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【バクー世界柔道選手権2018特集】大激戦縫ってチョグハンが優勝、連覇狙ったウルフアロンはイリアソフとの決戦に敗れまさかの5位・バクー世界柔道選手権2018男子100kg級レポート

(2018年9月25日)

※ eJudoメルマガ版9月25日掲載記事より転載・編集しています。
【バクー世界柔道選手権2018特集】大激戦縫ってチョ・グハンが優勝、連覇狙ったウルフアロンはイリアソフとの決戦に敗れまさかの5位
バクー世界柔道選手権2018男子100kg級レポート
→特設ページ・バクー世界選手権2018完全ガイド
文責:古田英毅/eJudo編集部
Text by Hideki Furuta

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初の世界選手権制覇を決めたチョ・グハン。

アゼルバイジャンで開催されているバクー世界柔道選手権は25日、競技日程第6日の男子100kg級、女子78kg級の競技が行われ、100kg級はチョ・グハン(韓国)が優勝した。チョは初優勝、決勝はヴァーラム・リパルテリアニ(ジョージア)を破った。

リパルテリアニは90kg時代とあわせて世界大会4度目の銀メダル獲得、今回も頂点には届かなかった。2連覇を狙ったウルフアロン(了徳寺学園職)は準々決勝で優勝候補のニヤズ・イリアソフ(ロシア)との競り合いに敗れ、3位決定戦も落としてまさかの5位に終わった。

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準々決勝、ヴァーラム・リパルテリアニがラマダン・ダーウィッシュを裏固で巧みに抑え切る。

4つのプールそれぞれに強豪が配された100kg級の様相は、激戦の震源地となったプールDからファイナリストが輩出されなかったという事情もあり、決勝進出者中心の勝ち上がりだけでは追いきれない。簡単に各プールの勝者の足跡を追いかけるところから始めてみたい。

プールAからは第1シードのリパルテリアニが勝ち上がり。2回戦でまずアレクサンドル・イディー(フランス)から肩車「技有」による優勢、3回戦でリオデジャネイロ五輪銀メダリストのエルマー・ガシモフ(アゼルバイジャン)をGS延長戦の末に得意の外巻込「技有」、そして準々決勝はここまで素晴らしい技の切れ味を見せつけているシード選手ラマダン・ダーウィッシュ(エジプト)を隅落と裏固の合技「一本」。すべての試合でこれぞという強豪と戦うタフな組み合わせを、全試合一本勝ちという最高の内容で勝ち抜けた。

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準々決勝、ルハグヴァスレン・オトゴンバータルが第4シードのジョルジ・フォンセカから釣込腰「技有

選手の配置が明らかに緩いプールBからは、ダークホースのルハグヴァスレン・オトゴンバータル(モンゴル)がベスト4入り。恵まれた組み合わせをまずトーマス・ブリセノ(チリ)
を横落「技有」による優勢、続いてイェフゲニース・ボロダフコ(ラトビア)を背負投で「技有」を2つ奪っての合技「一本」で破ると、準々決勝ではこのプールの勝ち抜け第一候補と目されたジョルジ・フォンセカ(ポルトガル)を左釣込腰に捕まえて見事な「一本」。これで見事ベスト4入りを決めた。
フォンセカはここまで手間取りながらも連続一本勝ちで業師ぶりを見せつけていたが、今回も集中力続かずここで本戦トーナメントから脱落。敗者復活戦でもGS延長戦の末にダーウィッシュに競り負けて最終結果は7位。今回も主役には手が届かず、好バイプレイヤーとしてトーナメントに彩りを添えるに留まった。

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準々決勝、チョ・グハンがマイケル・コレルから右一本背負投「技有」。

プールCも強豪の密集度が低く、注目カードは2試合のみ。まず2回戦のチョ・グハン対シリル・マレ(フランス)戦は、チョが細かく手数を積み続け「指導1」を確保。2分44秒には右背負投の形で半身を入れながら粘って駆け引き、右小内刈を引っ掛けて転がし「一本」で勝利。チョは続く3回戦でカロリス・バウザ(リトアニア)をGS延長戦の末に「指導3」の反則で下し、準々決勝のマイケル・コレル(オランダ)戦に辿り着く。シード選手同士が戦うこととなったこの準々決勝がこのプールもう1つの注目試合。どちらかというと展開を取り続けることで成績を残すタイプのコレルは組み勝つことが生命線、ゆえにチョにとっては駆け引きに応じてくれる相性噛み合う相手。切り合い、絞り合いを続けた末、コレルに左引き手を切られた瞬間釣り手一本の右背負投に飛び込んで転がし2分47秒「技有」確保。リードを得ると一転、以後は一切相手に付き合わず、残り10秒を過ぎると相手の前進に逆らわず一歩、また一歩と敢えてゆっくり場外まで出る割り切りぶり。残り3秒、確信的に場外の「指導1」を失ったところで試合をまとめ、ベスト4入りを果たした。

