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【レポート】日本中央競馬会が2年ぶり5度目の優勝、影浦心が勝負どころで貴重な勝利・第69回全日本実業柔道団体対抗大会男子第1部即日レポート

(2019年6月10日)

※ eJudoメルマガ版6月11日掲載記事より転載・編集しています。
【レポート】日本中央競馬会が2年ぶり5度目の優勝、影浦心が勝負どころで貴重な勝利
第69回全日本実業柔道団体対抗大会男子第1部即日レポート
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男子第1部優勝の日本中央競馬会チーム

→男子1部全試合結果(eJudoLITE)

団体戦で実業柔道日本一を争う第67回全日本実業柔道団体対抗大会は9日、高崎アリーナ(高崎市)で最終日を迎え、最高峰カテゴリの男子第1部は日本中央競馬会が優勝した。

同チームの優勝は原沢久喜らを擁して2連覇した第67回大会以来2年ぶり5度目。準決勝で連覇を狙う旭化成を相手に、影浦心が王子谷剛志から挙げた虎の子の1点を守り切って1-0で勝利。決勝もパーク24Aを相手に影浦が挙げた1点を守り切って勝利した。

優秀選手には日本中央競馬会から影浦と高木海帆、ほか小原拳哉(パーク24A)、尾原琢仁(旭化成)、西山大希(日本製鉄A)が選出された。

入賞者と日本中央競馬会・賀持道明監督のコメント、1回戦から決勝まで全試合の戦評は下記。

※五人制、体重無差別、試合ごとのオーダー順変更可

【入賞者】
(エントリー12チーム)
優 勝:日本中央競馬会
準優勝:パーク24A
第三位:旭化成、日本製鉄A

※決勝は1-0

優秀選手:高木海帆、影浦心(日本中央競馬会)、小原拳哉(パーク24A)、尾原琢仁(旭化成)、西山大希(日本製鉄A)

日本中央競馬会・賀持道明監督のコメント
「率直に言って、きつい戦いでした(笑)。勝因はなんと言ってもチームワーク。8人しか選手がいないので、出るものも出ないものもしっかりやる、全員で勝つという意識を徹底しました。その中で、長島(啓太)と池田(賢生)、今回色々なめぐり合わせで出場がなかったベテランの2人が若手に声を掛け、率先して動き、勝てる雰囲気を作ってくれました。あとは研究ですね。組み合わせが出て、対戦する可能性がある相手は15人から20人くらい。具体的に相手の組み手や技、ここの癖など細かいところをしっかりチェックしてきました。また、『1つも反則を取られないで勝とう』ということを目標にして、袖口絞りや場外など、戦術的な面も具体的にどう行動するかという反復をしっかりやってきました。チームワークと研究、やって来たことがしっかり出せた大会であったと思います。」

■ 戦評
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副将戦、日本製鉄B・田中大貴の攻めを日本エースサポート・山本幸紀がしのぐ

【1回戦】

日本エースサポート 2-0 日本製鉄B
(先)安達健太×引分×大橋賢人
(次)荒木佳祐〇払腰(4:00)△西山瑠星
(中)松谷鯉太郎〇優勢[僅差]△春日良太
(副)山本幸紀×引分×田中大貴
(大)三戸雄生×引分×谷井大輝

中盤戦で流れを掴んだ日本エースサポートが勝利。先鋒戦は拮抗の末の引き分けだったが、次鋒荒木佳祐の払腰「一本」、中堅松谷鯉太郎の僅差優勢勝ちで大勢を決めてしまった。日本製鉄Bは副将に田中大貴、大将に谷井大輝と強豪を残していたが、リードを背に手堅く戦う山本幸紀と三戸雄生を崩し切れず。勝敗決定後に登場した谷井は三戸を相手に加速のきっかけを得られないまま引き分けを受け入れてしまい、日本エースサポートが2-0の完封で2回戦へと駒を進めた。

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センコーの副将原田昌寛がパーク24・海老沼匡から巴投「一本」

センコーA 1-0 パーク24B
(先)尾崎央達×引分×江畑丈夫
(次)制野孝二郎×引分×渕原槙一
(中)安田圭吾×引分×中井貴裕
(副)原田昌寛〇巴投(1:17)△海老沼匡
(大)長倉友樹×引分×白川剛章

