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近藤亜美復活の全試合一本勝ち、63kg級の好敵手対決はアグベニューがトルステニャク下す・グランドスラムパリ2019第1日女子4階級レポート

(2019年2月18日)

※ eJudoメルマガ版2月18日掲載記事より転載・編集しています。
近藤亜美復活の全試合一本勝ち、63kg級の好敵手対決はアグベニューがトルステニャク下す
グランドスラムパリ2019第1日女子4階級レポート(48kg級、52kg級、57kg級、63kg級)
→第1日女子プレビュー
→第1日女子全試合結果
→第1日女子速報ニュース

日時:日時:2019(平成31)年2月9日
場所:AccorHotels Arena of Bercy (フランス・パリ)

本文・総評:古田英毅
決勝戦評:小林大悟

■ 48kg級 近藤亜美復活の全試合一本勝ち、決勝はワールドマスターズで苦杯喫したクラスニキを一蹴
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48kg級メダリスト。左からディストリア・クラスニキ、近藤亜美、メロディー・ブガニ、ガルバドラフ・オトゴンツェツェグ。

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48kg級決勝、近藤亜美がディストリア・クラスニキから右小内刈「一本」。

(エントリー34名)

【入賞者】
1.KONDO, Ami (JPN)
2.KRASNIQI, Distria (KOS)
3.VAUGARNY, Melodie (FRA)
3.GALBADRAKH, Otgontsetseg (KAZ)
5.CLEMENT, Melanie (FRA)
5.GANBAATAR, Narantsetseg (MGL)
7.LIU, Ting (CHN)
7.KANG, Yujeong (KOR)

日本代表の近藤亜美(三井住友海上)が復活V。第1シードで対戦相手にも恵まれたこともあり、決勝までは順調そのもの。2回戦はラウラ・マルティネス=アベレンダ(スペイン)を1分22秒の小内刈「一本」、3回戦はグルカデル・センツルク(トルコ)を2分20秒崩袈裟固「一本」、準々決勝はメロディー・ブガニ(フランス)を僅か1分33秒で大内刈と袈裟固の合技「一本」、準決勝はモンゴルの新進選手ガンバータル・ナランツェツェグ(モンゴル)に粘られたがGS2分0秒「指導3」をもぎ取って勝利決定。

決勝は12月のワールドマスターズ決勝で屈辱の「秒殺負け」を喫したディストリア・クラスニキ(コソボ)とマッチアップ。激しい切り合いの末、1分27秒相手に釣り手の袖を絞らせたまま素晴らしいタイミングの右小内刈に飛び込み、鮮やか「一本」奪取。僅か16秒の大外刈「一本」に沈んだ前回対戦のリベンジを果たし、見事ビッグタイトルを手にすることとなった。

礼を終えた近藤は、堪えきれずに感涙。昨年5月のグランプリ・フフホトで優勝して以来、アジア大会(8月)、講道館杯(11月)、グランドスラム大阪(11月)、ワールドマスターズ(12月)と4大会連続でV逸、苦しい時期が続いていたがついに長いトンネルを抜けた。

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3回戦、近藤がグルカデル・センツルクから崩袈裟固「一本」

決勝は見事な投げを決めた近藤、勝ち上がりの中ではこれに加えて素早く、かつ確実な寝技が光っていた。確かに準決勝までの相手に一線級はいなかったが、立って投げ切れず、ならばと挑んだ寝勝負で体力を消費して精神的に閉塞していくというここ数か月の悪循環を思えばまったく次元の違う出来。それでももし決勝で敗れれば積み上げた勝利が全て「一線級以外にのみ力を発揮」というコインの裏の目に出てしまい、近藤も再び自身の力に疑念を持ちかねないところであったが、このクラスニキとの大一番に勝ったことで全てが「表」へ。代表争いに生き残り、国内、国外の一線級相手に勝ち切れるかどうかという次のステージに駒を進めることとなった。リオ五輪銅メダリスト・近藤復活の一日であったと総括しておいてよいだろう。

もう1人の日本代表・遠藤宏美(ALSOK)は3回戦敗退。2回戦のジュリア・フィゲロア(スペイン)という大きなハードルは乗り越えたが、続いてマッチアップしたこの日きっての強豪ガルバドラフ・オトゴンツェツェグ(カザフスタン)に躓いた。粘り強く試合を進めていたが3分4秒に小外刈で捩じり倒され「技有」失陥。状況を積み重ねるタイプの遠藤が一発大技狙いのパワーファイター・ガルバトラフにビハインドを負っては展望暗し。残り3秒、飛び掛かって右大内刈の形で刈り足を踏み出したところを浮技に捕まって一本負け。粘り強く踏みとどまっていた代表争いからは、これで実質脱落となった。

