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佐々木健志が初戦で王者モラエイと激突、飯田健太郎はチョグハン、イリアソフと連戦の過酷な配置・ワールドマスターズ広州2018最終日男子プレビュー

(2018年12月15日)

※ eJudoメルマガ版12月15日掲載記事より転載・編集しています。
佐々木健志が初戦で王者モラエイと激突、飯田健太郎はチョグハン、イリアソフと連戦の過酷な配置
ワールドマスターズ広州2018最終日男子プレビュー(81kg級、90kg級、100kg級、100kg超級)
→ワールドマスターズ広州2018組み合わせ(公式サイト内)

文責:林さとる/eJudo編集部

■ 81kg級・好カード続出の豪華トーナメント、佐々木健志と世界王者モラエイが初戦で激突
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バクー世界選手権を制したサイード・モラエイ。

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佐々木健志はグランドスラム大阪に優勝、攻撃力に加えてクレバーさを身に着けつつある。

(エントリー17名)

現在の81kg級は史上類のない大混戦時代。これまでたびたび書かせて頂いた通り「大会ごと表彰台の顔ぶれがごっそり入れ替わる」、「20名近くの上位陣に優勝から1回戦負けまでの可能性が等しくある」その様はまさしく戦国。この様相を正しく反映したバクー世界選手権は好試合が間断なく打ち続く、近年稀に見るスーパートーナメントであった。ランキング上位16名のみが参加を許される「オールスター戦」という位置づけの今大会も、当然ながら序盤戦から注目カードが目白押し。1試合も見逃すことなく、まさに画面に齧りついて観戦することをお勧めしたい。

この強力トーナメントに日本から挑むのは、グランドスラム大阪を制したばかりの佐々木健志(筑波大4年)。アジア大会に学生体重別団体、講道館杯と「自爆」による敗退が続いた佐々木だが、グランドスラム大阪では攻撃衝動をうまくコントロール、落ち着いた戦いぶりでしっかりタイトルを獲得してみせた。今大会の組み合わせは初戦で現役世界王者サイード・モラエイ(イラン)と対戦する過酷なもの。しかし、昨年のグランドスラム・エカテリンブルクでは内股「一本」で勝利した来歴もあり、力だけで言えば十分勝利が見込めるはず。以降も強敵との息つく暇もない連戦が予想されるが、実力は十分頂点に届くレベルにある。勝敗を分けるポイントは、グランドスラム大阪と同じ。いかに自身をコントロール出来るかだ。

国内ではバクー世界選手権2位の藤原崇太郎(日本体育大2年)がリードしている形だが、ともに今春からいきなり出世した形の両者の序列にそこまで大きな差はないと考えられる。佐々木としては是非とも今大会を制して成績面での差を埋めるとともに、以後の戦いに向けて藤原にプレッシャーを掛けたいところ。

ほか、海外勢ではバクー世界選手権3位、グランドスラム大阪でも海外勢で唯一表彰台に登ったヴェダット・アルバイラク(トルコ)と、リオデジャネイロ五輪金メダリストのハサン・ハルモルザエフ(ロシア)に注目したい。両者ともに内股の名手であるが、パワーのアルバイラクに切れ味のハルモルザエフとその個性は対照的。ともに順当に勝ち上がれば準決勝で対戦予定となっている。熱戦間違いなしの好カード。

【プールA】
第1シード:サイード・モラエイ(イラン)
第8シード:マティアス・カッス(ベルギー)
有力選手:サギ・ムキ(イスラエル)
日本代表選手:佐々木健志(筑波大4年)

【プールB】
第4シード:アラン・フベトソフ(ロシア)
第5シード:ドミニク・レッセル(ドイツ)
有力選手:ニャムスレン・ダグヴァスレン(モンゴル)、アンリ・エグティゼ(ポルトガル)

【プールC】
第2シード:フランク・デヴィト(オランダ)
第7シード:ヴェダット・アルバイラク(トルコ)
有力選手:エドゥアルド=ユウジ・サントス(ブラジル)、ディダル・ハムザ(カザフスタン)

【プールD】
第3シード:ハサン・ハルモルザエフ(ロシア)
第6シード:アスラン・ラッピナゴフ(ロシア)
有力選手:イヴァイロ・イヴァノフ(ブルガリア)、オトゴンバータル・ウーガンバータル(モンゴル)

■ 90kg級・81kg級に劣らぬ豪華陣容、最注目はイゴルニコフら強豪詰め込まれたプールB
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大激戦のバクー世界選手権を制したニコロス・シェラザディシヴィリ。

(エントリー17名)

現役世界王者のニコロス・シェラザディシヴィリ(スペイン)を筆頭に、ミハイル・イゴルニコフ(ロシア)、イワン=フェリペ・シウバ=モラレス(キューバ)ら若手世代の台頭が著しい90kg級。その一方でベカ・グヴィニアシヴィリ(ジョージア)、ガク・ドンハン(韓国)らロンドン-リオ期のトップ選手たちもいまだ上位に留まり続けており、つまりは旧い勢力が元気なまま新鋭が次々台頭するという一種の飽和状態。81kg 級に劣らぬ、レベル高き大混戦となっている。