3戦連続の引き分けを受けた副将戦で試合が大きく動いた。桐蔭横浜大を卒業したばかりの90kg級原田昌寛が五輪銅メダリスト、現73kg級強化選手の海老沼匡から巴投で鮮やか「一本」。ケンカ四つで引き手で袖を絞り合ったところから釣り手で背中、袖と探りながら襟を掴むなり勢いよく飛び込んだ一撃。蹴り込んだ両足の先は空を突いたが、海老沼の左脚を両脚で挟み込むようにしたまま持ち上げ、スピードを緩めずもろとも縦に一回転。引き手を制されたまま馬乗りになられた海老沼にこれを止める材料はなかった。
大将戦では白川剛章が必死の攻めを見せるが、長倉友樹は試合巧者。決定打を打たせず、これぞの技は柔らかく受け流してしっかり引き分け。パーク24Bはオリンピアン2人にイキのいい若手選手という面白い構成で臨んだ注目チームであったが、初戦で敗退となった。

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ALSOKの先鋒佐々木健志が京葉ガス・岩尾敬太から一本背負投「一本」

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ALSOKは副将中矢力も体格差を跳ね返し、飯田健伍からわずか14秒の袖釣込腰「一本」

ALSOK 2-1 京葉ガス
(先)佐々木健志〇一本背負投(1:38)△岩尾敬太
(次)熊代佑輔×引分×寺島克興
(中)△不戦〇下和田翔平
(副)中矢力〇袖釣込腰(0:14)△飯田健伍
(大)香川大吾×引分×野々内悠真

中量級の好選手2人が持ち味を発揮、素晴らしい内容で大会を盛り上げた。まず2018年81kg級アジア大会代表の先鋒・佐々木健志が体重130キロのもと講道館杯王者岩尾敬太に得意の担ぎ技を仕掛けまくり、1分38秒には見事に懐の中に潜り込んでもろとも一回転、有無を言わさず投げ切って鮮やか右一本背負投「一本」。ALSOKは続く次鋒戦で熊代佑輔が引き分け、中堅は不在で京葉ガスに1点を献上してスコアをタイまで戻されてしまったが、今度はここで登場したもと73kg級世界王者・中矢力が魅せてくれた。体重115キロの飯田健伍を相手に試合が始まるなり素早く左袖釣込腰、前に崩れた飯田の前にはその体を支える遮蔽物はなく、スポリと空間に吸い込まれるように一回転。これも鮮やか「一本」。
これでALSOKが勝ち越し、大将戦は香川大吾が高校の先輩である野々内悠真と手堅く引き分け、最終スコア2-1で試合終了。4人で戦うALSOKが1部ベスト8入りを決めた。

東芝 3-0 センコーB
(先)片桐章男×引分×具志堅一弘
(次)佐藤悠人〇小外掛(1:10)△石田勇太
(中)五味江貴〇優勢[技有]△藤岡将吾
(副)奥井真也〇裏投(1:31)△関根太三
(大)乙津瑞希×引分×岩渕侑生

個々の試合、それぞれの局面は拮抗の印象が強かったが、東芝がじわじわスコアを伸ばして気が付けば3戦を終えてスコアは2-0。ここで副将奥井真也が関根太三を裏投「一本」に仕留めて勝敗が決した。好選手同士がかち合った大将戦は消化試合となり双方加速しきらず。東芝がスコア3-0という大差で2回戦進出を決めることとなった。センコーBは先鋒戦で先制してこれを前提に試合を進めたかったところだが、ここで取り切れなかったことが痛かった。以降のメンバーも十分粘れるはずの陣容であったが、悪い流れを跳ね返すまでの地力はなく岩渕侑生登場の大将戦まで勝負の襷を繋ぎ切れず。

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旭化成の次鋒羽賀龍之介が日本エースサポート・安達健太を絞め上げて崩上四方固に繋ぐ

【準々決勝】

旭化成 4-0 日本エースサポート
(先)石内裕貴〇優勢[技有・内股]△三戸雄生
(次)羽賀龍之介〇崩上四方固(3:52)△安達健太
(中)尾原琢仁〇払腰(2:45)△荒木佳祐
(副)小林悠輔〇内股(2:46)△山本幸紀
(大)王子谷剛志×引分×松谷鯉太郎

豪華メンバーを組んだ旭化成の初戦。先鋒石内裕貴はなかなか三戸雄生を捉えられなかったが、ともに「指導」1つを失って迎えた1分42秒、場外に向かって強引に内股を押し込んで「技有」。しっかり先鋒の責任を果たした石内の働きで勝敗の趨勢早くも決した感あり。

次鋒戦は4月の選抜体重別100kg級を制したもと世界王者羽賀龍之介が登場。新卒の後輩安達健太に粘られたが、ならばと足元を蹴り崩し、同時に襟を握った手をクルリと操作して頭の下がった安達の首を絞め上げる。自身の投げを良く知られた後輩に対しならばと繰り出した「立ちと寝」一体のこの技術見事に決まって安達は悶絶、絞めを回避して回転したところを羽賀手堅く崩上四方固に抑え込んで「一本」。こうなればペースは完全に旭化成、中堅尾原琢仁は作りにやや時間が掛かったものの、ケレン味ない払腰で荒木佳祐を豪快に投げつけ「一本」。副将小林悠輔も山本幸紀を内股「一本」に仕留める。大将戦は王子谷剛志がケンカ四つの松谷鯉太郎から「指導」1つを奪ったのみで引き分けたが大勢には影響なし。旭化成がスコア4-0の大差でベスト4入りを決めた。

