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国士舘らベスト4の顔ぶれは順当、健闘際だった佐賀商、田村、東海大高輪台・第32回國學院大學松尾三郎杯争奪全国選抜高等学校柔道大会マッチレポート①1回戦~準々決勝

(2019年1月2日)

※ eJudoメルマガ版12月24日掲載記事より転載・編集しています。
国士舘らベスト4の顔ぶれは順当、健闘際立った佐賀商、田村、東海大高輪台
第32回國學院大學松尾三郎杯争奪全国選抜高等学校柔道大会マッチレポート①1回戦~準々決勝
文責:古田英毅/eJudo編集部
撮影:eJudo編集部

→詳細レポート②準決勝~決勝
→当日速報記事

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大会史上最多の68校が集った

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選手宣誓は國學院栃木高・松田新選手

冬の高校招待試合シリーズの花形「松尾杯」こと、第32回國學院大學松尾三郎杯争奪全国選抜高等学校柔道大会は12月23日、國學院大學たまプラーザキャンパス(横浜市)で大会史上最多の68校が集って開催された。

新シーズンの高校柔道界は、全日本ジュニア100kg超級王者斉藤立をはじめ前代全国大会2タイトルを得たメンバーからレギュラーが4名残る国士舘高(東京)の独走が予想されている。これを戦力充実の大牟田高(福岡)、エース髙橋翼を押し立ててやる気満々の作陽高(岡山)らが追うという構図が見えつつある状況だが、今大会には追撃戦力として有望視されるこの作陽に加え崇徳高(広島)、黒潮旗を獲って意気揚がる初参加の東海大相模高(神奈川)、日体大荏原高(東京)、木更津総合高(千葉)、前回優勝の桐蔭学園高(神奈川)ら強豪校がずらり参加。

東海大相模の参戦は、大げさに言えば高校柔道史における大きな転換点。かつては北海道の松前旗で東海大相模を見て、この松尾杯で国士館、そして水田杯で桐蔭学園をそれぞれチェック、そしてまとめの若潮杯で東海大相模と国士舘が唯一あいまみえる、という冬季シーズンの大きな流れがあったわけだが、このシナリオが解体されて前述3校が全て出揃う大会がついに出現したということになる。かつて長く続いた「国士舘・相模」の二強時代にほぼ固定されていた流れから考えれば隔世の感あり。いずれ、新シーズンの有力校ずらり居並ぶという「時宜」からも、東海大相模の参加という「歴史」の視点からも、ますます存在感を強めたこの松尾杯が冬の最重要大会となったと捉えておくべきだろう。参加68校いずれも各県を代表する強豪揃いで平均値極めて高し、今大会と大牟田が参加するもう1つの巨大大会・水田杯(26日)を見れば、新シーズン大枠の戦力構図はほぼ見えてくるのではないだろうか。

トーナメントは第1シードが前年度優勝の桐蔭学園(Aブロック)、第2シードが国士舘(Cブロック)、第3シードが崇徳(Dブロック)で、第4シードに作陽(Bブロック)が配された。まずはトーナメントを4つに割って、簡単に各ブロックの勝ち上がりを追っていくところから稿を起こしたい。

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3回戦、桐蔭学園の中堅・中野智博が成田高の赤間翔太から内股透でまず「技有」。

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3回戦、成田高は大将の髙橋健が町方昂輝から裏投「一本」

【Aブロック】
シード校:桐蔭学園高(神奈川)、日体大荏原高(東京)
準々決勝カード:佐賀商高(佐賀)-日体大荏原高(東京)

シード校桐蔭学園は2回戦からの登場。スターティングは先鋒から佐々木光太郎、安藤健志、中野智博、須永陸也、町方昂暉、畳に迎えるは工学院大高(東京)。戦力的にはもちろん、なにより朱雀杯と黒潮旗で入賞を逃した後でどう気持ちを立て直しているかが見どころだったが、桐蔭学園はこの試合もいまひとつ元気がない。先鋒佐々木は佐藤拓未に開始いきなりの支釣込足を食って「技有」失陥、これは取り消されたが以後思い切りを欠いて「指導」1つを失ったところで引き分け。次鋒安藤は組み際の袖釣込腰「一本」で勝利したものの、黒潮旗を休んだ中堅の1年生エース中野は飯野翔大を相手に動き冴えずなかなか技が決まらない。大外刈を思い切り決めたのは終了ブザーの後でこれは認められず、勝利は得たものの内容は「指導2」による僅差優勢勝ちに留まる。副将戦と大将戦も引き分けて結局この試合は2-0の辛勝であった。成田高(千葉)を畳に迎えた3回戦は安藤の一本背負投「一本」、中野の内股透「技有」に内股「一本」、山本成寿の内股透「一本」と中盤で3連勝したが大将町方が高橋健に裏投「一本」で敗れ画竜点睛を欠く。スコア3-1で勝ち抜け決定も、なかなか波に乗ることができない。

続く4回戦で桐蔭学園に挑むのはノーシード、このブロック唯一組まれた1回戦からの登場となった佐賀商高(佐賀)。初戦は國學院栃木高(栃木)、以降2回戦で中京大中京高(岐阜)、3回戦は今シリーズも練度の高さを見せつけている東海大甲府高(山梨)と強豪と連戦、全国大会入賞レベルの力が求められる厳しい組み合わせであったが、國學院栃木を3-1、中京大中京を2-1、そして東海大甲府を2-1と下し堂々の16強入り。

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4回戦、佐賀商は次鋒小畑大樹が安藤健志から片手絞「一本」で勝利して先制

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桐蔭学園は次鋒中野智博の内股「一本」でタイスコアに持ち込む

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代表戦、佐賀商はエースの小畑が桐蔭学園の中野を大腰「一本」に斬り落とし、ベスト8入り決定。

[Aブロック4回戦]
佐賀商高 ①代-1 桐蔭学園高
(先)寺戸将太×引分×佐々木光太郎
(次)小畑大樹〇片手絞(0:34)△安藤健志
(中)岩瀬勝斗△内股(1:45)〇中野智博
(副)田中龍馬×引分×山本成寿
(大)岩本敬太×引分×町方昂暉
(代)小畑大樹〇大腰(2:07)△中野智博

先鋒戦は引き分け、次鋒戦は小畑大樹が安藤健志を裏投で放るなり素早く「ボーアンドアローチョーク」に捉え、主審は技の展開を見極めた上で「一本」を宣告。安藤は「参った」をしていないとアピールするが審判は受け入れず、先制点は佐賀商の手に落ちる。ビハインドの桐蔭学園は続く中野智博がやや色をなして積極的に取りに掛かり、1分45秒内股を決めて「一本」確保、これでスコアを1-1に戻す。副将戦と大将戦は得点の生まれる気配ほとんどないまま引き分けに終わって、勝敗の行方は代表者1名による決定戦に縺れ込むこととなる。

