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【レポート】平成31年全日本柔道選手権・全試合戦評③三回戦

(2019年6月7日)

※ eJudoメルマガ版6月7日掲載記事より転載・編集しています。
【レポート】平成31年全日本柔道選手権・全試合戦評③三回戦

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日時:2019(平成31)年4月29日
場所:日本武道館
文責:古田英毅
撮影:乾晋也・辺見真也

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原沢久喜が前田宗哉から支釣込足「有効」を先行

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原沢が遠心力を利しての右内股。足先に触れたのみで前田吹っ飛び「一本」。

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原沢久喜○内股(2:39)△前田宗哉
右相四つ。前田失うものはなしとばかりに思い切り釣り手で奥襟を叩き、素晴らしい気迫。一方の原沢はこれを落とし、引き手で腋、釣り手で奥襟を叩くと腹を出して前進。前田再び奥を叩いて組み合いを挑むが、原沢が支釣込足様に回旋を呉れると膝から崩れて「待て」。続く展開、原沢が同じ形から圧を呉れると前田は横変形にずれて耐える。原沢引き手を袖に持ち替えて万全の形を作るなり支釣込足、相手の形の良さゆえ順方向の技に気を張っていた前田ドウと崩れ、原沢すかさず体を合わせて乗り込み1分11秒「有効」。
以後も原沢迫力の前進、前田怖じずに奥襟がっぷりの組み合いから思い切って右大外刈に乗り込むが原沢は大木のように揺るがず、仕掛けた前田の体のほうが浮いてしまう。後の先の襲来を感じた前田戻って自ら釣り手を切るが、原沢そこに右小外刈で突進。突き出された前田が場外まで吹っ飛んで「待て」。
再開直後、またも奥襟の叩き合いに応じた前田が大内刈を放つが空振り、原沢はここぞと右内股に飛びこむ。これは前田が反時計回りに移動しており空振りとなったが、気迫、威力ともに十分。直後、原沢は前田の釣り手を切り離すと、引き手で一方的に袖を折り込む形を作り出す。釣り手は奥襟を得ておりまさに完璧な形。前田左構えで手を突いて耐えるが原沢やや半身に腰を突きだして寄せ、数度牽制を呉れると本命の右内股。先ほどの空振りを踏まえてか今度は飛びこみではなく遠心力を使った一撃、作用足の入りは決して深くないように思われたがその威力に前田まさに吹き飛ぶ。「足先が触れただけで飛んだ」と見えたこの強烈な一撃はもちろん「一本」。原沢強しとあらためて唸らされる一番であった。初出場の前田はここで終戦も、3戦通じて素晴らしい試合内容。投げて勝負を決せんとの気迫に溢れた堂々たる戦いぶりであった。

