PAGE TOP ↑
eJudo

【eJudo’s EYE】ワールドツアー欧州シリーズ女子日本代表19人「採点表」

(2019年2月27日)

※ eJudoメルマガ版2月26日掲載記事より転載・編集しています。
【eJudo’s EYE】ワールドツアー欧州シリーズ女子日本代表19人「採点表」
男子に続き、グランドスラム・パリ(2月9日~10日)とグランドスラム・デュッセルドルフ(22日~24日)終了時点での、東京世界選手権女子日本代表候補選手の採点を試みたいと思う。評価の基準は、「自身がなし得る仕事をなしたかどうか」。寸評とともにお読み頂きたい。

文責:古田英毅/eJudo編集部

■ 48kg級
eJudo Photo
久々のタイトル獲得となった近藤亜美

近藤亜美 6.0
評価:↑
成績:グランドスラム・パリ優勝


全試合一本勝ちで優勝。昨年5月のグランプリ・フフホト以来実に4大会を挟んで、久々のタイトルである。決勝では12月のワールドマスターズ決勝で「秒殺」を食らったディストリア・クラスニキ(コソボ)からこれぞ近藤という鮮やかな小内刈で一本勝ち。強敵との対戦はこの試合のみであったが、この「締め」の絵が何より良かった。準決勝までの対戦相手は一線級とは言い難かったが、講道館杯やグランドスラム大阪での「投げ切れず自信を失い、抑え切れず体力を失う」悪循環を考えれば次元の違う出来。アジア大会決勝以降どうしても噛み合わなかった歯車が、ようやくあるべきところに復した大会であった。この間の葛藤、これからのキャリアに決して無駄ではないはず。ただし、この沈下と復活がそれぞれ何を因にしてのものであるかは明確に言語化しておく必要があるかと思われる。近藤は天才肌、払腰一発が注目を浴びた時期もあったが、大きく言えばその特徴は技術そのものにはなく、曰く言語化しがたい「勝負強さ」をテコに出世した選手である。何を理由に沈んだのか、何を獲得することで復したのか、今大会、外野の目からは「速い寝技への移行」を志向していることは見て取れたが、これを繰り返して結果を出すうちにメンタルが復した、という観察を越えた、明確な技術的上積みを見出すことはできなかった。おそらくそれは内面にあるもの、本人の中では「これまでと違う」ポイントは明確になっているかと思われるが、今後安定した強さを発揮するため、この間の葛藤をキャリアに確実に生かすため、そしてとにかくこの復調を継続するため、しっかりした自己検証に期待したい。

遠藤宏美 4.0
評価:↓
成績:グランドスラム・パリ3回戦敗退


3回戦敗退。リオ五輪から3年連続世界大会で銅メダルを獲得しているガルバトラフ・オトゴンツェツェグ(カザフスタン)を相手に粘り強く戦っていたが、小外刈「技有」を奪われてシナリオ崩壊。残り3秒、飛び掛かって大内刈の形で作用足を畳に落とした瞬間に浮技一撃を食って一本負けを喫した。線が細く、小内刈と担ぎ技を軸に戦うクラシックな軽量級タイプの遠藤がパワー派揃う国際戦線で戦うには、徹底して状況を積み上げる必要がある。「指導」を先行することをベースに戦わないといけないわけだが、パワー派ガルバトラフにこれを壊されるともう追いかける術はなかった。良くも悪くも「破れ」の少ない柔道の構造の弱点を見せてしまったと言える。ガルバトラフはあまりの試合出場の多さゆえか、今シリーズは疲労が目立っていったいに不調。相手が悪かったというエクスキューズは今回に限っては成立し難い。粘り強く踏みとどまっていた代表戦線からは、これで実質脱落となった。

