理合による投技の分類
講道館(及びIJF)では、体のどの部分を主に使って相手を投げるか(手技、腰技、足技)、自分の体をどのように捨てて投げるか(真捨身技、横捨身技)という観点から技を分類している。この分類自体は技の体系を理解するのに非常にすぐれたものであるが、我々は試案として「なぜ相手を投げることができるのか」という理合の観点から全ての投技を以下で説明する4つに分類した。柔道家諸氏が技考察の一助として頂ければ望外の喜びである。
重心技 人は勝手に投げられるわけではない。何らかの物理学的道理があってはじめて人を投げることができる。例えば「背負投」や「大腰」を例にとってみると、この二つの技の形は違うけれども、共通しているのは相手の両足を畳から浮かせて投げているという点である。なぜ相手を浮かせることができるのか? それは、自分の重心(通常、人の重心は丹田(下腹部のへその下の部分)にあると言われる)を相手の重心の下に入れ膝のバネを使うことにより相手を持ち上げているからである。(必ずしも自分の重心が相手の下になくても相手を持ち上げることは不可能ではないが、その場合は非常な力を必要とする。)我々はこのように相手の重心の下に自分の重心を入れ、相手の体を浮かせて投げる技を「重心技」と名づけた。 足狙い技 相手を投げるには、必ずしも重心を入れて相手を浮かせなければならないというわけではない。例えば、「小外刈」や「送足払」を考えてみると、「小外刈」は相手の体重がのっている足を外側から刈る技でり、一方「送足払」は相手が横に移動する瞬間を狙って相手の両足が揃うように払いあげる技である。このような技をかけるには相手の足の動きを把握しコントールすることが重要であり、我々はこのような技を「足狙い技」と名づけた。相手の足は必ずしも自分の足で捉える必要はなく、「朽木倒」や「踵返」のように手で捉えることもできる。 支点技 次に「支釣込足」という技を考えてみる。一見すると、相手の足元を捉えているという点から、これも「小外刈」や「足払」のように「足狙い技」と思われるかもしれないが、「支釣込足」はこれらの技とは全く理合が違う。「支釣込足」での自分の足の使い方は、相手の足を刈ったり払ったりするのが目的ではない。「支釣込足」は、相手の足元に自分の足を当てることにより、相手の足の動きをとめ、そこを支点にして相手を倒す技である。このように自分の足を相手の足等に当て、そこを支点にして投げる技を「支点技」と名づけた。通常、「支点技」では、自分の足を相手の足の一部に当てるが、「大車」では自分のふくらはぎを相手の下腹に当てて支点を作る。また「巴投」は自分の足の裏を相手の下腹に当てて支点を作って投げている。 バランス崩し技 上記いずれにも分類されない技がある。我々が「バランス崩し技」と名づけた一群の技は、相手の重心の下に入り込み相手を担ぎ上げたり腰にのせたりすることもなく、相手の足を刈ったり、支点にすることもない。例えば、「内股すかし」は、相手の技を読み、相手の技をすかして、相手のバランスが崩れたところを手を使って投げる、また「浮落」や「隅落」は、相手の動きの勢いを利用し、手と体捌きで相手のバランスを崩して投げる技である。「バランス崩し技」の特徴は、自分の足が相手に触れることなく、相手の動きを利用して、手と体捌きだけで相手のバランスを崩し投げるところである。 複合技 柔道の全ての投技を以上4つのカテゴリーに分類することができる。但し、技によっては、複数の理合が複合している場合ももちろんある。たとえば「巴投」は、相手の下腹に自分の足の裏を当て、そこに支点を作ると同時に、相手の重心の下に自分の体を入れて投げるので、「支点技」と「重心技」の複合技と見ることができる。 以下に4つの技分類の定義と技を掛けるときのポイントを取り纏めた。またそれぞれの技が、どれに分類されるかを、講道館/IJFの技分類とも対比できる形で、下表に示した。この分類の有用性や妥当性につき先達諸氏からの叱正を請いたい。
*講道館或いはIJFの一方のみで使われている技名称も含む。 *帯取返、小内巻込はIJFのみで使われている技名称。 *河津掛、蟹挟は講道館では横捨身技に分類されているが、IJFでは禁止技に分類されている。 *本ページの内容に関し、ご意見をお寄せください。 参考資料: 講道館ウェブサイト 「講道館柔道ビデオシリーズ 第1作 投技 分類と名称」(講道館) 「柔道技の見極めハンドブック」(ベースボール・マガジン社) |
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