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ベイカー茉秋が復活V、出直し戦の羽賀龍之介は決勝進むも熊代佑輔に苦杯・平成30年度講道館杯全日本柔道体重別選手権大会最終日男子レポート

(2018年11月20日)

※ eJudoメルマガ版11月19日掲載記事より転載・編集しています。
ベイカー茉秋が復活V、出直し戦の羽賀龍之介は決勝進むも熊代佑輔に苦杯
平成30年度講道館杯全日本柔道体重別選手権大会最終日男子3階級レポート(90kg級、100k級、100kg超級)
大会日時:2018(平成30)年11月4日
於:千葉ポートアリーナ

取材・文:古田英毅/林さとる
撮影:辺見真也/eJudo編集部

→最終日男子プレビュー記事
→最終日男子3階級全試合結果

■ 90kg級・ベイカー茉秋が復活V、期待の高校生村尾三四郎が大躍進で表彰台掴む
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90kg級準々決勝、ベイカー茉秋が前田宗哉から右大内刈「一本」

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準々決勝、田嶋剛希が向翔一郎の「やぐら投げ」を被り返して隅落「一本」

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準決勝、田嶋が村尾三四郎から小内刈「技有」

(エントリー32名)

【決勝まで】

リオデジャネイロ五輪王者ベイカー茉秋(日本中央競馬会)を筆頭に実力者粒ぞろいの非常に魅力的なトーナメント。有力選手同士による潰し合いが続いたが、大きな番狂わせは少なく概ね順当に試合が進んだ。

決勝進出者は第1シードのベイカーと、昨年の世界ジュニア選手権王者で今期は学生タイトルも手にしたホープ田嶋剛希(筑波大3年)。

ベイカーは1回戦から難敵北野裕一(パーク24)とマッチアップ。第1シードにも関わらず、そして負傷明けの初戦で戦うにはかなり厳しい組み合わせであったが、既に攻略法は知っているとばかりに相手の浮技をかわして抑え込みを狙い続け、一度も自分から技を仕掛けることなく袈裟固「技有」で勝利。調子の読み辛い内容であったが、続く2回戦で岩渕晃大(国士舘大2年)に払巻込「技有」で勝利すると、準々決勝では高校と大学の後輩である前田宗哉(自衛隊体育学校)を大内刈と肩固の合技「一本」(0:56)で一蹴。準決勝はやや時間がかかったものの、深山将剛(東海大2年)にGS延長戦での小外掛「技有」(GS0:56)で勝利してぶじ決勝への勝ち上がりを決めた。

一方の田嶋は1回戦で保池泰成(陸上自衛隊国分駐屯地)と対戦、これを片襟の大外刈「一本」(3:29)で退けてトーナメントを滑り出し、2回戦では川上智弘(國學院大職)をこれぞ田嶋という豪快な背負投「一本」(2:14)で一蹴。最大の勝負どころとなった3回戦では9月の世界選手権で団体戦代表を務めた向翔一郎(ALSOK)とマッチアップ、まず相手の帯取返に被り返しての隅落「技有」、さらに相手の「やぐら投げ」に被り返しての「一本」(3:07)と連取してこの大一番に圧勝。準決勝では前戦で加藤博剛(千葉県警察)に小外刈「技有」で勝利するなどここまで快進撃を続けてきた村尾三四郎(桐蔭学園高3年)を激戦の末にGS延長戦での小内刈「技有」(GS1:48)で退けて決勝の畳へと辿り着いた。

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90kg級準々決勝、村尾三四郎が加藤博剛から左小外刈「技有」

優勝候補に挙げられていた向は前述の通り準々決勝で田嶋に苦杯。しかし、敗者復活戦で加藤を浮落と小外掛の合技「一本」(1:27)で破ると、3位決定戦で深山を大外刈「一本」(0:12)で下して表彰台は確保した。また、村尾も3位決定戦で前田にGS延長戦での小内刈「技有」(GS1:48)で勝利し、高校生ながら3位に食い込んだ。

