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【レポート】平成31年全日本柔道選手権・全試合戦評②二回戦

(2019年5月30日)

※ eJudoメルマガ版5月30日掲載記事より転載・編集しています。
平成31年全日本柔道選手権・全試合戦評②二回戦
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身長で20センチ、体重で40キロの体格差。春山友紀と尾原琢仁の対戦。

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日時:2019(平成31)年4月29日
場所:日本武道館
文責:古田英毅
撮影:乾晋也・辺見真也

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原沢久喜が澤建志郎から内股「一本」

原沢久喜(推薦・百五銀行)○内股(2:58)△澤建志郎(北信越・石川県警察)
両者右組みの相四つ。原沢は引き手で襟、釣り手で奥襟を掴んで前へ。41秒には引っ張り出しながらの右内股で捩じって澤を場外まで歩かせ、直後の41秒澤に消極的との咎で「指導」。以後も原沢同じ形の組み手でじわりと迫るが、澤は原沢が掴む瞬間に足技を入れて対抗。1分19秒にはいったん両襟で突き放し、原沢が掴み直そうとするところに支釣込足を入れて前のめりに崩す健闘。澤は続いて組み際の大内刈も繰り出してやる気十分、1分45秒にも同じ形の支釣込足で原沢にたたらを踏ませる。しかし原沢奥襟を掴むと大外刈、大内刈と技を積み、2分10秒の内股は作用足が空振りも捩じられた澤がそれだけで大きく崩れ力の差はやはり明らか。2分43秒澤に2つ目の「指導」。直後原沢引き手で袖、釣り手で奥襟と完璧な組み手を得ると右内股。それまでと位相が違うスピードと威力、満を持して放たれたこの技に澤投げ込みのように宙を舞い「一本」。原沢の出だしは上々。

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前田宗哉が右小外掛、中村剛教が崩れながらも裏投で応じる

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前田の大外刈が決まって「技有」

前田宗哉(関東・自衛隊体育学校)○GS技有・大外刈(GS1:02)△中村剛教(近畿・大阪府警察)
前田が右、中村が左組みのケンカ四つ。前田は身長190センチの長身、しかし同176センチの中村が体格差に怖じず近い間合いの組み合いに応じたことで試合は激しい投げの打ち合いとなる。中村は引き手で袖、釣り手は下から前襟を掴んで手首を後に返して固定、この形から左体落に肘抜きの左背負投で先制攻撃。前田は両襟、あるいは背中を叩いてこれに対峙して40秒過ぎから逆襲に出る。釣り手を巻き返しての右内股に右小外刈、さらに右大内刈を入れると中村衝撃でガクリと崩れ、1分14秒中村に消極的との判断で「指導」。しかし中村の攻撃姿勢はこの反則以降かえって加速、パンと背中を叩いて前へ出ると左大腰に巴投と大技を打ち込み続ける。2分38秒には左小内刈を派手に透かされたが怖じる気配まったくなし、3分8秒には左内股のフェイントから右小内刈と面白い組み立ても見せる。前田は一貫して組み勝つが中村は意外なほどに冷静、左体落に「韓国背負い」と見せ、本戦4分はあっという間に終了。GS延長戦に入ると前田が勝負に出、右大内刈、右小外刈と決着を狙った大技を立て続けに打ち込む。GS22秒には前田の右小外掛を中村が大きく崩れながらも裏投で切り返すという激しい攻防、場内は大拍手。30秒過ぎからは握った両襟を狭く保って前に出ていよいよ勝負を決せんとの気配。中村はしかし間合いを取るどころか腰を寄せて左内股を見せ、前田が腰を切ろうとするとグイと押しとどめて近間での攻防を止めず。しかし1分2秒、中村が釣り手を背中に持ち替えた瞬間前田が強引に右大外刈。釣り手の防壁を一瞬外した中村この侵入を許し、前田が体を預けるように乗り込んで「技有」。あくまで投げ切った前田、長身選手を相手に敢えて持ちあったまま投げんと勝負を続けた中村ともに見事。みごたえある戦いだった。

