PAGE TOP ↑
eJudo

【eJudo's EYE】男子「四つ角」確実は国士舘と大牟田、全国高等学校柔道選手権シード8校を予想する

(2019年2月15日)

※ eJudoメルマガ版2月15日掲載記事より転載・編集しています。
【eJudo's EYE】男子「四つ角」確実は国士舘と大牟田、全国高等学校柔道選手権シード8校を予想する
第41回全国高等学校柔道選手権大会(3月19日~20日、日本武道館)の組み合わせ抽選会がいよいよあす16日(土)の夕方に迫った。

どのカテゴリも目が離せないがなんといっても注目は団体戦、わけても戦力の読みごたえがある男子団体戦のシード8校がどこになるかだ。ご存知の通りこのシード8校は主催者が「当年」の戦力を精査し、前年度の成績や伝統の有無にとらわれず、これぞという実力校をピックアップすることが伝統。選考側に目利きが揃った年代はこれがそのまま大会の展望として機能してきた。

高校選手権本戦の成績はいうまでもなくその年の高校柔道界の流れを決めてしまう重大要素。インターハイにシード制が導入されてからはもはや重要どころか「決定的」とすら考えられる最重要ファクターとなっている、この高校選手権の上位の顔ぶれをほぼ決めてしまうのがこのシード選考なのだ。その大切さ、無類。

eJudo編集部では今年も冬の「招待試合サーキット」を密着取材、各校の戦いぶりを観察するとともに各地から寄せられた記録を精査し、この代の戦力見積もりを続けてきた。本稿では本戦の展望を兼ねて有力校を紹介するとともに、今年もeJudoセレクト・シード8校を選び「シード予想」として紹介させて頂く。

文責:古田英毅(eJudo編集部)

■ 男子
eJudo Photo
第1シードには国士舘高が押されることがほぼ確実

「四つ角」、それも第1シードと第2シード確実なチームが2つある。国士舘高(東京)と大牟田高(福岡)だ。

国士舘は絶対のエース斉藤立を抱える今大会の大本命。高校生にこの選手を止めることはおそらく不可能、斉藤の存在ある限り少なくとも「抜き勝負」の高校選手権と金鷲旗における国士館の優勝は確実と断言して良いほど、その力は抜きんでている。

周辺を固める戦力は高校選手権と金鷲旗を制した前代のレギュラーから藤永龍太郎、道下新大、長谷川碧が残り、斉藤と合わせて実に全国制覇経験者4人が揃う強力布陣となっている。ただしこの3名、夏以後は順当に力を伸ばしているとは言い難く、それぞれ前代に指摘されていた弱点を抱えたまま微速前進でひたすら目の前の試合をこなしているという印象。松尾杯では斉藤抜きのまま手堅く優勝、若潮杯でも優勝し、1月の東京都予選もしっかり1位勝ち抜けと現状無敗ではあるものの、松尾杯では決勝で日体大荏原と1-0のロースコアゲームを演じ、若潮杯決勝では東海大相模にあと数十秒で敗戦というところまで追い詰められながら大将戦、代表戦と斉藤立の連勝でなんとか勝ち越すという危うい戦い。東京都予選準決勝の日体大荏原戦では斉藤以外の4枚で2敗を喫し、1人差ビハインドで斉藤が出動するというぎりぎりの事態を迎えてしまっている。新チームスタート時に噂された無敵ぶりからは評価を落としたと言わざるを得ず、むしろ試合を重ねるごとに「斉藤以外とは戦える」と他校に手ごたえを与えている印象が否めない。残る5番手については、金鷲旗で試合機会を積ませるなど今代のために投資を続けてきた林将太郎をこの冬まさかの怪我で失い、鈴木郷生と岡田陸が激しく争っている状況。現状では戦闘力が高く仕事の出来る鈴木、隙はあるが伸びしろのある岡田という形。この2人の突き上げ、そしてそれによって起こる主力3枚の奮起が高校選手権制覇のカギになるだろう。

