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新井千鶴が隙を見せずに優勝、大荒れ57kg級は伏兵クリムカイトがワールドツアー初制覇・グランドスラム大阪2018第2日女子3階級レポート

(2018年12月14日)

※ eJudoメルマガ版12月14日掲載記事より転載・編集しています。
新井千鶴が隙を見せずに優勝、大荒れ57kg級は伏兵クリムカイトがワールドツアー初制覇
グランドスラム大阪2018第2日女子3階級レポート(57kg級、63kg級、70kg級)
→女子第2日プレビュー
→女子第2日全試合結果
→男子第2日速報ニュース

大会日時:2018年11月24日
於:丸善インテックアリーナ大阪(大阪市)

文責:古田英毅/林さとる
撮影:乾晋也/辺見真也

■ 57kg級 玉置桃が出口クリスタと芳田司破るも結果は不首尾、伏兵クリムカイトにタイトル譲る
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57kg級上位入賞者。左から2位の玉置、優勝のクリムカイト、3位の舟久保とクォン。

(エントリー31名)

【入賞者】
1.KLIMKAIT, Jessica (CAN)
2.TAMAOKI, Momo (JPN)
3.FUNAKUBO, Haruka (JPN)
3.KWON, Youjeong (KOR)
5.DEGUCHI, Christa (CAN)
5.YOSHIDA, Tsukasa (JPN)
7.KIM, Jisu (KOR)
7.DORJSUREN, Sumiya (MGL)

【日本代表選手結果】
芳田司(コマツ)、玉置桃(三井住友海上)、富沢佳奈(東海大1年)、舟久保遥香(三井住友海上)

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準々決勝、芳田司がキム・チスから左大外刈「技有」

【決勝まで】

世界選手権を超えるラインナップが集った豪華トーナメントは、荒れた。

まずは強豪選手がぎっしり詰め込まれてビッグゲームが打ち続いた上側の山(プールA、プールB)から注目試合を拾っていくことでレポートを開始したい。

プールAの1回戦ではリオ五輪の覇者ラファエラ・シウバ(ブラジル)が敗退。実力差明らかなイヴェリナ・イリエワ(ブルガリア)を相手に1分53秒外巻込「技有」失陥、以後は偽装攻撃と首抜きで2つの「指導」を取り返したのみで4分間を終え、あっさり大会から姿を消した。調子の波の激しい選手だが、この日は完全にコインの裏の目が出た形。

このプールAを勝ち抜いてベスト4に勝ち上がったのは9月のバクー世界選手権を制したばかりの芳田司。2回戦からコマツの同僚レン・チェンリン(台湾)と戦わねばならぬ厳しい組み合わせだったが、総試合時間8分40秒を掛けながらも一方的に3つの「指導」を奪い、しっかり勝ち抜け。準々決勝は前戦でイリエワに勝利した夙川学院高のキム・チス(韓国)に粘られたが、GS延長戦開始早々の大外刈「一本」で振り切って準決勝進出を決めた。

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2回戦、出口クリスタがオトーヌ・パヴィアを圧倒

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2回戦、玉置桃がティムナ・ネルソン=レヴィーから右大内刈「一本」

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準々決勝、玉置桃が出口クリスタを巴投で攻める

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延長、玉置は出口の圧に耐えかねて掛け潰れを連発。

プールBでは出口クリスタ(カナダ)と玉置桃の優勝候補2人が準々決勝で激突。

9月のバクー世界選手権の銅メダリスト・出口はまず1回戦でアナ・ローザ(ドミニカ共和国)を1分26秒巴投「一本」で一蹴。2回戦では長い休養から復帰したオトーヌ・パヴィア(フランス)と対戦、2分28秒の間に「場外」「袖口を絞り込む」「場外」と一方的に3つの「指導」を奪って快勝、ぶじ玉置の待つプールファイナルへと勝ち上がった。パヴィアは初戦で実力者アメリー・シュトル(ドイツ)から得意の送足払で「技有」を得るなど実力の片鱗を見せたが、現状のトップである出口には敵わなかった。

玉置のここまでは戦いやすい組み合わせ。1回戦でレナ・フルカワ(フィリピン)を1分11秒横四方固「一本」で下し、2回戦はティムナ・ネルソン=レヴィー(イスラエル)を僅か14秒の大内刈「一本」で畳に沈めた。

トーナメント全体を通じた大きな山場と目された準々決勝は玉置、出口ともに右組みの相四つ。序盤は出口が体の力で圧し、玉置が素早い動きで組み際の袖釣込腰に巴投を繰り出すという展開が続く。出口が引き手で袖を掴み、釣り手で片襟を狙うと玉置は圧に負けて潰れるが、直後の2分16秒主審は出口の側に消極的との咎でやや意外な「指導」。以降は袖釣込腰に内巻込と左右に次々掛け潰れる玉置と、袖を折り込んで組み手の優位を作っては大技を仕掛ける出口という形で試合が進むが、互いの攻めがやや膠着した3分31秒双方に消極的との咎で「指導」。出口が「指導2」、玉置は「指導1」というスコアで、試合はGS延長戦に持ち込まれることとなる。
延長に入ると出口が加速、引き手で袖を先に得ては右大外刈を連発し、その一方で展開を切らんとした玉置が座り込みながら仕掛ける担ぎ技や巴投にはまったく揺るがず。玉置への「指導」があっておかしくない場面が長く続くが主審は動かず、しかし出口は動揺なく引き手を先に得ての右大内刈に右大外刈と、決着を狙って思い切った大技を連発。ガッチリ組まれた玉置がたまらず片手の右背負投に潰れたGS1分57秒、ようやく偽装攻撃の咎で玉置に「指導2」が与えられる。

戦況不利の中、スコア的にも後がなくなった玉置はやや動揺。出口が勝負を決めんとユラリと前進、先んじて袖を掴むと組み手と逆の左に巻き込み潰れて展開を切り、またもや袖を掴まれると出口の大内刈を巴投に切り返して潰れ、なんとか耐える。投げに掛かろうとした出口の圧に耐えられず刹那的に掛け潰れているように見受けられたが、ここから出口が腕緘を狙う中主審は「待て」を宣告。意外にも出口の側に消極的との咎で「指導3」を与えて試合を終わらせ、勝者は玉置となった。

外から見る限りでは投げに掛かっているのは出口の側で、玉置は袖を制され続けて為すすべなく、精神的に恐慌をきたして組み合う前に偽装攻撃を続けているように見えたのだが、結果は結果。しかしこの結果にかなりの疑問が感じられたということは、観戦したものの責として指摘しておきたい。この試合の主審は技量が高くなく、本戦でもインカム指示に従って「指導」を出そうとしたところがどちらに出すかを迷ったり、ゼスチャーを間違え掛けたりと終始自信なさげで挙動不審、技術も態度も競技者の信頼を得られるようなものではなかった。早く試合を終わらせねばとようやく主体的に動いたところが、攻守の機微を見極められずにもっとも大事な勝敗まで覆してしまうことになったのではないか。玉置対出口というビッグカードを捌くレベルの審判とは思えなかった。

