PAGE TOP ↑

柔道1

柔道2
柔道4 柔道5

eJudoとは?情報募集・お問い合わせサイトマップ

【バクー世界柔道選手権2018特集】濵田尚里優勝、V候補マロンガはまさかの2敗で7位・バクー世界柔道選手権2018女子78kg級レポート

(2018年9月25日)

※ eJudoメルマガ版9月25日掲載記事より転載・編集しています。
【バクー世界柔道選手権2018特集】濵田尚里優勝、V候補マロンガはまさかの2敗で7位
バクー世界柔道選手権2018女子78kg級レポート
eJudo Photo
世界選手権初出場で金メダルを獲得した濱田尚里

→特設ページ・バクー世界選手権2018完全ガイド
文責:古田英毅/eJudo編集部
Text by Hideki Furuta

アゼルバイジャンで開催されているバクー世界柔道選手権は25日、競技日程第6日の男子100kg級、女子78kg級の競技が行われ、78kg級は濱田尚里(自衛隊体育学校)が優勝した。濱田は初優勝、決勝の「指導3」による反則も含めて全試合一本勝ちでの金メダル獲得。

eJudo Photo
準々決勝、フッシェ・ステインハウスがイティジェミマ・イエーツブラウンを内股「一本」で一蹴

決勝に進んだのは第1シードのフッシェ・ステインハウス(オランダ)と、Bシードながら優勝候補の一角に推されていた濵田。

オランダの誇る2トップの一であるステインハウスは第1シードのアドバンテージを存分に生かした格好。明らかに組み合わせに恵まれ、2回戦でイ・ジョンギュン(韓国)を大外巻込「技有」で下すと、以降は一本勝ちを連発。3回戦はエヴェリン・サランキ(ハンガリー)を僅か21秒の内股「一本」、準々決勝はケイティジェミマ・イエーツブラウン(イギリス)を1分16秒の内股「一本」で下し、準決勝はここまでマイラ・アギアール(ブラジル)とマドレーヌ・マロンガ(フランス)を下して台風の目となったマー・ジェンジャオ(中国)をこれも35秒内股「一本」で下し、これぞというメジャー選手との対戦ないまま、圧倒的な内容で決勝進出。

eJudo Photo
2回戦、濵田は開始20秒の出足払「一本」で快勝

eJudo Photo
準決勝、濵田がマルヒンデ・フェルケルクから右大内刈「一本」

一方の濱田はまず2回戦で世界選手権初出場、ワールドツアーの出場自体これが2戦目のジュニア選手カレン・レオン(ベネズエラ)を僅か20秒の出足払「一本」で一蹴。3回戦では早くも山場のベルナデッテ・グラフ(オーストリア)戦を迎える。濱田は近距離戦の得意なケンカ四つのグラフに対し、背中を抱えられて自身の釣り手が潰された苦しい形から右内股に出てしまい、31秒内股透で「技有」失陥という大ピンチ。以降も自身最大のアドバンテージである体の強さで後手を踏む印象で緊迫感ある戦いが続く。さらに抱き勝負が得意のグラフは試合を決めんと濵田の右内股を移腰で迎え撃ち、腹上に載せられた濵田はこれで万事休したかに思われた。しかし濵田は先んじて自ら側転して畳に降りるアクロバティックな対応を見せ、空転したグラフの体が落ちてくるのを待ち構えて抑え込む。逆転の横四方固「一本」でベスト8入り決定。

準々決勝では3回戦で第2シードのナタリー・パウエル(イギリス)を引込返「一本」に仕留めるアップセットを演じた身長187センチのクララ・アポテカー(スロベニア)を相手に「指導2」まで失うが、これで肚を固めたか直後両足の巴投に出、ここから引込返で回して横四方固「一本」。