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ベイカー茉秋が得意とする変則の右一本背負投、制野孝二郎を前隅に押し込んで「技有」

日本中央競馬会 2-0 センコーA
(先)一色勇輝×引分×尾崎央達
(次)ベイカー茉秋〇優勢[技有・一本背負投]△制野孝二郎
(中)レイズカヨル×引分×原田昌寛
(副)影浦心×引分×安田圭吾
(大)高木海帆〇崩袈裟固(0:50)△長倉友樹

先鋒戦のタイプの違う大型対決、ともに日本大出身の一色勇輝と尾崎央達の一番は相譲らず引き分け。次鋒戦に登場したベイカー茉秋も巧者制野孝二郎に粘られてなかなか刃を入れるタイミングが見つけられなかったが、残り時間1分が迫るところで右一本背負投。相手の袖を絞って横変形にずれて構え、まず時計回り回転(左技の回転)で懐に潜り込んでから右に投げるというベイカーが得意とする入り方、このワンチャンスをしっかり生かして「技有」確保。このまま優勢勝ちを果たして日本中央競馬会が先制。

中堅戦は前戦で海老沼匡に勝利した原田昌寛がこの試合も絶好調、100kg級の強者レイズカヨルを相手に次々背負投で深く潜り込み、さらに良いタイミングで巴投に入り込んで場内を沸かす。しかし右膝手術からの復帰戦となるレイズはかつての柔らかさと体の芯の強さを取り戻しつつあるようで、これぞという深い技にも意外なほどに揺らがず。この試合は引き分けに終わり、副将戦も影浦心が安田圭吾とともに「指導」1つずつを失う振れ幅の少ない様相のまま引き分けとなる。

大将戦は高木海帆が受けの上手い長倉友樹にならばと寝勝負を挑み、引き込んでからの「横返し」で側方に落としてそのまま拘束。崩袈裟固「一本」で貴重なダメ押し点を奪って試合終了。スコア2-0で日本中央競馬会が快勝、ぶじベスト4入りを決めた。

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日本製鉄の先鋒佐藤和哉が佐々木健志を捕まえ、右大外刈「技有」。

日本製鉄A 3-1 ALSOK
(先)佐藤和哉〇合技[大外刈・崩袈裟固](2:25)△佐々木健志
(次)田中源大△優勢[技有・出足払]〇香川大吾
(中)上田轄麻〇優勢[技有・大内返]△中矢力
(副)西山大希〇不戦△
(大)小川竜昂×引分×熊代佑輔

先鋒戦、この試合も佐々木健志が全日本選手権出場の佐藤和哉を相手に怖じず、次々背負投に飛びこみ続ける。一撃離脱のリズムも非常に小気味良く、2分0秒には佐藤に「指導」。しかし直後、佐々木の組み際をガッチリ捕まえた佐藤ここを逃がさぬとばかりに深々右大外刈、有無を言わさず直下に叩き落として「技有」。佐々木こうなると動けず、佐藤は組み敷いたまま崩袈裟固で抑え切って2分25秒「一本」。先制点は日本製鉄、ALSOKが4人で戦うことを考えればまさに決定的な1点である。

次鋒戦はALSOK・香川大吾が高校時代からのライバル田中源大を相手に1分31秒、吸い込むような動きから出足払「技有」確保。このまま優勢勝ちを果たしてスコアは1-1のタイ、内容差での日本製鉄リードに変わる。

中堅戦はALSOKの中矢力が健闘、大型でかつその体格とパワーを効率よく使うことに長けた上田轄麻を相手に終盤まで「指導1」失陥のみで粘る。しかし残り12秒、ここで行かずばチームの勝利なしと間合いを詰めた瞬間、その技の起こりを捉えた上田に捕まって大内返「技有」を失う。そのまま試合は終わり、日本製鉄が2点目を確保。副将戦は日本製鉄が不戦の1点を得、ここで勝敗が決した。

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巨人・渡辺智斗が突進、田坂翔太を抱き落として隅落「技有」

パーク24A 4-0 東芝
(先)北野裕一〇優勢[僅差]△佐藤悠人
(次)小原拳哉×引分×五味江貴
(中)渡辺智斗〇合技[隅落・隅落](2:37)△田坂翔太
(副)釘丸将太〇合技[横落・横落](1:54)△片桐章男
(大)小川雄勢〇合技[隅落・大内刈](1:52)△乙津瑞希

