PAGE TOP ↑

柔道1

柔道2
柔道4 柔道5

eJudoとは?情報募集・お問い合わせサイトマップ

【バクー世界柔道選手権2018特集】アンチャンリン悲願の金メダル獲得、決勝で前年度の覇者橋本壮市を破る・バクー世界柔道選手権2018男子73kg級即日レポート

(2018年9月22日)

※ eJudoメルマガ版9月22日掲載記事より転載・編集しています。
【バクー世界柔道選手権2018特集】アン・チャンリン悲願の金メダル獲得、決勝で前年度の覇者橋本壮市を破る
バクー世界柔道選手権2018男子73kg級即日レポート
→特設ページ・バクー世界選手権2018完全ガイド

文責:古田英毅/eJudo編集部
Text by Hideki Furuta

eJudo Photo
初の金メダルを獲得したアン・チャンリン。

eJudo Photo
準々決勝、アンがモハマド・モハマディから背負投「技有」

eJudo Photo
準々決勝、橋本壮市がヒダヤット・ヘイダロフから「橋本スペシャル」で一本勝ち。

アゼルバイジャン・バクーで行われている世界柔道選手権2018は22日、競技日程第3日の男子73kg級、女子57kg級の競技が行われ、73kg級はアン・チャンリン(韓国)が優勝した。アンはこれが世界選手権初制覇、決勝は連覇を狙った日本代表の橋本壮市(パーク24)を小外掛「一本」で破った。

橋本と並んで優勝候補に挙げられていたアンは3週間前に行われたアジア大会(2位)に続き、この日も絶好調。初戦こそヤクブ・イェクミネク(チェコ)を小外刈「技有」優勢と一本勝ちを逃したが、3回戦はフェティ・ヌリーヌ(アルジェリア)を僅か43秒の背負投「一本」、4回戦でアルテム・ホムラ(ウクライナ)を42秒背負投「一本」、そして勝負どころと目されていた準々決勝ではツェンドオチル・ツォグトバータル(モンゴル)を僅か2分の間に背負投で2度投げつけて合技「一本」、この日こちらも絶好調のモハマド・モハマディ(イラン)を畳に迎えた準決勝は背負投「技有」に腕挫十字固「一本」と連取するという凄まじい出来。「待て」が掛かれば開始線に走って戻り、入場となればコーチを待ち切れず1人試合場に向かって独走、選手名がコールされると畳上を飛び跳ねて、と体内にあり余る力を試合だけでは消化できないといった体。相手の技を受ける、背筋を伸ばして前に出るといった攻防の中での細かな立ち振る舞いの隅々からも、コンディションの良さがにじみ出る。圧勝続きで、初めての世界選手権決勝の畳に臨む。

一方の橋本は5月に負った怪我で稽古を積み切れていないという事情もあってか、序盤はアクセル踏み込まず。相手の力量に応じて出すべき力を決めるという「慣らし運転」ベースで力を温存して勝ち上がった。2回戦は世界選手権初出場のティレロ・レココ(ボツワナ)を小外刈と崩上四方固の合技「一本」、3回戦はニコラス・デルポポロ(アメリカ)をGS延長戦の末の大内刈「技有」、4回戦はギヨーム・シェヌ(フランス)をGS延長戦の袖釣込腰「一本」。準々決勝からは明らかに一段ギアを上げ、動きのレベルも向上。ジャンサイ・スマグロフ(カザフスタン)をGS延長戦「指導3」で退け、勝負どころの準決勝は昨年3位のヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)を相手についに伝家の宝刀を抜き、GS延長戦の末「橋本スペシャル」(片手の左袖釣込腰)で「一本」。しっかり2年連続の決勝の舞台へと駒を進めた。

eJudo Photo
決勝、アンが橋本から小外掛「一本」

eJudo Photo
3週間前にアジア大会を落としたばかりのアンは悲願の世界一達成。思わず涙にくれる。

しかし迎えた決勝はアンの勢いと凄まじいまでの仕上がりが橋本を凌駕。2分9秒に引き手で襟を掴むと左内股、ケンケンで耐えさせて腰を寄せると、振り向きざまに強烈な左小外掛を一撃。釣り手で肩をロックし、引き手で胴を抱いたこの一撃に橋本まったく抵抗出来ず、剛体となって仰け反り倒れ「一本」。橋本の2連連続金メダルの夢は潰え、アンの初優勝が決まった。アンはその場で畳に突っ伏し、うれし涙にくれた。

