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【バクー世界柔道選手権2018特集】阿部一二三が連覇達成、地力の高さで世界の挑戦跳ねのける・バクー世界柔道選手権2018男子66kg級即日レポート

(2018年9月21日)

※ eJudoメルマガ版9月21日掲載記事より転載・編集しています。
【バクー世界柔道選手権2018特集】阿部一二三が連覇達成、地力の高さで世界の挑戦跳ねのける
バクー世界柔道選手権2018男子66kg級即日レポート
→特設ページ・バクー世界選手権2018完全ガイド

文責:古田英毅/eJudo編集部
Text by Hideki Furuta

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連覇達成の阿部一二三

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決勝、阿部がイェルラン・セリクジャノフを内股「一本」に仕留める

アゼルバイジャン・バクーで行われている世界柔道選手権2018、競技日程2日目の21日は男子66kg級、女子52kg級の男女それぞれ1階級の競技が行われ、66kg級は阿部一二三(日本体育大3年)が優勝した。阿部は昨年のブダペスト大会に続く2連覇達成、52kg級では妹の阿部詩(夙川学院高3年)が初優勝しており、日本勢初の世界選手権兄妹同時優勝となった。

昨年はまさしく鎧袖一触、寄らば斬り、触れなば投げてと圧勝続きだった阿部だが、この日は結果自体は圧倒的も、周囲の徹底警戒もあってそこまでの「即決」ぶりはなし。釣り手を片襟、あるいは袖を握っては大技に入り込むものの、守備を意識した体の力の強い相手に耐えられて「意外にも決まらない」場面が目立った。こちらの期待値が高すぎることもあるのだろうが、序盤戦で残った印象はむしろ「投げ急ぎ」。それでもジェラルド・カデ(ハイチ)を僅か10秒の袖釣込腰「一本」、デニス・ヴィエル(モルドバ)を背負投「技有」優勢、マッテオ・メドヴェス(イタリア)を内股と大外刈の合技「一本」と勝ち上がりは抜群。

圧巻は対戦相手のレベルがいきなり上がった準々決勝のゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)戦。粘ることばかり考えるこれまでの相手と異なり、強者ザンタライアが勝ちに来たことでかえって力の差が露出。背負投「技有」、大外刈「技有」と僅か50秒で2回投げてこの難敵を一蹴。事実上の決勝と目されたアン・バウル(韓国)との準決勝はGS2分38秒背負投で「技有」を得て勝ち抜けた。

決勝はこの日の台風の目、ダークホースのイェルラン・セリクジャノフ(カザフスタン)とマッチアップ。この試合も片襟の背負投と袖釣込腰を連発するも投げ切れないという展開だったが、「指導」を貰ったセリクジャノフが背中を抱える「抱き勝負」に打って出る判断ミス。もともとこの形が得手の阿部は、相手の左小外掛を深々右内股に捉えて「一本」。見事大会連覇を決めた。

阿部は決して本調子とはいえない様子だったが、それでも6戦して一本勝ちが4、「技有」勝ちが2、全試合で投技を決めるという圧勝。全ての選手に狙われる立場でありながら、有り余る地力でこれを跳ねのけたという恰好だった。

2位のセリクジャノフは前述の通りこの日の台風の目。配置は強豪の密度薄いプールB、同プール内唯一の強者ガンボルド・ヘルレン(モンゴル)との準々決勝は相手のミスに助けられた感あり、準決勝でマッチアップしたタル・フリッカー(イスラエル)は今大会不調と幸運な面はあったが、それでもワールドツアー未優勝者(2位が1回、3位が1回)の選手が世界選手権での決勝進出は見事。「幸運」と書かせて頂いたが、それもセリクジャノフの体の強さに相手が焦り、展開を失っていったがゆえに訪れたもの。堂々の銀メダル獲得であった。