1点リードで迎えた中堅からの3連勝でパーク24Aが大差の勝利。中堅の渡辺智斗は「大型選手いかに取るか」という引き出しを存分に見せつける。田坂翔太の巧みな進退と左背負投の連続攻撃に「指導」を失うと怒気を発し、直後の1分2秒突如スピードアップ。その巨躯がアメリカンフットボールよろしく畳を蹴って突進。抱き着くなりスピード緩めず捩じり落として隅落「技有」。以後田坂再び左背負投で抗するが、渡辺今度は待ち構えて膝を着かせたまま止め、側面から足先で楔を入れるように体をめりこませて隅落「技有」。1度目は相手の技術を無力化する有無を言わさぬ突進、2度目は掛けさせておいて体重を差し込む体格を意識した技術、自身の「質量」を巧く生かした2つの異なる隅落で渡辺見事な合技の一本勝ち。副将戦は釘丸将太がいずれも左への横落で片桐章男を捲り返して「技有」2つの快勝、この時点でパーク24の勝利が決定。

大将戦は100kg級の曲者・乙津瑞希が「やってやる」とばかりに思い切り奥襟を叩くが、先制攻撃の支釣込足は小川雄勢の体躯と体の強さに弾き返され、自らの体が浮き上がってしまう。そのまま自滅して転んでしまい22秒「技有」。続いて小川が上からグイと圧力、乙津幾度か背筋を伸ばして耐えるが、小川がこの「直す」動きに合わせて左大内刈を差し込むと真裏に崩落。1分52秒「一本」で勝負あり、最終スコアは4-0まで伸びた。

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序盤は石内裕貴善戦も、後半戦は一色勇輝が落ち着いてその攻めを捌く

【準決勝】

日本中央競馬会 1-0 旭化成
(先)一色勇輝×引分×石内裕貴
(次)ベイカー茉秋×引分×尾原琢仁
(中)レイズカヨル×引分×羽賀龍之介
(副)影浦心〇優勢[僅差]△王子谷剛志
(大)高木海帆×引分×垣田恭兵

大一番。先鋒戦はともに今年の全日本選手権を沸かせた旭化成・石内裕貴と日本中央競馬会・一色勇輝がマッチアップ。右相四つのこの試合はがっぷり正面勝負を挑みたい一色の意図を石内が得意の小内刈を軸とした足技で挫き続けるという展開。石内、1分過ぎには支釣込足からヒラリと右小内刈に繋ぎ、一色を大きく崩す。この一撃が効いたか一色がやや慎重となって試合はなかなか動かず、1分56秒には石内に片襟の「指導」。2分50秒石内再び小内刈を閃かせるが一色が仁王立ちで受けると弾かれて潰れ「待て」。以後も双方にチャンス訪れず、石内が一色に形を作らせぬまま試合は引き分けとなった。

次鋒戦は尾原琢仁が左、ベイカー茉秋が右組みのケンカ四つ。尾原1分8秒に組み際の出足払でベイカーを腹ばいに落とし、以降腰を切りながらにじり寄るように前へ。ベイカーは体格差に押され気味で具体的にどう取るかがなかなか見えない苦しい試合。尾原は出足払で崩しながら引き手の袖を掴むこと数度、しかしこちらも攻めが早いタイプではなく、なかなか具体的に取る道筋が見えない。残り9秒、ベイカーに「極端な防御姿勢」の「指導」が与えられてこの試合は引き分け。

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羽賀龍之介がレイズカヨルを小内刈からの大内刈で大きく崩す。惜しくも腹這いで得点にはならず。

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影浦心と王子谷剛志の副将戦。2つの場外「指導」で影浦が勝利。

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高木海帆が片手の右内股、巧者垣田恭兵を相手に先んじて攻める

100kg級の強者同士がマッチアップした中堅戦は羽賀龍之介とレイズカヨルともに左組みの相四つ。羽賀は落ち着いた試合ぶり、小内刈から巴投に繋ぐ連続攻撃を見せて、加速のスイッチを探っている印象。しかしこれぞという場面はなかなか訪れず、2分48秒には双方に消極的との咎で「指導」。直後、羽賀は得意の小内刈と大内刈のコンビネーションでレイズを腹ばいに畳に落とすが、得点の気配が感じられたのはこの場面のみ。この試合も引き分けに終わり、3戦を消化して双方いまだ無得点のまま。

