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大牟田が大苦戦も埼玉栄を振り切る、ベストバウトはCブロックの大成vs天理・第41回全国高等学校柔道選手権男子団体戦レポート②二回戦

(2019年4月2日)

※ eJudoメルマガ版4月2日掲載記事より転載・編集しています。
大牟田が大苦戦も埼玉栄を振り切る、ベストバウトはCブロックの大成vs天理
第41回全国高等学校柔道選手権男子団体戦レポート②二回戦
取材・文:古田英毅/eJudo編集部
撮影:乾晋也/辺見真也/eJudo編集部

→[参考]男子団体戦全試合対戦詳細

二回戦からはいよいよシード校が登場。実力的には確かなチームばかりだが、斉藤立の負傷を抱える国士館、前日の個人戦で大黒柱の森健心が早期敗退を喫して自信揺らぎかねない情勢の大牟田、前日高橋翼が無差別を制して意気揚がるも4番手以降の戦力に不安ありの作陽と、ディティールは異なるがそれぞれに克服すべき事情あり。上位対戦に向けてターボを掛けるには、この日この現場で、これまでにはなかった「足し算」要素が必要という点はどのチームも共通である。どのような形でそれは現れるのか、周辺戦力の活躍なのかエース級の奮闘か。その立ち上がりに注目が集まる。

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第1シードの国士舘が畳に姿を現す

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国士舘の次鋒岡田陸が大内刈で突進、刈り足を小内刈に戻して吉野天成から「技有」をもぎ取る

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岡田陸が猪熊友海から大外刈「一本」

【Aブロック】
シード校:国士館高(東京)、桐蔭学園高(神奈川)

2回戦第1試合は、第1シードの国士舘が登場。九州ブロックの強豪延岡学園を畳に迎えて敷いた布陣は先鋒から鈴木郷生、岡田陸、長谷川碧、藤永龍太郎、斉藤立。出来得れば負傷の斉藤を使わずに優勝まで走り抜けたい中でレギュラーの道下新大を取り置いたわけだが、ここで読み解くべきメッセージは「道下取り置き」ではなく、「鈴木と岡田の同時起用」。岩渕公一監督がこの大会にあたって毎年力説する「前半戦で働く抜き役が必要」「こちらの予想以上の活躍をする選手が必要」という項に嵌るものを発掘すべく、5番手を争う2枚を同時に突っ込んだと解釈すべきだろう。

国士舘高(東京)○二人残し△延岡学園高(宮崎)
(先)鈴木郷生×引分×小川剛生(先)
(次)岡田陸○優勢[技有・小内刈]△吉野天成(次)
(次)岡田陸○大外刈(2:36)△猪熊友海(中)
(次)岡田陸△優勢[僅差]○中西隆翔(副)
(中)長谷川碧○内股(2:03)△中西隆翔(副)
(中)長谷川碧×引分×戸髙淳之介(大)
(副)藤永龍太郎
(大)斉藤立

一方の延岡学園は対格上戦の王道に則り、先鋒に小川剛生を突っ込むという攻撃的布陣を敷いた。先鋒戦はその小川と斬り込み役を担った国士舘・鈴木郷生がマッチアップ、ともに片手の咎による「指導」を失ったのみでこの試合は引き分けに終わる。

次鋒対決は岡田陸、そしてこの世代の全国中学校柔道大会73kg級王者吉野天成ともに右組みの相四つ。岡田は引き手で襟を掴んで寄せては、右大内刈で攻める。吉野がこれをなんとか耐えて試合を最終盤まで持ち込むが、この技が効いていると自信を得た岡田は大内刈を突っ込むと右内股に連絡。吉野が脚を揚げて耐えると刈り足を切り返して右小内刈一撃、残った片足を根本から刈り取られた吉野たまらずひっくり返り「技有」。直後試合終了がコールされ、岡田が優勢勝ちを果たす。

第3試合は岡田が右、猪熊友海が左組みのケンカ四つ。猪熊は左小外掛で思い切った攻めを見せるが、試合が進むにつれて岡田がじわりと試合の流れを引き寄せる。2分36秒、右大外刈を見事に決めて「一本」。岡田はこれで2人抜き達成、国士舘は素晴らしい出だし。

岡田は3人目の中西隆翔を相手にも大内刈に内股、左右の一本背負投でしぶとく絡みつく。試合は立っては一本背負投に内股、寝ては横三角と間断なく攻めた中西が「指導2」を得て勝利となったが、岡田は最後まで畳に立ってあくまで「指導」奪回を狙って奮闘。後衛に襷を繋ぎ、チームの雰囲気は決して悪しからず。

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国士舘の中堅長谷川碧が延岡学園の副将中西隆翔から内股「一本」

第4試合は国士舘の中堅長谷川碧が出動。得意の左内股で畳に残った中西を宙に舞わすが、これを投げ損なうと以後は引き手争いに嵌って一時減速。しかし自身も内股透を狙って中西の陣地を徐々に下げると、2分3秒作用足を差し入れるなり突っ込むように左内股。中西鋭角に畳に落下「一本」。

長谷川、続く試合は延岡学園の大将戸髙淳之介とマッチアップ。この試合は左相四つ、序盤戸高の側に「取り組まない」咎による「指導」1つが与えられ、以後も長谷川の圧が良く掛かって戸高が耐える絵が続く。しかし戸高が小内刈で打開して前に出始めると、長谷川少々動揺の気配。相変わらず圧はかかるが煮え切らない印象、最終盤に作用足を先に突っ込んでの左内股に出るが、一瞬浮いた戸高がそのまま両足で着地し技はここで終息。この試合はそのまま引き分けに終わり、国士舘がスコア二人残しで勝利を決めた。

長谷川の1勝1分けというソツのない仕事と裏腹の自信なさげな挙動など不安がないではないが、岡田の2人抜きと1試合フルタイムの奮闘という好材料もあり。国士舘はまずまずの出だしであった。一方の延岡学園は吉野、戸高と全国中学大会の覇者2人に小川、猪熊の全国少年大会団体戦優勝メンバー2人を揃える豪華布陣であったが、ベスト16に終わった全九州新人大会に続いてインパクトのある成績を残せず。第1シードの国士舘が相手とはいえ爪痕を残せなかったことは少々残念。夏に向けて奮起を期待したい。