IJFワールドツアーの審判団の技術はいったいに高いのだが、このグランドスラム大阪に連れて来たチームは必ずしもそうではなかった。選手の攻撃姿勢を引き出してエキサイティングな試合を演出するべく試合をコントロールすることがIJFジャッジの大方針であるはずだが、むしろ選手の持ち味を殺していると感じられる試合も目立ち、日本国内における「国際大会の審判員はレベルが低い」との誤解を助長させるような場面が頻発。この歓迎すべからぬ傾向は以後加速し、日本選手が絡む試合で次々クローズアップされていくことになるのだが、その最初に見えた綻びがこの一番であった。

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3位決定戦、舟久保遥香が出口クリスタの立ち上がり際に引込返、「一本」。

本戦から脱落した出口は3位決定戦に辿り着いたが、舟久保遥香の寝姿勢からの引込返を技の効果ありと判定され、映像チェックの結果「一本」で敗退。これは「寝姿勢から立ち姿勢に移行しての投技を認める」という新ルールの現在もっとも議論かまびすしい、危うい条項に引っ掛かってしまった形であった。出口は主審の技量の低さに泣かされ、ルール変更の最前線に引っ掛かってといずれも不本意な形で1日で2回負けてしまったわけだが、おまけに決勝では自分に勝った玉置が、これまで自分が直接対決で叩きのめして来たカナダの代表争いのライバル・クリムカイトにタイトルを譲ってしまい散々な大会。2018年度最悪の1日だったのではないだろうか。

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準決勝は一貫して芳田司が攻勢、「指導2」をリード。

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終盤、玉置桃の隅返が炸裂「技有」。

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ほとんど時間なく試合終了、逆転負けの芳田は呆然。

続く準決勝では新世界王者・芳田司と、選抜体重別の覇者にしてアジア大会の金メダリスト・玉置桃というビッグゲームが組まれた。

この試合は芳田が左、玉置が右組みのケンカ四つ。引き手争いのさなか、組み手の粘りが身上の玉置が相手の手首を掴んで抑えてしまい、35秒玉置に手首を握った咎による「指導」。以降試合は一貫して芳田ペース、左内股で潰すなり寝技で攻め続け、さらに浅く左内股を入れると潰れた玉置に引込返を狙う。玉置は手先を絡ませて間合いを取り、組み際の技に活路を求めるがいかんせん散発で主導権は取れず。まともに組み合っては不利、かつ手数が必要と見た玉置は「ケンカ四つクロス」の変則組み手で一方的に組みに掛かり、これが果たせないと見るといったん立ち戻るがこの際自身の襟を握って隠す形を続けてしまい、主審は「自分の襟を手で覆って相手に組ませない」咎で玉置に2つ目の「指導」を宣告。経過時間は1分57秒、玉置早くも後がなくなる。

芳田は小外刈で伏せさせて寝技を挑み、以降も快調。玉置は巴投に左一本背負投と組み際の技を繰り出すが散発で効かず、芳田はいずれも素早く潰しては引込返で攻める。このまま試合が続けばどこかの段階で玉置に3つ目の「指導」が与えられる可能性が高いと思われたが、本戦終了直前の3分49秒に様相一変。玉置が釣り手を奥襟に置き、片手のまま右大内刈を引っ掛ける。芳田が左小外刈の形で引っ掛け戻して玉置はそのままベシャリと潰れた、と思いきや玉置そのまま腰を沈めて隅返に連絡。芳田が小外刈で内側に足を動かしたタイミングに玉置の滑り込みがかち合い、同時に作用足の高い蹴り上げが芳田の股中を襲う。芳田の引っ掛け戻し、玉置の滑り込み、玉置の作用足の蹴り上げ全てがほぼ同一のタイミング。意表を突かれた芳田玉置の足先を支点にクルリと回って畳に落下「技有」。

もはや残り時間ほとんどなし。伏せた芳田の背中に玉置が食いついたまま残りの10秒余が過ぎ去り、タイムアップ。玉置は奇襲技一発で大枠の不利を逆転、「技有」優勢でみごと決勝進出を決めることとなった。

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3位決定戦、芳田の「ボーアンドアローチョーク」からの展開が反則と判断されてしまう。

3位決定戦に回った芳田はクォン・ユジョン(韓国)を相手にまさかのダイレクト反則負け。「ボーアンドアローチョーク」からの展開で相手の体が反った形が「相手の頸や脊椎、脊髄等に危害を及ぼした」との条項適用を受けてしまった。クォンの「痛い」とのアピールが真実かどうかはともかく、これがルール上指定されている危険な形であることは事実。アジア大会での王子谷剛志対キム・スンミン戦同様、IJFがナーバスになっている危うい「形」を、反則スレスレの技術が得意な韓国選手相手に仕掛けることのリスクの高さを再び知らしめた一番であった。

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3回戦、ジェシカ・クリムカイトが富沢佳奈から右大内刈「技有」

下側の山(プールCD)では、ジェシカ・クリムカイト(カナダ)が快進撃。1回戦ではウィズネイビ・マチャド(ベネズエラ)を僅か19秒の袖釣込腰「一本」で退け、2回戦では日本代表の富沢佳奈から大内刈「技有」による優勢で勝利、そして準々決勝では第2シードの2017年度世界王者ドルジスレン・スミヤ(モンゴル)を延長戦の末に「指導」3つを奪って退ける。

クリムカイトは準決勝で舟久保遥香とマッチアップ。舟久保はここまでテルマ・モンテイロ(ポルトガル)を横四方固、テレザ・シュトル(ドイツ)を崩袈裟固、韓国の1番手クォン・ユジョン(韓国)を引込返と横四方固の合技「一本」と持ち味をしっかり発揮して快調だったが、この試合はクリムカイトに苦杯。舟久保が「指導1」を失って迎えた延長戦、GS1分41秒双方に「指導」が与えられてスコアが煮詰まると、直後クリムカイトが背負投。舟久保これに耐えられず「技有」を失って勝敗が決した。クリムカイトはワールドツアー4度目の決勝進出、初めてのタイトルを狙う。

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決勝、クリムカイトは粘り強い組み手で試合を開始

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クリムカイトが右背負投

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振り回された玉置が側面から落ちて「技有」

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ビハインドの玉置組み手に時間を掛けられてしまい、反撃が遅れる。

【決勝】

決勝は玉置、クリムカイトともに右組みの相四つ。2017年グランドスラム東京では玉置が「指導3」で勝利しているカード。
クリムカイトは釣り手で玉置の左袖を得て右構え、切られると今度は引き手で右袖を握って左構えとまず玉置を封じるところから試合を開始。ここから釣り手で前襟を持つと、玉置が間合いを整えようと一瞬動きが止まったところに右背負投を入れる。右前隅に振られた玉置横倒しに倒れてしまい、映像チェックの結果これに「技有」が与えられる。玉置にとってはかなり厳しい判定。