eJudo Photo
凄まじい勝ちぶりを見せている大牟田高が第2シードと目される

この国士舘に唯一対抗し得る、と結成時から評判高かったのが大牟田高(福岡)。エースの森健心と81kg級高校選手権王者竹市大祐の存在がその大きな理由だが、こちらは国士舘とは対照的に戦いを進めるたびに評価を上げてきた印象だ。11月の九州大会は5試合25戦で22勝0敗3分けという圧倒的な成績で優勝、12月の吉岡杯若鷲柔道大会も当たり前のように優勝し、次いで今年こそ勝負の年とばかりに関東遠征を決行。アピールの場に選んだ水田杯では6試合30戦して26勝1敗3分け、マークした26勝は全て「一本」という素晴らしい内容で優勝を飾っている。強みは前述の森と竹市だけでなく周辺戦力の骨が太いこと。超大型はいないが久保田皓晴、服部大喜、石本慎太郎、廣吉弘樹といずれも100キロ以上と体格もあり、全員が攻撃力十分。レギュラーに穴がない、どころか森まで入れてもはや「凹凸のない戦力」とまで評して良いのではないかと思われる。相手が小さくても大きくても状況に応じて戦える業師竹市に、エースの森、さらに骨太の4枚と、仮に国士舘に斉藤の存在なくば優勝候補はこちらの側と評しても良いところ。少々気になるのは竹市と森以外の4枚が両袖に片襟と確実に得点を挙げる具体的手段に長けていながら、それともそれゆえか、柔道が少々偏狭に感じられることか。いまのところ一方的に組み勝った形からの攻撃が多く、例えば不利をかこちながら、あるいは相手と組み合って駆け引きしながらそれでも取らねばならぬという状況がまだ訪れていない。国士舘をはじめ全国優勝を狙うレベルのレギュラーと対峙したときにこの攻撃力の高さがそのまま発揮されるかどうか、本戦ではこれが試されることになる。スケール感ある柔道を披露している1年生レギュラー石本慎太郎の成長が、このあたりのカギを握りそう。

eJudo Photo
日体大荏原は成績からも戦いぶりからも四つ角ピックアップは十分あり得る情勢

今代の高校柔道、この2強以外はいまのところいったいに脆弱。混戦状態と評して間違いないだろう。黒潮旗で優勝し、若潮杯決勝でも国士館を代表戦まで追い込んだ東海大相模高(神奈川)が出場していれば「四つ角」の一角を占めるのが順当であっただろうが、既報の通り同校は神奈川県予選決勝で桐蔭学園高の後塵を拝し本戦進出を逃してしまっている。

シリーズ通じて勝ったり負けたりの複雑な力関係(評価の媒介になるのは広島・崇徳高と千葉・木更津総合高、本戦進出は逃したが千葉・東海大浦安高と東京・修徳高)があって序列がつけにくいところだが、残る四つ角2席には日体大荏原高(東京)と作陽高(岡山)を推しておきたい。

日体大荏原は黒潮旗で東海大相模に敗れ3位も、松尾杯では決勝まで進んで国士舘と0-1の接戦。東京都予選準決勝では再び国士舘に屈したものの、前衛4枚同士の対決では2勝を挙げて「斉藤抜きなら勝ち」というところまでスコアを詰めている。前代では勝ち方が性急だった平山才稀に戦い方の幅が出てきたこと、グリーンカラニ海斗が個人無差別で代表権を得て一皮むけたことがまず大きい。このエース格2枚に藤原秀奨、海堀陽弥ら周辺戦力もかなり逞しさを増しており、この冬もっとも伸びたチームに挙げても良いかと思われる。今季敗れたチームは第1シード確実の国士舘と本戦に出場権のない東海大相模の2チームのみであり、論理としても四つ角押しの根拠は十分。便宜上の都の第3代表(第2代表は直接対決のなかった東海大高輪台)という立場であることが弱みか。