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大辻康太が「韓国背負い」で飯田健太郎を攻める

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延長、飯田が大辻の背負投を小外刈で返して「有効」

飯田健太郎(東京・国士舘大3年)○GS有効・小外刈(GS1:37)△大辻康太(近畿・桐蔭横浜大教)
飯田が右、大辻が左組みのケンカ四つ。飯田が両襟で寄せ、大辻が剥がして形を直すことで刃の入れどころを探す展開。52秒に大辻が右へ「韓国背負い」を見せるが飯田動ぜず、淡々寝勝負に持ち込み「国士舘返し」で攻める。飯田の右内股を大辻が思い切った「韓国背負い」に切り返し、続いて飯田が寝勝負を試みた直後の2分19秒飯田に消極的の「指導」。飯田はしかしあくまで冷静、直後背中を深く叩いた際に大辻がすぐさま外して逃れたことを見て取ると、再び両襟を握って手首を立てるという、もっとも固定の効く形で粛々距離を詰め続ける。大辻は左背負投を度々繰り出すがポイントに繋がるようなレベルの一発はなく、飯田が終盤やや加速して膝車に右内股と繰り出すと残り4秒で大辻に「指導」。しかしこれはすぐに取り消され、試合はGS延長戦へ。飯田、延長に入ると両襟を立てたまま作用足の膝を揚げる動作を連発。腰を切り、あるいは浅く内股に入ってと組み勝ったまま牽制を続ける。大辻は頭が下がり、やや手が詰まり始めた印象。飯田が両襟を立てての右大内刈を繰り出した直後のGS1分19秒大辻に「極端な防御姿勢」による「指導」。続く展開、再び両襟で詰めた飯田の圧に耐えかねた格好で大辻が左背負投。しかし飯田狙いすまして加速、左小外刈に捉え返して「有効」。巧者大辻にそもそものきっかけを与えない、飯田の冷静さが印象的な一番であった。

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お互いに相手の組み手を剥がし、試合は我慢比べの様相

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太田彪雅が石内裕貴から移腰「有効」

太田彪雅(東京・東海大4年)○GS有効・移腰(GS0:23)△石内裕貴(九州・旭化成)
右相四つ。ともに攻撃型で柔道が上手い選手同士による好カードであるが、試合は我慢比べの様相。石内圧を掛けて肩越しの組み手を作るもののこの先の展開に危機を感じたか自らいったん引き、太田が袖と奥襟を得ると間を置かずに支釣込足で剥がす。続いて太田が引き手で襟をしっかり掴むと石内はいったん横変形に立ち位置をずらし、釣り手を伸ばして奥襟を狙う。太田首をずらして距離を作ってこれに片襟を強い、組ませず。両者秘術を尽くしての攻防であるが見た目の展開は静か、しかし2分8秒石内にのみ消極的の「指導」。互いに手順に隙を見せれば立ちどころに拮抗崩れると踏んでか、以後も組み手のずらしあいによる我慢比べが続く。残り9秒で双方に「指導」、以後は両者手先を交互に繰り出して明らかにタイムアップを受け入れ、試合はGS延長戦へ。延長開始早々、太田が釣り手で前襟を掴んで横変形で組み合うと、応じた石内は釣り手を肩越しのクロスに入れる。瞬間太田加速、腹を突き出して抱き上げ、腰を切りながら乗り込み投げて「有効」。極めて静かな展開に、一瞬の派手な投げ。太田は我慢比べに勝った形で三回戦進出決定。

