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【隔週刊・嘉納治五郎師範のひとこと】第63回

(2018年10月15日)

※ eJudoメルマガ版10月14日掲載記事より転載・編集しています。
【隔週刊・嘉納治五郎師範のひとこと】第63回
世界の将来は、大なる株式会社のようなものになるのであって、各国は政治的には独立対峙しているが、社会的には一つになってしまうと思っている。
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嘉納治五郎師範
資料提供 公益財団法人講道館
copyright:Kodokan Judo Institute

※写真の無断転載および転用を厳に禁じます

出典:「天覧武道大会について」 作興8巻6号 昭和4年6月
(『嘉納治五郎大系』2巻325頁)
 
「株式会社」に「政治」。
講道館柔道の創始者、または教育家としての嘉納治五郎師範からは、連想しにくい単語が並んでいますが、師範はどのような意図で、今回の「ひとこと」を遺したのでしょうか。

「自他共栄」という理念、あるいは、その生涯にわたるグローバルな活動から、師範には国際的な平和主義者といったイメージがあるかもしれません。そんな師範の予想する未来の世界は決して、国家が発展解消し、新たな共同体が生まれるといったことはなく、各国の独立、対峙を前提にしながら、一定の秩序がある世界であったことが分かります。
 そして、そのような世界を「大なる株式会社のようなもの」としたわけです。
 
では、なぜ株式会社なのでしょうか。
株式会社においてはその持ち株の数が、その会社への影響力になるわけですが、株式会社のような未来の世界における「株」に相当するものを師範は「文化」としています。
 「社会的に一つ」になった世界でも、国家が独立対峙している以上、そこに何らかの序列がうまれます。そして、その中で強い影響力を持つには、軍事力などではなく、いかにその国の文化を世界に輸出することが出来るかにかかっている、そう師範は考えていたわけです。

そんな将来の世界において、日本が大株主という優位な立場になるために、何を輸出すれば良いと師範は考えたのか。「天覧武道大会について」という論考で、このような話が出てきたということで、想像が容易だと思いますが、柔道を含む「武道」です。もちろん、武道以外の日本文化を考えていなかったわけではありません。ただ、「武道」に最も期待していたことは間違いありません。

師範の希望通り、柔道は世界に広がりました。オリンピック種目になっている、この一事だけで、それを証明するのに十分でしょう。ですが、一方で、柔道が「日本文化」であるという考えはいかがでしょうか。希薄になっているのが実態ではないでしょうか。ワールドスポーツになり、多くの人に親しまれることは良いことかもしれません。ただ、師範の期待した「株」としての価値はいかがでしょうか・・・。この辺りは難しいところです。

さて、師範が多方面において活動をしていたことは、すでに知られているところですが、そのうちの1つに貴族院議員という政治家としての顔もありました。また、大学時代に理財学、つまり、今で言う経済学も専攻し、卒業後はそれを学習院でも教授していました。
「株式会社」も「政治」も師範が持つ数多くの顔の一部分だったわけです(※)。

※もっともこの方面についての評価は、あまりかんばしくないようです・・・。さすがの師範も得手不得手があったということでしょうか。
※読みやすさを考慮して引用は『嘉納治五郎大系』から行っています。

著者:元 敏季(ハジメ・トシキ)
1975年生まれ。柔道は中学校から始め、大学までは競技を中心に行うが、卒業論文を機に柔道の文化的側面に関心を持ち、大学院へ進学。凡そ10年、大学院・研究機関に所属するも、研究とは異なる分野の仕事に就き現在に至る。ライフワークとして嘉納治五郎に関する史料を蒐集・研究し、その成果を柔道振興のため発信しようとしている。

※ eJudoメルマガ版10月14日掲載記事より転載・編集しています。

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