eJudo Photo
髙橋翼を押し立てる作陽高は今年が勝負の年

作陽はエースの髙橋翼の存在がまず大きい。柔道は粗いが体重128キロの巨躯に今代ナンバーワンではと思われるパワーを載せ、いかにも作陽らしい「負けない論理」と「思い込む力」を武器に無類の取り味を発揮している。夏は金鷲旗で村尾三四郎(桐蔭学園)、インターハイと国体で千野根有我(同)を食うなど大物食いを連発して一気に注目選手にのし上がった。これに前代のレギュラー嵐大地を合わせた2人がチームの核、さらにここに来て身長188センチ体重156キロで相撲の全国大会出場歴のある大型選手・丸鳩紹雲が計算できる域まで仕上がって「3枚目」が確立できたことが大きい。11月の中国新人大会では崇徳高を破って優勝、12月の松尾杯ではあまりのハードスケジュールゆえ1回戦から足腰立たぬヘトヘトの状態ながら準決勝まで進み、日体大荏原と2-3の接戦を演じて3位に入賞している。5番手の顔がはっきりしないことが不安材料で戦力に凹凸はあるが、このチームはしぶとい選手を育てることには長けている。髙橋を押し立て、嵐と丸鳩が加点して周囲が粘るという戦略が既に見えており、抜き試合では十分戦えるはずだ。

というわけでここまで4校を挙げさせていただいた。以降の8シード候補にはまず、崇徳高(広島)、木更津総合高(千葉)、田村高(福島)、福井工大福井高(福井)、東海大仰星高(大阪)の5チームを挙げさせて頂き、次点として桐蔭学園高(神奈川)についても言及したい。

崇徳はエース福永夏生を中心に、飯田恒星、福本佑樹、徳持英隼、毛利允弥とメンバー的には本来「四つ角」が狙える布陣。ただし11月の中国大会では作陽、招待試合シリーズ初戦の吉岡杯では福井工大福井に敗れて上位に進めず今代は苦しい発進。続く松尾杯では国士舘に準決勝で敗れるも木更津総合に勝利して3位、水田杯では優勝した大牟田から唯一得点を挙げて3位入賞と立ち直りを見せたが、選手のパフォーマンスもチームの成績もいまひとつ安定感を欠く。今月10日に行われた魁星旗錬成大会では福井工大福井にリベンジを果たしたものの決勝では田村に1-3で敗れてしまっており、この傾向はなかなか払拭出来ないようだ。今代のシード事情の混戦ぶりはキャスティングボードを握る崇徳の不安定さに負うところも非常に大きい。順当に行けばシード入りは妥当なところであるが、直前に行われた魁星旗におけるV逸はかなり痛い。中国ブロックから作陽のピックアップが確実であることや、今期敗れた田村や福井工大福井がシード争い直接のライバルであることを考えれば、議論の流れ次第では結成時「四つ角」が噂されたチームがシード8校から滑り落ちるという事態も十分あり得る。安定株ではあるが、予断を許さず。

木更津総合は、今年も超激戦地・千葉を制しての本戦出場。招待試合の成績を紹介するとまず黒潮旗で2位入賞(桐蔭学園に3-0で勝利、大成に3-2で勝利、東海大相模に1-2で敗退)、松尾杯でベスト8(東海大仰星に3-1で勝利、崇徳に3-1で敗退)、水田杯でベスト8(修徳に2-2の内容差で敗退)。実力は確かで最高到達点は間違いなくかなり高いのだが、並べてみるとわかる通り成績は不安定。崇徳同様、シード選考混乱の因となってしまっている感がある。招待試合シリーズをテストの場とする志向が他のチームより強いこと、黒潮旗ではベストメンバーの戦いではない中で2位入賞を果たしていることなどエクスキューズの材料は多々あるが、今年に関して言えば主戦が小型であるゆえの不安定さ、とはひとつ観察しておくべきだろう。おそらくチームでもっとも戦闘力のある北條嘉人は73kg級、続く唯野己哲は66kg級で、松尾杯の敗戦はこの2人が揃って、水田杯では北條が大型選手に敗れて、これがそのまま敗退の因となってしまっている。いずれもその強気ゆえに大型の強引な一発に呑まれたという体でこれぞ「テスト」の場ゆえの現象と考えることも出来なくはないが、抜き勝負の理想である「抜き役の大型と、足し算要素の仕事の出来る小型」と真逆になってしまっているチームの組成、そして崇徳はもちろん、本戦に出場しない修徳にも敗れてしまっているこの戦歴がどう評価されるか。実力の最高到達点は間違いなくシード級であるが、これも予断を許さない。

