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【バクー世界柔道選手権2018特集】新井千鶴が重圧乗り越えみごと連覇、大野陽子は銅メダルを確保・バクー世界柔道選手権2018女子70 kg級即日レポート

(2018年9月24日)

※ eJudoメルマガ版9月24日掲載記事より転載・編集しています。
【バクー世界柔道選手権2018特集】新井千鶴が重圧乗り越えみごと連覇、大野陽子は銅メダルを確保
バクー世界柔道選手権2018女子70 kg級即日レポート
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文責:古田英毅/eJudo編集部
Text by Hideki Furuta

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2連覇達成の新井千鶴

アゼルバイジャン・バクーで行われている世界柔道選手権2018は24日、競技日程第5日の男子90kg級、女子70kg級の競技が行われ、70kg級は日本代表の新井千鶴(三井住友海上)が優勝した。新井は昨年のブダペスト大会に続く2連覇、決勝はフランスの新鋭マリーイヴ・ガイを合技「一本」で破った。初出場の大野陽子(コマツ)は3位だった。

優勝候補の筆頭格と目された新井は第5シードで大会をスタート。初戦(2回戦)では5月のグランプリ・フフホト大会でまさかの敗戦(「指導3」)を喫したジェンマ・ハウエル(イギリス)を内股と崩袈裟固の合技「一本」で一蹴、3回戦はジョヴァンナ・スコッチマッロ(ドイツ)をGS延長戦開始早々の出足払「技有」で破り、最大の勝負どころと目された準々決勝はもと世界王者のジュリ・アルベール(コロンビア)とマッチアップ。ケンカ四つのこの試合の勝負どころは試合開始50秒に訪れ、アルベールが構えを逆(左)に変えて左で奥襟を叩き、右小外掛の奇襲。新井一瞬首を上に向けて仰け反るが次の瞬間には立ち直り、右の浮腰で振り返して「技有」奪取。おそらくアルベールが懐に呑んで来たであろう対新井戦用の勝負技を弾き返したこの一撃で優勢勝ちを果たした。準決勝はこの日好調、3回戦ではワールドマスターズ王者マリア・ポーテラ(ブラジル)を小内刈「一本」で破っているマリア・ペレス(プエルトリコ)を大内刈「一本」で破って決勝進出決定。

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準決勝、マリー=イヴ・ガイがアッスマ・ニアンから隅返「技有」。

逆側の山からは前述の通りマリー=イヴ・ガイ(フランス)が決勝へ。2回戦はアレナ・プロコペンコ(ロシア)を払腰「一本」、3回戦はエミリー・バート(カナダ)からGS延長戦の末3つの「指導」を奪っての反則、準々決勝はサリー・コンウェイ(イングランド)を小外掛と崩袈裟固の合技「一本」で破り、勝負どころと目された準決勝ではこの日好調のアッスマ・ニアン(モロッコ)を隅返と横四方固の合技「一本」で下して、初の世界選手権ファイナリストの座を勝ち得ることとなった。

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決勝、新井が左内股「技有」

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一本勝ちで優勝決定、重圧から解放されて思わず涙を見せる新井

迎えた決勝は、既にアルベール戦という山場を乗り越えた新井が優位と思われたが、19秒にガイが首を抱くと新井は背を横抱きに、ノーガードの打ち合いに応じる形で対応。ここから腰を入れて左大内刈の形で一歩足を歩み入れようとすると、ガイはこの動きに合わせて右小外掛。膝を持ち上げられた新井一瞬で崩れ、なんと「技有」失陥。ガイは勢いづいてパワーを生かすべく以後も背を抱くが、新井はこれを減速させ切れず、背を横抱きに応じ続ける危うい柔道。しかしどうやら地力に勝った模様、1分17秒に同じ形から左大腰、さらに左内股に連絡。組み手を飛ばして有無を言わさず力を伝えた体のこの技は「技有」、そのまま縦四方固に連絡して合技「一本」。見事2連覇を決めた。