勝ったガルバトラフは準々決勝で地元の大声援に背中を押されたメラニー・クレモン(フランス)にGS延長戦「指導3」で、まさかの競り負け。それでも3位決定戦ではかつての後輩ガンバータル・ナランツェツェグ(モンゴル)を「指導3」の反則で下して表彰台を確保した。もう1人の3位にはクレモンとのこれも同国対決を制した新進のメロディー・ブガニ(フランス)が滑り込んだ。

準々決勝以降の結果と決勝戦評、日本代表選手全試合の結果は下記。

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久々優勝の近藤は堪えきれずに涙を見せる

【上位入賞者】
優勝:近藤亜美(日本)
2位:ディストリア・クラスニキ(コソボ)
3位:メロディー・ブガニ(フランス)、ガルバドラフ・オトゴンツェツェグ(カザフスタン)

【準々決勝】
近藤亜美○合技[大内刈・袈裟固](1:33)△メロディー・ブガニ(フランス)
ガンバータル・ナランツェツェグ(モンゴル)○合技[小内刈・内股](3:37)△リウ・ティン(中国)
ディストリア・クラスニキ(コソボ)○反則[指導3](3:14)△カン・ユジョン(韓国)
メラニー・クレモン(フランス)○GS反則[指導3](GS0:39)△ガルバドラフ・オトゴンツェツェグ(カザフスタン)

【敗者復活戦】
メロディー・ブガニ(フランス)○優勢[技有・裏投]△リウ・ティン(中国)
ガルバドラフ・オトゴンツェツェグ(カザフスタン)○合技[隅返・谷落](3:48)△カン・ユジョン(韓国)

【準決勝】
近藤亜美○GS横四方固(GS2:00)△ガンバータル・ナランツェツェグ(モンゴル)
ディストリア・クラスニキ(コソボ)○GS技有・隅落(GS1:25)△メラニー・クレモン(フランス)

【3位決定戦】
メロディー・ブガニ(フランス)○体落(0:26)△メラニー・クレモン(フランス)
ガルバドラフ・オトゴンツェツェグ(カザフスタン)○反則[指導3](3:57)△ガンバータル・ナランツェツェグ(モンゴル)

【決勝】
近藤亜美○小内刈(1:27)△ディストリア・クラスニキ(コソボ)
近藤、クラスニキともに右組みの相四つ。30秒にクラスニキが右大内刈を仕掛けると、近藤大きく崩れて振り向きながら畳に伏せる。ポイントが入ってもおかしくなく、かつ釣り手が背中側に残ってしまう危ない形だったが、投げ終わりの場所が場外だったことにも助けられて事なきを得る。ここからは激しい組み手争い。持っては切っての繰り返しの末に1分18秒に近藤が右払巻込を仕掛けて、「待て」となる。直後の1分27秒、近藤が組み際に相手の引き手を両手で抱き込み、相手が腰を引いたところに電光石火の右小内刈。重心が後ろに掛かっていたクラスニキは尻もちをつくようにして勢い良く後方に倒れ「一本」。久々の勝利に近藤は堪え切れず感涙。ワールドマスターズのリベンジを果たして優勝を飾った。

【日本代表選手勝ち上がり】

近藤亜美(三井住友海上)
成績:優勝


[2回戦]
近藤亜美○小内刈(1:22)△ラウラ・マルティネス=アベレンダ(スペイン)

[3回戦]
近藤亜美○崩袈裟固(2:20)△グルカデル・センツルク(トルコ)

[準々決勝]
近藤亜美○合技[大内刈・袈裟固](1:33)△メロディー・ブガニ(フランス)

[準決勝]
近藤亜美○GS横四方固(GS2:00)△ガンバータル・ナランツェツェグ(モンゴル)

[決勝]
近藤亜美○小内刈(1:27)△ディストリア・クラスニキ(コソボ)

遠藤宏美(ALSOK)
成績:3回戦敗退


[2回戦]
遠藤宏美○GS技有・肩車(GS0:41)△ジュリア・フィゲロア(スペイン)

[3回戦]
遠藤宏美△浮技(4:00)○ガルバドラフ・オトゴンツェツェグ(カザフスタン)