山場の準決勝は、ケンカ四つのマルヒンデ・フェルケルク(オランダ)に距離を取られて斜めからの右内股が決まらぬとみるや、2分26秒に同じ形から右大内刈にターン。見事な「一本」で大一番に勝利し、全試合一本勝ちで決勝に辿り着いた。

eJudo Photo
決勝、濵田は相手の大内刈にも動ぜず。体の強さを生かした受けで立ち続ける。

eJudo Photo
リスクを怖れぬ大技連発で展開を取り、「指導3」を得て勝利。

決勝は濱田が右、ステインハウスが左組みのケンカ四つ。寝技の強さを買われて代表入りした濱田だが、この試合も前戦までの志向を変えず、あくまで立って勝負。両襟を掴んで前に出て大枠の優位は得るものの持ち前の受けと進退自体の不安定さが随所に顔を出し、釣り手の肘を内から突っ込んだ良い形の時には待ちに出て先んじて攻められ、体が伸びあがる危うい形の時には攻めに出て返されかかることの連続。延長戦では相手の「サリハニ」を足で挟んだまま、不安定な一本足状態の「ペンギン歩き」で、しかも後方に下がるという目を覆うようなシーンまで生み出して極めて危うい場面が続いたが、いずれも異常な体の強さで耐え続ける。数々のピンチにも攻撃意欲は衰えることなく、リスクを恐れず一貫して大技を連発。延長3分半が近づくとステインハウスが根負けしはじめ、立て続けに2つの「指導」失陥。そして延長5分23秒、濵田が突進するとステインハウス以外なほどあっさり下がって畳を割り、場外の「指導3」で試合決着。ここで濵田の初優勝が決まった。

濵田は全戦通じて最大の長所である寝技を最低限に抑えて、高い攻撃力の一方で最大の弱点である受けの脆さを晒すことにもなる立ち勝負を選択。高所の戦略、戦術、そして組み手やディフェンス技術のディティール、とマクロにもミクロにも「理」のある戦い方ではなかったが、全てを身体能力と攻撃力で塗りつぶして頂点に立った格好だ。決勝も「飛んでしまう」はずの理を無理やり耐えた身体能力と体力、そして2017年グランドスラム東京決勝で濵田の送襟絞「一本」でまさしく殺され、この日も序盤に絞められ掛かって「下手に体を捨てるわけにはいかない」と恐怖したステインハウスの詰めの甘さに助けられて勝ち抜いたという印象。この点結局は寝技の絶対的な強さが濵田を救ったとも観察され、「投げることが好き、稽古も8割は立ち技」(公開練習における囲み取材時のコメント)という濱田の今後の方向性いかにあるべきか、その行く先が注目される。

eJudo Photo
3回戦、マー・ジェンジャオがマイラ・アギアールから外巻込「一本」。

eJudo Photo
3位決定戦、マーは寝勝負で対応を誤り、アレクサンドラ・バビンツェワの腕挫十字固に自ら捕まる形で「一本」。

大会最大のビッグネームであるマイラ・アギアール(ブラジル)は結局今大会も調子上がらず。3回戦でマー・ジェンジャオ(中国)の強引な外巻込「一本」に沈んで上位争いに絡むことが出来なかった。

アジア大会3位、これまでツアーの実績もほとんどないマーは前述の通りこの日の台風の目。続く準々決勝ではマドレーヌ・マロンガもこの強引な巻き込みに嵌めて「技有」、そのまま抑え込んで合技「一本」で退けた。インパクトからすれば表彰台登攀が妥当であったが、ステインハウスに敗れて迎えた3位決定戦ではツアーの実績のないアレクサンドラ・バビンツェワ(ロシア)に敗戦。どちらも昨今の女子選手としては珍しく(そして78kg級の中堅選手としてはありがちなことに)寝技技術が曖昧で、バビンツェワが明らかに得手ではない腕挫十字固を下から仕掛けたところ、マーが中途半端に立ち上がろうとして腕を伸ばし、さらにバランスを崩して尻餅。結果、バビンツェワの腰の近く、ここでしか極まらない位置にわざわざ体を落とすことになり、バビンツェワは千載一遇のこの機会を逃さず「一本」。おそらく自身ではそもそも「その位置」に体を運ぶ必要性が理解できていなかったのではないかと疑われる体捌きだった。どの選手にも「理」が足りず力勝負が打ち続く78kg級世界の悪い方向の縮図というべきこの攻防で、銅メダルの栄誉はバビンツェワのもとに輝いた。