抑え込みから顔を上げた新井は安堵と達成感の入り混じった表情、そしてその目には光るものが。戴冠後に出場した3度の国際大会に選抜体重別と全てタイトルを落とし、世界王者の称号の重さに苦しんだこの1年間の労苦と凄まじい重圧が偲ばれる、感動的なシーンであった。

大野陽子は銅メダルを確保。準々決勝でパワー派の不確定要素アッスマ・ニマン(モロッコ)の小外掛一発に沈んだが、気持ちを立て直して敗者復活戦を勝ち上がり、3位決定戦ではマリア・ペレス(プエルトリコ)から「指導3」の反則で勝利した。

もう1人の3位入賞者は32歳となったもと世界王者アルベール。前述の通り準々決勝で新井に敗れたが、ケリタ・ズパンシック(カナダ)とアッスマ・ニアン(モロッコ)の強豪2人をいずれも投げてしっかり銅メダルを確保した。

入賞者、新井千鶴選手のコメントと全試合の結果、メダルマッチ3試合および日本代表選手全試合の戦評は下記。

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70kg級メダリスト。左からマリー=イヴ・ガイ、新井、アルベール、大野。

【入賞者】
(エントリー46名)
1.ARAI, Chizuru (JPN)
2.GAHIE, Marie Eve (FRA)
3.ALVEAR, Yuri (COL)
4.ONO, Yoko (JPN)
5.NIANG, Assmaa (MAR)
6.PEREZ, Maria (PUR)
7.ZUPANCIC, Kelita (CAN)
8.CONWAY, Sally (GBR)

新井千鶴選手のコメント
「(―二連覇しての気持ちを教えてください」ずっと二連覇を狙っていたので、目標達成できて凄く嬉しいです。(―決勝を終えた直後、気持ちがこみ上げているようでした)ずっと欲しかった優勝だったので…。『技有』をとられてもう前に出るしかないと思って。(技有を取られてリードされている中で)優勝ができて本当に嬉しかったという気持ちもありますし、ホッとした気持ちもありました。(―二連覇を達成しましたが、今後の目標について教えてください)まずはグランドスラム大阪で優勝して、次に繋げることが目標です。去年はグランドスラム東京を逃してしまったので、今年こそはグランドスラム大阪も取って、次に繋げたいです。)

【1回戦】
ダリア・ポゴゼレッツ(ポーランド)○優勢[技有・袖釣込腰]△ショヒスタ・ナザロワ(ウズベキスタン)
マリア・ペレス(プエルトリコ)○優勢[技有・大外刈]△ガブリエラ・ウィレムス(ベルギー)
カローラ・パイッソーニ(イタリア)○崩上四方固(2:49)△エンジ=シエラ・ニラギラ(ブルンジ)
マリア・ベルナベウ(スペイン)○袈裟固(1:03)△アエリタ・シェルバコワ(カザフスタン)
ツェンドアユシュ・ナランジャルガル(モンゴル)○合技[内股・内股](1:04)△マリヤ・タカハシ(フィリピン)
ジェンマ・ハウエル(イングランド)○優勢[技有・隅返]△カレーネ・アゴノ=ウォラ(ガボン)
ジョヴァンナ・スコッチマッロ(ドイツ)○合技[内股・内股](2:10)△レネタ・ロリンチ(ハンガリー)
アレナ・プロコペンコ(ロシア)○優勢[技有・引込返]△ヒルデ・ヤガー(オランダ)
エミリー・バート(カナダ)○三角絞(1:24)△サビナ・ゲルチャク(ハンガリー)
メガン・フレッチャー(アイルランド)○横四方固(2:50)△イーファ・コーグラン(オーストラリア)
大野陽子○横四方固(2:13)△グルノザ・マトニヤゾワ(ウズベキスタン)
サラ・ロドリゲス(スペイン)○優勢[技有・隅落]△アジャル・サリコワ(カザフスタン)
ロクサーネ・タエイモンス(ベルギー)○優勢[技有・一本背負投]△ナタリア・スマル(ウクライナ)
ヤン・ジー(中国)○反則[指導3](1:34)△エミリー・スーク(デンマーク)

