PAGE TOP ↑

柔道1

柔道2
柔道4 柔道5

eJudoとは?情報募集・お問い合わせサイトマップ

立川新が3連覇達成、激戦81kg級は小原拳哉が制す・平成30年度講道館杯全日本柔道体重別選手権大会第1日男子レポート

(2018年11月19日)

※ eJudoメルマガ版11月19日掲載記事より転載・編集しています。
立川新が3連覇達成、激戦81kg級は小原拳哉が制す
平成30年度講道館杯全日本柔道体重別選手権大会第1日男子4階級レポート(60kg級、66kg級、73kg級、81kg級)
大会日時:2018(平成30)年11月3日
於:千葉ポートアリーナ

取材・文:古田英毅/林さとる
撮影:辺見真也/eJudo編集部

→第1日男子プレビュー記事
→第1日男子4階級全試合結果

■ 60kg級・大島優磨が優勝、選抜体重別に続き国内2連勝飾る
eJudo Photo
60kg級2回戦、竪山将が古賀玄暉を「横三角」からの崩上四方固で抑え込む

(エントリー34名)

【決勝まで】

上位進出が期待されていた世界ジュニア選手権王者・古賀玄暉(日本体育大2年)は初戦敗退。2回戦で竪山将(パーク24)に崩上四方固「一本」(2:40)で屈した。

昨年高校生でベスト4まで進んだ市川龍之介(東海大1年)は2回戦で福田大悟(鹿屋体育大1年)を小外掛「一本」(2:03)、3回戦で田中崇晃(ALSOK)を「指導3」の反則(3:14)と強豪を立て続けに破ってベスト8まで進んだが、ここで米村克麻(センコー)に巴投「一本」(1:58)で屈すると敗者復活戦では竪山に巴投「技有」で敗れて入賞ならず。最終結果は7位だった。

eJudo Photo
60kg級2回戦、志々目徹が泉谷僚児から左内股「一本」

eJudo Photo
60kg級2回戦、大島優磨が近藤隼斗から左背負投「一本」

新人、中堅、ベテランと入り乱れた層の厚いトーナメントから抜け出したのは本命と目された実力者2人。第1シードの志々目徹(了徳寺学園職)と第2シードの大島優磨(旭化成)が順当に決勝進出を果たした。

アジア大会で日本代表を務めたばかりの志々目は2回戦で泉谷僚児(兵庫県警察)を内股「一本」(GS0:30)で下して大会を滑り出す。3回戦で浅見喜尚(愛媛県警察)を大外刈「一本」(1:04)で破ると、勝負どころとなった準々決勝では青木大(パーク24)を僅か12秒の内股「一本」に仕留めてベスト4入りを決める。準決勝では大一番を乗り越えた安心感からかやや勢いが落ちたが、森田将矢(鹿屋体育大3年)に「指導3」の反則(GS2:16)で勝利して決勝へと駒を進めた。

4月の選抜体重別の覇者・大島優磨(旭化成)は初戦(2回戦)で注目の高校王者・近藤隼斗(佐賀工高2年)とマッチアップ。この相手を背負投「一本」(1:22)で退け力の差を見せつけると、2回戦では今年の世界ジュニア選手権55kg級3位の半田颯(桐蔭横浜大1年)に横四方固「一本」(2:34)で勝利。準々決勝で竪山将(パーク24)に小内巻込「技有」で優勢勝ちすると、準決勝では米村克麻(センコー)を横四方固「一本」(GS0:13)で破りしっかり決勝進出を決めた。

eJudo Photo
決勝、拮抗を志々目が大外刈でブレイク

eJudo Photo
大島の前進の前に、志々目は片手内股での回避が増え始める

【決勝】

大島優磨(旭化成)○GS横四方固(GS5:52)△志々目徹(了徳寺学園職)

志々目、大島ともに左組みの相四つ。志々目はやる気十分、横変形に構え合ったところから両襟を持って左大外刈で思い切った先制攻撃、大島が伏せて「待て」。以後も釣り手の肘を高く揚げてプレッシャーを掛け主導権を取り掛かるが、この志々目の攻勢は序盤40秒余で終息。大島が引き手で襟、機を見て袖を得ては得意の寝勝負のプレッシャーを掛けながら徹底して前に出続け、じわじわと展開は大島の側に移る。1分23秒、場外を背負った志々目が片手の内股で潰れて状況を流すと主審は見逃さず、偽装攻撃の「指導」。