ビハインドを負った玉置はすぐさまラッシュを掛けるべきであったが、組み手で粘るクリムカイトを前にまず形を作ることに腐心してしまい停滞。1分37秒には逆に消極的との咎で「指導」を受けてしまう。ここからようやく突進、2分2秒には偽装攻撃の咎による「指導」1つを取り返すが、以降も攻めは散発でなかなか技を纏められない。両袖の右大外刈に内股巻込と2連発した直後の3分11秒、ようやくクリムカイトに「取り組まない」咎による「指導2」。

あと1つの「指導」をもぎ取るべく玉置は前に出るが、粘るクリムカイトは手先を絡ませてこれを押しとどめる。審判が「待て」を掛け、クリムカイト、あるいは両者への「指導」が期待されたが、下された判断は玉置1人に対する「取り組まない」咎による「指導」付与。

場内に意外の声がこだまする中、玉置必死に攻めるもここでタイムアップ。結果、「技有」優勢でクリムカイトの勝利が決まった。クリムカイトはワールドツアー初優勝、日本勢による今大会の連続金メダル奪取は、第2日目最初の階級で潰えることとなった。

出口に勝ち、芳田をも退けた玉置であったが、微妙な判定と奇襲技で拾ったというそれぞれの内容に鑑みれば、評価されるには優勝という誰の目にも明らかな結果が必要であったはず。決勝ではアジア大会で証明したはずの「追いかける力」の欠如を露呈、決め技に欠けるというかねて指摘されていた弱点が払拭出来ていないことを見せつけてしまった。

しぶとい組み手、そして組み際の担ぎに捨身技という、相手を攪乱する泥臭いスタイルが身上の玉置だが、今回は出口と芳田というメダリスト2人に勝ちながらワールドツアー未勝利のクリムカイトに負け、試合ばかりか大会の様相までを掻き混ぜて終わったという恰好。労に見合った成果を得られなかった大会、厳しい言い方をすれば、徒にカナダの代表争いを揉めさせただけの大会であった。57kg級世界の序列からいえば、クリムカイトに負ける選手に日本代表は務まらない。残念ながら評価を上げた大会とは言いがたいだろう。

玉置にはすぐさま捲土重来の機会あり。僅か3週間後にワールドマスターズというチャンスが残されている。奮起に期待したい。

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57kg級優勝のジェシカ・クリムカイト

【上位入賞者】
優 勝:ジェシカ・クリムカイト(カナダ)
準優勝:玉置桃(三井住友海上)
第三位:舟久保遥香(三井住友海上)、クォン・ユジョン(韓国)

ジェシカ・クリムカイト選手のコメント
「優勝出来てうれしい。父が柔道をやっていた影響もあって、4歳から町道場で柔道を始めました。来年1月からカナダの大学に行くことが決まっていています。出口クリスタは目標でありライバル。いい刺激になっています。これからは、もっといろんな足技を使えるようになりたいです。」

【日本代表選手結果】
玉置桃(三井住友海上):2位
舟久保遥香(三井住友海上):3位
芳田司(コマツ):5位
富沢佳奈(東海大1年):2回戦敗退

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1回戦、富沢佳奈がフェン・シュエメイから右内股「技有」

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1回戦、レン・チェンリンがユリコ・ワラシハから左内股「一本」

【1回戦】

レン・チェンリン(台湾)○内股(0:26)△ユリコ・ワラシハ(タイ)
イヴェリナ・イリエワ(ブルガリア)○優勢[技有・外巻込]△ラファエラ・シウバ(ブラジル)
キム・チス(韓国)○反則[指導3](3:30)△アナイリス・ドロビグニー(キューバ)
クリスタ・デグチ(カナダ)○巴投(1:26)△アナ・ローザ(ドミニカ共和国)
オトーヌ・パヴィア(フランス)○優勢[技有・送足払]△アメリー・シュトル(ドイツ)
ティムナ・ネルソン=レヴィー(イスラエル)○崩上四方固(3:42)△ハイオーネ・エキソアイン(スペイン)
玉置桃○横四方固(1:11)△レナ・フルカワ(フィリピン)
ドルジスレン・スミヤ(モンゴル)○GS片手絞(GS0:34)△パン・シュンイン(台湾)
メグミ・デルガド(フィリピン)○反則[指導3](2:00)△ルシャナ・ヌルジャオワ(トルクメニスタン)
ジェシカ・クリムカイト(カナダ)○袖釣込腰(0:19)△ウィズネイビ・マチャド(ベネズエラ)
富沢佳奈○合技[内股・横四方固](4:00)△フェン・シュエメイ(中国)
テレザ・シュトル(ドイツ)○崩上四方固(1:58)△レウン・ポサム(香港)
舟久保遥香○横四方固(2:07)△テルマ・モンテイロ(ポルトガル)
クォン・ユジョン(韓国)○優勢[技有・一本背負投]△ザブリナ・フィルツモザー(オーストリア)
ミナ・リベール(ベルギー)○肩車(4:00)△セヴァラ・ニシャンバエワ(カザフスタン)

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準々決勝、舟久保遥香がクォン・ユジョンから横四方固で2つ目の「技有」

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敗者復活戦、出口クリスタがキム・チスから裏投「技有」

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敗者復活戦、クォン・ユジョンがドルジスレン・スミヤから左大内刈「技有」

【2回戦】

芳田司○GS反則[指導3](GS4:40)△レン・チェンリン(台湾)
キム・チス(韓国)○GS技有・大内刈(GS0:43)△イヴェリナ・イリエワ(ブルガリア)
クリスタ・デグチ(カナダ)○反則[指導3](2:28)△オトーヌ・パヴィア(フランス)
玉置桃○大内刈(0:14)△ティムナ・ネルソン=レヴィー(イスラエル)
ドルジスレン・スミヤ(モンゴル)○合技[背負投・上四方固](1:59)△メグミ・デルガド(フィリピン)
ジェシカ・クリムカイト(カナダ)○優勢[技有・大内刈]△富沢佳奈
舟久保遥香○崩袈裟固(1:55)△テレザ・シュトル(ドイツ)
クォン・ユジョン(韓国)○合技[大内刈・一本背負投](3:13)△ミナ・リベール(ベルギー)

【準々決勝】

芳田司○GS大外刈(GS0:19)△キム・チス(韓国)
玉置桃○GS反則[指導3](GS2:37)△クリスタ・デグチ(カナダ)
ジェシカ・クリムカイト(カナダ)○GS反則[指導3](GS1:06)△ドルジスレン・スミヤ(モンゴル)
舟久保遥香○GS合技[引込返・横四方固](GS1:21)△クォン・ユジョン(韓国)

