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国士舘は先鋒岡田陸の活躍テコに圧勝、大牟田は地力勝ちで決勝進出決める・第41回全国高等学校柔道選手権男子団体戦レポート⑤準決勝

(2019年5月9日)

※ eJudoメルマガ版5月9日掲載記事より転載・編集しています。
国士舘は先鋒岡田陸の活躍テコに圧勝、大牟田は地力勝ちで決勝進出決める
第41回全国高等学校柔道選手権男子団体戦レポート⑤準決勝
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取材:古田英毅/eJudo編集部
撮影:乾晋也、辺見真也/eJudo編集部

■ 準決勝
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国士舘はこの大一番の先鋒に岡田陸を起用。ここまで鈴木郷生と交互に投入して来たが、調子の良さを買った。

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作陽はほぼ不動の布陣。大将高橋翼登場までに、1枚でも多く相手を損耗させたい。

国士館高(東京) - 作陽高(岡山)
(先)岡田陸 - 榎本開斗(先)
(次)長谷川碧 - 佐藤良平(次)
(中)道下新大 - 嵐大地(中)
(副)藤永龍太郎 - 丸鳩紹雲(副)
(大)斉藤立 - 高橋翼(大)

大一番。国士舘は大将に絶対のエース斉藤立がおり、作陽には前日の個人戦無差別を制した高橋翼の存在がある。これが両軍布陣の大前提。とはいえエース以外の4枚の戦力差は歴然、普通に考えれば国士舘が圧倒的に有利である。作陽としては総合力負けは百も承知、「抜き試合」というレギュレーションと高橋の保有を最大限に生かして戦うしかない。

その国士舘は前戦で出色の活躍を見せた岡田陸を高評価、再びこの大事な試合で先鋒に抜擢した。長谷川碧を「岡田の後詰」として次鋒に派遣という形も前戦を踏襲。つまりは、中堅道下新大と副将藤永龍太郎の中盤2人の位置を入れ替えたのみで、陣形は準々決勝の桐蔭学園戦とほぼ同じ。前衛2枚が岡田と長谷川、中盤が道下と藤永、大将は斉藤という不動の3ブロック布陣だ。トピックは岡田の先鋒再投入である。

一方の作陽はこれしかないという配列。初戦から変わらず、嵐大地、丸鳩紹雲、高橋翼の主力3枚を後衛に、攻略の難易度順に並べて配置するというポリシーをこの試合も貫いた。前衛2枚には前戦からブロック内の順番だけを入れ替えて榎本開斗と佐藤良平を配置。

作陽としては、なんとしても高橋を斉藤に当てて、一勝負やらかしたい。ケンカ四つのパワー派で「抱き勝負」が得手の大型という、現状斉藤相手に「何か」を起こすにはもっとも適したタイプである高橋との試合が実現すれば、勝敗を越えた今大会のハイライト、そもそも大将同士の対決というところまで勝負が煮詰まれば何が起こるかわからない。斉藤と高橋の対戦を実現すること、これが作陽の望みであり、万が一の勝利の可能性ある、ただ1つの道だ。

出来得ればタイの状況での対戦を望みたいところだが、彼我の戦力差からこれは現実的には考えにくい。少しでも引き分けを増やして粘り、高橋が相手をせねばならない枚数を消し込み、体力を残して斉藤まで辿り着きたいところ。国士舘の中盤2枚は試合運びが上手く守備も堅く、常の戦いであれば攻略は困難。まずは序列上5番手の先鋒岡田、攻撃力はあるがメンタルと守備力に不安のある次鋒長谷川の前衛2枚を崩すことで動揺を誘い、じわりと本丸・斉藤までの距離を詰めていきたいというところ。

国士舘としては、ミスなく試合を進めて取れるところで取っていく、という形で十分最後まで辿り着けるであろうカード。ただし斉藤は肘と手首の負傷を抱えており、ケンカ四つの対戦はあまり好ましくない。その相手が超大型で一種空気を読まないところのある高橋であれば、なおのことだ。例えば、複数枚抜きを果たした高橋が勢いづいて斉藤戦に臨んでくるような状況はあまり考えたくないはずだ。高橋に複数枚を当てて、1ポジションでも早く試合を終わらせてしまいたい。高橋以外に枚数を掛けている場合ではない。

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先鋒戦、国士舘・岡田陸が大内刈。榎本開斗を叩き落として僅か20秒で「一本」