eJudo Photo
渡名喜風南は凄まじい出来を披露

渡名喜風南 6.5
評価:↑
成績:グランドスラム・デュッセルドルフ優勝


圧勝。集中力高く、動き鋭く、隙を見せぬまま全試合一本勝ち。全ての試合、全ての局面で空間を支配し続け、ただの一瞬も相手に希望を与えなかった。水準以上の敵との対戦はこれまで日本勢に1勝8敗と分が悪い韓国の新1番手候補カン・ユジョン(※ただしこの1勝は2017年アジア選手権で渡名喜の反則負けで献上したもの。渡名喜が「技有」2つを先行しながら今でいう「ブリッジ一本」で逆転を許した)のみであったが、それがどうでもよくなるほどの、そして前々週の近藤亜美の感動的な復活Vが霞んでしまうほどの圧倒的な勝ちぶりであった。こちらは得意の寝技を生かすべく、「寝から立ち」への先鋭化という明らかな上積みもあった。決勝はカンから大内刈「技有」に引込返「一本」といずれも立ち際の技で相手を置き去り。ルール解釈での最前線である「寝から立ち」をもっとも効果的に使っているのはどうやら実は日本勢なのだが、この評価に大きく寄与したのがこの渡名喜の、寝と立ちの境目のない戦型であった。今シリーズにおける48kg級世界では頭一つ抜けた強さ、現在この階級はダリア・ビロディドの「一強」構図と見て間違いないのだが、実は「1(ビロディド)―1(渡名喜)―続くグループ」なのではないか、渡名喜はビロディドの存在なくばおそらく圧倒的な王者として君臨したであろう、思わずそう思ってしまうほどの素晴らしい強さであった。この先は、ターゲットが明確な状況で「自分のやりたいこと」を上積みするのではなく、「特定の相手を倒すための選択的行動」を的確に割り出し、実行する知性と遂行力の有無が問われる。

■ 52kg級
eJudo Photo
しっかり優勝、サバイバルマッチを生き残った志々目愛

志々目愛 6.0 
評価:→
成績:グランドスラム・パリ優勝


しっかり優勝。海外勢の人材が薄い52kg級であるが、リオ五輪2位のオデッテ・ジュッフリダ(イタリア)に48kg級世界王者ムンフバット・ウランツェツェグ(モンゴル)と対戦相手のグレードも高め。なにより決勝の角田夏実戦に勝利を収めたという結果が非常に大きい。強化が敢えて志々目と角田を同じ大会にまとめて突っ込んだのは、ここで直接噛み合わせることで選抜体重別を前に成績に差をつけたかったからとみて間違いない。既に世界王者阿部詩が代表に内定している状況下で、もし2枠目行使があり得るとすればそこに中途半端な成績は要らないということだろう。志々目はこのサバイバルに生き残ったと言える。ただし内容はGS延長戦を戦っての「指導2」対「指導3」という辛勝であり、例えばこれで積年のライバル対決についに決着がついた、というほどの明確なものではない。勝つか負けるかで大きな差があるのは間違いないが、「2枠目」を、それも既に世界選手権2回を経験している志々目が他階級の選手と競らねばならないという状況を考えれば、いま少しのインパクトが欲しかったというところではある。内容面では「韓国背負い」を完全に自家薬籠中の物としており、技術の上積みという項でも合格。あとは唯一最大のターゲットであるマイリンダ・ケルメンディ(コソボ)への勝利歴と相性の良さを強化がどう評価するか。 権利者として生き残った志々目、あとは選抜体重別に勝利して、強化の判断を待つのみ。

eJudo Photo
今回も得意の巴投を決めた角田夏実

角田夏実 5.0 
評価:→
成績:グランドスラム・パリ2位


持ち味を存分に発揮して決勝まで進んだが、唯一無二の勝負どころである志々目愛戦を落として2位。どちらが勝ってもおかしくない試合であったが、形上ついてしまった勝敗の意味は重い。準々決勝で戦ったアストリーデ・ネト(フランス)以外の選手の「格」が水準以下であることもあり、2位という成績に比して評価を抑えざるを得ない大会となってしまった。今大会ただ1つのポイントであった志々目戦、「指導3」失陥前のあの60秒余が実に悔やまれる。選抜体重別は僅かに権利を残すが、与えられる位置はあくまでジョーカー。世界王者クラスの競技力を持つ角田にとっては悔しい事態だが、席の数は決まっている。これは致し方ないところ。
余談であるが今シリーズ「両脚の爪先を突っ込んで屈伸する」角田式の巴投は男女を問わず流行の気配、明らかに術者が増えた。技術トレンドの発信源としていまやその存在感稀なるものがある。