【敗者復活戦】

クリスタ・デグチ(カナダ)○GS技有・裏投(GS0:13)△キム・チス(韓国)
クォン・ユジョン(韓国)○合技[大内刈・小外掛](2:59)△ドルジスレン・スミヤ(モンゴル)

【準決勝】

玉置桃○優勢[技有・隅返]△芳田司
ジェシカ・クリムカイト(カナダ)○GS技有・背負投(GS1:56)△舟久保遥香

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3位決定戦、舟久保の引込返「一本」(別角度)

【3位決定戦】

舟久保遥香○引込返(0:35)△クリスタ・デグチ(カナダ)
両者右組みの相四つ。出口は右出足払を絡ませながら奥襟を叩き、かわした舟久保は奥襟を叩き返して大内刈で対抗。
続いてお互いが奥襟を盛った圧力の掛け合い、出口はやや頭の下がったところから舟久保の踵を引っ掛ける大外刈を見舞う。ここから寝勝負となり、舟久保は出口の胴を抱えて引込返、出口が伏せると再度引込返でクルリと回し縦四方固を狙うが、主審は2度目の引込返に対して「一本」を宣告。試合時間35秒、唐突に試合が終わってしまう。
映像チェックを経てもこの結果は覆らず。現行ルールでは寝姿勢から立ち姿勢に戻っての技の効果が認められ、寝姿勢の定義はいずれかの膝が畳に着いていること。出口が立ち上がろうとして両膝を畳から離していたため、ルール上立ち姿勢とみなされた可能性が高い。舟久保は銅メダル獲得。カナダの2番手クリムカイトが決勝まで進む中、実力に遥かに勝るはずの出口は失意の5位に沈んだ。

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クォンは痛みを訴えて芳田の反則をアピール。

クォン・ユジョン(韓国)○反則[DH](3:59)△芳田司
※相手の頸や脊椎、脊髄等に危害を及ぼしたことによる

左相四つ。両者横にずれての袖の絞り合いから試合が開始される。組み際の技で展開を作ろうとするクォンに、相手の伏せ際に寝技を狙う芳田という構図で試合が進む。3分40秒、クォンが右背負投で伏せると芳田はすぐさま引き込んで寝勝負。「ボーアンドアローチョーク」の不発から一度横に引き込み、相手の足を掴もうと体を起こしたところでクォンの体が背中方向にぐにゃりと曲がる。クォン激しく痛がりなかなか立ち上がれず。3分59秒、芳田にダイレクト反則が宣せられて試合は終了となった。

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玉置は出口、芳田を破る殊勲も決勝で苦杯。優勝には手が届かなかった。

【決勝】

ジェシカ・クリムカイト(カナダ)○優勢[技有・背負投]△玉置桃
右相四つ。クリムカイトは釣り手で玉置の左袖を得て右構え、切られると今度は次いで引き手で右袖を握って左構えと玉置を封じるところから試合を開始。ここから釣り手で前襟を持つと玉置が間合いを整えようと一瞬動きが止まったところに右背負投。右前隅に振られた玉置横倒しに倒れる。いったんはスルーされたが、クリムカイトの横三角から玉置が腕挫十字固に逆襲、「待て」が掛かったところで映像チェックが終わった模様。主審はこの技に「技有」を宣する。開始28秒、玉置早くもビハインド。

クリムカイトは引き手で袖を抑え、グイとこれを玉置の右横腰付近に落として対峙。玉置残る釣り手の来襲を手先で争い、さらに袖を抑えて両袖で絞ってと形を作ることに時間を費やしてしまい、ビハインドにも関わらず攻められず、逆にクリムカイトに右背負投の2連発を許す。1分37秒には玉置に消極的との咎で「指導」。

玉置続くシークエンスは突進、片袖の左袖釣込腰から前に出て後帯を引っ掴むとクリムカイト慌てて伏せて逃げ、2分2秒偽装攻撃の咎でクリムカイトにも「指導」。玉置いよいよ逆襲開始、しかし明確に詰めるルートがなくその攻めはどうしても刹那的、なかなか技がまとまらない。両袖の右大外刈、両袖の内股巻込と続けて技を入れた3分11秒、ようやくクリムカイトに「取り組まない」咎による「指導2」。あと1つの「指導」で逆転勝利となる玉置前に出て右背負投を放つが前段の技同様焦って作りがなく、力みゆえかスピードも足りず。結果自ら畳に潰れ、クリムカイトに寝技での時間消費を許すことになる。ここで掛かった「待て」の時点で残り時間は24秒。「はじめ」が掛かると玉置走って前へ。なんとか守りたいクリムカイト手先を絡ませて組ませまいと押しとどめ、ここで「待て」。クリムカイトに3つ目の反則付与かと思われたが、主審なんと「取り組まない」咎で玉置に「指導2」。場内を意外のどよめきが包む中玉置走り寄って右への払巻込、さらに振り回してクリムカイトを畳に伏せさせるがここでタイムアップ。「技有」優勢でクリムカイトの勝利が決まった。

■ 63kg級 予選ラウンドで海外の強豪2人下した土井雅子が優勝、表彰台は日本勢が占める
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63kg級上位入賞者。左から2位の鍋倉、優勝の土井、3位の能智と田代。

(エントリー25名)

【入賞者】
1.DOI, Masako (JPN)
2.NABEKURA, Nami (JPN)
3.NOUCHI, Aimi (JPN)
3.TASHIRO, Miku (JPN)
5.GWEND, Edwige (ITA)
5.TRSTENJAK, Tina (SLO)
7.DEL TORO CARVAJAL, Maylin (CUB)
7.BAZYNSKI, Nadja (GER)

【日本代表選手】
田代未来(コマツ)、鍋倉那美(三井住友海上)、土井雅子(JR東日本)、能智亜衣美(了徳寺学園職)

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準決勝、土井雅子がティナ・トルステニャクから崩上四方固「一本」

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2回戦、鍋倉那美がリア・ルドヴィックから右内股「技有」

【決勝まで】

国際的な序列からすれば第1シードのティナ・トルステニャク(スロベニア)と第2シードの田代未来が2強、追うのがマルティナ・トライドス(ドイツ)ということになるが、日本選手が4名参加しているこの大会にはその磁場が通用せず。

決勝に進んだのは、土井雅子と鍋倉那美。

講道館杯王者、前週グランプリ・ハーグを戦ったばかり(3位)の土井は1回戦でチョイ・ユンソル(韓国)を1分25秒崩上四方固「一本」で下し順調な滑り出し。山場の2回戦はトライドスを2分26秒「指導3」の反則で退け、準々決勝ではエドウィッジ・グウェン(イタリア)をこれも得意の崩上四方固に抑え込んで一蹴、わずか1分46秒で一本勝ち。迎えたトルステニャクとの準決勝も横三角から崩上四方固というもっとも得意なパターンで執拗に攻め、GS延長戦3分44秒ついにこの技に捉えて抑え込み「一本」。みごと決勝へと駒を進めることとなった。