■ 52kg級 頂上対決は志々目が勝利、「指導3」もぎ取って角田を下す
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52kg級メダリスト。左から角田夏実、志々目愛、アストリーデ・ネト、オデッテ・ジュッフリダ。

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勝負どころの準々決勝、志々目愛がムンフバット・ウランツェツェグから大内刈「一本」

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準々決勝、角田夏実がアストリーデ・ネトから袖釣込腰「技有」

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決勝、GS延長戦で志々目が優位を取り始める

(エントリー36名)

【入賞者】
1.SHISHIME, Ai (JPN)
2.TSUNODA, Natsumi (JPN)
3.GNETO, Astride (FRA)
3.GIUFFRIDA, Odette (ITA)
5.MUNKHBAT, Urantsetseg (MGL)
5.ESTEO LINNE, Nina Estefania (ESP)
7.PIMENTA, Larissa (BRA)
7.VALENTIM, Eleudis (BRA)

2017年ブダペスト世界選手権の覇者・志々目愛(了徳寺学園職)と同大会の銀メダリスト角田夏実(了徳寺学園職)の日本代表2人が順当に決勝に進出、志々目が優勝を飾った。

両者の勝ち上がりはともに自身の長所を発揮し、かつ技術的な上積みをしっかり見せた好内容。特に代名詞の内股に加えて担ぎ技を自家薬籠中の物とした志々目の勝ち上がりは素晴らしく、この2つで次々「一本」をマークすると準決勝ではこの日の台風の目となった48kg級世界王者ムンフバット・ウランツェツェグ(モンゴル)も大内刈「一本」で撃退。一方の角田も初戦で得意の巴投を決めると以降は担ぎ技で印象的な投げを連発し、勝負どころの準々決勝では地元のアストリーデ・ネト(フランス)を袖釣込腰「技有」で退ける。こちらも周囲を全く寄せ付けずに決勝へと勝ち上がった。

決勝は予想通りの大接戦。拮抗が続き、ともに「指導2」を失って迎えたGS延長戦1分44秒角田にのみ「指導3」が与えられる形で勝負が決した。延長戦30秒過ぎから志々目は足技、差し込みの左内股と組み手が出来上がる前にまず攻め、攻めることで形を作りに出たが、角田はここで痛恨の出遅れ。スクランブル状態を強いられたときの手立ての差、ひとまず攻める形の有無という柔道的な組成が勝敗を分けた一番となった。

日本選手の力が抜きんでている52kg級だが、この日それぞれの対戦相手のレベルは準々決勝でオデッテ・ジュッフリダ(イタリア)、準決勝でムンフバットと戦った志々目の方が上。その意味では一種正当な結果であったともいえる。

ムンフバットと同じく48kg級から参戦したジョン・ボキョン(韓国)は不出来。初戦(1回戦)で無名のファイザ・モクダ(フランス)を相手に、僅か1分10秒腕挫十字固「一本」で敗れた。ムンフバットはこれまでも時折調整のために階級を上げてエントリーすることあったが、ジョンはこれがキャリア初の52kg級挑戦。この階級は韓国チームの「穴」であり、となれば国としての戦略が背後にある可能性もあるが、ムンフバットと違って比較的小柄なジョンがこの階級に適合するかどうかは未知数、少なくとも適応にはかなりの時間が掛かると思われる。続くグランドスラム・デュッセルフドルフも52kg級にエントリーしているようだが、この先継続しての参戦があるかどうかはまだ読めない情勢だ。

準々決勝以降の結果と決勝戦評、日本代表選手全試合の結果は下記。

【上位入賞者】
優勝:志々目愛 (日本)
2位:角田夏実(日本)
3位:アストリーデ・ネト(フランス)、オデッテ・ジュッフリダ(イタリア)

【準々決勝】
角田夏実○GS技有・袖釣込腰(GS1:24)△アストリーデ・ネト(フランス)
ニナ=エステファニア・エステオ=リンネ(スペイン)○横四方固(2:01)△ラリッサ・ピメンタ(ブラジル)
ムンフバット・ウランツェツェグ(モンゴル)○優勢[技有・袖釣込腰]△エレウディス・ヴァレンティン(ブラジル)
志々目愛○GS技有・内股(GS0:53)△オデッテ・ジュッフリダ(イタリア)