田村は久々全国大会上位を狙うチームを作り上げてきた。松尾杯では準々決勝で作陽に2-2の内容差で敗れたもののベスト8進出、水田杯では組み合わせに恵まれず優勝した大牟田に敗れたが、勝ち上がりの過程で四日市中央工高(三重)を2-0と完封する安定感も見せている。主戦の東北無差別王者・鈴木直登の得点力が今季躍進の最大の因だが、田邉夢叶、佐井川陽舜、橋本健太らも含めて全体の練度が非常に高い。大牟田戦のスコアが0-4という大差であった点はマイナスだがこれは同大会で戦ったどのチームも同じこと(※大牟田は準決勝で崇徳を4-1、決勝では修徳を5-0)。東北ブロック大会をまったく危なげなく制したこと、10日に行われた魁星旗錬成大会で桐蔭学園と崇徳を立て続けに破って優勝を飾っていることも評価要素として非常に大きいはず。東北のチームはなかなか評価されにくいが、シードピックアップが十分あり得るラインだ。弱点は地方からシードピックアップを受けやすい超大物1枚を押し立てるような派手なチームではなく、5人の平均値の高さが売りのタイプであること、東北地区自体の評価が高くないこと。

福井工大福井も今代非常に評判が高い。身長182センチ体重95キロのエース・酒井晃輝の攻撃力の高さはもちろんのこと、5枚全体の粒が揃っていることが何よりの評価ポイント。前述の通り吉岡杯では崇徳を破って(決勝トーナメント1回戦で2-0)2位入賞(決勝で大牟田に1-3で敗戦)、水田杯と同日に行われた九州・宮崎のひむか旗高等学校大会ではエントリー85チームの巨大トーナメントを無失点のまま圧勝優勝している。7人制で行われた魁星旗大会では常のレギュラー以外の3名が敗れて崇徳の後塵を拝したが、業界内の評価は相当なもの。シードは十分あり得る線だ。弱点は中央の招待試合シリーズへの登場がなく認知度に差があることと、やはり魁星旗で形上3位に終わってしまっていること。

東海大仰星は若潮杯で3位(準決勝で国士館に0-4で敗退)、近畿ブロック大会では準決勝で天理高(奈良)、決勝で神戸国際大附高(兵庫)をそれぞれ1人残しで破って優勝を飾っている。主戦はこの2試合でいずれも虎の子の1点を挙げている大阪府無差別王者・中村雄太。例年主催者は本戦と同じ抜き勝負レギュレーションで行われる近畿ブロック大会の成績を尊重する傾向があり、その意味ではシードピックアップの可能性は十分にあるかと思われる。
ただし前述3校が全て参加した若潮杯の試合を見る限り、今期の近畿ブロックは決してレベルが高いとは言えない。天理は主戦の池田凱翔と井上直弥がいまだ全国優勝した前代に努めた「足し算」ロールの柔道から抜け出せておらず、神戸国際と東海大仰星は良くも悪くも地力が勝敗を左右する比較的素直な柔道を志向して、かつ全国上位と戦うには地力の錬磨が、少なくとも12月時点ではあと一歩であったという印象。東海大仰星は松尾杯では木更津総合に1-3と完敗を喫してベスト16で終戦、その木更津総合に勝利したチームが今季既に3つあるという状況はなかなか苦しい。これも予断を許さぬところ。