アジア大会の金メダリスト・鍋倉は第3シード配置。2回戦でリア・ルドヴィック(スロベニア)を21秒の内股「一本」に仕留め、準々決勝ではナジャ・バジンスキー(ドイツ)から1分29秒横四方固「一本」と対戦相手にも内容にも相当余裕のある勝ち上がり。唯一最大の勝負どころとなった準決勝は能智亜衣美を「指導1」対「指導3」の反則累積差で退けて、しっかり決勝へと駒を進めた。

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準々決勝、能智亜衣美が田代未来の釣り手の袖を絞る

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3位決定戦、田代未来がティナ・トルステニャクから払腰「技有」

バクー世界選手権で素晴らしい柔道を見せて決勝まで進んだ序列一番手・田代未来は、準々決勝で能智に敗北。ともに「指導2」で迎えた2分2秒、能智に袖を掴まれた組み手を引っ張り込み、腰の裏側まで持ってきて切った動作が「脚・膝を使って組み手を切り離した」と認識されて、「指導3」失陥。意外な形での敗戦となってしまった。世界で成績を残すも国内で追いすがられて一番手の座がなかなか確定出来ない苦しいスパイラルは、少なくともあと1シーズンこれで継続することとなる。

田代は敗者復活戦を「一本」で勝ち上がり、メダルを掛けた3位決定戦ではトルステニャクと対戦。非常に厳しい引きであったわけだが、総試合時間9分21秒の大熱戦の末に左払腰で完璧に放り投げる。勢いがつきすぎて「技有」となったが、腰技でトルステニャクを投げつけるという結末はインパクト十分。優勝はならなかったが、メダル獲得という結果と投げ一撃の強さを見せつけたという内容で、なんとか次回に道を繋げた恰好。

鍋倉に準決勝で敗れた能智も、3位決定戦でグウェンを片手絞「一本」に仕留めてしっかり銅メダルを確保した。

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決勝、土井が大外刈で攻めこむ。

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土井は得意の横三角を連発。執拗に攻める。

【決勝】

決勝は土井、鍋倉ともに右組みの相四つ。序盤から厳しい組み手争い、絞り合いが続く。なかなか試合が動かぬまま時計の針は刻々進み、両袖を絞りあって膠着した3分6秒には双方に袖を絞り込んで防御した咎による「指導」。ここからやや試合が動き、土井が右釣込腰、応じた鍋倉が右大外刈と打ち合ったところから試合は寝勝負へ。土井が得意の横三角から縦四方固を狙うが、抑え込みが出来上がり掛けたところで終了ブザー、試合はGS延長戦へもつれ込むこととなる。

延長は土井が右大外刈で崩しては横三角で襲い掛かる攻防が幾度も続く。鍋倉立ち技ではやや後手を踏むものの寝勝負では逆襲に転じて展開は一進一退。GS1分56秒、双方に防御姿勢の咎で「指導2」。以降も互いに相手に崩れが見えるとすかさず寝勝負という絵が続いてまったく展開に差がつかない。
GS2分38秒からの攻防で土井が右小外刈から右内股巻込に潰れると、審判焦れたか突如試合を止め、鍋倉に消極的との咎で3つ目の「指導」付与。勝った土井、負けた鍋倉ともに一瞬呆然も、これで試合が決することとなった。

判定はやや性急、唐突の感は否めず。とはいえ試合開始から6分半にわたって膠着が続いたこれまでの展開を考えれば、主審が僅かな差を拾って勝敗を決めに掛かることはありえる事態である。

日本勢の潰し合いが続いた大会であったが、結果としてはトライドスとトルステニャクの外来2強豪を倒した土井が優勝を浚うという、一種論理的な結果に収着した。

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63kg級優勝の土井雅子

【上位入賞者】
優 勝:土井雅子(JR東日本)
準優勝:鍋倉那美(三井住友海上)
第三位:能智亜衣美(了徳寺学園職)、田代未来(コマツ)

土井雅子選手のコメント
「やっとこのタイトルを手に入れました。嬉しいです。初戦から強い選手ばかりだったのですべての試合を決勝戦と思って全力で戦いました。ただ、決勝は結果として勝ちましたが、寝技で抑え込むチャンスを何度も逃してしまったことが悔しいです。これで終わりではなく、ここからが始まり。またイチからやり直して、再スタートを切りたいです。きょうは広い会場の試合でしたが応援の声、とくにわが社の応援の声がとても良く聞こえて凄く力になりました。あらためてお礼を言いたいです。」

【日本代表選手結果】
土井雅子(JR東日本):優勝
鍋倉那美(三井住友海上):2位
田代未来(コマツ):3位
能智亜衣美(了徳寺学園職):3位

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2回戦、田代未来がタン・ジンから内股透「一本」

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2回戦、能智亜衣美がキヨミ・ワタナベから左小外刈「一本」

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敗者復活戦、田代未来がナジャ・バジンスキーから内股透「技有」

【1回戦】

アレクシア・カスティルホス(ブラジル)○合技[隅落・大内刈](2:03)△スー・チャン(中国)
キャサリン・ブーシェミン=ピナード(カナダ)○肩車(0:22)△ダミエラ・ノメンジャナハリー(マダガスカル)
マイリン・デルトロ=カルバハル(キューバ)○大外落(2:18)△エステファニア・ガルシア(エクアドル)
エドウィッジ・グウェン(イタリア)○優勢[技有・出足払]△ププ=ラムー・カトリ(ネパール)
土井雅子○崩上四方固(1:25)△チョイ・ユンソル(韓国)
タン・ジン(中国)○大外刈(0:33)△マルセラ・アルファロ(チリ)
キヨミ・ワタナベ(フィリピン)○GS崩上四方固(GS0:58)△ハン・ヒジュ(韓国)
リア・ルドヴィック(スロベニア)○GS反則[指導3](GS1:42)△アンリケリス・バリオス(ベネズエラ)
ナジャ・バジンスキー(ドイツ)○横四方固(0:56)△タン・ライマン(マカオ)

【2回戦】

ティナ・トルステニャク(スロベニア)○反則[指導3](2:50)△アレクシア・カスティルホス(ブラジル)
マイリン・デルトロ=カルバハル(キューバ)○反則[指導3](4:00)△キャサリン・ブーシェミン=ピナード(カナダ)
エドウィッジ・グウェン(イタリア)○横四方固(4:00)△ユール・フランセン(オランダ)
土井雅子○反則[指導3](2:26)△マルティナ・トライドス(ドイツ)
田代未来○GS内股透(GS0:21)△タン・ジン(中国)
能智亜衣美○小外刈(0:47)△キヨミ・ワタナベ(フィリピン)
鍋倉那美○内股(0:21)△リア・ルドヴィック(スロベニア)
ナジャ・バジンスキー(ドイツ)○優勢[技有・袖釣込腰]△カタリナ・ヘッカー(オーストラリア)

