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渡名喜風南と前田千島が優勝、57kg級は五輪女王シウバが圧勝・グランプリブダペスト第1日女子

(2019年7月13日)

※ eJudoメルマガ版7月13日掲載記事より転載・編集しています。
渡名喜風南と前田千島が優勝、57kg級は五輪女王シウバが圧勝
グランプリ・ブダペスト第1日女子(48kg級、52kg級、57kg級)
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48kg級決勝、渡名喜風南がディストリア・クラスニキから小外掛「技有」

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準々決勝、渡名喜は強引な大外刈をション・ヤオに裏投で切り返され、危うく失点の危機。

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52kg級決勝、前田千島がファビアン・コッヒャーから背負投「技有」

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57kg級決勝、ラファエラ・シウバがノラ・ヤコヴァを左内股で攻める

→第1日女子プレビュー

グランプリ・ブダペスト大会は12日、ハンガリーのパップ・ラズロ・ブダペストスポーツアリーナで開幕。初日の女子は48kg級、52kg級、57kg級の3階級の競技が行われた。

48kg級は2017年世界王者渡名喜風南(パーク24)が順当に優勝。決勝は対抗馬と目されていたディストリア・クラスニキ(コソボ)をGS延長戦の末に合技「一本」で破った。全試合一本勝ちと結果的には圧勝、2月のグランドスラム・デュッセルドルフ以来久々の大会をしっかり勝ち切った形だが、準々決勝のション・ヤオ(中国)戦は「技有」リード後に強引に仕掛けた大外刈を裏投で思いきり放られ(尻餅の判断でノーポイント)、準決勝のエヴァ・チェルノビツキ(ハンガリー)戦も袖釣込腰で「技有」失陥、決勝でも「技有」リード後にクラスニキの内股をまともに食って「技有」を失うなど決して万全の出来にはあらず。体の強さに頼るがゆえの受けの不安定さ、という隙を垣間見せた大会でもあった。

52kg級は日本代表の前田千島(三井住友海上)がワールドツアー初優勝。準々決勝のアンドレア・キトゥ(ルーマニア)戦では大外刈を透かされて浮落「技有」を失ったが、「腕緘返し」から横四方固に繋いで逆転勝ち。準決勝ではかつての絶対王者マイリンダ・ケルメンディ(コソボ)と大激戦、隅落で完璧に回され「技有」を失うも、直後巴投でしぶとく投げ切って「技有」を取り返し試合をGS延長戦に持ち込む。試合時間7分を越えたところで右背負投に飛び込み、逆側に抜け落として「技有」。これで大金星を決めた。決勝はダークホースのファビアン・コッヒャー(スイス)を背負投「技有」で破った。

前田に敗れたケルメンディは調子が上がらず、続く3位決定戦もアナ・ペレス=ボックス(スペイン)に敗退。左大外巻込で「技有」を得るも後処理が粗く、立ち際を引き込まれて横四方固に捉えられ一本負けを喫した。最終結果は5位だった。

57kg級はリオ五輪王者ラファエラ・シウバ(ブラジル)が素晴らしい出来で優勝を飾った。1回戦でハディール・エラルミ(ヨルダン)を1分11秒大内刈「一本」、2回戦でカルラ・ウバサルト=マスカロ(スペイン)を1分40秒浮落と崩袈裟固の合技「一本」、準々決勝でサブリナ・フィルツモザー(オーストリア)を40秒縦四方固「一本」と圧勝続き。唯一揉めた準決勝は地元のヘドウィグ・カラカス(ハンガリー)からGS延長戦小外掛「技有」での勝ち抜けだったが、決勝では今大会最大の難敵と目されたノラ・ヤコヴァ(コソボ)を相手にせず、隅落「技有」を2つ重ねての合技「一本」で優勝を決めた。シウバは5月のグランドスラム・バクーに続く今季2勝目、これで4大会連続の決勝進出。

今季のシウバは作用足の膝を揚げて牽制する形を起点に、鋭い左内股とこれを絡めた出足払、小外刈を打ち込むという本格派スタイルに変貌。しかしこの柔道の質の向上以上に、今大会はメンタル面での成長が光った。準決勝は地元の大声援を受けるカラカスの手数攻撃に粘られ、観客席からの「指導」を要求する怒号に晒され、そして一時は「指導3」を宣告されてしまう判定の不安定さにも悩まされたが一貫して冷静。淡々と戦い続けて小外掛「技有」で試合を決めると、伏せてガッカリのカラカスの背を叩き、腕を取って引き上げ、礼の後は握手で健闘を讃えた。かつてそのムラ気とセルフコントロールの利かなさが弱点であったシウバだが、これを克服して一段上のステージに上がりつつあることが感じられた大会だった。