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先鋒戦、四日市中央工の柿市寛太が東海大諏訪・吉池優樹から送襟絞「一本」。

3回戦における国士館への挑戦権を争う第2試合では東海大諏訪高(長野)と四日市中央工高(三重)がマッチアップ。前戦で弓矢健輔が獅子奮迅の活躍を見せた四日市中央工はこの試合も先鋒柿市寛太が1人抜き1分けと順調なスタートを切ったが、ここから東海大諏訪が激しく抵抗。四日市中央工は次鋒伊藤栄都1勝も小澤志賀に抜き返され、中堅小椋隆太朗が畳に残った小澤を抜くも大将上條宝来に隅落「一本」で抜き返されるという一進一退。最後は副将弓矢が前戦に続いて登場、畳に残った上條に大内刈「一本」で引導を渡し、4勝2敗1分けのスコア二人残しで勝利を決めた。

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中堅同士の対戦、町方昂暉が西岡輝の払巻込を耐える

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副将同士の対戦、桐蔭学園の中野智博が阿波・堀田孝起から小外掛「技有」

桐蔭学園高(神奈川)○二人残し△阿波高(徳島)
(先)山本成寿×引分×大美浪海晟(先)
(次)持田龍己○優勢[技有]△横田貴也(次)
(次)持田龍己△払腰(2:40)○西岡輝(中)
(中)町方昂暉×引分×西岡輝(中)
(副)中野智博○小外掛(1:08)△堀田孝起(副)
(副)中野智博○合技[内股・袈裟固](2:34)△大瀧隆介(大)
(大)安藤健志

前代から戦力を大きく落とし、招待試合シリーズでも苦戦が続いた桐蔭学園であるが、神奈川県予選における東海大相模戦の勝利をもって今大会はシード校入り。組み合わせにも恵まれ、べスト8入りを目指してのこれが今大会初戦である。66kg級県代表佐々木光太朗をこの試合はベンチに下げ、山本成寿と1年生持田龍己を起用しての布陣。

先鋒戦は引き分け。次鋒戦は今大会抜擢を受けた形の持田が「技有」優勢で横田貴也を抜いて桐蔭学園が先制も、続く第3試合は西岡輝が持田を払腰「一本」に仕留めてスコアはタイ。

迎えた中堅同士の戦いは桐蔭学園・町方昂暉と畳に残った西岡ともに右組みの相四つ。大型選手同士のこの戦いはがっぷり四つに組んでの膠着となる。町方何度か弱気を見せて掛け潰れてしまうが、連戦の西岡はこれに付き合ってしまいチャンスに繋げられず。そのままこの試合は引き分けとなった。

展開次第では最後まで揉める可能性があったカードであるが、阿波サイドがこの引き分けを受け入れたことが勝負の分かれ目になったという印象。第5試合の副将対決は桐蔭学園のエース中野智博がケンカ四つの堀田孝起を相手に淡々と試合を進め、脇を差しての左小外掛で引き落とすように叩きつけ1分8秒「一本」。続く大将大瀧隆介もまったく相手にせず左内股から袈裟固に繋いで合技「一本」。桐蔭学園が大将安藤健志の出動ないまま、スコア二人残しでしっかり3回戦進出を決めた。中野が2人抜きで大黒柱の働き、持田が1人を抜いたあと敗れはしたが、中野と安藤のポイントゲッター2枚以外の、それも1年生が全国大会で白星を挙げたということでチームとしては決して悪くないスタートである。

桐蔭学園への挑戦権を争う第4試合はつくば秀英高(茨城)が青森北高(青森)に快勝。先鋒窪田魅空斗が神成有慧を小外刈「一本」、続いて小川快都を裏投「一本」と2人抜き。3人抜きに挑んだ試合では青森北の中堅米田拳斗に縦四方固「一本」で敗れたが、ここで前戦出番のなかったエース旭征哉が登場。米田を「技有」優勢で抜き、副将中村朝陽と引き分けて盤石の退場。最後は中堅小林煕海が大将亀田慎太郎と引き分け、スコア二人残しで3回戦進出を決めた。

[Aブロック2回戦]
国士舘高(東京)○二人残し△延岡学園高(宮崎)
四日市中央工高(三重)○二人残し△東海大諏訪高(長野)
桐蔭学園高(神奈川)○二人残し△阿波高(徳島)
つくば秀英高(茨城)○二人残し△青森北高(青森)

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次鋒同士の第3試合、作陽の榎本開斗が加藤学園・宇佐美一誠から袖釣込腰「技有」

【Bブロック】
シード校:作陽高(岡山)、木更津総合高(千葉)

作陽高(岡山)○二人残し△加藤学園高(静岡)
(先)佐藤良平○優勢[技有・内巻込]△津村亮磨(先)
(先)佐藤良平△優勢[僅差]○宇佐美一誠(次)
(次)榎本開斗○優勢[技有・袖釣込腰]△宇佐美一誠(次)
(次)榎本開斗△優勢[技有・払巻込]○小田春樹(中)
(中)嵐大地○反則(2:38)△小田春樹(中)
(中)嵐大地○小外掛(1:25)△渡辺樹希(副)
(中)嵐大地×引分×深井大雅(大)
(副)丸鳩紹雲
(大)髙橋翼

シード校作陽が登場。挑むは1回戦の大激戦を制した加藤学園だ。
作陽は負傷のため冬季シリーズまでを欠場していた1年生佐藤良平を先鋒に起用。佐藤は右相四つの津村亮磨を相手にしぶとく小内刈と担ぎ技で攻め、「指導1」リードの2分13秒には組み際に右内巻込を決めて「技有」。そのまま試合を終えてチームに先制点をもたらす。

続いて佐藤が畳に迎えるは、身長179センチの宇佐美一誠。短躯の佐藤はケンカ四つの長身宇佐美を攻めあぐねる。序盤に肘抜きの右背負投を返され掛かると以後は徐々に減速、逆に宇佐美は伸びやかな左内股を度々見せ、佐藤には2つの「指導」が累積。宇佐美が技の切れ味で佐藤を圧したまま試合は終了し、あっという間にスコアはタイに戻った。川野一道監督はベンチに戻った佐藤に「何が怖いんだ!?」と猛烈な激。