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加藤博剛が練れた組み手で上林山裕馬に対峙

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延長、加藤の小外掛が決まって「一本」

加藤博剛(関東・千葉県警察)○GS小外掛(GS2:29)△上林山裕馬(九州・福岡県警察)
加藤が左、上林山右組みのケンカ四つ。加藤が下から、上林山が上から釣り手を持っての引き手争いが続く。加藤が「横巴」から繋いで横三角を狙うが上林山の巨体まったく動かず「待て」。以降も引き手争いを縫って加藤は巴投、上林山は体落をベースに良く攻め合うが1分18秒技出しで後手を踏んだ上林山に「指導」。試合時間2分が迫るところで上林山が大外刈を2連発、次いで右小外掛を放つが加藤かわしてスピード豊かな巴投。上林山の巨体が転がってあわやと思われたがこれはノーポイント。加藤は続く展開の2分20秒にも巴投で膝を着かせ、3分14秒にも小内刈からの巴投で横腹から上林山を落とすがいずれも取り切れず。終盤、上林山が釣り手の掌で首裏を叩いて迫り、背中に握り替えての隅返。加藤が捌くと座り込んだまま大きな体を軸に相手を振り回し、加藤は思わず崩れて膝を着く。直後「待て」がかかると加藤しばし息を整え、かなりの消耗が見て取れる。以降は引き手争いのまま本戦4分が終了、試合はGS延長戦へ。延長、腰を2度切って前技に入った上林山が前に潰れて23秒偽装攻撃の「指導2」。続いて腰の切り合いから加藤が小外掛と左背負投の連続技、後のなくなった上林山が後帯を掴んで迫れば加藤送足払で迎え撃って「横巴」、これを今度は上林山が捩じり返して叩き落とし、いつ試合が終わってもおかしくない緊迫の攻防が続く。1分45秒、上林山がフェイントの右小外刈から右大内刈に繋いで思い切り体を開いて決めに掛かるが、加藤下がりながら逃れてノーポイント。
そして延長2分29秒、上林山は加藤の釣り手を掴んで外すと、背中を叩きながら前技フェイントの右小外刈。しかし加藤これを透かすなり背中を抱いて右小外掛に飛び込み、崩れるとみるや抱えたまま自ら前に飛んでコントロール。後方に体を伸ばされた上林山たまらず背中から落ちて「一本」。加藤の勝負強さ際立つ一番だった。

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斉藤立は両襟の組み手で黒岩貴信の左右を封殺

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斉藤の大内刈決まって「技有」

斉藤立(東京・国士舘高3年)○合技[大内刈・崩袈裟固](4:01)△黒岩貴信(近畿・日本製鉄)
斉藤が左、黒岩は右組みベースの両組み。斉藤は左右の利く相手に対して両襟の組み手を選択、黒岩が両襟で応じると前に出、思い切った左体落を放つ。この技でそのまま畳の外に追われた黒岩に対し、1分15秒場外の「指導」。以後も斉藤は両襟を高く持つことで黒岩の左右を封殺、黒岩2分16秒に右払巻込で斉藤を崩すが効いた技はほぼこれのみ。撒き餌の右払巻込、本命の左払巻込ともに斉藤に弾かれて深く入ることができない。2分34秒に右組みから放った左払巻込も斉藤が立ったまま弾き飛ばして「待て」。斉藤はケンケンの左大内刈に左払腰と良く攻め、度々黒岩を場外に追いやって攻勢。残り40秒を過ぎると両襟から左内股、左大外刈と連発し、3分28秒には両襟の大内刈。バランス良くケンケンで追い、浮いた黒岩が伏せようと中空で身を切ると両手でグイと制して乗り込み「技有」。投げたまま一瞬主審を見やった斉藤、試合継続を確認すると慌てて崩袈裟固に抑え込んで合技「一本」。攻守ともほぼ完璧な試合運び、最年少出場の斉藤みごとベスト16入り決定。

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影浦心が影野裕和の内股を待ち構えて隅落、手首を引っ張ったまま飛び込んで回し「技有」