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3回戦、ウルフアロンがカール=リヒャード・フレイから内股「一本」

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2回戦、ニヤズ・イリアソフがグリゴリ・ミナシキンから支釣込足「技有」

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イリアソフとウルフの準々決勝。この時点では事実上の決勝と目された大一番。

そしてプールDは、プールAのリパルテリアニを越えてこの日間違いなくもっとも厳しい組み合わせを引いた昨年度王者ウルフアロンと、優勝候補筆頭格のニヤズ・イリアソフが争う大会最激戦区。

ノーシードのウルフは1回戦からの登場、完全アウトサイダーのマテイ・ハヤス(スロバキア)をまず内股「一本」で片づけると、ここからは全試合決勝レベルの相手と連戦。まず2回戦で第3シードのキリル・デニソフ(ロシア)とマッチアップ、序盤は圧力を食うも徐々に展開を掴み直して浮落「技有」、さらに最終盤片手絞「一本」を決めるまことにこの人らしい戦いぶりでここを突破。続く3回戦は2015年大会で銀メダル獲得のカール=リヒャード・フレイ(ドイツ)と粘戦、相手の集中が一瞬緩んだ残り10秒に一気に攻め落とし左内股「一本」。これでプールファイナルに辿り着く。
一方のイリアソフは2回戦でグリゴリ・ミナシキン(エストニア)を支釣込足と横四方固の合技にしとめて2分22秒「一本」、3回戦でミキタ・スヴィリド(ベラルーシ)は2分41秒の横四方固「一本」と余裕の勝ち上がり。ここにウルフ-イリアソフという大会最注目カードが実現することとなった。

この試合はウルフが左、イリアソフが右組みのケンカ四つ。組み手の陣地の取り合いが続く中、ウルフは1分20秒に「指導」を失うも粘り強く攻め続けて残り25秒にはウルフの接近を嫌ったイリアソフに片手の「指導」。ここまでは試合が進むほどにじわじわ主導権を得るウルフのペース。しかし直後イリアソフが右小外掛。これまで組む、掛けると一段手順を踏んで仕掛けていたイリアソフが手立てを変えた「組むと同時に投げる」ペースアップにウルフ意外にも一瞬置き去り、そのまま後方に崩れて「一本」。このプールからはイリアソフがベスト4へと勝ち進むこととなった。

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準決勝、リパルテリアニがルハグヴァスレン・オトゴンバータルから外巻込「技有」。

準決勝第1試合はリパルテリアニがルハグヴァスレン・オトゴンバータルを相手に得意の外巻込を決めて「技有」優勢で順当に勝利。

そして続く第2試合、王者ウルフ越えを果たしてあとは頂点目指してまっしぐらと思われたイリアソフがチョの粘戦に足元を救われる。GS延長戦に持ち込まれた末にチョの背負投を食らって「技有」失陥、チョはついに初の世界選手権決勝の畳に辿り着いた。

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決勝、リパルテルアニが得意の釣り手を伏せながらの巻き込みを狙うが、心得たチョは乗らず。

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チョの左小内刈が決まってついに「技有」

決勝はこれが「4度目の正直」、初の世界王者を狙うリパルテリアニが得意の巻き込みを狙って勇躍前進するが、相手の狙いを良く知るチョは決して引き手を与えず、切って切られての粘り合いに持ち込んで展開を散らしながらひたすらチャンスを待ち続ける。本戦終盤から線の細いリパルテリアニに対して体の太いチョが優位に立ち始め、リパルテリアニの技が決まる気配は極端に薄くなるが、チョはあくまで組み手の切り合いと担ぎ技の手数攻撃から降りずじわりと優位を取り続ける。

