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優勝は国士舘、伸るか反るかを乗り越えた「勝者」は東海大高輪台・第41回全国高等学校柔道選手権東京都予選男子団体レポート

(2019年2月06日)

※ eJudoメルマガ版1月30日掲載記事より転載・編集しています。
優勝は国士舘、伸るか反るかを乗り越えた「勝者」は東海大高輪台
第41回全国高等学校柔道選手権東京都予選男子団体レポート
文責:古田英毅
取材・撮影:eJudo編集部

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開会式。この日が全国高等学校柔道選手権、都道府県予選の最終日である。

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選手宣誓は国士舘高・鈴木郷生選手が務めた

第41回全国高等学校柔道選手権の東京都予選、男女団体戦が27日に東京武道館(足立区)で行われた。
注目は規定の『2枠』に加え、前年度本戦決勝進出地区枠1つを合わせて計3校に全国大会進出権が与えられる男子団体戦。決勝進出の2校はその時点で全国大会出場決定、残る1枠はベスト8進出校による第3代表決定トーナメントで争われることになるのだが、既報の通り組み合わせにはかなりの偏りがある。

前年度の成績をもとにシードが決められるのだが、当然ながら当年の実力と前年度のそれはズレる。シードは順に国士舘高(Aブロック)、足立学園高(Cブロック)、安田学園高(Dブロック)、日体大荏原高(Bブロック)。今年の実力1番手はAブロックに入った国士舘高、2番手はBブロックの日体大荏原高と目されており、この2校は準決勝で早くも対戦予定。いずれかは本戦で全国大会を決めることは出来ず、第3代表決定戦に回らねばならない。そして実力3番手と目される修徳高が今季ノーシード、抽選の結果国士舘の山であるAブロックに配されて準々決勝で両校の対戦が組まれることとなった。つまり実力1番手から3番手までの3チームが準決勝までの山に同居、2番手チームと3番手チームが狙い得る枠が第3代表ただ1枠のみという非情なトーナメントが組まれることとなったのだ。

そして逆側の山から決勝進出を狙うのは招待試合シリーズの大健闘で一躍有力候補に挙げられることとなった東海大高輪台高と、一週間前の個人戦81kg級を制した増地遼太朗の成長により一気に戦力厚くなった安田学園高。両者はDブロックの準々決勝で対戦予定、Cブロックのシード校足立学園が今代大きく力を落としていることを考えると全国大会進出を決める天王山はこの一番になるはずだ。

まずは簡単に各ブロックの勝ち上がりと、準々決勝までの戦いを追いかけてみたい。

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2回戦、国士舘高の先鋒鈴木郷生が巣鴨高・柴山鴻平から払腰「一本」。

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3回戦、国士舘の先鋒岡田陸が駒場高・齊藤直大から内股「一本」。

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2回戦、修徳高の先鋒竹下博隆が駒大高・山川太一から浮落「一本」。

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3回戦、修徳の中堅小嶋洸成が八王子学園高の副将及川哲郎から払腰「一本」。

【Aブロック】
シード校:国士館高
準々決勝カード:国士館高 - 修徳高

国士舘高の山。今代圧倒的な力を持つとされながら12月の若潮杯武道大会決勝で思わぬ接戦を演じてしまい、今回は出直しの大会である。初戦となる2回戦のスターティングは先鋒から鈴木郷生、岡田陸、長谷川碧、藤永龍太郎、斉藤立。巣鴨高を相手にしたこの試合は鈴木が全て「一本」で5人を抜いた。内容は柴山鴻平から払腰「一本」、菅原研三郎から横四方固「一本」、今田周作から払腰と横四方固の合技「一本」、判治皓多朗から大外刈「一本」、福永大聖から上四方固「一本」。全て1分以内に勝負を決める圧勝である。

3回戦は先鋒を岡田陸に入れ替えて都立駒場高とマッチアップ。この試合も岡田が5人を抜き去った。内容は一戸領作から縦四方固「一本」(1:08)、齊藤直大から内股「一本」(0:08)、稲見佑一郎から内股「一本」(0:35)、冨永雄太郎から内股「技有」による優勢、樋口蒼太朗から内股「一本」(0:36)。主力を温存したまま、5番手を争う周辺戦力2枚の働きのみでぶじベスト8進出決定。

修徳も順当にベスト8進出。初戦の2回戦は選手4人で出場の駒大高を相手に1年生の先鋒竹下博隆が全勝。内容は長久保翔大から大内刈「一本」(0:30)、小林潤平から払腰と横四方固の合技「一本」(1:01)、石橋侑樹を浮落から袈裟固の合技「一本」(1:33)、山川太一を浮落「一本」(0:32)。

修徳、続く3回戦は八王子学園高とマッチアップ。第1試合は田中佑弥が鈴木悠馬と引き分け、第2試合は60kg級の好選手長尾光真が山本蓮から僅差優勢勝ちを収めて1人差リード。長尾は続いて千葉眞人から背負投「一本」(1:26)をマークするが、副将及川哲郎に払腰「技有」優勢で敗れて退場。修徳はここで中堅に座ったエース小嶋洸成が登場。畳に残った及川から大内刈「技有」に払腰「一本」(1:01)、続いて大将大場聡太から開始早々の小外刈「一本」(0:09)と立て続けに投げを決めて、スコア3人残しで試合終了。この日最初の決戦、最強チーム国士舘の待つ準々決勝へと駒を進めることとなった。

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準々決勝、次鋒対決で国士舘の次鋒長谷川碧が修徳・田中佑弥から内股でまず「技有」

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長谷川は再度の内股「技有」を得て合技の一本勝ち。

[Aブロック準々決勝]

国士舘高〇四人残し△修徳高
(先)岡田陸×引分×中村和真(先)
(次)長谷川碧〇合技[内股・内股](2:49)△田中佑弥(次)
(次)長谷川碧〇崩上四方固(2:25)△小嶋洸成(中)
(次)長谷川碧〇優勢[技有・内股]△岡田尚樹(副)
(次)長谷川碧〇内股(0:14)△竹下博隆(大)
(中)道下新大
(副)藤永龍太郎
(大)斉藤立

先鋒戦は岡田陸が右、中村和真が左組みのケンカ四つ。中村は釣り手を下から突いて距離を確保、相手を引き手争いに誘っておき、組まれると左内股や左背負投で展開を切る。岡田は相手が伏せたところに食いつく形を続けて寝勝負志向、1分45秒には相手の下から潜り込んで返し縦四方固に持ち込むが、上体の拘束が甘く9秒で「解けた」。以降はポイントの変動なく、この試合は引き分けとなる。

国士舘はここから昨年のレギュラー4枚がずらり居並ぶ重厚布陣。まずその先陣を切って長谷川碧が登場、田中佑弥から開始13秒早くも左内股「技有」を奪う。しかし田中は自軍ベンチからの「どこかまで疲れさせるかだぞ」の声援に奮起、45秒に片襟で、2分45秒には袖口を握り込んだ咎で「指導2」までを失ったもののしぶとく畳に居残り続ける。直後の残り11秒、怒気を発した長谷川が左内股を見舞うと田中ついに陥落「技有」。合技「一本」で長谷川が1人を抜いた。

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第3試合、小嶋洸成の背負投を長谷川碧が潰し、崩上四方固へと繋ぐ。

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長谷川は副将岡田尚樹を内股「技有」で下し3人抜き達成。

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長谷川が修徳の大将竹下博隆から内股「一本」。スコア4人残しで国士館の勝利が決まった。

第3試合、修徳はここで中堅に座るエース小嶋洸成が登場。前週の個人戦では小嶋が払巻込「技有」で勝利しているカードだ。この時の戦いと同様に小嶋は上から奥襟を叩いて優位を確保、得意の左払腰にこれまで見せることのなかった隠し玉の右背負投と積極的に攻める。しかし、個人戦とは違って引き分けでも良い長谷川は無理に攻めることはせず、どっしり構えてこれを迎え撃つ。

2分過ぎ、焦った小嶋が低い右背負投に座り込むと長谷川待ち構えて押し倒す。バランスを崩した小嶋は腹ばいで逃れるが右腕が残ってしまい、長谷川はこれを橋頭堡に崩上四方固を完成させる。体勢を入れ替えながら20秒間抑え込み「一本」、長谷川が個人戦の雪辱を果たして2人抜き達成。修徳はエース小嶋で1人も抜くことができず、非常に厳しい状況。

ポイントゲッターをまとめて配置した修徳、次に畳に上がるのは小嶋に続く2番手の岡田尚樹。畳に残る長谷川はすでに2試合を戦って疲労明らか。岡田は奥襟を得て圧を掛けながら攻撃の隙を窺うが、相四つということもあり、体格差のためなかなか具体的な攻撃に繋げない。44秒には左内股で相手の懐深くまで飛び込むも、崩すに留まる。1分43秒、長谷川は奥襟を持たれて引き手を落とされながらも横変形にずれて前進、この動きの中で巧みに釣り手側の肩を上げると、場外際で思い切り良く左内股。釣り手が伸びてしまった岡田は堪え切れずに飛んでしまい「技有」。失点した岡田はペースを上げて左内股、左大外刈と攻めるが、長谷川の巨体は揺るがず。結局このまま試合が終わり、長谷川はこれで3人抜きとなる。

ポイントゲッターブロックが過ぎ去った修徳の大将は、陣形からすると本来は「置き大将」枠の竹下博隆。せめて疲労困憊の長谷川を下して意地を見せたいところだが、開始僅か14秒で試合は決着。長谷川が得意としている足を180度開脚するような左内股を見舞うと、一気に宙に浮かされた竹下は頭から真っ逆さまに落下。長谷川これを最後までコントロールして背中から叩きつけ「一本」。長谷川、強豪修徳を相手に堂々の4人抜き。国士舘が4人残しの大差でベスト4進出を決めた。

修徳は第3代表決定トーナメントに回り、最後の1枠獲得を目指す。

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3回戦、先鋒戦で日体大荏原高の海堀陽弥が東海大菅生高の大下和也から内股「一本」。

【Bブロック】
シード校:日体大荏原高
準々決勝カード:日体大荏原高 - 明大中野高

トーナメント4つの山の中でもっとも試合進行の読みやすい、日体大荏原の一強ブロック。2回戦は1回戦を突破した明星高が棄権したため不戦勝ち、3回戦の東海大菅生高戦は先鋒海堀陽弥が内股「一本」、体落と小外掛の合技「一本」、支釣込足「一本」、小外掛「一本」、小外掛と崩袈裟固の合技「一本」と5人を抜き去り、この試合も5人残しでベスト8入り決定。準々決勝の相手はここまで郁文館高を5人残し、正則学園高を2人残しで破ってきている明大中野高である。

