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大野陽子が見違える出来で70kg級制覇、78kg級はマロンガが世代交代告げる圧勝V・グランドスラムパリ2019最終日女子3階級レポート


※ eJudoメルマガ版2月20日掲載記事より転載・編集しています。
大野陽子が見違える出来で70kg級制覇、78kg級はマロンガが世代交代告げる圧勝V
グランドスラムパリ2019最終日女子3階級レポート(70kg級、78kg級、78kg超級)
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日時:日時:2019(平成31)年2月10日
場所:AccorHotels Arena of Bercy (フランス・パリ)

本文・総評:古田英毅
決勝戦評:小林大悟

■ 70kg級 大野陽子が復活V、新添左季は理に欠ける柔道で3位に終わる
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70kg級メダリスト。左からマルゴ・ピノ、大野陽子、新添左季、バーバラ・ティモ。

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2回戦、「指導2」失陥のまま本戦を終えんとしていた大野陽子だが、残り5秒でエルビスマール・ロドリゲスから膝車「技有」。

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準々決勝、大野がマリー=イヴ・ガイから左内股で「一本」。

(エントリー37名)

【入賞者】
1.ONO, Yoko (JPN)
2.PINOT, Margaux (FRA)
3.NIIZOE, Saki (JPN)
3.TIMO, Barbara (POR)
5.GAHIE, Marie Eve (FRA)
5.NIANG, Assmaa (MAR)
7.ZUPANCIC, Kelita (CAN)
7.MATIC, Barbara (CRO)

今大会における日本代表の2番手、欧州遠征になんとか滑り込んだ形だったはずの大野陽子(コマツ)が好内容で優勝。最大のピンチは実は初戦のエルビスマール・ロドリゲス(ベネズエラ)戦で、相手の圧力を捌きかねて1分49秒、2分37秒といずれも場外の咎で2つの「指導」失陥。もはや勝ち上がりの望みは薄いと思われたが、残り5秒、GS延長戦突入確実と相手が集中を切った瞬間を見逃さず、場外から畳に戻ろうとしたロドリゲスの出籠手を膝車で抑えて「技有」獲得。これで逆転勝利を決めると、一息ついた次戦はミリアム・ブートケライト(ドイツ)から内股「技有」で手堅く勝利。

圧巻は準々決勝。第1シードのマリー=イヴ・ガイ(フランス)を畳に迎えると、ケンカ四つのガイが大野に「内側から上に通す」良い形の釣り手を与えたまま抱きつきの右小外掛に打って出てきた、その致命的ミスを見逃さない。そのまま呼び込んで左内股で放り投げ、2分31秒豪快「一本」。続く準決勝はバルバラ・ティモ(ポルトガル)に41秒、深々左一本背負投に入り込まれて「技有」失陥。頭は下がり、相手の位置は深く、しかも肩を抑えられて内側に押し込まれるという、「一本」にならないのが不思議なほどの一撃であったが、ともあれなんとか命拾い。逆襲を期した1分27秒には相手の左一本背負投からの立ち際に腕を抱えて「腕緘返し」。これで引込返「技有」を確保するとそのまま流れるような動きで抑え込み、最後は崩上四方固でフィニッシュ。逆転の合技「一本」で決勝進出を果たした。

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決勝、大野がマルゴ・ピノを押し込み続ける。

決勝では地元の大声援を受ける試合巧者マルゴ・ピノ(フランス)とマッチアップ。ともに「指導2」ずつを失ったGS延長戦にラッシュ、立っては圧力で場外に弾き出し、寝ては一方的に攻めてとひたすら状況を積み続ける。地元選手ということもあり主審はなかなか動かず、あるいは戦略を変更するべきかとも思われたが大野はあくまでこの戦法を継続。GS2分50秒、またもや耐え切れずにピノが畳を割ると主審さすがに試合を止めて場外の「指導3」を宣告。これで大野の優勝が決まった。