3位にはいずれも阿部に敗れたアンとザンタライアが入賞。アンは3位決定戦でダニエル・カルグニン(ブラジル)を袖釣込腰「技有」で手堅く下した。

ザンタライアは敗者復活戦でミハエル・プルヤエフ(ロシア)とマッチアップ、GS延長戦、相手の支釣込足に投げられ掛かりながらも落ち際に体を入れ替えて透かし、隅落「技有」を得るというといういかにもこの人らしいアクロバティックな技で勝利。3位決定戦は第1シードのフリッカーを内股「技有」優勢で下し、強豪2人に連勝して堂々のメダル獲得となった。この日のザンタライアは相手に応じて巧みに自身の戦い方を調整。パトリック・ヴァヴルズィツェク(ポーランド)戦はケンカ四つの相手に引き手で袖、釣り手で横襟を掴んで背筋を伸ばす超正統派の戦いを貫いて釣込腰「一本」、組み手のうるさいフリッカーには右引き手で脇下、左釣り手で背中という60kg級時代から得意とする形を起点に時折持ちどころを変えながら密着。接近戦で相手の駆け引きを全て塗りつぶし、しっかり勝利を得た。30歳にして計6個目の世界選手権メダル獲得。

優勝候補の一角と目されたプルヤエフは準々決勝でアン・バウルに腕緘「一本」で敗れ、続く試合でザンタライアに敗退。強豪との連戦を耐え切れなかった。ギアを入れたときの一瞬の動きの速さと精度はさすがであったが100パーセントの仕上がりには遠かった印象。世界選手権の連続決勝進出記録は「3」で途絶えた。

地元の期待を受けたニジャット・シハリザダ(アゼルバイジャン)は持ち前のムラ気が出て集中力続かず、3回戦でダニエル・カルグニン(ブラジル)に延長戦の末一本負けした。

入賞者、阿部一二三選手のコメントと全試合の結果、メダルマッチ3試合および日本代表選手全試合の戦評は下記。

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66kg級メダリスト。左からセリクジャノフ、阿部、アン、ザンタライア。

【入賞者】
(エントリー75名)

1.ABE, Hifumi (JPN)
2.SERIKZHANOV, Yerlan (KAZ)
3.AN, Baul (KOR)
4.ZANTARAIA, Georgii (UKR)
5.CARGNIN, Daniel (BRA)
6.FLICKER, Tal (ISR)
7.GANBOLD, Kherlen (MGL)
8.PULIAEV, Mikhail (RUS)

阿部一二三選手のコメント
「自分の2連覇が懸かっていた大会でしたが、兄妹で出場する以上は一緒に優勝したいと考えていました。ともに優勝することが出来て、新しい記録を作ることが出来て良かったです。妹が先に優勝を決めたので、すごく良い刺激になりました。覚悟を決めて決勝に臨むことが出来ました。(―準決勝と決勝では戦い方を変えていたように感じました)自分の柔道は『一本』を取りにいくスタイル。自分のなかでスタイルを変えて勝てたことは良いアピールになったと思います。最後は気持ちの勝負で勝ち切れたことも良かったです。(―日本に帰ったら何をしますか?)支えてくれた人がたくさんいるので、その人達に会うのが楽しみです。あとはご飯をいっぱい食べたいですね(笑)。(―妹さんについて)本当に誇りに思いますし、尊敬出来る柔道家です。」

【1回戦】
サルドル・ヌリラエフ(ウズベキスタン)○反則[指導3](3:56)△ロドリック・クク(コンゴ民主共和国)
モハメド・アブデルマウゴウド(エジプト)○内股(0:38)△ブライアン・チミニャ(ジンバブエ)
ベクター・リスマムベトフ(キルギスタン)○GS合技[浮技・巴投](GS1:06)△ウー・ジキアン(中国)
フアン・ポスティーゴス(ペルー)○優勢[技有・外巻込]△ナフルズ・カリムゾド(タジキスタン)
マルコ・グシッチ(モンテネグロ)○背負投(0:17)△デラシ・ワイソン(マラウイ)
マッテオ・メドヴェス(イタリア)○GS大外巻込(GS0:21)△ライアン・ヴァルガス(アメリカ)
パトリック・ヴァヴルズィツェク(ポーランド)○横四方固(4:00)△モハメド・サレム(イエメン)
アーメド・アベラマン(エジプト)○内股(1:01)△インドラ=バハドゥル・シェレスタ(ネパール)
チャールズ・チバナ(ブラジル)○GS反則[指導3](GS3:52)△アルベルト・ガイテロ=マルティン(スペイン)
ラン・サンチョチンチラ(コスタリカ)○大内刈(3:19)△イスマエル・アルハサネ(ニジェール)
イマド・バッソウ(モロッコ)○反則[指導3](3:26)△ディオゴ・セザル(ギニアビサウ)

