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阿部詩が天敵角田夏実下して優勝、48kg級は渡名喜風南が1番手の座を死守・グランドスラム大阪2018第1日女子2階級レポート

(2018年12月01日)

※ eJudoメルマガ版11月30日掲載記事より転載・編集しています。
阿部詩が天敵角田夏実下して優勝、48kg級は渡名喜風南が1番手の座を死守
グランドスラム大阪2018第1日女子2階級レポート(48kg級、52kg級)
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→女子第1日速報ニュース

大会日時:2018年11月23日
於:丸善インテックアリーナ大阪(大阪市)

文責:古田英毅/林さとる
撮影:乾晋也/辺見真也

■ 48kg級 渡名喜風南が意地見せて金メダル獲得、近藤亜美は3位を確保
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48kg級上位入賞者。左から2位のムンフバット・ウランツェツェグ、優勝の渡名喜風南、3位の遠藤宏美と近藤亜美。

(エントリー19名)

【入賞者】
1.TONAKI, Funa (JPN)
2.MUNKHBAT, Urantsetseg (MGL)
3.ENDO, Hiromi (JPN)
3.KONDO, Ami (JPN)
5.CLEMENT, Melanie (FRA)
5.KANG, Yujeong (KOR)
7.SIDEROT, Maria (POR)
7.LEE, Hyekyeong (KOR)

【日本代表選手結果】
渡名喜風南(パーク24)、近藤亜美(三井住友海上)、遠藤宏美(ALSOK)、芳田真(比叡山高3年)

【決勝まで】

プレビュー記事にあるとおり、大会の常連であったガルバドラフ・オトゴンツェツェグ(カザフスタン)とジョン・ボキョン(韓国)のメダリスト2人が直前で出場を回避。それでもムンフバット・ウランツェツェグ(モンゴル)に渡名喜風南(パーク24)、近藤亜美(三井住友海上)と世界チャンピオンが3名参加して十分豪華ではあるのだが、日本開催のグランドスラムを見れば世界の48kg級の状況がほぼわかる、というこれまでの年の豪華さに比べれば少々寂しいところ。階級の重心が日本から新王者ダリア・ビロディド(ウクライナ)に移りつつあるのでは、と感じさせるラインナップでの戦いとなった。

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準々決勝、遠藤宏美が近藤亜美を右小外刈で攻める

準々決勝では優勝候補の一角であった近藤亜美が敗退。この遠藤宏美(ALSOK)との一番は大方の予想通り消耗戦となり、3分1秒、続いてGS43秒にいずれも消極的との咎で双方に2つの「指導」。ここに至って序盤の1分30秒に先んじて近藤に与えられていた「指導」が致命傷となり、「指導2」対「指導3」で近藤の敗戦が決まった。攻めながら、かつ時折ほぼ決定的とも見える投げを放ちながら結果としてポイントないまま最後は競り負けるという展開はアジア大会の決勝、および講道館杯で喫した2敗と相似。気を取り直した近藤、敗者復活戦はイ・ヘキョン(韓国)をあっという間の横四方固「一本」で下してクリア、眦を決して3位決定戦のカン・ユジュン(韓国)戦に臨む。