そして試合時間8分58秒、リパルテリアニがもはや動けぬとみたチョがついに深く左背負投に潜り込む。股中に腰を運んで相手を固めるや、後隅に押し倒す形で左小内刈に連絡「技有」。この一撃で見事初の世界選手権制覇に辿り着いた。一発で投げ切る技の威力と切れ味には欠けるチョだが、組み手争いとスタミナという自身のアドバンテージを生かし切って、相手を自身の目線まで無理やり下げたという印象。足の遅い肉食動物が遠巻きに相手を何日も追いかけ続け、走る力が残らないほど疲労させ切ってから飛び掛かったという体である。

ほんの3週間前、アジア大会決勝で飯田健太郎に為す術なく敗れたばかりのチョの優勝は率直に言って意外。シニアの一線で戦い始めてから既に7年、韓国最重量級次代の星として世に出るもキム・スンミンらベテランを追い越せずに階級を落とし、ここまで2度世界選手権を経験するがいずれも予選ラウンド敗退、なんとか辿り着いたオリンピックも2戦目で早々に敗退となかなか目に見える結果が残せなかった苦労人が、ついに栄冠を勝ち得た大会であった。

この日は常以上に集中力高く、動き良し。そして何より持ち前のスタミナが生きた。GS延長戦による勝利が3試合、準決勝と決勝合わせて14分33秒という長時間試合を戦い抜いた体力と執念はさすがであった。

勝ち上がりを読んで頂いてわかる通り、チョは組み合わせにも恵まれた。プールDのウルフが強豪との連戦で潰れ、対ウルフ戦という最大の難所を切り抜けたばかりのイリアソフと準決勝、そしてこれまたきついプールAから勝ち上がって来たリパルテリアニと決勝と、マッチアップする相手がことごとく、肉体的にも精神的にも既に相当消耗していたという背景は大きい。しかしここは、長年「門番」として上位にしがみついてチャンスを待ち続けたチョの執念がついに結実した、このめぐり合わせをも引き寄せた大会であったと考えたい。意外な結果であったが、あっぱれなタイトル獲得劇であった。

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3位決定戦、ルハグヴァスレン・オトゴンバータルがウルフアロンから支釣込足「一本」

イリアソフに敗れたウルフは敗者復活戦のマイケル・コレル戦を無事勝ち抜けるが、迎えた3位決定戦でルハグヴァスレン・オトゴンバータルの支釣込足一発を食って一本負け。横変形の危うい形を、危機管理に敏感なウルフにしては意外な長さで受け入れてしまい、まともに技を食ってしまった。最終成績はまさかの5位、開幕から5日間続いた日本男子の連続メダル獲得も潰えた。

やはり100kg級は厳しい階級。失点の場面を細かく分析するよりも、いかに前年度世界王者といえども、シードを失い、かつここまで厳しい組み合わせを引いてしまった中を、負傷明けでコンディションが完璧でない状態で勝ち抜くことは難しかったと捉えるほうがよいであろう。選考対象試合に1度も出ていないウルフを代表として送り込まざるを得ない日本代表の台所事情の苦しさがそのまままともに出た大会であり、この点ウルフはやや気の毒ですらあった。

表彰台最後の1枠はイリアソフが獲得。初めての世界選手権でしっかりメダルを持ち帰って実力を証明した。

入賞者と全試合の結果、メダルマッチ3試合および日本代表選手全試合の戦評は下記。

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100kg級メダリスト。左からリパルテリアニ、チョ、イリアソフ、ルハグヴァスレン・オトゴンバータル。

【入賞者】
(エントリー54名)
1.CHO, Guham (KOR)
2.LIPARTELIANI, Varlam (GEO)
3.ILYASOV, Niyaz (RUS)
3.LKHAGVASUREN, Otgonbaatar (MGL)
5.DARWISH, Ramadan (EGY)
5.WOLF, Aaron (JPN)
7.FONSECA, Jorge (POR)
7.KORREL, Michael (NED)