eJudo Photo
前田千島はマイリンダ・ケルメンディとの対決に辿り着けず

前田千島 4.5 
評価:↓
成績:グランドスラム・デュッセルドルフ3位


海外の強豪の数が極めて限られる52kg級にあって、3位という成績は額面通りに評価できない。準決勝ではここまで日本人選手に3連敗中のカデカテゴリの選手、17歳のルハグヴァスレン・ソソルバラム(モンゴル)に2度投げられて完敗。遠間から釣り手で片襟を差しながら、目を瞑るがごとく無理やり座り込んだ右大外落を、それも中途で辞めて巻き込み潰れんとしたところを返されて「技有」失陥、さらに片手で組み手を争うさなかに「韓国背負い」を食って2つ目の「技有」と、負けの形も悪かった。ルハグヴァスレンは間違いなく伸びしろのある選手に思われるが、前週のヨーロッパオープンで武田亮子(龍谷大2年)に一本負けしたばかりの相手にここまでやられてしまったのだから、高い採点は出来ようもない。既に阿部詩が代表に内定、対抗馬が2017年世界選手権の金銀メダリストである志々目愛と角田夏実に絞られたここまでの人員で既に「枠いっぱい」のはずの強化が敢えて前田を単独派遣した理由は、講道館杯優勝にグランドスラム大阪5位と健闘した前田に対する誠意と、何より、少しでも対戦データの欲しいケルメンディ出場の可能性に日本チーム全体として備えたということと解釈する。それが比較的組み合わせに恵まれたこの状況で手合わせにすら届かなかったのだから、これは強化をひっくるめて「ミッション失敗」と総括するしかない。同僚の57kg級玉置桃同様、決まった形のないがごとくの連続攻撃としぶとい寝技を旨とする前田がケルメンディと戦ったらどうなるか、これは日本にとってぜひとも欲しいデータであったはず。メダル確保に配慮して加点したが、それでもこの点数に収めざるを得ない。

■ 57kg級
eJudo Photo
玉置桃は3位を確保も、アジア大会優勝後いまだタイトルに手が届かず

玉置桃 5.0
評価:→
成績:グランドスラム・パリ3位


準々決勝、グランドスラム大阪で勝利した出口クリスタ(カナダ)に大外刈で一本負け。3位獲得はさすがだが、僅か31秒で畳に埋められたこの一番の印象が大きく残ってしまったことは否めない。以後敗者復活戦でエレン・ルスヴォ(フランス)を2度投げての合技「一本」は見事であったが、強豪多き大会ながら当たりに恵まれず、これぞという選手からの勝利はこの1試合のみ。気づけばアジア大会の戴冠以後、これで既にワールドツアー3大会を経るもタイトルはなし。ライバルの芳田司が素晴らしい出来で優勝したこともあり、代表争いでは大きく後退したとみなさざるを得ない。

eJudo Photo
五輪王者ラファエラ・シウバとの決勝を戦う芳田司

芳田司 6.0
評価:↑
成績:グランドスラム・デュッセルドルフ優勝


隙のない進退、切れ目のない攻撃でしっかり優勝。準々決勝ではグランドスラム・パリ3位で勢いにのるキム・チス(韓国)を「指導3」で退け、決勝は五輪金メダリストのラファエラ・シウバ(ブラジル)を引込返「技有」で下した。高い集中力と「寝→立ち」の切れ目のなさは、この日同じく素晴らしい出来で優勝した渡名喜風南と相似。日本チーム全体のポリシーの共有、強化サイドの戦略レベルの高さが感じられる内容だった。グランドスラム大阪で形上躓いた世界王者芳田だが、以後はワールドマスターズにこのグランドスラム・デュッセルドルフとハイレベル大会2つに連勝。玉置の陥落という相対的な状況を考えると、現状代表争いは独走と考えて良いかと思われる。

■ 63kg級
eJudo Photo
鍋倉那美は3位確保も、クラリス・アグベニューとの再戦にはたどり着けなかった

鍋倉那美 5.5
評価:→
成績:グランドスラム・パリ3位


ワールドマスターズ決勝に引き続いて絶対王者クラリス・アグベニュー(フランス)との再戦を期したが、その実現を目前にした準決勝で、過去5戦4勝と得意にしているはずのティナ・トルステニャク(スロベニア)に競り負け。トルステニャクはこれまで一貫して日本人に分が悪く、かつてはアグベニュー―トルテニャク―日本人選手(田代未来)という3すくみに近い関係があった。得意とするトルステニャクを媒介にすることで日本選手がトップレベルと絡み続けたわけである。ワールドマスターズの善戦であるいはこの日本人パートを鍋倉が務めるという目も出て来たかに思われたが、そのチャンスはひとまず潰えた。これぞの首級は3位決定戦で大外刈「一本」で下したもと57kg級のキャサリン・ブーシェミン=ピナード(カナダ)に留まり、国際的な序列は上がらず、しかし大きく下がることもなく現状維持。ただし準々決勝の直接対決で能智亜衣美を下したことで、代表争い的には半歩前進である。