eJudo Photo
準々決勝で敗れたマロンガ、敗者復活戦では格下のイエーツブラウンに絞め落とされてまさかの2連敗。

準決勝で濵田に敗れたフェルケルクは順当に3位を確保。3位決定戦はケイティジェミマ・イエーツブラウンをGS延長戦の末に一本背負投「一本」で下した。

識者が(そして弊サイトも)優勝候補に挙げていたマロンガは散々。準々決勝でダークホースのマーに敗れると集中が切れる悪い癖が顔を出し、敗者復活戦で無名のイエーツブラウンに一本負け。イエーツブラウンが回転式の片手絞を試み、これは入りの形や互いの位置関係から「決まる」ことがすぐさまイメージ出来るものであったが、審判は知識の不足か疲労ゆえか数秒間に渡ったこの手順の進行を、立ち位置と角度を誤ったまま座視。本来予期しておくべきマロンガの「参った」にまったく反応出来ず、マロンガはタップした上に絞め落とされてしまうという気の毒な結末を迎えることになった。IJFは今大会柔道のイメージづくりのために「暴力的な絵」を極端に嫌っており、たとえ軽微な負傷でも国際映像には決してその選手の絵を映さないほどの神経の使いよう。それが「参ったを見逃し、女子選手の失神を看過する」というこの失態(もちろん絞め落ちた直後からカメラは切り替わった)。審判も相当責められたであろう、こちらも気の毒な事態であった。

後輩マロンガの台頭による世代交代の波を押しとどめんとしたもと世界王者オドレイ・チュメオ(フランス)は前述のバビンツェワに敗退。3回戦で内股「一本」に沈み、レぺチャージにすら進むことが出来なかった。

入賞者、濵田尚里選手のコメントと全試合の結果、メダルマッチ3試合および日本代表選手全試合の戦評は下記。

eJudo Photo
78kg級メダリスト。左からステインハウス、濵田、フェルケルク、バビンツェワ。

【入賞者】
(エントリー35名)

1.HAMADA, Shori (JPN)
2.STEENHUIS, Guusje (NED)
3.VERKERK, Marhinde (NED)
3.BABINTSEVA, Aleksandra (RUS)
5.YEATSBROWN, Katiejemima (GBR)
5.MA, Zhenzhao (CHN)
7.MALONGA, Madeleine (FRA)
7.APOTEKAR, Klara (SLO)

【1回戦】
ヤヒマ・ラミレス(ポルトガル)○反則[指導3](3:15)△ヴァネッサ・チャラ(エクアドル)
アナ=マリア・ヴァグナー(ドイツ)○片手絞(0:48)△ソフィー・ベルハー(ベルギー)
ベアタ・パクト(ポーランド)○合技[内股・小内刈](1:16)△ノジラ・ユルダシェワ(ウズベキスタン)

