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永山竜樹と丸山城志郎が圧勝V、日本勢が男女4階級を制覇・グランドスラムデュッセルドルフ2018第1日レポート

(2019年3月2日)

※ eJudoメルマガ版3月2日掲載記事より転載・編集しています。
永山竜樹と丸山城志郎が圧勝V、日本勢が男女4階級を制覇・グランドスラムデュッセルドルフ2018第1日レポート
(男子60kg級、66kg級、女子48kg級、52kg級、57kg級)
第1日男子全試合結果 第1日女子全試合結果
第1日男子速報 第1日女子速報
第1日男子プレビュー 第1日女子プレビュー

93ヶ国603名という記録的な数の参加者が集ったグランドスラム・デュッセルドルフ大会、第1日は日本が男女合わせて4階級を制覇するというロケットスタートを飾った。

本文・総評:古田英毅
決勝戦評:小林大悟

■ 60kg級 永山竜樹圧勝、第三次選考は満点突破
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60kg級メダリスト。左からロベルト・ムシュヴィドバゼ(ロシア)、永山竜樹、トルニケ・ツヤカドエア、ルフミ・チフヴィミアニ。

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2回戦、永山竜樹がシティサーン・スックパサイから「技有」

(エントリー35名)

【入賞者】
1.NAGAYAMA, Ryuju (JPN)
2.MSHVIDOBADZE, Robert (RUS)
3.TSJAKADOEA, Tornike (NED)
3.CHKHVIMIANI, Lukhumi (GEO)
5.GARRIGOS, Francisco (ESP)
5.LEE, Harim (KOR)
7.MKHEIDZE, Luka (FRA)
7.UROZBOEV, Diyorbek (UZB)

日本代表の永山竜樹(東海大4年)が圧勝。序盤は抑えめだったが、ここぞで加速すると相手はまったくついてこれない。初戦で戦ったシティサーン・スックパサイ(ラオス)は五輪も経験している実力者、永山の平時の進退にはしっかり追走して粘りを見せるが、強者相手に手ごたえを得たか1分50秒に両袖の右大外刈を放ち、これで永山を加速させてしまう。刃の入れどころと瞬時に見極めた永山は切り返しの大外返から左出足払の連携で叩き落とし「技有」、そのまま抑え込んで合技の一本勝ち。相手のレベルが格段に上がった3回戦もフェリペ・ペリム(ブラジル)相手に決して無理せず淡々と攻防、GS1分過ぎに焦れたペリムが座り込みの左小外掛に打って出ると、体を捌くなりこれを引きずりながら足を突っ込み右内股、これで立たせておいての右大内刈に繋いで「技有」で勝負あり。韓国の新鋭イ・ハリンとの準々決勝も無理をし過ぎず相手に偽装攻撃による2つの「指導」を強いてチャンスを待ち、GS27秒にイの左小外刈をきっかけにケンケンの右内股、ここから右大内刈に繋いで相手に腰を引かせて固定すると本命の右背負投を突っ込んで盤石の「一本」。

準決勝からはギアを一段上げ、フランシスコ・ガリーゴス(スペイン)を相手に「指導」ひとつリードの2分55秒、右小外刈から左一本背負投に繋いで打点高く投げ切り豪快「技有」。直後の組み際、左釣り手で奥襟を叩いてきた相手をそのまま呼び込み、軽々投げ飛ばして今度は右内股「一本」。残身鮮やか、力の差が見えすぎた一撃に畳に伏せたまま審判をみやったガリーゴスは思わずため息。

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準決勝、永山竜樹がフランシスコ・ガリーゴスから左一本背負投でまず「技有」

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戦意喪失気味のガリーゴスに内股「一本」でトドメ。

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決勝、永山が得意とする低空の裏投。ロベルト・ムシュヴィドバゼが尻餅をつき、これはノーポイント。

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直後永山の内股が炸裂「一本」。

決勝は第1シードのロベルト・ムシュヴィドバゼ(ロシア)とマッチアップ。緩やかな組み手争いから試合時間1分30秒にならんとするところで加速。右小外刈で抜き上げると、このまま遠間で巧者永山と攻防することを嫌ったムシュヴィドバゼが右釣り手を肩越しのクロスに入れて一方的な形を作らんとする。瞬間永山はスイッチ発動、左引き手で後帯を引っ掴みながら半身で背中側に滑り込み、食いついて密着。想定より深く叩かされたムシュヴィドバゼ自身が崩れる永山得意の攻防一致、永山は滑り込んだ勢いのまま時計回りに回転。相手もろとも2回転半したところで踏みとどまって反時計回りに捩じり返す裏投一撃、ムシュヴィドバゼは為す術なく宙を舞う。「技有」相当かと思われたが、虚を突かれたムシュヴィドバゼが尻からVの字で着地しており、上半身の接地がないということでこれはノーポイント。

しかしこの一撃のインパクトは大きく、ここで既に勝負は決していた印象。直後の1分52秒、永山は相手が襟を握って来た左引き手の袖を右で抑えながら右内股一撃。軸足を相手の外側に送り込んで大きく回旋を作り出し、高く脚を揚げて投げ切り「一本」。完敗のムシュヴィドバゼは頭を抱えて突っ伏し、しばし立てず。永山が圧勝で12月のグランドスラム大阪に続くワールドツアー2連勝を飾ることとなった。

永山は抜群の出来。攻防に隙なく組み手も巧み、大技一発の威力は折り紙つき。加えて何より体内時計の刻みが早く、相手にとってはとにかく攻防を加速させることは禁物。もし下手に大技一発に出れば2つ、3つと意識の外からの連続攻撃が襲ってくるからだ。素直に「これは永山に勝つのは大変」と思わされた完成度の高さであった。