[Bブロック準々決勝]
日体大荏原高〇二人残し△明大中野高
(先)島本真司郎×引分×中谷優我(先)
(次)山城和也〇合技(2:21)△藤井洸成(次)
(次)山城和也〇抑え込み※(1:24)△山本永輝(中)
(次)山城和也×引分×高堂凌治(副)
(中)藤原秀奨×引分×山下永輝(大)
(副)平山才稀
(大)グリーンカラニ海斗

主戦3名を後衛に取り置いた日体大荏原が快勝。先鋒島本真司郎は引き分けたが、次鋒山城和也が3人を賄って勝敗ほぼ確定。最終戦は中堅藤原秀奨が大将山下永輝と手堅く引き分けて最終スコアは2人残し。損耗ほぼゼロのまま山場の国士舘戦まで辿り着いた。

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2回戦、足立学園の先鋒野尻大輔が本郷高・岡本亮太郎から大内刈「一本」。

【Cブロック】
シード校:足立学園高
準々決勝カード:足立学園高 - 工学院大附高

常の年であれば足立学園の一強となるはずのブロックであるが、招待試合サーキットを観察する限り足立学園は今代大きく戦力を落としている。純戦力で考えれば全国大会出場争いに伍するのは、率直に言って難しい状況。あるいはこのブロック逆側の山に控える工学院大附高の後塵を拝するのではとの観測もちらほら聞かれる中、2回戦は本郷高を4人残し、3回戦は墨田川高を4人残しとひとまず順調にベスト8入り。ここまで世田谷学園高を3人残し、杉並工高を2人残しで勝ち上がってきた工学院大附高との準々決勝を迎える。

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副将対決、工学院大附高の伊藤光星が足立学園高・鹿取新之助から隅落「技有」

[Cブロック準々決勝]
足立学園高〇代表戦△工学院大附高
(先)佐々木弥希哉×引分×佐藤拓未(先)
(次)榊田夏陽×引分×酒井弘志(次)
(中)高田顕矢△優勢[技有]〇飯野翔大(中)
(副)鹿取新之助〇抑え込み※(1:40)△飯野翔大(中)
(副)鹿取新之助△優勢[技有・隅落]〇伊藤光星(副)
(大)鈴鹿功織〇反則[指導3](1:45)△伊藤光星(副)
(大)鈴鹿功織×引分×立本裕真(大)
(代)佐々木弥希哉〇GS反則[指導3](GS0:23)△佐藤拓未(代)

接戦、との予想に違わぬ大激戦。2引き分けを受けて迎えた第3試合の中堅対決で工学院大附の飯野翔大が個人戦60kg級代表高田顕矢を抜いた際にはもはや工学院大附の勝ち上がり濃厚と思われたが、足立学園は副将鹿取新之助が飯野を抜き返して譲らない。しかし、続く5試合は鹿取が相四つの伊藤光星に釣り手を噛み殺された苦しい体勢から強引な払腰に出てしまい、待ち構えた伊藤が捲り返して隅落「技有」。伊藤は以降も低く構えて鹿取の釣り手を殺し続け、この試合は伊藤の優勢勝ちに終わる。5試合を終え、工学院大附が1人差リード。足立学園は大将1枚を残すのみ。

しかし足立学園は大将鈴鹿功織が畳に残った伊藤を一方的に攻め続け、1分45秒の間に3つの「指導」を獲得して勝利。続く大将同士の対決は前半に立本裕真が攻め込み、後半は鈴鹿が盛り返して引き分けで終了。試合は代表者1名による決定戦へと持ち込まれる。

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代表戦、延長開始早々に佐々木弥希が相手をあおって引きずり、佐藤拓未に3つ目の「指導」

代表戦は先鋒同士による第1試合の再現。足立学園の佐々木弥希哉と工学院大附の佐藤拓未ともに右組みの相四つ、両者試合が始まるなり余計な組み手争いなどせず、正面から奥を叩き合っての真っ向勝負を挑む。31秒、やや腰を引き気味に頭を下げて構える佐藤の首が抜けてしまい、首抜きの「指導」。続く展開では両者組み手に時間が掛かり、56秒には双方に「指導」。「指導2」を失った佐藤は後がなくなる。以降は再び双方がっぷり四つに組み合っての力比べが続く。1分33秒、再び攻防のなかで佐藤の首が抜けてしまい、主審は合議を招集。映像の確認が行われるが、ここは試合続行。

試合終盤になると佐藤が明らかに消耗。対照的にさすがは猛稽古で鳴らす足立学園というべきか、佐々木の側に疲労の気配はない。それでも佐藤持ち堪え、「指導1」対「指導2」の佐々木リードというスコア動かぬまま試合はGS延長戦へと持ち越される。

GS23秒、組み合った状況から佐々木が前にあおると佐藤膝をついてしまい万事休す。偽装攻撃の咎で佐藤に「指導3」が与えられ、ここで佐々木の勝利が決まった。足立学園、意地のベスト4入り決定。

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2回戦、安田学園高の先鋒笛田晃聖が日野高・大森達也から大腰「一本」。

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3回戦、安田学園の次鋒近藤亮介が田無高・児玉湖風から体落でまず「技有」。

【Dブロック】
シード校:安田学園高
準々決勝カード:安田学園高 - 東海大高輪台高

個人戦81kg級で増地遼太郎が代表権を獲得し意気揚がる安田学園高と、冬季招待試合シリーズの健闘で一躍注目を浴びる存在となった東海大高輪台高が激突する、今大会最注目ブロック。

安田学園は2回戦から登場。まず露払い役として投入された先鋒笛田晃聖が日野高を相手に5人抜きを果たす。内容は大腰「一本」、一本背負投「技有」からの背負投「一本」、肩車「一本」、片手絞「一本」、背負投「一本」。次鋒以降の布陣は近藤亮介、小林翔太、田邊勇斗、増地遼太朗とフルメンバー。

3回戦は先鋒笛田が小外掛「一本」で勝利したあと田無高の次鋒児玉湖風に一本負けを喫して抜き切れなかったが、次鋒近藤亮介がここから4人を抜き去って試合終了。スコア4人残しで順当にベスト8入り決定、決戦兵力を温存したまま大一番に備える。

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2回戦、先鋒戦で東海大高輪台の松本征士が國學院久我山高・犬飼将希から内股「一本」。

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3回戦、先鋒戦で東海大高輪台の石間勇斗が岩倉高・福士芳治から一本背負投「一本」。

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3回戦、東海大高輪台の副将石村健真が岩倉の大将渡邊広海から片襟の大外刈「技有」

注目の東海大高輪台は2回戦でまず國學院久我山高を5人残しで一蹴。メンバーは先鋒から松本征士、的場光太朗、孫俊峰、石村健真、柴野明紀。内容は松本が内股「一本」、背負投「一本」、小外掛「一本」、内股「一本」、内股「一本」。

3回戦は好チーム岩倉高とマッチアップ。岩倉も今季充実が伝えられており、これがこの日最初のハードルである。第1試合は先鋒石間勇斗がケンカ四つで体格に勝る福士芳治を相手に食らいつき、50秒右一本背負投で相手の懐に潜り込み「一本」。続いて左相四つの大型選手根本龍次が挑んでくる抱き勝負をしっかり踏ん張って凌ぎ、引き分けて無敗のままぶじ退場。2試合を終えて、東海大高輪台が1人差リード。

しかし第3試合は岩倉の中堅秋場健士朗が1分2秒、ケンカ四つの孫俊峰が仕掛けた引っ掛けるような右内股の作用足を外して内股透。ハンドル操作で一回転させ「技有」を得る。以後は大技狙いの孫の攻めが雑になったこともあり、このまま試合終了。岩倉のエース格秋場の優勢勝ちで、再びスコアはタイに戻る。

中堅同士の戦いとなった第4試合は東海大高輪台の的場光太朗がやや怒気を発して引きずり回しに出ると、既に1試合をフルタイム戦っている秋場は激しく消耗。28秒、52秒、1分50秒と3つの「指導」が積み重なって的場が勝利を得る。東海大高輪台は再び1人差リード。

的場は続く第5試合も岩倉の副将蓬田翔太郎が仕掛けた右内股を捲り返して42秒隅落「技有」獲得。これで大勢見えたかと思われたが、1分57秒寝勝負を挑んだ蓬田が的場を所謂「舟久保固め」に捕まえる。これはすぐに解けたがやや場の雰囲気怪しくなり、残り10秒に蓬田が場外際で右払巻込を仕掛けると体が伸びてしまった的場ごろりと転がって「技有」。この試合は双方「技有」を取り合っての引き分けに終わり、東海大高輪台の1人差リードのまま試合は最終盤へ。

第6試合は東海大高輪台のエース、副将石村健真が登場。右相四つの岩倉の大将渡邊広海に対しまず引き手で袖を掴み、次々片襟の右大外刈に飛び込む。渡邊抱きとめて耐え続けるが1分22秒ついに陥落「技有」。以後は石村がややペースを落とし、手堅く戦って試合終了。東海大高輪台が大将柴野明紀を余らせたまま勝利、スコア2人残しでベスト8入りを決めた。

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最注目の一番、オーダー順が開示される

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両軍の戦略の鍵を握るのは、東海大高輪台の大将に座るエース石村健真の存在。

[Dブロック準々決勝]
東海大高輪台高 - 安田学園高
(先)石間勇斗 - 森太雅(先)
(次)柴野明紀 - 小林翔太(次)
(中)的場光太朗 - 増地遼太朗(中)
(副)孫俊峰 - 田邊勇斗(副)
(大)石村健真 - 近藤亮介(大)

本日随一の注目対決。
東海大高輪台は大黒柱のエース石村健真を大将に据える一方、ポイントゲッターの柴野明紀を次鋒に前出しするセパレート配置。その間を的場光太朗と大型の孫俊峰で固めて壁を形成するという策に出た。損耗を避けながら相手方の戦力を消すだけ消し、最後は石村で勝負を掛けようという形。

一方の安田学園は次鋒から小林翔太、増地遼太朗、田邊勇斗と主戦3枚を並べて配置。大将には軽量ながら手堅い戦いの出来る近藤亮介を置いた。現在もっとも攻撃力のある増地を重量と安定感ある小林と田邊2枚で挟んで攻撃ブロックを形成、ここで差をつけ、出来得れば近藤登場前に勝負を終わらせてしまおうという先行逃げ切り型の布陣だ。

