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【バクー世界柔道選手権2018特集】五輪に向けた最重要分岐点、朝比奈沙羅の戴冠なるか・女子78kg超級概況×有力選手紹介

(2018年9月19日)

※ eJudoメルマガ版9月19日掲載記事より転載・編集しています。
【バクー世界柔道選手権2018特集】五輪に向けた最重要分岐点、朝比奈沙羅の戴冠なるか
女子78kg超級概況×有力選手紹介
→特設ページ・バクー世界選手権2018完全ガイド

文責:林さとる/eJudo編集部

■ 階級概況
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78kg超級戦力推測マップ。V候補朝比奈を脅かすものがあるとすれば、「オルティスが」「本気の調整で仕上げて来た」場合のみ。

イダリス・オルティス(キューバ)の戦列復帰と強国中国の世代交代が本階級の2大トピック。

オルティスは昨年11月の世界無差別選手権で大会に復帰、以来同大会3位、12月のワールドマスターズ2位という結果を残している。全盛期のオルティスと比べれば物足りないと言わざるを得ない成績だが、この人はフォーカスした大会かどうかでパフォーマンスがまったく変わる選手。直近に行われた8月のグランプリ・ブダペストでは全試合一本勝ち(反則含む)で優勝を飾っており、今大会は本気で仕上げてくる可能性もある。もし本気であればこれは極めて貴重な観察の機会。ここでどれだけの戦いが出来るかで、階級最大の不確定要素・オルティスの東京五輪まで位置付けを測ることが出来るだろう。

一方、中国勢は昨年大会の覇者であるユー・ソン(中国)がその後一度も大会に姿を見せておらず実質的な引退状態。今大会にも昨年来ユーに変わって大会参加を続けてきたワン・ヤン(中国)が、3週間前のアジア大会に続いて送り込まれている。この選手はグランドスラム・パリで素根輝(南筑高3年)に勝利するなど一定の存在感を示しているが、柔道はまだまだ荒削りで、大型のトップ選手に正面から勝ち切るまでの力はない。今大会は2年後を目指した経験の場、オリンピックに向けた投資の場ということだろう。現実的にワンが上位まで勝ち上がることは難しいと思われるが、将来日本勢のライバルとなる可能性は大。是非ともここでチェックしておきたい。

上記の2点以外は昨年大会とそれほどメンバーも変わらず、全体としては小粒な印象。優勝候補は日本代表の朝比奈沙羅(パーク24)。純戦力で朝比奈に伍する存在がいるとすれば前述のオルティスのみ。マリア=スエレン・アルセマン(ブラジル)も全盛期の力が出せればそこに届く可能性があるが、最近の戦いぶりを見る限り可能性は低いだろう。国内で素根輝(南筑高3年)に2連敗を喫している朝比奈としては、今大会は背水の陣であると同時に千載一遇の大きなチャンス。ここで優勝すれば大きなアドバンテージを得ることが出来、グランドスラム大阪優勝からそのまま一気に五輪代表へと至るルートが開けることになる。一方、ここで優勝を逃した場合には再び素根との国内での争いからスタートせねばならず、素根の成長速度と直接対決での相性を考えた場合、現状では厳しいと言わざるを得ない。今回が東京五輪に向けた最重要転換点、朝比奈の覚悟を感じさせる戦いぶりに期待したい。

ほか上位には普段のワールドツアーと同様キム・ミンジョン(韓国)、イリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)、ラリサ・セリッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)の勝ち上がりが濃厚だ。

■ 有力選手
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日本代表の朝比奈沙羅。昨年大会では銀メダルを獲得。

朝比奈沙羅(パーク24)
ASAHINA Sarah
21歳 1996/10/22
WR:3位 組み手:右組み
得意技:右払腰、支釣込足
使用技:右内股、右払巻込、膝車

昨年の世界選手権準優勝者。12月の世界無差別選手権では優勝を飾った。代表選考最終予選である全日本選抜体重別選手権と皇后盃の2大会ではいずれも素根輝(南筑高3年)に敗れたが、過去の実績が評価される形で2年連続となる世界選手権代表の座を手に入れた。今年度からは東海大に在学しながらパーク24の所属となっている。