副将戦は最重量級の一線選手による豪華対決、旭化成の王子谷剛志が右、影浦心が左組みのケンカ四つ。影浦組み手争いに前進行動を混ぜ込んでズイと場外際まで追い込むと、王子谷意外なほどあっさり畳を割って1分44秒場外の「指導」。以降も我慢比べの様相が続くが、王子谷はなかなか技が出ず、少しづつ陣地を譲る場面が増える。そして残り53秒、影浦の仕掛けに嵌って場外に出てしまい、またもや場外の咎で「指導2」失陥。試合全体を決めかねない決定的な事態に王子谷血相を変えて前に出るが、巧者影浦もはや応じず。試合はこのまま影浦の僅差優勢勝ちとなり、日本中央競馬会が値千金の先制点を得る。

大将戦は旭化成・垣田恭兵が左、高木海帆が右組みのケンカ四つ。旭化成は1点ビハインドで迎える最終戦、こういう非常事態に備えて頼りになる曲者・垣田を大将に置いていたわけだが、高木は引き手争いの狭い行動範囲の中に垣田の柔道を押し込めてなかなか展開するきっかけを与えない。59秒両者に片手の「指導」。高木は釣り手の肘を激しく振っての片手内股で攻勢を演出、垣田が背中を抱き、巴投を仕掛けてと繰り出してくる一の矢に過剰反応し過ぎず冷静に対応、展開に曲がり角を作らせない。3分13秒には両手を握り合わせた咎で双方に「指導2」。後のなくなった垣田は直後思い切った左背負投を見せてついに高木を捕まえ始めたかと思われたが、疲労をにじませながらも高木は冷静。垣田の突進をいなし、残り9秒には勇を鼓して右内股。これを垣田がまたいだところでほぼ試合は終了、そのまま「引き分け」が宣せられた。日本中央競馬会が僅差優勢勝ち1つという最少スコアでしぶとくこの大一番に勝利、1-0で決勝進出を決めた。旭化成は連覇ならず。

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小川竜昂が思い切った左大外刈、北野裕一は大外返の形で耐え抜く

パーク24A 1-0 日本製鉄A
(先)北野裕一×引分×小川竜昂
(次)小川雄勢×引分×西山大希
(中)渡辺智斗×引分×田中源大
(副)丸山剛毅×引分×上田轄麻
(大)小原拳哉〇優勢[僅差]△佐藤和哉

第1試合に続いてこれも我慢比べのロースコアゲーム。
先鋒戦は本格派の小川竜昂の攻めを技巧派の北野裕一が凌ぐ展開からスタート。小川の思い切った左大外刈に深く侵入を許しながらも北野がなんとか耐え、小川は得意の横三角で攻めて「待て」。しかしここから北野が手先の組み手争いと足元の蹴り崩しで粘り、意外にも最初の反則は小川へ。1分42秒、「取り組まない」咎による「指導」。奮起した小川左の大外落を見せるが北野は寝勝負に持ち込んで「シバロック」で抑え掛け、続く小川の大外刈から横三角と見せた迫力の攻めも、回されながら高い位置で足を絡んで無力化してしまい「待て」。以後も北野が練れた組み手と機を見ての捨身技で試合を揺さぶったまま4分間が終了。北野が小川の迫力ある攻めをことごとく消し込む形で、この試合は引き分けとなった。

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次鋒戦、西山大希が練れた組み手で小川雄勢を完封

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田中大貴と渡辺智斗による中堅戦

次鋒戦は西山大希が小川雄勢を完封。左相四つの小川の右袖を引き手で握り込むと容易には切らせず、機を見ては奥襟を叩く大胆さも見せて試合を引っ張り続ける。小川中盤に一度先に引き手を得ての突進があったが見せ場はほぼこの一場面に留まり、ほとんどまともに組むことができない。2分25秒双方に消極の「指導」。西山、以後は片襟の大内刈に支釣込足による蹴り崩しで小川の圧を剥がし、あっさり4分間を終える。この試合は西山が巧さを見せつけた形で引き分け。

中堅戦は田中大貴が左、渡辺智斗が右組みのケンカ四つ。引き手争いが続いて56秒双方に片手の「指導」。1分30秒過ぎに田中が左体落から出足払に左内股と繋いだ連続技、2分を越えたところで生まれた渡辺の突進とそれぞれ見せ場はあったが以後試合は再び膠着。2分38秒に再び片手の咎で両者への「指導」が宣せられたのみでこの試合も引き分け。3戦終了して双方に得点は生まれず。

副将戦は左相四つ。日本製鉄の上田轄麻は常の通り体格とパワーすべてを組み手争いに注ぎ込んでくるが、81kg級の丸山剛毅むしろであれば凌ぎやすいとばかりに手先を絡めながら、密着を巧みに避けてテンポ良く試合を進める。1分40秒双方に「指導」。2分過ぎ、丸山手先を絡みつかせながら持ちどころを作り、軸足を大きく回しこんで左内股に飛び込む色気のある攻め。しかし上田は力の圏内に相手の体が入ってくる前に突き飛ばして手堅い防御。以後は上田が支釣込足で蹴り崩し、丸山が展開の減速を受け入れる格好で4分間が終了。この試合も引き分けとなった。