しかし漂い始めた危うい雰囲気を次鋒榎本開斗が払拭。開始12秒、宇佐美に左袖釣込腰を叩き込み先制の「技有」。以後宇佐美は組み際の大内刈で大きく榎本を崩すなどセンスある攻めを見せたが、榎本は片襟の左背負投に右袖釣込腰、組み際の左大内刈としぶとく技を仕掛けて畳上を泥沼化。このまま試合は終わり、榎本の「技有」優勢で作陽が再び1人差をリード。

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加藤学園の中堅小田春樹が榎本開斗から払巻込「技有」、スコアをタイに戻す

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副将同士の対決は嵐大地が渡辺樹希を圧倒

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嵐が加藤学園のエース深井大雅を引き分けで止め、試合終了。

しかしここで加藤学園のダイナモ小田春樹がしっかり仕事。線の細い榎本に自身の太い腰と高い機動力が噛み合うことを十分理解している模様で、左釣り手で奥襟を叩いて頭を下げさせては前進。22秒榎本に「極端な防御姿勢」で「指導」。榎本は組み負けると大内刈で脱出することを続けるが小田徐々にこれにも慣れ、1分0秒組み勝って十分呼吸を整え、左払巻込一撃「技有」。
それでも榎本の仕事はここから。希望の持ちにくい状況ではあるがしぶとく以後の2分を戦い切り、フルタイム畳に居残って退場。この襷を受けた中堅嵐大地は消耗した小田を組み手と先手を打っての大技で崩し続け、2分9秒消極的の「指導1」、1分57秒偽装攻撃の「指導2」と次々反則をもぎ取る。最後は残り22秒、飛び込みの左内股で打開を期した小田がそのまま両手を離して這いつくばってしまい、偽装攻撃の「指導3」で終戦。抜いて、抜かれて、また抜いて、ここで作陽が再び1人差をリード。

嵐は続く副将渡辺樹希との第4試合でもしっかり仕事。加古裕慈のダイレクト反則負けによる出場資格喪失を受けて起用された小兵・渡辺樹希が良く動くとみるや、まず膝裏に足先を入れて捕まえてから滑り下ろす二段の出足払で冷静に獲りに掛かる。渡辺動きを止めずに鋭い左一本背負投を見せるが、1分25秒、嵐はまず右払腰で相手を捕まえ、左小外掛に連絡してしっかり「一本」。

2人差リードを得たこの時点で試合はほぼ終戦。加藤学園はエース深井大雅が畳に上がるが、大型を凌ぐ経験豊かな嵐を前に詰め切れず。中盤には両襟の大内刈で嵐を伏せさせ、残り12秒には試合終了を意識して受けに回った嵐を転がしてあるいはポイントという大内刈を見せたが、三審いずれも手が挙がらぬまま試合終了。この試合は引き分けとなり、作陽が3回戦進出を決めた。

作陽は形上2敗を喫して決して楽な試合ではなかったが、どのチームが相手でも接戦になるのはこのチームの特徴。榎本がしっかり繋ぎ、嵐が3人を相手にする活躍を見せたこの試合は、決して厚いわけではない戦力と、実は佐藤、榎本らとタイプ噛み合わぬ加藤学園が相手ということを考えればむしろ上出来であったと思われる。

一方の加藤学園。2回戦敗退も、1年生中心のチームが、それも初戦の第1試合で東京代表の東海大高輪台を破っての勝利は見事。現状深井という軸に周囲が生かされている形であるが、1年生の中にエースとして一本立ち出来る選手が現れれば来年度は非常に面白い。まずは夏の戦いに期待だ。

その作陽への挑戦権を争う第2試合は長崎南山高(長崎)が、奈良の第二代表(※昨年度決勝進出県への出場枠付与による)五條高に二人残しで勝利。先鋒江藤蓮が3人抜き、副将村井一輝には隅落「一本」で敗れたが、以降2戦を引き分けて危なげのない試合だった。

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飯田空翔が大橋洸俊を攻め込む

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中堅対決、北條嘉人は無理をし過ぎず寺島悠太としっかり引き分け

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稲邉嵩斗が尾古礼夢を攻める

木更津総合高(千葉)○二人残し△津幡高(石川)
(先)織茂峻伍×引分×伊藤達志(先)
(次)飯田空翔○優勢[技有・背負投]△大橋洸俊(次)
(次)飯田空翔△優勢[僅差]○寺島悠太(中)
(中)北條嘉人×引分×寺島悠太(中)
(副)稲邉嵩斗○優勢[技有]△尾古礼夢(副)
(副)稲邉嵩斗○内股(1:14)△川崎弘斗(大)
(大)金澤聡瑠

シード校木更津総合が登場。初戦の引き分けを受けた次鋒同士の対決は飯田空翔が左、大橋洸俊が右組みのケンカ四つ。序盤に飯田が左内股の掛け潰れから左背負投に連絡して「技有」を獲得、以降も優位を保ったまま試合を終えてまず木更津総合が1人差をリード。

ここで津幡の中堅に配されたエース寺島悠太が登場、疲れの残る飯田を激しく攻める。中盤に寺島の右袖釣込腰が関節を極めた形ではないかとの合議が招集されるが、これは確認の結果ノーペナルティ。試合結果は「指導2」を得た寺島の僅差優勢勝ちも、飯田が良く頑張って相手を消耗させたという試合であった。

この飯田の粘りを受け、木更津総合は招待試合シリーズでエースを張った北條嘉人が畳に上がる。同シリーズでは脇を差しての一発勝負が多かった北條だが、ここでは前襟を持っての軽量級らしい丁寧な柔道を志向。危ない場面では無理をせずに巴投で寝技に引き込み、決して相手にスクランブルを掛ける機会を作らせない。寺島の右内股に北條が内股透を狙う、双方にポイントが想起されるきわどい攻防があったものの、ほかに大きな山場がないまま試合が終了。この試合は引き分けとなった。