今大会のトーナメントはこの「新旧入り混じった飽和状態」を反映した豪華陣容、なかでもイゴルニコフにシウバ=モラレスとガク、さらにエドゥアルド・トリッペル(ドイツ)までもが押し込まれたプールBは大会全体を通じた最激戦区となっている。純戦力ではイゴルニコフが抜けていると見るが、この選手は安易に背中を抱いてしまう癖があり、これが抱き合いの得意なシウバ=モラレスや担ぎ技主体のガクと悪い意味で噛み合ってしまう可能性がある。ここの勝者は準決勝でプールAを勝ち上がってくるであろう王者・シェラザディシヴィリと対戦予定となっており、つまりはこのプールBとその勝者を追っておけばトーナメントの見どころは一通り抑えることが出来るかと思われる。まずは初戦、強豪連鎖の「起こり」であるイゴルニコフの1回戦に注目だ。

一方、トーナメント下側のプールCDにはグビニアシヴィリにフセン・ハルモルザエフ(ロシア)、アレクサンダー・クコル(セルビア)、クリスティアン・トート(ハンガリー)と旧勢力の強豪たちが揃って配置された。日本代表の長澤憲大(パーク24)もこのなかに含まれており、初戦(2回戦)でダヴィド・クラメルト(チェコ)、準々決勝でトートとハルモルザエフの勝者と対戦することとなる。

バクー世界選手権で3位を獲得した長澤だが、その戦いぶりは手堅さあれど、良くも悪くも「破れ」のないもの。この激戦階級でしっかりメダルを獲得し得る地力の高さとともに、組み手で優位を作らなければ柔道を展開できない現在のスタイルの限界も感じられた。ライバルであるベイカー茉秋(日本中央競馬会)や向翔一郎(ALSOK)はいずれもここ一番での勝負強さや相手の予想を超えるジャンプ力を売りとしており、一発勝負の五輪ではどうしてもこの方向性の能力が求められる。クレバーな長澤はこのあたりも見えているのではないだろうか。世界選手権の「1人代表」を経験したことでその柔道になんらか変化が起きているのか、この点を観戦のポイントとして挙げておきたい。

【プールA】
第1シード:ニコロス・シェラザディシヴィリ(スペイン)
第8シード:ママダリ・メディエフ(アゼルバイジャン)
有力選手:アクセル・クレルジェ(フランス)

【プールB】
第4シード:イワン=フェリペ・シウバ=モラレス(キューバ)
第5シード:ガク・ドンハン(韓国)
有力選手:イスラム・ボズバエフ(カザフスタン)、ミハイル・イゴルニコフ(ロシア)、エドゥアルド・トリッペル(ドイツ)

【プールC】
第2シード:アレクサンダー・クコル(セルビア)
第7シード:ベカ・グヴィニアシヴィリ(ジョージア)
有力選手:コムロンショフ・ウストピリヨン(タジキスタン)、ノエル・ファンテンド(オランダ)

【プールD】
第3シード:クリスティアン・トート(ハンガリー)
第6シード:長澤憲大(パーク24)
有力選手:フセン・ハルモルザエフ(ロシア)、ダヴィド・クラメルト(チェコ)

■ 100kg級・飯田健太郎に試練の配置、2回戦でチョグハン、準々決勝でイリアソフとの連戦が組まれる
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100kg級の新王者チョ・グハン。

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飯田健太郎はアジア大会決勝でチョを圧倒して優勝している。

(エントリー17名)

アスリート体形で運動能力高く、パワーも兼ね備えるフィジカルエリートがずらりと揃う本階級。2017年の世界王者ウルフアロン(了徳寺学園職)は腰の負傷のために出場を取り消したものの他強豪は一通りほぼ参戦、ワールドマスターズの名に恥じない魅力的なトーナメントが出来上がった。

どの山も初戦から好カードが目白押しだが、とりわけ注目度が高いのはバクー世界選手権の王者チョ・グハン(韓国)に同大会3位のニヤズ・イリアソフ(ロシア)とルハグヴァスレン・オトゴンバータル(モンゴル)、さらにはアジア大会王者の飯田健太郎(国士舘大2年)とシリル・マレ(フランス)までもが詰め込まれたプールD。なかでも飯田は1回戦でマレ、2回戦でチョ、準々決勝でイリアソフと、世界大会上位クラスの実力者と連戦せねばならない非常に厳しい組み合わせを引いた。

現在飯田は国内の代表争いでウルフから僅かに遅れた2番手につけているが、グランドスラム大阪でジュニア選手のシャディー・エルナハス(カナダ)に敗れるという失態を犯しながらそれでもこの距離を保っていられるのはアジア大会で世界王者のチョに圧勝しているからにほかならない。仮に今回敗れることになればこの論理上のアドバンテージをも失うこととなり、欠場しているウルフに差を広げられてしまうことになってしまう。とはいえこの組み合わせはチャンスでもある。再びチョに勝利し、さらに世界選手権でウルフが敗れたイリアソフに勝利すれば間違いなく評価は大幅アップ、一気にウルフとの距離を詰めることも可能だ。飯田はジュニア時代も含めて過去イリアソフに2敗しているが、東京五輪を目指すためにはこれ以上つまずくわけにはいかない。天才飯田の本領発揮に期待したい。