【2回戦】
マリア・ポーテラ(ブラジル)○合技[裏投・体落](2:44)△ダリア・ポゴゼレッツ(ポーランド)
マリア・ペレス(プエルトリコ)○大外刈(0:32)△ファリナ・カノム(バングラデシュ)
ケリタ・ズパンシック(カナダ)○反則[指導3](3:24)△カローラ・パイッソーニ(イタリア)
マリア・ベルナベウ(スペイン)○崩上四方固(2:37)△ジョン・ヘジン(韓国)
サンネ・ファンダイク(オランダ)○片手絞(2:19)△ツェンドアユシュ・ナランジャルガル(モンゴル)
ジュリ・アルベール(コロンビア)○横四方固(1:08)△アユク=オタイ・アレイ=ソフィーナ(カメルーン)
新井千鶴○合技[内股・崩袈裟固](3:22)△ジェンマ・ハウエル(イングランド)
ジョヴァンナ・スコッチマッロ(ドイツ)○合技[大内刈・袈裟固](1:25)△エリサベット・テルツィドウ(ギリシャ)
マリー=イヴ・ガイ(フランス)○払腰(3:33)△アレナ・プロコペンコ(ロシア)
エミリー・バート(カナダ)○合技[小内刈・小内刈](3:22)△シャンタル・ライト(アメリカ)
サリー・コンウェイ(イングランド)○優勢[技有・引込返]△エルビスマール・ロドリゲス(ベネズエラ)
メガン・フレッチャー(アイルランド)○GS縦四方固(GS4:00)△ミヘイラ・ポレレス(オーストリア)
大野陽子○GS横四方固(GS4:19)△アンナ・ベルンホルム(スウェーデン)
サラ・ロドリゲス(スペイン)○崩上四方固(3:07)△デモス・メムネルム(チャド)
アッスマ・ニアン(モロッコ)○小外掛(1:45)△ロクサーネ・タエイモンス(ベルギー)
ヤン・ジー(中国)○優勢[技有・内股]△クォン・スンヨン(北朝鮮)

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準決勝、新井がマリア・ペレスに左内股。ここから大内刈に繋いで一本勝ち。

【3回戦】
マリア・ペレス(プエルトリコ)○小内刈(1:06)△マリア・ポーテラ(ブラジル)
ケリタ・ズパンシック(カナダ)○崩上四方固(1:23)△マリア・ベルナベウ(スペイン)
ジュリ・アルベール(コロンビア)○大内刈(0:16)△サンネ・ファンダイク(オランダ)
新井千鶴○GS出足払(GS0:10)△ジョヴァンナ・スコッチマッロ(ドイツ)
マリー=イヴ・ガイ(フランス)○GS反則[指導3](GS1:14)△エミリー・バート(カナダ)
サリー・コンウェイ(イングランド)○GS技有・大外刈(GS2:09)△メガン・フレッチャー(アイルランド)
大野陽子○上四方固(3:03)△サラ・ロドリゲス(スペイン)
アッスマ・ニアン(モロッコ)○隅返(0:59)△ヤン・ジー(中国)

【準々決勝】
マリア・ペレス(プエルトリコ)○GS技有・袖釣込腰(GS0:31)△ケリタ・ズパンシック(カナダ)
新井千鶴○優勢[技有・浮腰]△ジュリ・アルベール(コロンビア)
マリー=イヴ・ガイ(フランス)○合技[小外掛・崩袈裟固](1:20)△サリー・コンウェイ(イングランド)
アッスマ・ニアン(モロッコ)○小外掛(2:04)△大野陽子