【敗者復活戦】
アストリーデ・ネト(フランス)○反則[指導3](3:43)△ラリッサ・ピメンタ(ブラジル)
オデッテ・ジュッフリダ(イタリア)○小外刈(3:18)△エレウディス・ヴァレンティン(ブラジル)

【準決勝】
角田夏実○合技[背負投・袖釣込腰](1:29)△ニナ=エステファニア・エステオ=リンネ(スペイン)
志々目愛○GS大内刈(GS0:21)△ムンフバット・ウランツェツェグ(モンゴル)

【3位決定戦】
アストリーデ・ネト(フランス)○反則[指導3](3:16)△ムンフバット・ウランツェツェグ(モンゴル)
オデッテ・ジュッフリダ(イタリア)○合技[一本背負投・送足払](2:14)△ニナ=エステファニア・エステオ=リンネ(スペイン)

【決勝】
志々目愛○GS指導3(GS1:44)△角田夏実
志々目、角田ともに左組みの相四つ。序盤は角田が巴投からの寝技、奥襟を得ての圧殺と優位に試合を進め、1分4秒には志々目に消極的の「指導」が与えられる。ここからは組み手の攻防が続き、1分43秒、志々目の引き手を嫌った角田にも「指導」。さらに2分36秒にも、両者に取り組まない咎による「指導」付与。以降も大きな動きはなく、ともに「指導2」を失った状態で試合はGS延長戦へともつれ込む。GS25秒、志々目がケンケンの左大内刈で追い込み、角田尻もちをつくように倒れ込むが、ポイント獲得には至らない。しかしこの攻防をきっかけに、志々目が足技を軸に前に出始める。志々目が角田を左内股で畳に這わせたGS1分44秒、主審は試合を止めて角田に消極的の「指導」を宣告。志々目が「指導3」反則で同門対決に勝利、優勝を飾った。

【日本代表選手勝ち上がり】

志々目愛(了徳寺学園職)
成績:優勝


[2回戦]
志々目愛○内股(2:31)△ファイザ・モクダ(フランス)

[3回戦]
志々目愛○背負投(1:47)△ユリア・カザリナ(ロシア)

[準々決勝]
志々目愛○GS技有・内股(GS0:53)△オデッテ・ジュッフリダ(イタリア)

[準決勝]
志々目愛○GS大内刈(GS0:21)△ムンフバット・ウランツェツェグ(モンゴル)

[決勝]
志々目愛○GS反則[指導3](GS1:44)△角田夏実(日本)

角田夏実(了徳寺学園職)
成績:2位


[2回戦]
角田夏実○合技[小外掛・巴投](2:16)△ルハグヴァスレン・ソソルバラム(モンゴル)

[3回戦]
角田夏実○反則[指導3](1:46)△タシアナ・セザル(ギニアビサウ)

[準々決勝]
角田夏実○GS技有・袖釣込腰(GS1:24)△アストリーデ・ネト(フランス)

[準決勝]
角田夏実○合技[背負投・袖釣込腰](1:29)△ニナ=エステファニア・エステオ=リンネ(スペイン)

[決勝]
角田夏実△GS反則[指導3](GS1:44)○志々目愛(日本)

■ 57kg級 出口クリスタが快勝、準々決勝では玉置桃から豪快「一本」
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57kg級メダリスト。左からジェシカ・クリムカイト、クリスタ・デグチ、玉置桃、キム・チス。

(エントリー37名)

【入賞者】
1.DEGUCHI, Christa (CAN)
2.KLIMKAIT, Jessica (CAN)
3.TAMAOKI, Momo (JPN)
3.KIM, Jisu (KOR)
5.LKHAGVATOGOO, Enkhriilen (MGL)
5.SILVA, Rafaela (BRA)
7.RECEVEAUX, Helene (FRA)
7.PAVIA, Automne (FRA)

ちょっと引いてしまうほど役者が揃った、まことに密度の高い豪華トーナメント。この中を、出口クリスタ(カナダ)が素晴らしい内容で優勝した。

2連続一本勝ちを経た出口は準々決勝で日本代表の玉置桃(三井住友海上)と対戦。グランドスラム大阪では理不尽な判定もあってGS延長戦「指導3」で敗れている相手だが、この日はその際苦い思いを味わされた先手掛け潰れ攻撃を決して許さず。僅か28秒、豪快な右大外刈「一本」で勝負を決めた。右相四つの玉置が左襟を掴んできた右釣り手を深く抱き込むように体を開き、釣り手を肘下に入れて体重を掛けた強烈な一撃。組み手の巧者・玉置も逃れる術が全くなかった。脳震盪を起こしたか、一撃を食った玉置はしばし立ち上がれず、ふらつきながらなんとか退場。単なる「一本」を超えるインパクト、出口の凄さを知らしめる一発だった。