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岡田は第2試合も大内刈で突進、勢い衰えず。

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岡田は佐藤良平からも内股「一本」。僅か60秒で2人を抜き去る大仕事。

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岡田は中堅嵐大地も引き分けで止める完璧な仕事ぶり。3人を賄って退場。

というバックグランドで迎えた先鋒戦。作陽は川野一道監督が「畳にしがみついてでも」と猛烈なゲキを飛ばして迎える初戦であったが、この試合はショッキングな結末。作陽・榎本開斗が袖釣込腰を仕掛けて展開が切れた最初の「待て」の直後、国士舘・岡田陸が引き手で袖を掴むなり右大内刈。ケンケンで高く相手の膝を揚げながら体ごと距離を詰めると右後隅に墜落した榎本の体を越えてそのまま飛び込み、鮮やか「一本」。

この間僅か20秒。時間を使えば使うほど展開が転がり込むはずの作陽には、考え難いほど強烈なダメージ。国士舘は想像を遥かに超える、最高のスタートである。国士舘ベンチの面々は座したまま一斉に拍手、一方作陽・川野監督は拳を握りしめたままガクリと首を垂れてショックを隠し切れない。

この先鋒戦で流れは決まってしまった。続く第2試合は畳に残った岡田、作陽の次鋒佐藤良平ともに右組みの相四つ。佐藤は左右の手を交互に前に突き出しながら粘る構え、岡田はこれを縫って引き手で袖を得ると、釣り手を叩き込みながら右大内刈。先ほどとまったく同じく、内腿に高く刈り足を当てて突進する。しかし警戒していた佐藤詰め切られる前に慌てて伏せてこの技は決まらず。岡田は相当この技に手ごたえがある様子。

この一撃に危機を感じた佐藤は完全に引き分け狙い。左右の組み手交換を続けて間合いを取り続け、決して接近しない。しかしその佐藤、袖釣込腰の形の片手右体落に潰れ、そこから立ち上がった瞬間の立ち位置と角度が中途半端。岡田は絶対に逃がさぬとばかりに引き手で横帯、釣り手で首裏を抱えて佐藤を捕まえるとこの日の必殺技・右大内刈一撃。ケンケンで一歩進むと、ここまで間合いが詰まれば同じとばかりに右に腰を切って内股に連絡。佐藤背中から真っ逆さま、岡田はその体を乗り越えてクルリと立ち上がり、自信に満ちた顔で「一本」のコールを聞く。

試合時間僅か40秒。岡田は2人抜き、まさに驚きの仕事ぶり、何より、国士舘ベンチにいる岩渕公一監督の思わず頭に手を当てた、「たいしたもんだ」と言わんばかりの動作がこの事態の凄さを表している。試合開始から60秒でスコアは早くも2人差、もはや試合は実質終わってしまったと言っていい。

岡田、第3試合は右相四つの嵐大地としっかり引き分け。時折得意の右大内刈による突進を見せて相手を場外まで弾き出すなど、危なげない試合ぶりであった。国士舘は大会開始時点ではレギュラーの当落線上にあった序列5番手の先鋒ただ1人で3人を賄うという完璧過ぎる試合運び。一方の作陽は、ほとんど唯一の刃の入れどころと目された岡田に2人を抜かれ、ばかりかポイントゲッターの一角である嵐まで止められるという苦しい展開。試合はもう、壊れていると言っていい。

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国士舘の次鋒長谷川碧が丸鳩紹雲から内股「技有」

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そのまま左腕を抱え込み崩袈裟固、合技「一本」。

第4試合は国士舘の次鋒長谷川碧が左、作陽の副将丸鳩紹雲が右組みのケンカ四つ。試合が始まるなり長谷川左内股、丸鳩の巨体の横に体をずらして作用足を揚げると軸足ごと自ら跳んで、投げる気十分。これは投げ切れずお互いが腹ばいに落ちたが、前段の岡田の活躍を受けてか、長谷川も相当に積極的。丸鳩右組みからの左払巻込という得意の技を放つが間合いが遠すぎて自分だけが潰れてしまい「待て」。丸鳩続いて左へ横落の奇襲技を見せるも長谷川動ぜず潰して「待て」。