【敗者復活戦】
ジュリ・アルベール(コロンビア)○GS払腰返(GS1:02)△ケリタ・ズパンシック(カナダ)
大野陽子○GS技有・内股(GS0:53)△サリー・コンウェイ(イングランド)

【準決勝】
新井千鶴○大内刈(3:24)△マリア・ペレス(プエルトリコ)
マリー=イヴ・ガイ(フランス)○合技[隅返・横四方固](2:13)△アッスマ・ニアン(モロッコ)

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3位決定戦、「技有」ビハインドのアルベールが大外刈「一本」で逆転勝利。

【3位決定戦】
ジュリ・アルベール(コロンビア)○大外刈(1:54)△アッスマ・ニアン(モロッコ)
右相四つ。試合が始まるなりニアン勢い良く組み付いて右方向の隅返、そのまま上から寝技で攻めるが20秒「待て」。ここから双方睨み合っての相手の出方を窺う時間帯が続き、42秒、両者に取り組まない咎による「指導」。アルベールが出血したため、ここで試合が中断。再開されると再び組み手争いが行われるが、組むことを嫌って下がり続けたニアンに、1分18秒、再び取り組まない咎による「指導2」が追加される。直後の1分37秒、場外際の組み手の攻防からニアンが奥襟を得て反時計回りの隅返。肩越しに釣り手を差し入れていたアルベールは堪らず転がってしまい「技有」。なんとニアンが先制することとなる。しかし、ニアンのリードは一瞬で終了。続く展開でニアンが奥襟を持つと、アルベールはこれにクロスグリップで応じ、一度右大内刈を当てて相手を下がらせての右大外刈に飛び込む。相手の下がる方向を予測して右方向に仕掛けたこの技は見事決まって「一本」。まっすぐ下がってはならじと回り込んだ方向に既に置かれた刈り足の罠、一瞬で逆転負けとなったニアンは畳に倒れ込み呆然。アルベールが格の違いを見せつけて3位を獲得した。

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3位決定戦、大野陽子がマリア・ペレスを攻める

大野陽子○GS反則[指導3](GS0:45)△マリア・ペレス(プエルトリコ)
右相四つ。ペレスは左構えで試合をスタート。一方の大野はいつも通り右、左と交互に手を出しながら圧を掛けて前進する。1分15秒、追い込まれた相手が堪らず伏せるとここから寝技を展開、「腹包み」から股を掴んで捲る得意の形で抑え込みを狙う。これは手が離れてしまい決め切れなかったが、場外に向かって逃げたペレスに1分27秒、寝技では珍しい場外の「指導」。続く展開、大野は場外際に相手を追い込み右一本背負投。一瞬ペレスの体が浮くが、決めに繋ぐ事が出来ずポイントはなし。1分45秒にはペレスの左外巻込を起点に頭側に回り込んで抑え込みかける場面が現れるが、足を抜こうとしている間に上体の拘束が緩んでしまい「待て」となる。ここからは組み手を進めながら前進圧力を掛ける大野に、場外際の技でこれを凌ぐペレスという構図。ペレスが苦し紛れの右背負投で掛け潰れた3分12秒、ペレスに偽装攻撃の「指導2」が加えられる。以降は大きな動きなく本戦4分間が終了、そのまま勝負はGS延長戦へ。

GS35秒、大野は引き手で袖口付近を得ると相手の腕を体に押し付けながら前進、するとこれを嫌ったペレスは自ら背中を向け、袖釣込腰の形を装いながら場外に向かって逃れようとする。大野これを引き止め左小内刈で潰すと、相手の左腕を取って左大外刈の要領で押し倒して腕挫手固を狙う。これは「待て」となるが、直後のGS45秒ペレスに偽装攻撃の「指導3」が与えられ試合決着。大野が3位入賞を決めた。