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57kg級決勝、クリスタ・デグチがジェシカ・クリムカイトから大外落「技有」

出口は続く準決勝でマッチアップした夙川学院高3年のキム・チス(韓国)をまったく寄せ付けず。場外に押し込み続けると1分過ぎには巴投で腹ばいを強い、すかさず寝技を展開。激しく抵抗するキムの動きを巧みに無力化し続け、相手の大きな動きとは裏腹に手順の進行は一切止まらず。あっという間の崩袈裟固「一本」で勝負を決めた。決勝は代表争いのライバル、グランドスラム大阪を制して意気揚がるジェシカ・クリムカイト(カナダ)を相手に残り10秒に右大外落で「技有」奪取、文句なしの勝利で優勝を決めた。

優勝という結果はもちろんのこと、前回対戦で苦杯を喫した玉置からはしばし立ち上がれぬほどの強烈な一撃を決めての「一本」、そして代表を争うクリムカイトをしっかり投げてとこの日の出口が得た成果はまさに満点以上。単なる勝利に留まらず、出口やはり強しと内外に知らしめる充実の内容であった。

出口戦でなかなか立ち上がれずその後が心配された玉置であるが、迎えた敗者復活戦では強敵エレン・ルスヴォ(フランス)を素早く、かつしぶとい進退で置き去り。組み手争いに混ぜ込んでの左一本背負投「技有」に片手状態で相手の払巻込を待ち構えての隅落「技有」と立て続けに2度投げて、2分13秒余裕の合技「一本」。3位決定戦はこの日好調のモンゴルの2番手、ルハグヴァトゴー・エンフリーレン(モンゴル)を僅か55秒の崩袈裟固「一本」で破ってぶじ銅メダルを確保した。

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3位決定戦、キム・チスがラファエラ・シウバから大内刈「一本」

もう1人の3位入賞者は高校生のキム・チス。同国の一番手クォン・ユジョン(韓国)が3回戦でオトーヌ・パヴィア(フランス)に大外刈「一本」で敗れる中、準々決勝でルスヴォに一本勝ちするなどしぶとく勝ち上がってベスト4入り。準決勝は出口に屈したものの、3位決定戦ではリオ五輪王者ラファエラ・シウバ(ブラジル)を完璧な大内刈に捕まえ、GS1分0秒見事な「一本」。昨年のグランドスラム・パリ(3位)に続く、キャリア2度目のワールドツアー表彰台に登ることとなった。2回戦では第1シードのノラ・ヤコヴァ(コソボ)を「指導3」で破っており、まさに主役級の活躍であった。

準々決勝以降の結果と決勝戦評、日本代表選手全試合の結果は下記。

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優勝の出口クリスタ。2019年初戦を会心の勝利で飾った。

【上位入賞者】
優勝:クリスタ・デグチ(カナダ)
2位:ジェシカ・クリムカイト(カナダ)
3位:玉置桃(日本)、キム・チス(韓国)

【準々決勝】
キム・チス(韓国)○横四方固(2:55)△エレン・ルスヴォ(フランス)
クリスタ・デグチ(カナダ)○大外刈(0:31)△玉置桃
ジェシカ・クリムカイト(カナダ)○GS反則[指導3](GS3:09)△オトーヌ・パヴィア(フランス)
ルハグヴァトゴー・エンフリーレン(モンゴル)○GS技有・一本背負投(GS2:07)△ラファエラ・シウバ(ブラジル)

【敗者復活戦】
玉置桃○合技[一本背負投・隅落](2:13)△エレン・ルスヴォ(フランス)
ラファエラ・シウバ(ブラジル)○優勢[技有・内股透]△オトーヌ・パヴィア(フランス)

【準決勝】
クリスタ・デグチ(カナダ)○横四方固(1:30)△キム・チス(韓国)
ジェシカ・クリムカイト(カナダ)○GS反則[指導3](GS2:21)△ルハグヴァトゴー・エンフリーレン(モンゴル)

【3位決定戦】
玉置桃○崩袈裟固(0:55)△ルハグヴァトゴー・エンフリーレン(モンゴル)
キム・チス(韓国)○GS大内刈(GS1:00)△ラファエラ・シウバ(ブラジル)

