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東海大浦安高が4年ぶり優勝、接戦の連続しぶとく勝ち抜く・第22回朱雀杯争奪選抜高等学校対抗柔道大会男子即日レポート

(2018年10月14日)

※ eJudoメルマガ版10月14日掲載記事より転載・編集しています。
東海大浦安高が4年ぶり優勝、接戦の連続しぶとく勝ち抜く
第22回朱雀杯争奪選抜高等学校対抗柔道大会男子即日レポート
第22回朱雀杯争奪選抜高等学校対抗柔道大会(主催 学校法人佐藤栄学園・平成国際大学)が14日、平成国際大学総合武道館(加須市)で行われ、20校がエントリーした男子第1部は東海大浦安高(千葉)が優勝した。同校の優勝は4年ぶり6回目、決勝は埼玉栄高(埼玉)を1-0で破った。

3位には修徳高(東京)と東海大相模高(神奈川)が入賞。一昨年度(昨年度は台風のため大会中止)の覇者桐蔭学園高(神奈川)は準々決勝で代表戦の末、修徳高に屈した。

最優秀選手賞には勝野好誠(東海大浦安高)が選ばれた。男子第2部は埼玉栄高が優勝した。

戦評と総評、第1部の記録(全試合のスコアと準々決勝以降の対戦詳細)および飛塚雅俊監督のコメント、第2部の記録(準々決勝以降のスコアと決勝の対戦詳細)は下記。

文責:古田英毅
撮影:eJudo編集部

■ 戦評
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昨年度大会は台風のため中止、2年ぶりの開催となった朱雀杯

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今年は男女合わせて4カテゴリに延べ72チームが集った

高校柔道界の新シーズン開幕を告げる最初の大型招待試合、第22回朱雀杯争奪選抜高等学校対抗柔道大会が14日、東日本の強豪男女合わせて40校(延べ72チーム)が集って、平成国際大学総合武道館で行われた。

現時点での新シーズンにおける男子高校柔道界の展望は、前代に高校選手権と金鷲旗の二冠を獲得し、絶対のエース斉藤立を擁する国士館高(東京)の独走。高校柔道界全体がこれまでの数年よりレベルが一段落ちると目される中で、同校と他校の戦力差は控えめに言って「絶大」。国士舘を凌ぐ、あるいは迫るチームがどこか、ではなくそもそも「果たして国士舘に本気で勝とうとするチームが現れるのか」が、これから冬季招待試合シリーズ終了までの大会観察の主眼である。

今大会には例年通り国士舘の出場はなく、事前予測として注目されるチームは、東海大相模高(神奈川)、埼玉栄高(埼玉)、そして前回(一昨年)大会で優勝して高校三冠へのスタートを切った桐蔭学園高(神奈川)ら。絶対的な強さを誇るチームがない中での観察ポイントは、戦力はもちろんのこと、なにより「伸びしろ」。選手が志向する柔道の質、チームの士気や自己評価の高さ、そして「本気度」がその見極めの項である

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2回戦、桐蔭学園高の中堅・中野智博が武南高の森山晟から大外刈「一本」

【決勝まで】

[A・Bブロック]

第1シードは桐蔭学園高(神奈川)。入学時最強と評された3年生代が抜けたこの大会のスターティングは先鋒から佐々木光太郎、山本成寿、中野智博、安藤健志、町方昂輝。中野と安藤は前代全国大会の畳を踏み、町方は招待試合シリーズでレギュラーに混ざって戦った経験がある。初戦(2回戦)は武南高(埼玉)を相手に佐々木が背負投「一本」、中野が大外刈「一本」、安藤が「一本大外」による「技有」優勢、町方が袈裟固「一本」と並べて4-0の快勝。続く準々決勝ではいよいよ今季充実が噂される修徳高との対戦を迎える。

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準々決勝、桐蔭学園の副将安藤健志が修徳高・田中佑弥から一本背負投「技有」

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大将戦、修徳・小嶋洸成が町方昂輝から内股巻込で2つ目の「技有」

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代表戦、「技有」リードの小嶋が安藤から左内股巻込「一本」。