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決勝、新井の左内股「技有」

【決勝】
新井千鶴○合技[内股・縦四方固](2:21)△マリー=イヴ・ガイ(フランス)
新井が左、ガイが右組みのケンカ四つ。ガイは首を抱いて強気の組み手、釣り手を横抱きに応じた新井は左大内刈の形で相手の腰を乗り越え、股中に脚を一歩進めんとする。その瞬間ガイが右小外掛。膝裏に膝を高く入れる形のこの技を重心移動の際に食った新井は真裏に崩れて落下、19秒「技有」。勢いを得たガイは首を抱いて圧を掛けると横落、さらに立ち上がって左内股と動きを止めずに攻める。新井はいったん落ち着くべき場面だが、首を抱かれると脇を差し返すリスクの高い形で応じてしまい、進退極めて不安定。ガイは後帯を握って腰を入れ、さらに首を抱いての右小外掛と攻め続ける。これをかわした新井はまたしても脇を差して対峙、いつどちらの技が決まってもおかしくない、緊張感高い形での攻防が続く。
しかしこの危うい形をそのままに、新井が地力勝ち。釣り手で背中を横抱きに抱いたまま左大腰の形で腰を入れ、そのまま内股に連絡。有無を言わさず力を伝えたこの技で1分17秒「技有」獲得。あとは立たせず、縦四方固に抑え込んで合技「一本」。
戴冠から1年、苦しみ続けた新井だがこの晴れ舞台でみごと連覇達成。にじむ涙に、この1年の労苦と凄まじいプレッシャーが察せられた。

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回戦、因縁の相手ジェンマ・ハウエルを攻める新井

【日本代表選手勝ち上がり】

新井千鶴(三井住友海上)
成績:優勝


[2回戦]
新井千鶴○合技[内股・崩袈裟固](3:22)△ジェンマ・ハウエル(イングランド)
新井が左、ハウエルが右組みのケンカ四つ。組み合って投げを狙いたい新井に両袖での膠着状態、そしてそこからの手数攻勢を思考するハウエルという構図。新井が二本持つとハウエルは右袖釣込腰で座り込み都度形をリセットしてしまう。1分間際、ハウエルが得意の両袖の形を作リ出すことに成功。新井は釣り手を絞られたまま引き手にまとめて仕掛ける低空の左内股を狙う。投げるには至らなかったものの、ハウエル崩れて場外へ。直後の1分10秒、ハウエルに消極的の「指導」が与えられる。

ここからハウエルは低く構えて背中を抱く形に組み手を変更、この形から隅返を狙う。しかし、新井は抱き込まれた形を利用して相手の懐の中で低く潜り込む左体落を連発、あくまで展開を譲らない。少しずつ新井の圧が効き始め、ハウエルが中途半端な右袖釣込腰で掛け潰れた3分10秒、ハウエルに消極的の「指導2」が追加される。

直後の3分16秒、もはや組むしかないハウエルが自ら組み付くと、新井は引き手で袖、釣り手で相手の上腕なを持った形を作り、相手を釣り手側に呼び込んで2段階で跳ね上げる左内股。乗り上げるように投げ切り「技有」、そのまま崩袈裟固で抑え込み合技「一本」に辿り着く。新井は初戦突破。グランプリ・フフホトのリベンジを果たして3回戦へと駒を進める。

[3回戦]
新井千鶴○GS出足払(GS0:10)△ジョヴァンナ・スコッチマッロ(ドイツ)
新井が左、スコッチマッロが右組みのケンカ四つ。新井は釣り手で横襟を持って手首を立て、引き手で袖を掴んで寄せてときちんと組み手を進めるが、大枠引き手争いと、スコッチマッロの攻撃偽装による腰の入れ合いに嵌ってなかなか決定打が出ない。残り22秒業を煮やして小外掛で突進するも内股で剥がされて「待て」。試合はGS延長戦へ。
延長開始早々、新井横襟を握った釣り手で相手の釣り手を内から弾くと、危機を感じたスコッチマッロは浅く大内刈の形で足を入れる。ここから踏み込んで入り直そうと重心を移したところに新井が出足払をぶつける。足を「掛け」の形で重心移動を捉えた体、スコッチマッロ仰け反り崩れて「技有」。これで試合終了となった。