【決勝】
クリスタ・デグチ(カナダ)○優勢[技有・大外落]△ジェシカ・クリムカイト(カナダ)
出口、クリムカイトともに右組みの相四つ。国内の代表を争うライバルとの直接対決とあって、両者気合い十分。「はじめ」が掛かるとともに勢い良く飛び出し、激しく組み合う。8秒に出口が奥を叩きながらの右内股で刈るように倒すが、これは相手の肩が着いておらずポイントには至らず。さらに29秒には出口が右大内刈、今度はクリムカイトが大内返で迎え撃ち、両者同体で畳に伏せる。スピード感のある攻防にこの後も激しい投げ合いが予想されたが、以降は両者ともに減速、袖の絞り合いによる膠着状態が続くこととなる。出口が足技、クリムカイトが担ぎ技とそれぞれ得意技を狙い合うもポイントがないまま試合は終盤へ。GS延長戦が見え始めた残り10秒、袖を絞り合った状態から出口が右大外刈を仕掛けると、クリムカイトこれを躱して反対に右大外刈を狙う。しかし、出口はそれをさらに躱して、釣り手を担ぎ技のように引き手側にまとめながら、右大外落に滑り込む。出口得意の低く仕掛けた一撃、「く」の字型に体が折れたクリムカイトは引き落とされるように体側から畳に落下して「技有」。「待て」が掛かった時点で残り時間は僅か1秒、そのまま試合が終わって出口の優勝が決まった。

【日本代表選手勝ち上がり】

玉置桃(三井住友海上)
成績:3位


[2回戦]
玉置桃○優勢[技有・隅落]△サラ=レオニー・シーシク(フランス)

[3回戦]
玉置桃○GS技有・隅落(GS1:13)△サイ・チー(中国)

[準々決勝]
玉置桃△大外刈(0:31)○クリスタ・デグチ(カナダ)

[敗者復活戦]
玉置桃○合技[一本背負投・隅落](2:13)△エレン・ルスヴォ(フランス)

[3位決定戦]
玉置桃○崩袈裟固(0:55)△ルハグヴァトゴー・エンフリーレン(モンゴル)

■ 63kg級 アグベニュー優勝、好敵手トルステニャクとの激戦制す
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63kg級メダリスト。左からティナ・トルステニャク、クラリス・アグベニュー、鍋倉那美、アンドレヤ・レスキ。

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アグベニューとトルステニャクの決勝戦

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アグベニューが左肩から突っ込み隅落「技有」。

(エントリー33名)

【入賞者】
1.AGBEGNENOU, Clarisse (FRA)
2.TRSTENJAK, Tina (SLO)
3.NABEKURA, Nami (JPN)
3.LESKI, Andreja (SLO)
5.BEAUCHEMIN-PINARD, Catherine (CAN)
5.NOUCHI, Aimi (JPN)
7.HORLAVILLE, Yasmine (FRA)
7.RENSHALL, Lucy (GBR)

地元の期待を一身に背負う絶対王者、世界選手権2連覇中のクラリス・アグベニュー(フランス)と、アグベニューがかつて苦手とした好敵手、リオデジャネイロ五輪の覇者ティナ・トルステニャク(スロベニア)が決勝で激突。比較的緩やかに始まったこの試合だが1分を過ぎるあたりから急加速。アグベニューの奥襟を叩いてのパワーファイトにトルステニャクの左一本背負投による機関車ラッシュと、これぞこの2人の戦いという、意地剥き出しの真っ向勝負が6分以上にわたって続くこととなる。GS2分4秒にはアグベニューの左大外刈、直後の2分15秒にはトルステニャクの左小内刈と互いにあわやポイントという鋭い技が飛び出し、試合の行方は予想がつかない。しかしGS延長戦が3分を過ぎようというところで、アグベニューが左小内刈。トルステニャクが反転して腹ばいに逃れると、ここが勝負と直感したアグベニューの目が光る。引き手を利かせて思い切り相手の体を乗り越え、畳に向かって飛び込みながらめくり返して隅落「技有」。これで勝負が決した。