eJudo Photo
能智亜衣美は3位決定戦を落とし、5位に沈んだ

能智亜衣美 4.5
評価:↓
成績:グランドスラム・パリ5位


準々決勝で鍋倉那美にGS延長戦「指導2」対「指導3」で競り負けたこと以上に、かつて勝利しているアンドレア・レスキ(スロベニア)に大外巻込「一本」で敗れた3位決定戦はいただけない。ここはしっかり立ち直って、表彰台には上がっておくべきだった。鍋倉以外の対戦相手に大物はおらず、国際的な序列の上でも、代表争いという観点でも、上積みのないまま今シリーズを終えることとなってしまった。2016年以来選抜体重別を制すること2度、ワールドツアーで4度優勝してと実力確かながらもなかなか世界の舞台に届かない能智であるが、ようやくチャンスを掴みかけたタイミングで我慢が利かなかった。代表争いの権利は実質なくなったと考えるべきだ。

eJudo Photo
瑕疵なくしっかり優勝を飾った田代未来

田代未来 6.0
評価:→
成績:グランドスラム・デュッセルドルフ優勝


集中していた。実力以上の力を出さねばならないような強豪との対戦は一切なく、多少歯ごたえのある敵といえば3回戦のヤン・ジュインシア(中国)が上限という大会であったが、危ない場面一切ないまま疾走。内股透「技有」で勝ち抜いたこの試合以外は全て一本勝ち(反則1試合含む)で順当に頂点に立った。超強豪とそれ以外の二極分解が激しくなりつつある63kg級は、日本勢にとって「アグベニューが出るか出ないか」が優勝かそれ以外を分ける決定的要素となりつつあるが、今回は日本の第一候補の田代にこの「アグベニューなし」のターンが回って来た形。同時出場の土井雅子に一本勝ちしたダリア・ダヴィドワ(ロシア)も決勝でしっかり大内刈「一本」に仕留めており、瑕疵のない大会であった。大物狩りもまたないということで採点は抑えめだが、為すべきことをしっかり為し、代表レースの最前線で最終予選の選抜体重別を迎えることとなる。

eJudo Photo
土井雅子は3位を確保

土井雅子 5.0
評価:→
成績:グランドスラム・デュッセルドルフ3位


グランドスラム大阪優勝により勝ち取った大チャンス。前進圧力に力強い寝技と持ち味をしっかり発揮して準決勝まで勝ち抜いたが、ここでダリア・ダヴィドワにまさかの敗退。切り返しの小外刈にしぶとい寝技と大枠順調に思われたが、ケンカ四つの相手との組み際、遠間から腰を先に入れようと右脚を伸ばしたところを振り崩されてしまい、谷落「一本」に沈んだ。現状の土井の力と相手の序列を考える限りでは十分勝利が見込めた試合。決勝で田代に勝利すれば代表権が十分見えてくる位置につけていたわけだが、この1アクションで一気の後退を余儀なくされた。柔道が派手なタイプではないだけに、土井の強化へのアピールは「結果」であるべき。この試合以外は5戦して寝技の勝利が3、「指導3」の反則による勝利が2。持ち味を出せていただけになんとも勿体ない試合であった。

■ 70kg級
eJudo Photo
終わってみればこれが最大のピンチだった。大野陽子がエルビスマール・ロドリゲスから膝車「技有」

大野陽子 6.5
評価:↑
成績:グランドスラム・パリ優勝


70kg級世界を席巻した2018年春シーズンを思い起させる出来。2回戦でエルビスマール・ロドリゲス(ベネズエラ)を相手に「指導2」ビハインドのまま本戦を終えんとしたときには昨秋以来の悪い流れを払拭出来ずかと思われたが、ここを膝車「技有」で突破すると以降は見違えるような柔道。準々決勝、マリー=イヴ・ガイ(フランス)の抱きつきを縦回転の内股「一本」に切り返した場面はこの日全階級を通じたハイライトの一であった。既に新井千鶴が代表に内定、「一抜け」を果たした後でタイミングはずれてしまったが、為すべきことを全て為した大会であったと評して良いだろう。マルゴ・ピノ(フランス)を相手に地元判定に屈せず、あくまで「指導3」を獲り切った決勝の「しつこさ」もこの人の本領発揮であった。

