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48kg級は芳田真が高校生決勝制して初優勝、63kg級は土井雅子が連覇飾る・平成30年度講道館杯全日本柔道体重別選手権大会最終日女子レポート

(2018年11月20日)

※ eJudoメルマガ版11月19日掲載記事より転載・編集しています。
48kg級は芳田真が高校生決勝制して初優勝、63kg級は土井雅子が連覇飾る
平成30年度講道館杯全日本柔道体重別選手権大会最終日女子4階級レポート(48kg級、52kg級、57kg級、63kg級)
大会日時:2018(平成30)年11月4日
於:千葉ポートアリーナ

取材・文:古田英毅/林さとる
撮影:辺見真也/eJudo編集部

→最終日女子プレビュー記事
→最終日女子4階級全試合結果

■ 48kg級・芳田真が古賀若菜との高校生対決制して優勝、近藤亜美は5位に終わる
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48kg級準々決勝、芳田真が近藤亜美から右大内刈「技有」

(エントリー32名)

【決勝まで】

芳田真(比叡山高3年)と古賀若菜(南筑高2年)の高校生2名が決勝に進出。

芳田は1回戦で濵田早萌(ベネシード)を「指導3」の反則(GS2:17)、2回戦でも常見海琴(コマツ)に「指導3」の反則(GS3:15)で勝利すると、準々決勝では優勝候補筆頭の近藤亜美(三井住友海上)を畳に迎えることとなる。この試合は右相四つ。近藤は得意の寝技で激しく攻めるが、芳田はそれをしぶとく凌ぎ続け、高校生らしく思い切りよく、上から目線の大技を繰り出し続けて投げ合いを挑む。この構図での攻防が続いてのGS1分48秒、芳田が右大内刈。追いながら体を浴びせると近藤尻から崩れ落ちて「技有」。攻め合い、粘り合い、幾度も投げ合いを挑むことで相手を精神的に疲弊させておいての決定打一撃。この試合は芳田の完勝であった。

大番狂わせを演じた芳田は、準決勝でも勢い止まらず。今季の学生王者・田中芽生(龍谷大4年)を豪快な釣込腰「一本」(GS0:32)で破ってついに決勝まで駒を進めることとなった。

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48kg級準々決勝、古賀若菜が遠藤宏美から左「一本大外」で「技有」

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48kg級3位決定戦、山﨑珠美が近藤亜美から隅落「技有」

一方の古賀は1回戦で尾崎万琳(ヤックス)を「指導3」反則(3:25)で下すと、2回戦では学生体重別準優勝者の小倉葵(環太平洋大3年)に大内刈「技有」で優勢勝ち。準々決勝では昨年の王者・遠藤宏美(ALSOK)を相手に総試合時間10分に迫る大消耗戦、粘りに粘った末にGS延長戦で大外刈「技有」(GS5:42)をもぎ取ってアップセット完成。

古賀の勢いは止まらない。準決勝では今年の選抜体重別王者の山﨑珠美(自衛隊体育学校)の伏せ際を「ボーアンドアローチョーク」の形にとらえて絞め落とし、片手絞「一本」の圧勝。見事決勝の畳へと辿り着くこととなった。

準決勝で敗れた近藤は3位決定戦でも山﨑に敗戦。桔梗展開に我慢が出来ず、体の力の強い山﨑が待ち構えるところに密着の投げ合いを挑んで隅落「技有」失陥、そのまま縦四方固に抑え込まれて合技「一本」(2:54)で屈した。最終成績は5位となり、表彰台に上がることは出来ず。

講道館杯が荒れることはむしろディフォルト、増して力の差を出しにくい女子軽量級ということになれば、思わぬ敗戦という現象自体はありうべきことではある。しかし根負けに気力負けと、その「負け方」が心配。アジア大会でも同様の評を書かせて頂いたが、技術や力ではなく曰く言葉にしがたい部分、「勝負師」属性の濃さで世界の強豪と伍して来た近藤から、まさしくその最大の長所が削げ落ちつつあるように見受けられることがなんとも気に掛かる。グランドスラム大阪での捲土重来に期待したい。

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48kg級決勝、芳田真が古賀若菜に「ボーアンドアローチョーク」

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回りながら絞め上げ「一本」

【決勝】

芳田真(比叡山高3年)○片手絞(2:30)△古賀若菜(南筑高2年)