本来であれば優勝候補の渡邊勇人(了徳寺学園職)は大会直前に大胸筋断裂の大ケガを負って欠場。癖のある担ぎ技で田嶋同様ホープと目されていた増山香補(明治大2年)も10月の世界ジュニアで負った左手甲の負傷が癒えず無念の欠場となった。

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決勝、田嶋剛希がベイカー茉秋から左一本背負投「技有」

【決勝】

ベイカー茉秋(日本中央競馬会)○GS合技[大内刈・谷落](GS0:49)△田嶋剛希(筑波大3年)

決勝は右相四つ。ベイカー釣り手から組んであっさり二本を確保するが田嶋すぐさま切ってリセット。以後はベイカーが引き手からまず袖、左右が効き左技に威力のある田嶋が敢えて釣り手から襟を持つことを一手目に試合が推移する。田嶋が強気に両襟を持ち引き手を激しく振って間合いを詰めると、ベイカーは引き手で袖を絞り込んで対抗するものの作りに時間がかかってしまい、23秒ベイカーに袖口を絞り込んだ咎による「指導」。

直後田嶋は奥襟を掴んで右大内刈、一歩下がって捌いたベイカーも右大内刈を打ちながら奥襟を掴み返すが、田嶋はここで立ったまま左袖釣込腰の大技に飛び込む。田嶋得意の敢えて深く前に崩さず、まず相手の前で反転して担ぎ上げてしまう一撃。そのまま韓国背負い様に回転を続けると、ベイカーいったん浮いたがほとんど360度回転したところで外して技は空転、ベイカーが畳に降りて「待て」。以後もベイカーが引き手で袖をまず持ち、奥襟を叩いての接近を期するが、田嶋は左袖釣込腰、肘抜きの左背負投と迫力ある技を連発。1分25秒にはこの左の担ぎを2連発し、ベイカーが耐えると体を預けて後方へ投げんと突っ込み、元気一杯。

手数と大技の印象でやや田嶋が先行。後手を踏む形となったベイカーは内股ステップで飛び込んでの右体落で田嶋にたたらを踏ませ、続いて横変形で袖、奥を制して一方的に組むと「やぐら投げ」と反撃に出る。いったん持ち上げられた田嶋が畳に降りてこの一撃は収束、田嶋はいったん離れるなり釣り手を持ったまま左「一本大外」ですぐさま逆襲に出る。田嶋はこの技でベイカーの外への退路を封じるなり左一本背負投に連絡。ベイカーは返そうと背を抱えるが田嶋の作る回旋に抗いきれず、転がり落ちて2分8秒「技有」。田嶋はそのまま引込返で寝勝負に持ち込み、「待て」を貰ったときには既に2分29秒が経過。残り時間は僅か1分31秒。

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ベイカーが右大内刈「技有」で追いつく

ビハインドを負ったベイカーだが、スクランブル状態こそこの人の本領。ここからが本番とばかりにいきなり動きが良くなる。距離を詰めるとまず大内刈、さらに引き手で袖を持つなり大内刈、体落と鉈を打ち込むように技を継ぐ。田嶋圧力に抗し切れず潰れ、続いてベイカーが片襟の大内刈から大外刈と勝負技を連発すると再び膝を屈してしまい、3分16秒極端な防御姿勢による「指導」。

続く展開、ここまでなんとか距離を保ってきた田嶋が根負け。ベイカーが釣り手で奥、引き手で背を抱く完全密着を作り出し、ゼロ距離からの右大内刈に飛び込む。覚悟を決めた田嶋は後帯を掴んで投げ合いに応じるが、ベイカーがケンケンで追い込むとさすがに耐えられず、場外を越えたところでひっくり返って3分29秒「技有」。これでスコアはタイとなる。残り時間は31秒。

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田嶋が左「一本大外」で勝負に出るとベイカーはそれを抱き止め谷落