以降は徹底して前に出続ける大島が主導権を掌握、前に詰めることで志々目の間合いを潰しながら片襟の小内刈に引込返、片襟を持っての横巴と寝勝負を強く意識した技で攻める。志々目釣り手の肘を高く揚げて抵抗するも時間の経過とともに大島有利の色は濃くなり、志々目は場外に向かって手を離して内股でリセットするという「指導」ギリギリの危うい行動を2分56秒、3分27秒、3分45秒と立て続けに繰り出すこととなる。志々目がこの「内股による回避行動」を取るかどうかはこの選手の試合展開を読むバロメーター、その頻度が上がっていることに大島優位の展開は明らか。最終盤の志々目の片手内股を大島が透かしたところでタイムアップ、試合はGS延長戦へ。

eJudo Photo
大島が志々目を後方に引き込み寝技を展開

eJudo Photo
そのまま横四方固で抑え込み「一本」

延長は、前に出る大島と、下げられながらもスポット的な一撃で投げに掛かる志々目という構図。大島は片襟を有効に使い、左小内刈を繰り出しながら前へ。志々目は奇襲の右一本背負投を繰り出すが潰れ、大島は片襟で引き寄せての「横巴」、さらにそのまま立って前進を続けてと非常に精力的。志々目が両手で片袖を抱えての左内股に潰れたGS延長54秒、志々目に「取り組まない」咎で「指導2」。

勝負どころと見た大島は3つ目の「指導」を求めてあくまで前へ。志々目は体力的な消耗明らか、大ピンチだがそれでも技一発の威力を晒して踏みとどまる。GS1分29秒には引き手で襟を持って出て来た大島を呼び込みながら奥襟を叩き左大内刈一発、大島危うく伏せて「待て」。この強烈な一撃の印象が利き、以後幾度か志々目が犯した「場外」と「偽装攻撃」すれすれの危うい行動は審判がおそらくは投げの決着を企図してウォッチ、GS4分を越えたところで片襟と袖を絞って前進した大島がタイミングを見極めんとしたまま出遅れてしまい、GS4分18秒大島に片襟の「指導1」。

直後、大島前襟を握った釣り手を振り立てるなり、脚を深々差し込んで左小内刈。ポイントが想起される技だったが志々目なんとか耐え切る。潮目の変化になり得る一撃だったが、それは志々目も十分意識しており、まず手を離しながらも左内股、次はこれを撒き餌に足を差しこんで粘り強く揚げる形の左内股を放ち、続けて投げに掛かって主審に反則宣告の暇を与えず。試合時間はついに9分を超える。

ここで、引き手争いの中から大島が袖を持ち、釣り手で片襟を差しながら左足を伸ばしての支釣込足に体を捨てる。形は浮技様、放った時点では牽制の崩し技とも思われた一撃であったが、実はこれは大島が決着を期した勝負技。志々目が前に崩れると大島は伏せた相手の下側に残った釣り手を離さず引込返。体を捨ててからここまでがひと繋がり、立ちから寝までを連携させたこの攻撃に志々目一瞬出遅れて回旋を許してしまう。必死に脚を絡むが大島はこれを抜いて横四方固。志々目一瞬肩ブリッジの形で返しかかるが、大島がこれを戻し、脚で腕を制する形で抑え込むと疲労し切った志々目はもはや動けず。総試合時間9分52秒、「一本」が宣告されて大島の初優勝が決まった。

eJudo Photo
60kg級上位入賞者。左から2位の志々目徹、優勝の大島優磨、3位の青木大と竪山将。

eJudo Photo
準決勝、大島が米村克麻から横四方固「一本」

【入賞者】
優 勝:大島優磨(旭化成)
準優勝:志々目徹(了徳寺学園職)
第三位:青木大(パーク24)、堅山将(パーク24)

【グランドスラム大阪日本代表選手】
髙藤直寿(パーク24)、永山竜樹(東海大4年)、大島優磨(旭化成)、志々目徹(了徳寺学園職)

大島優磨選手のコメント
「とてもうれしいですし、この大会は東京五輪に向けてギリギリ繋がる最後の大会と思っていたので良かったです。自分のことになるんですけど、昨日、子どもが生まれて、子どものためにも、頑張ってくれた奥さんのためにも自分が頑張りたかった。一戦一戦上を見ず、目の前の試合で自分の柔道をすることを心掛けました。トップの人たちにはまだまだ先を行かれているので、追いついて、追い抜けるように頑張ります。」

