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【バクー世界柔道選手権2018特集】風格漂う戦いぶり、髙藤直寿が3度目の金メダル・バクー世界柔道選手権2018男子60kg級即日レポート

(2018年9月20日)

※ eJudoメルマガ版9月20日掲載記事より転載・編集しています。
【バクー世界柔道選手権2018特集】風格漂う戦いぶり、髙藤直寿が3度目の金メダル
バクー世界柔道選手権2018男子60kg級即日レポート
→特設ページ・バクー世界選手権2018完全ガイド

文責:古田英毅/eJudo編集部
Text by Hideki Furuta

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優勝を決めた髙藤。
※写真提供:judoinside.com

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2回戦、髙藤がダヴィド・スタルケル(スロベニア)から裏固「一本」

バクー世界柔道選手権2018はアゼルバイジャン・バクーで20日に開幕。初日は男子60kg級と女子48kg級の競技が行われ、60kg級は日本代表の髙藤直寿(パーク24)が優勝を飾った。髙藤の世界選手権制覇は2013年リオ大会、2017年ブダペスト大会に続く2年連続3度目。

髙藤は第4シードから大会をスタート。同プールに配されたベスラン・ムドラノフ(ロシア)が早々に敗れたこともあって準々決勝までの4試合はかなり実力差のある対戦、いずれも「一本」であっさり勝利を決め、最大の勝負どころと目された準決勝・永山竜樹(東海大4年)との対戦を迎える。

この試合は54秒に永山の左背負投で吹っ飛ばされ、頭から畳に落ちて映像チェックに至るという大インシデント発生。しかしヘッドディフェンスによる一本負けの可能性もあったこの技がノーポイントと判定されるとやがて衝撃から立ち直り、手ごたえを得た永山の左の担ぎ技を逆に待ち構えて抱分を狙う勝負師ぶりを発揮。延長戦が始まるとまたもや左背負投を待ち構えて抱分一発、今度は逆に自身のポイント付与を巡って映像チェックを受けることになる。これは永山が髙藤の体の上を転がっておりノーポイントだったが、再開直後、この一撃の余韻がまだ消えぬうちに左小内刈で永山を転がして鮮やか「技有」奪取。今大会最大の山場であるとともに、東京五輪代表争い最大級の分水嶺であるこの試合をみごと制することとなった。

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ロベルト・ムシュビドバゼとの決勝を戦う髙藤

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左小内刈で決勝点となる「技有」奪取

決勝では、第2シードのロベルト・ムシュビドバゼ(ロシア)と対戦。ケンカ四つの相手の組み手の妥協点を勘良く探り、釣り手で外から脇下を絞り込んで対峙。ベストではないがベターな選択で相手を「勝負してくれる」土俵まで引きずり込むと、相手が釣り手で背を抱えて来た瞬間まず腰を入れて位置を正面に変え、次いで振り向きながらの左小内刈で「技有」確保。以降は無理をせず、相手にチャンスを与えないままタイムアップまで戦い切って優勝を決めた。

髙藤の成熟ぶり際立った大会。寝技で3試合を一本勝ちし、勝負どころの2試合を足技で勝ち抜けるという手堅さに加え、跳ね、担ぎ、刈り、捨て、絞め、抑える技術的な全方位性、永山に投げられかければその技に罠を仕掛けて捨身技で投げ返し、場が荒れると見るや一気に試合を決めに掛かった勝負師ぶり、徹底警戒される中ベストの組み手ではなく「ベター」の組み手で相手を勝負の土俵に上げてしまう勝負勘、一発逆転を狙う相手に一切つきあわない「割り切り」。かつて、どの場面も全力でアクセルを踏み込み、ために意外なポカ負けも多々あったあの「スピード違反」ぶりが信じられないほどの円熟した内容であった。

永山は3位を確保。3位決定戦ではイ・ハリム(韓国)を内股「一本」で破った。この日の出来は決して悪くなかったが、髙藤の仕上がりと経験がそれを上回ったという恰好だった。