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飯田健太郎が右一本背負投、太田彪雅すかさず送襟絞を狙う

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太田が左背負投で大きく崩す

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太田の大内返が鮮やかに決まって「一本」

太田彪雅○GS大内返(GS2:31)△飯田健太郎
右相四つ。太田は両襟を高く持ち、飯田は引き手で襟を握ったまま釣り手の持ちどころを探る。太田の警戒厳しいと見るや前襟、横襟と狙いを変えるが戦型なかなか定まらぬ印象。双方大枠悪くないという体で組み合ったままの様子見が続き、1分1秒両者に消極的の咎による「指導」。
これを受けて飯田は引き手で腋を突き、奇襲の右一本背負投。うまく落差がついたが腕が固定し切れずやや空転、太田が外して素早く絞めを狙って「待て」。以後も互いに敢えて試合を加速させ過ぎず、粘り強い陣地争いが続く。2分過ぎ、飯田が引き手で袖を深く、釣り手で奥襟を叩いての蹴り合いを挑むと太田が支釣込足でクルリと位置を入れ変え、崩れて両掌を畳に着けた飯田の背中につく。そのまま襟を高く握った右を効かせて「腰絞め」の形で押し込むと飯田が嫌って転がり、太田は左で背を抱えて抑え込む。これはすぐに飯田が脚を絡み「解けた」となったが、太田は飯田の右腕をアゴ越しに掴んで拘束してしぶとく攻め続ける。数秒この形で膠着、2分25秒「待て」。少々試合が動き始めた印象であったが、しかし飯田が2度続けて絞められたことでやや慎重になったゆえか3分を過ぎると再び組み手による陣地の取り合いにステージが戻り、残り21秒で双方に「指導2」。これを受けて太田が小内刈、払巻込と加速の気配を見せたところで本戦が終了、試合はGS延長戦へ。太田はすぐさま右大内刈、飯田が嫌って引き手を切ると残った釣り手一本で思い切った左一本背負投に飛び込んで会場を沸かす。前にのめった飯田は掌を畳に着いて立ち上がるなりすぐさま右大内刈、流れを渡すまいとするがこの後も先手を取るのは常に太田。56秒には袖釣込腰から大内刈、続いて両襟から肘を振り立てて膝裏を狙っての小外刈、1分49秒には引っ掛けるような右大外刈と思い切った攻めを見せて徐々に攻勢。飯田は1分過ぎの右背負投、2分2秒には右背負投崩れの大外刈と見せるがいずれも後手を踏んでおり、その効は太田の攻めを押しとどめて「指導」失陥を避けるにとどまる印象。飯田、GS2分過ぎからは引き手で袖、釣り手で奥襟とこの試合でもっともよい組み手を十数秒にわたって確保し続けるも代名詞の右内股は出ず、太田が支釣込足でブレイク。飯田が背に抱き着くと払巻込に入り込んで「待て」。
チャンスを逸した飯田、続いての組み際に引き手で襟を得ると一気に加速、釣り手で奥襟を狙いながら右大内刈に打って出る。しかし太田は奥襟襲来の軌道を見切ってその上腕を掴んで防御、そのまま引き落として大内返。手で空を掻いたまま肩を下げられ、片脚となった飯田に逆らう術なし、まさしく「斬り落とした」と評するべき一撃見事に決まって「一本」。太田は試合巧者ぶりを存分に発揮、我慢比べに勝った一番。飯田はこの試合得意の内股を一度も仕掛けておらず、本調子ではないように見受けられた。

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加藤博剛が斉藤立から左小内巻込「有効」

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加藤の腋固に窮した斉藤思わず前転

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加藤待ち構えて後袈裟固に捉える

加藤博剛○後袈裟固(1:50)△斉藤立
左相四つ。斉藤常の通り大きく両手を挙げて試合を開始、前戦で黒岩を固定した両襟ではなく、引き手で袖を深めに、釣り手で奥襟を握るとまず左大外刈を振り上げる。体格に劣る加藤はこれを止めて斉藤の釣り手の袖を両手で絞り落とすと、引き手でこの袖、釣り手で裾を掴んで左背負投。これは潰れて24秒「待て」。続いて斉藤が引き手で再び上腕を掴んで迫ると加藤さきほどとまったく同じに両手でこれを落とし、釣り手で裾付近を握ると今度は背負投フェイントの左小内巻込。釣り手の肘を腰横まで差し入れ、両腕をまとめて力の方向を固定したまま左肩を入れて前転すると、左後隅に全ての力を掛けられた斉藤耐えようなく転がって46秒「有効」。続いての寝技は斉藤が嫌って立ち上がり「待て」。
続く展開も斉藤が引き手で上腕を掴んで前へ。加藤は敢えて持たせたまま低く構え、横変形に立ち位置をずらし、続いて襲う斉藤の釣り手をのらりくらりといなし続ける。やりとり一合、機を見てこれをスルリと潜り抜けると背筋を伸ばしながら釣り手で腋を差して一瞬密着正対。斉藤の頭が下がるとすかさず肩越しクロスに持ち替えて帯を掴み、隅返に打って出る。これは斉藤が前に崩れたのみで投げ切れなかったがそのまま加藤が伏せ、左腋を敢えて空けると背中についた斉藤は吸い込まれるようにここに左手を入れて襟を掴む。しかしこれは加藤の罠、斉藤の手首が入ると脇は閉じられ、加藤は自ら前転すると斉藤を腹ばいにしたままこの腕を極めて腕挫腋固。窮した斉藤は逃れるために前転するがこれぞまさしく術中、加藤は相手の着地を待ち構えて十八番の後袈裟固に抑え込む。斉藤上体を起こして暴れるが加藤は抱え込んだ手首を決して緩めず、巧みに抑え切って1分50秒「一本」。まさにベテランの味、これぞ加藤という会心の一番に場内は大拍手。斉藤はあれほど警戒していた寝技に自ら入り込み、そして二度と立たせてもらえなかった。まさに「からめとられた」という一番であった。