橋本とアンはともに世界的な強豪。ゆえに73kg級世界の勢力地図が大きく塗り替わるわけではないが、日本代表争いへの影響は甚大。橋本は世界選手権優勝で得られる「グランドスラム大阪に優勝すれば翌年の世界選手権代表内定」という第一人者のアドバンテージを手放すこととなり、かつライバルの大野将平が直前に勝利したばかりのアンに敗れるという「ターゲット選手に対する勝敗」でも不利をかこつこととなった。これ以降、両者は「タイ」の立場で代表争いに臨むこととなる。

3位にはこの日絶好調のモハマド・モハマディ(イラン)とヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)が入賞。モハマディは強い体と相手の有効距離の外からスルリと入り込む独特の大外刈を駆使して躍進、3位決定戦は2年連続の銅メダル獲得を狙うガンバータル・オドバヤル(モンゴル)をGS延長戦の横掛「一本」で破った。ヘイダロフは3位決定戦で同国の先輩ルスタン・オルジョフを破ったツェンドオチル・ツォグトバータル(モンゴル)に圧を掛けられてフラフラだったが、一瞬の隙をついて肩を固定、隅返「技有」を得て地元大会で2年連続の銅メダルを獲得。

昨年2位の地元の星、ルスタン・オルジョフは前述の通りツェンドオチル・ツォグトバータルに4回戦で敗退。GS4分35秒に隅落「技有」を食ってメダルを争うラウンドに進むことが出来なかった。オルジョフはこの試合大消耗、延長戦では攻防の最中にも関わらず一瞬頽れて膝に手を当てるなど異常なほどの疲労だった。今大会アゼルバイジャン勢は全体的に不調。ひとくくりの評価は出来ないが、60kg級のオルハン・サファロフやこのオルジョフはじめ、いったいにツアーに比べて体力が足りず、コンディションが出来上がっていない印象。地元開催の世界選手権という大舞台を前に「追い込み過ぎたのでは」との疑念が拭えない。

入賞者と全試合の結果、メダルマッチ3試合および日本代表選手全試合の戦評は下記。

eJudo Photo
73kg級メダリスト。左から橋本、アン、モハマディ、ヘイダロフ

【入賞者】
(エントリー82名)
1.AN, Changrim (KOR)
2.HASHIMOTO, Soichi (JPN)
3.MOHAMMADI, Mohammad (IRI)
4.HEYDAROV, Hidayat (AZE)
5.GANBAATAR, Odbayar (MGL)
6.TSEND-OCHIR, Tsogtbaatar (MGL)
7.SMAGULOV, Zhansay (KAZ)
8.SHAVDATUASHVILI, Lasha (GEO)

【1回戦】
ニコラス・デルポポロ(アメリカ)○隅返(3:23)△アイトン・シキール(モザンビーク)
マグディエル・エストラダ(キューバ)○GS反則[指導3](GS2:49)△ルカス・ライター(オーストリア)
マルティン・ホヤック(スロベニア)○送襟絞(2:49)△クラウディオ・ヌネス=ドス=サントス(ルクセンブルク)
ミクロス・ウングヴァリ(ハンガリー)○GS技有・内股(GS1:31)△サム・ファンテヴェステンデ(オランダ)
ニルス・スタンプ(スイス)○GS技有・内股巻込(GS0:30)△アロンソ・ウォン(ペルー)
アンソニー・ツィング(ドイツ)○片手絞(2:25)△ディルク・ファンティシェル(ベルギー)
ヴィクトル・ステルプ(モルドバ)○体落(1:16)△ケイセイ・ナカノ(フィリピン)
アフメド・アヤシュ(イエメン)○合技[背負投・隅落](2:58)△リー・クォクウィン(香港)
ベフルジ・ホジャゾダ(タジキスタン)○反則[指導3](3:17)△ルーカス・ディアロ(ブルキナファソ)
ヴィクター・スクヴォトフ(アラブ首長国連邦)○合技[小外刈・大外落](3:09)△ジェフリー・ルイス(プエルトリコ)
ヌーノ・サライヴァ(ポルトガル)○GS後袈裟固(GS1:39)△ファビオ・バジーレ(イタリア)
ヤクブ・イェクミネク(チェコ)○小外掛(3:16)△アルチュール・マルジェリドン(カナダ)
フェティ・ヌリーヌ(アルジェリア)○優勢[技有・袖釣込腰]△アレクサンダー・ターナー(アメリカ)
スライマン・ハマド(サウジアラビア)○GS反則[指導3](GS1:02)△フィリップ=アベル・メテル(ハイチ)
モハマド・モハマディ(イラン)○優勢[技有・隅落]△キム・チョルガン(北朝鮮)
イゴール・ヴァンドケ(ドイツ)○袖釣込腰(0:26)△クリストファー・ヴァグナー(オーストリア)
ファン・ホンユアン(中国)○一本背負投(2:07)△ママドウ=サンバ・バー(ギニア)
レイデル・ナバーロ(コロンビア)○外巻込(1:23)△エイアル=サルマン・ヨウニス(ヨルダン)