安田学園としては、大将に控える相手方のエース石村をどう畳から降ろすかという課題から物事を考えねばならない。自軍の大将近藤は試合巧者だかいかんせん軽量、都無差別個人3位の石村をタイの状況で相手にするのは厳しい。出来得ればもっとも攻撃力のある中堅増地遼太郎で、悪くとも副将田邊勇斗までで石村を止めてしまいたい。小林と増地で1人差リードを作り出し、田邊で最後衛の石村を止めるというのが理想で、これは十分手の届くシナリオ。これがなし得なかった場合は石村を消耗させておき、近藤で止め、休養を経た増地が代表戦に登場するという後詰の策が控えている。相手方もう1つの山である柴野明紀、続いてしぶとい的場光太朗、そしてスケール感ある孫俊峰と並んだ3人のうちから、小林と増地の2人で1人を確実に抜くことが肝要だ。

一方の東海大高輪台としては、石村が大将に座る以上、最低でもソリッドに試合を進めて大将対決まで持ち込めば十分勝利が見えてくる。次鋒に前出しした柴野が安田学園の3枚のうち1枚をまず確実に止めるのが必須のシナリオ、最高のシナリオはこの柴野まででいまもっとも危険な増地までを消してしまうことだ。この「必須シナリオ」をベースに、あとは意外性ある的場と孫がこの上に得点を積み重ねられるかどうかという足し算戦に挑むことになるわけだが、この2人に、特にこの冬急成長した孫に得点力と裏腹の不安定感が残ること、そして対面に位置する安田学園の増地がいま乗りに乗っており、力関係に関わらずどこからでも一太刀浴びせてくる攻撃特化型であることが不確定要素。このあたりは畳の上に乗ってみるまで読みがたい。両軍とも、攻めるのか、守るのか、状況に応じて選手に迷いなく方針を伝えられるかどうかがひとつカギを握るはず。

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先鋒戦は拮抗の末に引き分け。

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抜き役同士がかち合った柴野明紀と小林翔太の第2試合も引き分けに終わる。

先鋒戦は東海大高輪台・石間勇斗が左、安田学園の森太雅が右組みのケンカ四つ。以後の拮抗した配列を考えるとこの試合の勝敗が盤面に与える影響はまことに大きい。チーム内の序列を大きく超えた最重要試合と言えるはず。森は右内股に小外掛、石間は左背負投に森の小外掛を切り返しての巴投、さらに左大腰と攻め合うが、双方今一歩のところでポイントまでには至らず。この試合は引き分けに終わる。

ポイントゲッターがかちあった次鋒同士の第2試合は柴野明紀が左、小林翔太が右組みのケンカ四つ。小林得意の右内股で攻めるが柴野その戻りに得意の小外刈を引っ掛け、小林崩れて「待て」。危機を感じたゆえか以後小林やや大胆さを欠き、試合は攻め合いも、大勢としてはやや膠着。小林が状況を作ると柴野はその都度先んじて体落に体落崩れの右内股で相手の腰を乗り越えて展開をリセット。試合はあっという間に最終盤まで進む。残り時間僅か、柴野の鋭い出足払を小林が燕返に切り返して大きく崩すが、投げ切れず腹ばいに落としてしまい「待て」。ここで試合は終了となり、互いの抜き役が潰し合った形でこの次鋒対決も引き分けとなった。

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第3試合、安田学園の増地遼太朗が的場光太朗の掛け潰れを見逃さず、絞めを利かせて抑え込みを狙う。

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増地が崩袈裟固「一本」、先制点は安田学園の手に落ちる

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第4試合、孫俊峰の右内股が増地を引っこ抜き「技有」。東海大高輪台が抜き返してスコアはタイに。

第3試合は安田学園のエース格、81kg級都代表の増地遼太朗が登場。対する的場光太朗も招待試合シリーズの躍進を支えた好選手であり、この一番がこの試合の分水嶺。
的場、増地ともに右組みの相四つ。増地が右大内刈で仕掛けると的場は右一本背負投に切り返して場を繋ぐが、集中力高い増地はこれを見逃さない。そのまま潰すなり絞め上げ、相手が耐えるとみるや絞めを利かせたまま捲り返して体を入れ、崩袈裟固まで持ち込む。的場は万事休し、試合時間僅か57秒「一本」が宣せられて安田学園が先制点を獲得。配列上安田学園の勝利に必須の差分「1」がついに生まれる。

第4試合は身長186センチの大型・孫俊峰が増地と対峙。この試合も右相四つ、孫は状況の悪さに怖じず、29秒に打点の高い右内股。孫の長所である力強さと伸びやかさが存分に生きた形の一撃、横変形にずれて釣り手を顎でかみ殺していたにも関わらずそのまま引っこ抜かれた増地、空中でバランスを取ろうと試みるも予想以上の高さにテンポが合わず畳に落下「技有」。

ビハインドを負った増地すかさず右の大外巻込で取り返しに出、これはポイントでもおかしくない一撃だったが「待て」。以後増地は左への背負投、さらに右大内刈と激しく攻める。孫はいったん陣地を譲った格好となるが1分30秒を過ぎたあたりから息を吹き返し、増地の右大内刈を切り返しての右内股、奥襟を叩くなりの右内股、増地のケンケン大内刈を受けておいての右大外刈と散発ながら時折大技を繰り出し、この印象で持ちこたえて時計の針を着実に進める。残り8秒、奥襟を得た孫が増地の右大外刈を待ち構えて返しに掛かるが果たせず「待て」。ここで試合が終わり、この試合は孫の「技有」優勢による勝利となった。再びスコアはタイとなる。

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第5試合、田邊勇斗が孫を攻めまくり、僅差優勢で勝利

第5試合は副将対決、畳に残った孫俊峰が右、安田学園の田邊勇斗が左組みのケンカ四つ。田邊いきなり一方的に組むと上下に激しくあおって疲労困憊の孫を潰す。さらに左大内刈、続いて圧力と絡めながらの足技で2度畳に這わせると、1分7秒孫に「極端な防御姿勢」による「指導」。田邊は簡単には潰さず、組み勝ってはフェイントの小外刈に大内刈と相手に動く防御を強いて体力を着実に奪い、1分52秒には孫に消極的との咎で2つ目の「指導」。孫は前戦同様大技一発で不利を剥がそうとするがその頻度は激減、なんとか3つ目の「指導」失陥を避けるのがやっと。この試合は僅差の優勢で田邊が勝利することとなった。安田学園は1人差リードを持って石村を引っ張り出すというミッションを、ぎりぎりで達成。

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第6試合、田邊はしっかり釣り手を突いて試合を進め、石村健真に得点の予感は僅少

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しかし残り22秒、石村が組み際に大内刈を決めて「技有」。

第6試合は東海大高輪台の大将石村健真が右、畳に残った安田学園の副将田邊勇斗が左組みのケンカ四つ。田邊は引き分ければ準決勝進出、石村は勝利せねばチームの敗戦が決まるという極めて煮詰まった状況だ。
田邊しっかり釣り手を突いて対峙。石村は間合いが遠いままの進退を余儀なくされ、背中を叩いての右大内刈、右小外刈に右内股と仕掛けるがいずれも効き切らず。山場を作るまでの技数を積み上げることも出来ず、ようやく田邊に偽装攻撃による「指導」ひとつが与えられた時には残り時間僅か1分4秒。以後も田邊はしっかり距離を取りながら攻防を続け、石村の思い切った大内刈もあっさり離れて凌ぐ。率直に言って石村に得点が生まれる可能性は僅少、このまま引き分ける以外の結末は想像しにくい状況だ。

しかり残り22秒、石村が組み際に抱きつきの右大内刈。田邊一瞬集中を切ったか当然予想さるるべきこの奇襲をまともに受けてしまい、肩口から畳に落下「技有」。

安田学園は準決勝進出を目前に運命暗転。ビハインドを負った田邊怒気を発してダッシュ、乾坤一擲の右内股を仕掛けるがもはや石村は取り合わず。石村の「技有」優勢による勝利でこの試合は終了。ゲームは再びタイスコアとなり、勝敗の針は今度は東海大高輪台の側に激しく振れる。

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大将対決、安田学園の近藤亮介は体格差を跳ね返して粘り、石村を相手に引き分けをもぎ取る。

大将同士の対決は畳に残った石村が右、近藤亮介が左組みのケンカ四つ。近藤は73kg級の選手だが対大型戦はどうやら耐性あり、相手を動かしながらの出足払に左背負投と石村の圧に捕まり切らずに技を積む。石村付き合い過ぎては機を失うと組み際の右内股に打って出るが際に強い近藤はぎりぎりで伏せて耐える。石村は得意の小外刈、しかし近藤が左内股に切り返し、石村がこれに隅落を狙って「待て」。かなりの体格差にも関わらず「際」に限れば五分の攻防が成立しており、疲労が溜まった石村からは時間が経過するごとにどんどん取り味が減っていく印象。近藤が石村の攻撃を耐え、あるいは左内股に切り返すという構図のままあっという間に時間が経過。残り10秒、石村の組み際の小外刈をまたもや近藤が左内股に切り返したところでタイムアップ。近藤がしっかり仕事を果たした形でこの試合は引き分けとなり、準決勝進出の可否は代表者1名による決定戦に委ねられることとなった。

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代表戦、柴野明紀が出足払で増地遼太朗を叩き落とす。これはノーポイントだったが、以後試合展開は柴野の側に傾く。

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柴野が増地の右技を待ち構え、隅落「技有」。

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大一番の勝者は東海大高輪台となった。

代表戦は安田学園が増地遼太郎、一方の東海大高輪台は連戦の疲労を考慮したかここでエースの石村を下げ、次鋒に配置して休養させていた柴野明紀を送り出す。

この試合は柴野が左、増地が右組みのケンカ四つ。引き手争いの中、43秒柴野が引っ掛けるようなタイミングで出足払を呉れると増地腹ばいに激しく落ちて「待て」。奮起した増地が大内刈を見せると柴野これをかわして小外刈。増地叩き落とされたかのように畳に落ち、これはポイントあったかと思われたが審判団の判定はノーポイント。