【1回戦】
アレクサンドル・イディー(フランス)○反則[指導3](3:15)△コッフィ=クレーメ・コベナ(コートジボワール)
エルマー・ガシモフ(アゼルバイジャン)○袖釣込腰(0:41)△マーティン・パチェック(スウェーデン)
イワン・レマレンコ(アラブ首長国連邦)○A優勢[技有・大外落]△ヴィクトル・デムヤネンコ(カザフスタン)
ムハマドカリム・フラモフ(ウズベキスタン)○合技[袖釣込腰・袈裟固](0:51)△バイエ・ディアワラ(セネガル)
カヨル・レイズ(カナダ)○内股(2:58)△ジェイソン・コスター(ニュージーランド)
ミハル・ホラック(チェコ)○合技[体落・横四方固](2:12)△レイズ・ボウヤコウブ(アルジェリア)
アントン・サヴィツキー(ウクライナ)○大外落(3:04)△シャー・フセイン=シャー(パキスタン)
ダニエル・ムケテ(ベラルーシ)○不戦△オマル・ジョーブ(ガンビア)
イェフゲニース・ボロダフコ(ラトビア)○優勢[技有・隅返]△アーロン・ファラ(オーストリア)
トーマス・ブリセノ(チリ)○合技[浮技・縦四方固](1:44)△アリ・アルザイディ(イラク)
ルハグヴァスレン・オトゴンバータル(モンゴル)○GS技有・背負投(GS0:12)△エル=エー・スミス=サード(アメリカ)
ヨアキム・ドファービー(スウェーデン)○縦四方固(3:08)△ゼリム・コツォイエフ(アゼルバイジャン)
ザラン・オハット(ハンガリー)○合技[隅返・横四方固](0:29)△フルーヒー・ニオゼコ(ブルンジ)
ボヤン・ドセン(セルビア)○袖釣込腰(0:27)△テヴィタ・タカヤマ(フィジー)
シリル・マレ(フランス)○GS大外巻込(GS0:40)△ズラトコ・クムリッチ(クロアチア)
アント・デュブレタ(モンテネグロ)○GS小外掛(GS0:11)△リー・ハイリン(中国)
カロリス・バウザ(リトアニア)○背負投(0:12)△レウィス・メディナ(ドミニカ共和国)
ウルフアロン○内股(2:53)△マテイ・ハヤス(スロバキア)
ダニエル・ディチェフ(ブルガリア)○崩上四方固(2:12)△パトリック・モセル(スイス)
グリゴリ・ミナシキン(エストニア)○反則[指導3](3:40)△シェラリ・ジュラエフ(ウズベキスタン)
ミキタ・スヴィリド(ベラルーシ)○帯取返(0:23)△ミシェル・カリヴォギ(ギニア)
ラウリン・ボーラー(オーストリア)○優勢[技有・背負投]△ダニーロ・ハツォル(ウクライナ)

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2回戦、ヴァーラム・リパルテリアニがアレクサンドル・イディーから肩車「技有」

【2回戦】
ヴァーラム・リパルテリアニ(ジョージア)○優勢[技有・肩車]△アレクサンドル・イディー(フランス)
エルマー・ガシモフ(アゼルバイジャン)○浮落(1:58)△ダニロ・パンティッチ(モンテネグロ)
ラマダン・ダーウィッシュ(エジプト)○合技[小外掛・縦四方固](3:33)△イワン・レマレンコ(アラブ首長国連邦)
ムハマドカリム・フラモフ(ウズベキスタン)○GS大内刈(GS0:14)△カヨル・レイズ(カナダ)
ジョルジ・フォンセカ(ポルトガル)○袖釣込腰(3:06)△ミハル・ホラック(チェコ)
アントン・サヴィツキー(ウクライナ)○大内刈(1:01)△ダニエル・ムケテ(ベラルーシ)
イェフゲニース・ボロダフコ(ラトビア)○内股(4:00)△ペテル・パルチク(イスラエル)
ルハグヴァスレン・オトゴンバータル(モンゴル)○優勢[技有・横落]△トーマス・ブリセノ(チリ)
マイケル・コレル(オランダ)○袖釣込腰(2:47)△ヨアキム・ドファービー(スウェーデン)
ボヤン・ドセン(セルビア)○GS隅落(0:30)△ザラン・オハット(ハンガリー)
チョ・グハン(韓国)○小内刈(2:44)△シリル・マレ(フランス)
カロリス・バウザ(リトアニア)○合技[隅返・隅返](0:54)△アント・デュブレタ(モンテネグロ)
ウルフアロン○片手絞(3:37)△キリル・デニソフ(ロシア)
カール=リヒャード・フレイ(ドイツ)○反則[指導3](3:29)△ダニエル・ディチェフ(ブルガリア)
ニヤズ・イリアソフ(ロシア)○合技[支釣込足・横四方固](2:22)△グリゴリ・ミナシキン(エストニア)
ミキタ・スヴィリド(ベラルーシ)○片手絞(GS1:15)△ラウリン・ボーラー(オーストリア)