もう1つの銅メダルは第3シードのアミラン・パピナシビリ(ジョージア)が獲得。この日は絶好調で初戦から印象的な「一本」を連発、4回戦では昨年度銀メダリストでこれもこの日好調のオルハン・サファロフ(アゼルバイジャン)との対決を僅か20秒の谷落「一本」で下し、前半戦はまさしく主役級の活躍。準決勝はここまで強者との対戦がほとんどなかったムシュビドバゼに敗れてしまったが、表彰台登攀は妥当な結果。髙藤と並んでこの日もっとも強い印象を残した選手だった。

リオデジャネイロ五輪金メダリストのベスラン・ムドラノフ(ロシア)は2試合を一本勝ちも、3回戦でダークホースのカラマト・フセイノフ(アゼルバイジャン)に後の先の小外掛を食って一本負け。復帰後のツアーと同様、体が良く動いて連続攻撃が利くものの、動けてしまうがゆえに「際」でこれを制御し切れないという印象だった。この試合の中途でフセイノフが放った片手の袖釣込腰は肘が極まる形のもので、反則負けが十分ありえたケース。運にも恵まれなかった。

4回戦(ベスト16)のメンバーはかなり微妙。前述パピナシビリ対サファロフのような豪華なカードがある一方で、普段ツアーでは予選ラウンド前半で敗退するレベルの選手も数多く名を連ねた。アジアの有力選手大量欠場と、トーナメントの偏りがこの現象の因。加盟国が予選なしであまねく代表を送り込める、「世界選手権」らしい様相の前半戦であった。

入賞者、髙藤直寿選手のコメントと全試合の結果、メダルマッチ3試合および日本代表選手全試合の戦評は下記。

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60kg級メダリスト。左からムシュビドバゼ、髙藤、パピナシヴィリ、永山。

(エントリー68名)

【入賞者】
1.TAKATO, Naohisa (JPN)
2.MSHVIDOBADZE, Robert (RUS)
3.PAPINASHVILI, Amiran (GEO)
4.NAGAYAMA, Ryuju (JPN)
5.HUSEYNOV, Karamat (AZE)
6.LEE, Harim (KOR)
7.KIM, Yong Gwon (PRK)
8.TAKABATAKE, Eric (BRA)

【1回戦】
ヴァレンティン・アリピエフ(ブルガリア)○優勢[技有・隅返]△イッサム・バッソウ(モロッコ)
チョ・インヒュク(韓国)○優勢[技有・内股]△スフロブ・ボキエフ(タジキスタン)
ダヴィド・プルクラベク(チェコ)○優勢[技有・一本背負投]△フリオ・モリーナ(グアテマラ)
モハメド・アルスルタニ(イラク)○合技[袖釣込腰・背負投](3:09)△モハン・バム(ネパール)