芳田が右、古賀が左組みのケンカ四つ。手先の組み手争い一合を経て、芳田が釣り手で後帯を握り、片手のまま払巻込で先制攻撃。頭を突っ込むように畳に落ちて「待て」。芳田は続く展開でもまず手数で先手を取るにしくはなしと、「サリハニ」様に作用足を突っ込むと組み手不十分のまま右内股に潰れ、さらに背中を掴むなり片手の右内股で古賀を伏せさせる。しかしいずれも不十分な技で効果的とまでは認められず。主審的確に戦況を見極め、57秒双方に片手の咎による「指導」。

芳田は「ケンカ四つクロス」の形から右小外刈で古賀を崩し、崩すなり背中に食いついて寝勝負。古賀の片脚を両脚でロックしたところで「待て」。先手を取って崩し、最後は寝技で決めようという芳田の作戦が透けて見える攻防であったが、以後はこれをさせじと古賀がペースアップ。引き手で袖を引き寄せると、得意の左大内刈を2度繋げて左体落に打って出る。展開を失うことを怖れた芳田はやや性急に巻き込み潰れて攻防を切る。主審これを見逃さず、1分38秒偽装攻撃による「指導2」。芳田は早くもスコア上、後がなくなる。

芳田は右襟を両手で握った左背負投で打開を期するが、続いて背中を持つと古賀はすぐさま左大内刈に背負投を混ぜ込んで投げに掛かり、長所である投げへの衝動の軽さが出て来た気配。芳田「韓国背負い」で抗するが古賀は片手の左体落で剥がして動ぜず。スコアを考えれば古賀はもはや順行運転で良しというところだったが、続いて片手の左大内刈を見せて潰れた古賀に、芳田が片手絞で襲い掛かる。所謂「ボーアンドアローチョーク」、準決勝で古賀が山﨑珠美を失神させたばかりのこの技が今度は自身にガッチリ決まり、もはや逃れられぬことを悟った古賀は早々に「参った」。試合時間2分30秒、芳田の講道館杯初優勝が決まった。

一発で戦況激変。芳田の強さはもちろんのこと、「ボーアンドアローチョーク」の恐ろしさ、その決定力の高さがあらためて強く印象に残った決勝であった。古賀は長所である技への衝動の軽さを突かれた形、惜しくも講道館杯制覇には手が届かなかった。

入賞者と優勝した芳田、第1シードの近藤のコメントは下記。

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48kg級上位入賞者。左から2位の古賀若菜、優勝の芳田真、3位の山﨑珠美と坂上綾。

【入賞者】
優 勝:芳田真(比叡山高3年)
準優勝:古賀若菜(南筑高2年)
第三位:山﨑珠美(自衛隊体育学校)、坂上綾(三井住友海上)

【グランドスラム大阪日本代表選手】
渡名喜風南(パーク24)、芳田真(比叡山高3年)、近藤亜美(三井住友海上)、遠藤宏美(ALSOK)

芳田真選手のコメント
「決勝は相手を見ず、自分のやって来たことを出し切ろうと思っていました。初めての講道館杯で物凄く緊張していました。まさか勝てるとは思っていなかったので、『やって来たことがきちんと出来れば勝てるんだな』と自信になりました。(-お姉さんには近づけましたか?)まだまだです(笑)。」

近藤亜美選手のコメント
「悔しいけれど、今日は本当に一杯試合をして疲れました。みな予選で勝って出てきているのに私はアジア大会で負けて出る立場で、優勝するしかないはずでした。2試合目で10分くらい試合をして、投げを磨かないといけないと思いました。投げられないと寝技で獲り切れないときに体力だけを消耗する。(―なかなか組めなかった?)組ませてもらえないし腰も引かれるし『これが講道館杯なんだな』と思いました。2020年に期待してくれている人がいるので、自分があきらめたら裏切ることになる。あきらめません」

【準々決勝】
芳田真(比叡山高3年)○GS技有・大内刈(GS1:48)△近藤亜美(三井住友海上)
田中芽生(龍谷大4年)○大内返(1:35)△仲田奈央(帝京大2年)
古賀若菜(南筑高2年)○GS技有・大外刈(GS5:42)△遠藤宏美(ALSOK)
山﨑珠美(自衛隊体育学校)○反則[指導3](3:54)△坂上綾(三井住友海上)