この日の大野、失点はあったものの全体としては非常に良い出来。準決勝、ピノの立ち際に決めた思い切りのよい「腕緘返し」からの抑え込みにこの日のパフォーマンスは端的。あのバクー世界選手権の重たい動きと視野狭窄が嘘のよう、憑き物が落ちたような状況判断の早さと溌溂とした動きであった。

ただし。逆説的ではあるが、出来が良ければ良いほど「あの世界選手権はいったい何だったのか」という疑問、本番に弱いという評価もまた甘受せねばならないだろう。世界選手権の敗北を受けたグランドスラム大阪では3位決定戦で新添左季(山梨学院大4年)の力づくの正面突破に屈し、2度投げられて完敗。実は国内における序列はこの直接対決で既にいったん定まった後である。1ルーチン復活が遅かったのでは、という見方も出来なくはない。

既にこの階級は新井千鶴が東京世界選手権代表に内定。今年30歳になる、それも世界選手権代表を1度経験している大野が他階級の事情を振り切って2枠目に選出される可能性は決して高くない。大野もそれは十分感じているはずだが、それでも、今出来る最大限の成果をしっかり出したという大会。大野の意地を感じた1日だった。

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準決勝、ピノは新添左季を相手に担ぎ技を繰り出して粘る

ワールドマスターズを制覇して勢いに乗る新添左季は順調に勝利を重ねながら準決勝で苦杯。粘戦タイプのピノを相手に序盤優勢、明らかに実力は上だったが担ぎ技で粘られるうちに戦術の幅の狭さを悟られて徐々に手が詰まっていく。「指導2」リードで迎えたGS延長戦4分半を過ぎたところ、ケンカ四つで背負投を狙う相手を立て続けに左内股で崩してどうやら新添が優位を取り始める。しかしこの自らの内股が良く効いている状況で、それも担ぎのある選手に対し、しかも遠間で待ち構えられているにも関わらずなんと両腕を突っ張り押しての左大外刈に打って出る暴挙。脚も腕も伸びたこのアクションに当然ながら体は伸び、ピノが一歩下がって左払巻込の形で切り返すともはやまったく制動が効かない。そのまま転がって「技有」、地元ピノの大逆転劇に観客席は熱狂に包まれた。

とにかく理由がわからない。前技が良く効いている状況で、担ぎのある相手に対し、それも「指導」2つのリードがあるのに手も脚も伸び切らせての後ろ技一発勝負。これまでも「理」のなさを身体能力とパワーで無理やり糊塗し、逆説的にそのポテンシャルの高さを見せつけてきた新添だが、それにしてもこれはさすがに度を超えている。内股一択で3つ目の「指導」、あるいは窮した相手のミスを返してポイント奪取、という手堅い展開が見えていなければいけない場面。例えこの見方に賛否あるにしても、少なくともリスクを冒すような場面ではまったくなかった。

「理」のなさは70kg級の次代をリードすると目されるマリー=イヴ・ガイも同様、前述の通り準決勝では大野に完璧な釣り手を与えながら抱き勝負に出る愚を犯し、内股一発に沈んでいる。理屈を無視したパワー派の噛み合いといえば78kg級の専売特許であるが、この傾向が70kg級に降りてきているのではないか。試合を見る目のあるピノがその決して高くない地力に比して最近成績を残す傾向にあるのは、周囲の「78kg級化」にも因があるのかもしれない。

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3位決定戦、新添はガイを左内股「一本」で退ける

ともに、「ポテンシャル極めて高く」かつ「ありえないミスをした」次代の大物2人、新添とガイは3位決定戦で激突。新添が引き手で袖、釣り手で奥襟を内側から得る完璧な組み手を作ったまま腰の入れ合いに誘い、これを受け入れたまま攻防に応じたガイを2分16秒鮮やかな左内股「一本」で斬り落として銅メダルを確保した。もう片側の3位決定戦ではティモがアッスマ・ニアン(モロッコ)を下して表彰台に登攀。