代表戦は桐蔭学園が中野、佐賀商は小畑大樹。小畑が内股で攻めると、中野は上半身を相手にもたれ掛けさせて脚を下げる得意の受けで攻防一致の内股透を狙う。大枠で攻勢の小畑は2分7秒に体をいったん寄せると、思い切りよく打点の高い右大腰。体ごと持ち上げられた中野は得意の内股透に必要な体の捌きが取れず、小幡が高く作用足を揚げてリフトをフォローしながら腰を切るとまさしく吹っ飛び「一本」。佐賀商、ベスト8入り決定。

昨年度の全国中学校大会90kg超級の覇者・中野は見た目に似合わぬ懐の深い受けと攻防一致の返し矢、そして癖のある技で大物も食える面白い選手だが、地力負けした際には思わぬ脆さがある。王道の攻めで打撃を呉れ続けた小畑の前に受けの理屈ごと根こそぎ持っていかれたこの試合は、その典型とも呼ぶべきものだった。

桐蔭学園は前代から大きく戦力を落としており、16強敗退という結果自体はその力に比して決して意外なものではない。しかしたとえばそれでもプライド高く試合に臨んでいた朱雀杯時に比べるといったいに士気が低く、選手個々から自身の力以上のものを出そうとする覇気が減じていたことはなんとも気に掛かった。前代からレギュラーで試合に出ていた安藤と中野はともかくとして、周辺戦力に試合展開の膠着を打破する侠気がない。ポイントゲッター以外の選手がリスク覚悟の行動を起こせるかどうかにはチーム状況が大きく絡むので個々に責任を負わせることは難しいが、このままでは今季どころか来期の展望も非常に厳しいのではないか。戦力落ちる中でも名を残さんと奮闘した朱雀杯、そして連敗で自信を失った現在。「桐蔭は強いはず」との周囲の期待というプレッシャーがなくなった、いわば一周回って今代の力の自己規定が済んだこの時点が本当のスタートである。歴代チームがまさに力以上の力を出して東海大相模に噛みついてきた神奈川県予選でチーム一丸となって桐蔭らしい試合が出来るかどうか。ここに名門・桐蔭学園の行く末が掛かる。健闘に期待したい。

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2回戦、日体大荏原の先鋒山城和也が前橋商・髙橋昇大から内股「一本」。

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2回戦、前橋商は君田浩気がグリーンカラニ海斗から裏投「一本」、意地を見せる。

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4回戦、日体大荏原の中堅平山才稀が四日市中央工高・弓矢健輔から裏投「一本」

下側の山からはシード校日体大荏原が順当にベスト8入り。

スターティングオーダーは山城和也、藤原秀奨、海堀陽弥、グリーンカラニ海斗、平山才稀。対する前橋商高(群馬)が黒潮旗で大健闘(ベスト8)したばかりということもあってか、いきなりのフルメンバーである。この試合は山城が高橋昇大から1分3秒内股「一本」をマークして幸先良く先制。次鋒藤原は敵方の主戦石原樹を攻めあぐね「指導2」の僅差優勢勝ちに留まったが、中堅海堀が大川直斗から小外刈「技有」優勢で勝利しこの時点で勝ち抜け決定。副将グリーンは相手を崩さぬままの大外刈を君田浩気の裏投に捉えられ「一本」を失ったが、大将戦は平山が諸田大河から小外刈「技有」、小外掛「一本」と連取してフィニッシュ。バタバタ感はあったものの最終スコアは大差の4-1、ぶじ3回戦進出決定。

3回戦は前戦で東海大翔洋高(静岡)に勝利した新庄東高(山形)と対戦。前戦から海堀を下げて木下颯王を入れたこの試合は、先鋒木下が裏固「一本」、次鋒藤原が小外刈「技有」に内股「一本」、中堅島本真司郎が僅差優勢、グリーンが小外刈と上四方固の合技「一本」、平山が払腰と浮落の合技「一本」と快調。最終スコア5-0で危なげなく突破を決める。4回戦は四日市中央工高(三重)とマッチアップ、3回戦と同じオーダーで順番のみを入れ替え、木下が本郷雄也から37秒いきなりの巴投「一本」、藤原が小椋隆太郎から1分12秒崩上四方固「一本」、勝負どころの中堅戦は平山が弓矢健輔から58秒裏投「一本」、副将戦はグリーンが伊藤栄都から内股「一本」と電車道の4連勝。大将戦は山城が山口隆乃に序盤背負投「技有」を失いそのまま優勢負け、百点満点の試合とはいかなかったが、それでも強豪四中工を4-1の大差で下してしっかりベスト8入りを決めた。

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準々決勝、日体大荏原の次鋒藤原秀奨が小畑大樹から肩固「技有」。

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大将戦、平山が岩瀬勝斗から内股「一本」。最終スコアは4-1まで開いた。

[Aブロック準々決勝]
日体大荏原高 4-1 佐賀商高
(先)島本真司郎△一本背負投〇田中龍馬
(次)藤原秀奨〇優勢[技有・肩固]△小畑大樹
(中)海堀陽弥〇大内刈△寺戸将太
(副)グリーンカラニ海斗〇小外刈△岩本敬太
(大)平山才稀〇内股△岩瀬勝斗

先鋒戦、田中龍馬が終了間際に一本背負投を決めて一本勝ち。佐賀商としてはここで取るしかないというポジションでしっかり1点獲得、強豪相手に最高の出だし。しかし次鋒戦では藤原が佐賀商の主戦・小畑を粘り強く攻め、終了間際に肩固「技有」を得ての優勢勝ちで反撃の狼煙。小畑は「やぐら投げ」に背負投と豪快な技を次々披露しながら獲り切れず、最後に力尽きた形。総合戦力に劣る佐賀商としては2点先取しか勝利のシナリオしかなかったはずで、スコア1-1、佐賀商が内容差でリードもここで試合の流れは日体大荏原へ移る。迎えた中堅戦は海堀が2分過ぎに隅落「技有」、終了間際にケンケンで釣り手側に回しこむ大内刈「一本」と立て続けに得てここで日体大荏原がスコアの面でも勝ち越す。対強豪戦のセオリー通り前衛に抜き役をまとめて突っ込んだ佐賀商の後列に日体大荏原の主戦の攻撃を耐え得る力はなく、以降はグリーンが岩本敬太から小外刈「一本」、平山が岩瀬勝斗から大外刈で間合いを詰めておいての内股「一本」で試合終了。日体大荏原が最終スコア4-1の大差で準決勝進出を決めた。