影浦心(推薦・日本中央競馬会)○優勢[技有・隅落]△影野裕和(四国・愛媛県警察)
影浦が左、影野が右組みのケンカ四つ。影浦が上から、影野が下から釣り手で襟を握っての引き手争い。影野引き手で一方的に袖を掴むと、あまりの形の良さゆえか躊躇なく踏み込んで右内股。しかしこれは既に影浦の術中、瞬間背を抱いて振り戻すと、たたらを踏んで崩れた相手の体を乗り越えて思い切り畳に飛び込む。手首を掴んだ引き手の牽引が良く効き、腹に押し付けられた左腕を引っ張られた影野は逆らえず驚くほどの勢いでクルリと一回転、隅落「技有」。試合時間はここまで僅か12秒。
以後、影浦は釣り手を上から持てば肘を入れて押さえ、下から入れれば「閂」に抱き込んでと影野に技を仕掛け得る形をほとんどまったく与えない。影野は組み際の技に活路を求めて1分10秒には良いタイミングの右小外掛を放つが、影浦は続く展開で右襟を握っての左背負投を打ち込んで傾きかけた流れをすぐさまリセット。影野、残り1分の組み際には奥襟を叩きながら内股を放つが影浦はすぐに潰して横三角で取りに掛かる。この際影野は影浦に腕を括らせたまま裏固の形を作り掛けて場内を沸かすが、影浦の足が顔に掛かって不十分な体勢のまま動きが止まり「待て」。影野最大のチャンスはあっさり潰え、このままタイムアップ。影浦が「技有」優勢で勝利を得た。影浦は動き良し、32歳の影野を前に自らが年上のような巧い試合ぶりであった。

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垣田恭兵が両手で左袖を掴んでの左背負投

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下和田翔平は相手に背を抱かせておいての右内股を繰り出す

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延長、垣田の小外掛が「一本」

垣田恭兵(九州・旭化成)○GS小外掛(GS1:16)△下和田翔平(関東・京葉ガス)
垣田が左、下和田が右組みのケンカ四つ。身長で16センチ劣る垣田だが、釣り手で相手に状況を作らせず、引き手はしぶとく袖を握り込んで組み手争いを支配。38秒にはもろとも転がる巴投で膝を着かせ、奮起した下和田が釣り手の掌を首裏に入れるとすかさずずらし、右引き手でこの右袖を握り込む変則の左背負投に入り込んで展開をリセット。直後の1分0秒下和田に消極的との咎で「指導」。下和田は組み手の完成を待っては乗り遅れるとみて相手に引き手の袖を与えたまま右大外刈で攻めるが効かず、一方の垣田はゆらめくように釣り手と引き手それぞれに良い状況を交互に作っては左背負投を入れ続ける。下和田相手に抱かせておいての右内股のチャンスを得るが投げ切れず、2分41秒には双方が手を握り合わせたとして「指導」。下和田は「指導2」となり形上早くも後がなくなる。終盤、下和田は背を抱いて引き手で畳を突きながら作用足を高く揚げる右内股、これを受けた垣田が両足で粘り強く蹴り上げる巴投と互いに見せ場を作り、試合はここでGS延長戦へ。延長33秒、垣田が背を抱いての小外掛。下和田踏みとどまったが垣田これに手ごたえを得て直後の展開でも間を詰めにかかる。下和田が待ち構えて支釣込足を合わせ、垣田は密着して押し返すもこの際太腿を掬ってしまい、足取りの咎で「指導2」。しかし垣田はこの時間帯の攻防で得た密着攻撃の感触を手放さず、GS1分10秒過ぎに再び抱きつきの左小外掛。予期した下和田右内股で捩じり返すが、垣田先んじて反時計回りに移動、下和田が力を籠めるたびにその先に外脚を着いて踏ん張り、動きの収束に合わせて膝裏にインパクトを呉れる。ガクリと下和田の膝が折れ、垣田背を抱いて仰け反りをフォロー、畳に押し付けて「一本」。

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王子谷剛志は両襟を掴んで圧力、中野寛太は前進することで状況の打開を図る