ここ数年緩やかに海外勢全体のレベルが落ちてきている70kg級であるが、その中にあって「理」のないパワー派同士の噛み合いという傾向がひとつ顕在化している。昨年から感じられたこの気配が、いよいよ濃くなってきたパリ大会であった。

上位入賞者および準々決勝以降の結果、決勝の戦評と日本代表選手全試合の結果は下記。

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優勝の大野陽子。国際大会の優勝は昨年2月のグランドスラム・デュッセルドルフ以来。

【上位入賞者】
優勝:大野陽子(日本)
2位:マルゴ・ピノ(フランス)
3位:新添左季(日本)、バルバラ・ティモ(ポルトガル)

【準々決勝】
大野陽子○内股(2:32)△マリー=イヴ・ガイ(フランス)
バルバラ・ティモ(ポルトガル)○合技[小外刈・外巻込](3:30)△ケリタ・ズパンシック(カナダ)
マルゴ・ピノ(フランス)○優勢[技有・袖釣込腰]△バルバラ・マティッチ(クロアチア)
新添左季○足車(0:56)△アッスマ・ニアン(モロッコ)

【敗者復活戦】
マリー=イヴ・ガイ(フランス)○優勢[技有・大内刈]△ケリタ・ズパンシック(カナダ)
アッスマ・ニアン(モロッコ)○合技[浮技・横車](1:44)△バルバラ・マティッチ(クロアチア)

【準決勝】
大野陽子○崩上四方固(1:51)△バルバラ・ティモ(ポルトガル)
マルゴ・ピノ(フランス)○GS大外返(GS1:56)△新添左季

【3位決定戦】
新添左季○内股(1:44)△マリー=イヴ・ガイ(フランス)
バルバラ・ティモ(ポルトガル)○合技[払巻込・縦四方固](4:00)△アッスマ・ニアン(モロッコ)

【決勝】
大野陽子○GS反則[指導3](GS2:50)△マルゴ・ピノ(フランス)
大野が左、ピノが右組みのケンカ四つ。大野が圧を掛けながら前に出て、ピノが担ぎ技で凌ぐという構図で本戦の4分間が終了。お互いに「指導2」を取り合い、試合はGS延長戦へと突入する。GS延長戦も大枠は本戦と同じ様相。しかし時間が経過するにつれて、スタミナに勝る大野の優位が増していく。ピノは地元の声援を受けて粘るが、立っては圧力で押し込まれ、伏せては寝技で一方的に攻められてと我慢する場面ばかりでさすがに消耗。GS2分50秒、ついに圧を捌き切れずに畳を割り、場外の咎で3つ目の「指導」を失う。大野が「指導3」の反則で優勝を飾った。

【日本代表選手勝ち上がり】

大野陽子(コマツ)
成績:優勝


[2回戦]
大野陽子○優勢[技有・膝車]△エルビスマール・ロドリゲス(ベネズエラ)

[3回戦]
大野陽子○優勢[技有・内股]△ミリアム・ブートケライト(ドイツ)

[準々決勝]
大野陽子○内股(2:32)△マリー=イヴ・ガイ(フランス)

[準決勝]
大野陽子○縦四方固(1:51)△バルバラ・ティモ(ポルトガル)

[決勝]
大野陽子○GS反則[指導3](GS2:50)△マルゴ・ピノ(フランス)

新添左季(山梨学院大4年)
成績:3位


[2回戦]
新添左季○合技[内股・内股](2:28)△アレナ・プロコペンコ(ロシア)

[3回戦]
新添左季○横四方固(1:59)△スン・シャオチエン(中国)

[準々決勝]
新添左季○足車(0:56)△アッスマ・ニアン(モロッコ)

[準決勝]
新添左季△GS大外返(GS1:56)○マルゴ・ピノ(フランス)

[3位決定戦]
新添左季○内股(1:44)△マリー=イヴ・ガイ(フランス)