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垣田恭兵が左背負投で攻める

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影浦心の左払巻込決まって「技有」

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影浦の払巻込「技有」(別角度)

影浦心○優勢[技有・払巻込]△垣田恭兵
左相四つ。タイプの違う巧者同士の対戦、これも非常な好カード。体格に勝る影浦が迫り、垣田は引き手で前襟を掴む形をベースに両手を張って対峙。影浦は襟を掴んだ垣田の手が邪魔と見るや、これを掌で内側に送り払う動作で度々切る。垣田これを見て取るとまず両襟で掴み、影浦が釣り手、引き手と順にこの動作で払いのけた瞬間に合わせて身を入れ替えて左から背を抱き、戻りながら左の「小内掛」を見せる。地味ながら非常に色気のある攻防。1分1秒、試合を加速させるべく主審が両者に「指導」。以後もしかし垣田は自分のペースを崩さず、襟を持てば手を張って間合いを作り、影浦が受け入れれば袖に握り替えて今度は密着と巧みな進退。1分25秒には両手で左襟を握っての左背負投で場内を沸かせる。影浦は垣田の練れた組み手に手を焼いてなかなか近づけず。ひとつ掴むとバーターにもう片側は一覧グレードを落とされ、その交換の手順にもどこに罠があるかわからない。かつこの駆け引きの間に前進を刷り込んで来る垣田はまさに曲者。影浦業を煮やしたか1分48秒には過程を飛ばして両手で一気に飛び掛かるが、これも起こりで手先の弾幕に弾かれてしまう。しかし直後、垣田が続く突進を止めんと引き手で袖、釣り手を片襟に置いて手を張ると、影浦はその釣り手の手首付近を抑えながらするりと半身に体をずらして左払巻込。垣田は手を張っていたその分大きく引きずり込まれ、体格差をまともに受けて吹っ飛び「技有」。リードを得た影浦、以後は組み手争いに持ち込んで垣田の攻めにまったく応じず。垣田は前進に次ぐ前進、出足払様の蹴り崩しで2度影浦を畳に這わせて「指導2」まで得るが、この時点で残り時間は僅か2秒。このまま影浦の「技有」優勢による勝利が決まった。
どちらかというと自分よりも小さい選手は苦手にしている印象の影浦であったが、この試合は逆に体格差を生かし、有無を言わさぬ状況と技を繰り出しての勝利。技術の幅を見せた一番であった。