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3位決定戦、近藤は攻め続けることで展開をもぎとる。

このカン戦も非常に苦しい展開。1分過ぎに思い切った右内股巻込を放つも相手はまったく崩れず近藤自ら潰れて「待て」。ならばと引き手で袖、釣り手で奥襟を得る完璧な形からまず右小内刈で蹴り、寄せて右足車を仕掛け、立ち戻って右小外刈を入れてとしっかり作りを入れた後に最大の勝負技である右払腰に打って出るが、またもやカンは背筋を伸ばしてまったく崩れず、近藤の技は弾き返されてしまう。きちんと組んで、しっかり作ったにも関わらず勝負技を弾き返された近藤には、もはや決めるべき技がない。講道館杯、この日の準々決勝と投げを決められないことで手が詰まった経緯のある近藤には非常に悪い卦。しかも相手のカンはアジア大会決勝で苦杯を喫したジョン・ボキョンの格下に位置する2番手、ここで負けてしまえば「国を代表して対話が出来るトップグループ同士」の立ち位置から滑り落ちる危機。以後のキャリアを左右しかねない大ピンチである。しかし近藤、かつて自分を救った寝勝負に舵を切って粘戦。カンの右大内刈に食いついて潰し回し、横落を潰して絞めてと必死の攻め。ここから繋いだ縦四方固は返されてまたも「決め切れない」予感漂うが、本戦を双方「指導」なしのまま乗り切って勝負をGS延長戦に持ち込む。ここから攻め続けるとついにカンが疲労しはじめ、近藤に背中を叩かれて横巴に潰れたカンにGS54秒偽装攻撃の「指導1」、払巻込で粘り続けたGS1分34秒には消極的との咎で「指導2」が与えられる。勝機来たりと攻めに出る近藤はここから引込返に隅返と捨身技を2連発。判断ミスかとも思われたが主審はこの手数を取ってカンに「指導3」を宣告。近藤、なんとか銅メダルを確保して代表争いの戦線に辛うじて踏みとどまった。近藤は12月に行われるワールドマスターズへの派遣が決定、この大会と欧州シリーズの出来に復権を掛ける。

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2回戦、ムンフバット・ウランツェツェグが芳田真から谷落「一本」

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準決勝、ムンフバットがカン・ユジョンから隅返「技有」

決勝に進んだのはムンフバット・ウランツェツェグ(モンゴル)と渡名喜風南、それぞれ世界選手権で優勝歴のある2人。

ムンフバットは初戦(2回戦)で講道館杯の王者・芳田真(比叡山高3年)とマッチアップ。1分50秒に消極的との咎で「指導」、3分19秒には偽装攻撃で「指導2」を失ってあわや初戦敗退の危機であったが、GS延長戦開始早々に谷落で食いついて叩き落とし逆転の「一本」。準々決勝はほぼ実績ゼロのマリア・シデロット(ポルトガル)をあっという間に得意の崩上四方固「一本」に仕留め、準決勝は面倒なカン・ユジョン(韓国)を隅返と横四方固の合技「一本」で撃退。勝ち上がってみれば最大の山場は初戦の芳田戦、以降は余裕を持っての戦いで堂々の決勝進出。

一方の渡名喜は、2回戦でまずジアン・ヤホン(中国)を縦四方固「一本」で一蹴。準々決勝はイ・ヘキョン(韓国)を1分50秒に奪った谷落「技有」による優勢で破り、唯一最大の勝負どころとなった準決勝では遠藤宏美と大消耗戦。開始10秒遠藤に所謂「襟隠し」の咎で「指導1」、33秒渡名喜に消極的との咎で「指導」、2分23秒遠藤に消極的との咎で「指導2」、3分15秒には渡名喜にも消極の「指導2」が与えられて試合は一進一退。しかしGS延長戦を目前にした3分59秒、渡名喜の攻勢が認められて遠藤に消極的との判断で3つ目の「指導」。残り1秒、「指導3」の反則で渡名喜の決勝進出が決まった。

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決勝、渡名喜風南がムンフバットをあっという間の横四方固「一本」に仕留める。

【決勝】

決勝は渡名喜が左、ムンフバットが右組みのケンカ四つ。開始直後、ムンフバットが脇を差して隅返。ムンフバットが得意とする攻撃だが、これを待ち構えた渡名喜は素早く体を横に捌いてかわし、攻防一致の横四方固で抑え込む。完全に出遅れたムンフバットは万事休す。試合開始からわずか39秒、「一本」が宣告されて渡名喜の優勝が決まった。

渡名喜はワールドツアー5つ目のタイトル、日本開催のグランドスラムはこれが初優勝。ビロディドに完敗した世界選手権から2か月、再度の王座奪取に掛ける意気込み、そして国内1番手の座は誰にも渡さぬという気構えが存分に感じられる戦いぶりだった。

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優勝の渡名喜風南

【上位入賞者】
優 勝:渡名喜風南(パーク24)
準優勝:ムンフバット・ウランツェツェグ(モンゴル)
第三位:遠藤宏美(ALSOK)、近藤亜美(三井住友海上)