形的にはタイで迎えた終盤戦であるが、ここからチーム力の差がスコアに反映されていくこととなる。エース寺島を消費した津幡の前に木更津総合の副将稲邉嵩斗が立ちふさがり、尾古礼夢を「技有」優勢、川崎弘斗を内股「一本」と2人を抜き去って試合終了。木更津総合がスコア二人残しでぶじ3回戦進出を決めた。

木更津総合はチームとして一段成熟した印象。これまでのキーマンであった北條は前述の通り、その個性であったリスク覚悟の一発勝負を封印して後衛に試合を託す道を選んだ。前日の個人無差別でも3位に入った金澤聡瑠が逞しくなり、金澤への信頼感が増したことで軽量選手本来の役割にきちんと収まったという印象。飯田の「消耗させることが仕事」と言わんばかりの粘り強い仕事ぶりといい、チーム総体の完成度が上がったと感じさせる一番であった。

続く第4試合は沖縄尚学高(沖縄)が高松商高(香川)を圧倒。先鋒三浦大樹が2人抜き1分け、次鋒金澤嘉生が1人を抜き、この時点で大将を「欠」で戦った高松商の戦力が尽きた。スコア四人残しという圧勝であった。

[Bブロック2回戦]
作陽高(岡山)○二人残し△加藤学園高(静岡)
長崎南山高(長崎)○二人残し△五條高(奈良)
木更津総合高(千葉)○二人残し△津幡高(石川)
沖縄尚学高(沖縄)○四人残し△高松商高(香川)

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埼玉栄の先鋒本弾が大牟田の次鋒久保田皓晴から背負投「技有」。大牟田は2連敗、埼玉栄はリードを2人差に広げる。

【Cブロック】

シード校:大牟田高(福岡)、崇徳高(広島)

注目の大牟田が2回戦第1試合に登場。スターティングは先鋒から廣吉弘樹、久保田皓晴、服部大喜、竹市大祐、森健心。6番手の廣吉を先鋒に入れてまず大会をスタート、後衛を竹市と森の大黒柱2枚で固めるという布陣である。注目ポイントは、優勝候補として新シーズンを圧勝して来たチームが、ついに迎えた全国の舞台で平常心を保って力を発揮し得るかどうか。選手個々の観察ポイントとしては、前日個人戦81kg級に優勝して5試合を戦い切ったばかりの竹市大祐の疲労いかばかりか、さらに個人無差別で早期敗退を喫し懸案の「大型相手の真っ向勝負」に課題を露呈した森が自信をもって試合に臨めるかというところ。畳に迎えるは埼玉栄高(埼玉)である。

大牟田高(福岡)○一人残し△埼玉栄高(埼玉)
(先)廣吉弘樹△大内返(1:00)○松本弾(先)
(次)久保田皓晴△優勢[技有・背負投]○松本弾(先)
(中)服部大喜○縦四方固(0:48)△松本弾(先)
(中)服部大喜×引分×松崎渡(次)
(副)竹市大祐○反則[指導3](2:22)△桝井秀翔(中)
(副)竹市大祐×引分×田川聖(副)
(大)森健心○優勢[技有・裏投]△山野井爽(大)

この出だしを測るはずの一番が大変なことになった。埼玉栄は一発のある松本弾を先鋒に、そしてもっとも信頼できる無差別代表・山野井爽を大将に据えてやる気満々の布陣。大牟田の先鋒廣吉弘樹はその松本の吶喊攻撃に備えがなく、大内刈を返される形でほとんど裏投と言っていい勢いで畳に沈む。開始僅か1分、この上なく豪快な「一本」でV候補大牟田の全国大会初戦は黒星からスタート。会場は、どよめき。

その衝撃収まらぬ第2試合、試合をまとめようとしたか手を突っ張った大牟田の次鋒久保田皓晴にまず「指導1」が与えられ、そして勢いに乗る松本は体の固まった久保田を「韓国背負い」で捕まえ、場外際で畳に押し込んでなんと「技有」獲得。完全なる埼玉栄ペースである。事態の深刻さを感じた久保田が前に出るがもはや松本はリスクを冒さず、消極の「指導」1つを失ったのみで3分間を戦い切る。「技有」優勢による松本の勝利でこの試合は終了、埼玉栄は実に2人差をリード。大牟田はこの時点でいまだ未勝利である。

ここが、大牟田の前に横たわる「仮想シナリオ」がこの日もっとも悪い方向に振れた時間帯だ。優勝候補に挙がる地方チームが、それもこの代初めて迎える全国大会の初戦となれば硬くなることまでは当然。そこに第1試合の先鋒に6番手を起用するという「探り」のオーダーで入ったところが眦決してやって来た相手に一撃を食って失点、動揺収まらぬままなんと2点目まで失うというまさに最悪の展開である。この「悪い方向」のベクトルで以後を考えると、想起されるネガティブ要素は実は結構なボリューム。この手の不測の事態にあって最も頼りになる竹市は前日5試合をこなしておそらく疲労困憊、ただでさえ軽量選手が大型を追いかける展開は厳しい中、しかも竹市は攻めに手数が掛かる、燃料を食うタイプで残存体力の有無が結果に直結してしまうはず。さらに大物として前評判高い業師・森は前日大型に対する手立てのなさを見せつけてしまっており、守る大型を「取る」ことを前提とした場合でどこまで働けるかは未知数。しかも試合時間は守る側に徹底的に有利な3分である。とにかくこのままビハインドで後衛2枚に繋ぐことだけは避けねばならない。大量ビハインドを竹市と森が追い掛ける展開で「意外に取れない」時間帯が続けば、大牟田を浸食する精神的なダメージは1秒ごとに増大するはず。そのまま戦線が崩壊する可能性がある。

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大牟田は服部大喜が松本弾から縦四方固「一本」、ここから逆襲を開始。