【準々決勝】
志々目徹(了徳寺学園職)○内股(0:12)△青木大(パーク24)
森田将矢(鹿屋体育大3年)○GS技有・小内刈(GS0:19)△宮本拓実(自衛隊体育学校)
大島優磨(旭化成)○優勢[技有・小内巻込]△竪山将(パーク24)
米村克麻(センコー)○巴投(1:58)△市川龍之介(東海大1年)

【敗者復活戦】
青木大(パーク24)○巴投(0:10)△宮本拓実(自衛隊体育学校)
竪山将(パーク24)○優勢[技有・巴投]△市川龍之介(東海大1年)

【準決勝】
志々目徹(了徳寺学園職)○GS反則[指導3](GS2:16)△森田将矢(鹿屋体育大3年)
大島優磨(旭化成)○GS横四方固(GS0:13)△米村克麻(センコー)

【3位決定戦】
青木大(パーク24)○GS技有・隅返(GS5:14)△米村克麻(センコー)
竪山将(パーク24)○GS技有・内股(GS0:17)△森田将矢(鹿屋体育大3年)

【決勝】
大島優磨(旭化成)○GS横四方固(GS5:52)△志々目徹(了徳寺学園職)

■ 66kg級・藤阪太郎が初優勝、3年連続3位から一気に抜け出し頂点極める
eJudo Photo
66kg級準決勝、藤阪太郎が西山祐貴から豪快な裏投「一本」

eJudo Photo
66kg級準決勝、磯田範仁が藤阪泰恒から左小外刈「技有」

(エントリー33名)

【決勝まで】

第1シードの丸山城志郎(ミキハウス)が左膝の負傷により欠場。決勝には藤阪太郎(大阪府警察)と磯田範仁(国士舘大教)が勝ち上がった。

藤阪太郎は初戦(2回戦)で日野賢明(日本大4年)に内股「技有」で優勢勝ちすると、2回戦ではインターハイ王者・桂嵐斗(長崎日大高3年)に「指導3」の反則(4:00)で手堅く勝利。山場となった準々決勝で橋口祐葵(パーク24)を大内刈「技有」の優勢で破ると、準決勝では西山祐貴(警視庁)を豪快な裏投「一本」(1:00)で一蹴して決勝に進出。

一方の磯田は初戦(2回戦)から浅利昌哉(ALSOK)とマッチアップする過酷な組み合わせ。この試合を「指導3」の反則(3:27)で突破すると、以降は3回戦で長倉力斗(一成塾柔道場)に小外刈と肩固の合技「一本」(0:58)、準々決勝で島達人(つくばユナイテッド)に小外刈と横四方固の合技「一本」(3:37)、準決勝で藤阪泰恒(國學院大4年)に小外刈と横四方固の合技「一本」(3:49)と、得意の小外刈と寝技による勝利を3試合続けて決勝進出を果たした。

第2シードの田川兼三(筑波大4年)は3回戦で藤阪泰恒に腰車「一本」(GS1:15)で苦杯、髙上智史(旭化成)は初戦(2回戦)で島達人に背負投「技有」で優勢負けを喫した。髙市賢悟(旭化成)は田川と同じく藤阪泰恒に準々決勝で「指導3」反則(3:50)で敗退、敗者復活戦を勝ち上がったものの3位決定戦では西山祐貴(警視庁)に背負投「技有」の優勢で敗れて表彰台には辿り着けなかった。

eJudo Photo
藤阪と磯田による66kg級決勝戦

eJudo Photo
藤阪が磯田のお株を奪う右小外刈

eJudo Photo
浴びせるように押し込んで「一本」(※別角度から)

【決勝】

藤阪太郎(大阪府警察)○GS小外刈(GS3:10)△磯田範仁(国士舘大教)

藤阪が右、磯田が左組みのケンカ四つ。背中を抱えて接近戦で勝負をしたい藤阪、一方前襟をしっかり掴んで間合いを取って得意の左小外刈を狙いたい磯田という構図で、釣り手の力関係を変えながらの引き手争いが続く。相手の手の内を良く知るがゆえなかなか一方的な組み手が出来上がらないが、それでも磯田が崩し技の内股から隅返、藤阪は隅返に「巴十字」で攻め合う。2分28秒には藤阪が引き手で袖、釣り手で背中を得て鋭い左内股を見せるが磯田ケンケンで場外に逃れ「待て」。直後の展開では磯田が相手の右体落の戻りに左小外刈を絡めて伏せさせ、3分27秒にも踏み込み良く左小外刈に飛び込むなどポイント級の技を見せるがいずれも取り切れない。双方1つの「指導」を失うことない拮抗のまま、試合はGS延長戦へ。