【日本代表選手結果】
渡名喜風南(パーク24):優勝
近藤亜美(三井住友海上):3位
遠藤宏美(ALSOK):3位
芳田真(比叡山高3年):2回戦敗退

渡名喜風南選手のコメント
「去年の世界選手権以降、優勝がなかったので今はホッとしています。ただ、自分がやって来たことがそんなに出せなかったので、まだまだ課題はあるなと思っています。五輪に向けて日本の選手との準決勝を勝てたのは良かったですが、目標はあくまでオリンピックで勝つこと。まだ満足するわけにはいかない立場です。地道にコツコツ、また頑張ります。」

【1回戦】

ガブリエラ・チバナ(ブラジル)○優勢[技有・小内巻込]△ガオ・ジュンイン(台湾)
ジアン・ヤホン(中国)○崩上四方固(1:23)△キャロライン・ヘイン(オーストラリア)
ヨアナ・ディオゴ(ポルトガル)○払巻込(4:00)△アンネ=ソフィー・ユラ(ベルギー)

【2回戦】
ムンフバット・ウランツェツェグ(モンゴル)○谷落(3:47)△芳田真
マリア・シデロット(ポルトガル)○GS袖釣込腰(GS4:42)△カタリナ・メンツ(ドイツ)
メラニー・クレモン(フランス)○GS反則[指導3](GS0:46)△ガブリエラ・チバナ(ブラジル)
カン・ユジョン(韓国)○不戦△アカリ・ワラシハ(タイ)
渡名喜風南○縦四方固(2:12)△ジアン・ヤホン(中国)
イ・ヘキョン(韓国)○GS技有・隅落(GS0:33)△ジュリア・フィゲロア(スペイン)
近藤亜美○合技[隅落・肩固](1:55)△メリー=ディー・バルガス=レイ(チリ)
遠藤宏美○横四方固(3:02)△ヨアナ・ディオゴ(ポルトガル)

【準々決勝】
ムンフバット・ウランツェツェグ(モンゴル)○崩上四方固(1:19)△マリア・シデロット(ポルトガル)
カン・ユジョン(韓国)○優勢[技有・袖釣込腰]△メラニー・クレモン(フランス)
渡名喜風南○優勢[技有・谷落]△イ・ヘキョン(韓国)
遠藤宏美○GS反則[指導3](GS1:57)△近藤亜美

【敗者復活戦】
メラニー・クレモン(フランス)○反則[DH](0:34)△マリア・シデロット(ポルトガル)
※腕挫脇固の形で体を捨てたことによる
近藤亜美○横四方固(0:50)△イ・ヘキョン(韓国)

【準決勝】
ムンフバット・ウランツェツェグ(モンゴル)○合技[隅返・横四方固](3:37)△カン・ユジョン(韓国)
渡名喜風南○反則[指導3](4:00)△遠藤宏美

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3位決定戦、遠藤宏美が右背負投から逆方向に抜け落とし、押し込んで「技有」。

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3位決定戦、近藤亜美は投げ切れず苦しい展開も、あくまで攻めを止めず。

【3位決定戦】

遠藤宏美○合技[背負投・横四方固](0:44)△メラニー・クレモン(フランス)
遠藤が右、クレモンが左組みのケンカ四つ。双方釣り手のみを持っての引き手の攻防から24秒、遠藤が一気に腰を差し入れて右背負投を仕掛ける。相手の懐内で自分だけが回るようにして反対方向に抜き落とすとクレモン体側から畳に落ちて「技有」。そのまま横四方固で抑え込み44秒、合技「一本」。