■ 78kg級 優勝は全試合一本勝ちのマロンガ、突き抜けた選手出ぬ日本代表争いの混沌は継続
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78kg級メダリスト。左からルイーズ・マルツァーン、マドレーヌ・マロンガ、チェン・フェイ、梅木真美。

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準決勝、マドレーヌ・マロンガが佐藤瑠香から大外刈でまず「技有」。

(エントリー30名)

【入賞者】
1.MALONGA, Madeleine (FRA)
2.MALZAHN, Luise (GER)
3.CHEN, Fei (CHN)
3.UMEKI, Mami (JPN)
5.YEATS-BROWN, Katie-Jemima (GBR)
5.SATO, Ruika (JPN)
7.TCHEUMEO, Audrey (FRA)
7.POWELL, Natalie (GBR)

フランスの新エース、マドレーヌ・マロンガ(フランス)が全試合一本勝ちで優勝。1回戦でカレン・スティーフェンソン(オランダ)を2分25秒大外刈「一本」、2回戦でライア・タラールン(スペイン)を1分46秒片手絞「一本」で下して順調に勝ち上がり、この日のハイライトである準々決勝、同国の先輩オドレイ・チュメオ(フランス)戦を迎える。長年フランスのエースを務めたチュメオと新鋭マロンガ、会場熱狂の好カードであったが、この試合は僅か52秒、凄まじい勢いの小外掛一発でマロンガが一本勝ち。チュメオが釣り手で奥、マロンガが背中を抱いての待ったなしの体勢からマロンガが左小外掛。チュメオは右内股で迎え撃つが、マロンガはいったん脚を揚げられながら、これを強引に押し戻してあくまで左小外掛で勝負。その左が奥脚まで届く深い一撃、首まで抱いて死に体を強いた完璧な「一本」。残酷なほどコントラストの効いた形で勝利を果たし、ベスト4進出決定。

迎えた準決勝は日本代表の佐藤瑠香(コマツ)を圧倒。「指導2」対「指導1」でリードの1分11秒、佐藤が右一本背負投から顔を上げたところを釣り手で肩越しに後帯を掴み、右大外刈で押し込んでまず「技有」。直後の1分23秒には相四つ横変形の組み合いから右大外刈で真っ向叩き落とし完璧な「一本」。これで決勝進出を決めた。

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決勝、マロンガがルイーズ・マルツァーンから大外巻込「技有」

決勝は初戦でマルヒンデ・フェルケルク(オランダ)を合技「一本」、準々決勝でナタリー・パウエル(イギリス)を大外刈「一本」で破るなどこの日好調、ここまで全試合一本勝ち(「指導3」の反則含む)のルイーズ・マルツァーン(ドイツ)とマッチアップ。この試合は開始23秒に右大外巻込で「技有」確保、以降は危うく「技有」失陥という場面もあったがこれがスルーされる幸運もあり、2分14秒までに3つの「指導」を奪って快勝。見事全試合一本勝ちで優勝を決めた。

地元のビッグイベントで圧勝V、しかも先輩チュメオを完璧すぎる形の「一本」で破ってと、この大会をもってフランスのエースは完全にマロンガに移ったという印象。強者集ったトーナメントだったが、この日の主役は間違いなくこの人だった。

言及すべき注目選手はチェン・フェイ(中国)。かつて70kg級でロンドン五輪5位、田知本遥と度々激戦を繰り広げたあの選手である。2016年11月のグランプリ青島以降国際大会に姿を現さず引退したものと思われていたが、階級を上げて電撃復帰。復帰初戦となった1回戦でなんとマイラ・アギアール(ブラジル)を後袈裟固「一本」で破ると、準々決勝ではワールドマスターズで優勝したばかりの梅木真美にも袖釣込腰「技有」で勝利。準決勝はマルツァーンに敗れたが最終的には銅メダルを獲得することとなった。もともと柔道の歩留まりも良く、以後継続出場するのであれば常に上位の一角を狙うポジションに定着するものと思われる。

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梅木真美と佐藤の3位決定戦。結果は梅木の横四方固「一本」による勝利に終わった。

