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【レポート】国士舘と大牟田が順当にベスト4入り、作陽は高橋翼の3連戦で木更津総合の重囲を突破・第41回全国高等学校柔道選手権男子団体戦レポート④準々決勝

(2019年4月25日)

※ eJudoメルマガ版4月25日掲載記事より転載・編集しています。
国士舘と大牟田が順当にベスト4入り、作陽は高橋翼の3連戦で木更津総合の重囲を突破
第41回全国高等学校柔道選手権男子団体戦レポート④準々決勝
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準々決勝の開始がアナウンスされる

→三回戦レポート
→二回戦レポート
→一回戦レポート
→男子団体戦全試合結果(eJudoLITE)
→男子団体戦プレビュー

取材:古田英毅/eJudo編集部
撮影:乾晋也、辺見真也/eJudo編集部

■ 準々決勝
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先鋒戦、岡田陸が佐々木光太朗に右大内刈

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飛び込んで決め切り「一本」、先制点は国士舘。

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国士舘の次鋒道下新大が桐蔭学園の中堅・持田龍己から大外刈「一本」

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道下は大内刈「一本」で副将町方昂輝も抜き去る

国士館高(東京) - 桐蔭学園高(神奈川)
(先)岡田陸 - 佐々木光太朗(先)
(次)道下新大 - 安藤健志(次)
(中)長谷川碧 - 持田龍己(中)
(副)藤永龍太郎 - 町方昂輝(副)
(大)斉藤立 - 中野智博(大)

国士舘は前戦でいったん休ませた岡田陸を先鋒に指名、次鋒以降は並び順まで3回戦と変えず不動の4枚でこの準々決勝に臨む。一方の桐蔭学園は安藤健志を次鋒に、中野智博を大将にセパレート配置。実力的に差があることは織り込み済み、前で少しでも相手の枚数を減らしてなんとか1年生エースの中野に繋ごうという形だ。前衛で粘って国士舘の焦りを誘い、試合を揉めさせるところから刃の入れどころを探りたい。大事な先鋒には66kg級県代表の佐々木光太朗をこの日初めて起用した。

先鋒戦は岡田陸が右、佐々木光太朗が左組みのケンカ四つ。岡田は左一本背負投で先制攻撃、さらに右小外刈から右大内刈に入り込み、佐々木の重心を捕まえるなり体ごと迫力の突進。足を戻さぬまま最後は相手の右後隅に向かって跳ね上げるように飛び込み、豪快「一本」。試合時間は1分47秒、新5番手候補岡田のこれ以上ない良い形の勝利に、国士舘ベンチが沸く。

続く試合は畳に残った岡田に、相四つの安藤健志がマッチアップ。ポイントゲッターの安藤と5番手の岡田という、この構図だけ見れば桐蔭学園にとっては数少ない「取りどころ」であるはずだが岡田は揺るがず。安藤は左袖釣込腰に右払巻込、片手の左背負投と繰り出すがいずれも早々に潰れ、得点の気配は感じられない。攻勢演出の域を出ぬ安藤の攻めを岡田がしっかり見極め、機を見て大外刈を繰り出す手堅い試合ぶりのままに4分間があっという間に終了。この試合は引き分けに終わった。岡田は1勝1分けで堂々の退場。

続く第3試合は国士舘の次鋒道下新大が桐蔭学園の1年生中堅・持田龍己を「秒殺」。背中越しに後帯を掴むと、いったん圧に屈した持田の立ち上がり際を狙って強烈な左大外刈一撃、長い体を存分に使って巻き込むように投げ切り45秒「一本」。

道下は続く副将町方昂輝戦も気を緩めず。左体落に横三角でペースを掴むと、2分44秒に再び左体落。ここから振り向きざまに深く腰を入れて左大内刈に飛び込み、町方の太い体を完璧に掴まえて「一本」。前戦における1戦1分けの不完全燃焼に奮起したか、あくまで「一本」を狙う積極的姿勢を見せて、これで2人抜きを果たす。

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桐蔭学園は副将中野智博が小内巻込「技有」、道下新大を抜き返して一矢を報いる。

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中野は左大外刈で攻め込むが長谷川碧揺るがず。この攻めは中野の両手が切れて終息。

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長谷川は攻め続けたまま手堅く引き分け、国士舘は二人残しで危なげなく勝利決定。