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大将戦、小原拳哉が巴投。先んじて攻めこんで「指導2」をリード。

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終盤、佐藤和哉得意の出足払が閃くが小原が手を着いて逃れ、万事休す。

大将戦は強化選手同士の対決、日本製鉄・佐藤和哉が右、パーク24の小原拳哉が左組みのケンカ四つ。体重120キロの佐藤に81kg級の小原、いかに凌ぎやすいケンカ四つとはいえ小原に勝ち目は薄いかと思われたが、小原は左小外刈に左前隅への浮腰で大きく崩し、さらに出足払に巴投と散発ながら思い切った技を次々繰り出して攻勢。業師佐藤が一発のタイミングを計る間に時間は刻々過ぎ去り、2分7秒には佐藤に「取り組まない」咎による「指導」が宣告される。チャンス来たれり、と小原ギアを上げて組み手のやり取りを最小限に抑えて巴投、さらに右一本背負投と体を捨てての技を放ち続け、これに対応が遅れた佐藤に対し残り26秒ついに「指導2」が宣告されるに至る。緊急事態を悟った佐藤激しく前に出るが、小原間合いを取り、接近を折りませながら十分に持たせず。残り5秒に佐藤が手先を絡ませながら得意の出足払一撃、小原勢いよく浮き上がるが、しかし腹這いに着地して「待て」。佐藤は万事休した。このまま終了ブザーが鳴り、小原は殊勲の僅差優勢勝ち。準決勝第2試合も、僅差優勢勝ち1つという最少スコアでパーク24が勝利を得ることとなった。佐藤は東京選手権と全日本選抜体重別で見せた活躍から意外な失速。全日本選手権で見せた攻めの遅さという課題を今大会も払拭出来なかった。

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2年ぶりの優勝を狙う日本中央競馬会

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パーク24は隙のないメンバーを揃えた

【決勝】

日本中央競馬会 - パーク24A
(先)ベイカー茉秋 - 丸山剛毅
(次)影浦心 - 北野裕一
(中)レイズカヨル - 小原拳哉
(副)高木海帆 - 小川雄勢
(大)一色勇輝 - 渡辺智斗

盤面は意外に複雑。大将戦では相四つの巨漢対決が組まれたが、他ポジションは体格のある相手に過たず巧者がマッチアップするという構図が互いに続き、これという点の取りどころを事前に挙げるのはなかなか難しい。拮抗の盤面である。敢えて言えばこの構図の中から、全日本選手権ベスト4の100kg超級強化選手・影浦心に90kg級の北野裕一が挑む次鋒戦が、もっとも得点の可能性が見える試合ということになる。担ぎ技が得意の影浦はどちらかというと体格が上の選手を嵌めるのが得手であるが、全日本選手権では大会きっての曲者・垣田恭兵を体格差を生かした払巻込で畳に沈めるなど柔道の幅が広がっており、十分に期待が持てる。逆に言えば、日本中央競馬会はここで取れずばどこかで無理をする試合を作らねばならず、パーク24の後衛に後の先の強さを持つ2枚が控えることを考えると一気に勝利へのハードルは上がる。

一方のパーク24も、確実な取りどころを挙げるのは難しい。こちらも敢えて言えば昨年の世界選手権で最重量級の日本代表を務めた小川雄勢が1階級下の高木海帆とマッチアップする副将戦が最大のチャンスだが、高木はオーストラリア代表での五輪出場がほぼ確実であり復活基調、一方の小川は全日本選手権でベスト4入りもその「圧力のみ」の試合姿勢ゆえか、今大会もむしろ他選手に十分やれると自信を持たれてしまっている印象が否めず、どちらかというと今春におけるキャリアの波は緩やかな下がり目。小川が4分間で勝つには圧を掛け切る強引な姿勢とパワーが必要だが、「指導」が遅い今大会の審判傾向の中でこれをやり切れるかどうか。

以上を鑑みて。次鋒戦の見込みをテコに日本中央競馬会やや優位の盤面、ただしパーク24の前線は分厚く、どこで無理をしなければいけないが、逆に言えばどこからでも刃が入る骨太の陣容。と解釈するのが妥当なところだろう。両者ともハイリスク・ハイリターンの香り漂う大将戦にチームの運命を掛けるのは避けたいはずで、ここに至るまでに勝負の目途をつけてしまいたい。パーク24がどこで「無理をして取りに行く」のか、日本中央競馬会がしっかり影浦で得点を挙げられるのか、これが決勝のみどころだ。