この試合、桐蔭学園は先鋒の佐々木が修徳のポイントゲッター岡田尚樹を完封して引き分ける好スタート。しかし次鋒戦の引き分けを挟んだ中堅戦では抜き役を担うべき「虎の子」の全国クラスである中野が中村和真を相手にチャンスを作れぬまま引き分け。副将戦は安藤が田中佑弥を相手に一本背負投「技有」に3つの「指導」を積んで先制するが、大将戦は町方昂輝が修徳の大駒・小嶋洸成の内股巻込に場外際で2度捕まって合技「一本」で敗北。これでスコアは1-1のタイとなり、試合は代表者1名による決定戦に縺れ込む。

代表戦は修徳が小嶋、桐蔭学園はこの日動きいまひとつの試合巧者・中野ではなく2年生の安藤を選択して対峙。安藤は小嶋の鷹揚な組み手を縫って前進、大枠相手に場外を背負わせるところまで歩を進めるが以降の具体的戦略を欠き停滞。小嶋も場外に詰まると払巻込で潰れることを繰り返してなかなか試合が動かなかったが、小嶋がそれでもあくまで内股巻込で巻き切り1分10秒「技有」獲得。安藤は以後右大外刈に背負投、さらに先輩関根聖隆ばりの左「一本大外」と一本背負投のコンビネーションを繰り出して攻めるがいずれも効かず。最終盤、後のなくなった安藤が突進すると小嶋はこれを深々内股巻込に捉えて「一本」。これで試合が決した。

桐蔭学園高・高松正裕監督は、「ある程度しっかり作って来たつもりだったが、戦力を考えればよく頑張った。1月の予選までにしっかり鍛えたい」と総括の一言。前代から大きく減じた戦力事情を飲み込んで、取り得る戦略をフルに使っての再起を誓っていた。

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2回戦、加藤学園高の副将深井大雅が足立学園高・ルンルアング大介から大外刈「技有」

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準々決勝、東海大浦安高の大将勝野好誠が加藤学園高・宇佐美一誠から内股「一本」

準決勝における修徳との対戦権を争う下側の山では、東海大浦安高(千葉)と加藤学園高(静岡)が健闘。東海大浦安は初戦(2回戦)で前代インターハイ3位の白鴎大足利高(栃木)とマッチアップ。1-1で迎えた大将戦で勝野好誠が萩原龍聖から「指導2」の僅差優勢で勝利、この山場を2-1で勝ち抜けた。白鴎大足利は中堅澤口宗志がしっかり一本勝ちしたが副将杉之内暁が続けず引き分け、無念の初戦敗退。

加藤学園は初戦で前橋商業高(群馬)に3-2で競り勝つと、2回戦では伸びやかな柔道で足立学園高(東京)を圧倒、なんとスコア5-0で一蹴。堂々のベスト8入りを果たす。

迎えた準々決勝は東海大浦安高が先鋒藤野雄大の内股「技有」、大将勝野好誠の内股「一本」とポイントゲッター2人の活躍をテコに2-1で勝利、ベスト4へと名乗りを上げた。加藤学園は3月の高校選手権で無差別県代表を務めた副将深井大雅に期待したいところだったが、同じくサイズのある岡本泰崇に攻め込まれて引き分け。この試合は良いところを出せなかった。

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準決勝、東海大浦安の次鋒髙橋耀大が修徳・竹下博隆から大内返「技有」

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修徳は中堅・中村和真の背負投「技有」で反撃。

東海大浦安と修徳の準決勝は、接戦の末東海大浦安が勝利。

修徳の得点が見込まれた先鋒戦では、東海大浦安のポイントゲッター藤野雄大が岡田尚樹を完封。「指導1」リードで迎えた最終盤、残り数秒で岡田に「足取り」の咎による「指導」が加えられ、僅差の優勢で藤野が勝利を得ることとなった。東海大浦安は次鋒髙橋耀大が竹下博隆を合技「一本」に仕留めて2-0にリードを広げ、これで試合の大勢既に決した感あり。

中堅戦は修徳・中村和真が山口璃空から変則の背負投で「技有」を奪って1点を返すも、副将戦では田中佑弥が東海大浦安・岡本泰崇のサイズを攻略出来ず引き分け。試合は2-1の東海大浦安リードのまま、エース同士が戦う大将戦へともつれ込む。