増地さすがにやや動揺の気配、大外刈を繰り出すが柴野はまたもや鋭い出足払に切り返し、続いて体落、内股で攻める。場の空気を柴野が支配したこのタイミングで、増地が吸い寄せられるように低い右釣込腰。刈り足を大きく伸ばしての右大外刈から着地、奥襟を抱いたまま体落気味に仕掛けた技だが焦りゆえか間合いが噛み合わず、反転して膝を着くと奥襟の拘束が抜けてしまう。中途半端になったこの技を柴野見逃さず、左で後襟を引っ掴んでの隅落でめくり返し、残り32秒「技有」。
絶体絶命の増地は左への背負投に抱きつきの小外掛と攻めこむが柴野しっかり凌ぎ、タイムアップ。柴野が「技有」優勢で勝利し、東海大高輪台が大きな山を乗り越えてベスト4入りを決めた。

東海大高輪台高〇代表戦△安田学園高
(先)石間勇斗×引分×森太雅(先)
(次)柴野明紀×引分×小林翔太(次)
(中)的場光太朗△崩袈裟固(0:57)〇増地遼太朗(中)
(副)孫俊峰〇優勢[技有・内股]△増地遼太朗(中)
(副)孫俊峰△優勢[僅差]〇田邊勇斗(副)
(大)石村健真〇優勢[技有・大内刈]△田邊勇斗(副)
(大)石村健真×引分×近藤亮介(大)
(代)柴野明紀〇優勢[技有・隅落]△増地遼太朗(代)

勝敗の針が激しく振れ続けた試合。田邊が孫に勝利し、石村との試合を残り22秒まで進めたところではもはや安田学園の勝利ほぼ確定かと思われたが、石村の一撃が状況をひっくり返してしまった。大将対決の近藤の奮闘で再び安田学園にも目が出てきた形にはなったが、以後の試合の流れはこの石村の「技有」で規定されてしまったかと思われる。

東海大高輪台にとってはオーダー順、個々の対戦相性と非常にうまく嵌った試合。相手が前にひとつ重心を置いてくることを予期し、ポイントゲッター級を纏めるのではなく分散配置したセパレート策が効いた。柴野が小林と心中し、かつ体力を温存して代表戦に備えられたことは石村の一撃と並ぶ直接的勝因。チームの持てる力をフルに発揮させた好布陣だった。

安田学園は勝利に、そして悲願の全国大会出場に限りなく近づいたが、運命は残酷だった。組み合わせに泣いた昨夏のインターハイ予選を経て遂にチャンスを掴んだ形だったが、これを生かすことは出来ず。続く第3代表決定トーナメントに望みを掛ける。

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本日の最強対決はこの準決勝。オーダー順が開示される。

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先鋒戦、藤永龍太郎が藤原秀奨を左内股で捩じり回し、まず「技有」。

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藤永は後帯を掴んでの左内股「一本」も得て盤石の出だし。

【準決勝】

[準決勝第1試合]
国士舘高 - 日体大荏原高
(先)藤永龍太郎 - 藤原秀奨(先)
(次)岡田陸 - 海堀陽弥(次)
(中)長谷川碧 - 平山才稀(中)
(副)道下新大 - グリーンカラニ海斗(副)
(大)斉藤立 - 山城和也(大)

純実力的な観点で言えばこれが事実上の決勝。国士舘は今季の全国優勝候補筆頭だが、日体大荏原とはこのところスコア的に揉めるゲームが続いており、戦力的にも、なにより相性的に気の抜けないカードだ。とはいえ、国士舘にエース斉藤立の存在がある以上勝敗自体が揺らぐ可能性はほぼ皆無。国士舘としては斉藤の登場なしに試合をまとめてしまうことが目標、一方の日体大荏原としては今後に向けて是が非でも斉藤を引っ張り出し、国士舘の面々に「やりにくさ」を刷り込んでおくことがこの試合の目あてである。

先鋒戦は藤永龍太郎が左、藤原秀奨が右組み。得意のケンカ四つということもあり藤永の動きは良し。藤永の抱え込むような釣り手の作りが出来上がるたびに藤原これを壊して粘らんとするが、57秒双方に消極的との咎による「指導」が宣せられると、藤永のギアが一段上がる。1分18秒には背を抱いてきた藤原の釣り手を閂で抱き込み、鋭い動きで左内股。藤原が膝を着くと巧みに乗り込んで回し「技有」獲得。
これで場の空気が決まった印象。藤原の釣り手から序盤のしつこさが消え、藤永は釣り手の形を変えながら投げを探る得意の展開に持ち込んで躍動。2分21秒には釣り手で後帯をガッチリ掴んで出足払を入れ、内股に連絡する得意の攻め。クルリと藤原を回して鮮やか「一本」。先制点は国士舘の手に落ちる。

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第2試合、海堀陽弥が次々袖釣込腰に飛び込み、藤永は前戦から一転してペースダウン。

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第3試合、日体大荏原の中堅平山才稀が岡田陸から小外掛「一本」。

国士舘は順風満帆の出だし。しかし完璧な出来を見せたはずの藤永、次戦は別人。組み手が苦手の相四つに変わるなり突然停滞、海堀陽弥に左袖釣込腰の2連発を受け、さらに右袖釣込腰、右一本背負投と次々決定的な間合いへの侵入を許す。いずれもぎりぎりで回避し、中盤には左大外刈から左背負投へのつなぎを見せて対相四つ戦の手立て構築を垣間見せたが、大枠「攻められっぱなし」のままこの試合は引き分け。国士舘は1人差リードを保つが、少々嫌な雰囲気が漂う。

ここからは日体大荏原のポイントゲッターブロック。第3試合は国士舘の次鋒岡田陸が右、日体大荏原の中堅平山才稀が左組みのケンカ四つ。
平山が内股で攻めるも獲り切れず、50秒双方に消極的との咎で「指導」。以後平山奥襟を掴んで優位を取り続けるが、岡田釣り手をたたんで敢えて沈黙、この長い危機を耐え切る。1分55秒には岡田に2つ目の「指導」。引き分け、平山の「指導3」による勝利いずれの可能性も五分という情勢だが、ここで平山は腰の差し合いからいったん相手の前に体を入れると、背中を抱えておいて小外掛の大技。ほとんど裏投の形で後方に思い切り投げを呉れると体ごと抜き上げられた岡田為すすべなく吹っ飛び、2分23秒「一本」。ここでスコアはタイとなる。

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第4試合、長谷川碧が両手で左腕を捕まえての左内股、最小限の作りで投げに掛かる。

第4試合は中堅同士の対決、畳に残った平山才稀と国士舘・長谷川碧ともに左組みの相四つ。平山まず相手を釣り手側のスペースに回して吸い込む作りから左内股、さらに横変形にずれることで体の太い長谷川の圧力を逃がしながらチャンスを伺う。51秒双方に消極的との咎で「指導」。直後平山が良い左大外刈を見せると、このままではならじと長谷川まず相手の左腕を両手で抱え込んでの左内股。これを耐えた平山ふたたび釣り手側に相手を吸い込んでの左内股を見せるが、前段の攻撃に手ごたえを感じた長谷川が再び腕を抱えての内股を見せると、体格差を感じたかやや柔道が窮屈となる。組み立てを最小限に、体格を利して最短距離で投げようとする長谷川の意図を感じた平山、苦しい状況を左内股の掛け潰れでリセットし「待て」。序盤戦の様相からすれば少々意外な弱気、残り時間は45秒あったがこの攻防で先が見えた印象。このままこの試合は引き分けに終わる。

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第5試合の副将対決、日体大荏原のグリーンカラニ海斗が道下新大から大内刈「一本」。

試合はタイスコアのまま副将同士の対決へと進む。「斉藤を使わず勝つ」ことを目指したい国士舘、逆に斉藤を引っ張り出したい日体大荏原、ともにここが勝負どころだ。

第5試合は国士舘の道下新大と日体大荏原・グリーンカラニ海斗ともに左組みの相四つ。まずグリーンが左内股で攻め、道下は相手の腕を抱え込んでおいての蹴り崩しで抗する。道下この形からズルリと崩すと、頭の下がった相手を抱えて引込返。これでグリーンを潰し、得意の横三角で攻め「待て」。

1分、道下がいったん釣り手をクロスに入れ、再び腕を抱え込んでおいての左大内刈。これは潰れて「待て」。ここまでは道下が得意の変形組み手と先手攻撃で大型のグリーンの力をまともに受けることを避けているという展開だが、続く攻防でこの組み手の掘割をグリーンがいきなり突破。引き手で襟、釣り手で奥襟を掴むなり左大外刈のフェイントから左大内刈、まず道下の長い手足の内側に腰を滑り込ませると、ケンケンでさらに深く侵入。道下微速後退して逃れようとするがグリーンの迷いのない前進の前に体が詰まり、手ごたえを得たグリーンが思い切って前に飛び込むと、両足で着地したその股中に道下背中から落下「一本」。試合時間は1分22秒、これで日体大荏原が再び1人差をリード。国士舘は今大会初めてエース斉藤立が畳に上がることとなる。

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第6試合、国士舘の大将斉藤立がグリーンカラニ海斗から大内刈「一本」。

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最終戦は斉藤の大外刈「一本」で決着、スコア1人残しで国士館の勝利が決まった。

第6試合は畳に残ったグリーンと斉藤ともに左組みの相四つ。「秒殺」を狙った斉藤いきなり思い切った左大外刈を放つが釣り手ごと体が抜けてしまい前に空転、自らが尻餅をつく形で双方ブレイク「待て」。続けて放った左内股はグリーンが耐え切るが、二の矢で放った支釣込足にグリーンが潰れたところで主審が試合を止めて52秒グリーンに「指導」。斉藤は大外刈、体落と続けて技を繰り出し、1分26秒にはグリーンに「指導2」。
続く展開で斉藤が左大内刈。相手が耐えると両手を離さぬまま投げの方向を左後隅に変える。グリーン手を着いて逃れんとするが果たせず、背中から畳に落ちて「一本」。試合時間は1分57秒、グリーン健闘も「予想外に時間が掛かった」のみという印象を覆すには至らず。斉藤がまず1人抜き、この時点でスコアはタイに戻る。

大将同士の第7試合はあっと言う間に決着。斉藤が山城和也に左大外刈、釣り手の甘さを突く形で山城が耐えてバランスの取り合いとなるが、斉藤あくまでこのステージから降りず。ケンケンしながら角度を調整、整ったと思うなり真裏に刈り込んで28秒「一本」。