【2回戦】
橋本壮市○合技[小外刈・崩上四方固](1:22)△ティレロ・レココ(ボツワナ)
ニコラス・デルポポロ(アメリカ)○GS反則[指導3](GS1:42)△フェイ・ヌジエ(ガンビア)
マグディエル・エストラダ(キューバ)○GS大内刈(GS3:08)△アレクサンドル・ライク(ルーマニア)
ギヨーム・シェヌ(フランス)○優勢(技有・内股透)△マルティン・ホヤック(スロベニア)
アキル・ヤコヴァ(コソボ)○崩上四方固(1:29)△マジェル・メンジェス(カーボベルデ)
ミクロス・ウングヴァリ(ハンガリー)○GS技有・隅落(GS0:47)△アントワーヌ・ブシャー(カナダ)
ニコラ・ガルダセヴィッチ(モンテネグロ)○隅返(1:27)△サフアン・ブティト(モロッコ)
ジャンサイ・スマグロフ(カザフスタン)○合技[肩車・外巻込](3:10)△ニルス・スタンプ(スイス)
ガンバータル・オドバヤル(モンゴル)○合技[背負投・袖釣込腰](2:31)△アンソニー・ツィング(ドイツ)
ヒクマティロフ・ツラエフ(ウズベキスタン)○肩車(2:51)△ジョルジオス・アゾイディス(ギリシャ)
ヴィクトル・ステルプ(モルドバ)○小外掛(1:05)△モド=レサド・アリアン(アフガニスタン)
アン・ジョンスン(韓国)○崩上四方固(2:10)△ジョルジ・フェルナンデス(ポルトガル)
ヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)○三角絞(2:35)△サジャド・セヘン(イラク)
セドリック・ベッシ(モナコ)○内股(0:31)△アフメド・アヤシュ(イエメン)
ミハエル・バルトゥシック(ポーランド)○一本背負投(GS0:32)△チン・ダガ(中国)
ベフルジ・ホジャゾダ(タジキスタン)○GS体落(GS0:39)△カルヴィン・クノースター(オーストラリア)
ルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)○崩上四方固(1:22)△モハメド・モハイルディン(エジプト)
ヴィクター・スクヴォトフ(アラブ首長国連邦)○GS技有・大外刈(GS1:31)△ヴィクトル・ムロフチンスキ(ポーランド)
ツェンドオチル・ツォグトバータル(モンゴル)○優勢[技有・小外刈]△ヌーノ・サライヴァ(ポルトガル)
ソモン・マフマドベコフ(タジキスタン)○GS技有・(GS4:08)△ギヨション・ボボエフ(ウズベキスタン)
アン・チャンリン(韓国)○優勢[技有・小外刈]△ヤクブ・イェクミネク(チェコ)
フェティ・ヌリーヌ(アルジェリア)○優勢[技有・小内刈]△ニコラ・グシッチ(モンテネグロ)
フリゲシュ・サボ(ハンガリー)○棄権(0:34)△スライマン・ハマド(サウジアラビア)
アルテム・ホムラ(ウクライナ)○合技[大外落・横四方固](4:00)△エマニュエル・ナーティー(ガーナ)
トミー・マシアス(スウェーデン)○隅返(0:57)△トハル・ブトブル(イスラエル)
モハマド・モハマディ(イラン)○合技[隅返・小外掛](1:44)△イシェン・アマノフ(キルギスタン)
ユリアン・ペアティコフスキ(モルドバ)○合技[小内巻込・隅落](0:54)△ルドルフ・クルティディス(キプロス)
イゴール・ヴァンドケ(ドイツ)○背負投(0:27)△サト・レバング(ボツワナ)
ラシャ・シャヴダトゥアシヴィリ(ジョージア)○反則[指導3](2:25)△カリル・レバヒ(カタール)
ヴァジム・ショーカ(ベラルーシ)○優勢[技有・小内刈]△ファン・ホンユアン(中国)
ベンジャマン・アクスス(フランス)○横四方固(0:55)△ベカディル・シャイメルデノフ(カザフスタン)
レイデル・ナバーロ(コロンビア)○合技[内股巻込・払巻込](1:17)△ティモ・アレマン(スイス)