eJudo Photo
新添左季はマリー=イヴ・ガイを内股「一本」に仕留めて3位を確保

新添左季 5.0
評価:↓
成績:グランドスラム・パリ3位


5戦して4一本勝ち、大野同様地元の1番手マリー=イヴ・ガイを内股一撃で屠って銅メダル獲得と本来相応に高く評価されるべきなのだろうが、準決勝での負け方が悪すぎた。ケンカ四つのマルゴ・ピノを相手のGS延長戦、内股で展開を得て「指導2」対「指導1」でリード、どうやら勝ちが見えるところまで漕ぎつけながら、担ぎ技のある相手に遠間から両手で押しての大外刈というちょっとあり得ない選択。体が伸びたままやむなく着地したところを後回り捌きの巻き込みの形で返され、一本負けを喫した。相手が反転したら自分が崩れ過ぎていたがゆえに膝裏を支点にひっくり返ってしまったという体。数々の「ありえない」無茶な形をパワーと技の威力で無理やり塗りつぶして来た新添だが、ここまで理のない選択をしては、それは負ける。素材の良さと地力の高さを買われ続けて来た新添だが、切所でここまで大きな判断ミスを犯すようでは首脳陣の信頼を得るのは難しいのではないか。ぜひ世界選手権で見てみたい選手であったが、期待大きくしぼんだ大会であった。

■ 78kg級
eJudo Photo
梅木真美は伏兵チェン・フェイに屈するも3位に踏みとどまった

梅木真美 5.5 
評価:→

成績:グランドスラム・パリ3位

ワールドマスターズを制して迎えた大事な試合であったが、突き抜けられず。もと70kg級のチェン・フェイ(中国)に袖釣込腰「技有」で敗れてしまい、最終結果は3位だった。勝利した4戦の内容を見る限り十分頂点に届く力があるかと思われたが、少々残念。生き残りをかけた3位決定戦における佐藤瑠香との直接対決を「一本」で制したことのみが収穫。自身は突き抜けられなかったが、秋以降の成績で競っていた佐藤を直接叩き落とし、相対的には代表争いで半歩前進した形となった。波の激しい選手の多いこの階級では、数少ない安定株と評価すべきか。ただし強化サイドがこの階級に本来望んだシナリオに比べると、一段グレードが下がる形で選考が進んでいるということはひとこと指摘しておかねばならないだろう。

eJudo Photo
準々決勝を戦う佐藤瑠香

佐藤瑠香 4.5 
評価:→

成績:グランドスラム・パリ5位

女子日本代表・増地克之監督が2019年度最大のターゲット選手として名を挙げていたマドレーヌ・マロンガ(フランス)に、1分25秒の間に「技有」「一本」と2度投げられる完敗。そのショックゆえか大事な梅木真美との直接対決も、それも互いが得意な寝勝負で落としてしまい最終成績は5位であった。年間通じて浮き沈みあれどこの冬季シーズンに唐突に復調して爆勝、代表戦線に割って入るのがこの選手のルーチンであったのだが、今年は得意のはずの欧州シリーズでも「波」を見せてしまった。3度(無差別を入れると4度)の世界選手権でいずれも本来の力を発揮出来なかった佐藤としては「続けて勝ってみせる」ことこそ最大のアピールであるはずだが、これでは強化としては買えまい。とはいえ突き抜けた選手が誰もいない78kg級にあっては、代表争いの権利潰えたとまでは言えない状況。選抜体重別で最後の勝負に挑む。