近藤亜美○GS反則[指導3](GS2:36)△カン・ユジョン(韓国)
近藤、カンともに右組みの相四つ。カンは片手の右袖釣込腰で先制攻撃、さらに近藤の移動する左方向に向けて得意の肩車。近藤大きく崩れるも耐え切り「待て」。
近藤思い切り右内股巻込を入れるがカン背筋を伸ばしてまったく揺るがず。近藤ならばと今度は完璧な組み手から小内刈の蹴り崩し、寄せて右足車、逃れた相手に右小外刈としっかり作って最大の得意技である右払巻込に飛び込むがカンはまたしてもまったく崩れない。パワーではカンに分があり、近藤の投げが決まるイメージが持ちがたい展開。近藤ならばとカンの大内刈崩れを抱き抱えて寝勝負、さらに横落を潰して縦四方固と寝技に舵を切るがいずれも決定的な形から逃れられてしまう。立って投げられず、寝て抑えられない近藤は苦しい状況。アジア大会と講道館杯で嵌った嫌なパターンだが、近藤は気持ちを折らずに粘り強く攻めを続ける。GS延長戦になるとカンの体力が落ちて少しづつ様相が変わり始め、GS54秒「横巴」に潰れたカンに「指導」、近藤の払巻込をカンが辛うじて止め切ったGS1分34秒には「指導2」が与えられる。近藤勝機来たりと攻めの密度を上げ、左大腰から抱え込んでの引込返、隅返と技を積む。この場面での捨身技は選択として賛否分かれるところだが、主審は近藤の攻勢を採ってGS2分36秒カンに3つ目の「指導」。近藤苦しい大会を最後まで戦い抜いて3位を確保した。

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決勝、ムンフバットが隅返。渡名喜は右脚を高く揚げてムンフバットの掛け脚を透かし、攻防一致で抑え込みを狙う。

【決勝】

渡名喜風南○横四方固(0:39)△ムンフバット・ウランツェツェグ(モンゴル)
渡名喜が左、ムンフバットが右組みのケンカ四つ。開始直後の19秒、ムンフバットが脇を差して得意の隅返を仕掛けると、このパターンを読んでいた渡名喜は横に躱してそのまま横四方固で抑え込む。完全に固められてしまったムンフバットは万事休す。39秒に「一本」が宣告されて決着。

■ 52kg級 阿部詩が天敵角田夏実破って大会連覇、2019年世界選手権代表の内定勝ち取る
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52kg級上位入賞者。左から2位の角田夏実、優勝の阿部詩、3位の志々目愛とブシャー。

(エントリー25名)

【入賞者】
1.ABE, Uta (JPN)
2.TSUNODA, Natsumi (JPN)
3.SHISHIME, Ai (JPN)
3.BUCHARD, Amandine (FRA)
5.MAEDA, Chishima (JPN)
5.PARK, Da Sol (KOR)
7.PEREIRA, Jessica (BRA)
7.LKHAGVASUREN, Sosorbaram (MGL)

【日本代表選手】
阿部詩(夙川学院高3年)、志々目愛(了徳寺学園職)、角田夏実(了徳寺学園職)、前田千島(三井住友海上)

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準々決勝、アモンディーヌ・ブシャーが前田千島から肩車「技有」

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準決勝、角田夏実がブシャーから巴投「技有」

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角田、ブシャーを再び巴投で投げて2つ目の「技有」確保。

【決勝まで】

マイリンダ・ケルメンディ(コソボ)が長期欠場する中、日本勢の力が突出している52kg級。このグランドスラム大阪には現役世界王者の阿部詩(夙川学院高3年)、昨年のブダペスト世界選手権の覇者・志々目愛(了徳寺学園職)、そして昨年の銀メダリストで両者に滅法強い角田夏実(了徳寺学園職)という日本が誇る金銀メダリスト3名が揃い踏み。地元関西で凱旋大会を戦うことになった阿部にひときわ大きな声援が送られる中、3名いずれもしっかりとベスト4に勝ち残った。この時点で残ったメンバーは第1シードのアモンディーヌ・ブシャー(フランス)、角田、阿部、志々目。国際的な序列そのままに準決勝までが進行したという形だ。

第1試合はブシャーに角田がマッチアップ。

ブシャーはここまでグルバダム・ババムラトワ(トルクメニスタン)を開始53秒の肩車「一本」、そして講道館杯王者の前田千島(三井住友海上)をGS延長戦の肩車「技有」で下してと、「わかっていても食ってしまう」得意技を存分に駆使しての勝ち上がり。一方の角田もカチャコーン・ワラシハ(タイ)を巴投「一本」とこちらも唯一無二の得意技を決めて順調に大会を滑り出し、準々決勝ではジェシカ・ペレイラ(ブラジル)を「指導3」の反則でしっかり下してベスト4へ。