勿体ないのは一線級との対戦が決勝のムシュヴィドバゼ戦に限られたこと。代表争いで世界王者髙藤直寿を追走する立場としては、倒す相手が強ければ強いほどよい。かつて敗れた、そして60kg級世界最大の「確変」タイプであるディヨルベク・ウロズボエフ(ウズベキスタン)との対戦はじゅうぶん現実的だったが、ウロズボエフが準々決勝でガリーゴスに敗れたために実現ならず。この日の永山であれば誰と戦ってもまず遅れをとることはなかったはずで、出来れば初戦から決勝まで超強豪ばかりと戦いたかったくらいの大会ではないかと推察する。いずれこれで世界選手権以降は全勝。為すべきことをしっかりなして、最終予選の全日本選抜体重別でいよいよ髙藤直寿との決戦に挑む。

3位にはルフミ・チフヴィミアニ(ジョージア)と売り出し中のトルニケ・ツヤカドエア(オランダ)が入賞。グランドスラム・パリで史上初のメダルなしに終わったフランス男子は約1年ぶりの国際大会出場となるワリーデ・キアを送り込んだが、初戦でジャバ・パピナシヴィリ(ジョージア)に外巻込「一本」で敗れた。

上位入賞者と準々決勝以降の結果、決勝の戦評と日本代表選手全試合の結果は下記。

【上位入賞者】
優勝:永山竜樹(日本)
2位:ロベルト・ムシュヴィドバゼ(ロシア)
3位:ルフミ・チフヴィミアニ(ジョージア)、トルニケ・ツヤカドエア(オランダ)

【準々決勝】
ロベルト・ムシュヴィドバゼ(ロシア)○浮腰(3:53)△トルニケ・ツヤカドエア(オランダ)
ルフミ・チフヴィミアニ(ジョージア)○GS反則[指導3](GS3:11)△ルカ・ムヘイゼ(フランス)
永山竜樹○GS背負投(GS0:28)△イ・ハリン(韓国)
フランシスコ・ガリーゴス(スペイン)○袖車絞(1:23)△ディヨルベク・ウロズボエフ(ウズベキスタン)

【敗者復活戦】
トルニケ・ツヤカドエア(オランダ)○GS反則[指導3](GS0:49)△ルカ・ムヘイゼ(フランス)
イ・ハリン(韓国)○GS反則[指導3](GS2:20)△ディヨルベク・ウロズボエフ(ウズベキスタン)

【準決勝】
ロベルト・ムシュヴィドバゼ(ロシア)○優勢[技有・浮腰]△ルフミ・チフヴィミアニ(ジョージア)
永山竜樹○内股(3:13)△フランシスコ・ガリーゴス(スペイン)

【3位決定戦】
トルニケ・ツヤカドエア(オランダ)○優勢[技有・内股]△フランシスコ・ガリーゴス(スペイン)
ルフミ・チフヴィミアニ(ジョージア)○GS反則[指導3](GS1:19)△イ・ハリン(韓国)

【決勝】
永山竜樹○内股(1:52)△ロベルト・ムシュヴィドバゼ(ロシア)
永山、ムシュヴィドバゼともに右組みの相四つ。まずはムシュヴィドバゼが先に引き手で袖を得て奥を叩きに掛かるが、永山が変形の左背負投を合わせて畳に這わせる。さらに次の攻防でも、同じ流れから永山が左袖釣込腰で相手を頭から畳に叩き落とす。ムシュヴィドバゼが組み手で優位を作ろうとするが、永山は一切付き合わず技を打ち込むというこの構図での攻防が続き、1分7秒に技が出せていないムシュヴィドバゼに消極的の咎による「指導」。直後の展開、状況の打開を目指すムシュヴィドバゼが釣り手をクロスグリップに叩き入れたことをきっかけに、両者時計回りに錐揉み状に勢いよく回転する攻防が生まれる。永山はそのまま相手の腰に食らいつくと得意の裏投。低空で勢い良くムシュヴィドバゼを放るが、尻から落ちたと判断されたのかまさかのポイントなし。流れを切らずに抑え込みを狙うも足が抜けず「待て」となる。しかし続く展開の1分52秒、ムシュヴィドバゼが引き手で襟を得て距離を取ろうとすると、永山は瞬時に釣り手でその袖口を捕まえ、一気に腰を切って両袖の右内股に飛び込む。相手に前転を強いるように懐で回すと、ムシュヴィドバゼ背中から畳に落下して「一本」。永山が世界選手権銀メダリストのムシュヴィドバゼを圧倒、見事優勝を果たした。

【日本代表選手勝ち上がり】

永山竜樹(東海大4年)
成績:優勝


[2回戦]
永山竜樹○合技[小外刈・横四方固](2:07)△シティサーン・スックパサイ(ラオス)

[3回戦]
永山竜樹○GS技有・大内刈(GS1:07)△フェリペ・ペリム(ブラジル)

[準々決勝]
永山竜樹○GS背負投(GS0:28)△イ・ハリン(韓国)

[準決勝]
永山竜樹○内股(3:13)△フランシスコ・ガリーゴス(スペイン)

[決勝]
永山竜樹○内股(1:52)△ロベルト・ムシュヴィドバゼ(ロシア)

■ 66kg級 丸山城志郎がワールドツアー3連勝、初の世界選手権代表に大きく近づく
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66kg級メダリスト。左からキム・リマン、丸山城志郎、ヤクブ・シャミロフ、ヨンドンペレンレイ・バスフー。