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王子谷が中野の動きの出端を捉え、小内刈「一本」

王子谷剛志(推薦・旭化成)○GS小内刈(GS0:23)△中野寛太(近畿・天理大1年)
王子谷が右、中野が左組みのケンカ四つ。王子谷が上から両襟を掴んでグイと圧力。下から持たされた中野は頭を下げたままその圧を耐える。中野体をゆすって間合いを取ろうとするが王子谷の掌は切れず、ならばと頭を下げられたままひたすら前進。王子谷が外へ出て「待て」。まともに組んでは不利と見た中野片手内股をきっかけに上から釣り手を持つが王子谷あっさり切ってリセット、中野続いて右の「小内払い」を混ぜ込んで組むがこれも効かず、結局は王子谷が上からガッチリ両襟で圧を掛けることとなる。中野それではこれしかないとばかりに頭を下げられたまま再びの突進、王子谷が畳を割って1分33秒場外の「指導」。以後も王子谷が両襟で圧を掛け、中野が頭を下げられたまま前進して事態の打開を図るという構図が継続。3分10秒、王子谷ここから得意の支釣込足を放つが中野心得てこれも前進することで受け止め、場外へと相手を運んで「待て」。3分31秒、王子谷は中野の前進を回り込んで捌いて背中を叩き、組みつぶす。直後中野に「極端な防御姿勢」の「指導」。以降も大枠の構図変わらず、タイスコアのまま試合はGS延長戦へ。延長が始まるなり王子谷再び上から釣り手を入れてグイと圧力。頭を下げられた中野がまたも前に一歩踏み出すとこれを狙って引き出しの右小内刈一閃。あるいは得意の出足払を狙っての踏み込みであったか、動き端を捉えられた中野は一瞬で崩落。圧の掛かった上体の制動良く効き完璧「一本」。王子谷快勝で三回戦進出決定。

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一色勇輝が大外刈を連発も、佐藤正大いずれも裏に抜け出て耐える

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佐藤が右大外落で対抗

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延長、一色が片襟を差しての大外刈で捕まえ「一本」

一色勇輝(東京・日本中央競馬会)○GS大外刈(GS1:04)△佐藤正大(関東・自衛隊体育学校)
一色、佐藤ともに右組みの相四つ。一色は身長186センチ体重125キロで大外刈を軸とする本格派、一方の佐藤は180センチ81キロで担ぎ技主体の粘戦ファイターという非情に色気のある顔合わせ。一色両襟を深く持って前へ、佐藤は支釣込足で蹴りながら横にずれて対峙。30秒過ぎから一色が一方的に引き手で袖を得、これをあくまで離さぬまま2度、3度と大外刈の牽制を見せる。続いて1分32秒には引き手で腋を掴んで強引に大外刈に乗り込む思い切った攻め、これは釣り手の拘束が剥がれて体が相手の後に抜け、攻防収束。一色優位の展開だが、その後佐藤が体を開く動作を巧く使って粘り、2分7秒双方に消極的との咎で「指導」。佐藤ここから組み手を一層厳しく、片手交換で動きを作ると2分36秒には下がりながらの右一本背負投一撃。これで大きく一色を浮かせて反攻の狼煙をあげる。しかし一色はすかさず袖と奥襟を得て右大外刈、これも体が抜けてしまったが以後もこの技を連発して展開を掴みなおす。3分33秒にはひときわ思い切った大外刈、前に伏せた佐藤は一瞬腹這いの体勢のまま宙づり。直後佐藤に2つ目の「指導」が追加され、試合はGS延長戦へ。
佐藤は延長戦を待っていたのかのようにここから加速。まず片襟の右背負投、続いて24秒には思い切った片襟の右大外落に飛び込んで、一色はガクリと膝を着く。ここで一色にも2つ目の「指導」。以後は一色が両襟の右小外刈、佐藤は巴投で攻め合うが、1分4秒、これまで必ず引き手から持ち、釣り手で奥襟を叩いていた一色がやり口を変え、引き手を手先で争いながら釣り手を片襟に差す。佐藤戸惑ったかここで痛恨の右移動、一色は引き手で襟を握ると両手を纏めるようにして右大外刈。重心を移した方向を、それも体幹に近い高い位置で上体を掴まれたまま狙われた佐藤は抗する術なし。ついに固定され、まともにその力と体重を食ってひっくり返り「一本」。