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力強く引き落として「技有」

ベイカーはさらに奥襟を叩いて一気に距離を詰め、戦況ここにベイカー優位に転じた感あり。田嶋はまず左の「一本大外」で圧を剥がして肘抜きの左背負投に飛び込むが掴まえきれず空回り、ベイカーが隅落を狙って「待て」。続いてベイカーが引き手を低く、釣り手を高くという完璧な形で組んだところで本戦4分間が終了。試合はGS延長戦へ。

この延長戦は引き手で袖を捕まえたベイカーが、釣り手を奥襟、片襟と往復させながら右大内刈、さらに右背負投で迫り、抗する田嶋が組み手の手順を時折変えて打開の糸口を探るという形で推移。しかしGS37秒、ベイカーは片襟に持ち替えてあおったまま一瞬待ちに出てしまい、片襟の咎による「指導2」を貰ってしまう。ベイカーは戦況で優位に立ちながら、スコア上は後がなくなってしまった格好。

直後、機と見た田嶋が釣り手で襟を持つなり左の「一本大外」で勝負に出る。斜めに引っ掛け、次いで思い切って刈り込まんとするが、ベイカーがその踏み込みに合わせて大きく呼び込むと、波が寄せる軌道で持ち上げられた田嶋は膝が伸びて一瞬棒立ち。ベイカーは釣り手の四指を後襟に突っ込んで谷落一撃、田嶋巧みに体を捻ろうとするが、膝裏に小外掛様に突っ込まれたベイカーの膝が楔となって反転がままならない。そのまま畳に落ちると主審は「待て」を掛けて映像チェックを要求する。

大方の印象通りにこの一撃に「技有」が宣されて試合終了。ベイカー、初の講道館杯制覇が決まった。

やはりベイカーは強かった。決勝、「技有」を失うなり、ではこれが必要とばかりに密着戦闘に舵を切り、田嶋の技術を塗りつぶして2度投げた勝負強さは見事の一言。五輪という修羅場で最終勝者となった経験は伊達ではない。久々、ベイカーがその異次元ぶりを見せつけた試合だった。

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90kg級上位入賞者。左から2位の田嶋剛希、優勝のベイカー茉秋、3位の村尾三四郎と向翔一郎。

【入賞者】
優 勝:ベイカー茉秋(日本中央競馬会)
準優勝:田嶋剛希(筑波大3年)
第三位:村尾三四郎(桐蔭学園高3年)、向翔一郎(ALSOK)

【グランドスラム大阪日本代表選手】
長澤憲大(パーク24)、ベイカー茉秋(日本中央競馬会)、向翔一郎(ALSOK)、田嶋剛希(筑波大3年)

ベイカー茉秋選手のコメント
「本当にうれしいです。リオが終わってから長い間優勝という成績がなかったので、やっとここまで来れたという感じ。オリンピックの後は辛いことのほうが多くて、その中で優勝して戻って来れて、本当に良かった。決勝は最初にポイントを取られたときに『もう2位は嫌だ』ということが頭に浮かんで、なんとしても勝つんだと。本当に気持ちで勝ったという感じです。手術してからなかなか思うような成績を出せず、正直辛いことが多く、ここまで頑張って来た自分に優勝という形で返せたらなと思っていたので、うれしい。去年も今年も世界選手権をテレビで見ていて、自分が出ていなくて本当に悔しかった。来年出て、そして優勝出来るように頑張ります。」

【準々決勝】
ベイカー茉秋(日本中央競馬会)○合技[大内刈・肩固](0:56)△前田宗哉(自衛隊体育学校)
深山将剛(東海大2年)○優勢[技有・大内刈]△長井晃志(日本体育大2年)
田嶋剛希(筑波大3年)○隅落(0:53)△向翔一郎(ALSOK)
村尾三四郎(桐蔭学園高3年)○優勢[技有・小外刈]△加藤博剛(千葉県警察)