佐賀商は大健闘。エースの小畑は初戦で國學院栃木の松田新太に一本負けしたが、以降はいずれも「一本」で3連勝。桐蔭学園相手に代表戦で演じた一本勝ちの際には、会場に居並ぶ大学関係者たちが「まだまだ伸びるのでは」と色めき立っていた。高校選手権本番でもこのチームの活躍に期待である。



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2回戦、日体大荏原の大将平山才稀が前橋商・諸田大河から払腰で2つ目の「技有」

[Aブロック1回戦]
佐賀商高(佐賀) 3-1 國學院大栃木高(栃木)

[Aブロック2回戦]
桐蔭学園高(神奈川) 2-0 工学院大高(東京)
成田高(千葉) 3-0 佐久長聖高(長野)
東海大甲府高(山梨) 4-0 和歌山北高(和歌山)
佐賀商高(佐賀) 2-0 中京大中京高(岐阜)
日体大荏原高(東京) 4-1 前橋商高(群馬)
新庄東高(山形) 3-1 東海大翔洋高(静岡)
四日市中央工高(三重) 4-0 水戸啓明高(茨城)
習志野高(千葉) 3-0 相洋高(神奈川)

[Aブロック3回戦]
桐蔭学園高 3-1 成田高
佐賀商高 2-1 東海大甲府高
日体大荏原高 5-0 新庄東高
四日市中央工高 3-1 習志野高

[Aブロック4回戦]
佐賀商高 ①代-1 桐蔭学園高
日体大荏原高 4-1 四日市中央工高

[Aブロック準々決勝]
日体大荏原高 4-1 佐賀商高

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1回戦、初芝橋本の副将巽貴大が足立学園・ルンルアング大介から一本背負投「技有」。

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作陽の入場。畳を踏み鳴らし雄たけびを上げ、存在感は間違いなくこの日ナンバーワン。

【Bブロック】
シード校:作陽高(岡山)、東海大浦安高(千葉)
準々決勝カード:作陽高(岡山) - 田村高(福島)

上側の山では、1回戦で足立学園高(東京)が初芝橋本高(和歌山)に苦杯。次鋒佐々木弥希哉が大内刈と横四方固の合技で薮井雷士を破ったものの、副将戦ではルンルアング大介が巽貴大に一本背負投「技有」を失って敗退。1-1で迎えた大将戦で鈴鹿功織が濱中大地に隅落「技有」を失い、結果スコア2-1で初芝橋本の勝利が決まった。前代インターハイ東京代表を務めた足立学園は大会オープニングゲームの第1試合で早くも敗退となり、その初芝橋本も2回戦では羽黒高(山形)に3-1で敗れた。

そしてこの上側の山の注目はなんと言っても作陽高(岡山)。前々日の夜行バスに「乗る寸前まで練習をしていた」(川野一道監督)ところから朝東京に着き、強豪校への出稽古を経てこの朝の松尾杯参戦。会場に姿を現した時点で疲れのピークとのこと、立ち振る舞いにも疲労感がにじむが、試合が始まるとなれば全員で足を踏み鳴らし、雄たけびをあげて力感溢れる入場。どこにいても「あそこで作陽の試合が始まる」とわかるちょっと異様な雰囲気をまとって、存在感はこの日ナンバーワンであった。

その作陽、2回戦は日本学園高(東京)と対戦。先鋒丸鳩紹雲が河南政伸から体落「一本」、次鋒半田壮は江波佑真から隅落と大外返の合技「一本」、中堅榎本開斗は内田光星から大外刈「一本」、副将髙橋翼が松館翔夢から小外刈「一本」、大将嵐大地が平岡賢之から小外掛「一本」と電車道の5連勝で圧勝スタート。

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3回戦、つくば秀英を相手に2点ビハインドの作陽は副将髙橋翼の小外掛「一本」で反撃開始。

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大将戦、嵐大地が小林朝海から大外刈「技有」。

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嵐は払巻込「技有」も追加、ギリギリで試合をタイスコアに持ち込む。

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代表戦は髙橋翼が村岡英哉から横四方固「一本」、作陽の勝ち抜け決定。

しかし疲労は隠せず、続く3回戦ではつくば秀英高(茨城)に大苦戦。

[Bブロック3回戦]
作陽高 ②代-2 つくば秀英高
(先)丸鳩紹雲×引分×小林熙海
(次)半田壮△払巻込○村岡英哉
(中)榎本開斗△反則[指導3]○旭征哉
(副)髙橋翼○小外掛△窪田魅空斗
(大)嵐大地○合技[大外刈・払巻込]△小林朝海
(代)髙橋翼○横四方固△村岡英哉

先鋒戦は身長188センチ、体重156キロの丸鳩紹雲に対し、81kg級のつくば秀英・小林熙海が次々背負投に入り込んで一方的な展開。しかし丸鳩は幾度も懐への侵入を許しながらもパワーと懐の深さを利して失点は回避。サイズの圧力と強引な巻き込み技で都度展開を引き戻し続け、この試合は引き分けに終わる。丸鳩はまことに作陽らしい選手、その良さと弱点の両方が非常にわかりやすく出た試合だった。

次鋒戦はつくば秀英のポイントゲッター村岡英哉が地力で圧倒、半田壮に払巻込「一本」で勝利して先制点を確保。続く中堅戦も旭征哉による一方的な展開、榎本開斗は押し込まれ、窮して掛け潰れと良いところないまま「指導」3つを立て続けに失ってこの試合は旭の完勝。作陽、得点ポジションが始まるのはここからとはいえなんと0-2の大量ビハインドである。

副将戦は作陽のエース髙橋翼が出動。得意のケンカ四つということもあり、窪田魅空斗を一方的に抱き込み続けて圧倒。まず強引な右大外刈で転がして「技有」確保、直後再び背中を抱えての右小外掛で豪快に捩じり倒し「一本」。

一本勝ち以外は許されない状況で登場した作陽の大将は実力二番手の嵐大地。明らかに疲労しておりインターハイに比べると動きの冴えを欠いていたが、それでもどうやら地力に大きく勝る様子。クロスグリップからの右大外刈でまず「技有」を確保、この後やや停滞したが、最後は右払巻込にで回し切り合技「一本」。作陽は後衛の2連勝でなんとか代表戦まで試合を持ち込む。