海外勢と対峙しても見劣りしない恵まれた体格とスタミナが最大の武器。柔道は極めてオーソドックスな内股、払腰系であり、技が切れるタイプではないものの貪欲に攻撃し続けることで最後には相手を投げてしまう。これらの大技をフェイントに使った支釣込足も得意としており、取り味としてはむしろこちらの方が上。良い意味で自分を高く買って思い切り良く攻めることの出来る日本の女子重量選手らしからぬメンタルが最大の強みだが、最近は考え過ぎることで精神的な自家中毒を起こして敗れている印象もあり。地力は間違いなく今大会ナンバーワン。どこまで自分を信じられるかがポイントだ。

【おもな戦績】
2017年 マラケシュ世界無差別選手権 優勝
2017年 ブダペスト世界選手権 2位
2017年 グランドスラム東京 優勝

【最近の成績】
2018年7月 グランプリ・ザグレブ 3位
2018年4月 皇后盃全日本女子柔道選手権 3位
2018年4月 全日本選抜体重別選手権 2位

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キム・ミンジョン

キム・ミンジョン(韓国)
KIM Minjeong
30歳 1988/8/8
WR:3位 組み手:左組み
得意技:左大外刈、左袖釣込腰
使用技:左払腰、左払巻込、左大内刈、左小外刈、左小外掛

昨年のワールドマスターズ王者。アンコ型が多いこの階級にあって数少ないアスリート体型の選手。スピードを生かして組み際に左大外刈や左払腰を仕掛ける形を得意としている。これも重量級には珍しく、自ら試合を動かせる機動力と展開力あり。両袖の左袖釣込腰もなかなかの取り味があり、この技には特に注意が必要。昨年2月のグランドスラム・パリではこの技で朝比奈沙羅を転がして「技有」を奪った。

【おもな戦績】
2017年 ワールドマスターズ・サンクトペテルブルク 優勝
2017年 ブダペスト世界選手権 3位
2016年 リオデジャネイロ五輪 5位

【最近の成績】
2018年8月 アジア大会 2位
2018年5月 グランプリ・フフホト 2位
2018年2月 グランドスラム・パリ 優勝

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イダリス・オルティス

イダリス・オルティス(キューバ)
ORTIZ Idalys
28歳 1989/9/27
WR:11位 組み手:右組み
得意技:左一本背負投、隅落
使用技:横車、裏投、浮技、左袖釣込腰、左浮腰

ロンドン五輪から世界大会を3連覇した、階級を代表する強豪。リオデジャネイロ五輪後休養していたが昨年11月の世界無差別選手権で競技に復帰した。今年8月のグランプリ・ブダペストでは優勝も飾り、調子を上げて今大会に臨む。後の先の技を得意としており、相手の背中を抱き込む形が基本。左一本背負投を連発することでまず相手の焦りを誘い、技を仕掛けてきたところを隅落や裏投で仕留める。近年は同じ形から自ら仕掛ける横車や浮技など捨身技のバリエーションを増やしている模様。従来「撒き餌」であった左一本背負投の威力も上がってきており、単に展開を作る道具と考えると危険だ。コンディションによってパフォーマンスが大きく変わる選手だが、フォーカスした大会における強さは相当なもの。今大会の出来は、なにより本人の本気度の高低に掛かる。

【おもな戦績】
2017年 マラケシュ世界無差別選手権 3位
2016年 リオデジャネイロ五輪 2位
2012年 ロンドン五輪 優勝
世界選手権 優勝2回(2013年、2014年)