桐蔭学園に残る戦力は大将のエース中野智博のみ。中野はこれが3試合目となる左相四つの道下を斜めからの左大外刈で攻め、開始早々に、現在もっと取り味のある技である一本背負投の形に腕を抱えての左小内巻込で「技有」確保。奮起した道下は時間一杯攻め続けて中野の体力を奪うが取り返すには至らず、この試合は中野が「技有」による優勢で勝利。桐蔭学園が1人を抜き返して、スコアは2人差まで詰まる。

国士舘は中堅長谷川碧が出動、左相四つの中野を相手に堅実な試合運び。中野は思い切った左大外落も見せて取る気十分であったが相手を崩すシーンは僅少、長谷川は両手をしっかり持った払腰に左大外刈と攻め続けたまま3分間を戦い切り、あっさり引き分けで試合をまとめた。

国士館高(東京)○二人残し△桐蔭学園高(神奈川)
(先)岡田陸〇内股 (1:47)△佐々木光太朗(先)
(先)岡田陸×引分×安藤健志(次)
(次)道下新大〇大外刈(0:45)△持田龍己(中)
(次)道下新大〇大内刈(2:44)△町方昂輝(副)
(次)道下新大△優勢[技有・小内巻込]〇中野智博(大)
(中)長谷川碧×引分×中野智博(大)
(副)藤永龍太郎
(大)斉藤立

岡田の一本勝ちで半ば以上、道下の連勝でほぼ完全に行方の決まった試合。桐蔭学園としては虎の子の打撃力である中野が1人を抜き返したが、登場時点でスコア3人差では如何ともしがたかった。しかし戦力差を考えれば桐蔭学園としてはストレート負けを免れてプライドを見せたというむしろポジティブな試合であり、夏に向けて中野が上位対戦でも得点源になり得るという、内に向けては希望、外に向けては脅威を見せることに成功した一番だったのではないだろうか。新チームスタート時の戦いぶりを考えれば、この戦力で全国大会ベスト8進出は望み得る最大限、いやそれ以上の戦果であると言える。2年前に「三冠」を得た高松正裕監督が、今度は違う形でその育成、指揮能力を発揮した代と高く評価したい。

国士舘、派手さには欠けるが前2戦に比べれば格段に引き締まった試合。鮮烈な先制の一撃を見舞った末にポイントゲッター安藤と大過なく引き分けた5番手岡田、2連勝の後1敗も、序盤の失点から立ち直って時間一杯戦うという「自分の後」を見据えた戦いで襷を繋いだ道下、手堅く引き分けて相手の希望を絶った長谷川と、全員が最高ではないが「ほぼ合格」の出来を示した。逆にその破れのなさが気持ち悪くすら感じられる、減点の少ない試合。力を余して勝った一番であり、その「余り」ゆえ、そして一段上の力を吐き出さねばならないような切所の少なさゆえ、以後に不安も掻き立てられるという妙な感触の一戦だった。

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先鋒戦、佐藤良平が飯田空翔の内股を透かして押し込む

作陽高(岡山) - 木更津総合高(千葉)
(先)佐藤良平 - 飯田空翔(先)
(次)榎本開斗 - 稲邉嵩斗(次)
(中)嵐大地 - 金澤聡瑠(中)
(副)丸鳩紹雲 - 北條嘉人(副)
(大)高橋翼 - 唯野己哲(大)

準々決勝屈指の好カード。作陽はこれまで同様、前衛に周辺戦力の佐藤と榎本の2人をまとめて相手の戦力の減殺を図り、ここから嵐、丸鳩、そして本丸の高橋と主力3枚を攻略の難易度順に並べた。前衛(2)-主力(3)という形であるが、敢えて極端に言えば、相手の戦力を削れるだけ削って無差別王者高橋に繋ごうという「4-1」というわかりやすい陣形である。高橋を信じ切ったワントップ布陣であるが、逆に言えば、作陽としては上位対戦における陣形はこれ以外にありえない。予想通りの手堅い、たった一つの冴えたやり方である。

一方総合力に勝る木更津総合は、唯一最大のミッションである「高橋攻略」に向けて実に戦略的な陣形を採った。この大役を直接担う後衛を個人戦無差別3位の大型選手・金澤聡瑠ではなく、73kg級の北條嘉人と66kg級王者の唯野己哲という2枚に託したのである。軽量選手の後衛連続投入策は、抜き試合レギュレーションには非常に珍しい。まさに対高橋カスタムの野心的な布陣だ。

