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【バクー世界柔道選手権2018特集】地獄のABブロック生き残ったモラエイが頂点極める、組み合わせに背中押された藤原崇太郎は大健闘の2位・バクー世界柔道選手権2018男子81kg級即日レポート

(2018年9月23日)

※ eJudoメルマガ版9月23日掲載記事より転載・編集しています。
【バクー世界柔道選手権2018特集】地獄のABブロック生き残ったモラエイが頂点極める、組み合わせに背中押された藤原崇太郎は大健闘の2位
バクー世界柔道選手権2018男子81kg級即日レポート
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文責:古田英毅/eJudo編集部
Text by Hideki Furuta

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初優勝を決めたサイード・モラエイ。昨年の銅メダルからのジャンプアップであった

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2回戦、サギ・ムキがアッティラ・ウングバリから袖釣込腰「一本」

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2回戦、アンリ・エグディゼがゼベダ・レフヴィアシヴィリから帯取返「技有」

アゼルバイジャン・バクーで行われているバクー世界柔道選手権2018、大会4日目の23日は男子81kg級と女子63kg級の競技が行われ、81kg級はサイード・モラエイ(イラン)が優勝を飾った。モラエイは初優勝。2位には日本代表の藤原崇太郎(日本体育大2年)が入賞した。

この81kg級は超激戦。展望で紹介した「優勝候補20人」の観測にまさしく偽りなし。抜け出す人材がいないから起こる「混戦」ではなく、強い選手、良い選手、メダル獲得がふさわしいレベルの強者があまりに多いゆえの「激戦」。特にAブロックとBブロックでは序盤から決勝戦レベルのカード、そして内容の濃い勝負が次々繰り広げられた。無名選手もこの流れに引っ張られたか特にA、Bブロックは誇張なしに観戦上の「捨て試合」が1試合もない充実ぶり。出色の出来を見せた選手がそれ以上の力を持つ選手に次戦で屠られ、生き残った選手がどちらが勝ってもおかしくない「食い合い」を演じ続けた。特に目立っていた選手を挙げるとセンスと力の兼ね備わった一撃を決め続けて会場を沸かせたヴェダット・アルバイラク(トルコ・※ギリシャから移籍して名前を変えたロマン・モウストポウロスである)、いつの間にか世界選手権の覇者にふさわしいオーラを身にまとったアレクサンダー・ヴィーチェルツァク(ドイツ)、初戦で早くも決勝レベルのカードとなったゼベダ・レフヴィアシヴィリ(ジョージア)戦をGS帯取返「技有」で勝ち抜けてイ・センス(韓国)もGS抱分「技有」で破ったアンリ・エグティゼ(ポルトガル)、大技連発のサギ・ムキ(イスラエル)、オトゴンバータル・ウーガンバ―タル(モンゴル)を大外刈「技有」で食ったエドゥアルド=ユウジ・サントス(ブラジル)、鋭い担ぎ技を連発したマティアス・カッス(ベルギー)、体の強さで相手を圧倒したアスラン・ラッピナゴフ(ロシア)ら。まさに鬼が鬼を斬り伏せて勝ち上がる、地獄の業火に焼かれながらのサバイバルマッチ。単なる勝った負けたという結果を超えて非常に内容の濃い「神大会」とでもいうべき面白さであった。

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2回戦、サイード・モラエイがエティエンヌ・ブリオンから浮技「一本」

そしてもっとも目立っていたモラエイがAブロックから決勝へ。勝ち上がりは2回戦でエティエンヌ・ブリオン(カナダ)を浮技「一本」、3回戦でスヴェインビヨルン・イウラ(アイスランド)からわずか14秒の肩車「一本」、4回戦でアンリ・エグティゼ(ポルトガル)を44秒出足払「一本」、準々決勝でこれもここまで出色の出来のマティアス・カッス(ベルギー)から肩車「技有」優勢、事実上の決勝と目された準決勝はヴェダット・アルバイラクをGS延長戦払巻込「技有」というもの。

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3回戦、藤原崇太郎がアルファ=オウマ・ジャロから袖釣込腰「技有」