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3位入賞、ツアー最年長メダリストとなったサブリナ・フィルツモザー。対戦相手のミリアム・ローパーも35歳のベテランだった。

この階級では、サブリナ・フィルツモザー(オーストリア)の3位入賞が話題をさらった。フィルツモザーは現在39歳、今回の勝利でイルゼ・ヘイレン(ベルギー)の38歳10ヶ月(2016年グランプリ・ハバナ2位)を抜いて、IJFワールドツアーの最年長メダリスト記録を打ち立てた。3位決定戦で相手を務めたミリアム・ローパー(パナマ)も37歳、今大会には他にも35歳になったレアンドロ・ギヘイロ(ブラジル)、同じく35歳のスルジャン・ムルヴァリエヴィッチ(モンテネグロ)らが参加しており、30代のベテランの参戦はもはや珍しいことではなくなった。国際大会の増加により派遣選手の幅を広げられるという事情が現役継続を希望する選手の居場所の確保に一役買っているとも観察され、IJFワールドツアー制度の充実を感じさせる大会でもあった。

各階級の入賞者と決勝の戦評、日本代表選手全試合の勝ち上がりは下記。


文責:古田英毅

■ 48kg級
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48kg級メダリスト。左から2位のディストリア・クラスニキ、優勝の渡名喜風南、3位のマリア・チエルニアクとジュリア・フィゲロア

(エントリー21名)

【入賞者】
1.TONAKI, Funa (JPN)
2.KRASNIQI, Distria (KOS)
3.CHERNIAK, Maryna (UKR)
3.FIGUEROA, Julia (ESP)
5.CSERNOVICZKI, Eva (HUN)
5.MARTINEZ ABELENDA, Laura (ESP)
7.LI, Yanan (CHN)
7.XIONG, Yao (CHN)

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決勝、クラスニキが渡名喜から内股「技有」

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渡名喜が横四方固に抑え込んで、勝ち越し。

【決勝】
渡名喜風南〇合技[小外掛・横四方固](GS2:05)△ディストリア・クラスニキ(コソボ)

渡名喜が左、クラスニキが右組みのケンカ四つ。渡名喜引き手から持ち、左小内刈、内股、左出足払で攻める。そのまま場外に弾き出して試合を優位に進めるが、27秒渡名喜の側に袖口を握り込んだ咎で「指導」。渡名喜以後も動き良く攻め、クラスニキが奥襟を叩いた瞬間に合わせてカウンターの左小外掛一撃。虚を突かれたクラスニキ転がってこれは「技有」。渡名喜抑え込み掛けるが足を絡まれて果たせず「待て」。
しかし続く展開、クラスニキは釣り手を背中に回して思い切り右内股。釣り手は脇下までずれていたが、力自慢のクラスニキの膂力をまともに食った渡名喜は吹っ飛び、肩から落ちて1分58秒「技有」。続く展開も渡名喜タイミング良く左小外刈を放つがクラスニキはカウンターの右内股で迎え撃ち、そのパワーを存分に見せつける。
以後も互いに引き手から持つことが目立つ攻め合いの様相。渡名喜はステップを切っての小外刈を軸に、同じモーションからの左体落で攻め、クラスニキは腰を突っ込んでの右内股で反撃する。このまま本戦が終了、試合はGS延長戦へ。
クラスニキ幾度か良いタイミングの内股を見せるが、前段の失点で警戒を強めた渡名喜はいずれもなんとか凌ぎ切る。GS1分25秒、クラスニキの右内股に応じた渡名喜が左背負投。ここから寝技に持ち込み、絡まれた脚を「袈裟抜き」の形で引き抜いて横四方固。クラスニキしつこく絡みついて決して盤石の形であったが10秒は短い。あっという間に時間過ぎ去りGS2分5秒、合技「一本」。渡名喜の勝利が決まった。

【日本代表選手勝ち上がり】

渡名喜風南(パーク24)
成績:優勝


[2回戦]
渡名喜風南〇内股透(1:31)△フランチェスカ・ジョルダ(イタリア)
[準々決勝]
渡名喜風南〇合技[引込返・横四方固](3:10)△ション・ヤオ(中国)
[準決勝]
渡名喜風南〇崩上四方固(2:49)△エヴァ・チェルノビツキ(ハンガリー)
[決勝]
渡名喜風南〇GS合技[小外掛・横四方固] (GS2:05)△ディストリア・クラスニキ(コソボ)

■ 52kg級
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52kg級メダリスト。左から2位のファビアン・コッヒャー、優勝の前田千島、3位のアンドレア・キトゥとアナ・ペレス=ボックス。