【2回戦】
タル・フリッカー(イスラエル)○GS技有・小外掛(GS2:45)△サルドル・ヌリラエフ(ウズベキスタン)
アドリアン・ゴンボッチ(スロベニア)○合技[外巻込・肩固](1:03)△ガヴィン・モゴパ(ボツワナ)
オスニエル・ソリス(キューバ)○GS技有・一本背負投(GS1:05)△モハメド・アルサエディ(イラク)
ケネス・ファンガンスベケ(ベルギー)○GS反則[指導3](GS2;20)△アヨウブ・エリドリッシ(カタール)
ダニエル・カルグニン(ブラジル)○GS袖釣込腰(GS0:35)△ペタル・ザドロ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)
ニジャット・シハリザダ(アゼルバイジャン)○小外掛(0:38)△モハメド・アブデルマウゴウド(エジプト)
パヴェル・ペトリコフ(チェコ)○GS技有・小外刈(GS1:09)△ベクター・リスマムベトフ(キルギスタン)
ストラヒンヤ・ブンチッチ(セルビア)○GS技有・隅返(GS1:29)△ズミトリー・ミンコウ(ベラルーシ)
バルチ・シュマイロフ(イスラエル)○反則[指導3](2:25)△ダニエル・ジョン(フランス)
イェルラン・セリクジャノフ(カザフスタン)○背負投(1:22)△アーサー・カルロス=ジュニア(モザンビーク)
ヴァディム・ブネシュ(モルドバ)○腰車(2:13)△トム・シュミット(ルクセンブルク)
ボグダン・イアドフ(ウクライナ)○GS大内返(GS0:36)△フアン・ポスティーゴス(ペルー)
ガンボルド・ヘルレン(モンゴル)○優勢[技有・大内刈]△シナン・サンダル(トルコ)
アブデラフマネ・ボウシタ(モロッコ)○体落(2:22)△ワンダー・マテオ(ドミニカ共和国)
ネイソン・バーンス(アイルランド)○GS巴投(GS1:45)△マルコ・グシッチ(モンテネグロ)
ジョルト・ゴルヤナッチ(ハンガリー)○優勢[技有・大外返]△アブドゥラジズ・アルバシ(サウジアラビア)
阿部一二三○袖釣込腰(0:10)△ジェラルド・カデ(ハイチ)
マッテオ・メドヴェス(イタリア)○横掛(3:55)△アデバヨ=フレデリック・オリンピオ(トーゴ)
デニス・ヴィエル(モルドバ)○反則[指導3](2:04)△ジェームズ・エントウィスル(ニュージーランド)
ケヴィン・ロフォルテ(モザンビーク)○裏投(1:19)△マテイ・ポリアク(スロバキア)
ゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)○釣込腰(1:39)△パトリック・ヴァヴルズィツェク(ポーランド)
シュウゲン・ナカノ(フィリピン)○反則[指導3](1:52)△マシューズ・プンザ(ザンビア)
アーメド・アベラマン(エジプト)○反則[指導3](3:37)△ネイサン・カッツ(オーストラリア)
ヨクブジョン・ボキエフ(タジキスタン)○片手絞(1:48)△ジェレミー・セイウェル(マルタ)
ヴァジャ・マルグヴェラシヴィリ(ジョージア)○内股(0:24)△オーギュスト・ダガ(ベナン)
セバスティアン・ザイドル(ドイツ)○優勢[技有・浮落]△チャールズ・チバナ(ブラジル)
ミハイル・プルヤエフ(ロシア)○背負投(1:41)△ダレン・エルコック(ガイアナ)
インドリット・ツルハイ(アルバニア)○反則[指導3](3:23)△レトルホジレ=ツェノロ・ツェコ(ボツワナ)
アン・バウル(韓国)○肩車(1:03)△ラン・サンチョチンチラ(コスタリカ)
アルチュール・テ(キルギスタン)○袖釣込腰(1:50)△ジョアオ・クリソストモ(ポルトガル)
イマド・バッソウ(モロッコ)○反則[指導3](2:23)△アブドゥル ファリム・ファズリ(アフガニスタン)
ズミトリー・シェルシャン(ベラルーシ)○優勢[技有・肩車]△ユスフ・ヌルコヴィッチ(モンテネグロ)