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勝負どころの準々決勝、丸山城志郎がマニュエル・ロンバルドから左内股「技有」

(エントリー54名)

【入賞者】
1.MARUYAMA, Joshiro (JPN)
2.KIM, Limhwan (KOR)
3.SHAMILOV, Yakub (RUS)
3.YONDONPERENLEI, Baskhuu (MGL)
5.LOMBARDO, Manuel (ITA)
5.VIERU, Denis (MDA)
7.GOMBOC, Adrian (SLO)
7.KUANOV, Yesset (KAZ)

日本代表の丸山城志郎(ミキハウス)が優勝。

出だしは明らかに抑えめ。初戦のアユブ・エリドリッシ(カタール)戦は相手があまりに怖がり、刀を抜く前に3つの「指導」が積み重なって2分28秒反則負けで試合終了。丸山はこれでかえって試合に入り損なったか、3回戦では韓国の新顔ハン・ユンジン(韓国)の右背負投を受け損ない、逆側に抜け落ちてしまって35秒意外な「技有」を失う。しかし丸山は冷静、淡々試合を進めると明らかにハンの手が詰まり、1分55秒には腰を引いた相手が仕方なしに身を起こした瞬間に飛び込みの左内股を呉れて「技有」奪回。あまりに浮揚が高すぎて「一本」を逃したという体のこの技で試合は実質終戦。丸山、3分10秒にはもはややるべきことがなくなったハンに再び飛び込みの左内股の一撃を見舞う。組み合った姿勢のまま縦に持ち上がったハンは左足をバタつかせて着地点を探るが畳は既に遥か下方、その足先はむなしく空を掻くばかり。丸山が引き手を腹に抱き込んでトドメの回旋を呉れると勢い良く吹っ飛び文句なしの「一本」。強制的にエンジンを掛けられることとなったこの一番でどうやら丸山のウォームアップは終了、ぶじプールファイナル進出を果たす。

準々決勝は2週間前のグランドスラム・パリで阿部一二三の首級を挙げたマニュエル・ロンバルド(イタリア)を畳に迎える大一番。試合の構図は二本持っての一撃を狙う丸山の攻めを片手柔道が本領のロンバルドが散らすという形だが、ロンバルドのしぶとさを主審の技量の低さが後押し、組み合いたい側の丸山にいずれも「取り組まない」咎で2つの「指導」が与えられてしまう。ロンバルドには偽装攻撃の「指導」ひとつが与えられるが形上ビハインドのまま試合は終盤へ。しかし3分18秒、丸山は引き手を求めて前進。嫌った相手が駆け引きしながら思わず下がると、追い込む形で左内股。まず1度腰を切って相手をさらに一歩下げ、次いで本命の一撃を呉れる強烈な二段攻撃。ロンバルドたまらず吹っ飛んで「技有」。カウンター型のロンバルドにこのビハインドを跳ね返す力と技術はなく、このまま丸山の勝利が決まった。

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キム・リマンとの決勝を戦う丸山

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決勝点となった左内股「技有」

準決勝はパリ大会を素晴らしい柔道で制したデニス・ヴィエル(モルドバ)と対戦。熱戦が期待されたが柔道の綺麗なヴィエルは丸山の好餌、まず支釣込足から繋いでの左内股で浮かせ、戻ると頭の下がった相手を潰すなり片手絞。ヴィエルが為すすべなく「参った」を表明し、僅か1分29秒「一本」で勝ち抜け決定。決勝は東海大卒のキム・リマン(韓国)を相手にまず「指導」2つを得、1分59秒には左内股で「技有」確保。このまま手堅く戦い切って優勝を決めた。

丸山はこれで11月のグランドスラム大阪、12月のワールドマスターズに続くワールドツアー3連勝。今大会は2週間前に阿部が負けたという状況下、プレッシャーを跳ね返して、必須ミッションである「優勝」そして「ロンバルドとの直接対決における勝利」という2つを完璧にクリアして見せた。まさに今が旬、代名詞の内股の威力はもちろんのこと、相手がこの内股を怖がることで常に良い方へと戦いの頁がめくられていく試合展開の良さが印象的。「業のあるもの」の強さを存分に見せつけてくれた大会であった。

丸山はこれで世界選手権代表に限りなく近づいた。これ以上ない戦果を携え、いよいよ次はまとめの選抜体重別。最終予選会で初の代表確定に挑む。

3位にはロンバルドを下したヤクブ・シャミロフ(ロシア)、ヴィエルを下したヨンドンペレンレイ・バスフー(モンゴル)が入賞した。

キム・リマンは2016年グランプリ・サムスン以来のワールドツアー表彰台。2017年ブダペスト世界選手権(5位)以降ワールドツアーの派遣がなく、復帰戦となった昨年11月のグランドスラム大阪と2週間前のグランドスラム・パリではいずれも初戦敗退であったが、3大会連続のビッグゲーム派遣の期待にようやく応えた形だ。今大会の直後、同国の1番手のもと世界王者アン・バウルに対する大韓柔道協会の出場停止処分(※兵役免除の義務として課せられる奉仕活動を、虚偽の書類提出によって逃れていたことが昨年11月に発覚、以後試合に出ていない)が1年間から半年に短縮されることがわかった。予選に出られないために東京世界選手権への出場は出来ないが、以後は復帰の見込み。アン不在期間の間にしっかり結果を出せるか、キムにとってはこれから半年が勝負である。