続く展開で長谷川は奥襟を叩いて浅く左内股、戻るなり今度は釣り手を肩越しのクロスに入れて再度の左内股に打って出る。そのままケンケン、大きく跳ねて巻き込むと一歩動いて残した丸鳩は膝が耐え切れず、ガクリと頽れて「技有」。長谷川はそのまま左腕一本を抱え込んで崩袈裟固、丸鳩ほとんど半身でその背中に付いて、しかし動くことは出来ずそのまま合技「一本」。試合時間は59秒、これで作陽に残る戦力は大将の高橋翼1人となった。スコアは実に3人差である。

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高橋翼が吸い込むように右小外掛。

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長谷川碧の巨体を畳に押し付けて「一本」

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高橋が道下新大を大外刈で攻める。

続く第5試合は畳に残った長谷川が左、高橋が右組みのケンカ四つ。今度は時間を使えば使うほど有利になるのは国士舘の側。長谷川の粘りが期待されるところだが、高橋は長谷川が左釣り手で奥襟を叩き込んだ瞬間その背を抱えて右小外掛。あるいは長谷川が左内股を狙って一歩進んで腰を切った瞬間であったか、送足払気味に体を吸い込んだタイミングピタリの一撃に長谷川の巨体一瞬で崩落、主審は「技有」を宣告。しかし副審2人がすかさず手を真上に上げてアピール、これは「一本」となる。試合時間なんと20秒、高橋早くも1人を抜き返す。作陽にとってはもっとも欲しい、国士舘にとってはこれだけは絶対にやってはいけない「秒殺」劇。国士舘大枠の有利は変わらないが、作陽の反撃機運高まる。

高橋、斉藤に辿り着くために残された壁はあと2枚。続く第6試合は畳に残った高橋が右、国士舘の中堅道下新大が左組みのケンカ四つ。

高橋は引き手で襟、釣り手で背中を抱き込んで前進。右大外刈に出足払で調子を整えながら必殺の一撃の機会をうかがう。一方の道下いったんは頭を下げられたが左体落を放って角度をずらし、釣り手で前襟を掴んでしっかり間合いを取る。主審は高橋の攻勢を採って道下に「指導」。

続く展開、高橋は引き手で襟、釣り手で背中を掴むと勝負技の右小外掛。投げ切ろうと力を籠めるが道下は柔らかく左大内刈を入れて投げ合いに応じる。数合のやり取りがあってこれはブレイク、「待て」。

この攻防で高橋やや慎重になった印象。丁寧であり、常に一撃の気配は漂わせるが個人戦のような全てを破壊して進むような勢いがない。一方の道下は釣り手を上げての左大車も見せ、どうやらペースを掴んだ様子。しかし道下が袖釣込腰様の左体落に入ると、高橋勝負どころはここと見て一気に加速。体ごと引っこ抜いて持ち上げ、必殺の裏投一撃。道下の体が宙に浮き、試合終わった、と一瞬観衆息を呑むが、持ち上げられた道下の胴体が高橋の腹の上に落ちてしまいノーポイント。「待て」。

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高橋必殺の裏投も、道下の体を自らの腹の上に落としてしまいノーポイント。

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道下巧みに高橋を封じて、タイムアップ。

3分間は短い。高橋は腰を切って前進、払腰に出足払と丁寧に技を積むが道下過剰反応せず時に正対で耐え、機を見て左大車で反撃。残り時間あとわずかと見て勇を鼓したか、釣り手の肘を激しく振り立てて高橋を牽制する強気も見せ、試合はこのままタイムアップとなる。この試合は引き分け、スコア二人残しで国士館の勝利が決まった。初めて高校選手権でベスト4まで進んだ作陽の挑戦は、ここで終わった。

国士館高(東京)○二人残し△作陽高(岡山)
(先)岡田陸〇大内刈(0:20)△榎本開斗(先)
(先)岡田陸〇内股(0:49)△佐藤良平(次)
(先)岡田陸×引分×嵐大地(中)
(次)長谷川碧〇合技[内股巻込・崩袈裟固](0:59)△丸鳩紹雲(副)
(次)長谷川碧△送足払(0:10)〇高橋翼(大)
(中)道下新大×引分×高橋翼(大)
(副)藤永龍太郎
(大)斉藤立

