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※eJudo携帯版「e柔道」12月30日掲載記事より転載・編集しています。

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グランドスラム東京マッチレポート
63、70、78、78㎏超級 3/4


佐藤瑠香が緒方亜香里とのライバル対決制して優勝、双方課題露呈も地力の高さ示す
78㎏級

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写真:準々決勝、
緒方がアントマーチに袈裟固で一本勝ち
【日本人出場選手】
緒方亜香里(筑波大4年・WR4位)
佐藤瑠香(コマツ・WR34位)
岡村智美(コマツ・WR20位)
穴井さやか(ミキハウス・WR72位)

エントリー選手僅か12名、うち4名が日本人選手。
世界大会でメダルを狙うレベルの強豪の参加も僅少で率直に言って盛り上がりを欠くトーナメントとなったが、その中で日本のツートップ、ロンドン五輪代表の緒方亜香里とライバル佐藤瑠香が順当に決勝に進出。

緒方はもちろん第1シード。1回戦はランキングなしの台湾選手を内股「有効」、大外返「技有」、加えて「指導3」と圧倒して総合勝ち(4:19)。準々決勝は前戦で穴井さやかに一本勝ちしているアントマーチ(キューバ・WR82位)に袈裟固で一本勝ち(4:18)。

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写真:準決勝、緒方を相手にしたユンは
場外に向かって技を仕掛けて展開を切り続ける
準決勝の相手は韓国の新顔ユン・ヒュンジ。1回戦で岡村智美に「有効」2つをリードされながら谷落「一本」(4:23)で逆転勝ち、準々決勝は第4シードのルエット(フランス・WR13位)にこれも「指導3」をリードされながら大腰「一本」(3:19)で逆転してきたしぶとさと一発を併せ持つ選手だが、緒方とは地力も経験も違う。緒方はケンカ四つのユンに両襟で圧力をかけて54秒に「指導」奪取。以降もユンはまっすぐ下がり、場外に向かって技を仕掛けるのみで緒方はこれをひきずるように寝技で場内に引きずり込み、圧倒的に試合を支配。

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写真:準決勝、緒方腰を抱きに来て膝をついた
ユンを前に引きずり出しながら
左内股に捉え「一本」
3分過ぎ、緒方が左大腰。ユンは右大腰でいったん腰を切って応じ、次いで小外掛に抱きつく。この力の差が出しやすい位置関係を緒方は見逃さず、低い軌道の左内股に切り返し「一本」、3分19秒。緒方全試合一本勝ちの圧勝で決勝進出を決めた。

講道館杯を2連覇した佐藤瑠香は同大会で肘を負傷したが、その影響を感じさせない勝ち上がりの良さ。1回戦はムンフエルデン(モンゴル)から「指導3」を奪って体を暖めると得意の大内刈を捻じ込んで一本勝ち(3:45)、準々決勝は第3シードの実力者ジョン・ギョンミ(韓国・WR10位)をこれも大内刈に沈めて一本勝ち(4:03)。

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写真:準決勝、
佐藤がコットンを攻める
迎えた準決勝の相手は第2シードのコットン(カナダ・WR9位)。
ケンカ四つのコットンは場外際での技を志向。佐藤は袖、襟としっかり持つ場面が増えるが仕掛けが遅く、場外際で連続技を仕掛けると十分間合いを測ったコットンは自ら技を仕掛けて場外に逃れることの連続。

佐藤は前に出続けて右大内刈、右大外刈、右内股と仕掛けるもののコットンの戦術に明確な対処を見出せず、前に出たところに2度コットンの抱分を受け、崩れ伏せる場面も現出。地力には勝るが、組み手争いと腰の差しあいにつきあわされる形でポイント差をつけることが出来ない。

佐藤が右大腰、応じたコットンが抱分に体を捨てた直後の4分3秒、コットンが袖を両手で押さえる形で防御を続け、主審はこの行為に「指導1」を宣告。

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写真:疲労したコットンを相手に佐藤が攻勢
釣り手を殴るようにコットンの頬に当て、引き手を腹に抱きこむハンドル操作。コットン頭から畳に落ち、佐藤は決めの段階で一瞬ガクンとバランスを崩して畳に膝をつくが引き手の効きが良く「技有」となる。
主審の宣告に引き続き終了ブザー。佐藤、「技有」による優勢で勝利を決めた。

二本持って愚直に技を仕掛け続けることでコットンを消耗させた佐藤の粘り勝ちと見るか、32歳のコットンに対し結局はスタミナを奪うことでしか王手を掛けられなかった戦術性の低さを指摘するか。非常に評価の難しい試合であったが、大枠「地力勝ち」というところまでは間違いないところだろう。