【3回戦】
橋本壮市○GS技有・大内刈(GS0:34)△ニコラス・デルポポロ(アメリカ)
ギヨーム・シェヌ(フランス)○大内刈(1:57)△マグディエル・エストラダ(キューバ)
ミクロス・ウングヴァリ(ハンガリー)○GS反則[指導3](GS0:11)△アキル・ヤコヴァ(コソボ)
ジャンサイ・スマグロフ(カザフスタン)○袖釣込腰(0:57)△ニコラ・ガルダセヴィッチ(モンテネグロ)
ガンバータル・オドバヤル(モンゴル)○浮技(3:57)△ヒクマティロフ・ツラエフ(ウズベキスタン)
アン・ジョンスン(韓国)○GS浮落(GS0:21)△ヴィクトル・ステルプ(モルドバ)
ヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)○横四方固(2:15)△セドリック・ベッシ(モナコ)
ベフルジ・ホジャゾダ(タジキスタン)○合技[小外刈・横四方固](2:20)△ミハエル・バルトゥシック(ポーランド)
ルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)○合技[大外巻込・外巻込](1:19)△ヴィクター・スクヴォトフ(アラブ首長国連邦)
ツェンドオチル・ツォグトバータル(モンゴル)○GS技有・小内巻込(GS1:16)△ソモン・マフマドベコフ(タジキスタン)
アン・チャンリン(韓国)○背負投(0:43)△フェティ・ヌリーヌ(アルジェリア)
アルテム・ホムラ(ウクライナ)○GS技有・内股(GS1:11)△フリゲシュ・サボ(ハンガリー)
モハマド・モハマディ(イラン)○優勢[技有・大内刈]△トミー・マシアス(スウェーデン)
ユリアン・ペアティコフスキ(モルドバ)○反則(2:48)△イゴール・ヴァンドケ(ドイツ)
ラシャ・シャヴダトゥアシヴィリ(ジョージア)○GS腰車(GS3:22)△ヴァジム・ショーカ(ベラルーシ)
ベンジャマン・アクスス(フランス)○小外掛(1:06)△レイデル・ナバーロ(コロンビア)

【4回戦】
橋本壮市○GS袖釣込腰(GS0:23)△ギヨーム・シェヌ(フランス)
ジャンサイ・スマグロフ(カザフスタン)○合技[小内刈・背負投](3:18)△ミクロス・ウングヴァリ(ハンガリー)
ガンバータル・オドバヤル(モンゴル)○内股(1:06)△アン・ジョンスン(韓国)
ヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)○GS技有・隅落(GS0:18)△ベフルジ・ホジャゾダ(タジキスタン)
ツェンドオチル・ツォグトバータル(モンゴル)○GS技有・隅落(GS4:35)△ルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)
アン・チャンリン(韓国)○背負投(0:42)△アルテム・ホムラ(ウクライナ)
モハマド・モハマディ(イラン)○合技[大外落・崩上四方固](3:06)△ユリアン・ペアティコフスキ(モルドバ)
ラシャ・シャヴダトゥアシヴィリ(ジョージア)○優勢[技有・裏投]△ベンジャマン・アクスス(フランス)

【準々決勝】
橋本壮市○GS反則[指導3](GS2:51)△ジャンサイ・スマグロフ(カザフスタン)
ヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)○優勢[技有・内巻込]△ガンバータル・オドバヤル(モンゴル)
アン・チャンリン(韓国)○合技[背負投・背負投](2:01)△ツェンドオチル・ツォグトバータル(モンゴル)
モハマド・モハマディ(イラン)○大外落(0:13)△ラシャ・シャヴダトゥアシヴィリ(ジョージア)