畳に突っ込んだ自らの飛び込みのあまりの勢いゆえ、アグベニューは着地した左肩を抑えて悶絶。脱臼していてもおかしくない形であった。ここぞと見れば怪我のリスクを顧みず飛び込んで必殺の一撃。躊躇するようであればこの選手には勝てない、との肚の括りっぷりはさすがは絶対王者、そして王者にここまでの覚悟を強いるトルステニャクもまた見事であった。礼を終えるとトルステニャクはアグベニューと抱き合い、その右手を挙げて勝利を讃える。これぞ好敵手対決、見上手が揃ったベルシーの観客席からは万雷の拍手が送られていた。

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準決勝、トルステニャクが過去4敗の鍋倉那美を必死に攻める

日本期待の鍋倉那美(三井住友海上)は3位。順調に一本勝ちを重ねて勝負どころの能智亜衣美(了徳寺学園職)戦も「指導3」で勝ち抜けたが、準決勝では過去5戦4勝のトルステニャクを相手にGS延長戦に入ってから立て続けに3つの「指導」を失ってしまい、ここで本戦トーナメントから降りることとなった。トルステニャクは後隅に突進するように仕掛ける肩車など技種をしっかり増やしており、ここぞで見せる連続攻撃にもバイタリティと執念が溢れていた。展開のロジック上は鍋倉にも勝ちの目が十分あった試合に思われたが、何が何でもアグベニューと戦わんとする、そして苦手の日本選手を克服せんとするトルステニャクの執念と錬磨がこの試合は鍋倉に勝ったという印象だった。

失意の鍋倉であったが3位決定戦では立ち直りを見せ、強敵キャサリン・ブーシェミン=ピナード(カナダ)を相手に僅か29秒の大外刈「一本」で快勝。しっかり銅メダルを確保した。しかし率直に言って、ワールドマスターズ決勝でアグベニュー相手にGS延長戦まで粘ったあの善戦の「次の試合」としては物足りない結果。ぜひアグベニューとの戦いまで進んでライバルとしての座を確立して欲しかった。アグベニューとトルステニャクによる対抗心剥き出しの激戦と互いを認め合ったゆえの壮絶な結末には、一種他の選手に割って入りがたい特別な関係が感じられた。勝利後抱擁する2人の絵にある種の嫉妬を感じた日本のファンは筆者だけではないはずだ。鍋倉は銅メダルを確保して結果を残した体であるが、ワールドマスターズで作った上がり目ベクトルを鋭角のまま保持したとまでは言い難い。試合内容に関しても、問答無用の身体の強さは垣間見せたが、どうしても鍋倉でなければいけないというような「尖り」を見せるまでには至っていないと評しておきたい。メダル獲得によって代表争い最前線の権利を保持したまま、ひとまず最終予選である選抜体重別に向かう、というところが妥当な評ではないかと思われる。

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3位決定戦、アンドレヤ・レスキが能智亜衣美から大外巻込「一本」。

能智は不首尾。鍋倉相手に演じた「指導2」対「指導3」による競り負けはともかくとして、3位決定戦の一本負けは頂けない。相手は明らかに格下、ワールドツアーで優勝2度もここまで一線級にはただの1度も勝ったことがないアンドレヤ・レスキ(スロベニア)である。レスキは当面の敵鍋倉にも2連敗中、能智自身も前回対戦ではGS延長戦の末に小外刈「技有」で勝利しており、決して遅れを取るような相手ではない。気持ちが切れてしまっていたのか、それとも何かアクシデントがあったのか。誰もが認める強さを持ちながらキャリアのここぞでシナリオ展開を失う、長いスパンで能智が嵌り続けたこれまでの悪循環にまたもや陥った形。5位という結果と、国内ライバルとの直接対決における敗北。代表争いからは2歩後退と評せざるを得ない。厳しい1日であった。

準々決勝以降の結果と決勝戦評、日本代表選手全試合の結果は下記。

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地元大会で連覇を決めたアグベニュー。

【上位入賞者】
優勝:クラリス・アグベニュー(フランス)
2位:ティナ・トルステニャク(スロベニア)
3位:鍋倉那美(日本)、アンドレヤ・レスキ(スロベニア)

【準々決勝】
クラリス・アグベニュー(フランス)○GS技有・小内刈(GS0:14)△キャサリン・ブーシェミン=ピナード(カナダ)
アンドレヤ・レスキ(スロベニア)○GS技有・背負投(GS0:28)△ヤスミン・ホーラヴィレ(フランス)
ティナ・トルステニャク(スロベニア)○優勢[技有・一本背負投]△ルーシー・レンシャル(イギリス)
鍋倉那美○GS指導3(GS0:41)△能智亜衣美