【2回戦】
フッシェ・ステインハウス(オランダ)○優勢[技有・大外巻込]△イ・ジョンギュン(韓国)
エヴェリン・サランキ(ハンガリー)○大内刈(0:43)△ヤヒマ・ラミレス(ポルトガル)
ケイティジェミマ・イエーツブラウン(イギリス)○袖釣込腰(0:13)△カリエマ・アントマルチ(キューバ)
パウラ・クラガ(ポーランド)○優勢[技有・大外巻込]△メラニー・ワリス(オーストラリア)
マドレーヌ・マロンガ(フランス)○合技[大外巻込・後袈裟固]△アナ=マリア・ヴァグナー(ドイツ)
ザリナ・ライフォワ(カザフスタン)○反則[指導3](2:23)△ママダマ・シラ(ギニア)
マイラ・アギアール(ブラジル)○合技[隅返・横四方固](2:18)△ウネレ・スナイマン(南アフリカ)
マー・ジェンジャオ(中国)○崩袈裟固(1:34)△ダイアナ・ブレネス(コスタリカ)
ナタリー・パウエル(イギリス)○合技[隅落・裏投](2:52)△サラ=ミリアム・マズー(ガボン)
クララ・アポテカー(スロベニア)○横掛(0:58)△ロリアナ・クカ(コソボ)
濵田尚里○出足払(0:10)△カレン・レオン(ベネズエラ)
ベルナデッテ・グラフ(オーストリア)○GS技有・内股巻込(GS0:33)△ベアタ・パクト(ポーランド)
オドレイ・チュメオ(フランス)○払腰(0:15)△ビゲ・エンジャイ(セネガル)
アレクサンドラ・バビンツェワ(ロシア)○大外刈(2:51)△アリツェ・マテイチコワ(チェコ)
マルヒンデ・フェルケルク(オランダ)○GS技有・外巻込(GS1:52)△ルイーズ・マルツァーン(ドイツ)
パトリシア・サンパイオ(ポルトガル)○小外掛(0:30)△オドレイ=ディラン・エンジェパン=エンジャパ(カメルーン)

【3回戦】
フッシェ・ステインハウス(オランダ)○内股(0:21)△エヴェリン・サランキ(ハンガリー)
ケイティジェミマ・イエーツブラウン(イギリス)○袖釣込腰(1:24)△パウラ・クラガ(ポーランド)
マドレーヌ・マロンガ(フランス)○崩上四方固(0:29)△ザリナ・ライフォワ(カザフスタン)
マー・ジェンジャオ(中国)○外巻込(2:49)△マイラ・アギアール(ブラジル)
クララ・アポテカー(スロベニア)○引込返(2:10)△ナタリー・パウエル(イギリス)
濵田尚里○横四方固(1:24)△ベルナデッテ・グラフ(オーストリア)
アレクサンドラ・バビンツェワ(ロシア)○内股(2:25)△オドレイ・チュメオ(フランス)
マルヒンデ・フェルケルク(オランダ)○縦四方固(2:24)△パトリシア・サンパイオ(ポルトガル)

【準々決勝】
フッシェ・ステインハウス(オランダ)○内股(1:16)△ケイティジェミマ・イエーツブラウン(イギリス)
マー・ジェンジャオ(中国)○合技[払巻込・袈裟固](2:21)△マドレーヌ・マロンガ(フランス)
濵田尚里○横四方固(3:43)△クララ・アポテカー(スロベニア)
マルヒンデ・フェルケルク(オランダ)○GS縦四方固(GS0:49)△アレクサンドラ・バビンツェワ(ロシア)

【敗者復活戦】
ケイティジェミマ・イエーツブラウン(イギリス)○片手絞(0:23)△マドレーヌ・マロンガ(フランス)
アレクサンドラ・バビンツェワ(ロシア)○優勢[技有・小外掛]△クララ・アポテカー(スロベニア)

【準決勝】
フッシェ・ステインハウス(オランダ)○内股(0:35)△マー・ジェンジャオ(中国)
濵田尚里○大内刈(2:26)△マルヒンデ・フェルケルク(オランダ)