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決勝、丸山の体落にキムが1回転。終了ブザー後と判断されて得点とはならなかった。

【上位入賞者】
優勝:丸山城志郎(日本)
2位:キム・リマン(韓国)
3位:ヤクブ・シャミロフ(ロシア)、ヨンドンペレンレイ・バスフー(モンゴル)

【準々決勝】
丸山城志郎○優勢[技有・内股]△マニュエル・ロンバルド(イタリア)
デニス・ヴィエル(モルドバ)○GS大内刈(GS3:23)△アドリアン・ゴンボッチ(スロベニア)
ヤクブ・シャミロフ(ロシア)○GS技有・大内刈(GS0:53)△ヨンドンペレンレイ・バスフー(モンゴル)
キム・リマン(韓国)○GS技有・背負投(GS0:35)△イェセット・クアノフ(カザフスタン)

【敗者復活戦】
マニュエル・ロンバルド(イタリア)○合技[肩車・横四方固](3:24)△アドリアン・ゴンボッチ(スロベニア)
ヨンドンペレンレイ・バスフー(モンゴル)○GS技有・大内刈(GS0:13)△イェセット・クアノフ(カザフスタン)

【準決勝】
丸山城志郎○片手絞(1:30)△デニス・ヴィエル(モルドバ)
キム・リマン(韓国)○GS技有・一本背負投(GS2:58)△ヤクブ・シャミロフ(ロシア)

【3位決定戦】
ヤクブ・シャミロフ(ロシア)○GS技有・谷落(GS1:08)△マニュエル・ロンバルド(イタリア)
ヨンドンペレンレイ・バスフー(モンゴル)○GS技有・大外返(GS0:33)△デニス・ヴィエル(モルドバ)

【決勝】
丸山城志郎○優勢[技有・内股]△キム・リマン(韓国)
丸山が左、キムが右組みのケンカ四つ。丸山は引き手を得るなり巧みに釣り手の肩をずらして可動域を確保、切れ味鋭い左内股を見舞う。しかし、れは引き手が途中で切れてしまい、キム片足を上げて耐え切る。続く攻防でも同様の形で丸山が左大外刈、左内股と技を狙い続け、防戦一方のキムに対して51秒に消極的の「指導」。ここからは丸山が組みつき、キムがそれを切って距離を取るという攻防。1分22秒に丸山が左腰車で惜しい場面を作るがポイント獲得には至らない。1分48秒、中途半端な低い右背負投を仕掛けたキムに偽装攻撃の「指導2」。キムはスコア上後がなくなる。直後の1分59秒、丸山は作用足をまず相手の股中深く差し入れ、次いで軸足を送り込むと同時に左内股で一気に跳ね上げる。キムは反応して引き手方向に逃れようとするが間に合わず、一瞬体が浮いた後に体側から勢い良く畳に落下し「技有」。リードを得た丸山はペースを変えずに淡々と試合を勧め、巴投に左一本背負投で追撃を図るキムにつけ入る隙を与えない。残り40秒には谷落様に背中に食いついたキムの誘いに乗ってしまい左内股を透かされかける場面もあったが、大枠危なげなく試合を進めてタイムアップ。試合終了と同時に決めた左体落は時間外とみなされポイントにならなかったが、「技有」優勢で優勝を飾った。

【日本代表選手勝ち上がり】

丸山城志郎(ミキハウス)
成績:優勝


[2回戦]
丸山城志郎○反則[指導3](2:28)△アユブ・エリドリッシ(カタール)

[3回戦]
丸山城志郎○内股(3:15)△ハン・ユンジン(韓国)

[準々決勝]
丸山城志郎○優勢[技有・内股]△マニュエル・ロンバルド(イタリア)

[準決勝]
丸山城志郎○片手絞(1:30)△デニス・ヴィエル(モルドバ)

[決勝]
丸山城志郎○優勢[技有・内股]△キム・リマン(韓国)

■ 48kg級 渡名喜風南圧勝、他を寄せ付けぬままワールドツアー2連勝
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48kg級メダリスト。左からカン・ユジョン、渡名喜風南、カタリナ・コスタ、ナタリア・ブリギダ。

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2回戦、渡名喜風南がアン・スズキからわずか28秒の大外刈「一本」。

(エントリー33名)

【入賞者】
1.TONAKI, Funa (JPN)
2.KANG, Yujeong (KOR)
3.COSTA, Catarina (POR)
3.BRIGIDA, Nathalia (BRA)
5.MARTINEZ ABELENDA, Laura (ESP)
5.MENZ, Katharina (GER)
7.RISHONY, Shira (ISR)
7.LI, Yanan (CHN)

日本代表の渡名喜風南(パーク24)が圧勝。終始集中力高く、隙のない進退と凄まじい機動力で空間を支配。相手にまったくチャンスを与えないまま全5試合を走り抜けた。

初戦(2回戦)はアン・スズキ(アメリカ)を僅か28秒、「据え物斬り」の大外刈一撃に沈めて快勝。以降は「立ち」と「寝」の継ぎ目のない戦型で一本勝ちを量産し、3回戦はマシャ・バルハウス(ドイツ)を1分46秒腕挫十字固「一本」、準々決勝はカタリナ・コスタ(ポルトガル)を2分18秒袈裟固「一本」(2:18)、準決勝はナタリア・ブリギダ(ブラジル)を2分38秒崩袈裟固「一本」に仕留めて決勝進出決定。