日本勢2人は3位決定戦で直接対決、ワールドマスターズ王者梅木がグランドスラム大阪の覇者・佐藤をGS延長戦の末に横四方固「一本」に仕留めて銅メダルを確保した。

ビッグゲームを制した直後の両者であったが、ともに突き抜けられず。梅木は3位入賞でなんとか次戦に勝負を繋いだが、佐藤は日本勢最大のターゲット選手であるマロンガに2度投げられて完敗、さらに代表争いの直接のライバルである梅木に抑え込まれて5位と失意の結果。最終選考会の選抜体重別を前に大きく後退することとなった。

上位入賞者と準々決勝以降の結果、決勝の戦評と日本代表選手全試合の結果は下記。

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準々決勝、オドレイ・チュメオとの同国対決を制して意気揚がるマドレーヌ・マロンガ。

【上位入賞者】
優勝:マドレーヌ・マロンガ(フランス)
2位:ルイーズ・マルツァーン(ドイツ)
3位:チェン・フェイ(中国)、梅木真美(日本)

【準々決勝】
佐藤瑠香○GS技有・隅落(GS0:17)△ケイティ=ジェミマ・イェーツ=ブラウン(イギリス)
マドレーヌ・マロンガ(フランス)○小外掛(0:52)△オドレイ・チュメオ(フランス)
ルイーズ・マルツァーン(ドイツ)○大外刈(1:52)△ナタリー・パウエル(イギリス)
チェン・フェイ(中国)○優勢[技有・袖釣込腰]△梅木真美

【敗者復活戦】
ケイティ=ジェミマ・イェーツ=ブラウン(イギリス)○優勢[技有・袖釣込腰]△オドレイ・チュメオ(フランス)
梅木真美○崩上四方固(2:33)△ナタリー・パウエル(イギリス)

【準決勝】
マドレーヌ・マロンガ(フランス)○大外刈(1:25)△佐藤瑠香
ルイーズ・マルツァーン(ドイツ)○反則[指導3](2:21)△チェン・フェイ(中国)

【3位決定戦】
チェン・フェイ(中国)○GS技有・外巻込(GS6:34)△ケイティ=ジェミマ・イェーツ=ブラウン(イギリス)
梅木真美○GS横四方固(GS1:12)△佐藤瑠香

【決勝】
マドレーヌ・マロンガ(フランス)○反則[指導3](2:14)△ルイーズ・マルツァーン(ドイツ)
ともに右組みの相四つ。開始20秒、マロンガは左構えからスイッチして得意の右クロスグリップの形を作ると、左小外刈を打って相手を下がらせ、次いで二の矢で右大外刈に飛び込む。マルツァーンは姿勢を良く保つことで耐えようとするが、マロンガが右大外巻込の形で回旋を加えると引きずり落とされるようにして崩落、「技有」となる。ここからはマロンガが背中を叩いて相手を圧する展開が続き、57秒、マルツァーンに消極的の咎による「指導」。ここまでは完全にマロンガのペース。しかし、直後の攻防での袖の絞り合いをきっかけに、試合は両者の力比べによる膠着状態に突入。大きな動きがないまま時間が進み、1分39秒に両者に消極的の「指導」が与えられる。これでマルツァーンは「指導2」。1分53秒、マロンガが圧を掛けて相手を場外際まで追い詰めると、後のなくなったマルツァーンは瞬時に肩越しに相手の後ろ帯を掴み、乾坤一擲の引込返で勝負に出る。相手を押し込んでいたマロンガは堪え切れずにごろりと背中から落下、明らかに「技有」相当の技であったが、主審はこれをスルー。「待て」の後に映像を確認しているとおぼしき時間があったものの、結論は変わらず。そのまま試合が再開される。直後の2分14秒、マロンガが奥を狙いながら前に出ると、マルツァーンは真っ直ぐ後退して畳を割ってしまう。これに対して場外の「指導3」が与えられ決着。不可解な判定に少々疑問が残るが、ぶじ地元の星・マロンガが優勝を飾った。