大型対決であれば、相手を懐の中に抱き込んで「力比べ」に持ち込める高橋がどうしても有利。高橋としては、その膂力の圏外で細かく動いて技数を稼いでくる小型の強者のほうが明らかにやりにくい。少なくとも手数が掛かる。この役割に「対大型戦向けの軽量級」ということでは今代屈指の北條と唯野の2枚をまとめて突っ込む、このいやらしさは相当なもの。加えて前衛の力量差を考えれば中堅金澤からの3枚を高橋に充てることも十分可能であり、となればまず大型の金澤で高橋の体力を削り、北條と唯野の2枚で消耗させるだけ消耗させ「指導」差で勝利、これがかなわずとも引き分ければ、代表戦で1回休ませた北條、あるいは金澤で4連戦目となる高橋に再び勝負を掛けることも可能な、「三段構え」の策である。

この「後衛に軽量2枚まとめて配置策」自体は、一見奇策ではあるが理にかなっており、その意味では予測し得る範囲の作戦ではあった。ただ北條が「前」であることは少々意外。高橋は中学時代北條に3連敗、夏の金鷲旗でも攻められながらの引き分けを演じているという来歴があり、かなり嫌なイメージを抱いているはずである。したがって消耗させるだけ消耗させた「まとめ」は北條になるのではないかという予測があったわけだが、ここは真の勝負は代表戦と踏んだか、それとも北條で勝つことを想定して後詰を残したか、それともより与えるダメージが大きいであろう北條で削って唯野で仕留めるということを考えたか、なかなか考えさせる面白い陣形だ。

先鋒戦は佐藤良平が飯田空翔を相手に、次鋒同士の対決は榎本開斗が稲邉嵩斗を相手に粘って試合は2戦連続の引き分け。戦力を考えればここまでの試合展開は作陽ペース、佐藤と榎本は大善戦である。

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第3試合。嵐大地と金澤聡瑠の試合は右相四つ、がっぷりの組み合い。

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金澤が横変形で頭を下げる嵐の動きを読み、浮落「一本」

明らかなシナリオの分岐点、第3試合は作陽の嵐大地、木更津総合のエース金澤聡瑠ともに右組みの相四つ。金澤奥襟を深く取るが嵐怖じずに応じて叩き返してがっぷり四つ。ここから金澤が時計回りの浮落を狙って捩じるも頭の下がっていない嵐が踏みとどまって攻防継続。1分4秒、双方に消極の「指導」。以降も組み手のイニシアチブは大枠金澤だが、嵐はその奥襟に応じて釣り手を高く叩くと横変形にずれて金澤の釣り手を噛み殺し、しぶとい進退。金澤がややこれに付き合ってしまった印象で、1分30秒を過ぎるまで試合ほとんど動かず。

このあたりから組み止め合う展開にプレッシャーを感じ始めたか、嵐が動かして大内刈、さらに腕を上げて払巻込の動作と仕掛けを増やし始める。金澤はこれに乗じて引き手で袖を掴んで織り込みいなし、嵐に後を向かせたまま場外まで弾き出して「待て」。試合が動き始めた印象であったが、以後またもや展開は膠着。そして引き分けが見え始めた終盤戦、嵐が再び横変形で噛み殺し、支釣込足に払巻込様の反転動作を見せると主審は残り19秒で金澤に消極的との咎で2つ目の「指導」。

嵐に反則1つのアドバンテージが生まれた形であるが、しかしこれで金澤が奮起。がっぷり組み付くと、応じた嵐が横変形に噛み殺して耐えようとした瞬間時計回りに捩じって浮落。釣り手を噛み殺すために頭が下がっていた嵐、その頭を抱かれたまま重心を掛けた方向に振られる格好となってしまいまったく耐えられず。胸を合わされたまま畳に埋まって「一本」。

木更津総合のベンチは一斉に立ち上がって拍手の嵐、嵐は悔しさのあまり畳に伏せてしばし動けず。金澤がしっかり仕事を果たし、先制点は木更津総合へ。

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金澤が膝車で丸鳩紹雲を伏せさせる。このシーン以外はほぼ全ての時間帯で、組み合ったまま試合は動かず