佐藤、ジョン、コットンと続く厳しい組み合わせを見事勝ち抜いて決勝の畳へと駒を進めることとなった。

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写真:佐藤が右大内刈で「技有」獲得
このあたりからコットンは疲労が目立ち始め、佐藤は片襟の右体落、右大外刈、右袖釣込腰と圧倒的に攻める。

しかしこれらの技は選択、作り、掛けとも戦術的な取り味に欠け、明らかに相手の想定内。コットンはことごとく捌きながら技を打ち返して見かけ上の拮抗を演出、様相は泥沼化。

残り11秒、両襟を掴んだコットンに対し佐藤がその右引き手を切り落とし、一方的に自分のみが左引き手で袖を得る。慌てたコットンが大腰の形で腰を切り、展開を一旦切ろうとしたところに佐藤は切り返しの右大内刈。

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写真:決勝、緒方は佐藤の釣り手を弾き、
足技を交えながら引き手の獲得を狙う
決勝は緒方が左、佐藤が右組みのケンカ四つ。

緒方は内、佐藤は外から釣り手を持つ。
緒方は右手で佐藤の釣り手を内側から弾いて相手の体を寄せつつ、左小外刈、支釣込足で攻める。緒方の巧みな体捌きに細かく崩され続けた佐藤、幾度目かの緒方の寄せに対抗して持たれた引き手を握り返し、釣り手で奥襟を叩いてこの状況を解決。緒方の頭をパワーで下げさせ、緒方は一旦伏せて展開を切る。経過時間は40秒。

以後も引き手を、あるいは釣り手で高い位置をお互いに争いながら試合は推移。展開になかなか差がつかないが、一貫して先に仕掛けるのは緒方、佐藤はジックリ待ってチャンスを探している印象でどちらかというと落ち着いた試合ぶり。

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写真:佐藤が右体落から押し込んで
「有効」を奪う
残り時間1分半を切り、佐藤が釣り手を突いて前へ。場外際でこれに応じた緒方は左内股を放つがこれは間合いが遠く、空振り掛けた緒方は畳に足を戻す。このアクションで背中を向けた緒方の体を乗り越えて佐藤は切り返しの右体落。掛け足が股中に落ちる形になったがほぼ片足の状態でこれを食った緒方は畳に腹ばいに伏せ、これを見た佐藤は伏せた緒方の上に乗りまわって決めに掛かる。佐藤が押し込み、緒方が腹ばいのまま耐えようという形になったが、主審はノーポイントの判断で「待て」を宣告。

ところが両者が開始線に戻った時点で、センターテーブルからの指示か主審は改めて「有効」を宣告。緒方の下半身は伏せていたが、佐藤が乗りまわった結果上半身が横倒しになったと判断された模様。経過時間は3分28秒、残り時間は1分22秒。

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写真:緒方があとひとつの「指導」を
求めてラッシュを掛ける
ビハインドの緒方猛然と前に出て釣り手で奥襟を叩くが、この時間帯が大事とばかりに佐藤はギアを上げ、緒方の釣り手を落とすと激しく釣り手の肘を振り立てて、片手の膝車で緒方を崩す。崩れた緒方の右片襟を捕まえ、上下にあおると苦しくなった緒方は左内股に掛けつぶれて展開を切る。

しかしこのシークエンス以後佐藤は再び沈黙。
緒方は引き手を得、釣り手で奥襟を叩く完璧な形。体を使って佐藤を揺さぶりあおりながら前に連れてくるが、完全な防御姿勢にシフトした佐藤を警戒したか、佐藤が入れた牽制の出足払に間合いを外されたか具体的な攻撃が出来ない。頭を下げられた佐藤は技が出ず、残り31秒で「極端な防御姿勢」の「指導1」。

あと一つの「指導」で追いつく緒方、前に出て釣り手で背中を叩くが佐藤は右の片襟体落で展開を切る。残り時間は21秒。

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写真:終了ブザーが鳴り響き、
1年1ヶ月ぶりのライバル対決に幕
緒方、両襟で圧力を掛けると佐藤は防御姿勢で完黙。右内股を仕掛けて展開を切る。
残り時間16秒、佐藤は緒方の釣り手の袖をキャッチすることに腐心。緒方は数度奥襟を叩きかけるが、佐藤にキャッチされることを嫌って自ら切り離して組み手をやりなおす判断ミス。
緒方が組み手をリセットしてくれたことで凌ぎ方の見えた佐藤、緒方の釣り手にフォーカスして体を捌き、最後は釣り手を背中に、引き手をクロスに袖を掴んだ体制でタイムアップ。佐藤が「有効」による優勢で勝利し、グランドスラム東京初制覇を決めた。