【敗者復活戦】
ガンバータル・オドバヤル(モンゴル)○優勢[技有・隅落]△ジャンサイ・スマグロフ(カザフスタン)
ツェンドオチル・ツォグトバータル(モンゴル)○小内刈(3:53)△ラシャ・シャヴダトゥアシヴィリ(ジョージア)

【準決勝】
橋本壮市○GS袖釣込腰(GS1:31)△ヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)
アン・チャンリン(韓国)○腕挫十字固(3:43)△モハマド・モハマディ(イラン)

eJudo Photo
3位決定戦、モハマド・モハマディがガンバータル・オドバヤルから横掛「一本」。

【3位決定戦】
モハマド・モハマディ(イラン)○GS横掛(GS3:02)△ガンバータル・オドバヤル(モンゴル)
モハマド・モハマディ(イラン)○GS横掛(GS3:02)△ガンバータル・オドバヤル(モンゴル)
ガンバータルが左、モハマディが右組みのケンカ四つ。ガンバータルが内から釣り手を突き、モハマディが外から背中を抱く形で組み手を開始。密着しての勝負を志向するモハマディをガンバータルがやや押し込まれながらも捌くという構図で試合が進む。引き手争いが続いた2分58秒、両者に片手の「指導」。ここからも同じ形での力比べが続く。モハマディは時折呼び込むような動作で取り味のある右大外刈を仕掛けるが、ガンバータルはバランス良く受け切って倒れず、反対に左内股、左大内刈と技を返す。残り時間20秒、組み手の攻防でガンバータルの手がモハマディの顔に触れてしまい、一時試合が中断。直後、主審は顔に触るようなジェスチャーでガンバータルに「指導」を与える。試合は「指導1」対「指導2」のモハマディ優位でGS延長戦へ。

延長戦でも本戦と同様の形での攻防が繰り返され、双方技を仕掛けるもののなかなか決定的な場面は訪れない。ガンバータルの消耗によりモハマディが前に出る場面が増えたGS3分過ぎ、組み際にガンバータルが左大外刈。入りが浅くなったこの技の隙をモハマディ見逃さず、横掛で相手の軸足を思い切り抜き上げ「一本」。この日好調のモハマディが見事3位を獲得した。

eJudo Photo
3位決定戦、ヒダヤット・ヘイダロフ(がツェンドオチル・ツォグトバータルから隅返「技有」。

ヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)○優勢[技有・隅返]△ツェンドオチル・ツォグトバータル(モンゴル)
ヘイダロフが右、ツェンドオチルが左組みのケンカ四つ。試合が始まって先手を取ったのはツェンドオチル、引き手で襟、釣り手で背中を確保すると相手の遠い脚に右小外刈を仕掛けヘイダロフを伏せさせる。しかしツェンドオチルがペースを握りかけると、ヘイダロフは地元アゼルバイジャンの大声援に押されるように強引に低い右背負投に潜り込んで流れをもぎ取りに掛かる。ヘイダロフが会場と一体となって試合のペースを握ると、1分49秒に、ツェンドオチルに「指導1」。そして残り1分55秒のところで、ヘイダロフはそれまで下から前襟に入れていた釣り手を背中に持ち替え、ケンカ四つクロスの形を作って右内股から隅返に連絡。ツェンドオチルは左釣り手の肩を抱きこまれる形となって抵抗できず横倒し、これが「技有」となる。決定的なリードを得たヘイダロフはその後も、右の「韓国背負い」、釣り手一本での背負投と先んじて技を仕掛け続けることで時間を消費。ヘイダロフが隅返「技有」のポイントを以て優勢勝ち、地元開催の世界選手権で銅メダル獲得を達成した。

eJudo Photo
決勝、アンの小外掛「一本」

【決勝】
アン・チャンリン(韓国)○小外掛(2:09)△橋本壮市
橋本が右、アンが左組みのケンカ四つ。引き手争いを軸に、釣り手の位置争い、そして組み手のリセットが続く。1分過ぎから橋本が左一本背負投を見せるなど試合を動かし始め、1分25秒アンに消極的との咎で「指導」。すると続く展開から、アンは釣り手で後帯を掴むことを2度続ける。いずれも橋本釣り手を操作してしっかり離れるが、アンは続いて奥襟を叩いて、主戦場である担ぎ技狙いとは方向性を変えて策を立てている模様。直後アンは釣り手を横抱きに背中、引き手で左襟を掴んで左内股。橋本ケンケンで耐えるが、アンはこの技で腰を寄せると、振り向いて正対しながら引き手で胴を抱いて左小外掛。橋本一瞬回避せんとするが、抱き込まれた右肩が固定されて剛体。勢いよく真裏に倒れて「一本」。アン、悲願の世界タイトル獲得なる。