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ウルフアロンの内股「一本」

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ウルフの内股「一本」(別角度から)

ウルフアロン(関東・了徳寺学園職)○内股(1:18)△新添悠司(近畿・大阪府警察)
ウルフが左、身長191センチの新添が右組みのケンカ四つ。新添両襟から長い足を突っ込んで右内股もウルフは揺るがず、引き手でグイと袖を掴む。新添がこれを嫌って切り、片手の右内股を空振りして「待て」。以後も組み手の形を変えながら双方が内股を狙い合う。1分過ぎから新添がまたも両襟、一方のウルフは引き手で袖を掴み、釣り手で下から横襟を掴む万全の形を作り出す。新添がまたもや作用足を突っ込まんとやや前傾の気配、しかしウルフはこの機を逃さず先んじて左内股。小外刈のフェイントから作用足をまず股中に着き、続いて軸足で追いかけるその動き極めて速し。飛び込んだ、との表現がぴったりのバネの利いた一撃見事に決まって鮮やか「一本」。ウルフは素晴らしい出だしで初戦を突破。

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上田がしぶとい組み手を展開、写真は一瞬相手の指を握っての「ケンカ四つクロス」左内股

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上田が郡司の負傷を見逃さず隅落「一本」

上田轄麻(東京・日本製鉄)○GS隅落(GS0:27)△郡司拳佑(九州・旭化成)
上田が左、郡司が右組みのケンカ四つ。上田釣り手の肘を畳んで体を押し付け、圧力を掛けながら引き手争い。29秒には「ケンカ四つクロス」の左内股で郡司を浮かせ、1分4秒には引き手を畳に着いての片手内股で再び大きく崩す。直後郡司に片手の咎による「指導」。上田は以降も釣り手の肘をねじ込んで圧を掛けながら片手内股で状況を積む。郡司組み手の駆け引きは不利と見て1分37秒には引き手で袖を持つなり右内股に身を翻すが、弾き返されて前に潰れてしまい「待て」。上田は引き手で袖を掴むとこれを胴に引き付け、腹を出す形で寄せてひたすら優位を演出。1分50秒過ぎにはいったん両ひじを上げて相手の体を連結すると、反時計回りの回転を強いておいての左払腰。技自体は少々雑であったが作りの良さもあって郡司は潰れ、主審は消極的との判断で郡司に「指導2」を宣告。あと1つの「指導」で勝利となる上田は背中を叩いての浮技、浅い大内刈と腹を出しての前進とひたすら状況を積む。体の力は抜群、常に質量を掛けながら組み手の相対的優位を作り続け、一発返そうにも決してそこまで深くは入ってこない。郡司としては打つ手なし。3分過ぎから思い切って両襟を掴む場面が増えるが状況は覆せず、試合はGS延長戦へ。
延長27秒、上田が引き手で袖、釣り手で奥襟を掴んで寄せると窮した郡司は股中に右体落を落とす動作。しかし故障している右膝が内側に入ってしまい負傷、思わず右手を離して膝を庇う。上田見逃さず隅落で捩じり落とし「一本」。郡司は立てず、試合後担架で搬出された。つかみどころないまま優位を作り続ける試合内容、相手が無力になった隙を見逃さず、具体的に投げたフィニッシュ。まことに上田らしい一番だった。

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古居頌悟は両手を張り、相四つ横変形の形をベースに小川雄勢に対抗