【プールA】
第1シード:ヴァーラム・リパルテリアニ(ジョージア)
第8シード:エルマー・ガシモフ(アゼルバイジャン)
有力選手:ニイアズ・ビラロフ(ロシア)、ベンジャミン・フレッチャー(アイルランド)

【プールB】
第4シード:ペテル・パルチク(イスラエル)
第5シード:ジョルジ・フォンセカ(ポルトガル)
有力選手:キリル・デニソフ(ロシア)

【プールC】
第2シード:マイケル・コレル(オランダ)
第7シード:ミクロス・サーイエニッチ(ハンガリー)
有力選手:ラマダン・ダーウィッシュ(エジプト)、カズベク・ザンキシエフ(ロシア)

【プールD】
第3シード:チョ・グハン(韓国)
第6シード:ニヤズ・イリアソフ(ロシア)
有力選手:シリル・マレ(フランス)、ルハグヴァスレン・オトゴンバータル(モンゴル)
日本代表選手:飯田健太郎(国士舘大2年)

■ 100kg超級・世界王者ツシシヴィリが参戦、好配置引いた影浦心と準決勝でマッチアップ
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最重量級に10年ぶりに誕生した新王者、グラム・ツシシヴィリ。

(エントリー17名)

担ぎ技を持ち、かつ「動ける」選手が主流となりつつある最重量級。オールスター戦となる今大会の顔ぶれも中核は明らかにこのタイプ、来年度もこの傾向が加速するであろうことを強く意識させられるトーナメントとなっている。

優勝候補の筆頭はバクー世界選手権で新王者となったグラム・ツシシヴィリ(ジョージア)。前述「動ける担ぎ技タイプ」トレンドの発信源は、両袖を上から握り込んだ独特の組み手から左右の袖釣込腰を繰り出して「リオ後」の最重量級世界を席巻したこの選手である。3週間前のグランドスラム大阪での不出来を見る限り、調整の照準が今大会である可能性はかなり高い。どのようなパフォーマンスを見せるか、まずは最初の山場である準々決勝のイナル・タソエフ(ロシア)戦に注目したい。

日本代表の影浦心(日本中央競馬会)は第5シードとしてプールBに置かれ、初戦(2回戦)でバクー世界選手権2位の巨漢ウシャンギ・コカウリ(アゼルバイジャン)、準々決勝でダヴィド・モウラ(ブラジル)とロイ・メイヤー(オランダ)の勝者と対戦する。階級随一の力自慢コカウリに多彩な技を持つモウラ、そして担ぎ技系パワーファイターのメイヤーといずれも一筋縄ではいかない強者であるが、影浦にとっては相性的に戦いにくい相手ではないはず。時間がかかることはあるかもしれないが、ここは影浦の勝利を考えるのが妥当。最低でもプール戦を勝ち上がり、準決勝でツシシヴィリに挑戦したい。前回の対戦時には焦れたツシシヴィリが寝技の攻防に偽装して影浦の頭に膝蹴りを見舞う(反則負け)という後味の悪い結末に終わっているが、今回は両者がその持ち味を十分発揮する、魅力的な試合に期待したい。ツシシヴィリ、実は自身は担ぎ技を主体とする選手を苦手としており、相性的には影浦に分があるはずだ。

国内の100kg超級はグランドスラム大阪に参加した4名のうち表彰台に上がったのが影浦のみという、ここ数年で最も危機的な状況にある。代表争いでも明確なリードを得ている選手はおらず、影浦と原沢久喜(フリー)がほぼ横並び、その後方にやや離れて小川雄勢(明治大4年)がつけているという格好。影浦にとって今大会はここから一歩抜け出す好機。ヨーロッパシリーズを前にライバルたちに大きなプレッシャーを掛け得る、「足し算」の大会だ。組み合わせの良さも含めて大チャンス、ここが代表争いの勝負どころと覚悟を決め、気迫のこもった戦いを見せてほしい。

【プールA】
第1シード:グラム・ツシシヴィリ(ジョージア)
第8シード:ステファン・ヘギー(オーストリア)
有力選手:ユーリ・クラコヴェツキ(キルギスタン)、イナル・タソエフ(ロシア)

【プールB】
第4シード:ダヴィド・モウラ(ブラジル)
第5シード:影浦心(日本中央競馬会)
有力選手:ロイ・メイヤー(オランダ)、ウシャンギ・コカウリ(アゼルバイジャン)

【プールC】
第2シード:ルカシュ・クルパレク(チェコ)
第7シード:ヘンク・フロル(オランダ)
有力選手:タメルラン・バシャエフ(ロシア)、ラファエル・シウバ(ブラジル)

【プールD】
第3シード:ウルジバヤル・デューレンバヤル(モンゴル)
第6シード:マチェイ・サルナツキ(ポーランド)
有力選手:ベクムロド・オルティボエフ(ウズベキスタン)、キム・スンミン(韓国)

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