【2回戦】
永山竜樹○反則[指導3](1:42)△チャバ・サボ(ハンガリー)
ルフミ・チフヴィミアニ(ジョージア)○後袈裟固(4:00)△ヴァレンティン・アリピエフ(ブルガリア)
ディルメール・カルレー(ペルー)○優勢[技有・小内刈]△ブライアン・ジョリー(オーストラリア)
レニン・プレシアド(エクアドル)○釣腰(1:11)△アンドレア・カルリノ(イタリア)
アシュリー・マッケンジー(イングランド)○棄権(2:17)△ベキル・オズル(トルコ)
キム・ヨンゴン(北朝鮮)○小内刈(2:28)△アドニス・ディアス(アメリカ)
マウロ・ナッソネ(モザンビーク)○反則[指導3](3:08)△ムサ・ディオプ(セネガル)
アフメド・アラミ(イラク)○反則[指導3](3:38)△イザック・クルシュ(IJF所属)
髙藤直寿○裏固(1:22)△ダヴィド・スタルケル(スロベニア)
ドリン・ミフ(モルドバ)○合技[隅落・隅落](3:24)△バイアマン・サギンバイ=ウウル(キルギスタン)
アリコザイ・ゼルガイ(アフガニスタン)○合技[小外刈・一本背負投](2:09)△チコンディ=サミュエル・カテウェラ(マラウイ)
ロイ・コッフェイベルフ(オランダ)○優勢[技有・大外刈]△モハマド・アッカシュ(シリア)
フランシスコ・ガリーゴス(スペイン)○反則[指導3](3:13)△フェリペ・ペリム(ブラジル)
チョ・インヒュク(韓国)○優勢[技有・背負落]△ヤン・ユンウェイ(台湾)
ベスラン・ムドラノフ(ロシア)○背負投(3:00)△アルテム・レシュク(ウクライナ)
カラマット・フセイノフ(アゼルバイジャン)○背負投(1:09)△ヨラン・シルダーマンス(ベルギー)
ロベルト・ムシュヴィドバゼ(ロシア)○合技[谷落・出足払](0:52)△ムドゥ=ジャミル=ウディン・ロニー(バングラデシュ)
ルカ・ムヘイゼ(フランス)○腕挫十字固(1:32)△モクタル・アラッサネ(ニジェール)
アリ・フスロフ(イエメン)○合技[引込返・支釣込足](3:47)△アン・ジェヨン(北朝鮮)
モリッツ・プラフキー(ドイツ)○合技[巴投・内股](2:05)△ラウ・マーティン(香港)
シャラフディン・ルトフィラエフ(ウズベキスタン)○内股(2:32)△ゴンカロ・マンシーノ(ポルトガル)
オタル・ベスタエフ(キルギスタン)○優勢[技有・裏投]△マティアス・トルボフチ(スロベニア)
イ・ハリン(韓国)○腕挫十字固(2:05)△ラザルス・アルファンディカ(ジンバブエ)
トルニケ・ツヤカドエア(オランダ)○合技[内股・内股透](2:06)△ダヴィド・プルクラベク(チェコ)
アミラン・パピナシヴィリ(ジョージア)○袖釣込腰(0:22)△エマニュエル・ンダフ(マラウイ)
ヤニスラフ・ゲルチェフ(ブルガリア)○腕挫十字固(1:32)△モハメド・アルスルタニ(イラク)
オルハン・サファロフ(アゼルバイジャン)○大外刈(3:08)△バヤラー・アマーツヴシン(モンゴル)
アブドウ・ナジル=ビン(マダガスカル)○[巴投・小内刈](1:06)△エドウィン・セロ(ボツワナ)
グスマン・キルギズバエフ(カザフスタン)○合技[小外掛・横四方固](4:00)△アフメット=サヒン・カバ(トルコ)
ヤン・シカルディ(モナコ)○合技[浮技・横四方固](2:57)△ムタス・ハウジャー(サウジアラビア)
エリック・タカバタケ(ブラジル)○優勢[技有・隅落]△シャン・イー(中国)
ヨレ・フェルストラーテン(ベルギー)○背負投(2:06)△ヤッシン・モウダティール(モロッコ)

【3回戦】
永山竜樹○反則[指導3](3:36)△ルフミ・チフヴィミアニ(ジョージア)
レニン・プレシアド(エクアドル)○反則[指導3](2:52)△ディルメール・カルレー(ペルー)
キム・ヨンゴン(北朝鮮)○袖釣込腰(2:53)△アシュリー・マッケンジー(イングランド)
アフメド・アラミ(イラク)○反則[指導3](2:42)△マウロ・ナッソネ(モザンビーク)
髙藤直寿○合技[内股・内股](0:58)△ドリン・ミフ(モルドバ)
ロイ・コッフェイベルフ(オランダ)○払腰(1:12)△アリコザイ・ゼルガイ(アフガニスタン)
フランシスコ・ガリーゴス(スペイン)○GS技有・縦四方固(GS4:40)△チョ・インヒュク(韓国)
カラマット・フセイノフ(アゼルバイジャン)○小外掛(2:32)△ベスラン・ムドラノフ(ロシア)
ロベルト・ムシュヴィドバゼ(ロシア)○優勢[技有・内股]△ルカ・ムヘイゼ(フランス)
モリッツ・プラフキー(ドイツ)○反則[指導3](2:33)△アリ・フスロフ(イエメン)
オタル・ベスタエフ(キルギスタン)○優勢[技有・内股]△シャラフディン・ルトフィラエフ(ウズベキスタン)
イ・ハリン(韓国)○優勢[技有・袖釣込腰]△トルニケ・ツヤカドエア(オランダ)
アミラン・パピナシヴィリ(ジョージア)○出足払(1:31)△ヤニスラフ・ゲルチェフ(ブルガリア)
オルハン・サファロフ(アゼルバイジャン)○内股(0:12)△アブドウ・ナジル=ビン(マダガスカル)
グスマン・キルギズバエフ(カザフスタン)○小内返(2:35)△ヤン・シカルディ(モナコ)
エリック・タカバタケ(ブラジル)○大車(3:17)△ヨレ・フェルストラーテン(ベルギー)