岡田陸が1人でほぼ試合を終わらせてしまった。岩渕公一監督が優勝の条件として毎年語る「予想を超える活躍をする選手1人の出現」「主力以外の奮闘」がしっかり満たされた格好である。率直に言って、国士舘の出場数あれど、ベスト4の時点でこれほど綺麗に「上り詰める条件」が揃った大会はなかなかなかったのではないだろうか。長谷川がまたもやこれだけはやってはいけない失敗をしてしまい一瞬流れが変わりかけたが、道下の奮闘でこれも、芽のうちに踏みつぶすことが出来た。ほぼ満点の試合と言って良いだろう。ついにエース・斉藤立を温存したまま決勝進出決定である。

一方の作陽。いかに大駒・高橋の保有あれど、5番手選手に3人まで潰されてしまっては打つ手なしであった。夏に向けて高橋以外の4枚の錬成が急務である。丸鳩と嵐のレベルアップはもちろんのことだが、せめてもう1枚、上位対戦を耐え抜ける「核」が欲しい。

とはいえ。高橋も含め、中学時代の実績を考えればこのメンバーで全国大会ベスト4進出は凄まじい成績である。岡山の「虎の穴」作陽の育成力おそるべし。もともとこのチームは夏に合わせて力を上げてくることが定番。春の時点で既に全国ベスト4に食い込んだ今代がどこまで仕上がってくるか、7月の金鷲旗、そして8月のインターハイがまことに楽しみである。

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大牟田は疲労の色濃い竹市大祐を再び次鋒に前出し。

大牟田高(福岡) - 日体大荏原高(東京)
(先)服部大喜 - 藤原秀奨(先)
(次)竹市大祐 - 海堀陽弥(次)
(中)石本慎太郎 - 平山才稀(中)
(副)森健心 - グリーンカラニ海斗(副)
(大)久保田皓晴 - 島本真司郎(大)

大牟田はここまで大活躍の服部大喜を先鋒に投入。さらにこの試合も疲労の色濃い竹市大祐を惜しみなく次鋒に突っ込んで、前半に1つ攻撃ブロックを作った。かつエース森健心は最後衛ではなく副将に前出し。前でリードして、おそらく敵方の主力と戦うであろう後衛には森を手当てし、ここまでで試合を終わらせてしまおうという布陣だ。興味深いことに、日体大荏原も先行逃げ切りを図り、平山才稀を中堅に、グリーンカラニ海斗を副将に「前出し」した。

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先鋒戦、服部大喜が釣り手でアゴを突いて前進に次ぐ前進

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残り14秒、服部が藤原秀奨の右内股を透かして捩じり「技有」。

両軍ともに大将を余らせて勝利せんとの布陣。差は、大牟田が前衛に服部と竹市を突っ込んでのセパレート陣形であることに対して、日体大荏原が主力の平山とグリーンを後に纏めて「山」ひとつを厚くした隊列であること。ともあれ、双方が副将までで勝負を決せんと先行前提の構えである以上、もっとも大事なのは先制点である。

先鋒戦は服部大喜が左、藤原秀奨が右組みのケンカ四つ。藤原が釣り手で背を抱えるが、体格に勝る服部は構わず前襟を握った釣り手の拳を相手のアゴに当てて徹底前進。引き手を争ったまま藤原畳を割り、35秒藤原に場外の咎で「指導」。さらにこの形のまま打ち続いた引き手争いを受けて1分5秒には双方に片手の咎による「指導」が与えられる。試合時間2分弱を残して早くも藤原はスコア上後のない状況。服部は前進して圧力、苦しくなった藤原は背を抱えた形から引き手で胴を抱いての右小外掛という大技を見せるが服部はまったく崩れず、浮落で捩じり返す。残り50秒には思い切った左背負投であわやポイントという場面も作り出し、服部は攻勢。

そして残り14秒、背中を抱えた藤原が腰の差し合いから右内股を見せると服部素早く反応。相手と同じタイミングで作用足を揚げる内股透で時計回りで捩じり、藤原は左肩から畳に落ちる。いったんは「待て」が宣告されたが、映像確認の結果これは「技有」。残り時間はほとんどなく、貴重な先制点は大牟田のものとなる。

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第2試合、海堀陽弥が服部の突進を止め、様相は「突き合い」で膠着

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第3試合、竹市大祐は平山才稀に捕まる前に巴投で展開を切る。

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平山後帯を握って引込返も、予期した竹市が作用足を外して回避。