【日本代表選手勝ち上がり】

橋本壮市(パーク24)
成績:2位


[2回戦]
橋本壮市○合技[小外刈・崩上四方固](1:22)△ティレロ・レココ(ボツワナ)
橋本が右、レココが左組みのケンカ四つ。橋本釣り手を引き上げて前傾する相手の上体を起こし、釣り手を激しく振り立てては右体落、右背負投と続けて投げに掛かる。49秒レココに「指導」。続く展開、橋本は右大外刈で一度相手の意識を右に向けさせ、次いで左を押さえる右小外刈。足を当て、時計回りにグルリと回すと「技有」。そのまま崩上四方固で抑え込んで合技「一本」。実力差が大きく、まだ橋本の調子は測れず。

[3回戦]
橋本壮市○GS技有・大内刈(GS0:34)△ニコラス・デルポポロ(アメリカ)
橋本が右、デルポポロが左組みのケンカ四つ。デルポポロが両襟で橋本の動きを止めに掛かるのに対し、橋本は相手の引き手を切りながら右小外刈、左袖釣込腰と先手を取って試合を動かす。いずれも投げ切れぬが攻勢ポイントは溜まり、1分13秒にはデルポポロに「指導」。直後の展開、橋本は低い右体落で投げを試みるも、これまで同様スピードに乗り切れず不発。すると橋本は一旦作戦を変更、先んじて釣り手を得ると煽りを入れながら場外際で体を入れ替えてデルポポロを場外に追いやり、1分49秒に2つ目の「指導」を奪う。
しかし以降も橋本の動きは鋭さを欠き、なかなか相手を投げ切れない。釣り手の操作は極めて巧み、技を狙うタイミングも悪くないがここぞでスピードに乗り切れず、力感が常より一段減じている印象。相手の技には揺らがずも効果的な投げもまた打てず、試合はGS延長戦へ。
延長30秒を過ぎたところで橋本が低く右体落。デルポポロが頭を下げて「く」の字で耐えるとみるや、軸足の膝を畳に着いて右大内刈に連絡。無理やり固定して技を利かせた体、「技有」で試合決着。橋本、いまだアクセルは踏みこまず「ならし運転」の印象。

[4回戦]
橋本壮市○GS袖釣込腰(GS0:23)△ギヨーム・シェヌ(フランス)
右相四つ。橋本やはり瞬間的なスピードと力の発揮は抑え、組み手の巧さで展開を取りに掛かる安全運転。釣り手を振り立て、引き手を織り込んで相手を押し出し、と駆け引きの中で相手を追い詰め1分3秒にはシェヌに場外の「指導」。しかし以降はシェヌも引き手と奥襟の確保を徹底して試合は拮抗。橋本は時折左袖釣込腰で剥がすも得点の予感は漂わず、形上試合は膠着したままGS延長戦に縺れ込むこととなる。
GS20秒を過ぎたところで、シェヌが無造作に釣り手を肩越しのクロスに入れるミス。なかなか力が伝わる間合いに入れなかった橋本、労せずしてその懐に潜りこむ機会を得た体のこのチャンスを逃がさず左袖釣込腰。まともに食ったシェヌ吹っ飛んで「一本」。