【敗者復活戦】
近藤亜美(三井住友海上)○合技[裏投・払腰](1:25)△仲田奈央(帝京大2年)
坂上綾(三井住友海上)○合技[一本背負投・大腰](3:59)△遠藤宏美(ALSOK)

【準決勝】
芳田真(比叡山高3年)○GS釣込腰(GS0:32)△田中芽生(龍谷大4年)
古賀若菜(南筑高2年)○片手絞(2:01)△山﨑珠美(自衛隊体育学校)

【3位決定戦】
山﨑珠美(自衛隊体育学校)○合技[隅落・縦四方固](2:54)△近藤亜美(三井住友海上)
坂上綾(三井住友海上)○一本背負投(1:35)△田中芽生(龍谷大4年)

【決勝】
芳田真(比叡山高3年)○片手絞(2:30)△古賀若菜(南筑高2年)

■ 52kg級・前田千島が初優勝、決勝は立川莉奈との投げ合いを制す
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52kg級準決勝、立川莉奈が武田亮子から内巻込「技有」

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52kg級準決勝、前田千島が内尾真子から右大外刈「技有」

(エントリー29名)

【決勝まで】

第1シードの立川莉奈(福岡大4年)と第2シードの前田千島(三井住友海上)、ともに優勝候補と目されていた2名が順当に決勝進出。

立川は初戦(2回戦)で川越梨乃(山梨学院大4年)に「指導3」の反則(2:53)で勝利すると、準々決勝では大森生純(帝京高3年)を大外刈と横四方固の合技「一本」(2:36)で下してベスト4入り。準決勝では学生体重別選手権でも決勝を争った世界ジュニア選手権王者の武田亮子(龍谷大2年)を、GS延長戦での内巻込「技有」(GS0:33)で退けて決勝へと駒を進めた。

一方の前田は初戦(2回戦)で萩野乃花(国士舘大3年)に腕挫十字固で一本勝ち(2:54)。準々決勝で坪根菜々子(福岡大1年)に試合時間9分に及ぶ消耗戦の末「指導3」反則(GS5:19)で勝利すると、準決勝では内尾真子(自衛隊体育学校)をお互いに「技有」を取り合ったうえでの「指導3」反則(GS0:16)で下して決勝進出決定。

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52kg級決勝、立川莉奈が前田千島を豪快な左大腰も、腹ばいで落ちてポイントならず

【決勝】
前田千島(三井住友海上)○GS技有・浮落(GS3:45)△立川莉奈(福岡大4年)

両者右組みの相四つ。立川が奥襟を叩いて引き手の袖を折り込むと前田やや慌てて反転して潰れ「待て」。続く展開は前田が袖を折り込み制して鋭い巴投、さらに立川の立ち際に「ボーアンドアローチョーク」で襲い掛かる。これは首に足が掛かり切らず、あきらめた前田は絞めを利かせたまま抑え込みを狙うが、立川拘束の利かない方向を見極めて反転。立ち上がって「待て」。経過時間は58秒、ここまではほぼ互角の展開。

組み際、両者激突するように奥襟を叩き合うと立川が左腰車。前田が大きく崩れて伏せ「待て」。立川が右手をクロスに相手の右袖を抑えようとすると立川構わず左袖釣込腰、崩れたところから前田が絞めを狙い、さらに左腕の関節を狙って腕を滑り込ませるが立川が立って「待て」。経過時間は1分36秒、このシークエンスで見えた「立って投げを狙う立川、寝技で素早く決めに掛かる前田」という構図は以後一貫して続くことになる。

前田が「ケンカ四つクロス」の形で背中を叩くと瞬間立川首をずらしてかわし、前田は釣り手で肩越し組み手を強いられる。前田が反則を回避するためいったん巻き潰れると、主審は立川が「首抜き」でかわした結果と判断、2分2秒立川に「指導」。

続く展開は前田が思い切り奥襟を叩き、いったん腰を突いて防御した立川が左大腰。しかし前田背筋を伸ばしてこれをさせず、頭を下げられた立川が膝を着くと潰して奥襟を持ったまま前に引きずり続ける。四つん這いの立川は肘を折り曲げて外側を脚に当てて防御するも、主審はここで前田の手が下半身に触れたと判断。2分18秒立川に「指導2」。立川、後がなくなる。