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決勝、渡名喜がカン・ユジョンから大内刈「技有」。

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渡名喜、最後は引込返「一本」を決めて圧勝

決勝は韓国の新1番手(※今大会で52kg級参戦2大会目をこなしたジョン・ボキョンが本当に転向するのであればだが)カン・ユジョン(韓国)とマッチアップ。2017年のアジア選手権で2つの「技有」を奪いながら(※この年は合技「一本」がなかった)残り数秒で背負投に捕まり、「一本」宣告で逆転された(※事後ブリッジによる反則負けに訂正)経緯のある、因縁の相手である。

この決勝はカンを翻弄。試合時間3分に迫るところでカンの内股を潰して伏せさせ、引込返を試みる。寝勝負を嫌ったカンが立ち上がると、ここに迷いなく左大内刈を入れてまず「技有」奪取。続いて狙った縦四方固は逃がしたが、試合が再開されると再び寝際からの一発が炸裂。左内股で伏せさせ、後帯を握って寝勝負をさらすとカンが慌てて立ち上がる。渡名喜待ってましたと本命の引込返に滑り込んでもろとも一回転、3分34秒文句なしの「一本」。この一発で勝負を決めた。

渡名喜は全試合一本勝ちで優勝決定。これでバクー世界選手権決勝のダリア・ビロディド(ウクライナ)戦以降無傷の連勝、2大会連続のワールドツアー制覇である。

決勝は渡名喜のこの日の志向がもっともよく表れていた試合。もともと寝技が得意な渡名喜が、その「渡名喜の寝技」を怖れる相手を、怖れるがゆえに次々屠っていくという、ルールの新解釈を存分に生かした戦い方であった。オーソドックスな組み立てと寝技といういわば軽量級の標準装備のレベルをひたすら高めることで世界を制した渡名喜が、キャリアで初めて示した「尖った」面と評したい。対ビロディド戦3連敗という屈辱、そしてこれによって明確なターゲットを得た渡名喜が、強者に必須の「成長し続けること」という項を具体的に満たしてみせたと高く評価したい。トーナメントの陣容は脆弱、対戦相手も一線級はカンのみという大会であったが、それがどうでもよくなるほど、素晴らしい出来であった。

非常に控えめに言ってこの時点で世界選手権代表には「限りなく近い」と評して良いだろう。あとはビロディドとどう戦うか。次のステージでは、「やりたいことを盛る」足し算の進化ではなく、ターゲットが明確な状況で何を為すべきか、特定の相手を倒すための選択的行動を割り出し、実行する知性と遂行力の有無が問われる。

【上位入賞者】
優勝:渡名喜風南(日本)
2位:カン・ユジョン(韓国)
3位:カタリナ・コスタ(ポルトガル)、ナタリア・ブリギダ(ブラジル)

【準々決勝】
渡名喜風南○袈裟固(2:18)△カタリナ・コスタ(ポルトガル)
ナタリア・ブリギダ(ブラジル)○GS反則[指導3](GS2:44)△シラ・リショニー(イスラエル)
カン・ユジョン(韓国)○優勢[技有・内股巻込]△カタリナ・メンツ(ドイツ)
ラウラ・マルティネス=アベレンダ(スペイン)○GS技有・袖釣込腰(GS0:27)△リー・ヤナン(中国)

【敗者復活戦】
カタリナ・コスタ(ポルトガル)○背負投(1:31)△シラ・リショニー(イスラエル)
カタリナ・メンツ(ドイツ)○優勢[技有・大内刈]△リー・ヤナン(中国)

【準決勝】
渡名喜風南○崩袈裟固(2:38)△ナタリア・ブリギダ(ブラジル)
カン・ユジョン(韓国)○合技[巴投・袖釣込腰](3:36)△ラウラ・マルティネス=アベレンダ(スペイン)

【3位決定戦】
カタリナ・コスタ(ポルトガル)○送足払(2:47)△ラウラ・マルティネス=アベレンダ(スペイン)
ナタリア・ブリギダ(ブラジル)○GS腕挫十字固(GS3:32)△カタリナ・メンツ(ドイツ)

【決勝】
渡名喜風南○引込返(3:35)△カン・ユジョン(韓国)
渡名喜が左、カンが右組みのケンカ四つ。渡名喜は余計な組み手争いをせずに一気に自分の形を作ると、低く構えて右内股を放ちながら前進。圧を掛けて相手を場外際に追い詰める。しかし、40秒にカンが右体落を仕掛けると引き手が切れてしまい、ここからは引き手争い。57秒、両者に取り組まない咎による「指導」が与えられる。続く展開、渡名喜はカンを左体落で伏せさせると、相手の起き上がり際に引込返を狙う。さらに直後の攻防でも相手の右内股を足を高く上げて透かしかけ、ポイントが想起される惜しい場面を作り出す。試合は完全に渡名喜のペース。カンは組み際に得意の肩車を狙うが、渡名喜は落ち着いてこれを潰し、反対に寝技を狙う。ここでカンが指から出血、試合は一時中断する。再開されると同時にカンは右内股を放ち、次いで再び肩車に潜り込む。しかし、これも渡名喜はあっさりと組み止め、全く崩れる様子を見せない。どころか、この流れから左背負投を放ち、返す刀の谷落でカンを腹から畳に叩きつける。カンはいよいよ攻める手立てがなくなってきた模様。直後の2分45秒、渡名喜はカンの右内股を透かして伏せさせると、頭側に回って引込返を狙い、相手の立ち上がり際に左大内刈で浴びせ倒す。そのまま縦四方固で抑え込むが、これは8秒で「待て」。しかし、前段の左大内刈の効果が認められ、3分18秒に「技有」が宣せられる。さらに直後の3分35秒、渡名喜は左体落でカンを伏せさせ、相手が立ち上がるのを待って引込返。立ち上がり際を狙われたカンは為す術なくゴロリと転がり「一本」。最新のルール解釈に完全に適応した渡名喜が、盤石の試合内容で優勝を決めた。