代表戦のエース対決は作陽・髙橋が右、つくば秀英・村岡が左組みのケンカ四つ。高橋は伏せた相手を横に転がして寝技を展開。足が抜けた瞬間に一度伏せられてしまうも相手の片腕を取っており、そのまま手前に引き込んで抑え込み横四方固「一本」。一見柔道が粗い高橋だが、実に着実な手順。作陽が寝技の練度の高さを見せつけた一番だった。

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4回戦、作陽の中堅丸鳩紹雲が羽黒高・梅原叶大から払腰「一本」。

ぶじ4回戦に進んだ作陽は、ここまで初芝橋本高を3-1、東海大札幌高(北海道)を3-2で下している羽黒高(山形)とマッチアップ。この試合から先鋒に半田壮、次鋒に榎本開斗を入れて陣形を変え、この2人がぶじ引き分けた時点でほぼ勝負あった感あり。中堅丸鳩紹雲の大外巻込と崩袈裟固の合技「一本」、副将髙橋翼が決めた開始早々の払腰「一本」をテコに2-0で快勝。ベスト8進出を果たす。

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2回戦、田村の次鋒田邉夢叶が武相高・阪舜太郎を抑え込む

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3回戦、田村の大将鈴木直登が東海大浦安高・藤野雄大から払腰「一本」

下側の山ではノーシードスタートの東北の雄・田村高(福島)が快進撃。2回戦ではまず武相高(神奈川)を5-0で圧倒。内訳は先鋒田邉夢叶が合技「一本」、次鋒片山雄心が背負投「一本」、中堅橋本健太が内股「一本」、副将佐井川陽舜が横四方固「一本」、大将鈴木直登が崩上四方固「一本」。

続く3回戦ではシード校の朱雀杯王者・東海大浦安高(千葉)を打倒。次鋒佐井川が高橋輝大に大外巻込「技有」で勝利、副将戦は片山が岡本泰崇に大外刈「一本」で敗れて内容差でビハインドとなったが、迎えた大将戦で鈴木が藤野雄大から払腰「一本」をマークして勝ち越し。スコア2-1で勝利決定。

圧巻は前代インターハイ3位の白鴎大足利を打倒した4回戦。白鴎大足利はここまで安田学園高(東京)を1-1の内容差、長崎日大高(長崎)をこれも1-1と強豪を相手にポイントゲッターの澤口宗志と杉之内暁の得点で勝ち抜いて来たが、この試合は終始田村ペース。斬り込み役を任された先鋒・田邉夢叶が津端洸を鋭い内股透「一本」に屠り去って先制。次鋒戦で片山雄心が澤口宗志と引き分けると、中堅戦は橋本健太が敵方のエース杉之内暁を相手に釣込腰「技有」から縦四方固に抑え込んで合技の一本勝ち。これでほぼ勝負あり。副将戦は鈴木直登が矢野治凱を出足払「一本」に仕留め、大将戦は佐井川陽舜が岡崎竜丸を小外刈「一本」に沈めて最終スコアはなんと4-0。堂々のベスト8入り決定である。

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準々決勝、作陽の中堅丸鳩紹雲が田村・田邉夢叶から大外巻込「一本」。

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副将戦、高橋翼が佐井川陽舜を縦四方固に抑え込む。

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大将戦、田村は鈴木直登が嵐大地から小内刈「技有」を奪って追いすがる。

[Bブロック準々決勝]
作陽高 ②-2 田村高
(先)半田壮×引分×片山雄心
(次)榎本開斗△反則[指導3](1:40)〇橋本健太
(中)丸鳩紹雲〇大外巻込(0:28)△田邉夢叶
(副)高橋翼〇合技△佐井川陽舜
(大)嵐大地△優勢[技有・小内巻込]〇鈴木直登

先鋒戦は半田が「指導2」、片山が「指導1」までを失って引き分け。次鋒戦は田村・橋本健太が榎本開斗から「消極的」で1つ、場外で2つと2分経たぬ間に3つの「指導」を得て一方的に勝利する。ビハインドとなった作陽は中堅丸鳩紹雲が僅か28秒、大外巻込「一本」を得て同点に追いつき、副将のエース高橋翼が登場。隅落「技有」を得るとそのまま縦四方固に抑え込んで合技「一本」確保。この時点で作陽の本戦における負けはなくなる。

大将戦は一本勝ち必須の状況で登場した田村・鈴木直登が1分すぎに小内刈で「技有」獲得。一気に試合が煮詰まる。鈴木は前進、疲労困憊の嵐大地は残り31秒に偽装攻撃で「指導」、残り10秒には同じく偽装攻撃で「指導2」まで失うがなんとかタイムアップまで辿り着く。鈴木が勝利も内容は「技有」優勢にとどまり、最終スコア2-2の内容差で作陽がベスト4に進むこととなった。

敗れたが田村は健闘。地力も相当なものがあり、立ちから寝の移行など非常に良く鍛えられた好チーム。今後の展開次第では本戦のシード校入りもあり得る存在ではないだろうか。水田杯、そして1月に行われる東北ブロック大会での戦いぶりに期待。

[Bブロック1回戦]
初芝橋本高(和歌山) 2-1 足立学園高(東京)

[Bブロック2回戦]
作陽高(岡山) 5-0 日本学園高(東京)
つくば秀英高(茨城) 3-0 清風高(大阪)
東海大札幌高(北海道) 3-1 千葉商大高(千葉)
羽黒高(山形) 3-1 初芝橋本高(和歌山)
東海大浦安高(千葉) 4-0 大宮工高(埼玉)
田村高(福島) 5-0 武相高(神奈川)
白鴎大足利高(栃木) ①-1 安田学園高(東京)
長崎日大高(長崎) 1-0 近大福山高(広島)

[Bブロック3回戦]
作陽高 ②代-2 つくば秀英高
羽黒高 3-2 東海大札幌高
田村高 2-1 東海大浦安高
白鴎大足利高 ①-1 長崎日大高

[Bブロック4回戦]
作陽高 2-0 羽黒高
田村高 4-0 白鴎大足利高

[Bブロック準々決勝]
作陽高 ②-2 田村高

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2回戦、国士舘の中堅道下新大が市立船橋・御園涼平から小外刈「一本」。

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2回戦、国士舘の大将林将太郎が市立船橋・高橋拓海から大外刈「一本」

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3回戦、国士舘の先鋒長谷川碧が加藤学園・白石諒から内股「一本」。

【Cブロック】
シード校:国士館高(東京)、埼玉栄高(埼玉)
準々決勝カード:国士館高(東京) -埼玉栄高(埼玉)

上側の山では4回戦で国士舘と東海大相模という注目カードが組まれた。初出場の東海大相模にシード権がないために実現した組み合わせだが、黒潮旗を獲って意気揚がる東海大相模にとっては試練の配置。