スコア、展開とも前田やや有利というところだが、ここから立川が腹を括って加速。思い切り奥襟を叩くとやや虚を突かれた前田頭が下がり、巻き込みで展開を切る。主審的確に見極め、2分28秒前田に偽装攻撃の「指導」を宣告。

ここから立川明らかに動きが良くなり、奥襟を叩きながら大内刈、前田は払巻込でなんとか展開を切る。直後の組み際、両者噛みつくように奥襟を叩き合うと立川が一瞬相手を引き出しながら右大外刈の大技、前田尻餅の形で体勢を崩し、直後の3分56秒前田にも「指導2」。ここでスコアはタイとなる。

これをきっかけに追いついた側の立川に主導権が移り、続く展開は立川が引き手で襟を掴むなり飛び込みの右大内刈、前田が耐えると右大外刈に飛び込むという素晴らしい攻め。崩された前田もここで引いてはならじと突進し、再び激突するように奥襟を持ち合い、前田の大外刈がすっぽ抜けて「待て」。残り6秒には前田の奥襟襲来に合わせて立川が左大腰に飛び込む大技、前田は両足を天井に向けて吹っ飛ぶが勢いが付き過ぎて着地は腹ばい、ノーポイント。

両者まさしく意地を剥き出しの攻め合い。あっという間に本戦4分が終了して試合はGS延長戦へ。

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前田が立川の右大外刈を透かして浮落

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乗り上げるようにして投げ切り「技有」

立川が引き手で袖、釣り手で奥襟という完璧な組み手を作ると、前田は腰を突いて防御。ただし突進は止めず、立川の圧と前田の前進がかちあった形で双方場外に出でて「待て」。
立川が左大腰で振り回すと崩された前田は離れるなり奥襟で襲い掛かり、立川が伏せて「待て」。立川が片襟の右背負投に引き続き組み際の「一本大外」を呉れると前田吹っ飛んで伏せ「待て」。前田が奥襟を叩きながら払腰に飛びこめば立川左大腰をかち合わせ、前田が伏せて「待て」。

双方闘争心剥き出しの攻め合いだが、組み際に威力ある技を呉れる立川がやや優位、前田に「指導」が宣告されてもおかしくない情勢。前田は伏せた展開から相手の左を捉えて「腕緘返し」を狙うが、心得た立川は腰を滑り込ませた瞬間を狙って立ち上がりGS1分24秒「待て」。以後も立川が左大腰、前田が前に潰れようとすると回り込んでの右内股と攻めて攻勢、さらに強引な右大外刈に組み際の右大内刈、左大腰とアクセルを踏み続ける。前田「腹包み」を狙うなど寝技での対応を続けるが、「指導」失陥一歩手前の危うい綱渡りが続く。

それでも機を見て技を打ち返し、気持ちで引かなかった前田の粘りがGS3分40秒を越えたところで奏功。立川が釣り手で奥襟を掴むと、前田は腰を突いて防御。立川鋭く刈り足を振って右大外刈に打って出るが、突かれていたぶん間合いが遠く、空振り。前田見逃さず瞬間一歩間を詰め、体を立川の上体に預けて時計回りの浮落。立川が耐えると左内股の形で足を揚げて回旋をフォローし、劇的「技有」。

双方が譲らず攻め続けた好試合。大激戦は前田の勝利に終わった。普段「指導」や後の先の技での勝利が目立つ立川はこの試合は素晴らしく攻撃的、近来のベストゲームではなかったかと思われるが、皮肉にも結果だけが伴わなかった。

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52kg級上位入賞者。左から2位の立川莉奈、優勝の前田千島、3位の内尾真子と武田亮子。

【入賞者】
優 勝:前田千島(三井住友海上)
準優勝:立川莉奈(福岡大4年)
第三位:内尾真子(自衛隊体育学校)、武田亮子(龍谷大2年)

【グランドスラム大阪日本代表選手】
阿部詩(夙川学院高3年)、志々目愛(了徳寺学園職)、角田夏実(了徳寺学園職)、前田千島(三井住友海上)

前田千島選手のコメント
「三井住友海上に入社して4年目になるんですけど全然期待に応えることが出来ず、今日、勝つ姿を見せることが出来て本当に良かったと思っています。本当に、今日負けたら次はないという覚悟で戦ったので、勝てて良かったです。きょう1日絶対気持ちだけは負けない、絶対に勝ってやるんだという気持ちで戦いました。怪我で苦しんでいた時期もたくさんの方々が支えて下さったので、乗り越えられて良かったです。52kg級は国内のレベルが物凄く高いのですがやりがいもあるので、チャンスがある限り上を目指したいです。」