以上5チームが、8シード争い4チームの純実力的な「圏内」とみる。続いて、次点に挙げさせていただいた桐蔭学園について。
今代大きく戦力を落とした桐蔭学園にシードピックアップの可能性がある理由はただ1つ、四つ角シード候補であった東海大相模を下しての出場であるからだ。強いチームに勝ったから強い、これも十分理のあることではある。ただし、誰もが知る通りこれは神奈川県予選における「相模-桐蔭」という特殊な磁場があってのこと。それまでの桐蔭学園が各地の強豪と鍔迫り合いの戦いを繰り広げていればすんなり受け入れられるであろうが、桐蔭学園今年の戦いは、ご存知の通り大苦戦である。全ての大会で第1シードというもっとも戦い易い扱いを受けながら、朱雀杯ではベスト8(修徳に代表戦で敗退)、黒潮旗ではベスト8(木更津総合に0-3で敗退、この時エース中野智博は欠場)、松尾杯は4回戦敗退(佐賀商高に1-1の代表戦で敗退)、水田杯はベスト8(大牟田に0-3で敗退)と成績を残し切れず、これぞという強豪に勝ったのは水田杯3回戦の北海高(北海道)戦くらい。エース中野智博に安藤健志のポイントゲッター2枚のほか、神奈川県予選の戦いの中で個人代表権を獲得した66kg級佐々木光太朗の成長があってチームは一段明らかに逞しくなったが、それでも今月10日の魁星旗大会では勝ち切れず田村の後塵を拝すこととなった。この試合では虎の子の抜き役中野智博が橋本健太と引き分け、主将の安藤健志がリードを背負いながら鈴木直登を相手に「指導3」失陥で決勝点を献上してしまっている。決して周辺戦力の凹みを突かれたわけではなく、スコア上は「力負け」である。戦力を正当に見積もれば全国大会で取り役が期待できるのは中野1枚のみ、冬季シリーズ時点に比べれば各人成長はしているが、その観察に「待った」を掛ける形となった魁星旗の不首尾は痛い。点取り制とはいえ既に今期だけで本戦進出校4チーム(田村、佐賀商、大牟田、木更津総合)、未進出校2チーム(東海大浦安、修徳)に敗れているチームにシード権を付与するかどうかは、慎重に議論さるるべきではないだろうか。

以上、10チームをここまで挙げさせていただいた。ほか、佐賀商も松尾杯では非常に印象的な戦いを見せていてぜひ推したいところだが、続く水田杯での3回戦敗退(木更津総合に1-3)、また九州新人大会でベスト8に終わっている(九州学院高に2-3)ことなどから戦力評価的にも実績的にもシードピックアップは厳しいかと思われる。北海高(北海道)も例年北海道のチームが本戦で骨太の戦いを見せるゆえ注視していたが、水田杯で桐蔭学園に完封負けしており推すのは難しい印象。招待試合シリーズで形上上位に名を連ねたチームとしては大成高(愛知)と埼玉栄高(埼玉)があるが、内容を見る限り今代はシード争いに加わる力はないと見積もる。大成は大竹龍之介以外は覇気足りず、これまでの伝統を継いで「なりあがろう」とする姿勢が見いだせない。組み合わせに恵まれた黒潮旗ではベスト4まで勝ち上がったが、水田杯では3回戦で東海大浦安に1-2と完敗しており、試合成績的にも脱落ライン。埼玉栄も松尾杯で辛勝した東海大高輪台高(東京)に中2日でリベンジを許すなど面子はともかく鍔迫り合いに弱い印象。一定の平均値はあるがこれがそもそも上位対戦で踏ん張るラインに届いておらず、何より全国大会で突破口になるべき「刃」が見いだせない。勝てるチームにはあっさり勝つが強者に挑む戦いや精神的な負荷が掛かる試合は脆いというこの属性、率直に言ってシードチームには推しがたい。

というわけで、独断と偏見を持ってeJudoセレクト8チームを選んでみたいと思うのだが、ここで実際にシード校を選ぶ選考チームにお願い(提案)がある。

1つは、実力と実績拮抗でこれと決め難い、今年は各校実力差がない、というのであれば、地方のチームを選んでほしいということだ。人口減が叫ばれる柔道界にあって、地方にスターチームを作って盛り上げること、地元のメディアに取り上げてもらうことは決して意味のないことではないはず。もちろん評価がハッキリしているのであればこれぞというチームを選ぶのは当然、あくまで「ぎりぎりどちらかを選ぶ」「どちらでもよい」という選択があった場合であるが、選手を集めて毎年必ず平均以上の戦力を作ってくる中央の強豪チームよりは、今年これぞの代を育ててきた地方の学校に目を向けてもらいたい。良いチームを育てれば必ず主催者の目に届く、と地方の指導者に勇気を与えることにもなるのではないだろうか。今年の混戦構図は、このテーマに向く。

もう1つは、「名前」と歴代の実績はあるが明らかに今年の力はない、というチームを選ぶことは避けてもらいたいということだ。評価に差をつけられないから学校の名前で、あるいは過去の実績で「ひとまず選ぶ」というような選考は、これからなんとか良いチームを作ろうともがく全国の指導者の希望を削ぐ。残念ながら近年はこの枠に嵌るチームが1つ混じることがままあるのだが、ここは粘って、これぞというチームを選ぶ濃い議論をしてもらいたい。