国士舘は初戦(2回戦)で市立船橋高(千葉)とマッチアップ。先鋒鈴木郷生が石井隆太郎に「指導2」の僅差優勢、次鋒岡田陸が中野旭から内股「一本」、中堅道下新大が御園涼平から小外刈「一本」、副将長谷川碧が落合北斗から開始早々の内股「一本」、大将林将太郎が高橋拓海から大外刈「一本」で5-0フィニッシュ、危なげなく大会をスタート。21日に高体連フランス遠征から帰国したばかりの斉藤立は柔道衣を着ておらず、この日は出場しない模様。

3回戦は高校選手権とインターハイで県代表を務めた加藤学園高(静岡)と対峙。先鋒長谷川碧は白石諒を相手にまず作用足を差しこんでおいての左内股で攻めるが、作りが少々安易で掛け潰れが続く。このパターンから体力を失って精神的に閉じていく前シーズンの悪いスパイラルが顔を出すかと思われたが、残り44秒、再び作用足を突っ込んで踏み込むと体力の切れた白石が宙を舞って内股「一本」。次鋒戦は鈴木郷生が津村亮摩から1分20秒まず右大外刈で相手の退路を封じておいての豪快な大腰「一本」、中堅戦は道下新大が小田春樹から払巻込「技有」に大外返「一本」と連取してあっさりスコアを3-0まで伸ばす。

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副将戦で大アクシデント、国士舘はレギュラー確実の林将太郎が足首を脱臼骨折する大ケガでリタイア。

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3回戦、国士舘の大将藤永龍太郎が加藤学園のエース深井大雅を左内股「一本」に仕留める。

まことに順調であったが、ここで大きなアクシデントが国士舘を襲う。副将林将太郎が大内刈を仕掛けたところに体重105キロの加古裕慈の浮技がかち合い、刈り足が絡まったまま足首に体重が掛かった林は悶絶。その異様な痛がり方から重症であることは誰の目にも明らか。

担架で搬出された林は足首の脱臼骨折という重症。7月の金鷲旗では前半戦の抜き役をほぼ1人で勤め上げて今期のレギュラー確実と目された林だが、これでおそらく高校選手権本番は絶望である。藤永、道下らの主戦は柔道が意外にデリケートで強者に勝利する反面そこそこの相手にも手数が掛かるタイプ、また長谷川は体力面に不安があり連戦すると力を出すべき後半戦の働きが計算できなくなる。その点手数攻撃が利き、かつ相手を無理やり固定して投げる「担ぎながらの大外刈」が得意で力関係をスコアに反映させやすいタイプの林は、選手権序盤戦に是が非でも必要な存在であった。国士舘にとっては痛すぎる事態。

林の棄権負けを経て、大将戦は藤永龍太郎と、高校選手権無差別とインターハイ100kg超級で静岡県の代表を務めたエース深井大雅がマッチアップ。深井は藤永のお株を奪ってタイミングの良い送足払を入れるが藤永は立ったままこれを弾き返して1分13秒「技有」奪取。ここから繋いだ縦四方固こそ取り逃したが、2分19秒には左内股を決めて鮮やか「一本」。国士舘が4-1で4回戦進出を決めた。

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3回戦、東海大相模の先鋒近藤那生樹が盛岡大附・大阪颯希から払腰「一本」。

一方の東海大相模は2回戦で創学館高(山形)と対戦。先鋒近藤那生樹が1分45秒合技「一本」、次鋒佐藤涼火が内股「技有」に引き続き2分36秒内股「一本」、中堅藤島将太は内股「技有」に出足払で崩しておいての「腰絞め」で僅か40秒の一本勝ち、副将菅原光輝が内股と横四方固の合技「一本」、大将工藤海人が1分1秒体落と袈裟固の合技「一本」と盤石の5連勝。スコア5-0の完勝で大会を滑り出す。

3回戦は盛岡大附高(岩手)を相手に近藤の払腰「一本」、有馬の大外刈「一本」、藤島の「指導3」、菅原の大外刈「一本」、工藤の小内返「一本」とこれもあっという間の5連勝。2戦連続の全勝、全て一本勝ちの10連勝で国士館の待つ4回戦へと駒を進めることとなった。ここまでは会場全体を見ても、もっとも締まった勝ち上がり。

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大会のハイライトと目された4回戦、国士舘の先鋒長谷川碧が東海大相模の藤島将太から出足払「一本」。試合開始から僅か17秒の早業だった。

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次鋒戦、東海大相模は有馬雄生が道下新大から小内巻込「技有」を奪って反撃の狼煙。

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しかし道下は小外刈「一本」で逆転勝ち、スコアはこの時点で2-0となる。

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中堅戦、国士舘の鈴木郷生が菅原光輝から大外刈「一本」。スコアは3-0となり早くも勝敗が決した。

[Cブロック4回戦]
国士舘高 3-0 東海大相模高
(先)長谷川碧〇出足払(0:17)△藤島将太
(次)道下新大〇小外刈(2:04)△有馬雄生
(中)鈴木郷生〇大外返(2:15)△菅原光輝
(副)藤永龍太郎×引分×近藤那生樹
(大)岡田陸×引分×工藤海人

東海大相模はエース山本銀河をこの試合も起用せず。3回戦とオーダー順のみを入れ替えて優勝候補国士舘に対峙した。

しかしあっという間に試合は壊れる。国士舘は前戦に引き続きもっとも破壊力のある長谷川碧を先鋒に入れて来ており、小回りが利かない重量級の藤島将太はまさしく好餌。開始僅か17秒、長谷川が片手で出足払を入れると藤島足元から脆くも崩れ、「一本」。国士舘は狙った通りのロケットスタート、東海大相模は、強者に挑むにあたって絶対に与えてはいけない先制点をあっさり失うことになる。

戦力に勝る国士舘が先行したことで勝敗が揺れる可能性はほとんどなくなってしまったが、有馬雄生はこの悪い流れに必死に抗う。道下新大に片手の左背負投で食い下がると、50秒には左の小内巻込に飛び込んで「技有」奪取、沈みかけたチームを鼓舞する。しかし道下怒気を発して前進、有馬は1分42秒に手を握って防御した咎で「指導1」失陥、さらに道下の圧に屈して一本背負投に潰れてしまい、一気に手が詰まった印象。直後、道下が頃合い良しとばかりに鋭い左小外刈。膝裏に刈り足を引っ掛けると支釣込足様に回旋を呉れて叩き落とし、2分5秒貫録の「一本」。続く中堅戦はレギュラー入りに燃える2年生鈴木郷生が大物1年生菅原光輝を2分15秒大外返「一本」に仕留めて、3連勝の国士舘がこの時点で早くも勝利を確定。