高校時代から幾度も対戦してきたこの2人、直接対決は11年の講道館杯決勝以来。その際は気持ち先行、ド突き合いとでも言うべき組み手争いと腰の差しあいに終始して園田隆二監督に「柔道の試合をして欲しい」と苦言を呈された両者だが、この日は同監督も「組んでいる時間も長くなったし、あの時とは全然違う。2人とも成長しています」と一定の評価を与えた。

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写真:優勝の佐藤瑠香
とはいえ、佐藤は明確な方法論や地力の差で緒方に勝ったわけではない。仕掛けでは緒方の後手を踏み、腰の差しあいからのポイント奪取もお互いどちらにも起こりうるアクシデントに近いもの。リード後はやってはいけない「極端な防御姿勢」の反則ポイントも失った。いずれも「落ち着いて試合をした」「少ないチャンスを生かした」「防御に徹してアクシデントの可能性を減殺した」と読み換えることも出来るが、この評価はおそらく本人も峻拒するであろう。良い組み立てで試合を運んだ緒方もビハインド後の詰めを明らかに誤っており、双方が試合を上手に運べない、シナリオの選択を失敗する中で佐藤が勝ちを拾ったというのがこの試合の評価としてはもっとも妥当なものではないだろうか。

試合後、佐藤は準決勝でポイントを奪った際に足指を脱臼していたことが判明。試合の度に負傷するのは佐藤の最も良くない目。佐藤と緒方は両者ともに課題を数多く露呈、それでも決勝対決を演じるだけの地力の高さを見せたというのがこの階級の総括になるだろう。

いずれも早い段階で敗退した穴井さやかと岡村智美の試合内容を見る限りでも、日本の78kg級は佐藤と緒方の若い2人が引っ張るしかない状況であることは間違いない。2人の高いレベルでの代表争い、その波及効果による階級全体の浮揚、来年度はここに期待したい。

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写真:78kg級入賞者。
左から緒方、佐藤、コットン、ユン
【入賞者】 エントリー12名
1.SATO, Ruika(JPN)
2.OGATA, Akari(JPN)
3.COTTON, Amy(CAN)
3.YOON, Hyunji(KOR)
5.ANTOMARCHI, Kaliema(CUB)
5.JEONG, Gyeong-Mi(KOR)
5.LOUETTE, Lucie(FRA)
5.WANG, Szu-Chu(TPE)

佐藤瑠香選手のコメント
「去年と同じ試合をしたら、一体何をやってきたのかということになる。去年と違う自分を見せなければという気持ちでした。今まではガツガツ前に出ることばかりで組み手も考えたことがなくて、なのでケガも多かったのだと思います。改善はしてきたつもりで、ようやく試合で少しずつ出せるようになってきたところです。「有効」を取ってから取りにいく姿勢がなかったことは反省点。しっかり組んで、しっかり一本取る柔道を目指してこれからも頑張ります」

【準決勝】
緒方亜香里○内股(2:15)△YOON, Hyunji(KOR)
佐藤瑠香○大内刈(4:03)△COTTON, Amy(CAN)

【決勝】
佐藤瑠香○優勢[有効・払腰]△COTTON, Amy(CAN)

【日本人選手勝ちあがり】

佐藤瑠香(コマツ):優勝
[1回戦]
佐藤瑠香○大内刈(3:45)△MUNKH-ERDENE, Uuganjargal(MGL)
[準々決勝]
佐藤瑠香○大内刈(4:03)△JEONG, Gyeong-Mi(KOR)
[準決勝]
佐藤瑠香○優勢[技有・大内刈]△COTTON, Amy(CAN)
[決勝]
佐藤瑠香○優勢[有効・払腰]△緒方亜香里

緒方亜香里(筑波大4年):2位
[1回戦]
緒方亜香里○総合勝(4:19)△HSU, Hsin-Mei(TPE)
[準々決勝]
緒方亜香里○袈裟固(4:18)△ANTOMARCHI, Kaliema(CUB)
[準決勝]
緒方亜香里○内股(2:15)△YOON, Hyunji(KOR)
[決勝]
緒方亜香里△優勢[有効・払腰]○佐藤瑠香

岡村智美(コマツ):1回戦敗退
[1回戦]
岡村智美○谷落(4:21)△YOON, Hyunji(KOR)

穴井さやか(ミキハウス):1回戦敗退
[1回戦]
穴井さやか△裏投(3:46)△ANTOMARCHI, Kaliema(CUB)


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