角田は2017年グランドスラム東京、今年2月のグランドスラム・パリとブシャーに2敗中。数少ない「取り口の合わない相手」であるが、この試合では圧倒。1分25秒に両足の巴投を決めてまず「技有」先制、さらに下がりながら肩車を狙う相手をしっかり組むことで圧し、片手の「指導」も追加して完全に主導権を掌握する。そして終盤の3分41秒、引き手で袖、釣り手で奥襟を持つと、内股のフェイントで相手に腰を引かせておいてから再び必殺の巴投に滑り込む。ブシャーは大きく崩れ、角田見事なコントロールで体側から畳に叩き落として「技有」。角田は合技「一本」の完勝でリベンジ達成。みごと決勝進出を決めた。

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2回戦、阿部詩がテッシア・ツィオリニリナから右袖釣込腰「一本」

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準々決勝、志々目愛がルハグヴァスレン・ソソルバラムから左内股「技有」

もう片側の準決勝は昨年の世界選手権決勝の再現カード、阿部詩対志々目愛という豪華な一番が組まれた。

この大会の優勝に2019年東京世界選手権代表の内定獲得を掛ける阿部の勝ち上がりは抜群。2回戦、大声援を浴びて畳に姿を現すと、審判の「はじめ」の声の残響収まらぬ開始10秒豪快な袖釣込腰を決め、テッシア・ツィオリニリナ(マダガスカル)から鮮やか「一本」。準々決勝は面倒なパク・ダソル(韓国)にまったく試合をさせず、なんと僅か1分38秒の間に消極的との咎で1つ、偽装攻撃で2つの「指導」をもぎ取ってあっという間に試合終了。「指導3」によるパクの反則負けであっさり準決勝進出を決めた。

一方、阿部にストップを掛けんとする志々目も気合い十分。2回戦はピ・スジエ(中国)から小外刈「技有」を奪うと崩上四方固に抑え込み1分55秒合技「一本」。準々決勝はルハグヴァスレン・ソソルバラム(モンゴル)から開始25秒に左内股「技有」奪取、さらに「指導」1つを追加して危なげなく試合を終え、優勢勝ちでしっかり準決勝へと駒を進めて来た。

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準決勝、阿部詩が志々目愛の左内股に素早く反応、内股透「一本」。

そして迎えた世界チャンピオン同士の大一番、準決勝の阿部詩対志々目愛戦は劇的な決着。ケンカ四つのこの試合、33秒に志々目愛がスピードに乗った左内股。志々目の代名詞である必殺技だが、阿部は一瞬で体を捌いてこれを透かすと志々目以上の速さで攻防一致の右体落。これぞ「昭和の内股透」、反射神経に身体能力、柔道センスとすべてが要求される素晴らしい一撃決まって「技有」。「一本」ではないのかと会場どよめく中主審はすぐさま技の効果を訂正して「一本」を宣告。互いが一瞬で持ち味を存分に見せつけた攻防、そして劇的な決着に、短い試合時間ながら観衆は大満足。阿部強し、と沸き立つ観客席を背に勝利の宣告を受けて阿部は堂々の退場。決勝は阿部詩と角田夏実によって争われることとなった。

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決勝、阿部詩はまず釣り手で袖を抑えに掛かる慎重な入り。

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小外刈で崩し、すかさず引き手で袖を得る阿部。

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袖を掴むと袖釣込腰を狙う。写真は2度目、深く入った一撃。

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角田夏実が巴投から腕挫十字固。角田はこれをきっかけに展開を押し戻す。

【決勝】

阿部詩○GS反則[指導3](GS0:57)△角田夏実

阿部が右、角田が左組みのケンカ四つ。角田に3連敗中の阿部はじっくり組み合っては巴投を食いかねないと慎重に周囲を周回、自由奔放に自分の長所を繰り出して来た準決勝までとは明らかに違う入り方。まず釣り手で角田の袖を抑え、両袖で組み合うと浅い右内股巻込に潰れて自ら試合を切りに掛かる。その選択、そして動きには角田への苦手意識がにじむ。角田はここから腕挫十字固を狙うが阿部嫌って早々に立って「待て」。