国士舘高〇一人残し△日体大荏原高
(先)藤永龍太郎〇内股(2:21)△藤原秀奨(先)
(先)藤永龍太郎×引分×海堀陽弥(次)
(次)岡田陸△小外掛(2:25)〇平山才稀(中)
(中)長谷川碧×引分×平山才稀(中)
(副)道下新大△大内刈(1:22)〇グリーンカラニ海斗(副)
(大)斉藤立〇大内刈(1:58)△グリーンカラニ海斗(副)
(大)斉藤立〇大外刈(0:27)△山城和也(大)

これで全7試合が終了。国士舘が1人残しで勝利をおさめ、この時点で全国高校選手権本戦進出を決めた。

とはいえ見ての通り戦いぶり万全とは言い難く、内容に瑕疵多々あり。前代の全国制覇メンバー3人を含む4枚で2敗を喫し、仮に斉藤抜きであれば1人差での「敗戦」である。

一方の日体大荏原は次回対戦、より長期的に見れば点取り制のインターハイに向けて1つ楔を打った形。敗戦自体は想定内、最有力候補としてこの日のメインミッションである第3代表決定トーナメントに臨む。

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足立学園と東海大高輪台の準決勝が開始される。勝てば全国大会決定の大一番。

[準決勝第2試合]
足立学園高 - 東海大高輪台高
(先)榊田夏陽 - 石間勇斗(先)
(次)鹿取新之助 - 的場光太朗(次)
(中)高田顕矢- 柴野明紀(中)
(副)佐々木弥希哉 - 石村健真(副)
(大)鈴鹿功織 - 孫俊峰(大)

「全国決め」の大一番である。
注目の東海大高輪台、今度は中堅から柴野明紀と石村健真を並べて配置。中盤に得点ブロックを形成し、最後の備えとして大型の孫俊峰を大将に配置した。
一方の足立学園も60kg級代表の高田顕矢が中堅、一番手の佐々木弥希哉が副将と中盤が厚い形。戦力を考えれば先行逃げ切りしか勝利の道はないわけで当然の陣形とは言えるが、しかしいかんせん全員サイズがなく、ポイントゲッターの顔が見えない。両軍の布陣を見渡すと、足立学園勝利のシナリオを頭に描くのは少々難しい状況だ。敢えて大雑把に両軍の属性を語れば、「サイズがあり、自らの良さを発揮することに長けた攻撃型だが、消耗戦のディティールに甘さがある」東海大高輪台に、「サイズはないが練度と勝負力があり、相手の良さを消しながら攻める緻密さがある」足立学園という構図で字面上は双方にチャンスがあるのだが、駒それぞれの質量にかなりの差があるという印象。東海大高輪台の特徴である「体格を生かした攻撃力の高さと、それと裏腹の脆さ」を凝集した選手は孫で、足立学園のようなチームにとってはこれぞ相手にダメージを最大限呉れてやる狙いどころになるわけだが、巧みにも東海大高輪台はこの選手を最後衛の大将に配置。前衛4枚の巧さと強さで差をつけ、この選手を余らせたまま勝ち抜こうという布陣を敷いている。戦力的にも陣形的にも、東海大高輪台有利と喝破せざるを得ない。

東海大高輪台のミッションは、柴野明紀と石村健真のいずれかが、高田顕矢・佐々木弥希哉の巧さを突破してしっかり得点を挙げること。足し算要素は石間勇斗と的場光太朗のブロックで1点リードしておくことで、主力登場前にこの援護射撃が出来れば試合の行方はもはや決定的と言っていい。

足立学園としては「どこか」で隙を見て1点先行することが必須。伝統的に焦って出てくる大型の攻撃を消すことには長けており、このシナリオとなれば勝利の可能性は飛躍的に上がる。リードを保ったまま試合を進めて、高田と佐々木の2枚で石村を止め、最後は焦った孫を攻めまくって僅差の1点をもぎ取る。最初の得点が「どこか」であるという不確定作戦であるが、事前予測としては、このくらいしか勝利への道は描けない。

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榊田夏陽と石間勇斗による先鋒戦

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第2試合の次鋒対決、足立学園の鹿取新之助が的場光太朗から値千金の出足払「技有」

先鋒戦は足立学園・榊田夏陽が右、東海大高輪台の石間勇斗が左組みのケンカ四つ。
まず組み手争いから試合が始まり、30秒、榊田に襟を隠したとの判断で「指導」が与えられる。以降は榊田が釣り手を内側に入れて優位を確保、石間が外から相手の肘を抱き込むように脇下を持って対抗するという構図で試合が進む。双方が低く構えて圧を掛け合いながらの引き手争いが続き、1分27秒には両者に「指導」。榊田の伏せ際に石間が寝技を狙う場面が幾度があったものの、決め切るには至らず。この試合は両者ポイントがないまま引き分けに終わった。

第2試合の次鋒対決は足立学園の鹿取新之助が左、東海大高輪台・的場光太朗が右組みのケンカ四つ。的場が上から、鹿取が下から釣り手を持ち、二本を組み合った状態で試合が進む。的場が右内股、鹿取が左背負投を中心にそれぞれ攻め合うも互いに決定打はなく、試合は終盤へ。しかし引き分けの気配が濃くなってきた残り38秒、鹿取が相手の一瞬の隙を突いて鋭い左出足払。的場が崩れるとそのまま乗り上げるように体を浴びせて「技有」を得る。このポイントを守り切って鹿取が勝利、足立学園が先制点を得た。鹿取の集中力、見事の一言。

足立学園に「どこか」で欲しい1点が入ったことで試合は俄然面白くなった。言うまでもないことだが、新興チームがこれまで為したことのないことを実現するハードルはただでさえ非常に高く、常であれば敵に倍する力が必要。近年全国大会に出場のない古豪・東海大高輪台にとって、このところ続けて全国大会に出場している強豪・足立学園を相手に負ったこのビハインドがどれほど精神的に重いものであるか、想像に余りある。

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第3試合、東海大高輪台は中堅柴野明紀が畳に残った鹿取から左大内刈「技有」。

続く第3試合は畳に残った鹿取、東海大高輪台の中堅柴野明紀ともに左組みの相四つ。体格で勝る柴野に対して、鹿取は相手の釣り手にぶら下がるように食らいついて粘戦。しかし1分21秒、柴野が相手を場外際に追い詰め、まず刈り足を引っ掛けてから胸を合わせる手堅い手順の左大内刈。両手を離さず場外まで追って「技有」を得る。これで手応えを得た柴野は続く展開でも左大内刈で惜しい場面を作るなど攻勢。しかし、鹿取もここで粘るのが仕事とばかりにしぶとく畳に残り続け、以降の加点は許さない。この試合は柴野の優勢勝ち、東海大高輪台が1人を抜き返して再びスコアはタイに戻る。すかさず取り返すことで前戦のショックを払拭、一本勝ちこそ逃したが東海大高輪台にとってはまことに大きな1点。

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第4試合、高田顕矢が背負投を連発して決着を先送り、大枠優位の柴野に得点のチャンスを与えない。

中堅同士による第4試合は畳の残った柴野が左、足立学園の高田顕矢が右組みのケンカ四つ。軽量の高田は下から釣り手を突いて距離を取ろうとするが、柴野は強引に間合いを詰めて左内股を中心に攻める。柴野優位で試合は終盤まで進み、高田がポイントを得る予感は感じられず。柴野の技が飛び出すか、最低でも引き分けかと思われる状況であったが、2分34秒にアクシデント発生。高田が背負投を掛け潰れて伏せると、「待て」の後に柴野が膝蹴りするようなアクションを見せて場内は紛糾。審判団は合議を招集し、映像チェックの結果「柔道精神に反する行為」の条項適用による柴野のダイレクト反則負けが宣せられる。

これで足立学園が再び1人差をリード。東海大高輪台にとっては星勘定的には勿論のこと、試合の「流れ」、また激戦区東京から事実上初の全国大会に挑むというハードル高きミッションのさなかにあって、これ以上はないほど最悪の形。試合の流れは大きく足立学園の側に傾く。

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第5試合、東海大高輪台の副将石村健真が畳に残った高田を大外刈「一本」に斬り落とす。

東海大高輪台はここでエースの石村が出動。1人差ビハインド、それも最悪の形での失点という逆境にあって、直後にもっとも頼れる石村が配されていたことがチームを救うこととなる。
組み手は石村、高田ともに右組みの相四つ。状況を良く心得た石村は最初からアクセル全開。組み合うなり奥襟を得て一方的な形を作り、まず25秒に場外の「指導」を得る。1分15秒には片襟の右大外刈で高田を背中から叩き落とすが、これは「待て」の後で無効。ポイント獲得には至らなかったものの、この攻防の途中で高田が首を抜いていた模様、直後高田に2つ目の「指導」。これで石村は勝利に必要な「指導」2つ差を確保、さらに1分54秒には得意の片襟の右大外刈を炸裂させて文句なしの「一本」。エース石村の活躍でスコアは再びタイとなる。

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副将対決、石村の内股を佐々木弥希哉が透かし、石村は頭から畳に落ちる。合議が持たれ、試合は紛糾。

副将同士、ポイントゲッター同士による第6試合は畳に残った石村、足立学園の佐々木弥希哉ともに右組みの相四つ。まずは石村が引き手で袖、釣り手奥襟を得て万全の形を作り、25秒に右内股。しかし佐々木がバランス良く足を上げて耐えると空転してしまい、肩から畳に落下してしまう。悲鳴と歓声が入り乱れるなか、主審は合議を招集。頭から突っ込んだとしてのダイレクト反則負けも考えられる形であったが、映像による確認が行われた結果、試合続行が告げられる。透かした側の佐々木のコントロールが甘いと判断されたか「技有」もなし。足立学園サイドからは落胆の声が上がる。

一方、命拾いした恰好の石村はこれで警戒を強めたか、以降明らかに減速。結果、この試合は1分17秒に石村に偽装攻撃の「指導」が与えられたのみで引き分けとなる。

東海大高輪台、後衛を考えれば石村がここで複数抜きをして試合を終わらせることが最善であったはず。一方の足立学園としては紆余曲折あれどタイスコア、どちらにもチャンスが均等にある形で迎える大将対決は戦力差を考えれば上出来。むしろ望むところのはず。

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大将対決、鈴鹿功織が孫俊峰の懐に潜りこんで左背負投、一気に場の熱量が上がる。