もう1人のファイナリストは藤原崇太郎。この「地獄」にあって藤原が配されたプールCだけは強者がほぼまったくおらず、唯一の敵と思われたフランク・デビト(オランダ)も初戦で無名のドミニカ選手に思いきり放られまさかの敗退。1人残された藤原は敵なき山を丁寧な戦いで勝ち上がってベスト4入り。本来ここからは敵のレベルが段違いに上がるはずだが、隣の山から五輪王者ハサン・ハルモルザエフ(ロシア)を食って準決勝へ勝ち上がってきたのはなんと全階級通じて屈指の「技を掛けない」ドミニク・レッセル(ドイツ)。81kg級が超攻撃型ばかりであるゆえに生息しうるこの選手の勝ち上がりによって、藤原は、この史上に残る大激戦トーナメントにあってほとんど強者と戦わぬまま決勝まで進むこととなった。勝ち上がりは2回戦でウラジミール・ゾロエフ(キルギスタン)を一本背負投と背負投の合技「一本」、3回戦でアルファ=オウマ・ジャロ(フランス)を袖釣込腰「技有」による優勢、4回戦でサミ・シュシ(ベルギー)を大外返「技有」優勢、準々決勝でダミアン・シュワルノヴィツキ(ポーランド)を崩袈裟固「一本」、準決勝で前述ドミニク・レッセルをGS延長戦の支釣込足「一本」というもの。

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決勝、モラエイが藤原から肩車「技有」

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GS延長戦、払巻込「技有」で熱戦決着。

決勝はモラエイが3回戦でも決めている「居反り」風の肩車で「技有」をリード。しかしモラエイは守りに入らず藤原に横変形での作りを許し、藤原は意地の大外刈「技有」でタイスコアに持ち込む。モラエイはアジア大会でもクロージングミスで逆転負けを喫した来歴があり試合の行方はまったくわからなくなったが、GS延長戦16秒、モラエイは右腰車に入り込むと裏投を狙った藤原と力比べ。ここから払巻込に連絡して「技有」奪取、悲願の優勝を決めた。

激戦ブロックを勝ち残ったモラエイの優勝は妥当。3位決定戦でもA、Bブロック側の生き残りであるヴィーチェルツァクとアルバイラクが圧勝で試合を決め、トーナメントの偏りを証明した。

とはいえ藤原は大健闘。モラエイとは互いの本格出世前である2017年4月のアジア選手権で戦って勝利している来歴があり、この「アジアの空間」に引きずりおろして勝利する可能性も十分あった。3週間前のアジア大会におけるライバル・佐々木健志の失敗ゆえかこの日はひときわ丁寧で集中力の高い戦い。グランドスラム・パリで優勝した際の藤原の戦いぶり、そして決勝のモラエイ戦の様相を見る限り強者たちのブロックに入ってもキッチリ勝ち上がれたのではないかと推察されるが、ここは逆に運のないところ。銀メダルという素晴らしい結果は持ち帰ったが、結果に比すれば強者との経験蓄積と評価アップ、この激戦階級で強者たちと呼吸をするという手ごたえは意外と得られなかったのではないだろうか。何よりこの凄まじい強者たちの打ち合いの輪に入って、堂々戦ったであろうその姿が見たかった。それが一抹、惜しい。

藤原大健闘の2位、そしてそれを超えるトピックとして、日本代表の勝ち上がりを追うだけではなかなか伝わらないであろう2018年度世界選手権 81kg級の面白さ、こんなに素晴らしい大会があったのだということをひとことお知らせして、稿を終えたい。

入賞者と全試合の結果、メダルマッチ3試合および日本代表選手全試合の戦評は下記。

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81kg級メダリスト。左から藤原、モラエイ、ヴィーチェルツァク、アルバイラク。

【入賞者】
(エントリー65名)

1.MOLLAEI, Saeid (IRI)
2.FUJIWARA, Sotaro (JPN)
3.WIECZERZAK, Alexander (GER)
3.ALBAYRAK, Vedat (TUR)
5.RESSEL, Dominic (GER)
5.SZWARNOWIECKI, Damian (POL)
7.CASSE, Matthias (BEL)
7.KHALMURZAEV, Khasan (RUS)

【1回戦】
バケル・アルジダニーン(ヨルダン)○浮技(3:23)△サミュエル・クウィトンダ(ブルンジ)