【3回戦】
タル・フリッカー(イスラエル)○GS技有・肩車(GS0:55)△アドリアン・ゴンボッチ(スロベニア)
オスニエル・ソリス(キューバ)○優勢[技有・小外掛]△ケネス・ファンガンスベケ(ベルギー)
ダニエル・カルグニン(ブラジル)○GS合技[袖釣込腰・隅返](GS2:19)△ニジャット・シハリザダ(アゼルバイジャン)
パヴェル・ペトリコフ(チェコ)○GS技有・小内刈(GS0:37)△ストラヒンヤ・ブンチッチ(セルビア)
イェルラン・セリクジャノフ(カザフスタン)○合技[横落・横落](2:54)△バルチ・シュマイロフ(イスラエル)
ヴァディム・ブネシュ(モルドバ)○小外掛(2:02)△ボグダン・イアドフ(ウクライナ)
ガンボルド・ヘルレン(モンゴル)○GS技有・小内刈(GS1:57)△アブデラフマネ・ボウシタ(モロッコ)
ネイソン・バーンス(アイルランド)○背負投(3:36)△ジョルト・ゴルヤナッチ(ハンガリー)
阿部一二三○合技[内股・大内刈](1:03)△マッテオ・メドヴェス(イタリア)
デニス・ヴィエル(モルドバ)○合技[大内刈・小外刈](1:37)△ケヴィン・ロフォルテ(モザンビーク)
ゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)○反則[指導3](1:44)△シュウゲン・ナカノ(フィリピン)
ヨクブジョン・ボキエフ(タジキスタン)○GS反則[指導3](GS0:26)△アーメド・アベラマン(エジプト)
セバスティアン・ザイドル(ドイツ)○GS大外刈(GS0:41)△ヴァジャ・マルグヴェラシヴィリ(ジョージア)
ミハイル・プルヤエフ(ロシア)○反則[指導3](1:46)△インドリット・ツルハイ(アルバニア)
アン・バウル(韓国)○優勢[技有・袖釣込腰]△アルチュール・テ(キルギスタン)
ズミトリー・シェルシャン(ベラルーシ)○GS反則[指導3](GS0:12)△イマド・バッソウ(モロッコ)

【4回戦】
タル・フリッカー(イスラエル)○優勢[技有・背負投]△オスニエル・ソリス(キューバ)
ダニエル・カルグニン(ブラジル)○合技[技有・技有](0:41)△パヴェル・ペトリコフ(チェコ)
イェルラン・セリクジャノフ(カザフスタン)○合技[袖釣込腰・体落](3:20)△ヴァディム・ブネシュ(モルドバ)
ガンボルド・ヘルレン(モンゴル)○優勢[技有・釣腰]△ネイソン・バーンス(アイルランド)
阿部一二三○優勢[技有・背負投]△デニス・ヴィエル(モルドバ)
ゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)○外巻込(1:42)△ヨクブジョン・ボキエフ(タジキスタン)
ミハイル・プルヤエフ(ロシア)○反則[指導3](1:53)△セバスティアン・ザイドル(ドイツ)
アン・バウル(韓国)○反則[指導3](2:33)△ズミトリー・シェルシャン(ベラルーシ)

【準々決勝】
タル・フリッカー(イスラエル)○GS技有・大外刈(GS5:47)△ダニエル・カルグニン(ブラジル)
イェルラン・セリクジャノフ(カザフスタン)○GS小外掛(GS1:38)△ガンボルド・ヘルレン(モンゴル)
阿部一二三○合技[背負投・大外刈](0:50)△ゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)
アン・バウル(韓国)○腕緘(1:46)△ミハイル・プルヤエフ(ロシア)

【敗者復活戦】
ダニエル・カルグニン(ブラジル)○優勢[技有・内股]△ガンボルド・ヘルレン(モンゴル)
ゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)○GS技有・隅落(GS0:11)△ミハイル・プルヤエフ(ロシア)

【準決勝】
イェルラン・セリクジャノフ(カザフスタン)○GS背負投(GS1:35)△タル・フリッカー(イスラエル)
阿部一二三○GS技有・背負投(GS2:38)△アン・バウル(韓国)

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3位決定戦、アン・バウルがダニエル・カルグニンから袖釣込腰「技有」

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3位決定戦、ゲオルギー・ザンタライアがタル・フリッカーから内股「技有」

【3位決定戦】
アン・バウル(韓国)○優勢[技有・袖釣込腰]△ダニエル・カルグニン(ブラジル)
アンが左、カルグニアンが右組みのケンカ四つ。序盤からアンが釣り手でカルグニアンの釣り手の袖を抑え、絞り合いの展開に持ち込む。アンの得意な形だが、カルグニアンもこれを厭わず両袖からの巴投、左組みにスイッチしながらの左背負投、さらにアンの絞り込みが完全に効く前に先んじて右袖釣込腰を仕掛けて試合を動かし、1分52秒、技が出ないアンに1つ目の「指導」。