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小川が丁寧な組み手と前進圧力で優位を確保

小川雄勢(東京・パーク24)○GS反則[指導3](GS0:23)△古居頌悟(東海・愛知県警察)
左相四つ。体格に大きく勝る小川は引き手で襟を掴んで前進。一方の古居は両手を出してこちらも引き手で襟を狙い、先に引き手を掴めば突き放して横変形にずれ、顔を右に向けてアゴで小川の釣り手を噛み殺し、釣り手を得れば左右の足技を混ぜ込みながら再び引き手で襟を得るところまで辿り着いてと、巧みな進退。小川がやり直そうと釣り手を戻すとすかさずその上がった袖を抑えて押し込み、なかなか二本を与えない。このやりとりの間に膝裏への小外刈、相手が掴んで来る瞬間の右一本背負投と仕掛けて士気高し。しかし小川は表情を変えず粘り強く前に出て組み手を展開、じわじわこの前進が効き始めて2分34秒には古居に「取り組まない」咎による「指導」。さらに小川が奥襟を叩きながら支釣込足で蹴り崩すと、直後の3分14秒には古居に首抜きの咎による「指導2」が宣告される。小川はここで加速、最終盤には引き手で袖、釣り手で奥を得る完璧な組み手を作るが、仕掛けた大内刈は中途半端。足を浅く入れたまま自分の体のみが前にのめって潰れてしまい、ここで本戦4分が終了。試合はGS延長戦へ。
延長戦、小川がズイと前に出、引き手で襟を掴んで「手合わせ」を強いると古居下がりながらの組み手となり手先で防御する形となる。引き手で袖を得た小川が釣り手を肩越しに入れたところで主審試合を止め、古居に「取り組まない」咎で3つ目の「指導」を与える。いずれもテクニカルファウルによる反則3つ、小川が非常にらしい試合ぶりで初戦を突破した。

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春山友紀が袖先を両手で掴んでの左背負投

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GS延長5分半を超え、尾原琢仁が左払腰。直後春山に3つ目の「指導」

尾原琢仁(九州・旭化成)○GS反則[指導3](GS6:11)△春山友紀(関東・自衛隊体育学校)
九州王者の尾原が左、春山が右組みのケンカ四つ。試合のベースは引き手争い。尾原が釣り手の肘を上げて前へ出、支釣込足で蹴って引き手を求める。主導権は体格に大きく勝る尾原だが、春山は袖先を両手で抱えての左背負投で尾原をつんのめらせ、爪先を差し入れての巴投も繰り出して対抗。1分57秒には両者に消極的の咎で「指導」。直後尾原片手で振り回して春山を転がし、さらにあおり出しての小内刈で膝を着かせる。以後も両襟の払腰に支釣込足と攻めるが巧者春山の後の先を警戒するゆえかなかなか深い一撃を繰り出せない。試合は尾原やや優位のままで拮抗、決定打ないままGS延長戦へ。尾原両襟から腰の切り合いで優位を取りに掛かるが、春山も膝をついての右大内刈としぶとい組み手で粘りGS41秒には双方に「指導2」。尾原はやはり慎重、GS3分過ぎには支釣込足、さらに左大腰で春山に膝を着かせてと大技を纏めるが、春山すかさず相手の前進を右内巻込に深く捉えて展開をリセット。熱戦に観客席から拍手が沸きおこる。疲労困憊の尾原、GS5分30秒過ぎにひときわ深く左払腰。春山小外刈で抗して得意の三角で時間を使うが、続く展開で尾原は送足払に左小外刈、左払腰と猛攻、ここでついに主審が動く。GS6分11秒、春山に3つ目の「指導」。総試合時間10分11秒の熱戦ここに決着した。

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七戸龍が佐藤和哉に腕挫十字固、しかし佐藤はここから頭を上げて逃れる