第7試合は孫俊峰が右、鈴鹿功織が左組みのケンカ四つ。体格に勝る孫が右内股で攻め、鈴鹿が低く食らいついて内股透を狙うという構図。孫の攻勢が評価される形で、46秒鈴鹿に消極的の「指導」。以後何度か鈴鹿が内股透で惜しい場面を作って場内を沸かすもポイントには至らず、大枠としては孫の優勢のまま試合は終盤へ。しかし2分8秒、鈴鹿が場外際の左背負投で孫の懐深くまで侵入。あわや「技有」獲得かと思われたが、投げの過程で引き手が離れてしまいこれはノーポイント。

この一撃で場は一気に煮詰まった印象。ベースはパワーと体格に勝る孫が有利も、スピードと柔道の相性を考えれば内股透に背負投といつ鈴鹿の懐への侵入を許してもおかしくない状況。そしてもともと体捌きよりは体の力を利して相手の技を耐えるタイプの孫は、もはや消耗し切ってフラフラ。いつ間違って転んでしまってもおかしくない状態で、その1つの「間違い」が全国大会出場チームを決めてしまうという鉄火場だ。両軍緊張する中、そしてその緊張ゆえか以後両選手とも決定的なミスを起こさぬままタイムアップ。この試合は引き分けに終わり、勝負の行方は代表者1名による決定戦へと委ねられることとなる。

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代表戦、石村健真が佐々木弥希哉から大内刈「一本」。

代表戦は第6試合の再現カード、東海大高輪台が石村健真、足立学園は佐々木弥希哉の両エースが畳に上がる。

石村、佐々木ともに右組みの相四つ。まずはファーストコンタクトで佐々木が右一本背負投。相手の懐深くまで潜り込むが体が抜けてしまい、ポイントには至らず。この攻防を受けての11秒、石村に柔道着をはだけさせたとして「指導」が与えられる。
直後の17秒、石村が組み際に急加速して抱きつきの右大内刈。追い込みながら引き手で帯を得て拘束を強め、一気に刈り倒す。体格に勝る石村の体重をまともに受けた佐々木は磔にされたように動けず、背中から畳に落下。主審は高らかに「一本」を宣告。

今季のチームの躍進を集約したかのような強烈な一撃、そして劇的な決着。自軍スタンドの大歓声に石村は力強く右拳を握りしめて応える。東海大高輪台が決勝進出と、全国大会出場を決めた。

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東海大高輪台がこの時点で全国高等学校柔道選手権本戦進出を決めた。

東海大高輪台高〇代表戦△足立学園高
(先)石間勇斗×引分×榊田夏陽(先)
(次)的場光太朗△優勢[技有・出足払]〇鹿取新之助(次)
(中)柴野明紀〇優勢[技有・大内刈]△鹿取新之助(次)
(中)柴野明紀△反則[DH](2:34)〇高田顕矢(中)
 ※「柔道精神に反する行為」条項適用による
(副)石村健真〇大外刈(1:54)△高田顕矢(中)
(副)石村健真×引分×佐々木弥希哉(副)
(大)孫俊峰×引分×鈴鹿功織(大)
(代)石村健真〇大内刈(0:17)△佐々木弥希哉(代)

大型の新興チーム(東海大高輪台は古豪だが、近年の実績からこう称して差し支えないかと思われる)が攻撃力を鍛えて、いわば「自身の良いところを出す」ことにフォーカスしてのし上がると、伝統校が長所を消す練れた戦いでこれを撃退する。どの地区にも典型の構図であると思われるが、東海大高輪台は実質上のファーストチャレンジでこの壁を打ち破ったということになる。激戦区東京からの全国大会出場は快挙だ。
東海大高輪台はこれでミッションコンプリート。全国大会本戦に向けて、今期の全国優勝候補筆頭の国士舘を相手とした腕試しに挑むこととなる。

足立学園、敗れたりとはいえ、この戦力で全国大会進出に肉薄した勝負力の高さは見事の一言。準々決勝の工学院大附高戦に続き、伝統校の凄みを見せつけた本戦の2試合だった。

【第3代表決定戦・1回戦】

修徳高〇三人残し△明大中野高
(先)岡田尚樹×引分×中谷優我(先)
(次)長尾光真〇優勢[僅差]△藤井洸成(次)
(次)長尾光真〇優勢[技有]△山本永輝(中)
(次)長尾光真〇優勢[技有]△高堂凌治(副)
(次)長尾光真△合技(1:35)〇山下愛斗(大)
(中)中村和真〇反則(2:20)△山下愛斗(大)
(副)田中佑弥
(大)小嶋洸成

安田学園高〇二人残し△工学院大附高
(先)森太雅〇優勢[技有]△立本裕真(先)
(先)森太雅×引分×酒井弘志(次)
(次)近藤亮介△優勢[技有]〇飯野翔大(中)
(中)小林翔太〇横四方固(1:27)△飯野翔大(中)
(中)小林翔太×引分×伊藤光星(副)
(副)増地遼太朗〇大外刈(1:17)△佐藤拓未(大)
(大)田邊勇斗

ベスト8チームによる2試合は、修徳と安田学園が順当に勝利。修徳は先鋒岡田尚樹の初戦引き分けに3人を抜いた後に喫した長尾光真の1敗、安田学園は前戦で奮闘した近藤亮介の1敗とディティールに凹凸はあったが大勢に影響はなし。修徳は3人残し、安田学園は2人残しでぶじ第2ラウンドへと進出決定。

【第3代表決定戦・2回戦】

修徳高〇二人残し△足立学園高
(先)田中佑弥×引分×野尻大典(先)
(次)岡田尚樹〇内股(0:14)△鈴鹿功織(次)
(次)岡田尚樹〇合技(2:03)△榊田夏陽(中)
(次)岡田尚樹×引分×佐々木弥希哉(副)
(中)中村和真×引分×高田顕矢(大)
(副)長尾光真
(大)小嶋洸成

ここまで粘戦を続けてきた足立学園だが少々気持ちの糸が切れた感あり。この試合は戦力差がそのままスコアに反映された。修徳は前戦不首尾のポイントゲッター岡田尚樹が次鋒で出動、この選手の2連続一本勝ちでほぼ勝負は決まり。修徳は無敗の2人残しで積年のライバル足立学園を突破、本日最大のターゲットである「全国決め」の大一番に臨む。

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藤原秀奨が森太雅から内股「一本」

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藤原は続いて畳に上がった小林翔太をあっという間の大外刈「一本」で抜く。

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藤原が安田学園の副将増地遼太朗から右小外刈「技有」、これで4人抜きを達成。

日体大荏原高〇四人残し△安田学園高
(先)藤原秀奨〇内股(2:50)△森太雅(先)
(先)藤原秀奨〇大外刈(0:29)△小林翔太(次)
(先)藤原秀奨〇優勢[技有・縦四方固]△近藤亮介(中)
(先)藤原秀奨〇合技[小外刈・横四方固](2:21)△増地遼太朗(副)
(先)藤原秀奨×引分×田邊勇斗(大)
(次)島本真司郎
(中)平山才稀
(副)グリーンカラニ海斗
(大)海堀陽弥

伝統的に日体大荏原の側に相性的な分のあるカードであり、戦力的にも日体大荏原のほうが上であるが、なにより安田学園の側の糸が完全に切れていた。日体大荏原は前衛に藤原秀奨と島本真司郎を置いてこの2人の仕事に期待、次戦に備えて主力を後方に下げる布陣で臨んだが、斬り込み役の藤原1枚だけで試合を終わらせてしまった。

藤原は粘る安田学園の先鋒森太雅を内股巻込と大外刈、しつこい寝技で追い詰め、絶対に以後を揉めさせぬとの決意明らか。試合は終盤まで進んだがあくまで引き分けを受け入れず、残り10秒内股「一本」。第2試合で相手方の前衛の橋頭保・小林翔太をあっという間の大外刈「一本」で抜いた際には既に畳上に終戦感が漂い、第3試合で粘る近藤亮介をも縦四方固「技有」で退けると、続く試合はもはや消化試合の様相。第4試合は最大の難敵である増地遼太郎が立ちはだかるが、次の目標が見えているものとそうでないもののモチベーションの差は大きい。横変形から増地が得意の右大内刈を放つと、藤原は外すなり深く刈り足を入れて右小外刈。下がる増地を追いかけて浮技気味に決めに掛かると増地左肘を着いて腹ばいに耐えるが、藤原は脇を差した左で増地の右腕を制して押し込み2分4秒「技有」。藤原そのまま横四方固に抑え込んで盤石の「一本」。第5試合は藤原がケンカ四つの田邊勇斗と手堅い戦い。慎重一辺倒ではなく、田邊の探るような左大内刈はきっちり返して片手絞を狙い、試合が膠着するとみるや抱きつきの右小外掛で投げに出てと自在の働き。田邊にこれを打開するだけのバイタリティはなく、試合はそのまま引き分けで終了。日体大荏原が4人残しという完璧なスコアで最終戦へと駒を進めることとなった。

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全国決めの大一番は予想通りのカードとなった。

【第3代表決定戦・最終戦】

日体大荏原高 - 修徳高
(先)海堀陽弥 - 長尾光真(先)
(次)山城和也 - 岡田尚樹(次)
(中)平山才稀 - 中村和真(中)
(副)グリーンカラニ海斗 - 田中佑弥(副)
(大)藤原秀奨 - 小嶋洸成(大)

総体戦力は日体大荏原が上。平山才稀とグリーンカラニ海斗のポイントゲッター2枚を中盤に据え、前戦で5人を賄った藤原秀奨を大将に余らせた。
周辺戦力も骨の太い日体大荏原に対して、修徳の戦力にはかなり凹凸がある。本来の抜き役は小嶋洸成と岡田尚樹の2枚だが、この冬の岡田は対戦相性にひきずられて獲り切れぬ試合も幾度か見せており、打撃力だけで考えれば小嶋1枚の一点豪華型布陣と評せざるを得ない。60kg級の好選手長尾光真の存在はあるがこのレベルで得点を事前に折り込むのは厳しいものがあり、何とか失点ゼロで粘って小嶋1枚による「個」の力で勝敗が決するステージまで決着を持ち込むしかない。一方の日体大荏原としては着々加点し、なるべく早い段階で小嶋を引っ張り出すことが最大の眼目。小嶋は怖い相手だが上位対戦における主戦武器は巻き込み一択で、組み立ては比較的単調。あらゆる状況に対処するような戦術の幅があるタイプではなく、リードを背負って戦うのであれば十分引き分けの計算が立つ。穏当に試合が進めば日体大荏原、修徳の勝利には場を荒らして荒らし抜く、アクシデントの重ね塗りが必要な状況だ。