【日本代表選手勝ち上がり】

梅木真美(ALSOK)
成績:3位


[1回戦]
梅木真美○横四方固(1:13)△オドレイ=ディラン・エンジェパン=エンジャパ(カメルーン)

[2回戦]
梅木真美○崩袈裟固(1:50)△ジュリー・ピエレ(フランス)

[準々決勝]
梅木真美△優勢[技有・袖釣込腰]○チェン・フェイ(中国)

[敗者復活戦]
梅木真美○崩上四方固(2:33)△ナタリー・パウエル(イギリス)

[3位決定戦]
梅木真美○GS横四方固(GS1:12)△佐藤瑠香

佐藤瑠香(コマツ)
成績:5位


[2回戦]
佐藤瑠香○払腰(1:50)△パトリシア・サンパイオ(ポルトガル)

[準々決勝]
佐藤瑠香○GS技有・隅落(GS0:17)△ケイティ=ジェミマ・イェーツ=ブラウン(イギリス)

[準決勝]
佐藤瑠香△大外刈(1:25)○マドレーヌ・マロンガ(フランス)

[3位決定戦]
佐藤瑠香△GS横四方固(GS1:12)○梅木真美

■ 78kg超級 素根輝衝撃の敗退、優勝は第1シードのオルティス
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78kg超級メダリスト。左からイリーナ・キンゼルスカ、イダリス・オルティス、素根輝、キム・ミンジョン。

(エントリー29名)

【入賞者】
1.ORTIZ, Idalys (CUB)
2.KINDZERSKA, Iryna (AZE)
3.SONE, Akira (JPN)
3.KIM, Minjeong (KOR)
5.VELENSEK, Anamari (SLO)
5.KALANINA, Yelyzaveta (UKR)
7.NUNES, Rochele (POR)
7.CHIBISOVA, Kseniia (RUS)

グランドスラム大阪決勝ではやや性急な判定でオルティスが勝利、続くワールドマスターズ決勝では素根が勝利。3度目の対決が予想されたイダリス・オルティス(キューバ)と素根輝による決勝が唯一最大の注目ポイントであったが、素根が準決勝で意外な敗退を喫してこのカードは実現せず。2019年グランドスラム・パリ78kg超級のレポートは、この1試合の活写に尽きる。

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素根輝とイリーナ・キンゼルスカによる準決勝。両組みで左がベースのキンゼルスカはこの試合は右組みで戦う。

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3位決定戦、素根がアナマリ・ヴェレンセク(から袖釣込腰「技有」。

この試合、超大型のイリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)は両組み、得意の左ではなく敢えて右組みをベースに素根に対峙。45秒、右大外刈の形で素根の右膝に足先を引っ掛けて体を捨てると、素根不自然な形でグシャリと潰れ、巻き込まれて「技有」失陥。直後これが「一本」に訂正されて万事休した。

中途で隣の試合場から谷落で転がされた男子選手が突っ込んで来るアクシデントがあり、素根はここで右脚にこの選手の体を食らってしまっている。直後脚を引きずって開始線に戻り、屈伸を繰り返してなんとか試合には復帰したが、直後にキンゼルスカの刈り足を食らったのはこの右脚の膝。その不自然な崩れ方を見れば、影響は明らかであったと言わざるを得ない。ご存知の通り今大会は参加者があまりに増えたため、会場改装後(2016年~)は4面が限度とされていた試合場を急遽5面に増やし、試合場それぞれを狭くすることで対応したという経緯がある。隣の試合場の選手が突っ込んで来るというような事態は、このようなビッグゲームの運営としてはあまりにお粗末。素根は不運であった。