以降の2戦、国士舘は無理をせず。藤永龍太郎は左相四つの近藤那生樹をやや攻めあぐねるも手堅く引き分け。岡田陸も工藤海人と破綻なく試合を進めて引き分け、無失点のまま5試合を終了。国士舘が3-0の完勝でベスト8入りを果たすこととなった。

東海大相模にもし勝機があるとすればなんとしてもリードを得て、あるいはイーブンで試合を進めて国士舘に格上ゆえの焦りを呼び覚ますことしかなかったわけだが、その観点からすれば開始僅か17秒で実質試合は終わってしまったと言える。大会のハイライトと目された一番としては少々拍子抜けの展開だ。時間が経てば経つほど精神的に優位に立てるはずの試合で、しかも眼前に試合後半がっくりパフォーマンスが落ちるはずの長谷川を迎えながらの秒殺負け。大事な先鋒の重責を担った藤島は少々不甲斐なかった。そもそも挑む力関係の試合の斬り込み役として藤島が適任であったのか、采配にも疑問が残る。

一方の国士舘。先鋒・長谷川、次鋒・道下という前重心の積極策が見事に当たった。まず長谷川の質量で相手を擂り潰して相手の頭を抑え、道下が追加点を取って試合の流れを決めてしまう。いきなり突き放し、スコア的にもメンタル面でも東海大相模の希望を刈り取ってしまった。道下と藤永の戦いぶりは鷹揚で少々もどかしいものであったが、ここだけは譲ってはいけないという一線はよく弁えていた。「技有」を失うなり顔色を変え、即座に「一本」を奪い返した道下は、もしここで東海大相模に希望を与えることがあれば以降の戦いどう転がるかわからないということをしっかり理解していたと言える。ポイント失陥は失態だが、即座に収拾するあたり全国制覇の経験は伊達ではない。新戦力鈴木もここをアピールの場と捉え、相模期待の菅原をしっかり「一本」で仕留める好スパイラル。現状「6番手か7番手の評価」(関係者談)という鈴木でエース格を叩いて試合を決めたのだからまさしく完勝。

長谷川と道下を前出ししての積極策。国士舘が今後に向けて、東海大相模に「やれる」という感触を一切与えない焦土作戦に出、大枠それを達成したという試合であったのではないだろうか。実力差を測るべくまずひと当たりしておこうという東海大相模(藤島を先鋒に置く陣形からはこう評されても致し方ない)に対し、迎え撃つ国士舘は以後逆らうことが考えられなくなるような完勝を目指していたのではと考える。純実力はもちろんのこと、この試合をどう位置づけるかというマインドセットの差が結果に大きく反映した一番だったのではないだろうか。東海大相模が夏までに国士館に勝とうとするのであれば、結果はともかくこれがシーズン最後の試合というくらいの勢いで、まず全ての手を尽くして本気で勝ちに行くべきだった。斉藤不在の中藤永や道下が本調子ではなく、林が負傷しておそらくチーム全体に動揺があるという敵方の事情からも、揺さぶりをかけるとすれば今回だった。負けても、噛みついて、嫌なイメージを残しておきたかった。

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2回戦、東海大高輪台の副将的場光太郎が津幡・寺島悠太から大外返「一本」。

下側の山では東海大高輪台高(東京)が快進撃。2回戦の津幡高(石川)戦では、1-2のビハインドで迎えた副将戦で、的場光太郎が相手方のエース寺島悠太を豪快な大外返「一本」で沈める金星。黒潮旗でもチームの予選リーグ敗退の因となった寺島は技がバラバラで明らかに不調のようだったが、それでもこの一撃のインパクトは大きかった。続く大将戦はエース石村健真が「指導3」で勝利し、東海大高輪台は最終スコア3-2で勝ち抜け決定。続く3回戦では今季神奈川県で桐蔭学園に迫る勢力として前評判の高い横浜高を3-2で撃破。横浜が前重心、東海大高輪台が後重心という構図のハッキリした食い合いを見事に制してベスト16へと駒を進めた。

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3回戦、代表戦で埼玉栄・山野井爽が北海・竹下徹から足車「一本」。

シード校埼玉栄も決して冴えた戦いぶりではなかったが着実な勝ち上がり。2回戦は箕島高(和歌山)を3-0で下し、3回戦では既に高校選手権本戦進出を決めている北海高(北海道)とマッチアップ。先鋒西山真心が竹下徹に上四方固「一本」で屈したが、中堅松本弾が丸山弘貴から袖釣込腰「一本」を決めて追いつき、スコア1-1のまま勝敗の行方は代表者1名による決定戦へともつれ込む。この試合はエース山野井爽が73kg級の竹下の巧みな捌きにめげずに攻め続けると、当初投げる見込みの薄かった様相が変わり始める。幾度も宙を舞わせては、竹下が落ち際で何度か逃れる攻防が続く。本戦4分を超え、迎えたGS延長戦1分45秒に左足車を仕掛けると、体力の切れた竹下に捌く間を与えぬまま一気に投げ切りに掛かる。引き手の牽引を利かせ、万が一にも逃さぬよう体ごと頭側に激しく乗り込み劇的「一本」。これで4回戦進出を決めた。

迎えた4回戦は埼玉栄が東海大高輪台を撃破。先鋒戦は西山真心と石間勇斗が、次鋒戦では桝井秀翔と的場光太郎が引き分け。中堅戦で松本弾が牧口拓夢から「指導」3つを奪って埼玉栄が先制し、副将戦は山野井爽が浮腰「一本」で柴野明紀を破ってチームの勝利を確定。大将戦は東海大高輪台のエース石村が田川聖から小外刈「一本」で一矢を報い、最終スコアは2-1だった。

埼玉栄が小中学校で実績を残した選手たちによる「専門職」の集団であることを考えれば東海大高輪台は大健闘。福岡政章監督の就任以来競技力も柔道の質も一気に向上、来る東京都予選でも相応の存在感を示すかと思われる。

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準々決勝、国士舘の先鋒鈴木郷生が埼玉栄・西山真心から大外刈「一本」。

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次鋒戦、桝井秀翔は岡田陸を抑え込み返し、「一本」。

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中堅戦、試合中に埼玉栄の松本弾が負傷。棄権負けで国士館が勝ち越す。

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副将戦、国士舘の長谷川碧が埼玉栄・山野井爽から内股「一本」。