【準々決勝】

ティナ・トルステニャク(スロベニア)○優勢[技有・小内刈]△マイリン・デルトロ=カルバハル(キューバ)
土井雅子○崩上四方固(1:46)△エドウィッジ・グウェン(イタリア)
能智亜衣美○反則[指導3](2:02)△田代未来
鍋倉那美○横四方固(1:29)△ナジャ・バジンスキー(ドイツ)

【敗者復活戦】

エドウィッジ・グウェン(イタリア)○優勢[技有・一本背負投]△マイリン・デルトロ=カルバハル(キューバ)
田代未来○合技[内股透・袈裟固](1:37)△ナジャ・バジンスキー(ドイツ)

【準決勝】

土井雅子○GS崩上四方固(GS3:44)△ティナ・トルステニャク(スロベニア)
鍋倉那美○反則[指導3](2:38)△能智亜衣美

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3位決定戦、能智亜衣美がエドウィッジ・グウェンから小外刈「技有」。

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能智は片手絞「一本」でフィニッシュ。

【3位決定戦】

能智亜衣美○片手絞(3:20)△エドウィッジ・グウェン(イタリア)

グウェンが右、能智が左組みのケンカ四つ。能智の接近をグウェンが手先を絡ませて止め続け、22秒「取り組まない」咎による「指導」。能智は左小外刈と左大内刈を絡ませながら引き手を求めるがグウェンの警戒厳しく、55秒には双方に片手の咎による「指導」。グウェンの反則累積は「2」となり早くもスコア上後がなくなる。グウェンは左への「韓国背負い」で反撃を試みるが能智崩れず技は空転。2分11秒、引き手争いから二本を得た能智が左小外刈、グウェン「く」の字で耐えるが能智はそのまま突進、落ちた相手の体を乗り込んで無理やり伸ばし「技有」獲得。
ビハインドにも拘わらずグウェンは変わらず粘戦志向、能智に持たせることを嫌っておき、左一本背負投に潰れる。相手が良く見えている能智これを見逃さず食いつき、「ボーアンドアローチョーク」。足の蹴り伸ばしを十分利かせて絞め上げ、片手絞「一本」。

田代未来○GS技有・払腰(GS5:21)△ティナ・トルステニャク(スロベニア)

田代が左、トルステニャクは両組み。トルステニャクは右構えから左一本背負投を狙う得意の戦法で試合を進める。45秒には田代がこの左一本背負投を狙い済まし、足を持っての「腰絞め」を狙うが、トルステニャクは頭を抜いてこれを回避。2分48秒、田代に消極的との判断による「指導」。以降は田代が左小外刈に左内股、トルステニャクが左小内刈で双方惜しい場面を作るがポイント獲得には至らず、試合はGS延長戦へ。

GS延長戦に入るとトルステニャクがペースを上げて攻勢、右袖釣込腰を連発したGS1分58秒には受けに回った田代に消極的との咎で「指導2」が追加される。ここからは奮起した田代とあと1つの「指導」をもぎ取らんとさらにペースを上げたトルステニャクによる、両者の意地がぶつかり合う激しい技の応酬。互いに一歩も引かずに攻め続け、試合時間はついに9分を超える。GS5分21秒、田代が組み際に飛びつくように奥を叩いて左払腰、完全に胸を合わせられたトルステニャクは勢い良く吹っ飛び、一回転して体側から落下。これは「技有」。田代が大熱戦を制して表彰台を確保した。

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決勝、土井が大外刈で攻めこむ。(別角度)

【決勝】

土井雅子○GS反則[指導3](GS3:03)△鍋倉那美

右相四つ。厳しい組み手争い、絞り合いが続く。39秒に土井の右体落を潰した鍋倉が絞めを利かせてのめくり返しを試みるが土井がしっかり防ぎ、以降は時折土井が払巻込に潰れるのみの組み手争いがひたすら続く。両袖を絞りあって膠着した3分6秒、双方に袖を絞り込んで防御した咎による「指導」。ここからやや試合が動き、鍋倉が組むと土井は体をゆすって間合いを作り、釣り手の肘をこじあげての右釣込腰。その戻りに鍋倉が右大外刈で襲い掛かり、両者崩れて畳へ。土井が強烈な横三角で鍋倉を回し、縦四方固に抑え込んだところで終了ブザー。鍋倉が一瞬力を抜き、主審の「抑え込み」の声を聞いて慌てて逃れ、ここで「解けた、それまで」が宣告される。試合はGS延長戦へ。

延長は土井が右大外刈で崩しては「横三角」で襲い掛かるという攻防が繰り返される。鍋倉も良く守り、寝勝負では逆襲に転じてなかなか展開を譲らない。またもや両袖での膠着となったGS1分56秒、双方に防御姿勢の咎で「指導2」。以降も互いに相手に崩れが見えるとすかさず寝勝負という攻防が続き、なかなか展開に差がつかない。GS2分38秒からの攻防で土井が右小外刈から右内股巻込に潰れると、審判焦れたか試合を止めて鍋倉に消極的との咎で3つ目の「指導」を与える。唐突に試合が終わった印象、負けた鍋倉、勝った土井とも一瞬呆然とするが判定は覆らず。土井はワールドツアー初優勝。

■ 70kg級 新井千鶴が手堅く優勝、2019年世界選手権代表に内定
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70kg級上位入賞者。左から2位のベルンホルム、優勝の新井、3位の新添とピノ。

(エントリー27名)

【入賞者】
1.ARAI, Chizuru (JPN)
2.BERNHOLM, Anna (SWE)
3.NIIZOE, Saki (JPN)
3.PINOT, Margaux (FRA)
5.ONO, Yoko (JPN)
5.BERNABEU, Maria (ESP)
7.RODRIGUEZ, Elvismar (VEN)
7.PORTELA, Maria (BRA)

【日本代表選手】
新井千鶴(三井住友海上)、大野陽子(コマツ)、新添左季(山梨学院大4年)、田中志歩(環太平洋大2年)

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準々決勝、マルゴ・ピノが大野陽子から左小内巻込「技有」

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準決勝、アンナ・ベルンホルムが新添左季から左大外巻込「技有」

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準決勝、新井千鶴がマルゴ・ピノから隅落「技有」

【決勝まで】

バクー世界選手権の入賞者が7位のケリタ・ズパンシック(カナダ)のみという海外勢は陣容脆弱。これという強者はマリア・ポーテラ(ブラジル)ら数名に留まり、優勝争いは日本勢に絞られるはずであった。

しかし意外にも日本人対決は1試合も実現せず。世界選手権で銅メダルを得た大野陽子が準々決勝でノーシードのマルゴ・ピノ(フランス)にGS延長戦1分29秒小内巻込「技有」を食って本戦から脱落。講道館杯王者の田中志歩は2回戦で第3シードのアンナ・ベルンホルム(スウェーデン)に腕挫十字固「一本」で敗れ、勝ち上がり順調でポーテラも僅か38秒の内股「一本」で破った新添左季も、準決勝のGS延長戦でベルンホルムに大外巻込「技有」を食って脱落。