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王子谷剛志は引き手による袖の確保にこだわる

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延長、王子谷の左袖釣込腰が決まって「技有」。

王子谷剛志○優勢[技有・袖釣込腰]△一色勇輝
ともに大型の右組み、大外刈がアイデンティティーという両者による胸躍る対決。一色が引き手で襟を掴んで釣り手で奥襟を狙うが、王子谷はこれをさせず、引き手で袖を握り込む。一色が嫌って手元に戻すとタイミングを合わせて左袖釣込腰を繰り出して潰れ「待て」。以後も一色が引き手で襟を掴んでは奥襟を狙い、王子谷は袖の確保にこだわりつつ一色が良い位置を持つと引き手を襟に替えていったん突き放すという攻防が続く。王子谷が前に出ると場外を背にした一色回り込んで位置を入れ替え、諸手で突くようにして前へ。突かれた王子谷は意外なほどあっさり畳を割るが、主審はこれに対し一色の側に押し出しの「指導」を宣告する。試合時間は1分34秒。この後、前進意図がかちあった前段の攻防から再び組み手の陣地の取り合いにステージが戻り、2分35秒には双方に消極的との判断による「指導」。一色は「指導2」となり形上後がなくなる。直後王子谷引き手と奥襟を得る良い形を作るが、一色が持たせて持つ戦術を選択して両襟で対峙して引かず。間合い近いままの組み合いとなり、どちらが先に攻めるか注目のこの形は一色が大外刈と大内刈の連続技で均衡を破り、王子谷が時計回りに戻し返してブレイク「待て」。先に攻めた一色に流れが渡りかねない状況であったが、直後、組み際に引き手で袖を得た王子谷が左袖釣込腰。「橋本スペシャル」がごとく引き手は袖を外から回して内側を握り込んでおり、一色虚を突かれたか意外なほどするりと一回転。これは「技有」。この時点で残り時間は32秒、王子谷は以後を手堅く戦ってそのまま優勢勝ちを果たした。引き手の袖へのこだわりが、きちんと生きた形の試合であった。

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ウルフアロンは巧者上田轄麻を相手に厳しく組み手を展開

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延長、ウルフの支釣込足が「一本」

ウルフアロン○GS支釣込足(GS1:49)△上田轄麻
ともに左組みの相四つ。ウルフは一方的な組み手を狙って奥襟、引き手で袖、あるいはいったん組ませておいてのゆすり出しと手立てを繰り出しつつ攻めるが、一方の上田も組み手の巧者。こちらも同じく「持たせずに持つ」組み手の完成にこだわり、ゆえに様相は攻撃演出の引き出しが豊富なウルフの側に徐々に傾いていく。ウルフは支釣込足、さらに上田の前進を場外に向けていなしての浮落と技を積み、1分過ぎには煽り出しての支釣込足から上田を伏せさせ、横四方固に抑え込む。これはすぐに上田が腹ばいに逃れたが、以後もウルフは背中を抱くオプションも繰り出してじわじわ攻勢。1分44秒、背中を抱きながら相手の左釣り手をかちあげての左小外刈で大きく崩すと、直後上田に消極的との咎による「指導」。以後も「持たせずに持つ」両者の意図が噛み合い、ゆえに引き出しのあるウルフの側に流れが傾くというここまでの構図が継続。片襟の大内刈に腰を抱いての支釣込足とウルフに技が積み重なる。上田は残り26秒から比較的良い形で持ち合うが、首を抜きながらの払巻込で試合を流してしまいチャンス潰える。ここで試合はGS延長戦へ。延長も厳しい組み手争いの中ややウルフ優勢も57秒両者に「指導」。上田はこれで後がなくなる。延長2分が近づき始めたところで、ウルフが背を抱いたことをきっかけにこの試合ほぼ始めて両者ががっぷり持ち合う絵が出来上がる。ウルフは背中を深く握って前傾、上田は奥襟。間合いは極めて近し。ここで上田がタイミングを計る間にウルフ先んじて思い切った支釣込足。間合いの近さゆえ上田その力をまともに食って一回転「一本」。ウルフ、面倒な上田を「一本」で斬り落としてベスト8入り決定。

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小川雄勢は横にずれて前傾、組み合いは尾原琢仁がやや有利

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延長、小川が払巻込を2度続ける。いずれも掛け潰れたが直後尾原に3つ目の「指導」