ただし負けは負け。その中から敢えて教訓を探すとすれば、昨年のこの大会(2018年グランドスラム・パリ)でワン・ヤン(中国)に食った一撃と同様、「超大型の両組みがスイッチして仕掛けた逆の巻込技に対応が遅れた」との見立ては考えられる。素根の体躯で、しかも日々大型化が進む78超級世界で戦っていくにはやはり素早い判断と対応が必須、ひとつの判断の遅れが致命的な事態を招く、と無理やり考えることはできる。とにかく怪我が軽傷であることを祈るばかりだ。

トーナメント進行の狂いはほぼこの一番のみ。表彰台の真ん中には大過ないままオルティスが立ち、気丈にも続く3位決定戦に出場した素根は強豪アナマリ・ヴェレンセク(スロベニア)を袖釣込腰「技有」で下して表彰台を確保した。

上位入賞者と準々決勝以降の結果、決勝の戦評と日本代表選手全試合の結果は下記。

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優勝のオルティス。調子に波がある選手のはずだが、ここ数か月は成績も戦いぶりもまことに安定している。

【上位入賞者】
優勝:イダリス・オルティス(キューバ)
2位:イリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)
3位:素根輝(日本)、キム・ミンジョン(韓国)

【準々決勝】
イダリス・オルティス(キューバ)○反則[指導3](3:57)△ホシェリ・ヌネス(ポルトガル)
キム・ミンジョン(韓国)○小内刈(1:16)△アナマリ・ヴェレンセク(スロベニア)
素根輝○GS横四方固(GS1:07)△エリザヴェータ・カラニナ(ウクライナ)
イリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)○大外巻込(1:54)△クセニーア・チビソワ(ロシア)

【敗者復活戦】
アナマリ・ヴェレンセク(スロベニア)○優勢[技有・大外落]△ホシェリ・ヌネス(ポルトガル)
エリザヴェータ・カラニナ(ウクライナ)○大内刈(2:31)△クセニーア・チビソワ(ロシア)

【準決勝】
イダリス・オルティス(キューバ)○合技[燕返・横四方固](3:11)△キム・ミンジョン(韓国)
イリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)○大外巻込(0:45)△素根輝

【3位決定戦】
素根輝○優勢[技有・袖釣込腰]△アナマリ・ヴェレンセク(スロベニア)
キム・ミンジョン(韓国)○合技[内股・上四方固](1:43)△エリザヴェータ・カラニナ(ウクライナ)

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オルティスとキンゼルスカによる決勝。

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オルティスが袖釣込腰「技有」

【決勝】
イダリス・オルティス(キューバ)○優勢[技有・袖釣込腰]△イリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)
オルティスが右、キンゼルスカが両組み。オルティスは両袖の状態から袖釣込腰のタイミングを窺い、キンゼルスカは左構えをベースに組み手の左右をスイッチしながら得意の巻き込み技を狙う。41秒、狙いすぎて受けに回ってしまったオルティスに極端な防御姿勢の「指導」。しかし、直後の50秒、オルティスは組み際に両袖の形を作り、一気に左袖釣込腰に潜り込む。途中で引き手は離れてしまったものの、釣り手を効かせてそのまま抜き落とすようにコントロール、キンゼルスカの巨体をごろりと転がして「技有」を得る。リードを得たオルティスは以降無理をせず、手を突いて、いなして、掛け潰れてと試合を流しに掛かる。キンゼルスカにこれを打開するような引き出しはなく、お互いに「指導」1つずつを奪い合って試合終了。オルティスが安定感のある戦いぶりで優勝を飾った。

【日本代表選手勝ち上がり】

素根輝(南筑高3年)
成績:3位


[2回戦]
素根輝○背負投(2:19)△アン=ファトメタ・ムバイロ(フランス)

[準々決勝]
素根輝○GS横四方固(GS1:07)△エリザヴェータ・カラニナ(ウクライナ)

[準決勝]
素根輝△大外巻込(0:45)○イリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)

[3位決定戦]
素根輝○優勢[技有・袖釣込腰]△アナマリ・ヴェレンセク(スロベニア)

※ eJudoメルマガ版2月20日掲載記事より転載・編集しています。

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