【敗者復活戦】
キャサリン・ブーシェミン=ピナード(カナダ)○腕挫十字固(1:14)△ヤスミン・ホーラヴィレ(フランス)
能智亜衣美○GS反則[指導3](GS1:17)△ルーシー・レンシャル(イギリス)

【準決勝】
クラリス・アグベニュー(フランス)○合技[腰車・大外刈](2:41)△アンドレヤ・レスキ(スロベニア)
ティナ・トルステニャク(スロベニア)○GS反則[指導3](GS3:05)△鍋倉那美

【3位決定戦】
鍋倉那美○大外刈(0:29)△キャサリン・ブーシェミン=ピナード(カナダ)
アンドレヤ・レスキ(スロベニア)○大外巻込(2:46)△能智亜衣美

【決勝】
クラリス・アグベニュー(フランス)○GS技有・隅落(GS3:03)△ティナ・トルステニャク(スロベニア)
アグベニューが左、トルステニャクが両組み。トルステニャクは右構えで試合を開始する。まずは組み合っての力比べが続き、41秒、双方に消極的の「指導」。この両者の試合にしては静かな出だしであったが、ここから試合は急加速する。続く展開、アグベニューはいきなり襲いかかると奥襟を叩いて激しく煽り、相手が背を向けたところで谷落、しかしこれはトルステニャクがすぐに向き直って耐えてポイントにならず。一方のトルステニャクも全く退かず、独特の前屈のような動作で距離を取り、2度続けて左一本背負投を仕掛ける。以降も息つく暇もない技の応酬が繰り広げられるが、ポイントになるような一撃は生まれず、試合は「指導1」を取り合ったままGS延長戦へと突入する。延長戦でも激しい攻防は継続。まずはトルステニャクが左一本背負投を2発続けて山場を作り、GS39秒、アグベニューに消極的の「指導」。しかし、ここからアグベニューも盛り返し、GS1分26秒、相手の圧を嫌って伏せたトルステニャクに偽装攻撃の「指導」。再び両者のスコアが並ぶ。GS2分4秒にはアグベニューが左大外刈で相手を大きく崩すが、トルステニャク咄嗟に反応して腹這いで落ちてポイントなし。直後のGS2分15秒には反対にトルステニャクがあわやポイントかという左小内刈を見舞い、アグベニューすんでのところで身を翻して畳に伏せる。双方全く退かない真っ向勝負、観客のボルテージは最高潮に達する。GS3分間際、アグベニューが場外際で両袖の左小内刈。トルステニャクが振り向くようにして腹這いで落ちると、残った引き手を効かせて乗り上げるように捲り投げ、隅落「技有」を得る。熱戦ここに決着、あまりの技の勢いゆえにアグベニューは左肩を強打し、痛がりなかなか立ち上がることができない。なんとか開始位置に戻って礼を済ませると、観客からは割れんばかりの拍手が両者に送られる。女王アグベニューがライバル対決を制して2年連続5度目のグランドスラム・パリ優勝を飾った。

【日本代表選手勝ち上がり】

鍋倉那美(三井住友海上)
成績:3位


[2回戦]
鍋倉那美○合技[体落・大外刈](2:37)△シー・クイジュアン(中国)

[3回戦]
鍋倉那美○GS技有・小外掛(GS1:11)△チェ・ユンソル(韓国)

[準々決勝]
鍋倉那美○GS指導3(GS0:41)△能智亜衣美(日本)

[準決勝]
鍋倉那美△GS反則[指導3](GS3:05)○ティナ・トルステニャク(スロベニア)

[3位決定戦]
鍋倉那美○大外刈(0:29)△キャサリン・ブーシェミン=ピナード(カナダ)

能智亜衣美(了徳寺学園職)
成績:5位


[2回戦]
能智亜衣美○大外刈(0:46)△エミリア・カネルヴァ(フィンランド)

[3回戦]
能智亜衣美○合技[出足払・小外刈](1:29)△マエレ・ディサンティオ(フランス)

[準々決勝]
能智亜衣美△GS指導3(GS0:41)○鍋倉那美(日本)

[敗者復活戦]
能智亜衣美○GS反則[指導3](GS1:17)△ルーシー・レンシャル(イギリス)

[3位決定戦]
能智亜衣美△大外巻込(2:46)○アンドレヤ・レスキ(スロベニア)

※ eJudoメルマガ版2月18日掲載記事より転載・編集しています。

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