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先鋒戦、日体大荏原の海堀陽弥が修徳・長尾光真から大車「技有」

先鋒戦は日体大荏原の海堀陽弥、修徳の長尾光真ともに左組みの相四つ。重量級の海堀に対して最軽量級の長尾は低く構えて対峙、肩車と担ぎ技の先手攻撃で手数勝負を挑む。34秒、海堀が両袖の形から左の大車を仕掛けると長尾は頭から落下。ヘッドディフェンスの有無を巡って映像の確認が行われるが、両袖の技のためルール上不可抗力との判断が為された模様、試合は続行となる。以後も長尾が良く凌いで双方「指導」ゼロのまま試合は終盤へ。引き分けが見え始めるが、2分23秒、海堀は引き手を得るとまず足を差し入れてから両袖の形を作り、再度の左大車。足が外れかかるも強引に回し切って「技有」を奪う。そのまま繋いだ崩袈裟固は逃してしまったが、残り時間はあと僅か。長尾が苦し紛れに仕掛けた肩車に偽装攻撃の「指導」が与えられた時点で残り時間は1秒、そのまま試合は終了となる。海堀の優勢勝ちで日体大荏原がまず1人差をリード。

第2試合、修徳はポイントゲッターの岡田尚樹が登場、この試合の鍵を握る選手である。組み手は海堀、岡田ともに左組みの相四つ。1試合を戦った海堀はさすがに消耗しており、この試合は大枠岡田の優位で進む。24秒に海堀に「取り組まない」判断で「指導」、さらに1分6秒には両者に「取り組まない」咎による「指導」が追加され、「指導2」を失った海堀は早くも後がなくなる。岡田としてはあと1つの反則を得て試合を終わらせてしまいたいところだが、重心の低い海堀を攻め切れずやや停滞。日体大荏原ベンチからは「相手は両者『指導』を狙ってるぞ」との警告が飛ぶ。1分41秒には海堀のテーピングが外れてしまい、治療のために試合が一時中断。これで海堀はやや回復、以後は岡田の猛攻を凌ぎ切ってこの試合は引き分け。海堀は1人抜いて相手のポイントゲッターと引き分け、十二分に先鋒の責めを果たして退場。

第3試合は日体大荏原の次鋒山城和也と修徳の中堅・中村和真ともに左組みの相四つ。開始17秒、相手の組み手を叩き切った中村に「指導」。以後、序盤は双方が左内股と担ぎ技を仕掛け合う積極的な攻防が展開される。1分44秒、山城に場外の「指導」。さらに2分7秒には2つ目の「指導」が追加される。2分27秒には巴投に引き込んだ中村の偽装攻撃の有無を巡って合議が行われるが、ここはスルー。そのまま3分間が終わり、「指導1」対「指導2」でこの試合も引き分けに終わった。

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平山才稀が田中佑弥から2つの「指導」を奪って勝利

第4試合は日体大荏原の中堅・平山才稀と修徳の副将・田中佑弥ともに左組みの相四つ。
上背、地力ともに勝る平山は釣り手で奥襟を持って田中を圧殺。1分11秒に消極的、1分57秒に偽装攻撃としっかり2つの「指導」を積み重ねる。残り16秒、田中の左背負投が抜けてしまったところで偽装攻撃による「指導3」付与を巡って合議が行われるが、すぐに立って向き直っていたゆえかこの場面はスルー。平山は残り時間をしっかり戦い切ってタイムアップを迎える。結果「指導2」の僅差で平山が優勢勝ち、日体大荏原はリードを2人差まで広げ、早くも敵方の大将小嶋洸成を引っ張りだすこととなる。

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第5試合、平山は小嶋洸成の巨体に怖じず「やぐら投げ」で攻めこむ

第5試合は日体大荏原の中堅平山才稀、修徳の大将小嶋洸成ともに左組みの相四つ。前週の個人戦では小嶋が延長戦での指導差で勝利しているカードだ。
大枠、双方が奥襟を持ち合って横変形で圧を掛け合う形で試合が進む。時折小嶋が一方的に組み勝つ形を作るが、その度に平山が敢えて強気の抱き勝負に挑むことでこれを打開。小嶋が左内股、平山が右の「やぐら投げ」でそれぞれ惜しい場面を作るが、双方ポイントには至らない。結局、1分21秒に平山に消極的の「指導」が与えられたのみでこの試合は引き分け。3人残しで勝利した日体大荏原が全国大会出場を決めた。

日体大荏原高〇二人残し△修徳高
(先)海堀陽弥〇優勢[技有・大車]△長尾光真(先)
(先)海堀陽弥×引分×岡田尚樹(次)
(次)山城和也×引分×中村和真(中)
(中)平山才稀〇優勢[僅差]△田中佑弥(副)
(中)平山才稀×引分×小嶋洸成(大)
(副)グリーンカラニ海斗
(大)藤原秀奨

日体大荏原の完勝。海堀、山城、平山の3人ともしっかり自分の力をスコアに反映させ、ほとんど瑕疵のない試合だった。一方の修徳、総体戦力からすれば不利は否めなかったが、得点なしの5試合ストレートはさすがに悔しい結果。総体戦力で後塵を拝したのはもちろんだが、戦力上、相手を精神的に追い詰めるような配列を組み得なかったことでスコア差が開いたという印象だ。日体大荏原を相手に効あるオーダーを組むには小嶋、岡田のほかにどうしてももう1枚核になる手札が必要だった。伝統的に配列の巧みな修徳だが、小嶋を生かすだけの駒数が揃い切らなかった。

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第1シードの国士舘は順当に決勝進出

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混戦を勝ち抜いて決勝まで駒を進めた東海大高輪台高

【決勝】

支部予選を勝ち抜いた51チームが参加した巨大トーナメント、熱戦激戦打ち続いた長い1日を締める一番。既に全国大会出場を決めた2校による最終戦である。

開示されたオーダー順は下記。

国士舘高 - 東海大高輪台高
(先)鈴木郷生 - 的場光太朗(先)
(次)道下新大 - 松本征士(次)
(中)長谷川碧 - 石間勇斗(中)
(副)藤永龍太郎 - 孫俊峰(副)
(大)斉藤立 - 石村健真(大)

国士舘は前戦で失点した岡田陸を下げ、5番手争いもう1人の主役である鈴木郷生を起用。この選手を先鋒に送り込み、これも前戦失点した道下新大を次鋒に前出しして捲土重来の機会を与えた。
一方の東海大高輪台は準決勝でダイレクト反則負けを喫した柴野明紀が出場出来ず、序盤戦で露払い役を務めた松本征士を再び起用。副将に孫俊峰、大将に石村健真と後衛を厚く、先鋒には続く戦力である的場光太朗を送り込んだ。台所事情からまことに論理的、これしかないというオーソドックス陣形。

この試合は戦力差、そしてトーナメント配置の偏りが如実にスコアに反映されることとなる。

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先鋒戦、鈴木郷生が的場光太朗から支釣込足「技有」。

先鋒戦は鈴木郷生と的場光太朗ともに右組みの相四つ。鈴木が間合いを詰めての大外刈、先んじて引き手を得て釣り手を入れながらの大内刈と積極的に攻め、1分37秒的場に「指導」。勢いを得た鈴木直後組み際にほぼノーステップの右大外刈に飛び込むが的場怖じずに得意の大外返を試みてあわやポイント、両者崩れて「待て」。しかし危機に遭った鈴木は以後も下がることなく、続く組み際にも釣り手をバチリと奥襟に入れながら右大内刈。これは耐えられたがあくまで攻めの姿勢を崩さない。横変形での長い組み合いを経ての2分29秒、鈴木大きく踏み込むなりひらりと体を翻して支釣込足、的場崩れて「技有」。鈴木はそのまましっかり横四方固に抑え込んで「一本」。国士舘、ぶじ先制点獲得。

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出足払「一本」で逆転勝ち。

続く第2試合は畳に残った鈴木に、急遽出動の松本征士がマッチアップ。松本の不利否めずと観測されたが、1分0秒の組み際に松本が動き良く右一本背負投。クルリと体を捨てた深い回転に鈴木抗えず畳に背を着き「技有」。会場大いに沸く。
今冬幾度も周囲の予想の上を行く働きを見せてきた東海大高輪台チームの面目躍如というところだが、全国大会本戦のレギュラー入りが掛かった鈴木もここは譲らない。右大外刈に右足車と技を積みながら刃の入れどころをしっかり見極め、1分36秒に場外際で右大外刈。突っ立った松本が一歩下がって場外に逃れ出ると、鈴木はここで攻めを切らずに刈り足を着いて左出足払に連絡。重心を根こそぎ持っていかれた松本抗いようなく宙を舞い「一本」。鈴木は2人抜き達成。

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第3試合、鈴木が石間勇斗から出足払「技有」

第3試合は畳に残った鈴木が右、東海大高輪台の中堅石間勇斗が左組みのケンカ四つ。石間は得意の両足で相手を支える巴投で攻撃、しかし鈴木出足払で迎撃して動ぜず。まず遠間から右内股で捕まえ、さらに再度今度は深く右内股に飛び込む二段攻撃で獲りに掛かる。2分38秒石間に「取り組まない」咎による「指導」が与えられたのみで試合は終盤へ。このまま引き分け濃厚かと思われたが、鈴木は直後の組み際に突如スピードアップ。飛びつきながら出足払を呉れて石間を滑り落とし「技有」獲得。このまま試合が終わり、鈴木はこれで3人抜き達成。

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第4試合、鈴木が孫俊峰から大外刈「一本」。これで鈴木は4人抜き達成。

第4試合は畳に残った鈴木、東海大高輪台の副将孫俊峰ともに右組みの相四つ。上背のある孫が奥襟を叩くが、鈴木怖じずに大内刈で迎撃。鈴木が組み際に鋭い右大外刈、孫は待ち構えて返しに掛かるが鈴木の突進は止まらず、逆に孫が腹ばいに伏せて「待て」。これでやや気圧されたか孫は続く攻防で内股巻込からあっさり潰れ、主導権は鈴木が獲った印象。

続く展開で鈴木は組み際に大外刈、孫に仁王立ちで耐えられるとそのまま歩を進めて抱きつきの谷落で投げに掛かり、攻撃意欲まったく止まず。1分14秒には再び組み際に大外刈に飛び込む。引き手で襟、釣り手で奥襟をガッチリ捉えると、一瞬耐えた孫を棒の形で真裏に刈り倒し「一本」。鈴木これで4人抜き達成。東海大高輪台は早くも大将の石村健真が出動することとなる。