【準々決勝】
立川莉奈(福岡大4年)○合技[大外刈・横四方固](2:36)△大森生純(帝京高3年)
武田亮子(龍谷大2年)○肩固(1:08)△北川真奈(埼玉県警察)
前田千島(三井住友海上)○GS反則[指導3](GS5:19)△坪根菜々子(福岡大1年)
内尾真子(自衛隊体育学校)○反則[指導3](3:45)△古瀬舞(帝京大2年)

【敗者復活戦】
大森生純(帝京高3年)○反則[指導3](3:56)△北川真奈(埼玉県警察)
坪根菜々子(福岡大1年)○優勢[技有・大内刈]△古瀬舞(帝京大2年)

【準決勝】
立川莉奈(福岡大4年)○GS技有・一本背負投(GS0:33)△武田亮子(龍谷大2年)
前田千島(三井住友海上)○GS反則[指導3](GS0:16)△内尾真子(自衛隊体育学校)

【3位決定戦】
内尾真子(自衛隊体育学校)○肩固(1:29)△大森生純(帝京高3年)
武田亮子(龍谷大2年)○GS技有・大外返(GS2:14)△坪根菜々子(福岡大1年)

【決勝】
前田千島(三井住友海上)○GS技有・浮落(GS3:45)△立川莉奈(福岡大4年)

■ 57kg級・富沢佳奈が舟久保遥香を破り優勝、松本薫はまさかの初戦敗退
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57kg級1回戦、髙野綺海が松本薫から隅返「技有」

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髙野はGS延長戦で小外掛「技有」を追加して合技による一本勝ち

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57kg級準々決勝、舟久保遥香が柴田理帆から横四方固「一本」

(エントリー28名)

【決勝まで】

若手とベテランの有力選手入り乱れる大混戦階級。

全日本実業個人選手権で2位を獲得して優勝候補に挙げられていた松本薫(ベネシード)がまさかの初戦敗退。髙野綺海(東京学芸大3年)を相手に「技有」を取り合ってのGS延長戦で小外掛「技有」を奪われ、合技「一本」(GS5:05)で畳を去ることとなった。ロンドン五輪で金メダル、リオ五輪で銀メダルを獲得し3度目の五輪を目指していた松本だが、この時点で出場の可能性はほぼ潰えた。誰よりもその現実を知る松本は、試合後一線からの引退を示唆した。第2シードに置かれていた宇髙菜絵(コマツ)も2回戦で髙沢眞冴(JR東日本)に体落「技有」(GS4:15)で敗れ、ロンドン‐リオ期に階級を牽引したベテラン2名が揃って初戦で姿を消すこととなった。

決勝に勝ち上がったのは舟久保遥香(三井住友海上)と富沢佳奈(東海大1年)、ともに10月の世界ジュニアで日本代表を務めた2人。

世界ジュニア3連覇者の舟久保は初戦(2回戦)で水鳥友稀(帝京大3年)を「指導3」の反則(3:12)で下すと、準々決勝では柴田理帆(筑波大4年)に横四方固「一本」(GS1:36)で勝利。準決勝ではインターハイ王者の岡田恵里佳(立命館宇治高2年)を「指導3」の反則(3:35)で破り、危なげなく決勝進出を果たす。

一方の富沢は1回戦で大和久友佳(山梨学院大4年)に横四方固「一本」(GS1:19)で勝利。2回戦で明石ひかる(筑波大1年)をGS延長戦での小内刈「技有」(GS3:16)で下すと、準々決勝では髙沢眞冴(JR東日本)に体落「技有」で優勢勝ち。勝負どころと目された準決勝では石川慈(コマツ)を「指導3」の反則(GS1:58)で退けて決勝へと勝ち上がった。

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57kg級決勝、舟久保遥香が富沢佳奈に「腕緘返し」を狙う

【決勝】

富沢佳奈(東海大1年)○GS技有・体落(GS2:12)△舟久保遥香(三井住友海上)

右相四つ。全日本ジュニア決勝では富沢が「指導3」で勝利しているカード。
舟久保動き良く進退。ファーストコンタクトで引き手で袖、釣り手で奥襟を叩いて富沢の膝を屈すると、すぐさま相手の右腕を狙って下から「腕緘返し」。富沢が相手の膝を抑えて守るといったん立たせておいて再度絡みを深めて引込返で回す。富沢は一回転したところで肘を引き抜いて逃れ「待て」。