【4回戦】
永山竜樹○優勢[技有・隅落]△レニン・プレシアド(エクアドル)
キム・ヨンゴン(北朝鮮)○背負投(0:18)△アフメド・アラミ(イラク)
髙藤直寿○片手絞(1:03)△ロイ・コッフェイベルフ(オランダ)
カラマット・フセイノフ(アゼルバイジャン)○優勢[技有・背負投]△フランシスコ・ガリーゴス(スペイン)
ロベルト・ムシュヴィドバゼ(ロシア)○GS技有・大内刈(GS2:00)△モリッツ・プラフキー(ドイツ)
イ・ハリン(韓国)○反則[指導3](3:45)△オタル・ベスタエフ(キルギスタン)
アミラン・パピナシヴィリ(ジョージア)○谷落(0:20)△オルハン・サファロフ(アゼルバイジャン)
エリック・タカバタケ(ブラジル)○大車(2:32)△グスマン・キルギズバエフ(カザフスタン)

【準々決勝】
永山竜樹○内股(1:03)△キム・ヨンゴン(北朝鮮)
高藤直寿○送襟絞(0:37)△カラマット・フセイノフ(アゼルバイジャン)
ロベルト・ムシュヴィドバゼ(ロシア)○GS反則[指導3](GS0:23)△イ・ハリン(韓国)
アミラン・パピナシヴィリ(ジョージア)○優勢[技有・釣込腰]△エリック・タカバタケ(ブラジル)

【敗者復活戦】
カラマット・フセイノフ(アゼルバイジャン)○GS合技[袖釣込腰・隅返](GS2:44)△キム・ヨンゴン(北朝鮮)
イ・ハリン(韓国)○合技[背負投・背負投](3:57)△エリック・タカバタケ(ブラジル)

【準決勝】
高藤直寿○GS技有・小内刈(GS0:16)△永山竜樹
ロベルト・ムシュヴィドバゼ(ロシア)○合技[小内巻込・小内巻込](GS0:54)△アミラン・パピナシヴィリ(ジョージア)

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3位決定戦、アミラン・パピナシヴィリがカラマット・フセイノフから隅返「技有」

【3位決定戦】
アミラン・パピナシヴィリ(ジョージア)○優勢[技有・隅返]△カラマット・フセイノフ(アゼルバイジャン)
フセイノフが左、パピナシヴィリが右組みのケンカ四つ。パピナシヴィリは釣り手でフセイノフの釣り手の袖を抑えながら重心低く構え、フセイノフはパピナシヴィリに釣り手を抑えさせたまま果敢に前に出て左の「韓国背負い」を仕掛け攻勢を取る。パピナシヴィリは「指導2」のリードを許したものの決定的なポイントは譲らず試合を進め、試合時間2分15秒、フセイノフが担ぎ技に入り損ねて体勢を崩したところに正面から密着。隅返に飛び込み「技有」を奪取。

決定的なリードを得たパピナシヴィリは再び両袖で距離を取り、フセイノフの追撃を凌ぎ切って試合終了。パピナシヴィリが「技有」のポイントを以て優勢勝ち、見事3位入賞を果たした。切れのある担ぎ技で快進撃を見せたフセイノフだが、地元開催の世界選手権でのメダル獲得にはあと一歩及ばなかった。