阿部は巴投を徹底警戒、組まずに距離と角度を調整しながら角田の回りを周回し、焦れた角田が釣り手を伸ばすと袖を抑えて距離を取りに掛かる。1分5秒、両者に取り組まない咎による「指導」。直後の1分9秒に両袖を得た阿部が右体落を仕掛けると角田頭から畳に落下「待て」。阿部はどうやら袖を抑えて間合いを取り、組み際の技で手数を詰んで角田の巴投を無力化したまま展開を取りに来ている様子。角田はこの阿部の恐怖感を十分理解している模様、奥襟を狙いながら前に出るが阿部はこの伸びて来た釣り手に手を絡ませ、まず袖を抑えて落としなかなか十分な形を作らせない。1分40秒、阿部が角田の釣り手をずらして右小外刈、相手が崩れたことを利して引き手で袖を拾うと間髪入れずに両袖の右袖釣込腰を仕掛ける。角田が畳に這って「待て」。阿部は続く展開でもまったく同じ形を踏み、釣り手を袖に絡ませながら右小外刈、角田が下がるなり引き手で袖を掴んで右袖釣込腰。前段の攻防で手ごたえを得たか今度は相手の懐深くまで潜り込み、これはあと一歩でポイントという深い技。会場大きく沸き、主審は直後の2分14秒、角田に消極的との咎で2つ目の「指導」を宣告。試合の流れは阿部の側に大きく傾く。

ここで角田やや怒気を発して前へ。阿部は長い腕を捌きかねて後退、角田は釣り手で袖、引き手で襟を握るなりこの試合初めて巴投に飛び込む。これは阿部が蹲踞する形で潰したが角田は下から腕挫十字固、腕が伸びかけたところで阿部が持ち上げて2分44秒「待て」。この攻防以降阿部は慎重になり、一方角田は奥襟を叩いて前進、左小内刈を撒きながら巴投のチャンスを狙う。阿部腰を入れての右技に潰れて展開を切るが、角田が内股を入れ返して上から圧したまま「待て」。阿部はこの際大きく気合いの声を発したが、その常と異なるトーンからはこの角田相手の「腰の入れ合い」がかなり勇を振るっての行動、心理的ハードルの高いミッションであることがよくわかる。いまや展開は角田の側へと移りつつある印象。角田は前へ、阿部は一歩引いて距離を取り、釣り手を袖に絡ませながら迎え撃つ。この形変わらぬまま試合はGS延長戦へ。

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延長戦、右で組んだ角田に阿部がすかさず袖釣込腰。阿部の気迫に気圧されたか、この技以降角田は減速。

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「指導3」で阿部の勝利が決まった。

GS16秒、左釣り手の袖を抑えられ続ける角田が我慢し切れず右組みにスイッチして組むと、この機を逃さず阿部が両袖の右袖釣込腰。両者の体側が沿い、角田一瞬大きく浮き上がるが長い右足を大きく振って外側に着地、この技もノーポイントに終わる。しかし、この派手な一撃が効いたか以降角田はやや減速、「指導2」で後がないにも関わらず組み手争いに付き合ってしまうミスを犯す。一方の阿部は反則累積のリードを背に袖に手先を絡ませて抑え、膠着を演出。GS57秒、主審が両者に「取り組まない」咎による「指導」を宣告して試合決着。「指導3」による角田の反則負けで、阿部の優勝が決まった。阿部は珍しく両の拳を握りしめて喜色を表し、会心の笑顔。

阿部は対戦4度目にして角田から初勝利。決勝は準決勝までと異なり「相手にやりたいことをやらせない」ことで展開を取ることに徹した。阿部自身は内容にまだ不満とのことだが、着々攻撃の幅を広げて来た阿部が、戦術に徹し、我慢比べで勝利するという戦いの「モード」を1つ増やした試合とポジティブに評価したい。