藤阪が詰め、磯田が手先でひとまず止めるという攻防一合を経たところで主審が試合に介入、GS23秒双方に「取り組まない」咎による「指導」。ここから藤阪がペースアップして試合は加速、相手の釣り手を一瞬殺して奥襟を叩くと右内股、さらに「巴十字」。いずれも防がれたもののGS1分30秒に浮技様の隅返に飛び込んだところで主審が藤阪の攻勢を認め、磯田にのみ消極的との咎で「指導2」。後のなくなった磯田は横襟を掴むと左内股、さらに藤阪が釣り手の肘を揚げた瞬間先手を取って背中を抱いての密着戦を挑むなど加速。磯田が左大外刈から左内股と技を継いだGS2分41秒には藤阪の側にも「指導2」が宣告される。

互いに退けなくなったこの状況で、藤阪が釣り手で背中、磯田が横襟を持っての腰の差し合いとなる。互いに内股のフェイントを繰り出すこの攻防で藤阪は引き手の袖を自らの腹に引き付けて、優位を確保。接近戦の中、磯田は「サリハニ」様に足を突っ込み、ここから内股に繋げんと力を籠めなおす。前に踏み込み、しかしこれは果たせずとみて姿勢を直そうとしたその瞬間、藤阪がその奥足めがけて右小外刈。後方への重心移動のタイミングに合わせて軸足を抜き上げられた磯田はまったく抗することが出来ず、両足を揚げる形で背中から落下。もちろんこれは「一本」。試合時間は7分10秒、藤阪の初優勝が決まった。

藤阪は3年連続の3位から一気に抜け出し、うれしい初優勝。
66kg級全体としては、国際経験のある田川や磯田、橋口、髙市、高上らが勝ち切れず「阿部一二三以外は勝ったり負けたり」の状態が継続した形。3名がグランドスラム大阪への進出権は得たが、どの選手も阿部一二三の地位に挑戦する権利にまでは手が届いていない。阿部一二三の一強状態がまた一段加速した大会であった。

eJudo Photo
66kg級上位入賞者。左から2位の磯田範仁、優勝の藤阪太郎、3位の藤阪泰恒と西山祐貴。

【入賞者】
優 勝:藤阪太郎(大阪府警察)
準優勝:磯田範仁(国士舘大教)
第三位:藤阪泰恒(國學院大4年)、西山祐貴(警視庁)

【グランドスラム大阪日本代表選手】
阿部一二三(日本体育大3年)、丸山城志郎(ミキハウス)、田川兼三(筑波大4年)、藤阪太郎(大阪府警察)

藤阪太郎選手のコメント
「この大会はあと一歩の壁を破れず3年連続で3位。なんとかして優勝したいと思っていました。本当に良かったです。(決勝は)学生の頃から何回も試合をやっていてお互いが手の内をわかっている。それでああいう試合になってしまったのですが、後輩には絶対に負けたくないという強い思いがありました。意地で勝ちに行きました。(-兄弟で表彰台に上がりましたね?)いえ、自分のことだけで大丈夫です(笑)。この大会の優勝を自信にして、次の大会でも勝てるように頑張りたいと思います。」

【準々決勝】
西山祐貴(警視庁)○GS反則[指導3](GS4:12)△木戸清孝(天理大クラブ)
藤阪太郎(大阪府警察)○優勢[技有・大内刈]△橋口祐葵(パーク24)
藤阪泰恒(國學院大4年)○反則[指導3](3:50)△髙市賢悟(旭化成)
磯田範仁(国士舘大教)○合技[小外刈・横四方固](3:37)△島達人(つくばユナイテッド)

【敗者復活戦】
木戸清孝(天理大クラブ)○内股透(1:29)△橋口祐葵(パーク24)
髙市賢悟(旭化成)○優勢[技有・引込返]△島達人(つくばユナイテッド)

【準決勝】
藤阪太郎(大阪府警察)○裏投(1:00)△西山祐貴(警視庁)
磯田範仁(国士舘大教)○合技[小外刈・横四方固](3:49)△藤阪泰恒(國學院大4年)

【3位決定戦】
藤阪泰恒(國學院大4年)○GS反則[指導3](GS1:12)△木戸清孝(天理大クラブ)
西山祐貴(警視庁)○優勢[技有・背負投]△髙市賢悟(旭化成)

【決勝】
藤阪太郎(大阪府警察)○GS小外刈(GS3:10)△磯田範仁(国士舘大教)

