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【隔週刊・嘉納治五郎師範のひとこと】第71回

(2019年2月11日)

※ eJudoメルマガ版2月11日掲載記事より転載・編集しています。
【隔週刊・嘉納治五郎師範のひとこと】第71回
修行者にたいしてはもちろんのこと、一般世人にたいしても真の柔道の宣伝はいよいよますますその急勢なるを感ずる。
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嘉納治五郎師範

資料提供 公益財団法人講道館
copyright:Kodokan Judo Institute

※写真の無断転載および転用を厳に禁じます

出典:「柔道家としての嘉納治五郎(15)」
作興7巻3号 昭和3年3月 (『嘉納治五郎大系』10巻137頁)

嘉納師範は、講道館柔道創始以来、その普及振興のため、宣伝に尽力しました。
そんな師範の宣伝についての「ひとこと」です。一般の人々も対象にしているところは、さすがですが、「真の柔道」という「ことば」が特に光ります。一般の人のみならず、柔道を知っているはずの修行者も対象にしているところから、師範の伝えたい「真の柔道」が伝わっていない当時の様子が垣間見えます。

さて、あなたが柔道の魅力を他の人に伝えようとしたとき、どうしますか?技や試合の様子を見せる?何はともあれ、まずは体験というのも1つの方法でしょう。様々な⽅法が考えられますが、いずれにしても、柔道の魅力を把握し、それを人に伝えようとすれば「ことば」の力は欠くことができません。
 
師範の講演や執筆による柔道普及活動は、まさにこの柔道の魅⼒を「ことば」にして伝えようという取り組みであったと言えます。ただ、残念なことに、師範以降、師範ほど、言語の力をもって柔道の普及に尽くした人はいないのではないでしょうか。もちろん、柔道の魅力は言葉に出来ないという意見もあるかもしれません。

筆者の好きな小説で主人公が次のような台詞を言う場面があります。<ことばでは伝わらないものが、たしかにある。だけど、それはことばを使いつくした人だけが言えることだ>。金言です。私たちは「使い尽くした」と言えるほど、柔道を「ことば」で伝えようとしているでしょうか。
 
昨年末、全日本柔道連盟の登録者数が過去最低になる可能性があるとニュースになっていましたが、柔道離れの厳しい現実を物語っています。少子化という大きな問題の中で、柔道を普及振興していこうとすれば、柔道の魅力を伝え、宣伝していこうとするツールとして「ことば」の力は、ますます必要になるでしょう。特に師範のいう「真の柔道」を伝えようとするのであれば・・・。
 
ただし、「ことば」だけでもいけません。口では良いことを言いながら、柔道修行者の実態が違っていたらどうでしょうか。かえって柔道は信用を失います。講道館柔道の魅力を伝える「ことば」を持つと同時に、その体現者でありたいものです。

著者:元 敏季(ハジメ・トシキ)
1975年生まれ。柔道は中学校から始め、大学までは競技を中心に行うが、卒業論文を機に柔道の文化的側面に関心を持ち、大学院へ進学。凡そ10年、大学院・研究機関に所属するも、研究とは異なる分野の仕事に就き現在に至る。ライフワークとして嘉納治五郎に関する史料を蒐集・研究し、その成果を柔道振興のため発信しようとしている。

※ eJudoメルマガ版2月11日掲載記事より転載・編集しています。

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