PAGE TOP ↑
eJudo

【レポート】平成31年全日本柔道選手権・全試合戦評①一回戦

(2019年5月19日)

※ eJudoメルマガ版5月19日掲載記事より転載・編集しています。
平成31年全日本柔道選手権・全試合戦評①一回戦
→【レポート】全試合戦評②二回戦
→【レポート】全試合戦評③三回戦
→【レポート】全試合戦評④四回戦(準々決勝)
→【戦評・座談会】平成31年全日本柔道選手権感想戦・「平成最後の『全日本』を振り返る」(

→当日速報ニュース
→全日本選手権予想座談会(eJudoLITE)
→全試合結果(eJudoLITE)
→一回戦リアルタイム速報戦評(eJudoLITE) →二回戦リアルタイム速報戦評(eJudoLITE)
→三回戦リアルタイム速報戦評(eJudoLITE) →準々決勝~決勝リアルタイム速報戦評(eJudoLITE)

日時:2019(平成31)年4月29日
場所:日本武道館
文責:古田英毅
撮影:乾晋也・辺見真也

■ 一回戦
eJudo Photo
前田宗哉が右大外刈、村上拓が抱き止めて裏投を狙う

eJudo Photo
村上が裏投、前田体捌き良くかわして横四方固に繋ぐ

前田宗哉(関東・自衛隊体育学校)○GS横四方固(GS1:19)△村上拓(東海・愛知県警察)

身長190センチ体重90キロの前田、182センチ125キロの村上ともに右組みの相四つ。村上は左構えから引き手で腋、次いで背中と深く持って寄せサイズを生かさんとするが、前田は奥襟を掴むと思い切った右内股で先制攻撃。以降は前田が釣り手を大きく挙げての右大外刈、村上は大内刈からの右内股と大技を繰り出し、激しい打ち合いとなる。1分54秒村上が後帯を掴んで前田を体ごと持ち上げるが「待て」。2分41秒には前田が奥襟を掴むと釣り手の肘をこじあげて右大外刈、ついで大外巻込に繋ぎ、直後村上に「指導」。以後も前田が内股フェイントの大外刈、抗した村上が右大内刈を放てば前田が大内返に切り返してと両者一歩も譲らぬ攻め合い。終盤、引き手で内中袖を掴んだ前田が右小内巻込に飛び込み、村上がこれを抱いて左浮腰で返すという見せ場があり、そのまま4分間が終了。試合はGS延長戦へ。延長も前田の大外刈に村上が思い切り裏投を合わせ、あくまで退かぬ前田が刈り込んだままその上に乗り込んでノーポイントという激しい攻防が見られる。直後のGS52秒には村上に「指導2」。これを受けた村上がイチかバチかの裏投に打って出ると前田体捌きよく外し、そのまま被って横四方固。村上動けず「一本」、開幕戦にふさわしい好試合であった。

eJudo Photo
石内裕貴が右小内刈、上川大樹思わずたたらを踏んで下がる

石内裕貴(九州・旭化成)○GS反則[指導3](GS0:51)△上川大樹(中国・広島刑務所)

ともに右組みの相四つ。石内引き手で襟を掴んで前に出ると上川畳を割って「待て」。1分過ぎ、奥襟を掴んだ石内が引き出しながらの右小内刈を閃かせると顎を突かれた上川はたたらを踏んで場外へ。直後の1分39秒上川に場外の「指導」。石内以後も引き手で襟を持ち、釣り手の肘を振り立てながら意欲的な進退、一方の上川はなかなか釣り手を高い位置で持てずに苦慮。2分48秒、上川得意の組み付きながらの出足払をぶつけるが、石内の体に弾かれて自分の方がバランスを崩してよろけてしまう。2分55秒、双方に「取り組まない」咎による「指導」。直後上川良い位置で両襟を掴むが、石内すかさず鋭い右小内刈で上川を歩かせ、その間に釣り手を巧みにずらしてしまう。石内が片襟の右小内刈を叩き入れたところで本戦終了、試合はGS延長戦へ。石内いったん引き手で突いて間合いを整えると、引き出しながらの足技を連発。右小内刈、右出足払と繋いで動かし続け、スタミナの切れた上川に反撃の糸口を与えない。GS51秒、「指導3」が宣告されて終戦。石内は素晴らしい内容。上川はサイズが大きくなったことが力に反映されず、頼みとする重量を効かせた出足払が弾き返された時点で勝負見えた感があった。

