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ウルフ貫録の優勝、影浦と向は本命との決勝対決落として惜しくも2位・グランプリブダペスト2019最終日男子

(2019年7月15日)

※ eJudoメルマガ版7月15日掲載記事より転載・編集しています。
ウルフ貫録の優勝、影浦と向は本命との決勝対決落として惜しくも2位
グランプリ・ブダペスト2019最終日男子(90kg級、100kg級、100kg超級)
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100kg級決勝、ウルフアロンがグリゴリ・ミナシキンから内股「一本」

ハンガリーで行われているグランプリ・ブダペスト大会は7日、最終日を迎え、3階級が行われた男子の日本勢は100kg級のウルフアロン(了徳寺大職)が優勝、90kg級の向翔一郎(ALSOK)と100kg超級の影浦心(日本中央競馬会)が2位だった。

ウルフは全試合一本勝ち。最大の勝負どころと目された準決勝のジョルジ・フォンセカ(ポルトガル)戦はGS延長戦の崩上四方固「一本」で勝ち抜け、決勝のグリゴリ・ミナシキン(エストニア)戦はいずれも内股で「技有」、「一本」と連取しての完勝だった。単に勝つのみならずしっかり試合を作って外堀を埋め、為す術なくなった相手の出口で待ち構えて投げに嵌めてと、理のある戦い方を貫いて隙のない内容。この日の対戦相手に超一線級はいなかったが、ウルフ強しとあらためて周囲に印象付けた価値ある大会だった。

第1シードに配された現役世界王者チョ・グハン(韓国)は準々決勝でミナシキンに敗退。膝車「技有」に背負投を返されての浮落「技有」と2度投げられての完敗で敗者復活戦に回った。最終結果は3位だった。

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100kg超級決勝、オール・サッソンが影浦心から右小外掛「技有」

100kg超級の影浦は、決勝でオール・サッソン(イスラエル)に敗退。担ぎ技を得意とする相手の攻撃を読み切って手堅い試合ぶり、チャンスありと思われたが延長開始早々に突如加速したサッソンの奇襲に捕まり小外掛「技有」で敗れた。この日の影浦は「担ぎ技だけではなく、大外刈や払腰で勝負する」と年初に語ったプランを有言実行。ラカン・ザイダン(サウジアラビア)を足車、ユール・スパイカース(オランダ)を払巻込、リヒャルト・シポッツ(ハンガリー)を大外刈、そして準決勝はなんとゲラ・ザアリシヴイリ(ジョージア)を釣り手で腋を差しての左大外刈「一本」と大型選手から次々投げを決める圧巻の内容。大きく評価を上げた大会になるかと思われたが、惜しくも画竜点睛を欠いた。

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90kg級決勝、ニコロス・シェラザディシヴィリが向翔一郎の小外掛を捌いて隅落「一本」

90kg級の向は決勝で現役世界王者ニコロス・シェラザディシヴィリ(スペイン)に一本負け。
この日ここまでの向は緩急を効かせた上手い試合運びを披露。敢えてスローペースで、かつ「指導」差でも先行して手堅く試合を進め、ここぞの際を見極めてその瞬間のみ加速するという練れた戦術で全試合で投げを決めていた。3回戦はクリスティアン・トート(ハンガリー)をトリッキーな作りからの払巻込「一本」、準決勝は世界選手権2位のイワン=フェリペ・シルバ=モラレス(キューバ)からGS延長戦の小外刈「技有」とこのやり方で難敵も次々突破。一か八かの密着勝負が多く状況の見極めが課題だった向が見せた新モード、と高く評価されるべき戦いであったが決勝に落とし穴。この試合も敢えてスローペースの組み手争いのまま延長戦に持ち込み、一瞬加速して左内股で「一本」級の投げ。しかしこれが場外と判定されると動揺したか、直後抱き着きの左小外掛というまさに「一か八か」の勝負に打って出、これを返されて一本負けを喫した。同じく新たなモードで決勝までを勝ち抜いた影浦同様、評価を上げながらも画竜点睛を欠いた悔しい大会となった。

各階級の入賞者と決勝の戦評、日本選手全試合の結果は下記。

文責:古田英毅

■ 90kg級
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90kg級メダリスト。左から2位の向、優勝のシェラザディシヴィリ、3位のイワン=フェリペ・シルバ=モラレスとベカ・グヴィニアシヴィリ。

(エントリー59名)