【最近の成績】
2018年8月 グランプリ・ブダペスト 優勝
2018年4月 パンナム選手権 優勝
2017年 ワールドマスターズ・サンクトペテルブルク 2位

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ワン・ヤン

ワン・ヤン(中国)
WANG Yan
24歳 1994/8/28
WR:22位 組み手:左組み
得意技:左大外巻込、左払巻込
使用技:左大外刈、左払腰

これぞ中国のエースの系譜というべき、超大型選手。昨年後半からユー・ソンとマー・スースーのロンドン-リオ世代のエース級たちと入れ替わる形で大会に派遣され続けている。アジア大会、そしてこの世界選手権と中3週間で続いたビッグゲームにも連続派遣、女子最重量級の強国・中国はこの選手で東京五輪を戦うつもりと見ておいて良いだろう。得意技は右構えから一気に腰を切って放つ左大外巻込。今年2月のグランドスラム・パリでは上記の技から抑え込んで素根輝(南筑高3年)を屠った。まだまだ荒削りだが、成長した場合には日本勢のライバルとなることは間違いない。今のうちから注目しておきたい選手。

【おもな戦績】
2018年8月 アジア大会 3位
2018年5月 グランプリ・フフホト 3位
2018年2月 グランドスラム・パリ 2位

【最近の成績】
※おもな戦績を参照

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リア=スエレン・アルセマン

マリア=スエレン・アルセマン(ブラジル)
ALTHEMAN Maria Suelen
30歳 1988/8/12
WR:4位 組み手:組み手:左組み
得意技:左払腰、左払巻込
使用技:左大外刈、左大内刈、支釣込足。谷落

ロンドン‐リオ期にイダリス・オルティス(キューバ)とともに階級のトップに君臨した強豪。奥襟を持って横変形気味に相手を抱き込む形が基本。ここからパワーを生かした強烈な左払腰、左払巻込を仕掛ける。力むと笑っているような表情になり、そのまま相手を豪快に投げる様は迫力満点。調子に波のあるタイプだが、オルティス同様フォーカスした大会では好パフォーマンスを発揮することが多い。

【おもな戦績】
2014年 チェリャビンスク世界選手権 2位
2013年 リオデジャネイロ世界選手権 2位
2012年 ロンドン五輪 5位

【最近の成績】
2018年5月 グランプリ・フフホト 3位
2018年3月 グランドスラム・エカテリンブルグ 2位
2018年2月 グランドスラム・デュッセルドルフ 2回戦敗退

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イリーナ・キンゼルスカ

イリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)
KINDZERSKA Iryna
27歳 1991/6/13
WR:9位 組み手:両組み
得意技:左払巻込、右払巻込
使用技:左大外巻込、右大外巻込、左小外掛

昨年の世界選手権銅メダリスト。階級屈指の巨体を誇る超大型選手。昨年ウクライナからアゼルバイジャンへと移籍した。組み手の左右が利く選手であり、基本は左組みも状況によって使い分ける。得意技は体格を生かした左右の払巻込。入りが浅くても巨体を生かし、そのままゴロリと転がし切ってしまう。見た目の通りスタミナに難があり、ポイントをリードしながら試合終盤には「指導2」を失って陥落寸前、という場面が頻出している。

【おもな戦績】
2018年2月 ・グランドスラム・パリ 3位
2017年 ブダペスト世界選手権 3位
2017年 グランプリ・デュッセルドルフ 優勝

【最近の成績】
2018年8月 グランプリ・ブダペスト 2回戦敗退
2018年7月 グランプリ・ザグレブ 7位
2018年4月 ヨーロッパ選手権 7位

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ラリサ・セリッチ

ラリサ・セリッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)
CERIC Larisa
27歳 1991/1/26
WR:2位 組み手:両組み
得意技:左外巻込、右外巻込
使用技:左大腰、右大腰、左払巻込、右払巻込

昨年11月に行われた世界無差別選手権の準優勝者。左右の組み手が利き、横変形で抱き込んだ形から左右両方へ外巻込を仕掛けてくる。格上に対してはケンカ四つで組む事が多く、この選手がどちらの組み手で組んでいるかで両者の力関係を測ることができる。安定感が売りであり、多くの大会で上位進出を果たしている。本階級における「歩留まりの良いタイプ」の筆頭格だ。