【2回戦】
サイード・モラエイ(イラン)○浮技(1:46)△エティエンヌ・ブリオン(カナダ)
スヴェインビヨルン・イウラ(アイスランド)○反則[指導3](3:43)△セドリック・カロンガ(コンゴ民主共和国)
アンリ・エグティゼ(ポルトガル)○GS技有・帯取返(GS0:06)△ゼベダ・レフヴィアシヴィリ(ジョージア)
イ・センス(韓国)○合技[袖釣込腰・崩袈裟固](2:26)△アジズ・カルカマヌリ(カザフスタン)
マティアス・カッス(ベルギー)○崩上四方固(0:59)△テレンス・コウアンバ(ガボン)
フィリップ・スタンセル(スロバキア)○合技[釣込腰・大内刈](3:46)△ダヴィド・ギエン=バルガス(コスタリカ)
エマニュエル・ルセンティ(アルゼンチン)○反則[指導3](3:28)△エオイン・コーグラン(オーストラリア)
アクマル・ムロドフ(タジキスタン)○合技[小外掛・崩上四方固](2:05)△スティーヴン・アザー(レバノン)
エドゥアルド=ユウジ・サントス(ブラジル)○優勢[技有・大外刈]△オトゴンバータル・ウーガンバータル(モンゴル)
アレクシオス・ンタナツィディス(ギリシャ)○優勢[技有・釣込腰]△ドリン・ゴトノアガ(モルドバ)
アレクサンダー・ヴィーチェルツァク(ドイツ)○腕挫十字固(2:58)△スチュアート・マクワット(イングランド)
アントニオ・エスポージト(イタリア)○GS反則[指導3](GS2:02)△イヴァイロ・イヴァノフ(ブルガリア)
アスラン・ラッピナゴフ(ロシア)○内股(1:47)△フェディアス・コンナリス(キプロス)
ヤロミール・ムシル(チェコ)○優勢[技有・外巻込]△アブデラジズ・ベン=アマル(チュニジア)
ビルジー・バヤナー(ルクセンブルク)○合技[内股・隅落](2:26)△ユアン=ディエゴ・トルシオス(エルサルバドル)
ヴェダット・アルバイラク(トルコ)○合技[内股・隅落](2:26)△スルジャン・ムルヴァイエヴィッチ(モンテネグロ)
メディクソン・デル=オルベ=コルトレアル(ドミニカ共和国)○大外刈(2:48)△フランク・デヴィト(オランダ)
クリスティアン・トニステ(エストニア)○合技[隅返・縦四方固](0:42)△アライン・アプラハミラン(ウルグアイ)
アルフォンソ・ウルキサ=ソラナ(スペイン)○袖釣込腰(4:00)△モハメド・アブデラル(エジプト)
ダミアン・シュワルノヴィツキ(ポーランド)○合技[大内巻込・崩袈裟固](0:48)△ジョシュター・アンドリュー(グアム)
藤原崇太郎○合技[一本背負投・背負投](2:02)△ウラジミール・ゾロエフ(キルギスタン)
アルファ=オウマ・ジャロ(フランス)○合技[釣腰・浮腰](2:48)△ネボウサ・ガルダセヴィッチ(モンテネグロ)
サミ・シュシ(ベルギー)○片手絞(1:30)△サシャ・デナニョ(トーゴ)
イルケル・グルドレン(トルコ)○大外巻込(2:22)△ナイ・リーガチイ(中国)
ハサン・ハルモルザエフ(ロシア)○優勢[技有・小外掛]△ロビン・パチェック(スウェーデン)
ディダル・ハムザ(カザフスタン)○反則[指導3](2:31)△ウィリー=マーヴェル・ングオズ=モヨ(カメルーン)
ヴィクトール・ペナウベル(ブラジル)○合技[小外掛・小外掛](1:51)△アシュラフ・モウティー(モロッコ)
シャロフィディン・ボルタボエフ(ウズベキスタン)○反則[指導3](2:40)△バケル・アルジダニーン(ヨルダン)
ドミニク・レッセル(ドイツ)○反則[指導3](3:01)△イワン・ペテル(チェコ)
トマス・モラレス(アルゼンチン)○GS内股(GS0:35)△アンドリュー・カスワンガ(ザンビア)
サギ・ムキ(イスラエル)○GS袖釣込腰(GS0:52)△アッティラ・ウングヴァリ(ハンガリー)
ジャック・ハットン(アメリカ)○優勢[技有・内巻込]△エイドリアン・ガンディア(プエルトリコ)