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先鋒戦、ベイカー茉秋終盤に立ち直り右小外掛で突進、丸山剛毅が伏せて「待て」

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影浦心が畳を蹴って左背負投

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北野裕一宙を舞うが頭から着地、腹ばいに落ちてノーポイント。

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最終盤、影浦の右背負投がまともに入って「一本」

先鋒戦はベイカー茉秋が右、丸山剛毅が左組みのケンカ四つ。丸山が左袖釣込腰に入り込むがベイカーが右内股に切り返し序盤は拮抗、1分17秒双方に「指導」。丸山の隙のない組み手にベイカーなかなか攻めどころを作れず、2分5秒には丸山の腰を切っての内股フェイントに潰されるなど難しい試合。それでも技1つで局面をひっくり返すのがベイカーの長所であるが、時間が経つにつれむしろベイカーの柔道は窮屈になっていく印象。2分15秒、ベイカーが背の抱き合いに誘うが丸山は片手の内股ですぐさまリセット。丸山2分31秒と3分過ぎには思い切った前進、ベイカー1度目は隅返を狙って大過なしも、2度目の突進に思わず畳を割って3分2秒場外の「指導」を失う。勢いを得た丸山引っ張り出しの左内股を画策するが引き出し切れず自身の軸足が滑る形で潰れて「待て」。残り30秒を過ぎてからベイカー初めてこの試合明らかに組み勝って前技フェイントの右小外掛で突進も、丸山早めの後退で追いきらせぬまま潰れて「待て」。ベイカーはさらに引き手で袖、釣り手で帯を持って迫るが丸山割り切ってきちんと潰れ「待て」。ここで試合は終了となり、先鋒戦は引き分けに終わった。

勝負どころの次鋒戦は影浦心、北野裕一ともに左組みの相四つ。影浦引き手で袖を折り込むなりいきなり畳を蹴って左背負投に飛び込むが、北野釣り手側に体重をずらして前に飛び込み、影浦の右から腹ばいに畳に落ちて「待て」。まともに勝負しては難しいと見た北野は相手の側面から浅く帯を掴んで隅返を狙い、影浦がこれを嫌って組み手をリセットすることが2度。これを受けて1分28秒双方に「取り組まない」咎にとる「指導」が与えられる。影浦はここで加速、組み際の左小内刈に引き手を折り込んでの左大外刈と見せ、これで北野に横を向かせるとまたもや畳を蹴って軸足から回転する左背負投。北野が大きく舞い、しかし頭から畳に着いたのちに縦に回転してその接地は腹這い。ここで主審は北野に消極的との咎で「指導2」を宣告。

影浦は勝利に必要なあと1つの「指導」を求めて前へ。組み勝ち、引き手の袖を腹側に織り込むと北野は3度続けて潰れるが、大会全体の「指導」が遅い傾向に引きずられてか主審に動く気配はなし。残り30秒には、影浦過程を飛ばして体格差を生かした左大外巻込に打って出るが予期した北野素早く力の圏外に抜け出し、影浦粘るもそのまま技が終わって「待て」。

残り時間は僅か、しかし北野の引き分けによるミッション達成間違いなしと思われた残り7秒、影浦が組み際に右背負投。これまで左技を捌き続けた北野は虚を突かれたか影浦の太い胴体をまたぐところまで深く入り込まれてしまい、もはや逃れられず。影浦が膝を伸ばして体を投げ出すと一回転、もろともそのまま転がり抜けて影浦が立つと主審はその背で「技有」を宣告。副審2人がすかさず右手を挙げてこの技は「一本」に訂正され、影浦は見事ミッション達成。貴重な一本勝ちで、日本中央競馬会が1点をリード。

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中盤以降レイズカヨルが攻勢、奥を取られた小原拳哉思わず右一本背負投に反転回避

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最終盤、小原ここまで取り置いた右小内巻込に飛び込むが惜しくも取り切れず

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高木海帆が巧みな釣り手操作で小川雄勢にチャンスを与えず

中堅戦はレイズカヨルと小原拳哉ともに左組みの相四つ。レイズ左小外刈を膝裏に入れて小原にたたらを踏ませるが、以降は小原が右背負投に横変形からの巴投、相手の釣り手を噛み殺しておいての左払巻込と技を積み、1分34秒レイズに消極的との咎で「指導」。