一方の角田。阿部が己に感じている脅威を存分に理解している様子だったが、スクランブルを掛け切れず、精神的に優位に立ったまま結果を浚われたという印象。ほぼ巴投と腕挫十字固だけで戦う角田はこの技に至る引き出しまことに豊富だが、一手目を潰され続けて具体的な手立て見つけられないうちに時間と展開を失ってしまった。決して評価の落ちる内容ではなかったと思われるが、序列上の「席」を覆すには至らず。欧州シリーズ以降に世界選手権2枠目選出への希望を託す。

3位決定戦は志々目が前田を「韓国背負い」で投げてしっかり銅メダルを確保。もう1試合はブシャーがパク・ダソルをまたもや得意の肩車に嵌め「技有」優勢で勝利。こちらもしっかり表彰台に辿り着いた。

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優勝の阿部詩

【上位入賞者】
優 勝:阿部詩(夙川学院高3年)
準優勝:角田夏実(了徳寺学園職)
第三位:志々目愛(了徳寺学園職)、アモンディーヌ・ブシャー(フランス)

【日本代表選手結果】
阿部詩(夙川学院高3年):優勝
角田夏実(了徳寺学園職):2位
志々目愛(了徳寺学園職):3位
前田千島(三井住友海上):5位

阿部詩選手のコメント
「絶対に勝つと思って獲った金メダル。うれしいというよりホッとした気持ちが先に来ました。角田選手には3回負けているので、今日、この日勝たないとオリンピックが見えなくなってしまう。角田選手のことを考えながらしっかり稽古を詰んで来ましたし、決勝は最初から自分のペースで、これは勝てると思って強い気持ちで戦えました。世界チャンピオンとしての意地があるので負けられない。来年の世界選手権を見て、オリンピックに向かって、これからもっともっと強くなりたいと思います。」

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1回戦、前田千島がアナ・ペレス=ボックスから腕緘「一本」

【1回戦】
グルバダム・ババムラトワ(トルクメニスタン)○反則[指導3](2:05)△ゴー・シュアンリ(マレーシア)
前田千島○腕緘(3:08)△アナ・ペレス=ボックス(スペイン)
ナム・ジヨウン(韓国)○内股(3:27)△キンバリー・チェルマース(オーストラリア)
マリー・ベッソン(カナダ)○優勢[技有・小内巻込]△シュウ・フェン(中国)
カチャコーン・ワラシハ(タイ)○合技[大内返・崩上四方固](1:20)△イレム・コルクマズ(トルコ)
テッシア・ツィオリニリナ(マダガスカル)○抱分(1:23)△ツイ・シュクキ(香港)
パク・ダソル(韓国)○袖釣込腰(3:48)△エストレーヤ・ロペス=シェリフ(スペイン)
ピ・スジエ(中国)○GS技有・隅落(GS1:11)△ティンカ・イーストン(オーストラリア)
ルハグヴァスレン・ソソルバラム(モンゴル)○合技[大外刈・横四方固](2:53)△リン・グアンユン(台湾)

【2回戦】
アモンディーヌ・ブシャー(フランス)○肩車(0:53)△グルバダム・ババムラトワ(トルクメニスタン)
前田千島○合技[巴投・崩上四方固](0:20)△ナム・ジヨウン(韓国)
ジェシカ・ペレイラ(ブラジル)○三角絞(0:47)△マリー・ベッソン(カナダ)
角田夏実○巴投(2:04)△カチャコーン・ワラシハ(タイ)
阿部詩○袖釣込腰(0:10)△テッシア・ツィオリニリナ(マダガスカル)
パク・ダソル(韓国)○崩上四方固(1:20)△ヨアナ・ラモス(ポルトガル)
志々目愛○合技[小外刈・崩上四方固](1:55)△ピ・スジエ(中国)
ルハグヴァスレン・ソソルバラム(モンゴル)○合技[小外刈・袈裟固](1:56)△エカテリーナ・グイカ(カナダ)

【準々決勝】
アモンディーヌ・ブシャー(フランス)○GS技有・肩車(GS3:27)△前田千島
角田夏実○反則[指導3](3:40)△ジェシカ・ペレイラ(ブラジル)
阿部詩○反則[指導3](1:38)△パク・ダソル(韓国)
志々目愛○優勢[技有・内股]△ルハグヴァスレン・ソソルバラム(モンゴル)