続く第4試合は作陽の副将丸鳩紹雲、畳に残った金澤ともに右組みの相四つ。金澤引き手で袖を得て前に出るが丸鳩奥襟を叩いてその頭を下げさせ、散発ながらも支釣込足で蹴る。金澤頭を下げて耐えてしまい、38秒消極的との咎で「指導」。以降は両者奥襟を叩くも引き手で襟を突き合うため間合いが遠く、互いに効かない距離から足元を蹴ることが続く。1分半過ぎ、丸鳩が横変形にずれたところで金澤が抱き込んでの浮落を狙うが相手の頭が下がり切っておらず不発、危うさに気づいた丸鳩が首を立てて頭を上げて攻防収束。1分44秒双方に「指導」。

この直後、間合い遠いながらも金澤が膝車で丸鳩の左膝頭を抑えて伏せさせる場面があったが、これが最大の見せ場。以後は双方無理をしない印象で時間が過ぎ去り、この試合は引き分けに終わった。木更津総合の1人差リードのまま、試合は作陽の大将高橋翼が登場する第5試合へと引き継がれる。

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作陽の大将高橋翼が北條嘉人の背中を抱き込む。

第5試合は無差別個人王者高橋翼が右、73kg級の強者北條嘉人が左組みのケンカ四つ。高橋当然のように釣り手で背中を深く抱き込み、北條は腰を引いて待ちの姿勢。高橋が腰の入れ合いから右内股のアクションを起こすと北條透かすなり度胸満点の左内股。しかし高橋はケンケンを2回させてリズムをとると右小外掛で強引に引っこ抜き、北條は首をガクリと上げて仰け反りながら、しかし時計回りの反転動作で無理やり攻撃の形を作って腹這いに逃れ「待て」。経過時間は26秒、平穏無事の引き分けなどは到底考えられない、非常に激しい幕開け。

高橋激しく背中を叩き、北條腰を引いて間合いを取ると一転くっついて左大腰。迎え撃った高橋が次の動作を起こす前に巴投に潰れて流れを切り「待て」。

非常に巧みな北條の進退だが、続く展開で高橋が背中を深く叩いて突進するとまっすぐ畳を割ってしまい「待て」。なぜか「場外」の反則にはならなかったが高橋の圧を持て余し始めた印象。

続く展開、高橋が前に出ると北條釣り手で前襟を掴む。本来は間合いを取りやすいはずのこの行動だが、高橋にとっては相手とまともに接触があるこの時点で既に得意の近接戦闘の間合い。がぶりと正中線を超えるところまで深く背を抱くなり、右小外掛。北條左大内刈を捩じ入れる形で抗するが高橋構わず引っこ抜いて吹っ飛ばし「技有」。試合時間は1分18秒。

北條は続いて襲った高橋の抑え込みを脚を絡めることで流したが、このビハインドは致命的。北條手先で組み手を争うが、リードを得た高橋はもはや慌てる必要はない。これに付き合いながら、詰められるときだけ引き手で襟、釣り手で背中を持って寄せるという余裕のある進退。これまでとは切迫感が全く違う。

手の詰まった北條、残り50秒を切ったところで腰の入れ合いから左大内刈。高橋が待ってましたと体を寄せると内股の形で伏せて展開を切ろうとするが、高橋これを許さず無理やり起こして真裏へ放る。北條吹っ飛び、一度は腹這いとしてスルーされたがすぐに合議が持たれることとなり、映像チェックの結果は2つ目の「技有」。試合時間は2分22秒、高橋が木更津総合の一の矢、北條嘉人を合技「一本」で突破することとなった。

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唯野己哲は巧みな組み手で高橋翼の圧を回避。

続く第6試合は大将同士の対決、畳に残った高橋は身長176センチ体重128キロ、唯野己哲は165センチ66キロ。組み手はともに右組みの相四つである。

唯野は間合いを取ったまま高橋の周囲を旋回。高橋釣り手で背中を叩きに出、頭を下げられた唯野は引き手で腰のやや上を突く苦しい形となり、高橋は前に出て小外刈を2発。しかし唯野は巧みに圧力を外すと、引き手で袖を掴んで釣り手で奥襟を叩く強気。ここから右背負投を2発、左の小内刈と技を積む。この小内刈を空転させた高橋は背中について寝勝負。真裏に返し、右肩を抱いて縦四方固を狙うが、唯野が脚を絡めて上半身に抱き着くとサイズが噛み合わず引き抜き動作のスペースが取れない。解けぬまま「待て」。直後高橋前に出るも、唯野が転がるように巴投に飛び込むとつんのめってしまい捕まえきれず。直後の1分29秒、主審高橋に消極的との咎で「指導」。