準決勝において貴重な僅差優勢勝ちを果たした小原がこの試合も同じ展開に持ち込んだ格好、小原は浮技で目先を変えつつこの流れを保とうとするが、2分を過ぎるとレイズの地力と体格差が効き始めて様相が変わり始める。レイズ、残り1分には引き手の袖を折り込み、潰れようとした小原を両手で無理やり引き上げて左大外刈。小原があらためて腹這いに潰れなおすと主審はレイズの攻勢を認めて3分5秒小原に「指導」を与える。続いてレイズが袖、奥と得て組み勝つと小原いきなり右一本背負投様に反転して潰れてしまい、一気に試合はわからなくなるが、小原は終盤まで粘り、残り7秒には右小内巻込で一発勝負。取り返しようのない時間まで待って仕掛けた取り味のある技であったが、レイズが転がり伏せてこの技は収束「待て」。ここで終了ブザーとなり、この試合は引き分けとなった。

副将戦は高木海帆が右、小川雄勢が左組みのケンカ四つ。高木強気に背中を叩くと小川が意外なほどあっさり潰れて、15秒「待て」。高木は釣り手の肘を揚げながら引き手争い、一方の小川は奥襟を叩いて高木に内股の掛け潰れを強い、これを待ち構えて隅落でめくる得意のパターンを狙うが心得た高木は伏せるともはや割り切って動かず「待て」。
高木は釣り手を張って時間を使うが、小川が片手ながらも腰を切って前に出るとやや守勢となり、1分55秒には高木に「指導」。小川はこのあと最低1つ、出来得れば2つの「指導」が欲しいところだがここで高木の駆け引きに付き合ってしまい加速し切れず。残り30秒過ぎには高木の右内股を左内股に切り返して大きく浮かすが、この技は相手の釣り手を引き手で抱き込む「ケンカ四つクロス」の技で、印象は稼げるが投げには繋がらない。高木が潰れて「待て」となり、この時点でほぼ試合の行く末は見えた印象。小川が払巻込に潰れたところでタイムアップ、この副将戦も引き分けとなり日本中央競馬会1点リードのまま勝敗の行方は大将戦へと持ち込まれる。

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大将戦、渡辺智斗との息詰まる組み合いから一色勇輝が右大外刈

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一色は中盤以降右小外刈を軸に手堅く試合を構成

大将戦は一色勇輝と渡辺智斗、ともに右組みの巨漢対決。試合が始まるなり奥襟を叩いてがっぷり組み合い、一色は右大外刈、渡辺は「ハンドル投げ」の動きを見せたままあくまで組み合いから降りず。このまま組み続け、最初の「待て」は実に1分28秒経過時点。両者に消極的との咎で「指導」。ともに大兵の攻撃型ゆえ、掛けたら、返されたら、そして少しでも崩れたらそのまま一発で勝負が決する予感濃厚。見た目は静かだが展開はまことに緊迫。以降も組み合いが続く中、リードする側の一色は得意の大外刈に飛び込むリスクを敢えて控えて右小外刈を軸に据えて攻める。小さく当てて、もし相手が崩れれば一気に攻め込もうという態勢だ。一方の渡辺は組み合い自体では優位な局面も時折作るが具体的な技が出ず、このまま試合は終盤まで進む。3分11秒、一色が前に出ると渡辺畳を割ってしまい場外の咎で「指導2」失陥。

こうなれば渡辺は試合を壊しにいくべきだが、姿勢良く構える一色の前に加速のスイッチがどうしても押せない。残り21秒には一色が前に出んとする渡辺の足元を蹴り崩して伏せさせ、大事な時間帯を上手く乗り切る。このままタイムアップ、大将戦も引き分けとなり、スコア1-0で日本中央競馬会が優勝を決めた。

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優勝決定、沸き返る日本中央競馬会ベンチ

日本中央競馬会 1-0 パーク24A
(先)ベイカー茉秋×引分×丸山剛毅
(次)影浦心〇背負投(3:54)△北野裕一
(中)レイズカヨル×引分×小原拳哉
(副)高木海帆×引分×小川雄勢
(大)一色勇輝×引分×渡辺智斗

次鋒戦、あくまで取り切らんと手立てを尽くし、貴重な1点をもぎとった影浦の頑張りが日本中央競馬会の勝利を呼び込んだ。パーク24Aは絶対的なエースの不在ゆえ「ここで取る」と確実に見立てられるポジションがなく、全員が無理のしどころを見つけられないまま5戦を終えてしまったという印象。分厚い戦力ではあったが、リードを背に戦う日本中央競馬会の面々を崩すまでの個々の地力と、どこで誰が試合を壊すべきかという戦略的な共通認識に欠けた。日本中央競馬会は相手の研究を十分に行っている印象で、手堅い戦いが必要とされるこの展開では「相手のやりたいことをさせない」その研究が存分に生きたという印象だった。

文責:古田英毅
撮影:eJudo編集部

※ eJudoメルマガ版6月11日掲載記事より転載・編集しています。

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