【敗者復活戦】
前田宗哉(自衛隊体育学校)○不戦△長井晃志(日本体育大2年)
向翔一郎(ALSOK)○合技[浮落・小外掛](1:27)△加藤博剛(千葉県警察)

【準決勝】
ベイカー茉秋(日本中央競馬会)○GS小外掛(GS0:56)△深山将剛(東海大2年)
田嶋剛希(筑波大3年)○GS技有・小内刈(GS0:58)△村尾三四郎(桐蔭学園高3年)

【3位決定戦】
村尾三四郎(桐蔭学園高3年)○GS技有・大内刈(GS1:48)△前田宗哉(自衛隊体育学校)
向翔一郎(ALSOK)○大外刈(0:12)△深山将剛(東海大2年)

【決勝】
ベイカー茉秋(日本中央競馬会)○GS合技[大内刈・谷落](GS0:49)△田嶋剛希(筑波大3年)

■ 100kg級・熊代佑輔が同門対決制して4年ぶりの優勝、復活目指した羽賀龍之介は2位も存在感示す
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100kg級1回戦、羽賀龍之介が山下魁輝から左内股「一本」

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100kg級準々決勝、熊代佑輔が伊藤好信から右「一本大外」で「一本」

【決勝まで】

肩の手術を受けて復活を期す2015年の世界王者・羽賀龍之介(旭化成)と昨年来好調を維持している熊代佑輔(ALSOK)、ともにロンドン-リオ期に国内100kg級を牽引した両名が決勝に進出。

羽賀は1回戦で学生カテゴリの強者・山下魁輝(国士舘大2年)とマッチアップ、会場中の注目が集まるなか豪快な内股「一本」(2:37)でこの強敵を退ける。以降は2回戦で辻本拓記(兵庫県警察)を「指導3」反則(GS2:25)、準々決勝では江原拓巳(埼玉県警察)を内股「一本」(3:55)でそれぞれ下してベスト4入り。最大の山場と目された準決勝では今年の選抜体重別の覇者・西山大希(新日鐵住金)を消耗戦の末に「指導3」の反則(GS2:41)で破って決勝進出を決めた。

一方の熊代は初戦(2回戦)で小林大介(岐阜県警察)に得意の右「一本大外」で一本勝ち(3:33)。ここからは大学の後輩と連戦、準々決勝では今期の学生体重別王者・伊藤好信(東海大3年)を前戦と同様の形の右大落「一本」(1:22)で退け、準決勝では警察王者の松雪直斗(福岡県警察)に「指導3」の反則で勝利(GS1:14)して決勝へと辿り着く。

上位進出が期待された山口貴也(日本大1年)は2回戦で同学年のライバルである世界ジュニア王者・関根聖隆(筑波大1年)を「指導3」の反則(GS4:14)で下したものの、準々決勝で松雪に肩車「一本」(0:40)で敗退。敗者復活戦でも伊藤にGS延長戦の小内刈「一本」(GS2:52)で屈して表彰台に上がることができなかった。3位には決定戦で松雪を一本背負投「技有」で破った垣田恭兵(旭化成)と、伊藤を「指導3」の反則(GS0:42)で下した西山が入賞した。

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100kg級決勝、羽賀龍之介が熊代佑輔の右内股を透かし掛かる

【決勝】

熊代佑輔(ALSOK)○GS技有・大外落(GS4:03)△羽賀龍之介(旭化成)

左相四つ。大学の先輩後輩で互いに良く相手の戦い方を知る両者の対戦は、組み手争いの段階から緊迫。羽賀が引き手で脇を突きながら釣り手で奥襟を狙い、熊代がこれに応じる形で試合が進む。なかなか二本持てない羽賀は釣り手で己の引き手を抑える形で支釣込足、しかし熊代一歩崩れたのみで揺るがず組み手はリセット。羽賀が両襟を握り、熊代が右の大外刈のフェイントに膝を挙げたところで主審が試合を止め、47秒熊代にのみ「取り組まない」咎による「指導」。