[準々決勝]
橋本壮市○GS反則[指導3](GS2:51)△ジャンサイ・スマグロフ(カザフスタン)
右相四つ。橋本これまでの試合よりは動きのレベルを一段上げた印象。スマグロフは橋本の組み手に窮して両手を離した左体落に潰れ、さらに横落に潰れて展開を散らそうとするが橋本一切揺るがず崩れず、冷静に相手のミスを誘い続ける。しかし偽装攻撃を宣言すべき主審も動かず、スマグロフが横落に大内刈、さらに再度の横落と技を継いだ1分44秒には橋本の側に消極的との咎で「指導」。続く展開、スマグロフがまたも横落に潰れると主審偽装攻撃を取ってこちらにも「指導」。以後も橋本が組み手で追い詰めるとスマグロフが自ら潰れる場面が度々出現するが主審は動かず、橋本は両手を広げて「指導」をアピールすること2度。残り24秒、スマグロフが左小内巻込を放った際に自ら橋本の脚に触れてしまい、スマグロフに「指導2」。ここで試合はGS延長戦へ。52秒、橋本の組み手の圧力に耐え切れなくなったスマグロフが左の巻込みで自ら潰れるが、主審は橋本に対して消極的との咎で延長52秒「指導2」付与。橋本は開始線で意外の表情を作り、やや怒気を発して右背負投。頭を突っ込むように投げに掛かるとスマグロフは橋本の腿に手を引っ掛けて耐える。
橋本、立ち上がるなり足取りの反則をアピール。自ら、主審が行うべき映像チェック要求のゼスチャーをして、ケアシステムによる確認を促す。結果足取りの咎でスマグロフに3つ目の「指導」。これで橋本のベスト4入りが確定した。主審の技術は確かに低かったが、両手を広げ、映像確認の動作まで行う橋本の態度が世界チャンピオンのものとしてふさわしいかどうかはまた別問題。今後の試合で流れを失いかねない、悪い卦の立ち振る舞いであった。

[準決勝]
橋本壮市○GS袖釣込腰(GS1:31)△ヒダヤット・ヘイダロフ(アゼルバイジャン)
橋本、腰を切り、跳ねるようなステップで畳へ。どうやらアクセル踏み込みつつある模様。
この試合は右相四つ。橋本は組み手のやりとりの中でじわじわヘイダロフの陣地を下げる。ヘイダロフも引き手で袖、釣り手で奥襟という良い形を時折作るが、橋本の素早い対応に常に良い条件を1つずつ交換で差し出すことになり、優位が数秒と続かない。1分30秒双方に「取り組まない」咎で「指導」。ここで主審は地元選手への大声援に屈したか、1分49秒橋本の側にのみ「取り組まない」咎による「指導2」を宣告する。橋本は形上後がなくなってしまい、こうなれば続くシークエンスが双方にとっての正念場。ヘイダロフは釣り手をクロスに入れては右大外刈、右大外落、さらに立ち上がっては再度の右大外刈とこの選手の代名詞である機関車のような連続攻撃を敢行。橋本ややウォッチしてしまい危うかったが、2分56秒にこの大外刈を右体落に切り返して叩き伏せ、どうやら3つ目の「指導」失陥は回避。以後は引き手で袖を織り込む場面が増え、再び陣地を回復した形でGS延長戦へ。

延長戦、疲労したヘイダロフは橋本の組み手についていけず幾度も一方的な掛け潰れに出る。橋本、GS41秒には一瞬誘ってヘイダロフの右体落を引き出すと瞬間あっさり離れ、ひとり残されたヘイダロフは両手を離して畳に前受け身。続いてGS1分4秒にはヘイダロフがクロス組み手からの右大内刈、橋本体捌き良く空転させてヘイダロフは一方的に掛け潰れる。いずれも一発で偽装攻撃の「指導」が入ってしかるべきであったが、大声援に配慮したか主審は反則裁定を行わず。どころかヘイダロフは負傷アピールで時間をとって休息、畳に戻ると帯をいったん完全にほどいて体力の回復を図る。

しかし直後、橋本は左引き手で右袖を織り込むと頭を寄せて手繰り、右腕の裏に回しこんだ左手でついに袖の内側を握る。この試合初めて完成した「橋本スペシャル」の作りである。数秒これを深く握り込む間を経て、橋本ついにこの大技の引き金を引く。片手の左袖釣込腰、吹っ飛んだヘイダロフ思わずブリッジ。これで技の効果が引き上げられ、下された裁定は「一本」。
ヘイダロフは畳に突っ伏してガックリ。橋本は全てこの技で、ヘイダロフに4連勝。見事決勝進出を決めた。

[決勝]
橋本壮市△小外掛(2:09)○アン・チャンリン(韓国)
※前述のため省略

※ eJudoメルマガ版9月22日掲載記事より転載・編集しています。

→eJudoトップページに戻る
→「ニュース・マッチレポート」に戻る
→「書評・DVD評」に戻る




supported by KAYAC 運営会社サイトポリシー  RSS copyright (c) 2005 ejudo all rights reserved.