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3回戦、ルハグヴァスレン・オトゴンバータルがイェフゲニース・ボロダフコから背負投「技有」

【3回戦】
ヴァーラム・リパルテリアニ(ジョージア)○外巻込(GS1:33)△エルマー・ガシモフ(アゼルバイジャン)
ラマダン・ダーウィッシュ(エジプト)○内股(2:45)△ムハマドカリム・フラモフ(ウズベキスタン)
ジョルジ・フォンセカ(ポルトガル)○GS背負投(GS0:54)△アントン・サヴィツキー(ウクライナ)
ルハグヴァスレン・オトゴンバータル(モンゴル)○合技[背負投・背負投](3:10)△イェフゲニース・ボロダフコ(ラトビア)
マイケル・コレル(オランダ)○片手絞(2:24)△ボヤン・ドセン(セルビア)
チョ・グハン(韓国)○GS反則[指導3](GS1:12)△カロリス・バウザ(リトアニア)
ウルフアロン○内股(3:51)△カール=リヒャード・フレイ(ドイツ)
ニヤズ・イリアソフ(ロシア)○横四方固(2:41)△ミキタ・スヴィリド(ベラルーシ)

【準々決勝】
ヴァーラム・リパルテリアニ(ジョージア)○合技[隅落・裏固](3:21)△ラマダン・ダーウィッシュ(エジプト)
ルハグヴァスレン・オトゴンバータル(モンゴル)○釣込腰(2:47)△ジョルジ・フォンセカ(ポルトガル)
チョ・グハン(韓国)○優勢[技有・背負投]△マイケル・コレル(オランダ)
ニヤズ・イリアソフ(ロシア)○小外掛(3:42)△ウルフアロン

【敗者復活戦】
ラマダン・ダーウィッシュ(エジプト)○GS内股(GS0:45)△ジョルジ・フォンセカ(ポルトガル)
ウルフアロン○優勢[技有・肩車]△マイケル・コレル(オランダ)

【準決勝】
ヴァーラム・リパルテリアニ(ジョージア)○優勢[技有・外巻込]△ルハグヴァスレン・オトゴンバータル(モンゴル)
チョ・グハン(韓国)○GS技有・背負投(GS1:35)△ニヤズ・イリアソフ(ロシア)

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3位決定戦、ニヤズ・イリアソフがラマダン・ダーウィッシュ(エジプト)から谷落「一本」

【3位決定戦】
ニヤズ・イリアソフ(ロシア)○GS谷落(GS3:58)△ラマダン・ダーウィッシュ(エジプト)
ダーウィッシュが左、イリアソフが右組みのケンカ四つ。イリアソフが釣り手で下から前襟を、引き手で袖を得ると、対するダーウィッシュは両襟で引き付けて圧力を掛ける。53秒、1分23秒とイリアソフが釣り手を脇下に移して右内股を放つと、ダーウィッシュは辛うじて跨いでかわす。イリアソフが積極的、対するダーウィッシュはやや受け身ながらもあと一つ後手を踏むと「指導」が出ようかという場面を的確に察知、両襟からの左内股を出して展開の均衡を保つ。その後もイリアソフの攻めをダーウィッシュがいなすという展開は続き、残り43秒にイリアソフが釣り手で脇を差して投げ合いを挑むとダーウィッシュは隅返で回避、残り20秒にイリアソフが右内股を放つとダーウィッシュが隅落で受けてスコアは動かず。勝負はGS延長戦へともつれ込む。延長もイリアソフの攻勢のまま試合が進み、GS2分29秒、ようやくダーウィッシュに最初の「指導」、GS3分37秒に両者に「指導」が与えられ、ダーウィッシュはあとがない状況となる。そして直後のGS3分58秒、脇を差して待ち構えるイリアソフに対してやや焦ったダーウィッシュが前に出て左内股を仕掛けると、イリアソフはすかさず谷落を合わせる。狙いすました後の先の技にダーウィッシュは勢いよく背中から落下しこれは文句なしの「一本」。延長4分近い消耗戦をイリアソフが見事な一本勝ちで制し、表彰台を確保した。ダーウィッシュはここまで素晴らしい柔道を見せたが、この試合はやや受けに回り持ち味の内股の切れは鳴りを潜めた。