以後は双方が引き手で袖、釣り手で奥襟を叩く形を狙い、互いに引き手で相手の釣り手の袖を絞り合う非常に厳しい組み手争い。この攻防は拮抗も若干舟久保が有利、富沢は相手に奥襟を持たせたまま我慢する場面が増える。富沢が絞り合いにやや集中し過ぎた1分28秒、主審的確にその行動を見極め富沢にのみ片襟の「指導」。以後も絞り合いは続き、2分15秒には双方に消極的との咎で「指導」が宣告される。富沢は累積警告「2」で後がなくなってしまう。

ここで舟久保は3つ目の「指導」を目指してラッシュ。引き手で袖、釣り手で奥襟を得てガッチリ圧力を掛けると右小内刈による蹴り崩しを連発。富沢は敢えて過剰反応せず組み続けて我慢、小内刈と膝裏への右小外刈を打ち返して耐えるが、最後は富沢の右小内刈で下げられたまま畳を割って「待て」。経過時間は2分48秒、もしもう1度同様のシークエンスが続けば3つ目の「指導」宣告は確実というこの試合の分水嶺。

しかし富沢は前進することで状況を打開。釣り手の袖を折り込まれるも切り離しては前進し、舟久保に続けて山場を作ることだけは許さない。このまま本戦4分が終わり、試合はGS延長戦へ。

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富沢が舟久保から右体落「技有」

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延長も厳しい組み手争いが続くがどうやら富沢が息を吹き返し、奥襟を叩き合って拮抗。横変形の組み合いから舟久保は抜き上げるような右小外刈と小内刈で攻める。GS58秒、富沢が相手の姿勢を直す動きに合わせて右体落、舟久保をつんのめらせる。これをきっかけに陣地回復、奥襟を叩き合っておいての右小内刈で崩し、さらに引き手で一方的に袖を握ったまま舟久保を場外に送り出すことに成功。これを受けて主審はGS1分41秒舟久保に消極的との咎で「指導2」を宣告、スコアはここでついにタイとなる

続く展開、引き手で袖、釣り手で奥襟を得た富沢は前進。ここで釣り手で片襟を差して前に煽ると、舟久保は前進して対抗、右小内刈を放つ。これまで舟久保が幾度も放ってきた崩し技だが、富沢これを透かすなり軸足を回して後ろ捌きの右体落。舟久保の右小内刈は仕掛ける衝動の軽い牽制技だが、ゆえに後の先への備えが薄く、意識の外から襲って来た一撃に虚を突かれて体勢大きく崩れる。前に出た力を利用された形ということもあり、吹き飛ばされるように転がって「技有」。

足が良く出る舟久保の長所に罠あり。富沢、我慢の末にみごと得意技を決めて初の講道館杯制覇を成し遂げた。

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57kg級上位入賞者。左から2位の舟久保遥香、優勝の富沢佳奈、3位の石川慈と岡田恵里佳。

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57kg級準々決勝、富沢佳奈が髙沢眞冴を右払腰で豪快に放る

【入賞者】
優 勝:富沢佳奈(東海大1年)
準優勝:舟久保遥香(三井住友海上)
第三位:石川慈(コマツ)、岡田恵里佳(立命館宇治高2年)

【グランドスラム大阪日本代表選手】
芳田司(コマツ)、玉置桃(三井住友海上)、富沢佳奈(東海大1年)、舟久保遥香(三井住友海上)

富沢佳奈選手のコメント
「いままでずっと目指して来たタイトルですが、去年もベスト8で負けてしまい。ようやく目標に辿り着きました。世界ジュニアでは自分が準決勝で負けて決勝で舟久保選手と戦えなかったので、ここで戦って勝ち切りたいと思っていました。前半は押されていましたが、自分の持ち味はスタミナ。この試合も後半に力を出せたと思います。ここで勝てたことは自信になりました。トップを追って、頑張ります。」

【準々決勝】
舟久保遥香(三井住友海上)○GS横四方固(GS1:36)△柴田理帆(筑波大4年)
岡田恵里佳(立命館宇治高2年)○優勢[技有・小外掛]△柳楽祐里(JR東日本)
富沢佳奈(東海大1年)○優勢[技有・体落]△髙沢眞冴(JR東日本)
石川慈(コマツ)○GS技有・袖釣込腰(GS1:43)△小野彰子(ベネシード)