[Cブロック準々決勝]
国士舘高 4-1 埼玉栄高
(先)鈴木郷生〇大外刈(1:50)△西山真心
(次)岡田陸△横四方固(2:08)〇桝井秀翔
(中)道下新大〇棄権(1:18)△松本弾
(副)長谷川碧〇内股(2:38)△山野井爽
(大)藤永龍太郎〇内股△(0:47)田川聖

国士舘は陣形を落ち着かせ、道下・長谷川・藤永の主戦3名を後ろにまとめるオーソドックス陣形。林を失った中で、斬り込み役の先鋒には鈴木郷生を指名した。

先鋒戦、埼玉栄の西山真心は背負投を連発して積極的な試合ぶり。1分30秒には鈴木から「指導」ひとつをもぎ取るが、鈴木が続く展開で片襟を差しながらの大外刈一撃、西山を体ごと根こそぎ刈り取って豪快「一本」。

次鋒戦も岡田陸が桝井秀翔の足元を蹴り崩し続け、窮した桝井は巻き込みに潰れるのみで流れは国士舘にあり。岡田はこの桝井の苦し紛れの大外巻込を止めてしっかり寝技に持ち込み、縦四方固で抑え込む。しかし体勢が不完全なうちに桝井が下から振り返るように乗りあがりを試みると岡田はひっくり返り、胸が合わさったまま覆い被さられて万事休す。桝井が横四方固でガッチリ抑え込んで逆転の「一本」。埼玉栄がスコアを1-1のタイに戻す。

意気揚がる埼玉栄であるが、続く中堅戦では意外な形で国士館が再勝ち越し。道下の圧に窮した松本が高い打点の左一本背負投を仕掛けるが空転、この際負傷したか自ら転がって畳に頽れ、膝を抑えて苦悶。古傷でもあったのか、ベンチが棄権を指示して1分18秒でこの試合は終了。松本の棄権負けでスコアは2-1の国士舘リードに変わる。

続く副将戦はポイントゲッター対決。長谷川碧、山野井爽ともに左組みの相四つ。序盤は山野井が片襟の左大外刈、長谷川は組み手不十分ながら左内股で攻め合うが、1分を過ぎたあたりから山野井がぺースアップ、「やれる」とばかりに左大外刈を思い切って仕掛けて長谷川が下がる場面が目立ち始める。しかしベンチの怒気を背中に受け、2分を過ぎたあたりから長谷川が再前進。2分38秒には左内股で山野井をほぼ完ぺきに掴まえ、あっけないほどあっさり投げつける。文句なしの「一本」。

あとは大将の藤永が試合を締めるのみ。ケンカ四つの田川聖を追いつめて25秒片手の「指導」ひとつを得ると、47秒には低空の左内股を決めて「一本」。国士舘がスコアを4-1まで伸ばして順当にベスト4入りを決めた。



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2回戦、加藤学園の大将深井大雅が開志国際・西方謙仁から内股「一本」。

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3回戦、国士舘の次鋒鈴木郷生が加藤学園の津村亮摩から大腰「一本」。

[Cブロック1回戦]
常盤高(群馬) 3-1 関西高(岡山)

[Cブロック2回戦]
国士舘高(東京) 5-0 市立船橋高(千葉)
加藤学園高(静岡) 3-1 開志国際高(新潟)
東海大相模高(神奈川) 5-0 創学館高(山形)
盛岡大附高(岩手) ①-1 常盤高(群馬)
埼玉栄高(埼玉) 3-0 箕島高(和歌山)
北海高(北海道) 5-0 東京学館高(千葉)
東海大高輪台高(東京) 3-2 津幡高(石川)
横浜高(神奈川) ①代-1 長崎南山高(長崎)

[Cブロック3回戦]
国士舘高 4-1 加藤学園高
東海大相模高 5-0 盛岡大附高
埼玉栄高 ①代-1 北海高
東海大高輪台高 3-2横浜高

[Cブロック4回戦]
国士舘高 3-0 東海大相模高
埼玉栄高 2-1 東海大高輪台高

[Cブロック準々決勝]
国士舘高 3-1 埼玉栄高

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3回戦、崇徳の先鋒飯田恒星が京都共栄学園・ダコスタハルカ恋温から内股「技有」。

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3回戦、修徳の中堅小嶋洸成が小杉・澤田智大から内股「技有」。

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4回戦、崇徳の中堅徳持英隼が修徳・竹下博隆から隅落「技有」。

【Dブロック】
シード校:崇徳高(広島)、木更津総合高(千葉)
準々決勝カード:崇徳高(広島) ― 木更津総合高(千葉)

シード校の崇徳高(広島)と木更津総合高(千葉)が順当に勝ち上がってベスト8で激突。この直前のの4回戦で崇徳には対修徳高(東京)戦、木更津総合には東海大仰星高(大阪)戦とそれぞれ山場が組まれた。

2回戦から登場した崇徳のスターティングはテスト中のメンバーを含む偵察オーダー。先鋒から荒瀧遼、徳持英隼、神部航輝、福本佑樹、毛利允弥という布陣で立花学園高(神奈川)に対峙して4-1で勝利。中堅神部が柴田に袖釣込腰「技有」で敗れたものの、一本勝ち4つで勝敗自体は危なげなかった。京都共栄学園高(京都)を畳に迎えた3回戦は先鋒から飯田恒星、神部、毛利、福永光生、福本と一段布陣のレベルを上げ、神部が石田皇志郎に背負投「技有」で敗れたものの飯田の内股2発による合技「一本」、福永の袈裟固「一本」、福本の大内刈「一本」と得点を積み上げ最終スコア3-1で勝利。4回戦で、ここまで山形工高(山形)を4-0、小杉高(富山)を2-0で下している修徳との対戦を迎える。修徳はポイントゲッター小嶋洸成と岡田尚樹がここまで連続一本勝ちでチームを牽引。

[Dブロック4回戦]
崇徳高 1-0 修徳高
(先)飯田恒星×引分×中村和真
(次)福本佑樹×引分×岡田尚樹
(中)徳持英隼〇合技[隅落・小外掛]△竹下博隆
(副)福永光生×引分×小嶋洸成
(大)毛利允弥×引分×長尾光真

この試合は先鋒飯田恒星と中村和真、次鋒福本佑樹と岡田尚樹が引き分け。中堅戦で徳持英隼が竹下博隆から小外掛「技有」、さらに隅落「技有」を得て合技の一本勝ち。副将福永光生と小嶋洸成のエース対決は引き分けに終わり、毛利允弥と長尾光真の大将戦も引き分け。崇徳の福永、修徳の小嶋に岡田と双方ポイントゲッターは潰されたが、総合力の差をスコアに反映させた形の崇徳が1-0で勝ち抜けを決めた。