■ 73kg級・立川新が海老沼匡を破り3連覇、巧みな組み手捌きでライバルたちを完封
eJudo Photo
73kg級2回戦、立川新が大吉賢から左一本背負投「技有」

eJudo Photo
73kg級準決勝、海老沼匡が野上廉太郎から左腰車「一本」

eJudo Photo
73kg級3回戦、石郷岡秀征が古賀颯人から右背負投「一本」

【決勝まで】

第1シードの立川新(東海大3年)と第2シードの海老沼匡(パーク24)が順当に決勝進出。立川は世界選手権で、海老沼はアジア大会で団体戦の代表を務めて国際大会への適性は十分証明、大野将平と橋本壮市という2人の世界王者への挑戦権を掛けて、絶対に負けられない大会だ。

立川は初戦(2回戦)で大吉賢(日本体育大2年)をGS延長戦での一本背負投「技有」(GS3:29)で下すと、以降は3回戦で小寺将史(警視庁)に「指導3」の反則(GS2:34)、準々決勝で岩渕侑生(センコー)に「指導3」の反則(GS3:21)、準決勝で石郷岡秀征(筑波大2年)にこれも「指導3」反則(GS1:11)と、GS延長戦での「指導3」勝利を3試合続ける。持ち味である組み手と試合運びの上手さを存分に発揮して、3年連続となる決勝進出を果たした。

一方の海老沼は得意の投技がこの日も冴える。初戦(2回戦)では世界ジュニア選手権の準優勝者・塚本綾(日本体育大1年)を一本背負投と小内刈の合技「一本」(1:10)で一蹴。3回戦は三宅隆洋(陸上自衛隊習志野駐屯地)を相手に「指導3」の反則(3:29)での勝利となったが、以降は準々決勝で竹内信康(新日鐵住金)に一本背負投「技有」の優勢、準決勝で野上廉太郎(筑波大2年)に肩車「一本」(GS0:22)と実力者2名からいずれも投げによるポイントを奪って、しっかり決勝へと勝ち上がった。

上位候補に挙げられていた今季の全日本学生体重別王者・古賀颯人(日本体育大3年)は3回戦で石郷岡に背負投「一本」(3:19)で敗れてトーナメントから脱落。今シーズンは絶好調だったが一学年下の強者に足元を掬われた形で、シニア上位陣との対戦にはたどり着けなかった。昨年全日本ジュニアを制した石郷岡は今年なかなか結果を上げられなかったが雌伏実って大戦果、前述の通り準決勝で立川に屈したものの3位決定戦に勝利して、昨年2位の同僚・野上廉太郎とともに3位に入賞を果たした。

eJudo Photo
海老沼と立川の決勝は厳しい組み手争いが続く

eJudo Photo
延長、海老沼の左釣込腰を立川が受け止めカウンターの左体落

eJudo Photo

eJudo Photo
スピードを保ったまま最後まで投げ切り「一本」

【決勝】

立川新(東海大3年)○GS体落(GS0:21)△海老沼匡(パーク24)

海老沼は気合十分。数度跳ねて試合場に入り、「はじめ」が宣せられると「シャー!」と気合いの声を上げて立川に対峙。

4月の全日本選抜体重別選手権では海老沼が袖釣込腰「一本」で勝利しているこのカードはともに左組みの相四つ。組み手が命の立川は両手を張って海老沼を押しとどめ、引き手で襟を掴むと左小外刈を絡めながら釣り手を出し入れして奥襟の確保を狙う。海老沼の組み手も手先の動き非常に速く、互いが危険を察知すると切り合い、やり直すことが早いテンポで続き、攻防は緊迫も展開自体は動かず。59秒には双方に「取り組まない」咎による「指導」。直後立川が引き手で襟を得るなり支釣込足、海老沼前のめりに倒れるがすぐ立ち直ると、背中に食いついていた立川に正面から体を預けて担ぎ技様に乗り込み、ポイントをアピールする気合いを一声。これは寝姿勢からということでスルーされたが、どちらも集中力極めて高く、試合はまさに予断を許さず。

立川は引き手で襟を掴むといったん体を開いておいて鋭い左大内刈。ブンと振り回した勢いでそのまま膝をつくが、海老沼は逃げずに組んだ手をそのまま掴み続け、上から見下ろして「待て」。直後海老沼が左釣込腰、立川は腰を入れられる前に押しとどめるが、海老沼はこれをきっかけに奥襟をガッチリ掴んで左大外刈の形で牽制。立川が応じ、ここで双方奥襟を掴みあってのがっぷり四つとなる。しばしあって海老沼がこれを左大外刈でブレイク、膝裏に足を引っ掛けて乗り込むと立川危うく裏側に抜けて背を向け、膝を着いて潰れ「待て」。機と見た海老沼さらに組み際に左一本背負投で投げに掛かり、これは立川を背中に載せたまま潰れたが、明らかな攻勢が2シークエンス続いたことで主審は海老沼の攻勢を確信。3分10秒立川に消極的との咎で「指導2」。