続く第3試合の畳に上がるのは中堅服部大喜。頭の中にこの「最悪シナリオ」がよぎって委縮してしまうことがもっとも良くないスパイラルだが、服部は冷静だった。前に出て圧力を呉れると、苦しくなった松本が仕掛けた右一本背負投を潰して送襟絞に移行。この技を晒しておいて下半身でひと芸、相手の胴体を回しながら、相手の両脚を脚でまとめる「脚三角」に捉える。招待試合シリーズでも頻繁に見せていたこの技術に松本ついていけずあっという間に縦四方固の形が完成。服部は相手の上体に高く乗り込み、手を畳に着いてバランスをとる国士舘式で20秒を抑え切って盤石の「一本」。試合時間は僅か48秒、大牟田がようやく反撃の狼煙をあげた。埼玉栄はここで引き分けて良い流れを固着させてしまいたかったところだが、「取って取られて」のステージに試合を引き戻された印象。

続く第4試合は畳に残った服部大喜と埼玉栄の次鋒松崎渡、いずれも譲らず引き分け。形上は埼玉栄の1人差リード継続だが、この引き分けで流れは「追いかける大牟田」というベクトルで固定された。これまでは優勝候補の看板を背負って相手を受けて立つ大牟田に、失うものはなしと挑みかかる埼玉栄という構図だったわけだが、ここで攻守の立場が入れ替わってしまった印象。

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1人を抜いた竹市大祐が攻めまくるが、田川聖を投げ切れずこの試合は引き分け。勝負の行方は大将同士の対決へと持ち込まれる。

勝負は常に、攻める側、挑む側に流れるもの。ここで登場した副将竹市大祐は桝井秀翔を相手に淡々、そして弾幕濃く攻めを続ける。2分22秒、桝井に消極的との咎で「指導3」が与えられてこの試合はあっさり決着。竹市の勝利で、5戦を消化したこの時点でついにスコアがタイに戻る。

副将同士の対決は畳に残った竹市に田川聖がマッチアップ。田川は体重115キロ、当然ながら圧力志向で軽量の竹市を潰しに掛かる。竹市1度は潰れるがなんとか持ち直し、必死の進退。しかし深く入り込んだ右一本背負投は走り切れず、疲労が隠せない。田川のほうも具体的な攻略の手立てに欠け、戦いの方針まとまらないまま3分を消費してしまってこの試合は引き分け。タイスコアのまま、勝負は大将同士の対決に持ち込まれることとなった。

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大将対決、森健心は左相四つの山野井爽の袖を絞ることに腐心

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手が詰まった山野井が片手の袖釣込腰に掛け潰れ、偽装攻撃の「指導」

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森が山野井の左大外刈を待ち構えて返し、裏投「技有」

大将戦は森健心、山野井爽ともに左組みの相四つ。山野井奥襟を叩いて横変形に構えるが、森はいったん両手でこれをずらし、半端な攻めは要らないとばかりにとにかく相手の釣り手を切って一方的に袖を絞ることに注力する。山野井は展開がリセットされると思い切った左大外刈を仕掛けて会場を沸かすが、森は不気味なほどに自らの仕掛けを控え、またもや袖を殺して引き手を抱き込むことに全てのリソースを傾ける。一方的な形が出来上がると引きずって圧を掛け、釣り手を振り立てて相手を威嚇。まったく釣り手を持てない山野井は当然技が出なくなり、ここで消極的の咎による「指導」。

徹底的に組み手にこだわる森の戦い方はこの後も変わらず。山野井は手順進行の間隙をぬって左大外刈に左大内刈と攻めるがいざ一方的に持たれるともはやまったく仕掛けることができない。山野井がならばと仕掛けた片手の右袖釣込腰の掛け潰れを審判見逃さず、少々厳しい判定で偽装攻撃の「指導2」。

怒気を発した山野井は突進、釣り手で奥襟を叩くと森は横落でさらりとかわし、山野井がつんのめって畳に突っ込み「待て」。次いで山野井が抱きつくと森迷わず切り離し、しかし続いて襲った奥襟をあっさり抜けてしまうミスを犯して首抜きの「指導」を貰う。累積反則は森が「1」、山野井が「2」。

それでも森はあくまで封殺狙い、両袖の大外刈を放って手堅い進退。ここで山野井が膠着を壊しに掛かり、一本背負投の形に腕を抱えた左大外刈に打って出る。しかし待ち構えた森が抱きとめて裏投で投げ捨て、決定的な「技有」確保。森はそのまま片手絞に移って寝技を展開し、山野井に再度の勝負の機会を与えないままタイムアップ。森の「技有」優勢で熱戦7試合が決着、大牟田がスコア一人残しで勝負を決め、なんとか3回戦に駒を進めることとなった。

埼玉栄は大善戦。裏投に「韓国背負い」と力関係を覆す型の一発を持った曲者・松本を先鋒に突っ込み、気持ちが守りに入った大牟田の前衛から2点を連取。優勝候補を土俵際まで押し込んだ。展望記事で「格上相手の試合に難あり」との旨書かせて頂いたのだが、不明を恥じる次第である。堂々たる試合であった。

ただし、勝てた試合を勝ち切れず金星を逃がした一番でもある。分水嶺である第3試合を、それもここで明らかに服部がやってくるであろう「脚三角」で、しかも短時間で落としたことがまず痛かった。前者は常のやり口で点を得させたこと、後者はスコア優位の時間帯を長く続けられなかったこと。この段階で大牟田はまだ全国大会での得点がゼロであり、時間が経てば経つほど疑心暗鬼が広がる状況であったはずなのだ。そこで圧に屈して掛け潰れ、張られた罠に屈するという服部のシナリオ通りの試合進行。大牟田チームに「落ち着いていつもの通りに戦えば大丈夫」とのメッセージを与えてしまった負け方なのではないだろうか。そしてこの、まず回して空中で脚を捉える縦四方固が服部の十八番であり、事前研究が効く技術であったことも勿体ない。しっかり防いで「やはり全国大会は違うんだ」ともう一段精神的な圧を掛けられるチャンスでもあったはずだ。