しかし、試合が進むにつれてカルグニンは減速、アンの仕掛ける両袖の絞り合いに腰を折って付き合わされる時間が長くなってやや手詰まり。アンがじわじわと自分の得意の試合展開にカルグニアンを引き摺り込んでいる格好。残り1分16秒、アンが得意の低い左袖釣込腰に潜ってカルグニアンを転がし「技有」。

決定的なリードを得たアンはその後は無理をせず、カルグニアンのクロス組み手からの右内股も難なく受けきってクロージング。アンが3位の位置を確保した。

ゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)○優勢[技有・内股]△タル・フリッカー(イスラエル)
左相四つ。組み手の攻防が巧みなフリッカーに対し、ザンタライアが選択したのは密着による組み手の無効化という非常にプリミティブな手法。しかし、これが絶大な効果を発揮することとなり、試合は終始ザンタライア優位で進むこととなる。開始25秒、ザンタライアは釣り手で相手の腋下を掴むと、一気に間合いを詰めて無理やり腰を差し入れる左釣込腰。これは流石に強引過ぎて決め切れなかったが、ザンタライアは伏せかけたまま無理やり左内股巻込に連絡、フリッカーは前方に大きく崩れながらも跨ぐことでこれを凌ぐ。46秒にはフリッカーがザンタライアの左内股を透かしかけるが、なんとザンタライアは逆立ちして畳に着地。持ち味を存分に発揮しての曲芸師のような動きに、会場から歓声が上がる。ここからは再びザンタライア優位での攻防が続き、1分24秒にはフリッカーに消極的の「指導」。2分10秒にはザンタライアが体を捨てての左内股を仕掛け、フリッカーは顔面から畳に叩きつけられる。2分34秒、ザンタライアは釣り手で腋下、引き手で袖口という完璧な形を作り、相手が嫌って腰を引いたところに左内股。自身の体に釣り手を巻きつけるようにして体を捨てるとフリッカー勢い良く吹っ飛んで体側から落下。やや時間を置いて主審は「技有」を宣告する。ポイントを失ったフリッカーは以降リスクを厭わず前に出て攻撃のきっかけを作ろうとするが、3分29秒にはザンタライアにクロスグリップの形で潰され、腕挫十字固を狙われる。これはフリッカーが相手を抱えたまま立ち上がり「待て」となったが、この時点で残り時間は僅か25秒、さらに続く展開では相手に引き込まれて不要な寝技に付き合わされてしまい万事休す。主審の「始め」の声と同時に組み付くも、ザンタライアが背中を向けながら回転してこれを躱したところで試合終了のブザーが鳴る。ザンタライアが密着攻勢でフリッカーを圧倒、見事3位を獲得した。

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決勝、阿部一二三の内股「一本」

【決勝】
阿部一二三○内股(1:13)△イェルラン・セリクジャノフ(カザフスタン)
右相四つ。セリクジャノフは右釣り手で片襟を掴んで煽ろうと試みるが阿部は眼前に差し出されたその袖を掴み右袖釣込腰。相手が崩れると一段深く踏み込んで再度袖釣込腰で投げに掛かるが、投げ切れず膝を着かせてしまい「待て」。阿部は続く展開も右袖釣込腰、その形に腕をまとめたまま右大外刈、さらに右背負投と大技を連発。セリクジャノフが膝を着いて耐え、直後の54秒消極的との咎で「指導」。
この日の阿部はどちらかというと不調。これぞの大技を連発しても投げ切れない場面が多々あり、この決勝も同様の展開待ち受けるかと思わせるこれまでの攻防だったが、ここで「指導」を受けたばかりのセリクジャノフが奮起、背中を抱いてケンケンの左小外掛で勝負に出る悪手。もともと抱き勝負が本職の阿部、呼び込んで右内股一撃。高々放られたセリクジャノフが背中から畳に沈んで文句なしの「一本」。阿部は世界選手権2連覇達成。

【日本代表選手勝ち上がり】

阿部一二三(日本体育大3年)
成績:優勝


[2回戦]
阿部一二三○袖釣込腰(0:10)△ジェラルド・カデ(ハイチ)
阿部始まるなり引き手で袖を確保。慌てたカデは残る左で襟を掴まんと探るが、阿部は伸びて来たその手の袖を捕まえて右袖釣込腰。体落様に右脚を出して回旋をフォローし、僅か10秒で「一本」。