【入賞者】
1.SHERAZADISHVILI, Nikoloz (ESP)
2.MUKAI, Shoichiro (JPN)
3.GVINIASHVILI, Beka (GEO)
3.SILVA MORALES, Ivan Felipe (CUB)
5.BOZBAYEV, Islam (KAZ)
5.FLORENTINO, Robert (DOM)
7.KUKOLJ, Aleksandar (SRB)
7.USTOPIRIYON, Komronshokh (TJK)

【決勝】

ニコロス・シェラザディシヴィリ(スペイン)〇GS隅落(GS1:09)△向翔一郎

シェラザディシヴィリが右、向が左組みのケンカ四つ。シェラザディシヴィリは釣り手で背中を深く握り、向がこれを立ち位置をずらして、あるいは前襟で突いて外すという形で試合が進む。向はこれまでの試合と同様深入りせずスローペース、時折スピードを上げて技を仕掛ける。1分過ぎには釣り手を外すなり左小内刈でたたらを踏ませ、右襟を握っての「韓国背負い」に飛び込む。シェラザディシヴィリが腹ばいに落ち、向あくまで回し切るが時間差があり過ぎたかノーポイント。シェラザディシヴィリは2分を過ぎたところからやや加速、「ケンカ四つ」クロスの右内股に、得意の後帯を握っての右内股、背中を握って出し投げ風に前に崩しながらの右内股と技を積むが、向はこのペースアップに付き合わず冷静に対処し続ける。4分間があっという間に過ぎ去り、試合はGS延長戦へ。
向は機が訪れたと見て加速。シェラザディシヴィリが背中を叩くと、するりといったん正面に位置をずらして回しこみの左内股。崩れると見るや巧みに体を預けて押し付け、回旋を作って投げ切る。これは「一本」かと思われたが、位置をずらした際に向の両足が場外に出ており、その時点で「待て」。惜しくもノーカウント。
この試合も向の緩急は見事、以後も十分チャンスありと感じさせる一撃であったが、ここに落とし穴があった。直後の組み際に向は相手の右体側に絡みつき、釣り手の四指で後襟を引っ掴んでの左小外掛に打って出る。しかし懐の深さが売りのシェラザディシヴィリはこれを捌き透かし、そのまま胸を合わせて被さり「一本」。向、惜しくも金星を逃す。

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準決勝のシルバ=モラレス戦を戦う向

【日本代表選手勝ち上がり】

向翔一郎(ALSOK)
成績:優勝


[1回戦]
向翔一郎〇合技[背負投・巴投](1:19)△ヘロニモ・サウセド(メキシコ)
[2回戦]
向翔一郎〇GS裏投(GS0:21)△ユウタ・ガラレタ=ビラール(ペルー)
[3回戦]
向翔一郎〇GS払巻込(GS0:36)△クリスティアン・トート
[準々決勝]
向翔一郎〇袖釣込腰(1:04)△コムロンショフ・ウストピリヨン(タジキスタン)
[準決勝]
向翔一郎〇GS技有・小外刈(GS2:20)△イワン=フェリペ・シルバ=モラレス(キューバ)
[決勝]
向翔一郎△GS隅落(GS1:09)〇ニコロス・シェラザディシヴィリ(スペイン)

■ 100kg級
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100kg級メダリスト。左から2位のミナシキン、優勝のウルフ、3位のチョ・グハンとシメオン・カタリナ。

(エントリー41名)

【入賞者】
1.WOLF, Aaron (JPN)
2.MINASKIN, Grigori (EST)
3.CATHARINA, Simeon (NED)
3.CHO, Guham (KOR)
5.DVARBY, Joakim (SWE)
5.FONSECA, Jorge (POR)
7.CIRJENICS, Miklos (HUN)
7.DENISOV, Kirill (RUS)

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100kg級決勝、ウルフが内股で「技有」先行

【決勝】

ウルフアロン〇内股(3:28)△グリゴリ・ミナシキン(エストニア)