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佐藤が出足払で七戸を腹ばいに崩す。直後七戸に「指導3」

佐藤和哉(東京・日本製鉄)○GS反則[指導3](GS1:47)△七戸龍(九州・九州電力)
右相四つ。七戸が引き手からの組み手確保にこだわり、序盤はやや優位。引き手で襟を握っての右大外刈に、袖を握ってタイミングを合わせての右背負投と技を積む。しかし佐藤も粘り強く前に出て陣地を取り返し、1分5秒双方に「取り組まない」咎による「指導」。以後も双方が引き手を先に得んとして組み手のやり直しが続き、中途で七戸が良い形を作るも技のないまま佐藤がリセット。2分27秒には双方に消極的との咎で「指導2」が与えられる。続く展開、佐藤が袖と襟の二本を持つが、七戸は釣り手の肘を相手の右肩に当てて防ぎ、続いて右大内刈。足元を蹴られた佐藤が前のめりに崩れるとその腕をまたいで腕挫十字固に入り込む。佐藤に前転を強いて組み敷くとその腕を伸ばし、形は完璧。あとは佐藤の「参った」を待つのみと思われたが、佐藤20秒あまりの攻防の末に頭を外して「待て」。場内は大歓声。
試合はそのままGS延長戦へ。一度は死んだ形の佐藤が肚を決めたか前に出て距離を詰め始め、一方の七戸は疲労ゆえかチャンスを逃した精神的ダメージゆえかやや組み手が雑になり、この接近を許してしまう。GS1分20秒過ぎから佐藤が奥襟を叩いて七戸の頭を下げさせ、蹴り崩し、体落からの巻き込みと技数も積む。続いてこれで決める、とばかりに膝を揚げておいての右出足払で七戸を腹ばいに崩すと、主審試合を止めて七戸に消極的の判断による「指導3」を宣告。腕挫十字固を巡る攻防が勝敗の分水嶺であった。

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序盤は辻本拓記が担ぎ技を連発、展開を掴み掛ける

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延長、熊代佑輔の「一本大外」が決まって「技有」

熊代佑輔(東京・ALSOK)○GS技有・大外刈(GS4:47)△辻本拓記(近畿・兵庫県警察)
熊代が左、辻本が右組みのケンカ四つ。熊代が上から、辻本が下から釣り手を持っての引き手争いが続き、これを縫って辻本が17秒にまず左一本背負投、50秒には右背負投、さらに1分14秒には再びの右背負投で深く熊代の懐に潜り込む。熊代外回りに回避するが、直後の1分16秒熊代に消極的の咎による「指導」。辻本、優勢。しかし2分13秒に熊代が右の「一本大外」に深く入り込んだあたりから様相が変わり始め、直後辻本が座り込みの右背負投で熊代に右膝を着かせるも、徐々に主導権は熊代へ。熊代の前進に下がりながらの組み手となった辻本に、3分4秒片手の咎による「指導」。
熊代大きく前に煽り出す作りから威力ある右内股、一方の辻本の担ぎ技は威力は見て取れるものの単発でなかなか相手を崩せない。試合はそのままGS延長戦へ。
辻本引き手争いを縫って21秒右背負投に飛び込むが熊代は余裕を持って回り込む。辻本の技に慣れて対応が練れて来た印象。熊代は左足を大きく伸ばして相手の右腋下に首を突っ込む谷落、さらに片襟の右大外落と面白い技を出し始めて本領発揮の気配。辻本1分57秒に右背負投を2連発するが、もはや相手の良く見えている熊代はあっさり捌き、敢えて返すリスクを取らずに流す。GS2分、熊代が放った脚を大きく開いての左大外刈を、辻本が隅落で回し返す場面が訪れるが熊代めくられながら相手の体の上に乗ってスルー。GS3分5秒、熊代の両袖を握った左袖釣込腰に焦った辻本は右一本背負投に掛け潰れ、偽装攻撃で2つ目の「指導」を失う。
あと1つの「指導」で勝利となる熊代はここから加速。左右の担ぎ技で追い詰め、GS4分47秒の組み際に右の「一本大外」。これで叩き落としてついに「技有」獲得。熊代がベスト16への勝ち上がりを決めた。

※ eJudoメルマガ版5月30日掲載記事より転載・編集しています。

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