[準々決勝]
新井千鶴○優勢[技有・浮腰]△ジュリ・アルベール(コロンビア)
世界王者同士による大一番は新井が左、アルベールが右組みのケンカ四つ。アルベールは引っ掛けるような右内股、新井も組み際の左内股を繰り出して攻め合う。50秒の組み際、アルベールが左構えに変えて左で奥襟を叩き、右小外掛。いったん首をガクリと上に向けた新井だが一瞬で立ち直り、かわして腰を切ると右浮腰の形で投げ返し「技有」。
決定的なポイントを得た新井は以後緩急をつけながら、攻め、リスクを負い過ぎず手堅く試合を進める。そのまま最後まで戦い切り、「技有」優勢で勝利決定。

[準決勝]
新井千鶴○大内刈(3:24)△マリア・ペレス(プエルトリコ)
左相四つ。癖のあるペレスを相手に新井やや慎重、しかし自信を持って試合を進める。両袖の左大外刈、両袖をまとめた左内股、「小内払い」と大内刈の連携など組み手進行の形に応じて手立てを変えながら、じっくり攻める。残り30秒を過ぎたところで二本を得て左大内刈、ペレスが耐えると左内股に連絡。片足で我慢したペレスが右に重心を移そうとするとじこれに合わせて再び左大内刈に戻し、いったん足に触るや方向を真裏に変えて決めに掛かる。下がってかわそうとした刹那に追い込みを食らったペレス一瞬で崩落「一本」。

[決勝]
新井千鶴○合技[内股・縦四方固](2:21)△マリー=イヴ・ガイ(フランス)
※前述のため省略

大野陽子(コマツ)
成績:3位


[1回戦]
大野陽子○横四方固(2:13)△グルノザ・マトニヤゾワ(ウズベキスタン)
大野、マトニヤゾワともに右組みの相四つ。大野組み勝って圧力、寝技を展開して「待て」を貰った直後の31秒。マトニヤゾワに「指導」。大野が引き手で襟、釣り手で奥襟を叩いて前に出るとMATNIYAZOVAは腰を引いてディフェンス。ここから「巴十字」を敢行するが、大野が潰して正対し「待て」。主審はここで「引き込み」あるいは「立ち勝負での関節技」と判断したかマトニヤゾワに2つ目の「指導」。
大野が再び引き手で襟、釣り手で奥襟を叩くとマトニヤゾワは反時計回りに回りながら腰技でこれを剥がそうとする。しかし大野は体捌き良くこれを空転させ、伏せた相手に食いついて寝勝負を展開。左手で腹を包むと相手の左体側におり、股中に右手を入れ、頭を下げさせてひっくり返し自分の体の上を転がす。縦にひっくり返された相手が畳に落ちるとすぐさま上体にアプローチ。脇に肘を突っ込んで固定しておき、横四方固に連絡する。マトニヤゾワ動けず「一本」。

[2回戦]
大野陽子○GS横四方固(GS4:19)△アンナ・ベルンホルム(スウェーデン)
大野、ベルンホルムともに左組みの相四つ。大野が引き手で袖を掴み、襟を得んと前進するとベルンホルムは掌を合わせる形でディフェンス。23秒ベルンホルムに「指導」。大野引き手で袖、釣り手で奥襟を掴み、引きずって腰を切ると伏せたベルンホルムを追いかけて寝技へ。腹を包み、股中から抱え、自分の腹の上を縦に転がす得意の形で2度展開し1分近く攻め続けるが獲り切れず「待て」。試合時間は1分50秒。続く展開もほとんど間を置かず大野が組み手を作るとベルンホルムが潰れ、再び大野は同様の技法から捲り返すが寝技の得意なベルンホルムは両足をまっすぐに延ばして絡みつき、耐え続ける。以後も大野崩しては寝技で攻めるがベルンホルムは耐え抜き、本戦4分はほとんどが寝技の攻防、それも大野が攻めてベルンホルムが耐える形ばかりで終了。