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3位決定戦、ルハグヴァスレン・オトゴンバータルがウルフアロンから支釣込足「一本」

ルハグヴァスレン・オトゴンバータル(モンゴル)○支釣込足(2:21)△ウルフアロン
左相四つ。袖の絞り合いから試合がスタート。お互いが切ってもすぐに持って絞り直すという形で試合が進む。1分2秒、ルハグヴァスレンがウルフの左釣り手を体に押し付けながら右方向への横落。タイミングは完璧であったが、ウルフはバランス良く立ったまま耐える。ここからは再び袖をしぼり合っての膠着状態、ウルフが圧を掛けて場外際に押し込むと、ルハグヴァスレンはレスリングの「巻き投げ」のような左内巻込を仕掛けて流れをリセットする。直後の組み際、ルハグヴァスレンが左一本背負投を仕掛けようとするとウルフ自ら畳に伏せてしまい、2分0秒、偽装攻撃の「指導」。続く展開、ルハグヴァスレンが釣り手でウルフの右上腕を掴むと、これを嫌ったウルフはそちら側に体重を掛けて横変形に構える。この形からウルフが刈り足を伸ばして左大内刈を狙った直後、ルハグヴァスレンが右引き手でウルフの肘を押し上げながら左方向の支釣込足、これが決まって「技有」。浴びせ倒して横四方固で抑え込んだところで技の効果が「一本」に修正され、2分21秒試合終了。ルハグヴァスレンが3位を獲得。昨年王者のウルフは表彰台を逃すこととなった。

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決勝、チョ・グハンがヴァーラム・リパルテリアニから小内刈「技有」

【決勝】
チョ・グハン(韓国)○GS技有・背負投(GS4:58)△ヴァーラム・リパルテリアニ(ジョージア)
両者右組みの相四つ。リパルテリアニが巻き込み技のスペシャリストであり引き手を持たせるとどんな形からも極めて危険な右の巻き込みが襲ってくること、一方のチョが曲者揃いの韓国勢の中でも際立った難剣遣いであり、片手組み手で展開を散らしながら本気の低い担ぎ一発を混ぜ込んでくる粘戦ファイターであること。お互いが相手の特徴を存分に弁え、これを前提に展開を組み立てる我慢比べの試合となった。チョは相手が引き手を掴むと確実に切って巴投や左右の担ぎ技に飛び込むことで展開を散らし、リパルテリアニはチョとの切りあいの中で引き手を得ると、釣り手をクロスに入れて外巻込を狙う。序盤にチョが大きくあおって巴投を放つがリパルテリアニは心得て離れ、リパルテリアニが内股巻込を放つとチョは突き飛ばすように離して相手を宙づりにして隅落を狙う。2分51秒、リパルテリアニがクロス組み手から立ったまま大きく外巻込を放った場面は中盤のハイライトシーンとなったが、チョが釣り手側に大きく移動、深く入り過ぎたリパルテリアニの作用足が高く上がってすっぽ抜け「待て」。
3分0秒、双方に消極的との咎で「指導」が与えられ、「引き手を持てばどんな形でも巻き込み一発」対「形にこだわらない組み手から担ぎ技の放列」という試合開始時の構図変わらぬまま試合はGS延長戦へ。
得意のフィールドである延長戦まで試合を持ち込んだチョは一段元気を増し、細かく形を変えながらチャンスを探す。巻き込みを食わぬよう柔道衣をずらし、審判が帯を結ぶように指示してもほとんどその中に柔道衣を入れないなどいかにも韓国選手らしい「作り」も利かせ、相手に決して固定を許さない。その柔道衣の「はだけ」の徹底ぶりは、リパルテリアニが背中を持っただけでいきなり頭まで柔道衣がめくれてしまうほど。
切りたいのはチョの側だけ、しかし形上は双方が切り合いを望むかのような形で試合が進行。リパルテリアニが疲労し切ったGS4分58秒、チョがついに本気の左背負投を繰り出してその股中へ腰を運ぶ。相手の回避方向に合わせて後隅への左小内刈に連絡、そのまま押し込み切った一撃は「技有」。