(エントリー31名)

【入賞者】
1.MAEDA, Chishima (JPN)
2.KOCHER, Fabienne (SUI)
3.CHITU, Andreea (ROU)
3.PEREZ BOX, Ana (ESP)
5.KELMENDI, Majlinda (KOS)
5.VALENTIM, Eleudis (BRA)
7.LEVYTSKA-SHUKVANI, Tetiana (GEO)
7.PIMENTA, Larissa (BRA)

【決勝】

前田千島〇優勢[技有・背負投]△ファビアン・コッヒャー(スイス)

前田が右、コッヒャー左組みのケンカ四つ。前田いきなりの右背負投で腹ばいに叩き落とし、背中について寝技を狙うが相手の守備が堅く「待て」。以後は引き手争い。コッヒャーは釣り手で背中を深く叩き、前田は前襟で対抗する。51秒、互いに釣り手一本の攻防から前田が抜き上げるような右小外刈。これで追い掛け、コッヒャーの足の着き際を狙って、両手で左襟を握った右背負投に座り込む。コッヒャー腹這いに近い形で畳に落ちるが肩が接地、微妙ながらこれは「技有」。
以後コッヒャーは「ケンカ四つクロス」の形をベースに釣り手で背中を叩いて迫るが、リードを得た前田は粘り強い組み手と大内刈、小外刈で対抗して手堅く進退。残り30秒を過ぎるとコッヒャーが奥襟を叩いてひときわ力強く前進、前田ぶらさがるような恰好で受けに回るが、最後は背中を叩いての小外掛に座り込み、腹這いに落としたところで終了ブザー。前田は悲願のワールドツアー初優勝。

【日本代表選手勝ち上がり】

前田千島(三井住友海上)
成績:優勝


[1回戦]
前田千島〇崩袈裟固(0:51)△ディヨラ・ケルディヨロワ(ウズベキスタン)
[1回戦]
前田千島〇片手絞(1:16)△レカ・プップ(ハンガリー)
[1回戦]
前田千島〇横四方固(2:58)△アンドレア・キトウ(ルーマニア)
[1回戦]
前田千島〇GS合技[巴投・背負投](GS3:01)△マイリンダ・ケルメンディ(コソボ)
[1回戦]
前田千島〇優勢[技有・背負投]△ファビアン・コッヒャー(スイス)

■ 57kg級
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57kg級メダリスト。左から2位のノラ・ヤコヴァ、優勝のラファエラ・シウバ、3位のヘドウィグ・カラカスとサブリナ・フィルツモザー。

(エントリー38名)

【入賞者】
1.SILVA, Rafaela (BRA)
2.GJAKOVA, Nora (KOS)
3.FILZMOSER, Sabrina (AUT)
3.KARAKAS, Hedvig (HUN)
5.BOROWSKA, Anna (POL)
5.ROPER, Miryam (PAN)
7.ILIEVA, Ivelina (BUL)
7.LU, Tongjuan (CHN)

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決勝、シウバが隅落で「技有」

【決勝】
ラファエラ・シウバ(ブラジル)〇合技[隅落・隅落](3:07)△ノラ・ヤコヴァ(コソボ)

予想通りの本命対決はヤコヴァが右、シウバが左組みのケンカ四つ。シウバ引き手で襟、引き手で奥襟を持つ強気の組み手から飛び込みの左内股。潰れたが非常に質の良い技。以後も釣り手で丁寧に上から潰す形を作っては、作用足の膝を幾度も振り上げて牽制。いつでも左内股に飛び込む構えのヒットマンスタイルでヤコヴァにプレッシャーを掛ける。2分11秒、シウバ小外刈から左内股。これはヤコヴァが隅落を狙ってもろとも潰れたが、以後も主導権はシウバが取り続ける。
2分53秒、シウバの圧力に耐えかねたヤコヴァが組み際に思い切って首を抱き、右腰車に打って出る。しかしシウバ待ち構えて一歩進んで隅落、脚を揚げて跳ねようとしたヤコヴァを縦回転に回して「技有」確保。直後、もはや行くしかないヤコヴァは一合の「手合わせ」を経て、再び首を抱いての右内股一撃。しかしシウバ待ってましたとばかりに隅落。まず背を抱いて止め、続いて掌で肩を押し込んで回旋を作る理にかなったこの技見事に決まり、またもや「技有」。一見拮抗も、シウバのプレッシャーが閾値を超えるとヤコヴァの防壁あっという間に崩壊。僅か20秒あまりで決まった「技有」2つでシウバが優勝を決めた。

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