[3回戦]
阿部一二三○合技[内股・大内刈](1:03)△マッテオ・メドヴェス(イタリア)
右相四つ。長身のメドヴェスは長い腕を振り回して奥襟を掴む。しかしここから時計回りに背後に侵入しようとした瞬間、阿部は素早く右内股を引っ掛けて転がし「技有」。続く展開、阿部はメドヴェスの釣り手の降下を待ち構えて右の片襟背負投。これは投げきれず「待て」となったが、1分3秒にはクロス組み手で背中を叩いて来たところを背を抱いて迎え撃ち、攻防一致の右大内刈「技有」。合技「一本」で試合終了。

[4回戦]
阿部一二三○優勢[技有・背負投]△デニス・ヴィエル(モルドバ)
右相四つ。長身のヴィエル意外に力があり、奥襟を叩いての接近と離脱を繰り返して粘る。阿部は引き手で袖を絞っておいての片襟右背負投、袖釣込腰と攻めるがディフェンスのみを強く意識した相手をなかなか投げ切れない。1分44秒ヴィエルに「取り組まない」咎による「指導」。続く展開、引き手で袖を絞った阿部ついにヴィエルを捕まえ、2分18秒片襟を差して打点の高い右背負投一撃。しかし高く上がり過ぎたか、垂直落下させた相手が顔を外側に向けて畳に落ち、意外にも「一本」とはジャッジされず「技有」。以降阿部あくまで一本勝ちを狙って攻めに攻めるが、片襟の背負投、両袖の袖釣込腰に小内刈とあと一歩で投げ切れず。体の力が強いヴィエルはもはや粘ることだけがミッションとばかりにかわし続け、そのままタイムアップ。

[準々決勝]
阿部一二三○合技[背負投・大外刈](0:50)△ゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)
阿部が右、ザンタライアが左組みのケンカ四つ。阿部が引き手で袖を絞ると、ザンタライアは嫌って切り離そうと企図。阿部は許さず、その動きに合わせて片襟の右背負投。低く入り、膝を伸ばして投げ切って37秒「技有」獲得。ビハインドのザンタライア両手を合わせて阿部を場外に押し出そうとするが、阿部は巧みに回り込んで動ぜず。50秒、その流れから片襟を差して右大外刈。相手が外に逃れると追い掛け、刈り切りながら体を捨てて2つ目の「技有」。僅か50秒で試合終了、これまでの相手と異なり、ザンタライアが実力者で勝負に出て来たゆえかえって力の差がまともに出たという印象。圧勝であった。

[準決勝]
阿部一二三○GS技有・背負投(GS2:38)△アン・バウル(韓国)
世界王者同士の対戦は阿部が右、アンが左組みのケンカ四つ。阿部は釣り手で袖を押さえ、あるいは低い位置ながらも前襟を掴んで片手の右背負投を繰り出すが、心得たアンしっかり回避。引き手争いが続く中、両者が上体を屈した1分8秒に主審が姿勢を正すようにとゼスチャーし双方に「指導」。阿部はアンのしぶとい組み手に根負けせず片手の右背負投、右大腰、右背負投と技を積んで2分35秒2つ目の「指導」を引き出すが、続く展開の連続技で右背負投に潰れてしまい、後帯を持って引き上げたアンの足を抱えて防御する形となってしまう。3分9秒に足取りの咎で2つ目の「指導」失陥、これでスコアはタイ。阿部が右内股に背負投と技を繋いだところで本戦4分が終了、試合はGS延長戦へもつれ込む。延長戦になるとアンがやや息を吹き返し、釣り手を振り立てての左背負投で散発ながら逆襲開始。しかし阿部は右内股に右大内刈、小外刈で投げにかかってあっという間にアンは沈黙。2分38秒には阿部がまず右内股、これで腰を寄せると両襟の右背負投に飛び込む。逃れようとした相手に肩を突っ込んで回すと、アンは横倒し。映像チェックの結果この技に「技有」が宣せられ、阿部の勝利が決まった。

[決勝]
阿部一二三○内股(1:13)△イェルラン・セリクジャノフ(カザフスタン)
※前述のため省略


※写真は権利者の許諾を得て掲載しています

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