【3回戦】
サイード・モラエイ(イラン)○肩車(0:14)△スヴェインビヨルン・イウラ(アイスランド)
アンリ・エグティゼ(ポルトガル)○GS技有・抱分(GS0:41)△イ・センス(韓国)
マティアス・カッス(ベルギー)○腕挫十字固(3:00)△フィリップ・スタンセル(スロバキア)
アクマル・ムロドフ(タジキスタン)○横車(2:28)△エマニュエル・ルセンティ(アルゼンチン)
エドゥアルド=ユウジ・サントス(ブラジル)○優勢[技有・大内刈]△アレクシオス・ンタナツィディス(ギリシャ)
アレクサンダー・ヴィーチェルツァク(ドイツ)○GS技有・小内返(GS1:45)△アントニオ・エスポージト(イタリア)
アスラン・ラッピナゴフ(ロシア)○釣込腰(3:34)△ヤロミール・ムシル(チェコ)
ヴェダット・アルバイラク(トルコ)○反則[指導3](2:12)△ビルジー・バヤナー(ルクセンブルク)
クリスティアン・トニステ(エストニア)○大外巻込(:00)△メディクソン・デル=オルベ=コルトレアル(ドミニカ共和国)
ダミアン・シュワルノヴィツキ(ポーランド)○三角絞(1:20)△アルフォンソ・ウルキサ=ソラナ(スペイン)
藤原崇太郎○優勢[技有・袖釣込腰]△アルファ=オウマ・ジャロ(フランス)
サミ・シュシ(ベルギー)○内股(3:20)△イルケル・グルドレン(トルコ)
ハサン・ハルモルザエフ(ロシア)○GS技有・小外掛(GS1:46)△ディダル・ハムザ(カザフスタン)
シャロフィディン・ボルタボエフ(ウズベキスタン)○合技[体落・袈裟固](4:00)△ヴィクトール・ペナウベル(ブラジル)
ドミニク・レッセル(ドイツ)○裏投(2:08)△トマス・モラレス(アルゼンチン)
サギ・ムキ(イスラエル)○合技[内股透・裏投](2:24)△ジャック・ハットン(アメリカ)

【4回戦】
サイード・モラエイ(イラン)○出足払(0:44)△アンリ・エグティゼ(ポルトガル)
マティアス・カッス(ベルギー)○一本背負投(1:56)△アクマル・ムロドフ(タジキスタン)
アレクサンダー・ヴィーチェルツァク(ドイツ)○合技[隅落・一本背負投](1:45)△エドゥアルド=ユウジ・サントス(ブラジル)
ヴェダット・アルバイラク(トルコ)○合技[内股返・横四方固](1:14)△アスラン・ラッピナゴフ(ロシア)
ダミアン・シュワルノヴィツキ(ポーランド)○GS技有・一本背負投(GS0:13)△クリスティアン・トニステ(エストニア)
藤原崇太郎○優勢[技有・大外返]△サミ・シュシ(ベルギー)
ハサン・ハルモルザエフ(ロシア)○GS小外掛(GS0:42)△シャロフィディン・ボルタボエフ(ウズベキスタン)
ドミニク・レッセル(ドイツ)○外巻込(3:04)△サギ・ムキ(イスラエル)

【準々決勝】
サイード・モラエイ(イラン)○優勢[技有・肩車]△マティアス・カッス(ベルギー)
ヴェダット・アルバイラク(トルコ)○内股(2:41)△アレクサンダー・ヴィーチェルツァク(ドイツ)
藤原崇太郎○崩袈裟固(3:26)△ダミアン・シュワルノヴィツキ(ポーランド)
ドミニク・レッセル(ドイツ)○GS内股巻込(GS2:33)△ハサン・ハルモルザエフ(ロシア)

【敗者復活戦】
アレクサンダー・ヴィーチェルツァク(ドイツ)○優勢[技有・一本背負投]△マティアス・カッス(ベルギー)
ダミアン・シュワルノヴィツキ(ポーランド)○三角絞(1:48)△ハサン・ハルモルザエフ(ロシア)