足の遅い肉食動物が遠巻きに相手を何日も追いかけ続け、走る力が残らないほど疲労させて切ってから飛び掛かったという体。チョ、世界選手権初制覇。

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1回戦、ウルフアロンがマテイ・ハヤスから内股「一本」

【日本代表選手勝ち上がり】

ウルフアロン(了徳寺学園職)
成績:5位


[1回戦]
ウルフアロン○内股(2:53)△マテイ・ハヤス(スロバキア)
ウルフが左、ハヤスが右組みのケンカ四つ。ウルフが組もうとするとハヤスいきなり隅返に潰れ40秒偽装攻撃の「指導1」。ケンカ四つゆえどうしても引き手争いがベースになり、ゆえに組み合うまでに一定駆け引きをする間が生まれるが、ハヤスはこの短い時間の中でひたすら潰れることを繰り返す。右内股を見せるかと思えば手を一切動かさにまま反転するなり初動で自ら潰れ、大外刈かと思えば刈り足を伸ばした瞬間自ら潰れ、ウルフが大内刈を仕掛けようとすると動作の起こりの段階で早くも自ら反転して潰れる。1分18秒なぜかウルフにの側に「指導」。2分22秒、ウルフが引き手を求めるとハヤスいきなり潰れ、偽装攻撃で「指導2」。落ち着き払っているウルフだがさすがにこの時だけはややうんざりした表情。
ウルフが相手の右への支釣込足を見せるとハヤス四つん這い。続いて2分53秒、ウルフ釣り手で奥襟、引き手で袖を持つと左内股。体はあるのにどこか浮ついた動きのこれまでの柔道の印象に過たず、ハヤスはフワリと重さを感じさせないまま宙を舞って「一本」。力の差がありすぎてウルフのコンディションは測れずも、精神的にはかなり落ち着いている模様、リラックスして試合に入っていた印象。

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キリル・デニソフとの2回戦を戦うウルフ。

[2回戦]
ウルフアロン○片手絞(3:37)△キリル・デニソフ(ロシア)
いきなり訪れた大一番は左相四つ。デニソフが釣り手で背中を叩くとウルフ頭を下げて防御。ウルフ支釣込足で圧を剥がさんとするがデニソフに振られると崩れ伏せ「待て」。力関係で不利をかこつのではないかと思わせる、やや不安な立ち上がり。
しかしウルフ30秒過ぎからじわじわ前に出始め、にじり寄るなり無理やり引き手で袖を確保、これを切れないまま戦うことを強いられるデニソフは徐々に減速。常に自分が欲しい距離よりも一間ウルフに詰められている印象で、非常にやりにくそう。このシークエンスはウルフが横落に掛け潰れていったん終わるが、直後デニソフが腕を抱えて外巻込を試みるとウルフまったく揺るがず突き飛ばし、デニソフは1人で前に吹っ飛んでそのまま潰れる。どうやらウルフ、完全に試合を掴んだ気配。2分8秒、双方が奥襟を掴んだ状態からデニソフが支釣込足。相手が見えているウルフはハンドル操作で振り返し、眼前に現れたデニソフの左腕を素早く巻き込む形で抱え込む。体を捨てる過程で相手の体を捕まえなおした形、体そのまま浴びせて浮落「技有」。
リードを得たウルフ、以後は安全運転。残り36秒、デニソフにクロス組み手で後帯を掴ませてしまい手で腰を突いて防御、さらに大内刈に掛け潰れて流れを切る緊急避難に出ざるを得ず、偽装攻撃の「指導1」失陥。しかし直後、デニソフが再びクロスで叩いてきたところを支釣込足で崩し、伏せた相手の体側について「腰絞め」。襟を握った手刀を首の真前に掛け、右で脇を抑えて力の掛かりを補助する理にかなった技。デニソフたまらず「参った」。
ペースの掴み方から決着まで非常にウルフらしい試合。良コンディションの予感漂った一番。