第2試合は畳に残る服部、日体大荏原の次鋒海堀陽弥ともに左組みの相四つ。服部が前進で全てを塗りつぶさんと目論み、海堀がこれを巧みにずらしながら試合は進み、大枠としてが互いが引き手で襟を握っての突き合いとなる。海堀ひと芸仕込みたいところだが、横変形にずれ、あるいは片手のままでとにかく押してくる服部の前に罠を張る空間と時間の猶予がない。1分42秒双方に消極的との咎で「指導」。以後も様相はほぼ変わらず、この試合は引き分けとなった。

第3試合はポイントゲッター対決、個人戦81kg級2連覇者の竹市大祐、日体大荏原の平山才稀ともに左組みの相四つ。竹市は短躯、平山は長身。竹市開始早々巴投から平山の長い腕に絡みついて腕挫十字固を狙い「待て」。以後も平山が釣り手を伸ばして背中にアプローチすると竹市は都度袖釣込腰に飛び込んで展開を切り、相手に狙いを定める隙を与えない。1人差リードを背景にした竹市は平山の袖を巧みに絞り、位置をずらし、力の伝わる形を作らせないことに腐心。1分20秒には双方に「取り組まない」咎による「指導」となるが、竹市は直後右小内巻込で攻め返して攻撃姿勢をひとつ見せると、以後は再び平山の袖を落とし、袖釣込腰で先んじて攻め、常に形を変えて決して相手の力を受ける態勢だけは作らない。残り35秒、巴投に掛け潰れた竹市に偽装攻撃の「指導2」。平山直後釣り手で上から後帯を引っ掴むスクランブル。竹市の組み手を無力化し、無理やり固定して投げ切ろうとの肚だ。竹市思わず頭を下げてしまうが相手の横に食いつくと、続いて襲来した引込返を予期して外し、そのまま平山の背について寝技を展開「待て」。再開後はまず両襟を突っ張って間合いを作り、平山が引き手で袖、あるいは釣り手で奥と良いポジションを1つ作るたびバーターで逆側を1つずつ殺し、位置をずらして狙いを絞らせない。そのまま終了のブザーが鳴り、この試合は引き分けとなった。大牟田、竹市の働きで大駒平山を無事消し込み、1人差リードを継続。

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石本慎太郎が、押し返して来たグリーンカラニ海斗の出端を捉えて浮落「技有」

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グリーンが裏投「一本」で逆転勝ち。

続く第4試合は大牟田の中堅石本慎太郎に日体大荏原のエース、副将のグリーンカラニ海斗がマッチアップ。この試合は石本が右、グリーンが左組みのケンカ四つ。引き手争いからグリーン溌溂とした動きで左内股を2発、しかし石本柔らかく受け切り、寝勝負で時間を使って「待て」。

続く展開、石本はグリーンに背中を抱かせたまま進退。しばしあり、意を決して釣り手で後帯を掴むと抱きつく形での右大内刈に飛び込む。グリーンは一瞬耐え、弾き返さんと前へ。しかし一瞬仰け反った石本は崩れ切らず踏ん張り、左引き手で相手の肘をこじあげるとグリーンの前進に合わせて体を捌いて時計回りの浮落。眼前の目標をいきなり失ったグリーン左前隅に転がって、1分16秒石本に「技有」。1年生石本の活躍に、大牟田ベンチ大いに沸く。

しかしグリーンはこの失点で却って冷静さを取り戻した様子。前進して釣り手で後帯を掴むと、屈して耐えた石本の体を引き起こしてこれが仕事とばかりに表情を動かさず左内股。石本が腹ばいに落ちて「待て」。続く展開も引き手で襟、釣り手で背中を掴み、左内股を続けて放って石本を場外際まで追い詰める。手が詰まった石本が頭を下げた状態から体勢を直し、かつ場内に回り込もうと右に重心を動かした一瞬、その方向に向けてグリーンが反時計回りの裏投。石本たまらず吹っ飛び1分32秒「一本」。グリーンの貫録勝ち、これでスコアはタイに戻る。

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森健心は徹底して組み勝ち、足技で崩し続ける。

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森が「ストレートアームバー」型の腕緘で抑え込む。グリーン動けず「一本」