大将戦、修徳・小嶋洸成が背負うバックグラウンドは、「一本勝ち」(あるいは「指導3」勝ち)のみでチームが逆転勝利、それ以外なら敗退確定という厳しいもの。小嶋は「指導1」リードを得るも以後ギアを上げるタイミングが遅れた感あり、流れを見ながら試合を進める勝野から2つ目の「指導」を奪ったときには試合は既に終盤。そのままタイムアップとなり、小嶋勝利もその内容は僅差の優勢にとどまった。結果、2-1の内容差で東海大浦安の勝利が決定。東海大浦安が混戦ブロックからファイナリストの座を勝ち得ることとなった。

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2回戦、埼玉栄高の中堅松崎渡が作新学院高・横山常星から体落「一本」

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2回戦、東海大相模の中堅工藤海人がつくば秀英高・志村洸太から合技「一本」。

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準々決勝、東海大相模の大将山本銀河が安田学園高・田邊勇斗から内股「一本」。

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準決勝、山野井爽が山本銀河の攻めを凌ぐ

[C・Dブロック]

下側の山からは埼玉栄と東海大相模の強豪2校が順当にベスト4入り。

埼玉栄は2回戦で作新学院高(栃木)を4-0、準々決勝では常盤高(群馬)を5-0と一方的なスコアでベスト4入り。メンバーは先鋒から西山真心、松本弾、松崎渡、田川聖、大将にエースの山野井爽。挙げた9点はいずれも「一本」、組み合わせにも恵まれ、ここまでは優勝候補の前評判に違わぬ戦いぶり。

東海大相模のスターティングは近藤那生樹、佐藤涼火、工藤海人、菅原光輝、山本銀河。初戦(2回戦)から強豪・つくば秀英高(茨城)とマッチアップするなかなか厳しい組み合わせだったが、ここは近藤の内股と大内刈による合技「一本」、工藤の上四方固「一本」、山本の隅落「一本」でしっかり勝ち抜けた。相手方の次鋒村岡英哉と副将旭征哉のポイントゲッター格2人はしっかり引き分けで止め、最終スコアは3-0の大差。

準々決勝は安田学園高(東京)とマッチアップ。この試合では先鋒近藤那生樹が近藤亮介を相手に大外刈「技有」でリードし、余裕を持って試合を進めながらも相手のイチかバチかの抱きつき攻撃に屈し残り1秒で裏投「一本」を食う不首尾。しかし次鋒の佐藤涼火が増地遼汰朗から大内刈「一本」で勝利して嫌な流れを切ると、中堅工藤の大内刈「一本」で完全にペースを掌握。最後は大将山本が田邊勇斗を内股「一本」に屠り、最終スコアは3-1だった。

迎えた準決勝、埼玉栄-東海大相模戦は事実上の決勝とすら目される大一番。先鋒戦は西山真心と近藤那生樹がともに譲らず引き分け。以後も双方得点を事前に織り込むことは難しい盤面であったが、次鋒戦で埼玉栄・松本弾が佐藤涼火を相手に打点の高い背負投を見事に決めて値千金の「一本」。

中堅戦、副将戦とも引き分けに終わって、試合は埼玉栄が1-0のリードを得たままエース同士がマッチアップする大将戦へ引き継がれる。この試合は一本勝ち必須の使命を負った東海大相模・山本銀河が前に出続けるが山野井爽を具体的に投げるだけの技と手立てに欠け、相手にペースの調整を許してしまう。挙げたポイントは最終盤に得た「指導2」に留まり、結果、1-1の内容差で埼玉栄が決勝に駒を進めることとなった。

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混戦ブロックをしぶとく勝ち上がった東海大浦安高

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決勝に臨む埼玉栄高

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藤野雄大と西山真心による先鋒戦

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次鋒戦、松本弾が片襟を差しての背負投で攻める

【決勝】

東海大浦安高 - 埼玉栄高
(先)藤野雄大 - 西山真心
(次)髙橋耀大 - 松本弾
(中)山口璃空 - 松崎渡
(副)岡本泰崇 - 田川聖
(大)勝野好誠 - 山野井爽

斬り込み役に取るべき人、抑えるべき人と、双方の自軍内でのニッチと果たすべき役割が似た選手同士がかち合うオーダーとなった。その最たるものはエース同士がマッチアップする大将戦だが、もしいずれかがビハインドを負って戦うことになった場合、これを乗り越えるだけの実力差はないものと考えられる。両軍先鋒戦、それが果たせずとも次鋒戦で得点し、リードを繋いで大将戦を迎えるのが理想的かつ手の届くもっとも現実的なシナリオ。