eJudo Photo
3位決定戦、マルヒンデ・フェルケルクがケイティジェミマ・イエーツブラウンから一本背負投「一本」

【3位決定戦】
マルヒンデ・フェルケルク(オランダ)○GS一本背負投(GS1:17)△ケイティジェミマ・イエーツブラウン(イギリス)
右相四つ。両者叩きあうように掴んでは切って、を繰り返す激しい組み手争い。36秒にイエーツブラウンがここから抜け出して両袖の右袖釣込腰を仕掛ける。瞬時に釣り手を袖に持ち替えての一撃に反応遅れたフェルケルク一回転して体側から落ち「技有」。しかしこのポイントはケアシステムによる確認の結果、取り消しとなってしまう。ここからイエーツブラウンは右背負投を連発、2分30秒にはフェルケルクがこれを潰して「横三角」から抑え込みを狙うが、最後まで捲ることが出来ず「待て」。2分4秒にはフェルケルクが組み際の右背負投で懐深くまで潜り込む惜しい場面を作るも、相手を転がすことが出来ない。ここから試合は再び組み手争いの膠着状態に入り、1分程度が経過する。3分間際、フェルケルクが場外際で右一本背負投を仕掛けるとイエーツブラウン頭側に回り込んで隅返。両者同体となって転がるが、これも双方ポイントなし。そのまま本戦が終わり、試合はGS絵挑戦へ。

GS23秒、イエーツブラウンが立ち姿勢の右袖釣込腰。フェルケルクこれを受け止めて引き落とすがポイントなし。さらにフェルケルクはGS50秒に右大外刈の形に足を出しての右背負投で相手の懐に侵入するが、これも決めるところまでは辿り着けない。フェルケルクが攻める流れが続いての1分10秒、組み手争いからイエーツブラウンが奥を叩くとフェルケルクがこれに応じて右一本背負投。立ったまま担ぎ上げると自ら受け身を取るようにして投げ切り、1分17秒「一本」。フェルケルク、表彰台を確保。

eJudo Photo
無印からの銅メダル獲得に大喜びのバビンツェワ

アレクサンドラ・バビンツェワ(ロシア)○腕挫十字固(3:32)△マー・ジェンジャオ(中国)
バビンツェワが左、マーが右組みのケンカ四つ。マーは釣り手を脇に差すと、引き手を奥襟に入れる強気の組み手、そこから右腰車を放ち先制攻撃を仕掛ける。対するバビンツェワも接近戦を厭わず左大外刈ですかさず反撃。その後は、バビンツェワが組み際の両袖左大外刈から釣り手を奥襟に回して、あるいまず左に支釣込足を打ってとまず一段崩してから左内股に入り、それをマーが隅落で返そうと試みる展開が続く。そして残り1分、バビンツェワが引き手で先に袖を得ると、両袖の形から右内股を狙う態勢を作る。察知したマーが回避せんと先んじて右外巻込に転がり込むと、バビンツェワは隅落で捲り返そうと前のめりに。しかし、マーの巻き込む力は止まらず、バビンツェワは自らの勢いを制御できず転がってしまい「技有」。しかし続く寝技の展開、バビンツェワが下からマーの腕を狙うとマーは中途半端に立ち上がろうとして腕が極まる距離に自ら移動してから尻餅を着いてしまう明らかな対応ミス。バビンツェワが千載一遇、起死回生のこの機を逃さず腕挫十字固でマーの腕を極めると、マーたまらず「参った」を表明。終盤大きく動いた試合はバビンツェワの勝利に終着した。

eJudo Photo
決勝を戦う濵田とステインハウス

【決勝】
濵田尚里○GS反則[指導3](GS5:23)△フッシェ・ステインハウス(オランダ)
濵田が右、ステインハウスが左組みのケンカ四つ。寝技の強さを買われて代表の座を勝ち得たはずの濵田だが、この試合もなぜかほとんどまったく寝勝負を志向せず、あくまで立ったままの投げ合いを挑む。組み手は強気の両襟がほとんど。しかし腰を入れればすぐに投げを打てる互いに攻めやすいケンカ四つの状況にあって、釣り手が下から入った良い形の際にはウォッチして相手の技を待って状況を流され、上から持って肘が伸び、上体と膝が浮いた危うい状況では右内股に大内刈と大技に打って出て返されかかるという極めて危うい柔道。