第5試合は鈴木、石村ともに右組みの相四つ。鈴木組み際に右大外刈、さらに奥襟を叩くと上背に勝る石村のほうが腰を突く形で耐えることとなり、鈴木は攻勢。しかし石村は引き手を襟に直して徐々に主導権を回復。右大内刈で攻め、さらに呼吸を整えるなり思い切って右大外刈に乗り込む。場内沸き、鈴木危うく投げられ掛かるが重心を外してなんとかブレイク、「待て」。続く展開は石村の圧に鈴木が潰れて、2分12秒鈴木に消極的との咎で「指導」が宣告される。

完全に試合を掌握したこのタイミングで、石村が組み際に右大外刈。まず引き手を得、次いで釣り手を片襟に入れながら仕掛けるこの得意技で鈴木を刈り倒し「一本」。東海大高輪台ようやく一矢を報いた。

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第6試合、道下新大が石村健真から内股「一本」。これで国士館の勝利が決まった。

第6試合は畳に残った石村が右、国士舘の次鋒道下新大が左組みのケンカ四つ。石村まず引き手で襟を掴む積極的な組み手、釣り手で上から奥襟を叩いて攻める気満々の様子。しかし道下は巧者、持ちあった引き手を上下動させながら釣り手側の肩を操作して石村の圧を剥がし、間合いを整える。動きの中で引き手をいったん下げるとこれに抗した石村の力を利用し、作用足を突っ込むなり左内股。石村は突っ込むように前方回転、道下の作用足の挙上が遅れて来襲したと感じられるほど完璧に崩される。道下が高く脚を揚げて残身を取る、その遥か向こうで石村が背中から激しく畳に落ち、「一本」。試合時間は僅か28秒、道下の鮮やかな一本勝ちで全試合が終了した。

国士舘高〇四人残し△東海大高輪台高
(先)鈴木郷生〇合技[支釣込足・横四方固](2:50)△的場光太朗(先)
(先)鈴木郷生〇大外刈(1:35)△松本征士(次)
(先)鈴木郷生〇優勢[技有・出足払]△石間勇斗(中)
(先)鈴木郷生〇大外刈(1:14)△孫俊峰(副)
(先)鈴木郷生△大外刈(2:26)〇石村健真(大)
(次)道下新大〇内股(0:28)△石村健真(大)
(中)長谷川碧
(副)藤永龍太郎
(大)斉藤立

この試合に関して言えば、前述の通り戦力差とトーナメントの偏りがそのまままっすぐ出た試合。石村が一矢を報いたことも含めて、大枠順当な結果であったと評すにとどめたい。

結果、東京都からは国士舘と東海大高輪台、日体大荏原の3校が全国大会に進出。このうちトーナメント配置から国士舘と日体大荏原の結果は順当。大雑把に言って、大枠力を発揮すれば届くべき位置であり、しっかり為すべき仕事を為したという順当な戦果である。この3校のうちこの日唯一、「どちらに転ぶかわからない」大勝負を勝ち抜いたのが東海大高輪台。結果は決勝で大敗しての2位だが、この日の「勝者」は東海大高輪台と規定すべきだろう。何度も書くが、1つのチームがこれまで為したことのないことを達成するのは本当に大変なこと。心からその勝利を称えたい。

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国士舘はぶじ第1代表権を獲得したが、内容は決して完璧ではなかった

以下、総評として全国大会に進む3チームについて簡単に述べたい。

国士舘はしっかり優勝したものの、全国優勝を狙うこのチームの課題は結果ではなく内容にこそあったはず。無敵の大駒・斉藤立を擁する今代における「内容」とは一にも二にも周辺戦力の出来に尽きる。唯一の勝負どころの日体大荏原戦で、「斉藤出場の有無」というこの日最大の焦点を落とし、5枚目の岡田だけではなく主戦の道下が失点して2敗。これはあまり良い卦とは言い難い。
斉藤に藤永、道下、長谷川と前代のレギュラー4枚を擁し発足時無敵と評された今代の国士舘であるが、松尾杯で5番手確実と目された林将太郎を失い、続く若潮杯では東海大相模相手に代表戦まで粘られ、この日は本割レギュレーションの「抜き勝負」で日体大荏原に接戦。むしろライバルたちとの差は日に日に詰まっているという感を受ける。
若潮杯や東京都個人戦で見せた通り長谷川は課題であるメンタルの弱さを払拭し切れず、藤永は夏に克服したはずの対相四つ戦に難あり、線が細くなった道下はこの日意外な一敗を喫しており、この3人は夏までの成長曲線を順調に維持しているとは評し難い。「斉藤以外にも3枚が充実」という評であった国士舘であるが、招待試合シリーズからここまでの戦いを通じて、他校に残した印象は「斉藤以外とは十分やれる」に変わってきているのではないだろうか。全国制覇への道のり、簡単ではない。

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みごと第2代表で全国大会進出を決めた東海大高輪台高

東海大高輪台は好チーム。石村や孫など、大型が伸びやかな柔道を繰り広げる印象が強かっが同校であるが、攻撃、守備とちょっとしたところの技術的なディティールが非常に効いている。決して通り一遍の技術だけで戦うチームではない。地力の錬磨はもちろんだが、見た目にオーソドックスな技術をどう生かすか、その手立てを具体的に詰めていることが出世の要因ではないだろうか。このあたり、軽量級出身の福岡政章監督の薫陶が随所に感じられる。就任3年目、自身がスカウトした学年の一巡目での全国大会出場は見事というしかない。

ただし、この日は風が吹いていた。組み合わせはもちろん、多くの局面で、とにかく運に恵まれた勝利ということも一応言っておきたい。福岡監督はかなり厳しく叱責したと聞いているが、たとえば準決勝における柴野のダイレクト反則負けは全国大会の場に出るチームにはありえない事態。常であればこのようなミスをするチームの全国大会進出は絶対に起こり得ない。控え選手の声援もかなり激しいものがあり、これも例えば全国大会の常連チームにはありえないことだ。ダイレクト反則負けに至る過程で、この激しい声援が審判の心証を害していた可能性も十分あるのではないか。福岡監督の落ち着いた指導と指揮にまだ選手の側が精神的に追いついていないという印象を持った。他校の範となり得る、全国大会出場校にふさわしいチーム文化の構築にも一層心を砕いてもらいたい。

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日体大荏原は国士舘から2点を挙げてエース斉藤を引っ張り出した。

日体大荏原、今代チームは当初戦力に凹凸が感じられたが、見るたびに骨が太くなっている。当初の見込みより早いスピードで選手が成長している印象だ。前代終盤から抱きつき後ろ技の割合が増えていた平山も相対的に力が増したゆえか技種のバランスが取れて来ており、これは具体的な得点力に繋がるはず。無差別で代表権を得たグリーンもポイントゲッターとして一皮剥けつつある印象で上がり目と見て良いだろう。周辺戦力では、今冬は1年生海堀の成長が印象的だった。
本戦ではシード、場合によっては「四つ角」ピックアップがあり得る戦力である。

この日をもって、第41回全国高等学校柔道選手権は全ての地区で予選が終了、全国47都道府県の代表が出揃った。組み合わせ抽選は2月16日。まずはこれを、楽しみに待ちたい。

入賞者および、代表権を獲得した3校各監督のコメントは下記。

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優勝の国士舘高

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準優勝の東海大高輪台高

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第3代表の日体大荏原高

【入賞者】
(エントリー51校)
優 勝:国士舘高
準優勝:東海大高輪台高
第三位:日体大荏原高、修徳高
第五位:足立学園高、明大中野高、工学院大附高、安田学園高

国士舘高・岩渕公一監督のコメント
「失点を出しているのがダメ。負けなしでいかなれば。これがまだ、(本番まで時間のある)今であって良かったということですね。しっかり修正しなければいけません。ミスした試合は単純に組み負けていて、技術的にはもちろん体力的にもまだまだ。立っても寝ても勝負出来ることが絶対条件ですが、まだ寝技にも厳しさがない。力が勝っていればしっかり取れますが、同等くらいの相手をいかに取れるかが大事で、それにはもっと気持ちと練習量が必要。まだまだやるべきことがたくさんあるのがわかりました。2月、3月と頑張ります。」

東海大高輪台高・福岡政章監督のコメント
「実力的には『トップ3』より落ちることはよくわかっていました。組み合わせも味方してくれたし、なにより選手たちの『全国大会に出るんだ』という気力で届いた、そういう1日だったと思います。(―就任3年目、早くもはっきり成果が出ましたね?)2016年の4月に就任したので、初めてスカウトした代の子たちが今年の2年生ということになります。中学時代に全国大会に出た選手はいませんが、とにかく技術をしっかり教えようとやってきました。少しづつその成果が出てきて、生徒もやる気が出てきた、それを繰り返してきたという感じですね。(―指導で大事にしていることは?)『やり過ぎない』ことです。技術を教えて、生徒がやる気になるのを待ちます。(―全国大会に向けて一言お願いします)生徒が全国出場という目標にチャレンジしてくれて、ひとつひとつ階段を上って、それを成し遂げた。次もまたチャレンジャーの気持ちになってくれるのではと思いますので、やるべきことをひとつひとつしっかりやって本番に臨みます。」

日体大荏原高・小久保純史監督のコメント
「(―選手の成長が感じられますね?)12月の松尾杯以降、上がってきていると思います。年越し稽古で、藤原崇太郎をはじめ大学生のOBが来てがっちり選手の相手をしてくれて、そういう経験を経て力も、気持ちも上がってきたと思います。やはり今年は国士舘高校が強い。本大会でも対戦すると考えていますが、さっき言った通り選手たちが上向きなので、今日は1人抜いた状態で斉藤立選手と戦うところまでイメージしていました。斉藤選手の存在は本当に大きいですが、まず他の選手とどこまで勝負出来るかが大事。その点では手ごたえを得られた大会であったと思います。以前高校選手権で優勝したときにも、国士舘高校には飯田健太郎選手という絶対的なエースがいて、巨大戦力と言われていました。今年も少し似た状況ではと思うのですが、何が起こるのかわからないのが全国大会。前回のような形でチャンスを掴めるよう、しっかり指導していきます。」

※ eJudoメルマガ版1月30日掲載記事より転載・編集しています。

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