先鋒戦は東海大浦安・藤野雄大が左、埼玉栄・西山真心が右組みのケンカ四つ。引き手争いの中、1分11秒西山の側にのみやや不可解な片手の「指導」。以後の様相は、藤野の左背負投と西山の右背負投がかち合ってはじけ飛んだ中盤の攻防に端的、双方譲らぬままこれぞというチャンスのないまま引き分け。

次鋒戦は東海大浦安・髙橋耀大と埼玉栄・松本弾ともに左組みの相四つ。松本は左右にスタンスを変えながら片手の左背負投に片襟の左背負投、高橋は応じて左大外刈を繰り出して攻め合う。残り27秒、高橋の右袖釣込腰に松本が激しく畳に落ち、主審は試合を止めて合議を招集。あるいは「技有」宣告があり得るかと思われたが結局ここはスルー、松本が命拾いしてこの試合は引き分けに終わる。

中堅戦は東海大浦安・山口璃空が右、埼玉栄・松崎渡が左組みのケンカ四つ。山口が先んじて右大内刈にフェイントの小外刈で攻めると、松崎が思い切った左内股で応戦。山口ここぞと抱きついての谷落に体を捨て、松崎が体を入れ替えて浴びせるがこれも主審はスルー、ポイントは入らず。以後は引き手争いが続いて残り27秒松崎に「指導」。このままスコア動かずタイムアップとなり、この試合も引き分けとなった。

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副将戦、岡本泰崇が大内刈と内股で突進

副将戦は身長188センチ、体重125キロの東海大浦安・岡本泰崇、対する174センチ115キロの田川聖ともに右組みの相四つ。岡本は敢えて釣り手から持ち、引き手を「手四つ」で争いながら前へ、田川は片襟の右背負投でこの前進圧力を散らしながらチャンスを伺う。1分2秒双方に「指導」。直後岡本がケンケンの右内股で突進して田川を伏せさせ、以降は奥襟、あるいは相手に応じて肩越しのクロス組み手で背中を叩きながら右大外刈に右内股で攻める岡本、一方袖を絞って、あるいは片襟を差してこれを減速させる田川という構図で試合が進む。岡本最終盤に一段ギアを上げて右大外刈に右内股と連発、残り10秒で田川に「指導2」が与えられるが、田川ここは譲らじと右背負投を2連発して残り時間をやり過ごす。この試合も引き分け、スコア0-0のまま試合は大将同士の対決へと持ち込まれる。

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勝野好誠と山野井爽による大将戦は引き手争いが続く

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終盤、勝野の右内股が豪快に決まって「一本」

100kg級の選手同士がマッチアップした大将戦は勝野好誠が右、山野井爽が左組みのケンカ四つ。双方引き手の確保とこれを嫌っての離脱を繰り返す中での攻め合いとなり、勝野は腰の入れ合いからの片手の右内股、山野井は左大内刈で攻め合う。中途で山野井が手順を変えて引き手から袖を持つ場面が1度あったが、これが切れると再びステージは引き手争いへ回帰。主審は2分9秒勝野の側にのみ片手の咎で「指導」。

いずれかが消極的というわけではないように見受けられたが、結果的にはこの反則で試合が動くこととなる。あと1つの「指導」で僅差優勢勝ちを得られる状況となった山野井は激しく前へ、勝野を場外際へと追い込む。しかし引き手で袖を外側から得ていた勝野これを呼び込みながら待ってましたとばかりに得意の右内股一撃。初めて力が伝わる距離でこれをまともに受けた山野井、ふわりと宙に浮くと勝野の腰の切れ込みを受けて畳に真っ逆さま「一本」。

試合時間2分28秒、スコア1-0で東海大浦安の勝利が決まった。

東海大浦安高 1-0 埼玉栄高
(先)藤野雄大×引分×西山真心
(次)髙橋耀大×引分×松本弾
(中)山口璃空×引分×松崎渡
(副)岡本泰崇×引分×田川聖
(大)勝野好誠〇内股(2:28)△山野井爽