立川前に出て奥襟を叩くが海老沼は鋭い大内刈で迎え撃つと、「やぐら投げ」様の右大腰。立川一瞬重心が載ってしまうが降りるなり左大内刈で反撃、さきほど逆の大腰を打った際に背中を抱えていた海老沼の引き手は持ちどころを失い、立川が圧を掛けると腰に手を当てたまま潰れてしまう。3分28秒海老沼に防御姿勢の「指導2」が宣告され、スコアはタイとなる。このまま本戦は終了、試合はGS延長戦へ。

延長が始まるなり海老沼がラッシュ、引き手で襟を得るなり左の「一本大外」で刈り込む。回避した立川が左大内刈を放って反撃、海老沼が迎え撃ったところで一瞬双方が奥襟を得てのガップリ四つ。海老沼前段の攻防の余熱冷めぬまますかさず左釣込腰に打って出る。真横に投げんとコンパクトに腰を切ったが相手をリフトし切れず、切った腰を戻さんと技が止まったその瞬間、立川の左体落が閃く。海老沼は腰を切ったまま立川の首下残った釣り手を抱えこまれまま剛体、立川が巻き込むように体を捨てると木が切り倒されたように吹っ飛び、主審は即座に「一本」を宣告。試合時間は4分21秒。立川の講道館杯3連覇達成。

eJudo Photo
表彰を受ける立川。これで講道館杯3連覇達成。

実は荒れることこそがディフォルト、あらゆるカテゴリの強者が30人以上揃った「地獄」というべきこの講道館杯を、それも全ての選手にターゲットとされる第1シードから勝ち抜いて3連覇を果たす立川の強さは尋常ではない。「指導3」の勝利が3試合、迎えた決勝も延長の末「後の先」(と言って問題ないかと思われる)での決着という形で一見勝ちぶり派手ではないが、そこにこそ立川の凄みがある。功名地獄の極みである講道館杯は他の大会とは戦い方が異なり、確実に勝ち抜くには、自身の長所を発揮する能力よりもむしろ相手の良いところを消す力、「削り合い」で相手を潰すモードが必要。異常なまでの組み手力を誇る立川がこの講道館杯にもっとも向いたタイプの選手であり、「投げ合うこと」が必須とされる現行ルール下においてもこの「講道館杯の法則」がいまだ生きていることが証明された1日であったと言える。我慢に我慢を重ね、後のなくなった海老沼の強引な一発を狙い済まして切り返した決勝は、まさしく真骨頂であった。

eJudo Photo
73kg級上位入賞者。左から2位の海老沼匡、優勝の立川新、3位の石郷岡秀征と野上廉太郎。

【入賞者】
優 勝:立川新(東海大3年)
準優勝:海老沼匡(パーク24)
第三位:野上廉太郎(筑波大2年)、石郷岡秀征(筑波大2年)

【グランドスラム大阪日本代表選手】
橋本壮市(パーク24)、大野将平(旭化成)、立川新(東海大3年)、海老沼匡(パーク24)

立川新選手のコメント
「1回戦からしんどい試合したが、粘って勝ち切る自分の柔道が出来たと思います。『(相手に)投げられない』ことを心掛けてやってきましたが、技も少しづつ出てきて、決勝ではこちらが投げることが出来た。少しは成長したかと思います。決勝は『最初は我慢』と言われていて、粘っておいての後半勝負と考えていました。グランドスラム大阪で優勝して、世界選手権でも勝ちます。」

【準々決勝】
立川新(東海大3年)○GS反則[指導3](GS3:21)△岩渕侑生(センコー)
石郷岡秀征(筑波大2年)○GS反則[指導3](GS2:09)△小林礼弥(鹿屋体育大2年)
海老沼匡(パーク24)○優勢[技有・一本背負投]△竹内信康(新日鐵住金)
野上廉太郎(筑波大2年)○払腰(1:06)△原田健士(日本体育大2年)

【敗者復活戦】
岩渕侑生(センコー)○優勢[技有・背負投]△小林礼弥(鹿屋体育大2年)
竹内信康(新日鐵住金)○優勢[技有・袖釣込腰]△原田健士(日本体育大2年)