奮起した熊代は引き手で襟、釣り手で奥襟を持つといったん腰を切って組み手とは逆の右内股の奇襲。大技に会場沸くが、一瞬浮きあがった羽賀股中でこれを捌いて大過なし、攻防は継続。ここからは双方やや様子見となり、羽賀は引き手で脇下を持ち、釣り手を横襟に入れては支釣込足、あるいは引き手で内中袖を確保して左小内刈と細かく攻めながら大技に繋ぐ機会を探り、熊代は引き手で脇を突いて羽賀に十分の形を与えないままチャンスを伺う。羽賀が内袖を掴みながら左小内刈、これを熊代が切り離したところで主審が試合を止め、2分8秒双方に消極的との咎で「指導」。羽賀は「指導1」、熊代は「指導2」失陥でスコア上早くも後がなくなる。

熊代、引き手で腹付近を掴み、刈り足を大きく伸ばして左大外刈。羽賀は左小内刈を入れながら引き手で内袖を掴み、釣り手を高く揚げて奥襟確保を狙う。残り32秒、ついに奥襟を得た羽賀が間を置かずに肘を揚げて左内股一撃、この試合初めて見せた伝家の宝刀に熊代一瞬大きく浮くがそのまま両足で畳に降りて大過なし。続いて熊代が両袖から内股ステップのフェイントを入れて巴投に滑り込むも羽賀がしっかり止め、ここで本戦4分が終了。試合はGS延長戦へ。

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GS延長戦で熊代がこの日何度も決めている右「一本大外」

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一本背負投様に引き落とし投げて「技有」

ビハインドの熊代再び奇襲の右内股に飛び込もうとするが羽賀がその動きの起りで止め、続く横落も防いで横三角を試みるなどその戦い方に隙は見出しがたし。しかし己の手立てを良く知る熊代を投げ切れないと見たか、あるいは「指導」奪取の勝利を意識したか引き手で脇を突くと釣り手を「手四つ」で争っての膠着を企図する挙に出る。互いに手を握り合わせて、熊代も組めず。ここで反則を与えるのであれば双方が妥当かとも思われたが、主審は熊代の前進を買ったか、それとも両者に反則を与える形での決着を忌避したか、羽賀にのみ「取り組まない」咎での「指導2」を宣告する。試合時間はGS1分29秒、ここでスコアはタイとなる。

ここからのシークエンスは奮起した羽賀が優位。刈り足を戻さずに左小内刈、左大内刈、左内股と3つ技を繋ぐ得意の攻撃で熊代を場外に弾き出すと、熊代の右への大外刈を空振りさせて横三角。さらに釣り手で襟を掴んでの左内股に左小内刈、反撃を狙った熊代の右背負投は予期してガッチリ止め、あと一合で3つ目の「指導」奪取というところまで歩を進めた印象。

しかしここで左小内刈から横巴に入り込むと、長い足が懐に収まり切らず、熊代の体重を中途半端な形で受けて膝を痛めた模様。「待て」が掛かると膝を屈伸して不自然な動き。

再開後、やや右膝を気にする動きの羽賀に熊代は左大外刈。これは膝を着いてしまい決め切れなかったが、続く展開、まず引き手から襟を持つと、羽賀に切らせておいて今度は先ほどの逆の右側へ「一本大外」。自身が切って作った形の直後ということもあってか羽賀反応が遅れ、斜めに転がって「技有」。総試合時間は8分3秒、熊代4年ぶりの講道館杯制覇が決まった。

チャンスを見逃さなかった熊代は見事。バランスの良い体に左右を選ばぬ威力ある投げ、と持ち味を存分に発揮した大会だった。一方の羽賀は怪我の重大さと復帰までの時間の短さを考えればむしろよくやった試合であったが、大会通じて安定していた一方、ギアが入るまでに時間が掛かったことが気に掛かった。負傷前、五輪後調子を落としつつあった羽賀に見て取れた悪い卦がいまだ続いているという印象。決勝も後半繰り出した「小内、大内、内股」のような連続攻撃、しゃにむな攻めを早い段階で見たかったし、であれば別の形で突破口が開けた可能性も十分であったと考える。グランドスラム大阪に期待したい。