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3回戦、木更津総合の稲邊嵩斗が育英・長谷川功斉から小外刈「一本」

木更津総合高も2回戦からの登場、テストに近い布陣で戦い切った黒潮旗から一段レベルを上げて、八王子学園高(東京)を相手に唯野己哲、飯田空翔、北條嘉人、稲邊嵩斗、金澤聡瑠という強力布陣で大会をスタートした。この試合は唯野の後袈裟固「一本」、飯田の小外掛「一本」、北條が支釣込足と崩袈裟固の合技「一本」、稲邊の僅差優勢、金澤が体落と横四方固の合技「一本」とまったく相手を寄せ付けず5-0の完勝。3回戦は育英高(兵庫)を相手に唯野が背負投「一本」、稲邊が小外刈「一本」、飯田が「指導3」の反則、金澤が合技「一本」、北條が大内刈「一本」と完璧な試合を披露してこれも5-0で勝利、ここまで全勝で4回戦の東海大仰星戦を迎えることとなる。

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4回戦、木更津総合の大将北條嘉人が東海大仰星・嘉村悦王から内股「一本」。

[Dブロック4回戦]
木更津総合高 3-1 東海大仰星高
(先)飯田空翔〇合技[内股・袈裟固]△朝田隼
(次)唯野己哲×引分×柏野亮太
(中)稲邊嵩斗△合技[大内刈・袈裟固]〇中村雄太
(副)金澤聡瑠〇優勢[技有・支釣込足]△高橋力也
(大)北條嘉人〇内股△嘉村悦王

木更津総合が地力勝ち。東海大仰星はエースの中村雄太が大内刈と袈裟固の合技「一本」をマークして同点に追いついたが、以降は木更津総合の寄せを耐え得ること叶わず。木更津総合は金澤聡瑠が支釣込足「技有」で勝利すると、大将戦は73kg級のファイター北條嘉人が一階級上の嘉村悦王から豪快な「やぐら投げ」からの内股で一本勝ち。スコア3-1でベスト8へと駒を進めることになった。

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準々決勝、崇徳の副将福永夏生が木更津総合・金澤聡瑠から浮腰「技有」。

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崇徳は大将毛利允弥が北條嘉人から払巻込「技有」を得てダメ押し。最終スコアは3-1となった。

[Dブロック準々決勝]
崇徳高 3-1 木更津総合高
(先)飯田恒星〇優勢[技有・外巻込]△唯野己哲
(次)福本佑樹×引分×飯田空翔
(中)徳持英隼△優勢[僅差]〇稲邊嵩斗
(副)福永夏生〇合技△金澤聡瑠
(大)毛利允弥〇優勢[技有・払巻込]△北條嘉人

先鋒戦は飯田恒星が左、唯野己哲が右組みのケンカ四つ。1分6秒双方に「指導」、2分6秒に唯野に「指導2」が与えられて迎えた2分31秒、飯田の外巻込に唯野が横転「技有」。このポイントで崇徳が貴重な先制点を得る。木更津総合は斬り込み役として最適任と思われたファイター唯野で失点するという厳しい立ち上がり。
次鋒戦は引き分け、中堅戦は稲邊嵩斗が徳持英隼から2分30秒「取り組まない」咎で、3分13秒には場外の咎で2つの「指導」を得て勝利。スコア1-1で試合は終盤戦へ。
副将戦は崇徳のエース福永夏生が金澤聡瑠を小外掛から抑え込んで僅か25秒で一本勝ち。スコア2-1で崇徳リードのまま勝敗の行方は木更津総合のエース格北條嘉人が登場する大将戦へと持ち込まれる。

この試合は北條、毛利允弥ともに左組みの相四つ。北條は2階級上の毛利にも果敢に抱き勝負を挑み、得意の裏投を決めんと背中に食いつき続ける。しかし北條には横車の保有がない模様、後方向の裏投ばかりを狙い続けるその攻撃は比較的守りやすく、毛利は間一髪で凌いでポイントを許さない。どころか北條が投げ損ないを続けるうちに試合の雰囲気が変わり始め、1分53秒には北條が食いついてきたところに毛利が払巻込を合わせて「技有」獲得。このまま試合終了まで戦い抜いて優勢勝ち、スコア3-1という大差で崇徳の勝ち抜けが決まった。

取り味抜群、今代の目玉の一人と目された北條だが、73kg級の選手がこの抱きつきスタイルで団体戦を戦うにあたって、そして強豪木更津総合にあって「取りに行かねばならない」主戦として働くにあたってもっとも得意な背中に食いついた形からの決め技が後方向一択のみというのはかなり窮屈。横車と抱分の保有だけでもかなり変わると思うのだが、意外な攻撃の幅の狭さを露呈してしまった。

崇徳も木更津総合もともに地力で勝ることを前提に柔道を組み立てる型のチーム。今年の木更津総合は軽量だが代々続いたその傾向は本質的には変わらず、ポイントゲッターの唯野や北條も軽量でありながらその戦いぶりはパワーファイターのそれ。ともに地力型の両チームの対戦においてはサイズの差がそのまま結果に反映された、と総括しておいてよいかと思われる。

結果、このブロックからは崇徳がベスト4に進出。
準決勝のカードは、

日体大荏原高(東京) ― 作陽高(岡山)
国士舘高(東京) ― 崇徳高(広島)

となった。

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3回戦、木更津総合の金澤聡瑠が育英・廣瀬洋吾から小外掛「技有」

[Dブロック1回戦]
小杉高(富山) 3-1 文星芸大附高(栃木)

[Dブロック2回戦]
崇徳高(広島) 4-1 立花学園高(神奈川)
京都共栄学園高(京都) 4-0 大原高(千葉)
修徳高(東京) 4-0 山形工高(山形)
小杉高(富山) 5-0 本荘高(秋田)
木更津総合高(千葉) 5-0 八王子学園高(東京)
育英高(兵庫) 4-0 水戸葵陵高(栃木)
東海大仰星高(大阪) 4-0 前橋育英高(群馬)
慶應義塾高(神奈川) 2-1 松本第一高(長野)

[Dブロック3回戦]
崇徳高 3-1 京都共栄学園高
修徳高 2-0 小杉高
木更津総合高 5-0 育英高
東海大仰星高 4-0 慶應義塾高

[Dブロック4回戦]
崇徳高 1-0 修徳高
木更津総合高 3-1 東海大仰星高

[Dブロック準々決勝]
崇徳高 3-1 木更津総合高

※ eJudoメルマガ版12月24日掲載記事より転載・編集しています。

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