eJudo Photo
1回戦、2018年世界王者濵田尚里が衝撃の一本負け

濵田尚里 1.0 
評価:↓

成績:グランドスラム・デュッセルドルフ1回戦敗退

0点でない根拠はいったい何なのか、と問われると言葉に窮してしまう。無事計量をクリアしてともかく畳に上がったことに対する「出場点」とするしかない。畳に在った時間僅か11秒、遥か格下のアントニーナ・シュメレワ(ロシア)の大外刈一発に沈んで1回戦で敗退となった。もともと濵田は受けが硬く、「飛ぶときは派手」なこの点では欧州型の選手。ゆえに出来上がった絵のインパクトは比類なし、まさしく「吹っ飛んだ」と形容すべき近来稀なる強烈な一撃であった。右相四つの相手が引き手側(自身の釣り手側)に滑った、これに頭を下げたまま素直に付き合って横にスライド移動という挙に出たその理由はわからない。腰の浮いたその進退からは初戦で硬くなっていたということは推察出来るが、それにしてもこれはない。これまでも世界選手権における「相手の内股を両脚で挟んでのペンギン歩き後退」など、理屈に合わない行動を無理やりパワーで糊塗して来た濵田だが、大きな横移動のさなかに真横への一撃を食うという、この強い「理」の前にはさすがに為す術がなかった。敢えて教訓を探すとすれば。濱田は寝技をやれば海外勢の誰にも負けない、しかし本人は立ち勝負を好み、このフィールドではパワフルな一撃というアドバンテージはあるが、その受けの方法論と身体特性から「飛び」やすく、イチかバチかのギャンブル性が高い。これを踏まえれば、相手がたとえ格下であっても、パワーのある海外選手に組み手や足技の掘割ないままガップリの組み合いを挑めば、こういう不測の事態が起こる危険は常にある、ということか。

常々考えて各所で表明してもいるのだが、東京五輪の代表選考、この階級だけは別のやり方が必要なのではないだろうか。実力の最高到達点は全員世界一クラスだが、調子を数か月間維持するだけの「理」に欠ける。本気で勝ちにいくのであれば、もう直前で一番調子が良い選手を出す以外にないのではなかろうか。

■ 78kg超級
eJudo Photo
負傷の素根輝はそれでも3位に踏みとどまった

素根輝 5.0
評価:→
成績:グランドスラム・パリ3位


準決勝のイリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)戦の際に、隣の畳の男子選手が突っ込んで来るアクシデントで膝を負傷。その右膝を狙われた格好の巻込技に転がってしまい、最終結果は3位だった。ワールドマスターズに優勝して迎えた今大会、代表争いのライバルである朝比奈沙羅にもっか3連勝中であることを考えれば一気に抜け出すチャンスであったが、残念であった。ただし負けは負け。大型両組み選手のスイッチ技に膝を捕まえられたという点がかつてのワン・ヤン(中国)戦の敗戦に被るのはひとつ指摘しておかねばならないし、いかにエクスキューズありとは言っても、上背のない素根が大型選手に転がされた絵は周囲に強く印象づけられてしまったことだろう。大型選手を相手にするとどうしても手数と時間が掛かる傾向にある素根だが、最短距離で相手を屠る方法論をより明確に打ち立てる必要がある。まずは負傷が軽いものであることを心から祈る。

eJudo Photo
準決勝、膝車で相手を転がす朝比奈沙羅

朝比奈沙羅 5.0
評価:→
成績:グランドスラム・デュッセルドルフ2位


かつて敗れたユーソン(中国)が第1シードのイダリス・オルティス(キューバ)の直下に配置、しかもこの組み合わせを嫌ったか当日に棄権。どうやら流れは朝比奈にありかと思われたが、決勝でオルティスに「指導2」対「指導3」で敗れて優勝はならず。素根のV逸直後という好機を生かし切れず、復権とまではいかなかった。「海外勢に強い」という最大の売りをいったん手放した形であり、相応に痛い黒星。オルティス戦は内容にもやや閉塞感あり。大型化が進んで昨年来前技が激減、もはや支釣込足か膝車(この日も2度決めた投げはいずれも膝車)一択の朝比奈であるが、オルティスは低く構えてジリジリと前に出るためこの技が効かず、かつ左右の担ぎ技で連続攻撃を許すこととなってしまった。オルティスは足技が得意で燕返を常に意識しながら攻防を進めており、牽制の足技を出すのもなかなかに危険。たまたま「指導」がどちらかに振れたという体の試合ではなく、構造的な敗北であったと喝破しておきたい。

※ eJudoメルマガ版2月26日掲載記事より転載・編集しています。

→eJudoトップページに戻る
→「ニュース・マッチレポート」に戻る
→「書評・DVD評」に戻る