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100kg級上位入賞者。左から2位の羽賀龍之介、優勝の熊代佑輔、3位の垣田恭兵と西山大希。

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100kg級2回戦、熊代佑輔が小林大介から右「一本大外」で「一本」

【入賞者】
優 勝:熊代佑輔(ALSOK)
準優勝:羽賀龍之介(旭化成)
第三位:垣田恭兵(旭化成)、西山大希(新日鐵住金)

【グランドスラム大阪日本代表選手】
ウルフアロン(了徳寺学園職)、飯田健太郎(国士舘大2年)、熊代佑輔(ALSOK)、羽賀龍之介(旭化成)

熊代佑輔選手のコメント
「(-8分間の試合を終えて?)いやー、きついです(笑)。羽賀選手はずっとトップでやってきている選手ですので、年齢は下ですが見習うところが多い。対戦出来て良かったと思います。我慢強く戦っていけばいつかチャンスがあるんじゃないかと。途中何回も妥協しそうになったんですけど、それでは試合を見ている学生たちにも示しがつかないので、頑張りました。色々自分の中で試したいものがある、それを試す場が試合と思っているので、それが出来たのは自分にとって良かったと思います。きょうは組み合わせが良く、運に味方された試合だったと思います。実力でいったらまだまだ三番手、四番手だと思いますが、やる以上はまだまだ上を目指していきます。」

【準々決勝】
西山大希(新日鐵住金)○GS反則[指導3](GS1:24)△垣田恭兵(旭化成)
羽賀龍之介(旭化成)○内股(3:55)△江原拓巳(埼玉県警察)
熊代佑輔(ALSOK)○大外落(1:22)△伊藤好信(東海大3年)
松雪直斗(福岡県警察)○肩車(0:40)△山口貴也(日本大1年)

【敗者復活戦】
垣田恭兵(旭化成)○小内刈(3:15)△江原拓巳(埼玉県警察)
伊藤好信(東海大3年)○GS小内刈(GS2:52)△山口貴也(日本大1年)

【準決勝】
羽賀龍之介(旭化成)○GS反則[指導3](GS2:41)△西山大希(新日鐵住金)
熊代佑輔(ALSOK)○GS反則[指導3](GS1:14)△松雪直斗(福岡県警察)

【3位決定戦】
垣田恭兵(旭化成)○優勢[技有・一本背負投]△松雪直斗(福岡県警察)
西山大希(新日鐵住金)○GS反則[指導3](GS0:42)△伊藤好信(東海大3年)

【決勝】
熊代佑輔(ALSOK)○GS技有・大外落(GS4:03)△羽賀龍之介(旭化成)

■ 100kg超級・影浦心が初優勝、王子谷剛志はまさかの5位に沈む
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100kg超級準々決勝、佐藤和哉が上川大樹から右小外刈「一本」

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1回戦、影浦心が影野裕和から体落「一本」

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準々決勝、七戸龍が王子谷剛志を右大内刈で攻める

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1回戦、上田轄麻が斉藤立を攻める

(エントリー31名)

【決勝まで】

佐藤和哉(新日鐵住金)と影浦心(日本中央競馬会)、ともに社会人1年目で同学年の両名が決勝へと勝ち上がった。

佐藤は1回戦で石川智啓(東海大1年)を「指導3」の反則(GS1:58)で下すと、2回戦では竹村昂大(国士舘大3年)に大外刈「一本」(1:51)で勝利。準々決勝では上川大樹(京葉ガス)を、本戦の終了間際に前技に一度腰を切ってからの切れ味鋭い右小外刈「一本」(3:57)で破ってベスト4入りを決める。準決勝では、前戦で王子谷剛志(旭化成)を「指導3」の反則](GS5:36)で破って勝ち上がってきた七戸龍(九州電力)とマッチアップ。この試合は両者一歩も引かない消耗戦となるが、本戦4分間が過ぎ去ると2試合連続で延長を戦うこととなった七戸が大きく消耗。「指導3」の反則(GS3:10)により佐藤が決勝進出を果たした。