決勝に進んだのは新井と、ベルンホルム。

新井は2回戦でイーファ・コーグラン(オーストラリア)を1分15秒、大内刈と袈裟固の合技「一本」で一蹴。準々決勝は東海大に留学中のエルビスマール・ロドリゲス(ベネズエラ)と6分超えの試合を演じたが、「指導2」対「指導3」の反則累積で勝ち抜け。過去幾度も苦杯を嘗めさせられた大野陽子との大一番となるはずだった準決勝はマルゴ・ピノをGS延長戦の末に隅落「技有」で退けて、山場のないまましっかり決勝へと駒を進める。

ベルンホルムは前述の通り2回戦で田中志歩を腕挫十字固「一本」、準々決勝はマリア・ベルナベウ(スペイン)をこれも腕挫十字固「一本」、準決勝では新添左季をGS延長戦での大外巻込「技有」で退け、4月のグランプリ・アンタルヤ以来4回目のワールドツアー決勝進出を果たすこととなった。

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3位決定戦、新添左季が大野陽子から払腰「技有」

敗れた日本勢から、大野と新添が3位決定戦で激突。この試合は新添が大野に組み手の有利を与えたまま左払腰で無理やり引っこ抜いてまず「技有」、さらに再び大野に十分な形を与えて内股を掛けさせておき、待ち構えて隅落で2つ目の「技有」を得るというまさしく完勝。新添3位、大野5位という単なる順位を越えて、現状の力関係の差を明確に見せつけた一番となった。新井を追う国内2番手の座は、この試合を以て新添に確定したと考えて良いかと思われる。

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決勝、新井がベルンホルムから隅落「技有」

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新井は手堅く優勝、ぶじ2019年世界選手権の代表権を手にした。

【決勝】

決勝は左相四つ。地力に大きく勝る新井が二本持たんと前に出、ベルンホルムが組み合うことを避けながらなんとか一撃呉れようと切り離しては組み際の技を狙うという構図で試合が進む。新井は細かい駆け引きをせずに強気の進退、両襟を高く掴んで位押しに押し、ベルンホルムが切り離すと不十分な両袖の形からでも左大外刈の大技を見せる。
あっという間に手が詰まったベルンホルムは新井の腕を抱え込んでの左払巻込に逃げ込むが、怖がりながらの技ゆえか抱え込みが浅い。新井これを見逃さずしっかり隅落でめくり返し1分38秒「技有」確保。

以降も新井は慌てず、手堅く試合を進める。場外の「指導」1つを追加し、最後は寝勝負で相手を圧し、横三角から捲って抑え込みの形を作り掛けたところで終了ブザー。新井、「技有」優勢でしっかり優勝を決めた。

世界選手権と日本開催のグランドスラムをいずれも優勝した新井は、これで2019年世界選手権の代表に内定。国内の強者である大野、新添いずれとの対戦もなく、海外の一線級とも戦わず、率直に言って世界選手権代表の掛かった大会としては低いハードルであったが、着実に勝ち抜いた新井の地力と精神力はさすがであった。昨年度大会決勝、あと一歩で優勝というところまで歩を進めながら「内定を意識し過ぎた」と突如受けに回ったあの試合を考えればまったくの別人である。

試合後新井が見せた報道陣との受け答えは、昨年とは別人のような堂々たるもの。初の世界制覇の後不調に陥り、悩み、そして再び世界の頂点を極めるという紆余曲折を経た新井の、精神面での成長が強く感じられた。本人が語る通り技術的な課題は残るが、世界選手権までの9か月をどう過ごし、どのような柔道を組み上げるのか。今後が非常に楽しみだ。

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70kg級優勝の新井千鶴

【上位入賞者】
優 勝:新井千鶴(三井住友海上) 
準優勝:アンナ・ベルンホルム(スウェーデン)
第三位:新添左季(山梨学院大4年)、マルゴ・ピノ(フランス)

新井千鶴選手のコメント
「昨年は代表内定を意識し過ぎて、取らなければいけない試合を取り切れず、あと一歩で負けてしまった。今回は目の前の相手に勝つことだけを考えて戦いました。投げ切るチャンス、抑え切れるチャンスを逃しながら結果として勝ったという形で内容には決して納得していませんが、勝って内定を取れたことは良かったと思います。3連覇のチャンスと、長い準備の時間を頂くことが出来たので、ここをどう使っていくかしっかり考えていきたい。新しい柔道を作るというよりも、まずいま挑戦していることを継続して、完璧にすることから始めたいと思います。」

【日本代表選手結果】
新井千鶴(三井住友海上):優勝
新添左季(山梨学院大4年):3位
大野陽子(コマツ):5位
田中志歩(環太平洋大2年):2回戦敗退

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2回戦、新井千鶴がイーファ・コーグランから左大内刈「技有」

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2回戦、アンナ・ベルンホルムが田中志歩から腕挫十字固「一本」

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準々決勝、新添左季がマリア・ポーテラから左内股「一本」

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敗者復活戦、マリア・ベルナベウがマリア・ポーテラから右小外掛「技有」

【1回戦】
イーファ・コーグラン(オーストラリア)○反則[指導3](3:58)△スラッタナ・ソングスリ(タイ)
エルビスマール・ロドリゲス(ベネズエラ)○優勢[技有・袖釣込腰]△シャン・リウユ(台湾)
ロクサーヌ・タエイモンス(ベルギー)○小外刈(3:56)△リウ・ホンヤン(中国)
ヨウ・ジェユン(韓国)○優勢[技有・内股]△エミリー・バート(カナダ)
マルゴ・ピノ(フランス)○合技[小内巻込・袖釣込腰](3:24)△ジョヴァンナ・スコッチマッロ(ドイツ)
エリザヴェト・テルツィドウ(ギリシャ)○合技[外巻込・崩袈裟固](0:46)△ユン・ジュヘ(韓国)
新添左季○大外刈(2:23)△ラウラ・ファルガス=コッホ(ドイツ)
サビナ・ゲルチャク(ハンガリー)○GS合技[内股・大腰](GS1:41)△メガン・フレッチャー(アイルランド)
田中志歩○GS反則[指導3](GS0:47)△ファニー=エステル・ポスヴィト(フランス)
ケリタ・ズパンシック(カナダ)○崩上四方固(1:45)△ジュー・ヤ(中国)
マリア・ベルナベウ(スペイン)○横四方固(2:13)△ブスラ・カチポグル(トルコ)