というわけで、eJudoセレクト8チームは下記だ。

【eJudoセレクト・第41回全国高等学校選手権男子団体戦シード校】
[四つ角シード]①国士舘高(東京)、②大牟田高(福岡)、③日体大荏原高(東京)、④作陽高(岡山)
[ベスト8シード]崇徳高(広島)、木更津総合高(千葉)、福井工大福井高(福井)、田村高(福島)

現実的には、これまで挙げたロジック上の事情から桐蔭学園高と東海大仰星高が入る余地があるが、編集部のセレクトは上記である。この10チーム以外にシードに値するチームがあるとはちょっと思えない。「はずれ」は覚悟、ぜひこれをベースに予想を楽しんでもらいたい。議論の土台となれば幸いである。

参考として主要招待試合の結果を下記に記しておく。

【第22回朱雀杯争奪選抜高等学校対抗柔道大会男子】
2018年10月14日・於平成国際大学
(エントリー20校)
優 勝:東海大浦安高(千葉)
準優勝:埼玉栄高(埼玉)
第三位:修徳高(東京)、東海大相模高(神奈川)

【平成30年度吉岡杯争奪若鷲柔道大会】
2018年12月15日・於キリンビバレッジ周南総合スポーツセンター
(エントリー37校)
優 勝:大牟田高(福岡)
準優勝:福井工大福井高(福井)
第三位:鹿児島情報高(鹿児島)、延岡学園高(宮崎)

【第42回黒潮旗武道大会】
2018年12月16日・於東海大翔洋高校
(エントリー41校)
優 勝:東海大相模高(神奈川)
準優勝:木更津総合高(千葉)
第三位:大成高(愛知)、日体大荏原高(東京)
ベスト8:桐蔭学園高(神奈川)、前橋商高(群馬)、四日市中央工高(三重)、埼玉栄高(埼玉)

【第32回國學院大學松尾三郎杯争奪全国選抜高等学校柔道大会 】
2018年12月23日・於國學院大學
(エントリー68校)
優 勝:国士舘高(東京)
準優勝:日体大荏原高(東京)
第三位:崇徳高(広島)、作陽高(岡山)
ベスト8:佐賀商高(佐賀)、田村高(福島)、埼玉栄高(埼玉)、木更津総合高(千葉)

【第18回水田三喜男杯争奪選抜高等学校柔道大会】
2018年12月26日・於城西国際大学
(エントリー60チーム)
優 勝:大牟田高(福岡)
準優勝:修徳高(東京)
第三位:崇徳高(広島)、東海大浦安高(千葉)
優秀校:桐蔭学園高(神奈川)、市立習志野高(千葉)、東海大高輪台高(東京)、木更津総合高(千葉)

【第17回宮崎ひむか旗高等学校男子柔道競技大会】
2018年12月26日・於KIRISHIMAツワブキ武道館
(エントリー85チーム)
優 勝:福井工大福井高A(福井)
準優勝:育英高(兵庫)
第三位:延岡学園高A(宮崎)、京都学園高A(京都)

【第35回若潮杯争奪武道大会】
2018年12月27日・於国際武道大学
(エントリー16校)
優 勝:国士舘高(東京)
準優勝:東海大相模高(神奈川)
第三位:天理高(奈良)、東海大仰星高(大阪)

【魁春旗争奪全国高校選抜柔道錬成三春大会】
2019年2月10日・於三春町民体育館
(エントリー24チーム)
優 勝:田村高(福島)
準優勝:崇徳高(広島)
第三位:桐蔭学園高(神奈川)、福井工大福井高(福井)

■ 女子
eJudo Photo
第1シードが確実視される富士学苑高

eJudo Photo
桑形萌花がエースを務める夙川学院高

eJudo Photo
藤枝順心は無差別枠にエース米川明穂を置く

女子は例年全日本強化指定選手の有無、特にレギュレーションに嵌る3階級に該当選手がいるか(何人いるか)でシードが決められる側面がある。

その意味では男子に比べると読みやすいのだが、今年はこの事情を考えるまでもなく第1シード確実のチームがある。富士学苑高(山梨)である。

富士学苑は黒潮旗、水田杯、若潮杯という12月のハイレベル3大会全てに優勝。この大会はいずれも体重無差別だが、シリーズ通して獅子奮迅の働きをした黒田亜紀、瀬戸亜香音、平野友萌のうち瀬戸はその後63kg級に階級を移しており、さらに52kg級には全日本カデ王者の藤城心が控えている。シリーズ全勝チームがレギュレーション的にも噛み合うとなれば、これは優勝候補の筆頭に推さざるを得ない。柔道が手堅くあまりにも破綻がないことが逆に不安材料ではあるが、少なくとも第1シードは確実であると見ていい。