【準決勝】
サイード・モラエイ(イラン)○GS技有・払巻込(GS2:23)△ヴェダット・アルバイラク(トルコ)
藤原崇太郎○GS支釣込足(GS2:29)△ドミニク・レッセル(ドイツ)

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ヴィーチェルツァクがレッセルから一本背負投「技有」

【3位決定戦】
アレクサンダー・ヴィーチェルツァク(ドイツ)○優勢[技有・一本背負投]△ドミニク・レッセル(ドイツ)
ヴィーチェルツァクが右、レッセルが左組みのケンカ四つ。ヴィーチェルツァクは試合開始から動き良く、釣り手を上から襟に入れると、時折引き手で背中を叩く動作を見せつつ、このアクションをフェイントに使って低い左一本背負投に潜り込む。対するレッセルは相変わらず能動的な技は全く見せず、ヴィーチェルツァクの左一本背負投を凌ぎ続けてひたすら勝負どころを待ち続ける。残り2分を切ったところから試合展開がやや変化。レッセルがここまで下から襟に入れていた釣り手で背中を叩いてケンカ四つクロスの形を作り、もつれ際の攻防を誘い始める。消耗が見えるヴィーチェルツァクはレッセルのこの組み手を露骨に嫌って場外へ、残り37秒、ヴィーチェルツァクに対し「指導1」。レッセルが勝負に出た形のこの終盤も具体的なポイントの気配はなく、このまま消耗戦の延長に突入するかと思われた残り7秒、ヴィーチェルツァクが低く左一本背負投に潜り込む。これをレッセルがやり過ごそうと横に付いて回避すると、ヴィーチェルツァクは上半身を固めたまま後ろ方向に押し込む。前隅ではなく左後隅、ここまでヴィーチェルツァクの見せていた左一本背負投とは異なる方向に極めの力が働いたこの技にレッセル反応出来ず背中から倒れ込み、「技有」失陥。そのまま試合はタイムアップとなり、ヴィーチェルツァクの優勢勝ちが決定。ヴィーチェルツァクは出色の出来の勝ち上がりを、銅メダルという形にしっかり結実させた。

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アルバイラクがシュワルノヴィツキの小内刈を透かして「一本」

ヴェダット・アルバイラク(トルコ)○小内返(1:11)△ダミアン・シュワルノヴィツキ(ポーランド)
アルバイラクが右、シュワルノヴィツキが左組みのケンカ四つ。試合が始まるとシュワルノヴィツキが相手の背中深くを確保、しかしその瞬間に相当な地力の差を感じたのか慌てて左内股の形で伏せてしまう。これを2度続けてしまったシュワルノヴィツキに20秒、偽装攻撃の「指導」。以降もお互いに脇を差し合っての攻防が続くが、シュワルノヴィツキは掛け潰れることで自身を延命することに集中せざるを得ない様子。しかしとうとう限外、アルバイラクが引き手を得た1分11秒、追い詰められたシュワルノヴィツキが意を決して左小内刈で勝負に出る。しかし、組み負けた状態から無理やり仕掛けたこの技が決まるはずもなく、アルバイラクは余裕を持って透かし、ハンドル操作を効かせて小内返。刈り足が空振りした時点で既に死に体となっていたシュワルノヴィツキは勢い良く背中から畳に落ち「一本」。この日の前半戦の主役・アルバイラクがしっかり3位を獲得した。

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決勝、藤原崇太郎は意地の大外刈「技有」で追いつく。

【決勝】
サイード・モラエイ(イラン)○GS合技[肩車・払巻込](GS0:16)△ 藤原崇太郎

左相四つ。強豪多きこの階級、藤原にとってはこの日初めて戦う水準以上の相手。
モラエイ高く襟を持つなり右への腰車、これはすっぽ抜けてしまったが一発投げる気十分、気合いの入った滑り出し。一方の藤原は丁寧に組み手を構築、モラエイの力をまともに食わぬよう試合を進め、45秒には引き手で襟を握って左体落。しかしモラエイは背筋を伸ばしてまったく揺るがず、藤原が潰れて「待て」。
1分28秒、横変形の攻防が崩れたところで、モラエイが肩車。「居反り」の形で押し込む得意の形で藤原を投げ切り決定的な「技有」。モラエイの「一本」を確信した様子も無理からぬ、きわめて強烈な一発だった。
モラエイは以後も逃げ切りを図らず藤原に接近。しかし極端に腕を伸ばしあった横変形の形を長く続けてしまい、藤原に十分な準備を許すことに。3分3秒藤原敢えて釣り手を低く持ったまま左大外刈。虚を突かれたモラエイ、釣り手を抱き込まれたまま畳に落下しまさかの「技有」。