ウルフが左、ミナシキン右組みのケンカ四つ。ウルフ釣り手で横襟を握り、引き手で袖を求める。明らかにミナシキン嫌い、26秒片手の咎で「指導」。ウルフ続いて今度は引き手から組み手を始め、手が合わないと見るといったん内股に潰れて展開を切り、再び釣り手で横襟を握って引き手を求める手順に回帰。ミナシキンは巴投を1度見せ、形を変えながらしかし引き手を持ちあうことには応じない。しかしウルフの圧に窮して妥協、初めて引き手で前襟を持つとウルフ袖を握り返すなり左内股一撃。作用足を足元に落とし、相手が乗り越えようとした瞬間高く差し揚げて捉え2分18秒「技有」。ミナシキン防御に舵を切って再び引き手を持たすまいとするが、2分46秒再び片手の咎で「指導2」。仕方なく引き手で前襟を持つとウルフ瞬間袖を握り返して左大内刈、ミナシキン辛くも腹這いに反転して着地「待て」。
持たねば反則、持てば投げられる。ミナシキンもはや行くしかないと思考停止、釣り手で思いきり背中を叩くがこれは完全にウルフの術中。そのまま深々左内股に捉え「一本」。
ミナシキンは組み合わざるを得ない状況を作られてもはや為す術がなかった。実力差をきちんと把握し、粛々手立てを打って外堀を埋め、そして決め切ったウルフの強さばかりが際立つ試合だった。

【日本代表選手勝ち上がり】

ウルフアロン(了徳寺大職)
成績:優勝


[2回戦]
ウルフアロン〇大外刈(2:12)△ヴェグ・ジョンボル(ハンガリー)
[2回戦]
ウルフアロン〇棄権(1:24)△オレグ・イシモフ(ロシア)
[2回戦]
ウルフアロン〇小外刈(3:45)△ヨアキム・ドファービー(スウェーデン)
[2回戦]
ウルフアロン〇GS崩上四方固(GS1:11)△ジョルジ・フォンセカ(ポルトガル)
[決勝]
ウルフアロン〇内股(3:28)△グリゴリ・ミナシキン(エストニア)

■ 100kg超級
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100kg超級メダリスト。左から2位の影浦、優勝のサッソン、3位のリヒャルト・シポッツとゲラ・ザアリシビリ。

(エントリー30名)
【入賞者】
1.SASSON, Or (ISR)
2.KAGEURA, Kokoro (JPN)
3.SIPOCZ, Richard (HUN)
3.ZAALISHVILI, Gela (GEO)
5.KRIVOBOKOV, Anton (RUS)
5.OLTIBOEV, Bekmurod (UZB)
7.ALLERSTORFER, Daniel (AUT)
7.DRAGIC, Vito (SLO)

【決勝】

オール・サッソン(イスラエル)〇GS技有・小外掛(GS0:08)△影浦心

サッソンが右、影浦が左組みのケンカ四つ。サッソンは釣り手で深く背中を叩かんとし、影浦は前襟をベースにこれを突き、あるいは畳んで相手の肘に載せて試合を作りに掛かる。影浦は右襟を掴んだ左背負投で度々攻撃。一方のサッソンは1分19秒、2分1秒と片襟を差しての左背負投を見せるがいずれも高さが合わず、影浦が立ったまましっかり捌いて得点の予感は漂わず。2分33秒双方に片手の咎で「指導」。残り1分、サッソンが背中を掴むと影浦は下から回した左手の四指で後襟を引っ掴んで対抗。続いて襲ったサッソンの右小外掛を読んで被り返すが、投げ切れず「待て」。残り10秒、サッソン再び片襟の左背負投に飛び込むも効かずに潰れ、直後両袖で絞り込んだ咎でサッソンに「指導2」。ここで試合はGS延長戦へ。
延長が始まった瞬間、サッソン釣り手で背中を叩くなり引き手を脇に差して右小外掛。「唐突」という表現がふさわしい、試合のエアポケットに刷り込んで来た奇襲技。影浦左背負投に切り返して凌がんと反転を試みるが、おっつけられた相手の頭に首を固められて万事休す。仰け反った格好のまま畳に落ちて「技有」。タイミング、技の選択ともにサッソンの勝負勘の良さが際立った一発。リオ五輪後に超級世界に現れた「担ぎ技ファイターの時代」を牽引した両雄による対決は再びサッソンの勝利に終わった。

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2回戦、影浦がラカン・ザイダンから足車「技有」

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準々決勝、影浦がリヒャルト・シポッツから大外刈「一本」

【日本代表選手勝ち上がり】

影浦心(日本中央競馬会)
成績:2位


[2回戦]
影浦心〇合技[足車・袈裟固](1:28)△ラカン・ザイダン(サウジアラビア)
[2回戦]
影浦心〇払巻込(3:54)△ユール・スパイカース(オランダ)
[準々決勝]
影浦心〇大外刈(3:41)△リヒャルト・シポッツ(ハンガリー)
[準決勝]
影浦心〇大外刈(0:56)△ゲラ・ザアリシヴイリ(ジョージア)
[決勝]
影浦心△GS技有・小外掛(GS0:08)〇オール・サッソン(イスラエル)

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