eJudo Photo
徐々に落ち着きを取り戻した斉藤立が加藤大志を体落で攻める

eJudo Photo
斉藤が左大内刈を押し込み、「一本」

斉藤立(東京・国士舘高3年)○大内刈(2:39)△加藤大志(北海道・北海道警察)

身長180センチ108キロの加藤が右、190センチ155キロの斉藤が左組みのケンカ四つ。加藤すぐさま釣り手で奥襟を叩いて斉藤の頭を下げさせる意欲的な出だし。続いて体をゆすって煽り出すと右小内刈に右大内刈と足を繋ぎ、斉藤がいったん引き手を切って寄せると今度は右出足払で剥がし、引き手争いを縫っての右大外刈も見せるなど動き良し。一方の斉藤は緊張ゆえか少々足元が定まらない印象。加藤は引き手を争いながら左右にステップを切って力を散らし、巧みな進退。しかし斉藤が釣り手を畳んでグイと体を寄せ、引き手で中袖を握っての左大外刈を見せると直後の1分39秒加藤に片手の咎で「指導」。以降も加藤が両襟、袖、片手と引き手を争いながら展開を散らすが斉藤徐々に距離を詰め始め、2分30秒からの時間帯では初めて引き手で袖、釣り手で襟を良い形に持ち、まずは左体落、さらに相手の横移動に合わせた作用脚を振り上げての左内股とこれぞという大技を見せはじめる。加藤両襟の右払腰に送足払と見せて強気を崩さぬが斉藤の鉈を奮うような大技に手が詰まり始め、斉藤が左大外刈からいったん作用足を落として左大内刈に繋ぐともはや逃れられず。ケンケンで追った斉藤が距離を詰めたまま前に飛び込んで「一本」。緊張しながらも技で押し切った斉藤の地力の高さが良く見えた一番。そして加藤は健闘。強気を崩さず正々堂々の柔道、若きスターを相手に「やってやる」との気概に溢れていた。

eJudo Photo
影野裕和が本間稔永から肩車「有効」

影野裕和(四国・愛媛県警察)○優勢[有効・肩車]△本間稔永(東北・山形県警察)

右相四つ。影野が引き手で襟を掴む一手目を一貫して続け、これを起点としての組み手争いが続く。59秒に本間が左一本背負投、影野これはしっかり押さえたが、続いて本間が組み手を争うと見せながら低い左背負投に飛び込むとつんおめって大きく浮き、手を着いてなんとか腹ばいに逃れる。直後の1分18秒影野に「指導」。これで影野は一段柔道の厳しさを挙げた印象。まず奥襟を握っての右内股、これを本間に抜いて逃れられるとすかさず右背負投に座り込む連続攻撃で流れを押し戻し、以降は本間に左背負投のチャンスを与えず手堅い進退。2分8秒にはフェイントから肩車に飛び込んで左後隅に転がし「有効」を得る。ビハインドの本間片手の左背負投に左一本背負投、右小内刈と放って追いかけるが影野もはや危険な間合いで戦う様子を見せず。担ぎ技が軸の本間の柔道は追いかける展開では苦しく、そのままタイムアップとなる。出場5回目の影野が経験値の差を見せつけた試合、初出場の本間は一歩及ばず。

eJudo Photo
北野裕一が隅返、下和田翔平は辛くもかわして膝から着地。

eJudo Photo
下和田の足車が決まって「一本」

下和田翔平(関東・京葉ガス)○GS足車(GS4:36)△北野裕一(東京・パーク24)