1分25秒にはさすがにまずいと感じたか手立てを変え、内股で耐えさせておいて巴投。そのまま相手の背に食いついて絞めんとするが、よく状況を心得たステインハウスはもし離してしまえば即死、とばかりに両手で袖を持ったまま決して離さず「待て」。
以後も濵田の極めて不安定な受けとリスクを無視した攻めは続くが、濵田投げられ掛かる都度異常な体の強さで踏みとどまり試合は継続。投げへの意欲も衰えることなく、際の攻防いくつかを演出して、試合はGS延長戦へ。

濵田は腕を前に伸ばして前進する危うい前進、ステインハウスは払腰に内股で迎え撃って濵田は都度ピンチを迎えるが、体が伸びても、頭を下げられてもなぜか踏みとどまって凌ぎ切る。濵田の攻めと受けの危うさはこの待ったなしのサドンデスの状況にあってむしろ加速、甚だしきは「サリハニ」で止められると、そのまま反則を狙う(止まっていれば膠着を企図した咎で仕掛けた側に「指導」が与えられる)のではなく、しかも両足を真一文字に締めて相手の脚を挟んだ不安定な一本足状態のまま後ににじり下がるという、本能も理性も飛び超えた手まで打つ綱渡りの防御。それでも腹ばいに伏せ、相手もろとも潰れ、決定的な一撃だけは辛くも回避。どころか延長1分13秒には小外刈であわやポイント、2分48秒にも小外刈から繋いだ内股で振り回して見せ場を作る。延長3分27秒には「極端な防御姿勢」の咎でステインハウスに「指導」、延長4分8秒には場外で2つ目の「指導」。

ここまで実はステインハウスの側も理のある行動を取れていなかったのだが、延長5分23秒これが極まる、意外な形で試合は決着。濱田が両襟を掴んで前に出ると、受けたステインハウスなぜか抵抗なく歩んでそのまままっすぐ場外へ。「トコトコ」歩いたと表現したくなるようなこの行動に主審すぐさま試合を止め、映像チェックを経て場外の「指導3」を宣告。これで濵田の優勝が決まった。

eJudo Photo
準々決勝、濵田は身長187センチのクララ・アポテカーとマッチアップ。

【日本代表選手勝ち上がり】

濵田尚里(自衛隊体育学校)
成績:優勝


[2回戦]
濵田尚里○出足払(0:10)△カレン・レオン(ベネズエラ)
濵田が右、長身のレオンが左組みのケンカ四つ。濱田は釣り手を上から入れて対峙。レオンは引き手で袖を外側から握る良い組み手を作るが、濵田の釣り手を嫌ったのか自ら離して背中を抱えにくる少々不可解な持ち替え。濱田が右出足払で迎え撃つと、前技を狙ったレオンまったく後方への備えがなく、持ちに来た勢いのまま時計回りに畳に真っ逆さま「一本」。あまりにも力の差があり過ぎた一番、濱田はすぐに抑え込んで宣告を聞き、油断なし。好スタート。

[3回戦]
濵田尚里○横四方固(1:24)△ベルナデッテ・グラフ(オーストリア)
濵田が右、グラフが左組みのケンカ四つ。激しい手先の組み手争いを経て、互いに深く釣り手を握ったところから濵田が探るように右小外掛。しかしグラフが脚を揚げて左内股の形でこれを戻し、攻防継続。そのまま30秒が警戒したところで、濵田が場外際で右内股。しかしもたれかかるように仕掛けたこの技、作用足が相手の体側の外側に上がってしまう。グラフ透かすなり体を預けて押し倒し、内股透「技有」。
濵田追撃せんと接近。グラフは前襟を握って来た濵田の釣り手を懐の中で内側に抱き込んでずらし、あるいは濵田の奥襟を迎え撃つ形で腰を抱いて距離を想定より一段詰め、あるいは前襟を掴んでしっかり離れてと、都度都度濵田の意図を細かく外し続ける。1分1秒、濵田が右内股。グラフは抱きかかえると移腰、濵田が腹上に載るや内股に連絡して投げ切りに掛かる。抱き勝負一発が得意なグラフの真骨頂、濵田万事休すと思われたが、なんと濵田は自ら前に飛び込むというアクロバティックな方法でこれをかわす。側転する形で膝から着地した濱田の眼前に、空転したグラフの体が一間遅れて襲来。濵田これを畳に押し付けると主審は「技有」を宣告。これは取り消されたが、濵田もちろん間を置かず抑え込んでおりグラフは動けず。横四方固「一本」で決着。