次に田川が竹市に序盤しっかり圧を掛けながら、方針を定めきれずに一種あっさり引き分けを受け入れたこと。試合開始時にチームが一丸として持っていた、そして松本の一撃に結実した「失うものはない、攻めなければならない」という決意の減退が感じられた一番であり、格上を倒すに最も必要なリスクを怖れぬ勇気がもう一段必要な場面だった。後衛に控える森と山野井のタイ勝負に賭けたくなる気持ちはわかるが、格上相手の試合は「試合を壊さない」理詰めの順行運転だけでは乗り越えられない。攻めまくることで格上を嫌気させる大物食いのセオリーを放棄したこの時点で、埼玉栄はいつの間にか自らを挑むものではなく守る立場として規定しまっていた。たとえ引き分けても、「栄は乗っている」と大牟田をひるませた上で襷を渡すべき試合であったはずだ。大健闘、しかし惜しい一番であった。

大牟田のほうも決して褒められた試合ではないが、見えたもの多き試合でもある。のちに取材したところによると、この試合のオーダーは選手同士が話し合って決めたものであるとのことだが、この厳しい全国大会の初戦に6番手から入る、この、勝ち上がりの計算という意味でもチームの和という観点からも「全体を見通し過ぎた」オーダーの甘さが苦戦の因。ここで負けてしまってもまったくおかしくない展開だった。ただし、それでも勝ち切ったことは見事。竹市の「これが当たり前」とでも言わんばかりの身を粉にした働きには、なるほど、自分たちが決めたオーダーゆえの責任感の高さがよく見てとれた。自分たちのオーダーミスを、自分たちで決めたがゆえにしっかり回収する。今代大牟田チームの個性が見えた試合であったのではないだろうか。

観察ポイントであった竹市と森についてこの時点での評も付したい。竹市はやはり疲労明らか。普通に考えれば、なるべく使わず、準決勝、決勝という勝負どころにリソースを残すしかない状況に見受けられた。

森の評価は表裏の2面。前日金澤聡瑠(木更津総合高)の圧力に技術を塗りつぶされた森が採った手立ては、前述の通り、徹底した釣り手の絞り落とし。一方的に組み勝つ場面以外は、技を仕掛けないどころかそもそも駆け引き自体を拒否して、徹底して「負けない」「自分だけが柔道を出来る」場面の創出にこだわった。この挙に対しては、大将同士の対決という絶対に負けられない状況で冷静にやるべきことを選択し、しっかり結果を残したという好評価がまずひとつ。チームを引っ張るリーダーとして、まさかの初戦出動という緊急事態をしっかり収めたクレバーさが光った。

ただし、前日の敗退を受けて「この選手は自分に何を課し、どのような行動に出るか」という森個人と大牟田チームのポテンシャルの計測という観点からは少々物足りなさも感じた。組み手を絞りに絞って、何もさせてもらえず焦れた相手に後の先を狙うというあまりにも手堅い戦い方は、「大牟田は絶対的戦力の国士舘を崩せるのではないか」、「実力以上の『何か』を起こしてくれるのではないか」という期待感、この先に抱かせる「夢」にまで応えてくれるものではなかった。それもこれも大牟田も前評判の高さ、関係者による森の評価の良さゆえの贅沢な視点なのだが、出来ればここでこちらが思っている以上に自らの力を高く買う意識の高さ、底知れなさ。単なる戦力分析を超える伸びしろを感じさせて欲しかった。

ただし、大牟田はやはり強い。2人差をリードしたこの状況で埼玉栄を乗らせなかったのは、組み合って感じられるであろう個々の、そして並べてみてわかる総体としての圧倒的な地力の高さ。おそらく立ち直るであろう次戦以降の戦いに注目である。

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中堅同士の対決、大成の竹村虎之が天理・井上直弥から払巻込「技有」

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第5試合、天理の副将佐藤輝斗が畳に残った竹村虎之を大内刈で攻めこむ

大成高(愛知)○代表戦△天理高(奈良)
(先)三浦啓瑚○反則(2:48)△鈴木太陽(先)
(先)三浦啓瑚△肩車(0:56)○小原龍太郎(次)
(次)小林大輝×引分×小原龍太郎(次)
(中)竹村虎之○優勢[技有]△井上直弥(中)
(中)竹村虎之△優勢[僅差]○佐藤輝斗(副)
(副)大竹龍之助○大外刈(2:22)△佐藤輝斗(副)
(副)大竹龍之助△反則(1:34)○池田凱翔(大)
(大)佐々木健翔×引分×池田凱翔(大)
(代)大竹龍之助○合技(1:49)△鈴木太陽(代)

2回戦のベストバウト。名門校同士による壮絶な撃ち合いであった。のっけから三浦啓瑚と天理の1年生ポイントゲッター鈴木太陽という好カードであったが、ここは三浦が競り合いの末に「指導3」を先に得て勝ち抜け。しかし天理は次鋒小原龍太郎が肩車「技有」で抜き返し、続く第3試合は大成・小林大輝と引き分けて退場。ここまででスコアはタイ。

分水嶺になり得る第4試合は大成・竹村虎之が右相四つの巨漢、天理のポイントゲッター井上直弥から残り20秒に執念の払巻込「技有」奪取。そのまま試合を終えて大成が初めてリードを得るが、続く第5試合は天理の副将佐藤輝斗が序盤の34秒に「指導」を得ると粘り強い攻めで終盤「指導2」も得て僅差の優勢勝ち。抜いて抜かれてを繰り返してここまで5戦を消化、再びスコアはタイに戻る。

副将同士の対戦は大成のポイントゲッター大竹龍之介が躍動。右相四つの佐藤から「指導」を得ると1分33秒には大外刈で叩き落とし「技有」先制。これは映像チェックの結果取り消しとなったが、2分22秒再び大外刈に飛び込み「一本」。抜きつ抜かれつの激戦に武道館が揺れる。この大詰めで、大成がまことに大きな1人差リード。

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大将対決、天理の池田凱翔が佐々木健翔から小内刈「技有」先制

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佐々木は小外刈「技有」を奪い返してこの試合を引き分けに持ち込む

そして天理は前代の全国制覇をレギュラーとして支えた大将池田凱翔が畳に上がる。このエース対決は池田が右大外刈に片襟の背負投と唸る勢いで攻め続け、大竹には36秒、53秒と次々「指導」が累積。直後の2分7秒には池田が得意の右背負投を決めて決定的な「技有」奪取。それでも矛を収める気配なく池田は猛攻、1分34秒に大竹に3つ目の「指導」が宣告されて試合が終わった。池田の「指導3」による勝利で、試合は大将同士の対決へともつれ込む。