【日本代表選手勝ち上がり】

渡名喜風南(パーク24)
成績:優勝


[2回戦]
渡名喜風南○大外刈(0:28)△アン・スズキ(アメリカ)

[3回戦]
渡名喜風南○腕挫十字固(1:46)△マシャ・バルハウス(ドイツ)

[準々決勝]
渡名喜風南○袈裟固(2:18)△カタリナ・コスタ(ポルトガル)

[準決勝]
渡名喜風南○崩袈裟固(2:38)△ナタリア・ブリギダ(ブラジル)

[決勝]
渡名喜風南○引込返(3:35)△カン・ユジョン(韓国)

■ 52kg級 復活ケルメンディがワールドツアー3連勝、前田千島はミッション果たせず3位に終わる
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52kg級メダリスト。左からルハグヴァスレン・ソソルバラム、マイリンダ・ケルメンディ、オデッテ・ジュッフリダ、前田千島。

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2回戦、マイリンダ・ケルメンディがフェレナ・トゥムから左大車「一本」

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勝負どころの準決勝、ケルメンディがオデッテ・ジュッフリダから大腰「一本」。

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決勝、ケルメンディはルハグヴァスレン・ソソルバラムの体を抱くように前進。

(エントリー39名)

【入賞者】
1.KELMENDI, Majlinda (KOS)
2.LKHAGVASUREN, Sosorbaram (MGL)
3.GIUFFRIDA, Odette (ITA)
3.MAEDA, Chishima (JPN)
5.KAZARINA, Yulia (RUS)
5.JEONG, Bokyeong (KOR)
7.GNETO, Astride (FRA)
7.CHITU, Andreea (ROU)

首の負傷から昨秋復帰した「絶対王者」マイリンダ・ケルメンディ(コソボ)が圧勝V。2回戦はフェレナ・トゥム(ドイツ)から2分39秒大車「一本」、3回戦はエレウディス・ヴァレンティン(ブラジル)から2分35秒の間に3つの「指導」を奪って2分35秒順当に勝利。準々決勝では48kg級から階級を上げて2戦目のジョン・ボキョン(韓国)を相手に「指導2」をリードしながら意外な左一本背負投「技有」を失ったが、以後為した迫力の追撃の前にジョンの精神と肉体が持たず。偽装攻撃で3つ目の「指導」をもぎ取り、ぶじ勝ち抜け決定。

このあたりからエンジンが掛かった模様、リオ五輪決勝の再戦となった準決勝ではオデッテ・ジュッフリダ(イタリア)を片脚を揚げての大腰一撃に沈め1分38秒鮮やか「一本」。決勝はカデカテゴリの選手ながらこの日大健闘の17歳、ルハグヴァスレン・ソソルバラム(モンゴル)にまったく柔道をさせず、1分50秒の間に一方的に「指導」3つを奪って優勝を決めた。

2017年ブダペスト世界選手権以降首の負傷のため休養していたケルメンディは昨年の10月のグランドスラム・アブダビで復帰。この大会は2位だったが、以降は11月のグランプリ・タシケントと1月のグランプリ・テルアビブ、そしてこのグランドスラム・デュッセルドルフと3連勝。アブダビ大会決勝での黒星は負傷による棄権であり、復帰以来実質無敗だ。戦いぶりを見る限りまだ全開とまでは言い難いが、それでも他の選手とはやはり位相が違う。東京世界選手権で実現するであろう新王者・阿部詩との戦いがいよいよ楽しみになって来た。

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3位決定戦、前田千島は48kg級が本職のジョン・ボキョンから隅落「技有」を奪って勝利。

日本代表の前田千島(三井住友海上)は3位。準決勝で前述の17歳の新鋭ルハグヴァスレン・ソソルバラムに「技有」を2つ奪われて敗れた。1度目は遠間から目を瞑るがごとく、片襟を差して闇雲に座り込んだ右大外落を、それも失敗と見て自ら手を離して巻き込み潰れようとしたところを返されて谷落「技有」失陥、2度目は片手で組み手を争うさなかに「韓国背負い」を食らって対応を誤り墜落と、文句の言えない形での敗戦。海外の強豪の数が極端に絞られる52kg級にあって3位という成績は額面そのままに評価できるものではないし、ルハグヴァスレン・ソソルバラムは現在日本勢に3連敗中、1週間前のヨーロッパオープンでは武田亮子(龍谷大2年)に一本負けしているカデカテゴリの選手。マイナス評価は甘んじて受け入れねばならないだろう。

加えて。前田今回の唯一のミッションはケルメンディとの手合わせにあったと考える。代表選考二次予選・グランドスラム大阪における前田の成績は5位。これは普通に考えても脱落のはずで、ましてこの階級は既に阿部詩が代表に内定、後を追う志々目愛と角田夏実の2人も世界選手権の金銀メダリストであり、これ以上人員を足す必要はまったくない。本来なら過去実績がない5位の選手が「表通り」であるデュッセルドルフへ派遣されることはありえないわけである。好意を持ってその間の事情を想像するなら、日本が、国として「ケルメンディの出場」に備えたと解釈すべきだろう。復帰したケルメンディとの手合わせはこのあたりでどうしてもやっておきたい、代表候補2人をパリで競らせる間に空白域となったデュッセルドルフに出られて、このチャンスを逃すのは勿体なさすぎる、そしてここで挑ませることで有意義なデータを得られるとしたら前田、ということだったのではないか。現時点のケルメンディがしぶとい前田とどう戦うかは、その力と仕上がりを測る貴重なサンプルになったはずである。しかも、2回戦で第1シードのエヴェリン・チョップ(スイス)を破った前田に、決勝のケルメンディ戦まで立ちはだかる敵はいないはずであった。それが手合わせにすら届かなかったのだから、強化も含めてまるごと「ミッション失敗」と断ずるしかない。パリ大会でファイナリスト2人を輩出したばかりの日本、今回は明確な敗北であった。