【準決勝】
立川新(東海大3年)○GS反則[指導3](GS1:11)△石郷岡秀征(筑波大2年)
海老沼匡(パーク24)○GS肩車(GS0:22)△野上廉太郎(筑波大2年)

【3位決定戦】
野上廉太郎(筑波大2年)○GS技有・隅落(GS3:48)△岩渕侑生(センコー)
石郷岡秀征(筑波大2年)○袖釣込腰(2:00)△竹内信康(新日鐵住金)

【決勝】
立川新(東海大3年)○GS体落(GS0:21)△海老沼匡(パーク24)

■ 81kg級・大荒れのトーナメントを小原拳哉が制す
eJudo Photo
81kg級2回戦、春山友紀が永瀬貴規から開始早々の左一本背負投「技有」

eJudo Photo
81kg級3回戦、長島啓太が佐々木健志の右小内刈を透かして浮落「技有」

eJudo Photo
81kg級準決勝、佐藤正大が長島啓太から切れ味鋭い出足払「一本」

eJudo Photo
81kg級準決勝、小原拳哉が中園史寛から引込返「技有」

(エントリー36名)

【決勝まで】

激戦区81kg級はこれぞ講道館杯と評すべき荒れ模様。大会開始早々、丸山剛毅(パーク24)が佐藤佑樹(山形刑務所)に隅返「技有」で優勢負けを喫した2回戦がその幕開け。同じ2回戦でリオデジャネイロ五輪銅メダリストのもと世界王者永瀬貴規(旭化成)が春山友紀(自衛隊体育学校)を相手に「技有」を取り合って迎えたGS延長戦で力尽き、「指導3」を失って(GS3:28)敗退。続く3回戦ではアジア大会で日本代表を務めた優勝候補・佐々木健志(筑波大4年)が長島啓太(日本中央競馬会)を相手に試合終了間際にまさかの失態、小内刈を透かされての浮落「技有」優勢で敗れた。

アジア大会からこれで4敗、「自滅」を繰り返した格好の佐々木は「リスクを良く考えた柔道をしなければならない」とさすがに悄然。負傷から今夏復帰、8月の実業個人では内股「一本」で一蹴した春山にまさかの敗北を喫した永瀬は「試合の雰囲気に呑まれていた。また内容の整理がつかない」と率直に語ってショックを隠し切れない様子だった。両者ともこれまでの実績からグランドスラム大阪の代表には選ばれて五輪レースには踏みとどまったが、もはや1度たりとも失敗出来ぬ、非常に厳しい立場に立たされることとなった。

(→[参考記事]当日ニュース「佐々木、永瀬ら81kg級は有力候補全滅、きょう発表予定のグランドスラム大阪出場権の行方は混沌」

この大荒れのトーナメントを決勝まで勝ち上がったのは佐藤正大(自衛隊体育学校)と小原拳哉(パーク24)の2名。

この日の佐藤は試合中に激しく体を揺すったり自身の体を何度も叩いたりと、あまりの集中ゆえか立ち振る舞い少々異様。「ゾーンに入っている」ということなのだろうか。その戦いぶりまさしく「獣」であった。初戦(2回戦)で中矢力(ALSOK)を隅落「一本」(2:57)に屠ると、以降は3回戦で北浦大基(兵庫県警察)にGS延長戦での大外刈「技有」(GS3:37)、準々決勝で糸井滉平(大阪府警察)に「指導3」反則(GS2:49)でそれぞれ勝利してベスト4入りを決める。勝負どころとなった準決勝では長島啓太(日本中央競馬会)に切れ味鋭い出足払「一本」(3:19)で完勝。決勝の畳へと辿り着いた。

一方の小原は初戦(2回戦)で長澤大雅(國學院大2年)を払腰返と背負投の合技「一本」(3:43)で下すと、大きな勝負どころと目された3回戦では実力者・釘丸将太(国士舘大4年)をGS延長戦での背負投「技有」(GS2:42)で撃破。準々決勝では永瀬の消えた山を勝ち上がってきた遠江幸佑(佐賀県警察)を一本背負投「一本」(2:19)で破り、準決勝は中園史寛(福岡県警察)に引込返「技有」で勝利してしっかり決勝進出。

eJudo Photo
81kg級決勝、小原拳哉が小外掛から谷落に体を捨てる

eJudo Photo

eJudo Photo
佐藤正大は辛うじて失点を逃れ被り返そうとするが、横四方固で抑え込まれ万事休す

【決勝】

小原拳哉(パーク24)○GS技有・横四方固(GS1:40)△佐藤正大(自衛隊体育学校)