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3位決定戦、永山竜樹がイ・ハリンから内股「一本」

永山竜樹○GS内股(GS4:08)△イ・ハリン(韓国)
右相四つ。永山は対髙藤戦における敗戦のショックゆえか、いつもより覇気がない印象。序盤は袖の絞り合い。22秒に永山が釣り手を絞らせたまま低空の右内股に飛び込むが、これはイが余裕を持って防ぐ。55秒にはイが右背負投で永山の懐に侵入するも、永山飛び退いてこれを回避。以降はイが手数攻勢へと舵を切り、受けに回った永山に2分10秒、消極的との咎で「指導」が与えられる。このポイントを得たことでイはさらにペースを上げて組み際の右背負投を連発。しかし、このあまりにも露骨な先手掛け潰れ攻撃が許されるわけもなく、3分6秒にはイに対して的確な偽装攻撃の「指導」、さらに3分27秒には永山の圧に負けて畳を割ったイに場外の咎で「指導2」が追加されることとなる。直後の3分35秒、永山が右の「韓国背負い」。立ったまま打点高くリフトして放り投げるが、高さが仇となりイは体を翻して腹這いで着地。このまま本戦の4分間が終わり、勝負はGS延長戦へ。

延長戦でもイは変わらずの手数志向。永山前に出ながら時折技を仕掛けるも、大枠としてはこれに付き合ってしまい、GS1分31秒、ついに消極的の「指導2」を失陥。ここから永山は3つ目の「指導」を避けるために組み際の浅い右背負投を用いるようになるがこれは少々不用意、隅返のカウンターを狙われる危ない場面が数度現れる。しかしイに疲れが見え始めたGS4分8秒、袖を絞り合った状態の横移動から永山が一気に腰を切って右内股。絞られた釣り手を高く上げることで相手を前に崩した、打点の高い豪快な一撃。両手をバンザイの形にまとめられたイは空中で前転するようにして勢い良く畳に落ち「一本」。残身まで綺麗に決まった美しい一撃、これで永山が3位を確保した。

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決勝を戦う髙藤

【決勝】
高藤直寿○優勢[技有・小内刈]△ロベルト・ムシュヴィドバゼ(ロシア)
髙藤が左、ムシュヴィドバゼが右組みのケンカ四つ。普段はスローペースのムシュヴィドバゼだが、髙藤の礼の終わりを待たずに歩み寄って相当に入れ込んでいる様子。一方の髙藤は表情に余裕あり。釣り手で外から脇下を絞り、ムシュヴィドバゼと引き手を争いながらチャンスを探る。45秒、ムシュヴィドバゼが釣り手を持ちながら右内股、髙藤後ろに引き倒して絞めを狙うが「待て」。
髙藤が釣り手で前襟を内から持つ良い形を作ると、ムシュヴィドバゼは嫌ってすぐに切り離す。髙藤切り合いを忌避、外からなら持たせたまま勝負してくれると踏んで脇下を絞り込んで試合を進める。この形の引き手争いのさなか、袖を持ちあうとムシュヴィドバゼは釣り手で背中を横抱きに抱えて密着勝負。しかし髙藤かえって機と見たか瞬間まず腰を入れ、次いで振り向きなおして左小内刈を撃ち込む早業。脇を絞った釣り手の制動が良く効き、足元を抜き上げられたムシュヴィドバゼ後方に吹っ飛んで「技有」。

以後髙藤は左小内刈で崩し、ムシュヴィドバゼが脇を差すと瞬間背中を差し返してワンハンドの左浮腰で剥がしてと、試合を加速させすぎずに時間を消費。残り6秒で偽装攻撃の「指導」ひとつを貰ったが大勢には影響なし。そのまま「技有」優勢で勝利して3度目の世界タイトル奪取を決めた。

【日本代表選手勝ち上がり】

髙藤直寿(パーク24)
成績:優勝


[2回戦]
髙藤直寿○裏固(1:22)△ダヴィド・スタルケル(スロベニア)
髙藤が左、スタルケルが右組みのケンカ四つ。髙藤内から持った釣り手を巧みに操作しながら引き手を求める。大内刈で追うがスタルケルが場外に逃れ「待て」。試合時間1分に差し掛かるところで組み手に窮したスタルケルが隅返。髙藤素早くかわすと身体を入れ替え、
腕を抱えて所謂「加藤返し」、相手に半ばかぶったところで下穿きを掴んで裏固。巧みにバランスして抑え切り、「一本」。