[準々決勝]
濵田尚里○横四方固(3:43)△クララ・アポテカー(スロベニア)
濵田が右、身長187センチの長身選手アポテカーが左組みのケンカ四つ。アポテカーが両襟を掴み、応じた濵田は持った二本の手を突っ張って応じるだけで体が伸びあがってしまう。濱田これでは展開を失うといったん釣り手を離し、引き手で袖を押さえ、時計回りに回りながら空いた釣り手を高く揚げて駆け引き。この右手を前襟、片襟、あるいは巻き込み狙いで相手の腕に載せ、と操作しながら、圧を受けぬようにしながら投げのチャンスを狙う。アポテカーは遠間からの蹴り崩しに終始し、一方濱田もなかなか飛び込むチャンスを得られぬまま1分過ぎから試合は膠着。1分28秒双方に消極的との咎で「指導」。

打開策を探る濵田、1分48秒にはケンケンの大内刈で思いきり足を上げるが、アポテカーがヒョイと腰の高さまで足を挙げると完全に空転。印象的にはそれだけで濵田の頭を足が越えてしまうレベル。濱田再び手立てを変えて膝車を2連発するが、2分48秒片襟の咎で「指導2」を貰ってしまう。直後肚を固めた濵田が両足の巴投。これでアポテカーを崩すと引き込んで胴を挟み、相手の腰が上がると引込返。流れるように横四方固に繋ぎ「一本」。

[準決勝]
濵田尚里○大内刈(2:26)△マルヒンデ・フェルケルク(オランダ)
大一番は濱田が右、フェルケルクが左組みのケンカ四つ。濱田が両襟を握って前へ、陣地を失いかけたフェルケルクは右一本背負投に逃げるが濵田すかさず「腰絞め」、絞め切れぬとみるや一瞬回転片手絞への移行を晒して背後に展開、オーソドックスな送襟絞の形に連絡するがフェルケルクはその袖を両手で捕まえて必死の防戦。25秒「待て」。
以後は濱田が両襟を握って間合いを詰めながら前へ。長身のフェルケルクはやや腰を引き、体をゆすって間合いを離そうと図る。濱田は左右に出足払を飛ばしながらあくまで前進、時折右内股を差し込むがいずれも間合いが遠く投げ切れず、1分30秒に放った一撃もフェルケルクが膝を着き、そのまま立ち上がって攻防継続。1分48秒にはフェルケルクが体をゆすって離れ、濵田が前進、これに合わせてフェルケルクが右一本背負投という一種典型的な攻防。濱田懐に入れてしまうが崩れず、「待て」。続いてフェルケルクが右袖釣込腰で濵田の両襟を剥がし、このあたりから濵田加速。またもや両襟からの内股を斜めから差し込むが距離が遠く、決まり切らず。しかし2分26秒、濵田再び斜めから右内股を引っ掛けると、今度は方向を変えて右大内刈にターン。後重心のフェルケルクたたらを踏んで後方に崩れ、意外なほど脆く背中から沈没、「一本」。展開を取り、結果も得た濵田の完勝。


[決勝]
濵田尚里○GS反則[指導3](GS5:23)△フッシェ・ステインハウス(オランダ)
※前述のため省略

→特設ページ・バクー世界選手権2018完全ガイド

※ eJudoメルマガ版9月25日掲載記事より転載・編集しています。

→eJudoトップページに戻る
→「ニュース・マッチレポート」に戻る
→「書評・DVD評」に戻る




supported by KAYAC 運営会社サイトポリシー  RSS copyright (c) 2005 ejudo all rights reserved.