続いて「四つ角」に入ると目されるのは夙川学院高(兵庫)、藤枝順心高(静岡)、敬愛高(福岡)と見てこれもまず間違いないかと思われる。

夙川学院のエースはインターハイ70kg級を制した1年生桑形萌花。これに63kg級の畑田暁菜と、52kg級の山崎笑佳、さらにバックアッパーとして57kg級の新名彩乃という布陣で本戦に臨むことになるかと思われる。今代の桑形、畑田は「身を粉にして働く」という言葉がぴったりの、汗を掛ける選手。大技一発が本来の魅力だが、やるべくことをしっかりやるこの2人の戦いぶりが今代のチームカラーを形成しているという印象。桑形は大将枠としては小型だがパワー派で無差別カテゴリでも戦闘力は十分、あとはチーム総体として富士学苑にない良い意味での「破れ」を作れるかどうかが上位対戦のカギを握る。試合運びの理に欠けるが突如すさまじい一発を放つ新名の成長あるかどうかも、この先の上積み要素。

藤枝順心はインターハイ78kg超級2位で全日本ジュニア強化選手の米川明穂と、52kg級の袴田佳名瑚と2人の強化指定選手を擁して論理上は第2シードも望める構成。米川が相手に割り切って止めに入られたときの得点力に陰りを見せていることで結成時より序列を落とした感があるが、優勝候補の一角と規定しておいてよいだろう。

敬愛は無差別枠に松澤佑栞のほか70kg超級カデ強化選手の丸山みかの、昨年度の全国中学校大会70kg級で桑形萌花を破って優勝したカデ強化選手大本真琴と3人の強者を保有。もちろんこのうち起用出来るのは1名だが、先鋒枠には48kg級でカデ強化に入っている多田薫がおり、実力的にも「強化選手の有無」という論理的観点からも高評価は確実。

ここまでの4校と以降のチームには少々差がある印象、以下は一気に読みがたくなる。

インターハイ63kg級で優勝した岡田恵里佳を擁する立命館宇治高(京都)はすぐに名前の挙がるチーム。先鋒には44kg級ながら全日本ジュニアで2位入賞した西村瑞穂がおり、論理的にも推しやすい。埼玉栄高(埼玉)も70kg級ジュニア強化選手佐藤星麗七の存在をテコにシードピックアップはまずまず順当なところ。

以降は九州新人大会2位で48kg級ジュニア強化選手白石響を擁する熊本西高(熊本)、同3位で昨年の高校選手権ベスト8メンバーが全員残った沖縄尚学高(沖縄)、44kg級全国中学校大会2位の稲垣若菜の保有がある大成高(愛知)、 同じく44kg級全中3位で一昨年の全日本ジュニアでも3位に入賞している田中愛夢の保有がある新田高(愛媛)などの名が挙がる。

女子は招待試合の文化が男子ほど濃くないゆえ、この間に差を見出すことが難しい。形上、下記をeJudoセレクトとして挙げておきたい。

【eJudoセレクト・第41回全国高等学校選手権女子団体戦シード校】

[四つ角シード]①富士学苑高(山梨)、②敬愛高(福岡)、③夙川学院高 (兵庫)、④藤枝順心高(静岡)
[ベスト8シード]立命館宇治高(京都)、埼玉栄高(埼玉)、熊本西高(熊本)、沖縄尚学高(沖縄)

運命の抽選会はいよいよあす、例年の動きからすれば早ければその日のうちに、遅くとも翌朝にはサイト上で一般にも公開される。結果を楽しみに待ちたい。

※ eJudoメルマガ版2月15日掲載記事より転載・編集しています。

→eJudoトップページに戻る
→「ニュース・マッチレポート」に戻る
→「書評・DVD評」に戻る