[3回戦]
髙藤直寿○合技[内股・内股](0:58)△ドリン・ミフ(モルドバ)
髙藤が左、ミフが右組みのケンカ四つ。ミフは左右の手を交互に「張り手」様に突き出しながら自身は下がり続けるという時間消費だけが目当ての入り。髙藤落ち着いて掴むと、ミフが遠間で攻撃を演出しようと腰を切る動きを見せた瞬間左内股を閃かせ、遠心力を利かせて投げ切って43秒「技有」。続く展開では釣り手で背中を掴んで左内股、万が一にも逃がさぬと腰を入れて押し込み2つ目の「技有」。隙を見せぬまま試合終了。

[4回戦]
髙藤直寿○片手絞(1:03)△ロイ・コッフェイベルフ(オランダ)
髙藤が左、コッフェイベルフが右組みのケンカ四つ。髙藤試合が始まるなり左内股から隅返の素早い連携を見せて動き良し。髙藤は左大外刈、さらに相手の右内股を背中側から左脚の前に左脚を入れて止め、変形の隅落を狙うなど意欲的な試合展開。続いて釣り手で横襟、引き手で袖を得ると、相手の右足をまず内から払い、返す刀の左小外刈で外から抜き上げる。相手が崩れると同時に襟で首を抱えて突進、コッフェイベルフなんとか伏せるがこれが精一杯、髙藤間を置かずに「ボーアンドアローチョーク」の形で絞めあげて「参った」を引き出す。この試合も圧勝でベスト8入り確定。

[準々決勝]
髙藤直寿○送襟絞(0:37)△カラマット・フセイノフ(アゼルバイジャン)
左相四つ。開始早々引き手で袖、釣り手で襟を確保すると同時に左小外刈で相手を崩し、すかさず寝技に移行。ムドラノフを倒すなどここまで大活躍のフセイノフだがこの展開の早さに置き去り、送襟絞であっという間の「一本」。

[準決勝]
髙藤直寿○GS技有・小内刈(GS0:16)△永山竜樹(日本)
髙藤が左、永山が右組みのケンカ四つ。両袖の攻防から髙藤が左小内刈、永山は跳んで避けて伏せ、髙藤が送襟絞を狙って「待て」。ここまでは大枠拮抗もやや髙藤優位という印象だったが、続く展開の54秒、髙藤が釣り手を敢えて低く持つと、永山は一瞬両手を離して左組みにスイッチ、組み付きながら片襟の左背負投。髙藤高々宙を舞い、頭から畳に落下。最終的には腹ばいであったが「一本」あるいは「技有」ではとの勢いに、主審は映像によるチェックを要求。髙藤は一瞬頭から畳に落ち、ついで身を捩じって落下しており「ヘッドディフェンス」による一本負けの可能性もあったが、不可抗力の除外例に該当した模様。試合はそのまま継続となる。
この一撃の余韻が残る中、手ごたえを得た永山は左背負投を軸に攻め続け攻勢。危うく畳を去るピンチを紙一重で乗り越えた髙藤はこの時間帯やや集中を欠く感あって不安定だったが、1分30秒過ぎからどうやら立ち直った模様。2分10秒からは永山の左一本背負投を待ち構えての抱分を2連発、永山の狙いを逆に利用するタフさを見せる。2分40秒永山に変形の組み手で「指導」、3分20秒永山の左背負投を受けた髙藤に消極の「指導」。試合はこのままGS延長戦へ。
延長開始早々、釣り手争いから永山がまたもや左背負投に飛び込むと髙藤待ち構えて思い切り抱分。「一本」でもおかしくない勢いで永山吹っ飛ぶが、髙藤の体の上を転がる形になっており、畳に落下した際は腹ばい。ビデオチェックの結果、ポイントなしで試合は継続。

そしてこの一撃の衝撃が残る、場の「荒れ」を髙藤は見逃さない。再開直後の16秒、相手を引き出しておいて大きく足を伸ばすと押し込むように左小内刈。永山転がって「技有」。

永山の素晴らしい左の担ぎ、幾度も決定的な侵入を許しながらもその左の担ぎを敢えて受け入れて「後の先」の罠を張った髙藤。そして「投げ」の衝撃が作った場の乱れを利用し切れなかった永山と、逆にこれを逃さず獲り切った髙藤。双方死力を尽くしたが髙藤の経験値が永山の上をいった形。まことに見ごたえのある試合。名勝負だった。