延長戦、1分13秒に大野に袖口を握り込んだ咎で「指導」、ベルンホルムが隅返と払巻込を繰り返すと2分10秒には消極の咎で大野に2つ目の「指導」が与えられる。

延長3分を過ぎたところでベルンホルムの隅返をきっかけにまたもや長い寝技の攻防。両足を一文字に伸ばしてベルンホルムが絡みつき、大野が抜きにかかる。総試合時間8分を超えたところでベルンホルムが根負け、大野足を引き抜いて抑え込み「一本」。

[3回戦]
大野陽子○上四方固(3:03)△サラ・ロドリゲス(スペイン)
大野が左、ロドリゲス右組みのケンカ四つ。ロドリゲスが奥を叩くと大野頭が下がってしまうが、これをリセットすると引き手を掴んで前へ。ロドリゲス場外に詰まり、肘抜きの背負投で外に逃れるが主審見逃さず1分18秒場外の咎で「指導」。

互いに持ち合ってのやや粗い攻防の中、ロドリゲスが右袖釣込腰に座り込む。大野待ってましたとばかりに瞬間加速、引き手側の肘を脇に突っ込み、釣り手で頭を抱えると横四方固を狙う。ロドリゲス離れて逃げようとするが大野は押し込み、場外まで両者滑る形で移動したところでようやくロドリゲスの体が回り「抑え込み」宣告。大野崩上四方固に連絡して抑え切り「一本」。

大野陽子△小外掛(2:04)○アッスマ・ニアン(モロッコ)
大野が左、ニアンが右組みのケンカ四つ。まずはお互い睨み合うように遠間から手を伸ばし合う形で試合がスタートする。35秒、ニアンが背中深くを叩くと同時に右方向への隅返。大野危うく転がりかけるが側転の要領で辛うじて腹這いで着地する。1分10秒、大野が組み勝って圧を掛けるとニアンあっさりと畳をわり場外の「指導」。ここからは再び組み手争い、場外際でニアンが抱きついたところに大野が左内股を合わせるが、拘束が甘く両者同体の腹這いで畳に伏せる。2分1秒、両者二本持っての組み手の攻防からニアンが飛び出し釣り手で背中を抱いて右小外掛。大野反応が遅れこれを下がりながら受けることとなり、棒立ちのまま背中から畳に落下。主審が「一本」を宣告して決着。勝利したニアンは絶叫しながら試合場を走り回り大喜び。大野のベスト8敗退が決まった。

[敗者復活戦]
大野陽子○GS技有・内股(GS0:53)△サリー・コンウェイ(イングランド)
大野が左、コンウェイ右組みのケンカ四つ。大野は相手の側面から奥足への小外刈を見せ、さらに左小内刈から左内股と攻める。コンウェイも出足払で対抗するが大野はこれも左小内刈で切り返して足技に手ごたえを感じた模様、2分過ぎには釣り手を脇から差し入れて背を抱き、体ごと持ち上げるような送足払。コンウェイふわりと浮き、畳に落ちるがポイントには至らず「待て」。大野粛々前に出るも時間が経つにつれコンウェイが慣れ始めたこともありやや単調、得点の予感ないまま試合はGS延長戦へ。大野、前進志向が良く染みたことを見計らって、組み際に出足払で崩し、次いで勝負技の右内股。出足払を受けたコンウェイは足を開いて踏ん張ってしまっており既に剛体、吹っ飛んで「技有」。大野、3位決定戦進出決定。

[3位決定戦]
大野陽子○GS反則[指導3](GS0:45)△マリア・ペレス(プエルトリコ)
※前述のため省略

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