一方の影浦は1回戦で影野裕和(愛媛県警察)を、相手の脇を差しての左体落「一本」(1:58)で下して大会をスタート。2回戦で村上拓(愛知県警察)を得意の内股透「一本」(GS0:31)で破ると、準々決勝では尾原琢仁(旭化成)にGS延長戦での大内刈「技有」(GS0:14)で勝利。山場と目された準決勝では大学の後輩、今年の学生王者・太田彪雅(東海大3年)を「指導3」の反則(GS0:41)で退けて決勝への勝ち上がりを決めた。

第1シードに配されたアジア大会代表の王子谷は前述の通り準々決勝で七戸に苦杯。敗者復活戦では上川を支釣込足と横四方固の「一本」で下したものの、3位決定戦では大学の後輩である太田を相手に「指導3」の反則(GS0:27)で敗れて終戦。押し出しの咎で3つ目の「指導」を失うなど、持ち味が裏目に出た形での敗戦だった。王子谷に勝利した七戸も同じく3位決定戦で上田轄麻(新日鐵住金)に「指導3」反則(GS0:13)で敗れて表彰台には手が届かなかった。

期待の高校王者・斉藤立(国士舘高2年)は1回戦で昨年と同じく上田に「指導3」の反則(GS1:07)で敗れて上位進出ならず。上田の厳しい組み手管理の前に自分の形を作れず、力を出させてもらえなかった。ライバルの中野寛太(天理高3年)も1回戦で黒岩貴信(新日鐵住金)に払巻込と後袈裟固の合技「一本」(0:45)で敗れており、高校生2名はともにシニアの壁に弾き返された形。斉藤は巧さに、中野は力に屈した。

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決勝、佐藤和哉が影浦心を釣り手のみの右体落で叩き落とす

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影浦が左の「韓国背負い」で佐藤を攻める

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影浦が左一本背負投、直後佐藤に3つ目の「指導」が宣せられて決着

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【決勝】

影浦心(日本中央競馬会)○GS反則[指導3](GS3:53)△佐藤和哉(新日鐵住金)

同学年対決は佐藤が右、影浦が左組みのケンカ四つ。影浦は闘志むき出し、「シャー!」とひときわ鋭く気合いの声を上げて試合をスタート。佐藤が両襟からの右大内刈、影浦が片手の左内股を一発ずつ放ち、以降は引き手争いが続く。佐藤が右大外刈を見せるもこれも組み手の駆け引きの範疇という印象で流れは変えられず、主審は56秒に片手の咎で双方に「指導」付与。

ここからは拮抗も、じわじわと佐藤が攻勢。相手の釣り手の袖をいったん掴んで寄せるとグイと肘を入れて釣り手の優位を確保、突っ込んだまままま鋭い右体落を呉れる。影浦はガクリと前に崩れ、会場大いに沸く。2分、影浦が引き手争いから右襟を握っての左背負投を見せて主導権を取り返しに掛かるが、耐えた佐藤は続く展開で右大内刈に触るなり軸足で跳ねて強烈な右大外刈。後退を余儀なくされた影浦をここぞと攻め立て、追撃の体落でたたらを踏ませた2分44秒、影浦に片手の咎による「指導2」。これで影浦、後がなくなる。

佐藤が前に出ると影浦はこれを利用せんと右背負投に座り込むが、姿勢の良い佐藤は崩れず。影浦の右小内刈も捌くと残り20秒から山場を作りに掛かり、引き手で袖をしっかり持つと右大内刈から右内股さらに右小外刈のフェイントから鋭い右体落。影浦前にのめって伏せ、もし「指導」が宣告されてもまったくおかしくない戦況。しかし残り時間ほとんどなく、試合はそのままGS延長戦へ。