[決勝]
髙藤直寿○優勢[技有・小内刈]△ロベルト・ムシュヴィドバゼ(ロシア)
※前述のため省略

永山竜樹(東海大4年)
成績:3位


[2回戦]
永山竜樹○反則[指導3](1:42)△チャバ・サボ(ハンガリー)
永山、サボともに右組みの相四つ。サボは永山が組まんとするなり右体落で両手を離して掛け潰れること2度、しかし主審はスルー。以後もサボは左右に構えを変えながら組み合うことをあくまで嫌い続けるが永山慌てず、敢えて釣り手から持つことで組み合いにいざなっては左一本背負投、出足払と淡々技を積む。1分12秒、空いた永山の右手とサボの左手が握り合わされ、両者に「指導」。1分31秒、またも組み合うことを嫌ったサボが巴投に掛け潰れ、偽装攻撃で「指導2」。
頃合い良しと見た永山は手順を変え、この試合初めて引き手から袖を持つ。もはや組み合わないわけにはいかないサボは残る永山の釣り手の袖を絞り込んで耐え、主審すぐさま試合を止めて両者に袖口を絞った咎で「指導」。これで3つ目の「指導」となったサボは万事休す。逃げ回るのみで世界選手権を終了することとなった。

[3回戦]
永山竜樹○反則[指導3](3:36)△ルフミ・チフヴィミアニ(ジョージア)
永山、チフヴィミアニともに右組みの相四つ。チフヴィミアニは左構えを多用しながら叩いては離れ、持たれては切りという粘戦志向。永山この試合も右背負投に片襟の左背負投、右大内刈と組み際を中心に粛々技を積み続ける。2分39秒に2つ目の「指導」を得ると、一段ギアを上げ、打点を高く、あるいは低くと変えながら取り味のある左一本背負投を連発。残り24秒で消極的との咎による「指導3」が与えられて終戦。

[4回戦]
永山竜樹○優勢[技有・隅落]△レニン・プレシアド(エクアドル)
永山が右、プレシアド左組みのケンカ四つ。プレシアドは釣り手で背中を深く抱えたものの恐怖を感じたか自ら正対する形で畳に倒れて逃げ「待て」。続いて左右の手先を順繰りに繰り出して逃げ回り、31秒「取り組まない」咎で「指導」。さらに組み際に払巻込、両手を離して自ら伏せ、伏せるなり慌てて身を翻して正対するプロレス的な動き。以後もプレシアドの一人相撲は続き、組んでは離れることを繰り返した挙句、1分29秒には組み際に隅返。永山が正対する形で振り向くとほとんど勝手に背中から落ちて「技有」。プレシアドは以後も右手で永山の右片襟を差しては左で深く背中を抱え、抱えては離れ、あるいは自ら掛け潰れて寝たまま正対するという変調の柔道を継続。3分12秒にはプレシアドに「指導2」。プレシアドの勇躍近づいては怖がって離れ、自ら潰れるという戦いぶりは以後も変わらず。永山も付き合い過ぎず、敢えてアクセルふかさず。最後は「はじめ」の声と同時にプレシアドが突進し、「それまで」の声を聞いてたたらを踏んでストップ、というこの試合を象徴するような絵で幕。金髪で押し出しだけは強いが、プレシアドは最後まで勇気のない戦いぶりであった。永山ここまでは「怖がり」ばかりとの対戦、それとも永山の膂力が組んでいられないほどに強いのか。以後リズムを崩さぬかが心配になる、おかしな相手であった。

[準々決勝]
永山竜樹○内股(1:03)△キム・ヨンゴン(北朝鮮)
1分3秒、両袖を掴んだ状態から永山が右内股。相手の体を前に伸ばしたまま一足でクルリと腰を切り、「足車を内腿に当てた」体。この大技見事に決まって鮮やか「一本」。

[準決勝]
永山竜樹△GS技有・小内刈(GS0:16)○髙藤直寿(日本)
※前述のため省略

[3位決定戦]
永山竜樹○GS内股(GS4:08)△イ・ハリン(韓国)
※前述のため省略


※写真は権利者の許諾を得て掲載しています
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