【2回戦】
新井千鶴○合技[大内刈・袈裟固](1:15)△イーファ・コーグラン(オーストラリア)
エルビスマール・ロドリゲス(ベネズエラ)○合技[抱分・横四方固](0:43)△ロクサーヌ・タエイモンス(ベルギー)
大野陽子○崩袈裟固(2:38)△ヨウ・ジェユン(韓国)
マルゴ・ピノ(フランス)○GS技有・小内巻込(GS0:47)△バルバラ・マティッチ(クロアチア)
マリア・ポーテラ(ブラジル)○出足払(3:13)△エリザヴェト・テルツィドウ(ギリシャ)
新添左季○優勢[技有・内股巻込]△サビナ・ゲルチャク(ハンガリー)
アンナ・ベルンホルム(スウェーデン)○GS腕挫十字固(GS0:25)△田中志歩
マリア・ベルナベウ(スペイン)○反則[指導3](3:53)△ケリタ・ズパンシック(カナダ)

【準々決勝】
新井千鶴○GS反則[指導3](GS2:17)△エルビスマール・ロドリゲス(ベネズエラ)
マルゴ・ピノ(フランス)○GS技有・小内巻込(GS1:29)△大野陽子
新添左季○内股(0:38)△マリア・ポーテラ(ブラジル)
アンナ・ベルンホルム(スウェーデン)○腕挫十字固(2:20)△マリア・ベルナベウ(スペイン)

【敗者復活戦】
大野陽子○崩上四方固(1:43)△エルビスマール・ロドリゲス(ベネズエラ)
マリア・ベルナベウ(スペイン)○優勢[技有・小外掛]△マリア・ポーテラ(ブラジル)

【準決勝】
新井千鶴○GS技有・隅落(GS1:53)△マルゴ・ピノ(フランス)
アンナ・ベルンホルム(スウェーデン)○GS技有・大外巻込(GS1:42)△新添左季

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3位決定戦、新添が大野から隅落で2つ目の「技有」

【3位決定戦】

新添左季○合技[払腰・隅落](3:30)△大野陽子

左相四つ。切り合いを経て大野思い切り奥襟を叩くが新添は背筋を伸ばして屈せず、叩き返して対峙。大野は横変形にずれて自ら頭を下げて袖を絞り込み、交互に内股巻込を打ち合う。新添が大野に応じる形で袖の落とし合い、切り合いとなり、新添は釣り手の肘を上げてここから脱しての攻めを企図するが、主審試合を止めて1分37秒新添にのみやや不可解な「指導」。2分を過ぎたところで大野は釣り手を高く、袖を握った引き手を低く保つほぼ完ぺきな組み手を完成。有利な形を作ることに徹底的にリソースを傾ける大野の労作だが、しかし不利なはずの新添、敢えて釣り手を低く持たされたまま腰を回して左払腰で引っこ抜く。重量選手が軽量級を抜き上げる、あたかも体重無差別の全日本柔道選手権を見るかのような一撃。一瞬の拮抗のあと大野は力尽きて吹っ飛び、2分17秒「技有」。理屈を力で破壊するこの一発のインパクトは大きく、当然ながら以後試合は完全に新添のペース。大野が横変形で奥襟を叩き、続いて左一本背負投を放ってと形上攻防は継続するが、前段の攻防で定まった力関係が畳を支配する感は否めず、逆転の予感は僅少。残り30秒、大野は釣り手で奥襟を叩き、引き手で袖を掴んで横変形で頭を下げるという完璧な形を作り出すと、ここから呼吸を整えて左内股一撃。一番良い形から思い切り打ち込んだこの一発を、しかし新添まったく崩れず上から目線で待ち構え、隅落で捉え返して「技有」確保。合技「一本」で新添の3位が決まった。作りが利いていなかったとはいえ、この攻防も前段の払腰以上のインパクト。不利な形から強引に投げ、相手の一番良い技を待ち構えて返す。新添の完勝であった。

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3位決定戦、マルゴ・ピノがマリア・ベルナベウから大外落「一本」

マルゴ・ピノ(フランス)○GS大外落(GS2:41)△マリア・ベルナベウ(スペイン)

右相四つ。ベルナベウのパワーの前にピノは掛け潰れて凌ぐことが精一杯、序盤はベルナベウが圧殺から「横三角」で攻める展開が続く。2分8秒にはピノに極端な防御姿勢の「指導」。しかしこのあたりからベルナベウが消耗し始め、ピノが左背負投でこの試合初めて相手を大きく崩した3分5秒、ベルナベウに消極的の「指導」。ピノとしてはここから盛り返したいところであったが、3分22秒、巴投が偽装攻撃と判断され「指導2」失陥。このまま試合はGS延長戦へともつれ込む。
延長戦に入るとベルナベウはさらに消耗、GS1分39秒には消極的の咎でベルナベウに「指導2」が追加される。GS2分41秒、ピノが左の「一本大外」を仕掛けるとベルナベウは一度尻もちをついてから押し込まれて背中を畳に着く。本来なら「技有」相当の技であったが主審ピノのしぶとさに感情を引きずられたか「一本」を宣告。粘戦実ってピノが銅メダルを獲得することとなった。

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新井の隅落「技有」(別角度)

【決勝】

新井千鶴○優勢[技有・隅落]△アンナ・ベルンホルム(スウェーデン)

左相四つ。がっちり組み合えば力関係に鑑みて新井の勝利は確実、これを良く知るベルンホルムがなんとか隙を探して一撃呉れようと切り離しを続け、組み際の技を狙うという構図。ベルンホルム引き手で袖を折り込んでまず一方的な形を作ろうと画策するが新井はこれをさせず、両襟を高い位置で持つ強気の形で寄せる。ベルンホルム明らかに嫌がって絞り落とすが、新井は両袖の左大外刈を見せて牽制。完璧でない形からでも攻め手を見せた新井に対しベルンホルム早くも手が詰まり、浅く腕を抱えた左外巻込に逃げて潰れ「待て」。
以降も新井は強気に前進、襟の確保を継続。窮したベルンホルムいったん引き手で袖を絞り落として無理やり腕を抱えての左払巻込に逃げ込むが、怖がりながらの技で抱え込みが浅い。新井しっかり見極めて隅落でめくり返し、1分38秒「技有」。新井はそのまま寝勝負、伏せたベルンホルムの肘を引っ張り出し、畳に背を押し付けて抑え込もうとするがベルンホルムは両足を真一文字に結ぶ、流行りの形で絡み続ける。新井足首までは抜くがどうしてもあと一段が抜けず、2分24秒ついに「待て」。
新井以降は慌てず順行運転。2分56秒に奥襟と袖を確保する完璧な形を作るとベルンホルム場外に逃れ、場外の「指導」。残り32秒にベルンホルムが巻き込み潰れると新井襲い掛かって寝勝負を挑み、横三角で取りに掛かる。足を突っ込み、ついに捲って抑え込みの形を作り上げた瞬間終了ブザー。圧力を掛け、窮した相手の掛け逃げ技をしっかり返して得点。新井は横綱相撲であった。

※ eJudoメルマガ版12月14日掲載記事より転載・編集しています。

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