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試合終了直後、優勝を喜ぶ東海大浦安チームの面々

東海大浦安は初戦からの接戦の連続を「生き残った」という印象での優勝。今年の高校柔道界の様相を反映して参加チームはいったいに小粒、大会も例年に比べると低調の感は否めなかったが、東海大浦安の奮闘がこれを救ったという体であった。勝野の「一本」は大会を締めるにふさわしい豪快な一撃だった。

飛塚雅俊監督自身が語る通り、千葉県は激戦。今代も充実が伝えられる木更津総合高を筆頭に強豪ひしめく難しい状況だが、この中にあって東海大浦安は最高のスタートを切ることとなった。細かい技術に陥り過ぎず投げを狙うスタイルは好感が持てる。決勝も、最後に決めるべき威力ある「投げ」を持つ側の勝野が勝利したという形で、この方針さらに加速するのではないだろうか。

埼玉栄は優勝じゅうぶんあり得る戦力であったが、決勝は山野井に仕事を流してしまった感あり。何がなんでも自分で決めるというような、例えば東海大相模戦で松本弾がマークした背負投「一本」を生み出すような覚悟には欠けた印象を受けた。実は戦力的にさほど凹凸のない全員が仕事をしなければならないチーム構成にも関わらず、そして実はどこかで無理をしてリスク覚悟の攻めを敢行せねばならぬ競った力関係であったにも関わらず、破綻なく勝負のバトンを後に流し続けた結果、決して絶対的な投げ一発がアイデンティティになるまでのタイプではない山野井に負担が掛かり、結果無理に「指導」を取りに出て一発食ったという形になるわけで、これは見ようによっては自滅の感すらある。練れた柔道が出来る巧さの反面、相手を力づくで突破するようなピュアさ、プリミティブな闘争心の発露に欠けた。この点、なかなか戦力以上の力が団体戦で出せないここ数代の弱点が切所で顔を出したという印象。ここは前代の西願寺哲平に連なるようなチームに喝を入れるような戦いを、斬り込み役の西山あたりに期待したいところ。

大会全体を俯瞰すれば、高校柔道界の様相をそのまま反映してどのチームもまだまだ手探りの段階で、率直に評すれば小粒。東海大浦安と、同校に敗れた加藤学園高(静岡)の健闘は印象的であったが、大会全体を揺さぶるようなインパクトまでには至らなかった。おそらく居並ぶ強豪校の指揮官あまねく「この戦力としては良く頑張った」という自軍評を抱き、しかし育成事情を加味せぬ他者から見ればそれが絶対的な戦力の不足として印象付けられてしまう、そういう大会であったと総括して良いかと思われる。

期待された東海大相模は一定の戦力的充実を示す一方戦いぶりに良い意味での「破れ」がなく、エースを務めるべき山本銀河と大物の呼び声高い1年生菅原光輝の重量級2枚ともにスケール感と取り味を感じさせる一方、順行運転を突破して相手を倒し切る「決め球」を欠いた感あり。一定レベルのオーソドックスな配球とある程度以上の速球があるゆえ、振ってくれる相手は振ってくれるが最後に決めるべき相手の予想の上を行く決め球、くせ球がないという印象。敢えて目線を高くして評すれば、現状格上から一発取るような大物食い属性は薄く、獲れる相手と獲れない相手のレベルに明確な溝があると感じた。まずは投げに至る具体的な道筋、取り味のある手順の獲得が最大の課題。このチーム、持ち駒の質と量自体は、今代にあっては相応の可能性を感じさせる。この時点では化ける要素を孕みつつ、これを起こす化学変化の兆候いまだ見えずと評しておきたい。

修徳高は小嶋洸成と岡田尚樹の計算できる2枚を擁するが、今大会は岡田の出来がいまひとつ。小嶋も切所の戦術選択や状況に応じたギアの入れ換えにまだまだ難あり、技の威力自体の上積みはもちろん必須であるが、保有する技が「詰め将棋」の材料として機能していないことがもっとも大きな課題と感じられる。ここぞの得点力を得るにはまだまだクリアすべき点が多い。このチームはむしろ周辺戦力の奮闘に、今後への可能性が感じられた。