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代表戦は作陽が高橋、木更津総合が金澤を送り込む。高橋は3連戦。

あと1つの「指導」があれば唯野の勝利である。唯野は勢いを得て動き良し、まず手先を出して前に出、襟に触れる。触られた高橋が応じて組もうとすると瞬間拳一つ分ゆらめくように下がり、高橋は組み合うことが出来ない。

それでも前進を続ける高橋の前に残り1分から唯野の手が詰まり始め、残り28秒巴投に潰れた唯野に偽装攻撃の「指導」。しかし唯野は再び「旋回」の引き出しを開けて高橋に間を詰めさせず時間を消費。残り9秒の掛け潰れは主審がスルーし、試合はこのまま引き分けに終わった。双方大将までの戦力5枚をすべて使い切り、勝敗の行方は代表者1名による決定戦へと委ねられることになる。

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がっぷりの組み合いから、互いに相手を捩じる浮落合戦。写真は金澤が浮落で高橋を崩す。

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高橋が首を抱いての浮落、金澤吹っ飛んで「一本」

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高橋の浮落(別角度から)

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熱戦終了、作陽がベスト4入りを決めた。

作陽の代表はもちろん高橋。木更津総合は2試合を休ませた金澤を送り込む。

この試合は右相四つ。組み手の直し合い数合を経て、30秒過ぎからお互いが釣り手で奥襟、引き手で襟を掴む形が出来上がる。双方が腕を伸ばし合って実は遠い間合いで足を飛ばす形となるが、高橋が先に動いて支釣込足に右大外刈、さらに釣り手で一段深く首を抱えて時計回りの浮落に打って出る。金澤なんとか耐えたが、直後の1分0秒金澤に「指導」。

ここで金澤も肚を決め、続く展開はお互いに奥襟を抱えて体を寄せる密着戦闘。この形のまま反時計回りに動き合う、どこで試合が決まってもおかしくない待ったなしの接近戦が打ち続く。組み手崩れぬままこの形で駆け引きしあった1分31秒、高橋が相手の左へ時計回りの浮落。高橋の右脇下の空間に金澤の頭が吸い込まれ、ブンと振られたその体が畳へ真っ逆さまに落ちて「技有」。高橋そのまま横四方固に抑え込むがすぐさま技の効果の判定は訂正、「一本」となって熱戦決着。ベスト4には作陽が進むこととなった。

作陽高(岡山)○代表戦△木更津総合高(千葉)
(先)佐藤良平×引分×飯田空翔(先)
(次)榎本開斗×引分×稲邉嵩斗(次)
(中)嵐大地△浮落 (2:47)〇金澤聡瑠(中)
(副)丸鳩紹雲×引分×金澤聡瑠(中)
(大)高橋翼〇合技[浮落・隅落](2:22)△北條嘉人(副)
(大)高橋翼×引分×唯野己哲(大)
(代)高橋翼〇浮落(1:38)△金澤聡瑠(代)

互いのチームが持ち味を出し合った大熱戦。しかしやはり高橋の存在は大きかった。北條、唯野、金澤と強者3枚をまとめて立ちはだかった木更津総合をまさに「丸呑み」。高橋の強さひときわ際立つ一番であった。前段2戦を失点なしで乗り切った佐藤と榎本の奮闘も見事。

木更津総合も素晴らしかった。何より、勝つためにはこれしかないと肚を括った、定石にとらわれないオーダー配置には凄みがあった。北條と唯野という強者2枚の保有あればこそであるが、この方が勝つ確率が高い、と踏んだとしてもなかなか実際に出来るものではない。この「軽量級ダブル後衛配置」、史上に残るカスタムオーダーではないだろうか。その分析能力と勇気に心から拍手を送りたい。一言で言って、非常に面白い試合であった。