【敗者復活戦】
前田千島○崩袈裟固(0:57)△ジェシカ・ペレイラ(ブラジル)
パク・ダソル(韓国)○小内巻込(0:28)△ルハグヴァスレン・ソソルバラム(モンゴル)

【準決勝】
角田夏実○合技[巴投・巴投](3:41)△アモンディーヌ・ブシャー(フランス)
阿部詩○内股透(0:23)△志々目愛

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3位決定戦、志々目愛が前田千島に「韓国背負い」を決めて一本勝ち。

【3位決定戦】

志々目愛○背負落(3:32)△前田千島
志々目が左、前田が右組みのケンカ四つ。前田は序盤から勢い良く前に出て右払巻込、巴投、両袖の右内股と技を重ねるが、志々目は全く揺るがない。2分37秒、両袖を絞った前田にブロッキングの「指導」。しかし、直後の2分55秒には志々目にも消極的の咎で「指導」が与えられる。展開が落ち着き始めた3分30秒、組み際に志々目が狙いすました左「韓国背負い」。意識外からの技に前田は真っ逆さまに畳に叩きつけられ「一本」。

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3位決定戦、またもやブシャー得意の肩車が決まって「技有」。

アモンディーヌ・ブシャー(フランス)○優勢[技有・肩車]△パク・ダソル(韓国)
右相四つ。互いに低く構えを取って接近と離脱を繰り返すが手先の探り合いに陥り、17秒には主審が早くも動いて両者に「取り組まない」咎の「指導」。ブシャーは片襟の右背負投に左袖釣込腰、カンは奥襟を持っての右大内刈に右一本背負投と技を出し合うがいずれも組み際の技で刹那的。しかしブシャーが攻撃の頻度で勝り、両袖を握って内巻込様に首を突っ込んで抜け落とした2分5秒、カンに消極的との咎で「指導2」。以降は奥襟を狙うカンに、変わらず手先で粘って低く担ぎ技を狙うブシャーという構図で試合が進む。2分37秒、ブシャーは左手で左袖を抑えたまま右方向への肩車。パクが伏せようとすると袖を引っ張って無理やり肩を着かせ「技有」。
以降はブシャーが手先でパクの突進を防いでクロージング。パクにこれを突破する力と技術はなくそのままタイムアップとなり、ブシャーの勝利が決まった。

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優勝決定、観客席に拳を突き上げる阿部。

【決勝】

阿部詩○GS反則[指導3](GS0:57)△角田夏実
阿部が右、角田が左組みのケンカ四つ。過去3敗の阿部、角田とじっくり組み合っては巴投を食いかねないと間合いをとって釣り手の袖を抑え、組み際の技に活路を見出す。1分5秒、両者に取り組まない咎による「指導」。直後の1分9秒に阿部が両袖の右体落を仕掛けると角田頭から畳に落下。コンタクトレンズが外れてしまいしばし試合が中断する。1分40秒、阿部は角田の釣り手をずらして右小外刈、相手が崩れると間髪入れずに両袖の右袖釣込腰を仕掛けて相手を畳に這わせる。続く展開でも同様の形でより相手の懐深くまで潜り込み、あと一歩でポイントという一撃を見舞うと、直後の2分14秒には角田に消極的の「指導2」。試合の流れは阿部の側に大きく傾くが、2分44秒に角田が巴投から腕挫十字固を仕掛けると様相が一転、阿部は相手を持ち上げてこれを脱したものの、以降やや慎重になって展開は前に出続ける角田の側へ。3分33秒に角田の指の治療のために一時試合が中断、再開後は大きな動きなく、勝負はGS延長戦へ。
GS16秒、角田が構えをスイッチして右で組んだ瞬間に阿部が両袖の右袖釣込腰。一瞬相手が浮き上がるが、今度も腰に乗せ切れず角田はそのまま着地する。しかし、この一撃が効いたか角田は「指導2」で後がないにも関わらず組み手争いに付き合ってしまうミス。GS57秒、両者に取り組まない咎による「指導」が加えられて決着。阿部は4度目の対戦で角田から初勝利をもぎ取った。

※ eJudoメルマガ版11月30日掲載記事より転載・編集しています。

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