大将対決は大成・佐々木健翔、天理・池田凱翔ともに右組みの相四つ。佐々木が右内股を呉れると池田が透かし、1分0秒には得意の小内刈を叩き込んで「技有」先制。しかし佐々木はビハインドに挫けず、壮絶な攻め合いの末に1分37秒右小外刈で池田を転がし「技有」を奪回。以後も双方相譲らぬ攻め合いが続く。残り34秒、池田が右袖釣込腰から思い切りよく右大内刈に繋ぎ、佐々木大きく崩れるもポイントに至らず「待て」。この攻防を経たところで池田が激しく疲労。大竹に佐々木と続いた大物2人との連戦にはやはりかなりのダメージを強いられた模様。それでもあくまで投げに出るが、残り7秒に放った背負投にはもはや開始時の光なし。この試合は双方「技有」を得ての引き分けに終わり、勝負の行方は代表者1名による決定戦へと持ち込まれる。

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代表戦、大竹龍之介が鈴木太陽の大内刈を返して、豪快「技有」

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大竹が右大腰「技有」を追加

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合技「一本」で熱戦決着、3回戦には大成が進むこととなった。

代表戦は大成が大竹龍之介、天理は消耗し切った池田を下げ、本戦では先鋒を務めた鈴木太陽を送り出す。この試合は大竹と鈴木ともに右組みの相四つ、身長180センチ体重100キロの鈴木が思い切り右大外刈で乗り込むと、大竹は体格差に怖じず腹を出して受け止め思い切った裏投で抱え上げる。あわや「一本」と思われたが鈴木がぎりぎりで手を着き、腹ばいに落下して「待て」。大竹の抱きついての右大内刈は鈴木が呼び込んだまま大内返に切り返し、試合は拮抗。

1分12秒、鈴木が長い足を利してケンケンの大内刈で勝負に出るが、退かずに待ち構えた大竹が胴を抱き抱えて大内返。絡ませた足を高々揚げ、柔道衣に指が食い込むほど握り込んでコントロールを利かせた豪快な一撃見事決まって「技有」。これで決定的なアドバンテージを得た大竹だが以後も鈴木との打ち合いに応じ、1分49秒には得意の右大腰一撃。

腹を出して受けた鈴木が前隅に崩され、大竹の体を乗り越えて外脚を畳に着いて耐えると大竹は軌道を低く切り替えて、軸足の膝を着きながら抱き寄せるようにコントロール。引き手の牽引を効かせたまま体ごと乗り込むと鈴木は肩から落下、「技有」が宣せられて熱戦ここに決着。実に9試合の鍔迫り合いの末に大成が3回戦に進むこととなった。大竹と池田の両エースがよくチームを支えた試合であるが、勝負の分かれ目はなんといっても佐々木が池田に小外刈「技有」で追いすがり、引き分けをもぎ取った一番。前段の第7試合で、大竹が池田に消耗を強いていたことも大きかった。

代表戦に天理が送り込んだ鈴木の一種筋目の良い攻撃柔道が、ノーガードの打ち合いが得意な大竹に噛み合ったことも大成を利した。大型の井上は大竹にはおそらく噛み合わないはずで、かつ池田が消耗し切った中では鈴木投入という策は妥当。となれば、大竹、佐々木と並べて池田を潰した大成の陣形が最終的な勝利を呼び込んだともいえる。

会場には両軍の健闘を称える大拍手。勝った大成、敗れた天理ともに意地を見せた好試合であった。大成は招待試合シリーズで見せた煮え切らない試合とはまったく違う逞しい戦いぶり、今後に期待を抱かせる内容であった。

崇徳高(広島)○一人残し△鹿児島情報高(鹿児島)
(先)毛利允弥×引分×濱田聖良(先)
(次)飯田恒星×引分×栗野且行(次)
(中)徳持英隼×引分×小原健誠(中)
(副)福本佑樹×引分×田中航太(副)
(大)福永夏生○合技[内股・崩袈裟固](1:31)△岩坪龍輝(大)

鹿児島情報が健闘も、しかしエース福永夏生の踏ん張りで崇徳が勝利を収めた。引き分け4つを経て大将同士が対決、エース同士の「個」の戦いがチームの勝敗をそのまま決めるという状況は挑む立場の鹿児島情報にとってはむしろ望むところであり、この試合は岩坪龍輝が大内刈「技有」で先手を取る。会場は沸き、勝機ここに鹿児島情報へと大きく傾く。

対する崇徳・福永は体が固まってしまってもおかしくないところだが、ここはさすが。最小限の組み立てで右内股をねじ込み、1分過ぎに有無を言わせぬ「技有」奪取。そのまま崩袈裟固に抑え込んで逆転の合技「一本」、崇徳がスコア一人残しで勝ち抜けを決めた。滑り出しの試合をなんとかものにした崇徳、次戦以降の立ち直りに期待。

田村高(福島)○二人残し△前橋商高(群馬)
(先)田邉夢叶○背負投(2:01)△君田浩気(先)
(先)田邉夢叶×引分×大川直斗(次)
(次)佐井川陽舜×引分×諸田大河(中)
(中)橋本健太×引分×石原樹(副)
(副)片山雄心○内股(1:29)△髙橋昇大(大)
(大)鈴木直登

田村が地力勝ち。先鋒戦で田邊夢叶が前戦活躍した君田浩気から背負投「一本」で勝利すると、以降はこのリードを背景に手堅く引き分けを積み重ねる。前橋商は前戦の殊勲者石原樹も橋本健太に止められて万事休す。最後は田村の副将片山雄心が内股「一本」で高橋昇大を抜き去り、大将のエース鈴木直登を取り置いたままフィニッシュ。田村は二人残しの快勝で3回戦、崇徳との大一番へと駒を進めることとなった。

[Cブロック2回戦]
大牟田高(福岡)○一人残し△埼玉栄高(埼玉)
大成高(愛知)○代表戦△天理高(奈良)
崇徳高(広島)○一人残し△鹿児島情報高(鹿児島)
田村高(福島)○二人残し△前橋商高(群馬)