【上位入賞者】
優勝:マイリンダ・ケルメンディ(コソボ)
2位:ルハグヴァスレン・ソソルバラム(モンゴル)
3位:オデッテ・ジュッフリダ(イタリア)、前田千島(日本)


【準々決勝】
前田千島○合技[袖釣込腰・大内刈](2:22)△ユリア・カザリナ(ロシア)
ルハグヴァスレン・ソソルバラム(モンゴル)○GS反則[指導3](GS4:21)△アストリーデ・ネト(フランス)
オデッテ・ジュッフリダ(イタリア)○GS反則[指導3](GS3:04)△アンドレア・キトゥ(ルーマニア)
マイリンダ・ケルメンディ(コソボ)○反則[指導3](3:23)△ジョン・ボキョン(韓国)

【敗者復活戦】
ユリア・カザリナ(ロシア)○GS大内返(GS0:55)△アストリーデ・ネト(フランス)
ジョン・ボキョン(韓国)○横落(2:21)△アンドレア・キトゥ(ルーマニア)

【準決勝】
ルハグヴァスレン・ソソルバラム(モンゴル)○合技[谷落・背負投](2:15)△前田千島
マイリンダ・ケルメンディ(コソボ)○大腰(1:38)△オデッテ・ジュッフリダ(イタリア)

【3位決定戦】
オデッテ・ジュッフリダ(イタリア)○優勢[技有・送足払]△ユリア・カザリナ(ロシア)
前田千島○優勢[技有・隅落]△ジョン・ボキョン(韓国)

【決勝】
マイリンダ・ケルメンディ(コソボ)○反則[指導3](1:50)△ルハグヴァスレン・ソソルバラム(モンゴル)
ケルメンディが左、ルハグヴァスレンが右組みのケンカ四つ。試合が始まるなり、ケルメンディは引き手で袖、釣り手で脇下を掴む得意の形を完成。腰を切る動作を見せながら、相手を場外際に追い詰める。この流れが2度続いた1分3秒、ルハグヴァスレンに消極的の「指導」。さらに続く展開、ケルメンディが引き手で釣り手側の袖を得て腰を切りながら場外に追い込むと、ルハグヴァスレンはこの圧に屈して自ら膝を着いてしまい、1分30秒、偽装攻撃の咎で「指導2」を失ってしまう。早くも後のなくなったルハグヴァスレンだが、ケルメンディのパワーの前に具体的な対抗策を見出だせず、僅か20秒後の1分50秒には自ら場外に出てしまい、場外の咎で「指導3」を失う。ケルメンディがパワーで相手を圧倒、「指導3」による相手の反則負けで優勝を決めた。

【日本代表選手勝ち上がり】

前田千島(三井住友海上)
成績:3位


[2回戦]
前田千島○横四方固(2:24)△エヴェリン・チョップ(スイス)

[3回戦]
前田千島○片手絞(2:23)△ナタリー・ルフィエレ(ドイツ)

[準々決勝]
前田千島○合技[袖釣込腰・大内刈](2:22)△ユリア・カザリナ(ロシア)

[準決勝]
前田千島△合技[谷落・背負投](2:15)○ルハグヴァスレン・ソソルバラム(モンゴル)

[3位決定戦]
前田千島○優勢[技有・隅落]△ジョン・ボキョン(韓国)

■ 57kg級 世界王者芳田司がワールドツアー2連勝、代表選考レースは独走態勢
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57kg級メダリスト。左からラファエラ・シウバ、芳田司、ドルジスレン・スミヤ、サラ=レオニー・シーシク。

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2回戦、芳田司がハディール・エラルミから小外刈「技有」

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決勝、ラファエラ・シウバと対戦した芳田がまず一の矢の大内刈で相手の脚を開かせる。

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この技で膝を着いた相手が立ち上がり掛けると、続いて引込返に飛び込み「技有」

(エントリー39名)

【入賞者】
1.YOSHIDA, Tsukasa (JPN)
2.SILVA, Rafaela (BRA)
3.DORJSUREN, Sumiya (MGL)
3.CYSIQUE, Sarah Leonie (FRA)
5.BOROWSKA, Anna (POL)
5.STOLL, Theresa (GER)
7.KIM, Jisu (KOR)
7.COBAN, Sappho (GER)

日本代表の芳田司(コマツ)がしっかり優勝。畳に現れた瞬間から気力体力の充実明らか、2回戦はハディール・エラルミ(ヨルダン)に触れるなり斬り落とし、僅か28秒で小外刈と横四方固の合技「一本」。3回戦はイヴェリナ・イリエワ(ブルガリア)を崩袈裟固と袖釣込腰の合技「一本」で手堅く下し、準々決勝では2週間前のグランドスラム・パリで3位に入賞し、前戦でエレン・ルスヴォ(フランス)を大内刈で2回投げて下している夙川学院高3年のキム・チスを全く寄せ付けず3つの「指導」を奪って勝利。準決勝もテレザ・シュトル(ドイツ)から内股「技有」を奪って危なげなくファイナルまで勝ち上がった。