[3回戦]
ウルフアロン○内股(3:51)△カール=リヒャード・フレイ(ドイツ)
強豪との連戦が続くウルフは左、フレイが右組みのケンカ四つ。深く持っての内股が得意なフレイは釣り手で背中を抱いて一見強気に組み手を進めるが実はかなり慎重、ウルフが釣り手を回して優位を取ろうとすると自ら離れ、あるいは「出し投げ」の形で崩してと、ウルフにひとつの形を決して長く続けさせない。ウルフ我慢強く前に出続けるが、背中を抱えたフレイに潰された1分24秒「指導」失陥。
以後も互いが背中に回した釣り手の優位を争いながら、引き手を求めるという展開は大枠変わらず。その中で良い形を作り掛けた側が、その時間帯のみスポット的に攻めるという形。ウルフは隅返に「出し投げ」、フレイは両脇を握っての隅返を繰り出して散発の攻め合い。ウルフの圧にフレイが左背負投で掛け潰れた2分30秒、フレイに偽装攻撃の「指導」。
残り1分を過ぎるあたりからウルフやや加速。残り20秒となったところでは背中を抱えて内股、さらに小外掛と繋ぎフレイをほぼ横倒しに畳に落とす。
この技の映像チェックが入って試合が再開されると、展開の到来を感じたウルフ一気に間を詰め、背中を抱えてこの試合おそらく初めて見せる左内股。釣り手を下からウルフの腕に回して抱え込んでいたフレイはこれでかえって逃げられず、ウルフ縦回転に体を捨てて投げ切り鮮やか「一本」。

[準々決勝]
ウルフアロン△小外掛(3:42)○ニヤズ・イリアソフ(ロシア)
大一番はウルフが左、イリアソフが右組みのケンカ四つ。前戦同様この試合も最戦線は互いに抱え込んだ背中の釣り手。この位置の優位不利と、引き手の持ちどころの2つを項にした掛け算を駆け引きの材料にして試合が進む。ケンカ四つクロス、巻き返し、「出し投げ崩し」、河津に脚を突っ込んでの「サリハニ」、そして腰の入れ合いとそれぞれが形を変えながら相手を固定せんと試み、状況良しと見たタイミングで散発で技を出しあう。1分20秒審判がウルフに消極的との咎でやや性急な「指導1」。1分26秒にはイリアソフが飛び込みながら迫力満点の右小外掛を放つが、崩れたウルフはすぐに立ち上がり左内股、横落と繰り出して陣地を譲らず。3分5秒、イリアソフが釣り手一本の「サリハニ」に形を変えるとウルフ良いタイミングの左内股で剥がし投げ、イリアソフが潰れて「待て」。終盤に加速せんとしたウルフが引き手を激しく求めるとイリアソフが嫌い、残り25秒でイリアソフに片手の「指導1」。
この直後の組み際、イリアソフが釣り手で背中を抱きながら思い切り右小外掛。抱くと同時に掛け、掛けると同時に引き手で脇を差すロケットダッシュの一撃。組んでから技を掛けていたこれまでと異なり、過程を飛ばして一足飛びに投げに掛かったこの技にウルフ一瞬置き去り。受け止めた瞬間にはもう後方への崩れが始まっており、そのまま畳に沈んで「一本」。事実上の決勝と目された試合は、イリアソフの勝利に終わった。

[敗者復活戦]
ウルフアロン○優勢[技有・肩車]△マイケル・コレル(オランダ)
ウルフが左、コレルは右組みのケンカ四つ。コレルは平時のこの人の柔道の通り左構えの右組み、巧みに釣り手で奥襟と背中を持ち替え、形を作っては圧を掛けるが、これもこの人の平常運航で肝心の組み勝ってからの技がない。完璧に組んでいるにも拘わらず自ら離して後帯を掴み直し、組み勝っているのに自ら一回離れ、とつかみどころのない進退。結果ウルフはしっかり組むことも、組み負けておいて罠を張ることもなかなかさせてもらえない。1分12秒には瞬間的に釣り手を立てて圧から抜け出し、左大内刈を仕掛けるが潰れてしまい、技が止まった1分8秒には消極的との咎で「指導」失陥。
ウルフやや奮起してケンカ四つクロスの形を経て両手で相手を捕まえると、相手の右襟を自分の頭越しに被る格好で右前隅へ肩車。落ちたコレルの肩が内側に入り、映像チェックの結果これは「技有」。
こうなればウルフは無理をせず。コレルの「組み勝つが具体的な技はない」試合ぶりは以後も続き、残り20秒では自ら誘って脇を差し合う相撲状態を作っておきながらひたすらウォッチ、ウルフの大内刈で伏せさせられて「待て」。そのまま終戦。強豪と連戦が続くウルフ、しっかりメダルマッチに歩を進めることとなった。

[3位決定戦]
ウルフアロン△支釣込足(2:21)○ルハグヴァスレン・オトゴンバータル(モンゴル)
※前述のため省略

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※ eJudoメルマガ版9月25日掲載記事より転載・編集しています。

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