佐藤が右、小原が左組みのケンカ四つ。この日絶好調の佐藤はドン、と小原を諸手で突き飛ばして試合をスタート。しかし試合はどちらかというと小原が優位、引き手争いから抜け出した28秒には左内股の形で腰を回しこんで佐藤を潰し、1分13秒には思い切り良い巴投。上体の拘束がしっかり効いたスピード豊かな一撃、ポイントが想起されるこの技に佐藤回転して腹ばいに落ち「待て」となるも、小原が再び、今度は両足の巴投で佐藤の懐に潜り込んだ直後の1分42秒、主審は佐藤に「指導」を宣告。

佐藤は右大内刈、右小内刈と放って粘り強く抵抗するが、小原の優位は変わらず。打開を期した佐藤2分55秒には釣り手で背中を叩いて一発勝負を試みるが瞬間小原がカウンターで小外刈を呉れ、佐藤がたたらを踏む形で後退して攻防は終息。小原が小外刈、さらに大外刈に触っておいての体落と攻めた3分9秒には佐藤に2つ目の「指導」。佐藤の隅返を小原が乗り越えて抑え込まんとしたところで本戦4分間が終了、試合はGS延長戦へ。

この日異次元級の集中力を発揮している佐藤は不利にも気持ちは退かず、引き手を争いながら体をゆすっては片手の右背負投に入り込み、やや陣地を回復の気配。しかしGS59秒、釣り手を巻き返そうとした瞬間小原が左小外掛に体を捨てる。佐藤体側から落下、しかしポイント失陥の有無を確かめることなくいち早く行動を起こし傍らの小原の体に乗り込んで寝勝負に入る。あわや逆転、とも思われたがやはり体勢は小原有利、抱くように乗り返して横四方固。両手が利く体勢の佐藤は必死で逃れ「解けた」に持ち込むが、この時既に15秒が経過。「技有」が宣告されて小原の講道館杯初優勝が決まった。

eJudo Photo
81kg級上位入賞者。左から2位の佐藤正大、優勝の小原拳哉、3位の中園史寛と長島啓太。

【入賞者】
優 勝:小原拳哉(パーク24)
準優勝:佐藤正大(自衛隊体育学校)
第三位:中園史寛(福岡県警察)、長島啓太(日本中央競馬会)

【グランドスラム大阪日本代表選手】
佐々木健志(筑波大4年)、小原拳哉(パーク24)、佐藤正大(自衛隊体育学校)、永瀬貴規(旭化成)

小原拳哉選手のコメント
「高校3年生の頃からずっと3位とか2位ばかり、なんとしても優勝したいと臨んだ大会でした。最近課題として寝技をやっていたのですが、それが役に立ちました。GSの試合もありましたが、最後まで気持ちを切らずに戦えたと思います。決勝を勝ち切ったことは自信になります。ここで優勝出来なかったら五輪に絡めないと思っていたのでホッとしました。まずはグランドスラム大阪で優勝することを考えます」

【準々決勝】
長島啓太(日本中央競馬会)○上四方固(3:05)△佐藤佑樹(山形刑務所)
佐藤正大(自衛隊体育学校)○GS反則[指導3](GS2:49)△糸井滉平(大阪府警察)
小原拳哉(パーク24)○一本背負投(2:19)△遠江幸佑(佐賀県警察)
中園史寛(福岡県警察)○GS谷落(GS0:36)△尾方寿應(了徳寺学園職)

【敗者復活戦】
糸井滉平(大阪府警察)○不戦△佐藤佑樹(山形刑務所)
遠江幸佑(佐賀県警察)○合技[背負投・横四方固](2:26)△尾方寿應(了徳寺学園職)

【準決勝】
佐藤正大(自衛隊体育学校)○出足払(3:19)△長島啓太(日本中央競馬会)
小原拳哉(パーク24)○優勢[技有・引込返]△中園史寛(福岡県警察)

【3位決定戦】
中園史寛(福岡県警察)○GS反則[指導3](GS0:35)△糸井滉平(大阪府警察)
長島啓太(日本中央競馬会)○内股(2:31)△遠江幸佑(佐賀県警察)

【決勝】
小原拳哉(パーク24)○GS技有・横四方固(GS1:40)△佐藤正大(自衛隊体育学校)

※ eJudoメルマガ版11月19日掲載記事より転載・編集しています。

→eJudoトップページに戻る
→「ニュース・マッチレポート」に戻る
→「書評・DVD評」に戻る




supported by KAYAC 運営会社サイトポリシー  RSS copyright (c) 2005 ejudo all rights reserved.