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開星は次鋒清水颯真が日体大荏原・山城和也から払巻込「技有」。これで先制点を得る。

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日体大荏原の中堅海堀陽弥が布野大介から内股「一本」、2人抜きで1人差リードを作り出す。

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海堀が田窪成将から大内返「技有」で3人抜き、海堀はこの試合1人で4人を賄う大活躍。

【Dブロック】
シード校:日体大荏原高(東京)、東海大仰星高(大阪)

日体大荏原高(東京)○二人残し△開星高(島根)
(先)藤原秀奨×引分×西垣紫穏(先)
(次)山城和也△優勢[技有]○清水颯真(次)
(中)海堀陽弥○優勢[僅差]△清水颯真(次)
(中)海堀陽弥○内股(2:24)△布野大介(中)
(中)海堀陽弥○優勢[技有・大内返]△田窪成将(副)
(中)海堀陽弥×引分×下田雄太(大)
(副)平山才稀
(大)グリーンカラニ海斗

冬季の日体大荏原躍進の因、1年生海堀陽弥が大活躍。1人差ビハインドで登場すると、畳に残っていた清水颯真を「指導」2つを奪って畳から追い、中堅布野大介には残り36秒で内股「一本」を決めて一本勝ち。ここで日体大荏原はこの試合初めてリードを得ることとなる。
海堀ここに満足せず、副将田窪成将の大内刈を返して「技有」を得て優勢勝ち。どころか前戦で会場を沸かせた開星のエース・下田雄太との試合も引き分けに持ち込んで1人で試合を終わらせてしまう。日体大荏原は斬り込み役の藤原の動きがいまひとつ、襷を受けた山城和也が失点と不安な出だしであったが、海堀の大活躍で全てを収拾した。平山才稀とグリーンカラニ海斗の主戦2人をベンチに座らせたまま3回戦進出決定。

この日体大荏原への挑戦権を争う次戦では、北海高(北海道)が大曲農高(秋田)に快勝。次鋒丸山弘貴が2人抜き1分けで3人を賄い、1敗を経た第6試合では副将竹下徹が相手方の大将佐藤幸也から開始25秒の腕挫十字固「一本」でフィニッシュ。前戦の殊勲者である大将のエース杉本将一朗を休ませ、スコア2人残しで3回戦進出を決めている。

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柏野亮太が古場幸能から上四方固「一本」

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大将対決、東海大仰星はエース中村雄太が井上翔汰朗から大内刈「技有」。このまま抑え込んで合技の一本勝ち。

東海大仰星高(大阪)○一人残し△福井工大福井高(福井)
(先)永竿慶弥○優勢[技有]△五十嵐翔也(先)
(先)永竿慶弥△優勢[技有・小外刈]○古場幸能(次)
(次)柏野亮太○上四方固(3:00)△古場幸能(次)
(次)柏野亮太×引分×冨田赳司(中)
(中)嘉村悦王△優勢[技有・大内刈]○酒井晃輝(副)
(副)本原颯人○優勢[技有・一本背負投]△酒井晃輝(副)
(副)本原颯人△優勢[僅差]○井上翔汰朗(大)
(大)中村雄太○合技[大内刈・横四方固](0:55)△井上翔汰朗(大)

これも会場注目の大一番。福井工大は1人差ビハインドで登場した副将のエース・酒井晃輝が嘉村悦王から1分37秒消極の「指導」を奪い、これで勢いづくと残り54秒に大内刈を決めて「技有」獲得。このポイントをもって優勢勝ちを果たしてスコアをタイに戻す。

酒井はこのまま東海大仰星の本丸である中村雄太まで辿り着きたいところであったが、続く試合では本原颯人がその前に立ちはだかり、40秒に一本背負投で「技有」獲得。酒井はこれを取り返すには至らず、逆に2分8秒には消極の「指導」を失ってしまう。この試合はそのまま本原の「技有」優勢で終了。

福井工大福井は大将井上翔汰朗が奮闘。畳に残った本原が35秒に相手の組み手を叩いて切った咎で「指導」を失うとこれをきっかけに猛攻、1分27秒には場外の「指導2」をもぎ取り、僅差優勢で勝利を果たす。試合の行方は大将同士の対決に委ねられることとなる。

この大将対決は東海大仰星のエース・中村雄太が畳に残った井上を圧倒。38秒に大内刈で「技有」を得るとそのまま横四方固に抑え込んで試合時間55秒、盤石の合技「一本」。4勝全てを異なる選手が挙げたシード校・東海大仰星が総合力の高さと、エース中村の強さをテコに3回戦進出を決めた。

白鴎大足利高(栃木)○代表戦△九州学院高(熊本)
(先)岡崎竜丸×引分×前田豪月(先)
(次)津端洸×引分×濱崎駿(次)
(中)杉之内暁×引分×園田陸斗(中)
(副)矢野治凱△合技(0:33)〇岩永洸輔(副)
(大)澤口宗志〇内股(1:08)△岩永洸輔(副)
(大)澤口宗志×引分×宮本和志(大)
(代)澤口宗志〇裏投(0:24)△岩永洸輔(代)

大激戦は白鴎大足利の勝利に終着。白鴎大足利は前戦同様エースの澤口宗志が大車輪の働き。1人差ビハインドから1勝、さらに前日の個人戦81kg級で3位入賞の宮本和志を引き分けで止める大活躍。迎えた代表戦でもそのまま畳に上がり、岩永洸輔との再戦を24秒裏投「一本」で勝利。1人で3連戦を戦い切り、チームをベスト16へと導いた。

九州学院は惜敗。エース宮本が澤口から取り切れなかったことはもちろん痛かったが、おそらくは宮本の疲労を考慮して採った岩永の再投入という策が裏目に出てしまった。一方の澤口は3連戦でもあくまで強気、これぞエースというべき活躍だった。

[Dブロック2回戦]
日体大荏原高(東京)○二人残し△開星高(島根)
北海高(北海道)○二人残し△大曲農高(秋田)
東海大仰星高(大阪)○一人残し△福井工大福井高(福井)
白鴎大足利高(栃木)○代表戦△九州学院高(熊本)

※ eJudoメルマガ版4月2日掲載記事より転載・編集しています。

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