【おもな戦績】
2017年 ワールドマスターズ・サンクトペテルブルク 3位
2017年 マラケシュ世界無差別選手権 2位
2017年 ブダペスト世界選手権 7位

【最近の成績】
2018年8月 グランプリ・ブダペスト 2回戦敗退
2018年7月 グランプリ・ザグレブ 7位
2018年4月 ヨーロッパ選手権 2位

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マリーナ・スルツカヤ

マリーナ・スルツカヤ(ベラルーシ)
SLUTSKAYA Maryna
27歳 1991/7/9
WR:6位 組み手:右組み
得意技:左袖釣込腰、左一本背負投、左小内巻込
使用技:左背負投、横車、浮技、隅落、浮落、肩車

昨年のヨーロッパ選手権王者。小柄な体を生かした担ぎ技が主要武器であり、右組みで釣り手のみを持った状態から左の担ぎ技を仕掛ける。最大の武器は両袖から仕掛ける左袖釣込腰。前技フェイントの左小内巻込も得意としており、こちらにも注意が必要。横車や浮技などの捨身技も使いこなす。

【おもな戦績】
2018年1月 グランプリ・チュニス 優勝
2017年ヨーロッパ選手権 優勝

【最近の成績】
2018年8月 グランプリ・ブダペスト 2位
2018年7月 グランプリ・ザグレブ 5位
2018年4月 ヨーロッパ選手権 1回戦敗退

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ニヘル・シェイキ=ロウホウ

ニヘル・シェイキ=ロウホウ(チュニジア)
CHEIKH ROUHOU Nihel
31歳 1987/1/5
WR:12位 組み手:右組み
得意技:浮技、右外巻込
使用技:左一本背負投

アフリカ選手権78kg超級7度の優勝を誇る、「アフリカの浮技女王」。相手の背中を抱いたところから仕掛ける浮技を得意としており、この技は体格に比して足腰の弱い選手の多い本階級において相当な取り味を誇っている。近年は釣り手を巻き替えながら仕掛ける右外巻込も得意としており、こちらにも注意が必要。以前は柔道着のズボンの紐を結び直す形でスタミナ回復を図る場面が多々見られたが、近頃は減少傾向にある。

【おもな戦績】
2017年 マラケシュ世界無差別選手権 3位
2016年 リオデジャネイロ五輪 7位
アフリカ選手権 優勝7回(2010年〜2011年、2013年〜2018年) ※無差別含まず

【最近の成績】
2018年8月 グランプリ・ブダペスト 3位
2018年7月 グランプリ・ザグレブ 2位
2018年4月 アフリカ選手権 優勝

その他有力選手

・エリザヴェータ・カラニナ(ウクライナ)
・アナマリ・ヴェレンセク(スロベニア)
・カイラ・サイート(トルコ)
・ベアトリス・ソウザ(ブラジル)
・カロリン・ヴァイス(ドイツ)
・アン=ファトウメタ・ムバイロ(フランス)
・スー・シン(中国)

■ シード予想
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78kg超級シード予想。シード外の強豪はオルティスとワン。

優勝候補筆頭の朝比奈沙羅(パーク24)はプールDのAシード配置。キム・ミンジョン(韓国)とリア=スエレン・アルセマン(ブラジル)とは逆サイドの、シード選手のみを見た場合には大きな苦戦なく決勝進出が望める好位置を引いた。

優勝争いに絡むレベルの選手ではイダリス・オルティス(キューバ)とワン・ヤン(中国)がシード枠から漏れており、この2名の配置、特にオルティスがどこに置かれるのかがトーナメント全体の行方を左右する最重要ポイント。まずはドロー結果に注目だ。

【プールA】
第1シード:キム・ミンジョン(韓国)
第8シード:エリザヴェータ・カラニナ(ウクライナ)

【プールB】
第4シード:マリア=スエレン・アルセマン(ブラジル)
第5シード:マリーナ・スルツカヤ(ベラルーシ)

【プールC】
第2シード:ラリサ・セリッチ(ボスニア・ヘルツェゴビナ)
第7シード:イリーナ・キンゼルスカ(アゼルバイジャン)

【プールD】
第3シード:朝比奈沙羅(パーク24)
第6シード:ベアトリス・ソウザ(ブラジル)

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