藤原ここからもしっかりモラエイと駆け引き、双方譲らず試合はGS延長戦へもつれ込むこととなる。延長16秒、モラエイ勝負を決せんと右腰車の大技。藤原はチャンスと裏投を狙って抱きかかえ、一瞬投げ合いの拮抗となる。足を内側に引っ掛けて耐えたモラエイ、一瞬前傾したまま手が離れて危うかったが、意を決して右払巻込に連絡。あくまで投げ切るモラエイの強気が奏功、作用足で藤原の体全体を蹴り上げる勢いで揚げ、体ごと押し込んで「技有」。激戦ブロックの勝者モラエイ、鮮やか合技「一本」で勝利。みごと世界選手権初制覇を決めた。

【日本代表選手勝ち上がり】

藤原崇太郎(日本体育大2年)
成績:2位


[2回戦]
藤原崇太郎○合技[一本背負投・背負投](2:02)△ウラジミール・ゾロエフ(キルギスタン)
左相四つ。実力に勝る藤原は二本しっかり持って姿勢良く組む。ゾロエフは横変形にずれ、頭を下げて藤原の釣り手を落としこみながら対峙。50秒、これまで蹴り崩しの牽制を続けていた藤原が突如狙いを真裏に変えて鋭い左小内刈、ゾロエフ後ろに数歩下がってひっくり返るがこの際巴投による攻撃を偽装。「一本」かと思われたが審判はスルー、試合は継続となる。藤原腐らず左体落で攻め続け、1分22秒ゾロエフに消極の「指導」。続く展開の組み際、藤原が左の一本背負投。高く担ぎ上げ、体に巻き付けるようにして転がり捨てると1分38秒「技有」。失点したゾロエフ、これまでの敢えて試合を動かさずスタティックに戦っていた作戦を変更、左右に動きながら組み手の駆け引きを挑むがこれは完全に藤原の術中。片襟の左背負投に飛び込んでズルリと落とし2つ目の「技有」獲得。藤原らしく非常に落ち着いた、悪くない立ち上がり。

[3回戦]
藤原崇太郎○優勢[技有・袖釣込腰]△アルファ=オウマ・ジャロ(フランス)
左相四つ。藤原引き手で襟を掴んで組み手を開始。相手の警戒が強いとみるやいったん右組みにスイッチ、次いで右を袖に持ち替えて片襟の左背負投。ジャロが伏せて47秒「待て」。組み手の技術で劣ることを自覚したか、ジャロは細かな駆け引きをいったん止め、一気に奥襟を叩いて藤原の頭を下げに掛かる。藤原しっかりディフェンスも片襟を掴んでしまい1分21秒「指導」失陥。しかし藤原はあくまで慌てず。2分3秒、片襟を掴んで左小内刈で崩すと次いで左背負投。相手が自身の横に頭からまず落下、身を捩じられかねないところだったが体を突っ込んで無理やり制御、背中を着かせて「技有」。リードを得た藤原は以後安全運転。片襟の左小内刈に支釣込足による蹴り崩し、組み手で優位をとっての押し込みとリスク少なく試合を進める。3分2秒ジャロに場外の「指導」。藤原、終盤ジャロのラッシュの前に片襟で守備をして2つ目の「指導」を貰ったが大勢には影響なし。「技有」優勢で勝ち抜け決定。