【敗者復活戦】
柴田理帆(筑波大4年)○大内刈(1:55)△柳楽祐里(JR東日本)
髙沢眞冴(JR東日本)○大内刈(1:46)△小野彰子(ベネシード)

【準決勝】
舟久保遥香(三井住友海上)○反則[指導3](3:35)△岡田恵里佳(立命館宇治高2年)
富沢佳奈(東海大1年)○GS反則[指導3](GS1:58)△石川慈(コマツ)

【3位決定戦】
石川慈(コマツ)○送襟絞(0:52)△柴田理帆(筑波大4年)
岡田恵里佳(立命館宇治高2年)○優勢[技有・巴投]△髙沢眞冴(JR東日本)

【決勝】
富沢佳奈(東海大1年)○GS技有・体落(GS2:12)△舟久保遥香(三井住友海上)

■ 63kg級・土井雅子が2連覇達成、能智亜衣美と津金恵はともに上位戦への進出ならず
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63kg級準決勝、幸田奈々が瀬戸口栞南を右内股に捉えるが、回りすぎと判断されポイントなし

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63kg級準決勝、土井雅子が飯野鈴々を「シバロック」で抑え込む

(エントリー34名)

【決勝まで】

グランドスラム大阪の代表枠「2」を巡って激戦打ち続いたこの階級は、序盤から有力選手が次々敗れる大荒れとなった。2回戦では第2シードの津金恵(パーク24)が高橋仁美(仙台大3年)に「指導3」の反則(GS2:46)で敗退。続く3回戦では第1シードに置かれた今年の全日本選抜体重別選手権王者・能智亜衣美(了徳寺学園職)が山本杏に電光石火の送襟絞「一本」(GS1:41)で敗れた。

いかにも講道館杯らしい荒れ模様、殺伐としたトーナメントを決勝まで勝ち上がったのは幸田奈々(帝京科学大3年)と昨年の王者・土井雅子(JR東日本)の2名。

幸田は強豪と連戦。初戦(2回戦)で太田晴奈(自衛隊体育学校)を崩上四方固「一本」(1:56)で下すと、3回戦では荒木穂乃佳(兵庫県警察)に小外刈「一本」(2:31)で勝利。準々決勝では大住有加(JR東日本)を大外刈「技有」で破り、準決勝では瀬戸口栞南(山梨学院大2年)を「指導3」の反則(GS0:18)で退けて決勝への勝ち上がりを決めた。

一方の土井は初戦(2回戦)で橋本悠樹(金沢学院大4年)に縦四方固「一本」(1:17)で勝利して大会をスタート。以降も3回戦で佐藤みずほ(三井住友海上)に横四方固「一本」(GS2:34)、準々決勝で佐藤史織(山梨学院大4年)に横四方固「一本」(2:35)、準決勝で飯野鈴々(鹿屋体育大4年)に「シバロック」で「一本」(GS2:17)と、得意の寝技での一本勝ちを4つ重ねて決勝進出を果たした。

能智を破った山本は準々決勝で瀬戸口に敗れたものの、敗者復活戦を勝ち上がり3位決定戦では飯野に横四方固「一本」(3:19)で勝利。52kg級、57kg級に続いて3階級で表彰台に立つこととなった。

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63kg級決勝、土井雅子が得意の寝技で幸田奈々を攻める

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土井が右大外刈

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ケンケンで追い込み捲るように投げ切り「技有」

【決勝】

土井雅子(JR東日本)○優勢[技有・大外刈]△幸田奈々(帝京科学大3年)

幸田、土井ともに右組みの相四つ。土井は引き手を引っ掴むなり両袖から強引な右袖釣込腰、幸田が崩れると動きを止めずに得意の横三角へと繋ぐ。幸田は腕をうまく使って土井の脚の差し込みを防ぎ、25秒「待て」。続く展開、土井のパワーをまともに受けてはならじと幸田巧みに相手の右に回り込んで引き手で袖を掴むが、土井は切るなり引き手で袖、釣り手で奥襟を掴んで今度は右大外刈。幸田が崩れ、土井はすかさず後帯を掴んでまたもや寝勝負を挑む。これは幸田が立ち上がって「待て」となったが、ここで主審は土井の優位を認めて幸田に「指導」を宣告。経過時間は48秒。