小川雄勢○GS反則[指導3](GS1:08)△尾原琢仁
ともに左組みの大型対決。尾原は引き手で腋、釣り手で奥襟を握って前へ。小川はがっぷりの組み合いを嫌って横変形に位置をずらし、前傾して相手の釣り手を噛み殺さんとする。この形をベースに尾原が支釣込足を繰り出し、小川は組み手を切って直しながら前へ出るという構図で試合が進む。1分24秒双方に消極的との咎で「指導」。このあと1分40秒に支釣込足により蹴り崩し合いがあったものの、以後も試合は動かず、尾原が脇と奥襟で悠揚構え、小川が横変形にずれて前傾して凌ぐという構図が続く。尾原が支釣込足を放つと小川が押し返して前に出、ともに場外へ出るという攻防の直後、2分22秒には両者に2つ目の「指導」。これを受けて尾原は前へ、しかし小川は横にずれての前傾を止めずあくまで「負けない」組み手を形作ることにこだわる。小川、残り40秒には引き手で一方的に袖を掴む優位を作り出すが、繰り出した大内刈は前傾姿勢で腰が引けているゆえか射出位置が遠く、その効は相手をいなして外に送り出したのみに留まる。大きく構える尾原、小さく噛み殺す小川という絵が変わらぬまま試合はGS延長戦へ。延長もほぼ変わらぬ形で試合が始まるが、小川は尾原の前襟を握った腕を抱え込む動作を見せ、前技で手数を採らんとする気配。42秒、小川やはり払巻込に打って出るが初動の姿勢が悪くあっさり両手を離して潰れる。続いて尾原が奥襟を叩くとこれを落とし、1分8秒にも両手を離しての払巻込に潰れる。いずれも投げを狙ったものではなく完全な「見せ技」、しかも両手を離しての掛け潰れであったが、この2度の仕掛けに主審が応じて尾原に3つ目の「指導」を宣告。尾原思わず天を仰ぐ。小川は2試合通じてほとんど投技を打たぬまま、ゲームに勝つことにこだわってベスト8入り。尾原は大枠の優位を得ながら攻めこむ勇気が足りず、不完全燃焼のまま畳を去ることとなった。

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熊代佑輔と佐藤和哉の組み手争いが続く

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佐藤が両襟に活路を求めるも技は出ず、試合は動かず

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スコアボードには全日本選手権史上初の「両者反則負け」が刻まれた

佐藤和哉△GS反則[指導3](GS1:43)△熊代佑輔
※両者反則負け
佐藤が右、熊代が左組みのケンカ四つ。佐藤釣り手を下から、手首を立てて横襟を高く握り、熊代が上から応じておいての引き手争いとなる。33秒両者に片手の咎による「指導」。続く展開もほぼ様相変わらず、双方足を止めての引き手争いが続く。佐藤が手先を振り回すように袖を求め、熊代も早い動きで手を動かしてこれに応じて試合は動かず。1分6秒には主審早くも両者に2つ目の「指導」を宣告する。佐藤再び手先を回転させて引き手を求めるが熊代が容易に許さぬと見ると、両襟を持ち、構えを左に替えて対峙。熊代が応じて袖を外側から握って間合いが近い組み合いとなるが、両者この形のままほぼまったく技が出ない。1分近くこの形で組み合い、熊代が切り、佐藤が両襟の矛を収めた時点で残り時間は1分27秒。残り55秒に佐藤が片手の右内股を見せるも、以後はまたもや両者足を止めての引き手争いが続く。佐藤は時折両襟を交えるがこれもあくまで牽制、互いが一方的に引き手で袖を得ることを求め続けて試合はまさに膠着。残り10秒を過ぎ、佐藤が引き手でついに袖を外側から得て右体落、さらに右出足払で熊代を腹ばいに落としてようやく試合に加速の気配。ここで本戦4分が終了し、試合はGS延長戦へ。延長も引き手争いが続き、両者まったく技が出ない。熊代がやや加速して袖を外側から持ち、両襟で応じた佐藤に支釣込足と大内刈を見舞うが、ここから20秒近く両者ほぼまったく立ち位置を変えずに手先で引き手を争う。主審ついに決断、1分43秒に試合を止めて両者に「指導3」の反則負けを宣告。全日本柔道選手権史上初の「両者反則負け」で試合が終わった。主審の「指導2」から「指導3」までの時間の長さや、国際柔道連盟試合審判規定をベースとした変則ルール適用の是非、審判員個々の主観を大きく認めた今大会のルール運用の影響など論ずるべき点は多々あるが、それでも、大きく言って、試合内容に鑑みてこの結末は妥当であった。

※ eJudoメルマガ版6月7日掲載記事より転載・編集しています。

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