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大牟田は再び竹市大祐を前衛の抜き役として起用

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竹市が毛利允弥を右背負投で放る。これは腹這いでノーポイント。

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竹市が右袖釣込腰を押し込んで「技有」

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第3試合、疲労した竹市の背負投を飯田恒星が止める

大牟田高(福岡)○二人残し△崇徳高(広島)
(先)石本慎太郎×引分×徳持英隼(先)
(次)竹市大祐○優勢[技有・袖釣込腰]△毛利允弥(次)
(次)竹市大祐×引分×飯田恒星(中)
(中)久保田皓晴○合技[払巻込・隅落](2:30)△福本佑樹(副)
(中)久保田皓晴△合技[小外掛・横四方固](1:37)○福永夏生(大)
(副)森健心○横四方固(1:06)△福永夏生(大)
(大)服部大喜

大牟田はここまで大活躍の服部大喜をいったん大将に下げて布陣、前衛には先鋒に石本、そして次鋒に竹市大祐を置いた。疲労が心配される竹市をベスト4以降に向けて後詰に配置し、負担を軽くするという策も予想されたが、まずはこの試合に集中という形。この竹市と副将森のセパレート布陣で、服部を残したまま試合を終わろうという陣形だ。一方の崇徳はエース福永夏生を大将に置き、削れるだけ削って福永の出来に賭けようというオーソドックス配置。

先鋒戦は右相四つ。徳持英隼が要所に足技を繰り出して石本慎太郎に刃を入れる隙を与えず、この試合は引き分け。

第2試合の次鋒対決は竹市大祐、毛利允弥ともに左組みの相四つ。毛利内股で攻めるが竹市引き手を切って手堅く防ぎ、続いて打点の高い左背負投を叩き込む。吹っ飛んだ毛利が伏せ、映像チェックが行われるがこれはノーポイント。以後も竹市は左袖を掴んでの右袖釣込腰、さらに引き手で袖を折り込んでおいての左背負投と自在の攻めを見せ、1分6秒には毛利に「指導」。

1分40秒、今度は竹市右へ袖釣込腰。伏せかけた相手を体を突っ込むことで押し込み「技有」をもぎ取る。竹市は以後も快走、2分20秒には毛利の場外による「指導2」も積み上げて盤石の試合ぶり、そのままタイムアップを迎え「技有」優勢でまず1人抜きを果たす。

続く第3試合で竹市に対峙した飯田恒星は引き手で袖を先に得、左大外巻込で先制攻撃。竹市は右袖釣込腰に左内股で攻め返すが、1分半過ぎから激しく疲労。2分13秒に良いタイミングで放った右袖釣込腰は投げ切れず自ら座り込んでしまい、続いての右背負投も掛け切れず中途で停止。しかし飯田の方も攻め手を欠き、この試合は引き分けに終わった。大牟田の1人差リードは継続。

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崇徳の大将福永夏生が大牟田の中堅久保田皓晴から小外掛「技有」。

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大牟田は副将森健心が腕緘を極めながらの横四方固で一本勝ち。二人残しでベスト4入りを決めた。

第4試合は大牟田の中堅久保田皓晴、崇徳の副将福本佑樹ともに右組みの相四つ、久保田は大外刈、福本は横変形にずれての小内刈と大外刈で攻め合うが、残り46秒の組み際に久保田が右払巻込で「技有」確保。さらに続く展開の縺れ際に放った隅落が映像チェックの結果「技有」と判定され、2分30秒久保田の合技「一本」で試合終了。大牟田は大量2人差をリードしたまま大将福永夏生を引っ張り出すことに成功する。

続く第5試合は崇徳のエース福永が意地を見せ、右相四つの久保田を伏せさせるなりの送襟絞、さらに思い切った右払腰で追い詰める。1分33秒には右小外掛を決めて「技有」そのまま立たせず横四方固に抑え込んで「一本」。崇徳がようやく一矢を報い、スコアは大牟田の1人差リードに詰まる。