延長に入ると様相徐々に変化。影浦がまず24秒にここまで封印していた釣り手側への「韓国背負い」を初めて見せ、深く佐藤の体を捉える。佐藤は股中への体落で攻め返すが、影浦は片手のままGS1分15秒、GS1分35秒と右への「韓国背負い」を連発。いずれも佐藤たたらを踏んで崩れ切らずも、この展開を受けてGS1分43秒には佐藤に2つ目の「指導」。これでスコアはタイ、ともに後がなくなる。

佐藤勝負どころが訪れたと見て前に出るが、片手技で良しと肚を括った影浦はこの前進を利用して右襟を握った左背負投、さらに右「韓国背負い」を連発。佐藤襟から持つ不利を悟って引き手から組み手を開始して袖を確保、強引な右大外刈に打って出るが、影浦が背負投に切り返して佐藤は腹ばい。影浦は以後も佐藤の技の起こりを狙って担ぎ技に潜り続け、手数で明らかな差が付き始める。GS3分53秒、佐藤が奥襟を叩いたところを影浦が一本背負投に切り返したところで主審がついに試合を止める。佐藤に消極的との咎で「指導」が宣告され、ついに勝敗が決した。

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100kg超級上位入賞者。左から2位の佐藤和哉、優勝の影浦心、3位の太田彪雅と上田轄麻。

【入賞者】
優 勝:影浦心(日本中央競馬会)
準優勝:佐藤和哉(新日鐵住金)
第三位:太田彪雅(東海大3年)、上田轄麻(新日鐵住金)

【グランドスラム大阪日本代表選手】
原沢久喜(フリー)、小川雄勢(明治大4年)、影浦心(日本中央競馬会)、王子谷剛志(旭化成)

影浦心選手のコメント
「この大会は優勝だけを見ていました。最後は見苦しい試合になってしまったんですけどなにより勝つことが大事なので、絶対勝つつもりで技を出し続けました。トップレベルになってくるとこういう競り合いが増えてくるので、普段から色々な状況をシミュレーションして稽古をしていました。まだここからがスタート、勘違いでも良いので、自分が一番強いとずっと思って、東京オリンピック目指して頑張ります。テディ・リネール選手を倒すと決めているので、絶対に出て、金メダルを獲ります。」

【準々決勝】
七戸龍(九州電力)○GS反則[指導3](GS5:36)△王子谷剛志(旭化成)
佐藤和哉(新日鐵住金)○小外刈(3:57)△上川大樹(京葉ガス)
影浦心(日本中央競馬会)○GS技有・大内刈(GS0:14)△尾原琢仁(旭化成)
太田彪雅(東海大3年)○優勢[技有・隅落]△上田轄麻(新日鐵住金)

【敗者復活戦】
王子谷剛志(旭化成)○合技[支釣込足・横四方固](2:00)△上川大樹(京葉ガス)
上田轄麻(新日鐵住金)○GS反則[指導3](GS0:50)△尾原琢仁(旭化成)

【準決勝】
佐藤和哉(新日鐵住金)○GS反則[指導3](GS3:10)△七戸龍(九州電力)
影浦心(日本中央競馬会)○GS反則[指導3](GS0:41)△太田彪雅(東海大3年)

【3位決定戦】
太田彪雅(東海大3年)○GS反則[指導3](GS0:27)△王子谷剛志(旭化成)
上田轄麻(新日鐵住金)○GS反則[指導3](GS0:13)△七戸龍(九州電力)

【決勝】
影浦心(日本中央競馬会)○GS反則[指導3](GS3:53)△佐藤和哉(新日鐵住金)

※ eJudoメルマガ版11月19日掲載記事より転載・編集しています。

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