第6試合の副将対決はエース同士による大一番。大牟田・森健心と畳に残るグリーンカラニ海斗ともに左組みの相四つ。グリーン遮二無二奥襟を叩くが、森はあっという間に絞り落として両袖にダウングレード、体を捌いて切り離すと今度は釣り手を片襟に入れながら左小内刈と右出足払の連続技。グリーンが崩れると押し込んでそのまま寝勝負に持ち込む。続いての組み手争いも森は引き手で前襟、釣り手で片襟と形を変えながら、最終的には一方的に袖と奥襟を持つ形で組み勝つ。グリーンが嫌い、1分10秒グリーンに消極的との咎による「指導」。
森は以後、組み手争いに混ぜ込んでの肩車、片袖の左体落で優位を確保。左大外刈でグリーンを伏せさせると、その右腕に食いついて腕緘を狙う構え。頭の下がったグリーンが仕方なしに前転で応じると、被さるのではなく、腕をまたいで腕緘を極めながら抑え込む。所謂「シバロック」の形であり、つまりは手順、最終形とも前戦で見せた「ストレートアームバー」型の腕緘そのままである。予想外のプロセスにグリーン一歩出遅れてしまい、形が定まった時にはもはや動けず。2分12秒「一本」でこの大一番は森の勝利に終わった。

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森が島本真司郎の体の起こりに合わせて横落。「待て」の後でノーポイント。

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森は膠着を受け入れ、この試合は引き分けとなった。

第6試合は畳に残った森が、ケンカ四つの島本真司郎とマッチアップ。森は1人差リードを背景に手堅い進退。力関係と体格差からすれば投げによる勝利を狙ってもいいところだが、一瞬の隙を狙って粘る小兵の島本にややつきあい過ぎの感あり。島本が右体落で潰れかけたところからの起こりを狙って横落で一回転させるが、これは「待て」の後でノーカウント。直後双方に、引き手を持たない咎による「指導」が与えられる。以後は島本が引き手を争いながら前進圧力、森はこれを大枠受け入れ、1分55秒には双方に引き手を持たない咎による「指導2」。島本は以後も背中を抱える強気の組み手のまま引き手を求めて前進、森はやや気迫減退、これで良しとばかりに押しとどめる格好でこの構図を受け入れ、そのまま3分間が終了。この試合は引き分けとなり、スコア一人残しで大牟田の勝利が決まった。

大牟田高(福岡)○一人残し△日体大荏原高(東京)
(先)服部大喜〇優勢[技有・内股透]△藤原秀奨(先)
(先)服部大喜×引分×海堀陽弥(次)
(次)竹市大祐×引分×平山才稀(中)
(中)石本慎太郎△裏投(1:28)〇グリーンカラニ海斗(副)
(副)森健心〇縦四方固(2:12)△グリーンカラニ海斗(副)
(副)森健心×引分×島本真司郎(大)
(大)久保田皓晴

グリーンに1人を抜き返されたことでそのプロセスは少々揺れたが、大牟田は快勝であった。ともに先行が前提の副将重心布陣にあって、大牟田は前衛に1つ攻撃ブロックを築き、日体大荏原はその副将にくっつける形で後衛にそれをまとめた。大雑把な見方をすれば、相似の陣形における攻撃ブロック到達の時間差が、そのまま勝敗の分かれ目になったと言える。森がグリーンに勝利した一番は、徹底したリアリストで組み手の技術に練れた森に、粗削りなままそれでも大技で勝ち抜くグリーンというタイプ的な相性の差が出たともいえるが、前戦で1人差を追いかけ、なおかつ「技有」を先行されるという難しい試合を勝ち抜いたばかりのグリーンの消耗も、要素としては見逃せない。ともに先制前提の布陣であるが、前衛に攻撃ブロックを1つ前出しするだけの戦力があった大牟田が、総合力で勝った一番と言えるだろう。

日体大荏原は健闘も、斬り込み役・藤原の大会通じた不調が少々痛かった。大牟田戦は藤原の敗北により以後の対戦順がずれ、面倒な竹市が損耗ゼロのままでポイントゲッター平山と対戦する不運に見舞われてしまった。スケール感の大きさとアクの強さが併存する曲者・平山の柔道を凌ぐに、巧者竹市はまさに適任。平山は細身の体に似合わぬ芯の強さがあり、勝機ありと見て抱き勝負に来た相手を逆に切り返すことがこのところの勝ちパターン。大牟田の周辺戦力には体の強さを前面に押し出す型の選手が多く、竹市、森以外のメンバーであれば勝利が見込めたはず。総合力負けではあるが、平山登場のタイミングがずれれば少なくとももう一揉め出来た試合ではあった。

かくて、決勝カードが確定。前評判通りに第1シード校と第2シード校が勝ち上がった。

国士舘高(東京) - 大牟田高(福岡)

である。

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