以降も戦況は土井有利。幸田はしっかり組み手の手順を踏んで優位を確保せんとするが、土井はすぐさま幸田の釣り手を切り落とし、両袖、あるいは引き手を折り込んでガッチリ奥襟を掴んで圧力。幸田が打開を期した右内股は土井が透かし、さらに奥襟を叩かせたまま試みた左大腰は土井があっという間に潰してこれも寝勝負に引きずり込む。1分強に渡り土井が力強い柔道で幸田の攻めを塗りつぶし、2分46秒土井に2つ目の「指導」。

しかしここからようやく幸田が陣地を取り返す。引き手で襟を持ったまま右一本背負投、さらに右小内刈での蹴り崩しを見せて土井を下げるとガッチリ奥襟を確保。頭の下がった土井は巴投で展開を切って回避するのがやっと。勢いを得た幸田は袖、奥と確実に手順を踏んで土井を追い詰めに掛かる。しかし、初めて幸田に流れが来たかと思われたこの時間帯に土井が一撃。奥襟を掴んだ幸田の釣り手を絞り落として両袖の膠着を作るなり、相手の右横腰付近で両手を片袖にまとめて右大外刈。ガクリと崩れた幸田は拘束のない左後隅への反転回避を試みるが、土井は刈り足を高く揚げ、前にジャンプしてフィニッシュの刈り込み。着地点を遠くに置いたことと絞り込みの強さで幸田は拘束から逃げられず、右体側を畳に押し付けられる形で落下、3分44秒「技有」。土井はそのまま右から袈裟固、幸田が脚を絡んで耐えると左に乗り変わって後袈裟固の形で抜こうとするが、幸田は土井の銅を抱える形で左に返し、そのまま逆転の抑え込みを狙う。今度は土井が相手に背を向けたまま脚を挟んで耐え、ここで終了ブザーが鳴り響く。土井が「技有」優勢で講道館杯2連覇を決めた。

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63kg級上位入賞者。左から2位の幸田奈々、優勝の土井雅子、3位の山本杏と佐藤史織。

【入賞者】
優 勝:土井雅子(JR東日本)
準優勝:幸田奈々(帝京科学大3年)
第三位:山本杏(パーク24)、佐藤史織(山梨学院大4年)

【グランドスラム大阪日本代表選手】
田代未来(コマツ)、鍋倉那美(三井住友海上)、土井雅子(JR東日本)、能智亜衣美(了徳寺学園職)

土井雅子選手のコメント
「連覇はもちろんですが、今日一番良かったのは決勝で投げて勝てたこと。寝技しかないと思われているので、うれしいの一言です(笑)。本当に後がない中で、しっかり結果を出せた。まず大阪のグランドスラムで優勝して国際大会に出て、最終目標は東京オリンピックです。」

【準々決勝】
瀬戸口栞南(山梨学院大2年)○GS縦四方固(GS1:21)△山本杏(パーク24)
幸田奈々(帝京科学大3年)○優勢[技有・大外刈]△大住有加(JR東日本)
飯野鈴々(鹿屋体育大4年)○大内返(1:31)△浦明澄(創志学園高3年)
土井雅子(JR東日本)○横四方固(2:35)△佐藤史織(山梨学院大4年)

【敗者復活戦】
山本杏(パーク24)○合技[小内刈・袖釣込腰](3:45)△大住有加(JR東日本)
佐藤史織(山梨学院大4年)○GS技有・大内刈(GS大内刈)△浦明澄(創志学園高3年)

【準決勝】
幸田奈々(帝京科学大3年)○GS反則[指導3](GS0:18)△瀬戸口栞南(山梨学院大2年)
土井雅子(JR東日本)○GS横四方固(GS2:17)△飯野鈴々(鹿屋体育大4年)

【3位決定戦】
山本杏(パーク24)○横四方固(3:19)△飯野鈴々(鹿屋体育大4年)
佐藤史織(山梨学院大4年)○GS一本背負投(GS1:09)△瀬戸口栞南(山梨学院大2年)

【決勝】
土井雅子(JR東日本)○優勢[技有・大外刈]△幸田奈々(帝京科学大3年)

※ eJudoメルマガ版11月19日掲載記事より転載・編集しています。

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