決勝は久々好調のリオ五輪王者ラファエラ・シウバ(ブラジル)とマッチアップ。1分34秒、寝勝負からの立ち際のワンチャンスを生かし引込返で「技有」確保。以後を手堅く戦ってそのまま勝利を決め、12月のワールドマスターズに続くワールドツアー2連勝を達成した。

立って躍動、寝れば手堅く、そして48kg級の渡名喜風南同様、「寝から立ち」への継ぎ目のない柔道で相手にチャンスをまったく与えなかった。結局超一線級との対戦は決勝のシウバ戦のみであったが、ここまで完成度が高ければ文句なし。キャリアのベストパフォーマンスである、あのバクー世界選手権の戴冠時を思わせる素晴らしい出来であった。

唯一の対抗馬である玉置桃(三井住友海上)が昨年8月のアジア大会以来いまだにタイトルがない状況を考えれば、日本代表選考レースはいまや芳田の独走である。世界選手権連覇に向けて仕上げの選抜体重別をどう戦うか、進化を止めない芳田の次の上積みに注目したい。

【上位入賞者】
優勝:芳田司(日本)
2位:ラファエラ・シウバ(ブラジル)
3位:ドルジスレン・スミヤ(モンゴル)、サラ=レオニー・シーシク(フランス)

【準々決勝】
芳田司○反則[指導3](3:53)△キム・チス(韓国)
テレザ・シュトル(ドイツ)○大外巻込(0:11)△アンナ・ボロフスカ(ポーランド)
ドルジスレン・スミヤ(モンゴル)○優勢[技有・釣込腰]△サラ=レオニー・シーシク(フランス)
ラファエラ・シウバ(ブラジル)○合技[小内巻込・払巻込](2:50)△サッフォ・コバン(ドイツ)

【敗者復活戦】
アンナ・ボロフスカ(ポーランド)○優勢[技有・一本背負投]△キム・チス(韓国)
サラ=レオニー・シーシク(フランス)○袖釣込腰(1:20)△サッフォ・コバン(ドイツ)

【準決勝】
芳田司○優勢[技有・内股]△テレザ・シュトル(ドイツ)
ラファエラ・シウバ(ブラジル)○優勢[技有・浮落]△ドルジスレン・スミヤ(モンゴル)

【3位決定戦】
ドルジスレン・スミヤ(モンゴル)○片手絞(3:59)△アンナ・ボロフスカ(ポーランド)
サラ=レオニー・シーシク(フランス)○優勢[技有・大腰]△テレザ・シュトル(ドイツ)

【決勝】
芳田司○優勢[技有・引込返]△ラファエラ・シウバ(ブラジル)
芳田、シウバともに左組みのケンカ四つ。前襟を持って距離を取りたい芳田に、奥を叩いて相手を抱き込みたいシウバという構図。双方相手を警戒し合い、組んでは切り離しての組み手争いから試合が開始される。45秒に引き手を得た芳田が「橋本スペシャル」、さらに左大外刈と連続で技を放つが、シウバの懐の深さに無力化されてしまい投げるまでは至らない。ここからは再び組み手争い。1分30秒、芳田は釣り手をクロスに叩き入れて釣り手を得ると、左の大内刈で相手に膝を着かせ、そのまま引込返に潜り込む。両足のコントロールを利かせて背中を着かせ「技有」。そのまま足を抜いて崩袈裟固を狙うが、ここはシウバが長い足を絡みつけて許さず「待て」となる。ここからは双方が腰を引いての袖の絞り合い。横にずれた状態での膠着状態が続き、2分45秒に両者にブロッキングによる「指導」が与えられる。直後の組み際、シウバが奇襲の肩車。芳田はこれを潰して「横三角」で転がし、「腹包み」からの抑え込みを狙う。しかし、ここもシウバが凌ぎ切り「待て」となる。続く攻防の3分25秒、シウバが奥を叩くと芳田が肩車を狙うが、今度もシウバの懐の深さのために不発。さらにこの技が偽装攻撃とみなされてしまい、残り時間は僅か35秒ながら、芳田は「指導2」で後がなくなる。芳田としては苦しい展開だが、ここでシウバのムラ気が露出。なぜかこの状況でスクランブルを掛けず、平常運航の組み手の攻防を始める。芳田はこの好機を逃さず反対に奥襟を得て左方向の支釣込足を見舞い、シウバを畳に転がす。これは尻から落下したためポイントにならなかったが、そのまま上について寝技を展開。足を抜こうとした形のまま試合終了を迎える。芳田が好調シウバを撃破、落ち着いた戦いぶりで優勝を決めた。

【日本代表選手勝ち上がり】

芳田司(コマツ)
成績:優勝


[2回戦]
芳田司○合技[小外刈・横四方固](0:28)△ハディール・エラルミ(ヨルダン)

[3回戦]
芳田司○合技[崩袈裟固・袖釣込腰](2:45)△イヴェリナ・イリエワ(ブルガリア)

[準々決勝]
芳田司○反則[指導3](3:53)△キム・チス(韓国)

[準決勝]
芳田司○優勢[技有・内股]△テレザ・シュトル(ドイツ)

[決勝]
芳田司○優勢[技有・引込返]△ラファエラ・シウバ(ブラジル)

※ eJudoメルマガ版3月2日掲載記事より転載・編集しています。

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