[4回戦]
藤原崇太郎○優勢[技有・大外返]△サミ・シュシ(ベルギー)
左相四つ。藤原は引き手で襟を掴み、次いで駆け引きの中で袖に持ち替えんと試みるがシュシことごく切り離して早い段階でその芽を摘み、組み手をリセットし続ける。34秒双方に「取り組まない」咎による「指導」。以後もシュシの「組まずにリセットする」粘りは続くが、藤原丁寧に組み続ける試みをあくまで続行。時折引き手で袖、釣り手で横襟を持って両手を狭く相手を寄せることに成功し、1分にはこの形から支釣込足でシュシに尻餅を着かせ、2分3秒には同じ形からの大外刈と支釣込足で大きく崩す。両襟の大外刈も交えた藤原の攻めがじわじわ攻勢点として積み上がり、片襟の小内刈で崩した2分39秒にはシュシに2つ目の「指導」。
ここで藤原試合を決めんと大内刈、大外刈といったん加速するが、シュシが抵抗すると再びじっくり状況を作り、作っては攻めに出てプレッシャーを掛け続ける分厚い進退。残り5秒、このまま試合を続けても希望なしと焦ったシュシが無理やり脚を伸ばして強引な左大外刈。藤原脚を引いて止めると、横襟を掴んだ釣り手で首を下から押し込み制動、大外返「技有」。続いての抑え込みは中途で「解けた」となるが既に4分間が終了しておりそのまま試合が終了した。
藤原の粘り勝ち。慎重極まりないシュシに無理な体勢での大技を強いるまで状況を積んだ、丁寧な戦いぶりが最後にポイントとして結実した。

[準々決勝]
藤原崇太郎○崩袈裟固(3:26)△ダミアン・シュワルノヴィツキ(ポーランド)
藤原が左、シュワルノヴィツキはおそらく左組みも右構えで試合をスタート。シュワルノヴィツキなかなか組みたがらず、藤原は片手から横落でひとまず攻撃。ベンチからは「両手捕まえてしまえ」との指示が飛ぶ。藤原はひとまず右で組み、左にスイッチして引き手で袖、釣り手で奥襟を握って圧力。シュワルノヴィツキ簡単に潰れて、1分14秒偽装攻撃による「指導」。藤原は機を見るに敏、この手立てが利くと見るや同じ過程を踏んで奥襟を掴み、両襟で圧力。シュワルノヴィツキは下がり、潰れる。2分過ぎの展開でも藤原右組みを経て本来の左にスイッチ、がっちり圧を掛けて相手を潰すが主審は1分21秒こんどは藤原にブロッキングの咎で「指導」。
藤原そろそろ展開を変えるべきと踏んだか、直後両襟で左内股。シュワルノヴィツキが崩れ伏せると膝を突っ込んでから腹下に潜り込み、左で肩越しに、右で脇下から両手で後帯を握り込んでみずから横転。絡まれた脚を引き抜いて抑え込む。「肩を抱えない肩固」の体。食いついたまま20秒を抑え切って「一本」。

[準決勝]
藤原崇太郎○GS支釣込足(GS2:29)△ドミニク・レッセル(ドイツ)
左相四つ。戦術巧みで今日はひときわ組み手が丁寧な藤原、一方現在の81kg級には珍しく「技を掛けない」タイプで攻撃型だらけの階級の状況を利用することで序列を上げているレッセルの対戦ということで、長期戦が予想される一番。
藤原は片襟、両襟、さらに引き手で袖と粘り強く形を変えながら攻めるが、レッセルは組み手の駆け引きはむしろ得手とばかりに応じ、得意の「掛ける気配」を晒しながら実際にはほぼまったく技を掛けずに試合を進める。藤原が支釣込足でたたらを踏ませた2分55秒、レッセルに「指導」。このままスコアは動かず、試合はGS延長戦へ。
延長1分33秒、レッセルがやや勝負を急ぎ始めた藤原を組み手の駆け引きに嵌め、藤原に場外の「指導」。続く展開の延長44秒、レッセルが右手で藤原の右袖をクロスに掴むと、藤原得たりと踏み込んで隅返。対角線がしっかり固定される形になってレッセルは転倒、主審は「技有」を宣告する。しかし映像チェックの結果、これは意外にも取り消し。
直後、動揺したレッセルの組み手が甘くなったところに藤原が最大の得意技である支釣込足。両手で脇下を握り、下から絞って体ごと持ち上げるような一撃にレッセル大きく弧を描いて背中から落ち文句なしの「一本」。

[決勝]
藤原崇太郎△GS合技[肩車・払巻込](GS0:16)○サイード・モラエイ(イラン)
※前述のため省略


※写真は権利者の許諾を得て掲載しています

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