前代まで大駒3枚が君臨していた桐蔭学園は、現状絶対的な駒数の不足が否めない。新戦力の中から健闘を見せた佐々木、柔道の伸びやかな町方らに期待ということになるが、この戦力で現実的に勝ち抜こうとするなら、戦術遂行力がある中野で相手のポイントゲッターを食い、その上でこれを守り切るという戦いしかないように思われる。具体的にこれをなし得るしぶといチームを目指すのか、あくまで各人の取り味を上げてスケールアップを期するのか、このあたりに注目。

白鴎大足利は初戦で東海大浦安に敗れてしまい、インターハイ3位の勢いをまっすぐ次代に変換できず。大会皆勤で地力と勝負力を練った上で最後に大仕事を成し遂げた前代の再現を狙うような育成計画の有無、そしてその原動力となった己を高く買い続ける意志を選手が持ち続けることができるかどうかが課題。

というわけでどのチームも手探りの中、ひたすら集中力高く、そしてここぞで思いきり良く目の前の試合を勝ち抜かんとした東海大浦安が勝利を得たという大会であった。

色々書かせて頂いたが、高校生のこれから1年間の成長はまさしく未知数。いったいに強豪チームがこれまで前代に集中して手を掛けて来たため、指揮官が今代の選手たちに思考の量を投入するのはまさにこれからだ。高校柔道界にこれまでスタート時点で低調と言われた世代はいくつもあったが、最終的に面白くなかった年はまったくない。毎年夏には必ず魅力あるチームが勃興し、過たず手に汗握る激戦を繰り広げてくれた。低調世代ではなく、敢えて横一線の混戦スタートと捉えたい。浮くも沈むも、これからの稽古次第だ。

もうひとつ。自身の地力を超えるような覚悟ある攻め、気持ちを前に出した戦いが出来たかどうかということで考えると、やはりこの日の勝者にふさわしいチームは東海大浦安であったかと思われる。戦力云々を越えてこの勝負の理は不変。混戦であればあるほど、この覚悟が貫けるチームが作れるかどうかに上昇の可否が掛かるはず。各校の奮起に期待である。

今大会では、独走するであろう国士舘を現実的な「的」にし得るだけのチームはまだ現れず。これから高校生たちがどのような成長を見せ、どう変わっていくのか。冬季の招待試合シリーズで引き続き観察を続けたい。

■ 男子第1部
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優勝の東海大浦安高

【入賞者】
(エントリー20校)
優 勝:東海大浦安高(千葉)
準優勝:埼玉栄高(埼玉)
第三位:修徳高(東京)、東海大相模高(神奈川)

最優秀選手賞:勝野好誠(東海大浦安高)
優秀選手賞:松本弾(埼玉栄高)

東海大浦安高・飛塚雅俊監督のコメント
「本当に接戦続きで、一戦一戦が山場。逆に集中力が切れなかったことが良かったかなと思います。もちろん優勝は狙っていましたが、初戦でいきなり白鴎大足利高という強敵と戦うことになっていたので、まずなによりこの試合に勝つことを考えていました。あとはここに勝ってから、一つ一つ集中して戦おう、と。その結果として最後まで辿り着いたという感じです。内容的にももっと攻めて欲しかったし課題もたくさんありますが、集中力高く戦ったことと接戦を勝ち切ったことは収穫。全試合が本当に接戦で、サバイバルを『生き残った』という感じです(笑)。(―先鋒の藤野選手と大将の勝野選手が充実していましたね?)うちは、まずはこの2人です。これを軸に中3つをどうやりくりしてどう戦うかというのがポイントでした。(―それぞれひとこと紹介をお願いします)藤野は真面目で、ちょっと変わっているところがある子ですが(笑)、技をガンガン掛ける、大きいのも担げる面白い選手です。先鋒としてはうってつけ。勝野は膝を怪我して低迷した時期がありましたが、最近非常に力をつけてきました。千葉県内では学年が上の強い選手にも勝って自信もついてきたようで、期待しています。(―中学の活躍は刺激になりますか?全国中学校大会でも非常に頑張っていました)はい!中学は関東で埼玉栄さんに負けているんで、きょうはリベンジですね(笑)。(-今年の目標をお願いします)千葉県は木更津総合さんに習志野さんと強豪が一杯、ここで勝ったからと言って安心できるような状況ではまったくありません。ひとつひとつレベルアップして千葉を勝ち抜いて、もちろん最後は日本一を目指します」

