寝技が軸の選手だが、春以降の大会を見る限り投技も一段進化。3月は状況おかまいなしに袖釣込腰一択、という場面が多くこれが決まらないことで精神的に消耗した感があったが、金鷲旗大会では作りと崩しのバリエーションを増したように見受けられた。

対抗馬は3月の全国高校選手権で3位(※準決勝で藤城に敗戦)、関東大会でも優勝を飾った川田歩実(修徳高)と全日本カデ選手権で優勝した2年生多田薫(敬愛高)。この全日本カデでは勝ち上がれなかったが、素材の良さから昨年の全国中学大会2位の高橋安未(須磨学園夙川高)を推しておきたい。

■ 57kg級 中水流りりと岡田恵里佳、2人の王者の再戦に期待
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高校選手権の覇者中水流りり。技の切れ味は出色。

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インターハイ王者岡田恵里佳。中水流へのリベンジを狙う。

全国高校選手権を制した中水流りり(渋谷教育学園渋谷高)と、昨年度インターハイの覇者岡田恵里佳(立命館宇治高)。2人の王者による優勝争いがトーナメントを貫く大きな軸である。

長身痩躯の中水流は、大外刈と大内刈を軸にした切れ味のある投技が特徴。伸びやかな柔道の印象が強いが実は作戦遂行力も高く、高校選手権準々決勝では狙い通りに岡田を完封、GS僅差で接戦をモノにしている。一方の岡田の売りはパワーだが、作り、掛け、決めとかなり練られた技を駆使し、とにかく「回して背中を着かせる」技術に秀でている。パワー派でありながらそもそも相手にその力を感じさせないまま投げ切ってしまう場面も多く、思い切った仕掛けで展開を作り続けて頂点に立った昨年と比べると明らかに一段進化している印象。

組み合わせ上この王者2人は準決勝で対戦予定。岡田は準々決勝でこちらもセンス抜群の新名彩乃(須磨学園夙川高)との対戦があるが、両者の戦いぶりを見る限り投下した思考量の差で岡田が上、金鷲旗大会での直接対決も肩車「技有」優勢でしっかり勝利を得ており、今回もこの力関係が揺らぐことはなさそう。

注目選手として昨年度全国中学校大会52kg級王者にして今季のカデ王者、1年生の江口凛(桐蔭学園高)も挙げておきたい。体の芯の強さ抜群、加えてその試合力には類稀なるものがあり、桐蔭学園に入学して以降増えた具体的な技術がこの長所を存分に引き出している。カデでは新名にもGS延長戦「指導3」で勝利。上記3人と山が分かれていることもあって、今大会はかなり面白い存在となりそうだ。

■ 63kg級 畑田暁菜が高校選手権に続く2冠に挑む
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高校選手権を制した畑田暁菜

全国高校選手権を制した畑田暁菜(須磨学園夙川高)と、同2位の小齊穂奈美(富士学苑高)が優勝争いの軸と規定されることになる。ただし金鷲旗大会では畑田は不調、明らかに元気がなかった。今大会ではどこまで調子を戻しているか、まずは比較的戦い易いベスト8の戦いまでにきっかけをつかみたい。一方の小齊はチームの全国二冠獲得の中で、着実に力をつけているとの情報。徹底マークを受ける今回はどんな試合を見せてくれるのか非常に楽しみ。

ダークホースは関東大会を制した谷岡成美(渋谷教育学園渋谷高)。体の強さの一方で相手のペースに展開が引きずられててしまうことがままあるが、それを補ってあまりある、技一発の威力がある。

全日本カデを制した矢澤愛理(松商学園高)と同2位の石岡来望(創志学園高)も実績的にはシード級。矢澤には3回戦で渋谷萌々音(埼玉栄高)戦という山場が待ち受ける。

■ 70kg級 朝飛真実と桑形萌花が準決勝で決戦
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この代きっての大物、高校無差別王者の朝飛真実

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皇后盃にも出場した桑形萌花

ともに皇后盃全日本女子柔道選手権出場という快挙を成し遂げ、全国高校選手権では決勝を争った朝飛真実(桐蔭学園高)と桑形萌花(須磨学園夙川高)の再戦が階級の主題。同大会では朝飛が小外掛「技有」で勝利しているこのカードは準決勝で実現の見込みだ。

相性的には朝飛有利。金鷲旗大会の対戦でも桑形はどこかやりにくそうであったが、この際は延長・僅差にまで勝負は縺れている。様相は朝飛が組み手と足技をベースに思い切った前技を放って有利、中盤「負けてええやん!」の檄を受けた桑形が腹をくくり、腰を切るだけの牽制の域を脱して深く背中を抱き始めると朝飛が嫌気して潰れ始めて流れが変わり、しかし朝飛が両襟に活路を見出してこの形からの内股で展開を取り返し、最後は旗判定を意識して抱きつきの大内刈の鉈を振るって突き放した、というものであった。このまま補助線を引けば、朝飛は両襟での固定をベースに桑形の掛け際に先んじて足を突っ込んでの内股、桑形はこれを怖れることで展開を失わぬようリスク覚悟で背中を深く抱いての密着前技という形が予想されるのだが、双方が何を上積みしてくるのか、注目である

桑形は準々決勝で瀬戸亜香音(富士学苑高)戦という山場があり、勝ち上がりでの消耗はこちらの方が激しそう。朝飛と桑形いずれも不在のABブロックからは、立川真奈(新田高)と、自らを買う力が高いパワー派・佐藤星麗七(埼玉栄高)が決勝進出を狙う。

■ 78kg級 黒田亜紀がV候補筆頭
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黒田亜紀が団体・個人の2冠を狙う

団体戦「二冠」獲得の立役者、富士学苑高のエース黒田亜紀が優勝候補の筆頭。体の強さに巧みな組み手、そして春以降は内股を中心とした投技に進境著しい。組み合わせにも恵まれ、決勝までにこの選手を止め得る人材は見当たらない。

逆側の山では松本りづ(大成高)と丸山みかの(敬愛高)の強者2人が準決勝を争う。松本、金鷲旗大会ではかつての粗さから脱して一段厳しい柔道を志向しているように見受けられた。昨今なかなか成績を残せていないが、今大会は期待である。

■ 78kg超級 V候補は米川明穂、松澤祐栞と八巻衣音激突の1回戦に注目
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実績的な優勝候補は米川明穂

昨年度高校選手権無差別とインターハイで2位、この春は皇后盃全日本女子柔道選手権出場という栄も得た米川明穂(藤枝順心高)が優勝候補筆頭。昨冬から少々失速気配で3月の高校選手権準決勝でも2階級下の桑形萌花に払腰「技有」で敗れているが、ポテンシャルは十分。2回戦の外間蘭(沖縄尚学高)をしっかり乗り切れば決勝までは順当に勝ちあがるはず。

対抗馬は八巻衣音(広陵高)と松澤祐栞(敬愛高)だが、この2人はなんと1回戦で激突。八巻の圧力はかなりのもの、一方の松澤はこのところクロス組み手からの圧殺技が増えているが、もともとこの人は襟をしっかり持ち、足を利かせて試合を動かせるタイプ。その本来性が発揮できるかどうかに注目したい。

注目株は1年生の新井万央(須磨学園夙川高)。昨年度全国中学校大会2位、まだまだ粗さはあるが、アスリート体型で運動能力豊かな大物感溢れる選手だ。女子超級選手同士の磁場とは違うアプローチで戦えるタイプということもあり、一気に上位に入り込んでもまったくおかしくない。

※ eJudoメルマガ版8月7日掲載記事より転載・編集しています。

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