タイプのまったく違う曲者対決。下和田は身長191センチ体重100キロの右組み本格派、北野は177センチ90キロで引込返と隅返が得意な左組みの業師である。下和田が両襟を高く持って右大外刈に右内股、フェイントの右小外刈と繰り出せば、北野は背中を低く抱えた体勢をベースに内股ステップから爪先を差し入れての巴投、後帯を握っての「出し投げ崩し」、さらに片襟の右背負投と互いに持ち味を発揮して攻め合う。北野残り43秒には素晴らしいタイミングの隅返に飛び込んで会場を沸かすが下和田懐の深さを生かしてまず頭で、次いで体を大きく振って膝から着地して動ぜず。緊迫の攻め合いのまま試合はGS延長戦へ。北野背中を握り込むとこの高さと深さを変えることで攻防のモードを調節、鋭い隅返に度々飛び込むが下和田も敢えて抱かせておいての小外掛、大内刈、巧みに後帯を得ての払巻込と魅力的な技を連発。北野もこれを谷落に隅落とことごとく返さんと試み、息つく暇もない攻防が続く。しかし試合時間が7分を超えるとさすがにサイズに劣る北野が疲労、GS3分45秒ついに消極の「指導1」。GS4分36秒には、下和田が背中を握っての右大内刈。これで相手を抱きつかせておき、その膝めがけて右足車一閃、ついに北野を捕まえて「一本」。互いの握りどころ、間合い、技の選択と双方まさに秘術を尽くして駆け引きし、持ち味を発揮した一番。好試合だった。

eJudo Photo
佐藤正大が右袖釣込腰から肩車に繋ぎ、藤本英謙から「一本」

佐藤正大(関東・自衛隊体育学校)○肩車(0:22)△藤本英謙(東北・青森県警察)

組み際に佐藤が片手の右袖釣込腰。藤本が背を向ける形で腰を切って耐えると、佐藤は自身の背中が相手の左体側と接触する形となる。逆(左前隅)側に抜け落とす軌道が想起されたが、佐藤は掴んだ左袖を自身の右肩越しに抱き込んで右前隅方向への肩車に連絡。頭を突っ込んで投げ切りに掛かると藤本は背を向けて立ったまま自身の左後隅に引きずり落とされる形となり逆らえず、肩車「一本」。佐藤は関東予選と選抜体重別の好調をそのまま持ち込んだ印象、僅か22秒で勝負を決めた。一方の藤本はまだ体が動いていなかった印象。佐藤の技の冴えは素晴らしかったが、藤本は初出場の緊張を突かれた形で悔しい敗戦となった。

eJudo Photo
郡司拳佑が河坂有希から内股巻込「一本」

郡司拳佑(九州・旭化成)○GS内股巻込(GS1:18)△河坂有希(四国・愛媛県警察)

ともに全日本出場はこれが2回目。郡司が右、河坂が左組みのケンカ四つ。引き手争いが続いて36秒双方に片手の「指導」。郡司釣り手の手首を立てて接近、引き手で袖を得ては鋭い内股に払腰も繰り出して攻め、しかし河坂はこれをしっかり受け切ると低い左大内刈と左背負投で抗する。それでも郡司内股を軸に攻め続けて3分2秒河坂に「指導2」。延長に入ると郡司加速して右大外刈に右内股、右内股と取り味のある技を連発。GS1分18秒にはひときわ思い切りよく右内股、ついに河坂を捕まえると巻き込みに連絡して投げ切り「一本」。膝の負傷が伝えられた郡司、序盤は河坂にしっかり受けられてやや迷いも見られたが攻撃姿勢は一貫して変わらず、延長は一段肚を括った印象であった。一方の河坂は健闘も、具体的に勝負する技に欠けた。郡司が加速する前に刃を入れたかったところ。

eJudo Photo
春山友紀が瀧田真太郎から大腰「有効」

春山友紀(関東・自衛隊体育学校)○GS有効・大腰(GS1:19)△瀧田真太郎(北海道・北海道警察)