【1回戦】

武南高(埼玉) 3-0 水戸葵陵高(茨城)
加藤学園高(静岡) 3-2 前橋商高(群馬)
作新学院高(栃木) 4-0 市立柏高(千葉)
つくば秀英高(茨城) 3-0 大宮工高(埼玉)

【2回戦】

桐蔭学園高(神奈川) 4-0 武南高(埼玉)
修徳高(東京) 4-1 開志国際高(新潟)
東海大浦安高(千葉) 2-1 白鴎大足利高(栃木)
加藤学園高(静岡) 5-0 足立学園高(東京)
埼玉栄高(埼玉) 4-0 作新学院高(栃木)
常盤高(群馬) 2-1 山形工高(山形)
安田学園高(東京) 3-1 成田高(千葉)
東海大相模高(神奈川) 3-0 つくば秀英高(茨城)

【準々決勝】

修徳高 ①代-1 桐蔭学園高
(先)岡田尚樹×引分×佐々木光太郎
(次)竹下博隆×引分×山本成寿
(中)中村和真×引分×中野智博
(副)田中佑弥△反則[指導3]〇安藤健志
(大)小嶋洸成〇合技△町方昂輝
(代)小嶋洸成〇内股△安藤健志

東海大浦安高 2-1 加藤学園高
(先)藤野雄大〇優勢[技有・内股]△加古祐慈
(次)髙橋耀大△優勢[技有・払巻込]〇小田春樹
(中)山口璃空×引分×白石諄
(副)岡本泰崇×引分×深井大雅
(大)勝野好誠〇内股△宇佐美一誠

埼玉栄高 5-0 常盤高
(先)西山真心〇袈裟固△藤岡歩武
(次)松本弾〇背負投△関塚蒼介
(中)松崎渡〇縦四方固△押切飛翔
(副)田川聖〇大内刈△雨笠一郎
(大)山野井爽〇大腰△谷田部竜司

東海大相模高 3-1 安田学園高
(先)近藤那生樹△裏投〇近藤亮介
(次)佐藤涼火〇大内刈△増地遼汰朗
(中)工藤海人〇大内刈△森大雅
(副)菅原光輝×引分×笛田晃聖
(大)山本銀河〇内股△田邊勇斗


【準決勝】

東海大浦安高 ②-2 修徳高
(先)藤野雄大〇優勢[僅差]△岡田尚樹
(次)髙橋耀大〇合技△竹下博隆
(中)山口璃空△優勢[技有・背負投]〇中村和真
(副)岡本泰崇×引分×田中佑弥
(大)勝野好誠△優勢[僅差]〇小嶋洸成

埼玉栄高 ①-1 東海大相模高
(先)西山真心×引分×近藤那生樹
(次)松本弾〇背負投△佐藤涼火
(中)松崎渡×引分×工藤海人
(副)田川聖×引分×菅原光輝
(大)山野井爽△優勢[僅差]〇山本銀河


【決勝】

東海大浦安高 1-0 埼玉栄高
(先)藤野雄大×引分×西山真心
(次)髙橋耀大×引分×松本弾
(中)山口璃空×引分×松崎渡
(副)岡本泰崇×引分×田川聖
(大)勝野好誠〇内股△山野井爽

■ 男子第2部
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男子第2部優勝の埼玉栄高

【入賞者】
(エントリー19校)
優 勝:埼玉栄高(埼玉)
準優勝:東海大相模高(神奈川)
第三位:開志国際高(新潟)、白鴎大足利高(栃木)

【準々決勝】

東海大相模高(神奈川) 4-0 武南高(埼玉)
白鴎大足利高(栃木) 4-0 つくば秀英高(茨城)
埼玉栄高(埼玉) 4-1 足立学園高(東京)
開志国際高(新潟) 3-1 桐蔭学園高(神奈川)

【準決勝】

東海大相模高 3-1 白鴎大足利高
埼玉栄高 4-0 開志国際高

【決勝】

埼玉栄高 ②-2 東海大相模高
(先)岡田悠之介〇優勢[技有・隅落]△椙本真玄
(次)岩崎雄大〇支釣込足△東山裕汰
(中)清原雅樂△小外刈〇笠康介
(副)桝井秀翔〇支釣込足△西岡伊織
(大)清水涼×引分×藤島将太

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