続く第6試合はエース対決、大牟田の副将森健心が左、畳に残った福永が右組みのケンカ四つ。もし福永が勝利すれば一気に崇徳勝利のシナリオも見えてくる大一番だが、森は真っ向からの投げ合いには応じず。50秒、寝勝負からトリッキーな動きで相手の腕を股中に抱え込んで捲ると「シバロック」の形で、体ごと右腕を抱え込んで抑え込む。所謂「ストレートアームバー」型の腕緘に捉えたまま制し続け、1分6秒「一本」で試合終了。大牟田がスコア2人残しという大差で勝利し、準決勝進出を決めることとなった。派手さはなし、竹市の労と、森の「知識的に相手が対応し難い寝技技術」という手堅い武器を繰り出してのベスト4への名乗りであった。

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藤原秀奨が永竿慶弥を攻め、僅差の優勢勝ち。先制点は日体大荏原に。

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日体大荏原の次鋒海堀陽弥が東海大仰星の副将柏野亮太から抱分「技有」

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東海大仰星は大将中村雄太の2人抜きで追いすがる

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平山才稀が中村雄太を得意の小外掛で攻める

日体大荏原高(東京)○二人残し△東海大仰星高(大阪)
(先)藤原秀奨○優勢[僅差]△永竿慶弥(先)
(先)藤原秀奨×引分×本原颯人(次)
(次)海堀陽弥○合技[隅落・隅落](2:37)△嘉村悦王(中)
(次)海堀陽弥○優勢[技有・抱分]△柏野亮太(副)
(次)海堀陽弥△大内刈(1:44)○中村雄太(大)
(中)山城和也△優勢[技有・小外刈]○中村雄太(大)
(副)平山才稀○小外掛(0:49)△中村雄太(大)
(大)グリーンカラニ海斗

日体大荏原は副将平山才稀と大将グリーンカラニ海斗、対する東海大仰星は大将中村雄太。後衛に控える大駒の存在が、双方の前衛に圧し掛かる試合である。

先鋒戦はこれまでいまひとつの出来であった日体大荏原・藤原秀奨が良い動きを見せ、永竿慶弥から2つの「指導」を奪って僅差の優勢勝ち。続く強敵本原颯人も右相四つがっぷりの組み合いのまま大過なく3分間を過ごし、しっかり引き分けでリードを保ったまま退場。

第3試合は日体大荏原の次鋒海堀陽弥がケンカ四つの嘉村悦王の右内股を隅落に捉えて1分22秒「技有」確保。2分38秒にはさらに隅落「技有」も追加して盤石の合技「一本」。ペースは完全に日体大荏原である。海堀は続く強敵・柏野亮太からも残り3秒、一本背負投を抱分に捉えて返し値千金の「技有」確保。これで海堀は2人抜き、日体大荏原はなんと大量3人差のリードで東海大仰星の大将・中村雄太を畳に引きずり出すことに成功する。

畳に現れた1年生エース中村は貫録あり。畳に残った海堀を相手に両襟で圧を掛けてまず「指導」1つを奪うと、1分21秒に大内刈で叩き潰して「一本」。さらに続いて畳に現れた中堅山城和也からも50秒に小外刈で「技有」を奪って試合の雰囲気を全く変えてしまう。

山城必死に畳に居残り、以後は両者への「指導」、さらに中村への「指導2」と反則が累積。そのまま試合が終わり、中村が「技有」優勢で勝利して2人抜きを果たした。

続く試合はポイントゲッター対決、日体大荏原の副将平山才稀が左、畳に残る中村が右組みのケンカ四つ。日体大荏原としては、グリーンと中村による、どちらに勝負が転ぶかわからない大型の攻撃型同士の対決は出来れば避けたい。ここでどうしても中村を止めてしまいたいところであるが、なんとこの試合は開始早々、疲労困憊かと思われた中村が迫力の右大内刈「技有」を得て先制。このまま試合が終われば中村が3人抜き、日体大荏原としては3人差のリードを追いつかれるという緊急事態である。

しかしここは平山が一発で事態を収拾。49秒に得意の左小外掛一閃、中村の巨体を捕まえて鮮やか「一本」。日体大荏原、熱戦を制してベスト4入り決定である。

取って、取られて、取り返して。決して手堅い試合ではなかったが、このステージまで来ればなにより大事なのは勝利それ自体。日体大荏原、前日決勝まで戦ったグリーンを1試合も使わぬままのベスト4入りは見事。

結果決まった準決勝カードは、下記2試合となった。「四つ角」シードがそのまま生き残った形である。

国士舘高(東京) - 作陽高(岡山)
大牟田高(福岡) - 日体大荏原高(東京)

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