瀧田が左、春山が右組みのケンカ四つ。春山が両襟の巴投に左の内巻込、ここから繋いで得意の寝勝負を試み、一方の瀧田は片手の左内股と右への肩車で抗しつつチャンスを探す。組み手争いが続いて中盤から試合やや停滞。春山が「韓国背負い」に横巴と見せるが瀧田動ぜず、残り30秒双方に「指導」。試合はGS延長戦へ。GS33秒春山に袖口を握り込んだ咎による「指導2」が与えられるが試合の様相は変わらず、腰の差し合いから前技を出し合う我慢比べの様相、加速の気配は薄い。しかしGS1分19秒、瀧田が釣り手を背中に持ち替えて腰を切らんとする瞬間、春山がもたれかかるように右大腰。崩れた瀧田を右前隅に捩じって肩口から落とし「有効」。春山の集中力の高さが光った一番であった。

eJudo Photo
七戸龍が引きずり出すような右足車で攻める。直後大町隆雄に3つ目の「指導」

七戸龍(九州・九州電力)○GS反則[指導3](GS1:45)△大町隆雄(中国・山口県警察)

右相四つ。刈り技と跳ね技が武器で身長193センチの七戸、一方低い担ぎ技が得手の175センチ大町とこれもかなりタイプが違う型の選手による好取組。序盤に七戸が引き手で袖、釣り手で奥襟と一方的に組んで右大内刈を仕掛けると頭を下げられた大町が潰れ、50秒偽装攻撃の「指導」。以降も七戸が組み手をやや有利に進めるが、中盤から大町が慣れ始め、1分50秒には手首を掴んでおいて思い切った左袖釣込腰。これは迫力十分の一撃もしかし高さが噛み合わず、七戸が立って受け切って攻防は継続。2分30秒には双方に「取り組まない」咎による「指導」が与えられる。終盤大町が左袖釣込腰に片襟の右背負投と技を積み、残り1秒で七戸にも「指導」。ともに「指導2」を失ったタイスコアのまま試合はGS延長戦へ。延長戦は七戸が優位、「はじめ」が掛かるなり両襟を掴み、引っ張り出しの右内股で攻める。大町右背負投に巴投を繰り出していったん持ち直すが、七戸は釣り手の肘を相手の腕に載せておいての右大内刈、さらに遠間から右大外刈と技を積む。続いて七戸が引きずり出すような右足車で大町にたたらを踏ませると主審試合を止め、GS1分45秒大町への「指導3」で決着。

eJudo Photo
辻本拓記が北山彰から大内返「技有」

辻本拓記(近畿・兵庫県警察)○優勢[技有・大内返]△北山彰(北信越・石川県警察)

両者右組みの相四つ。辻本が左一本背負投に右袖釣込腰で攻めて先手を取る。1分28秒、北山が組み際に右大内刈を引っ掛けるが、辻本バランス良く体を捌いて鮮やか大内返「技有」。辻本は以降も片手の左背負投を軸に攻め続け、1分52秒には北山に消極的との咎で「指導」。しかし北山は続いて襲った辻本の右背負投を返し掛かり、以降は右袖釣込腰を中心に反撃。一方の辻本は相手の攻めを受け入れるうちに消耗して目に見えて減速、残り30秒には「取り組まない」咎で「指導」ひとつを失う。しかし北山追いきれず、辻本が逃げ切る形でタイムアップ。

※ eJudoメルマガ版5月19日掲載記事より転載・編集しています。

→eJudoトップページに戻る
→「ニュース・マッチレポート」に戻る
→「書評・DVD評」に戻る