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【バクー世界柔道選手権2018特集】早くも訪れた3トップ構造の転換点、アグベニューに田代未来とトルステニャクが挑む・女子63kg級概況×有力選手紹介

(2018年9月18日)

※ eJudoメルマガ版9月18日掲載記事より転載・編集しています。
【バクー世界柔道選手権2018特集】早くも訪れた3トップ構造の転換点、アグベニューに田代未来とトルステニャクが挑む
女子63kg級概況×有力選手紹介
→特設ページ・バクー世界選手権2018完全ガイド

文責:古田英毅/eJudo編集部
Text by Hideki Furuta

■ 階級概況
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戦力予想マップ。「3強」の構図には転換期が訪れている。矢印は赤がアグベニュー、青がトルステニャク、黄色が田代。

昨年のブダペスト世界選手権においてクラリス・アグベニュー(フランス)がティナ・トルステニャク(スロベニア)に2年ぶりに勝利。これによって2015年から続いたアグベニューとトルステニャク、そして日本勢による三すくみ構造は崩壊した。さらに昨年末のワールドマスターズ・サンクトペテルブルク大会では田代未来(コマツ)が日本勢としては7年ぶりにアグベニューに勝利。2月のグランドスラム・パリ大会ですぐにリベンジされてしまったものの、アグベニューとトルステニャクの2トップの間に割って入り、新たにアグベニュー、トルステニャク、そして田代を頂点とする、3トップ時代の到来を告げた。

この3者の力関係は、トルステニャクと田代以外には絶対に負けないアグベニュー、そのアグベニューが最も苦手としているトルステニャク、トルステニャクには過去5勝0敗と負け無し、かつアグベニューを打倒し得る可能性がある田代というもの。ここからわかる通り、3トップ時代と言っても実際にはアグベニューの力が頭一つ分抜きん出ている。さらにアグベニューは4月のヨーロッパ選手権でもトルステニャクを破って優勝を飾っており、ロンドン-リオ期後半にピークを迎えていたトルステニャクの優位は徐々に減退傾向。今大会でアグベニューの優勝を許した場合には、そのままアグベニュー一強の時代へと突入しかねない情勢であり、その意味では今大会は、東京五輪までの大きな流れを規定するターニングポイントでもある。果たしてアグベニューが突き抜けて自らの時代を作るのか、それともトルステニャクと田代のいずれかがこれに蓋をして3トップ時代が継続することとなるのか、この3名の戦いぶりから目が離せない。

■ 有力選手
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日本代表の田代未来

田代未来(コマツ)
TASHIRO Miku
24歳 1994/4/7
WR:4位 組み手:左組み
得意技:左小外刈、左大内刈、左内股
使用技:左大外刈、左払腰

2014年と2015年の世界選手権銅メダリスト。昨年12月のワールドマスターズにおいて世界王者クラリス・アグベニュー(フランス)に勝利、同選手が2010年から続けていた対日本勢の連勝を15で止めた。現在はティナ・トルステニャク(スロベニア)とともに打倒アグベニューの1番手ポジションに付けており、階級のトップ3を形成している。得意技は引っ掛けて追い込む左小外刈と懐に飛び込み胸を合わせて刈り倒す左大内刈。足技が生命線であり、投げの手段としてのみならず、組み手や展開を作る道具としても試合のあらゆる局面で使用する。立技から移行しての寝技も得意としており、相手の伏せ際に「ボーアンドアローチョーク」を決めての勝利も多い。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 5位
2015年 アスタナ世界選手権 3位
2014年 チェリャビンスク世界選手権 3位

【最近の成績】
2018年2月 グランドスラム・パリ 2位
2017年 ワールドマスターズ・サンクトペテルブルク 優勝
2017年 グランドスラム東京 優勝

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「1強時代」に片手を掛けているクラリス・アグベニュー

クラリス・アグベニュー(フランス)
AGBEGNENOU Clarisse
25歳 1992/10/25
WR:1位 組み手:組み手:左組み
得意技:左大外刈、左大腰、移腰、裏投
使用技:左体落、左小外掛、左小内刈、左大外車、左一本背負投

現役世界王者にして階級の頂点に君臨している女王。2015年からはティナ・トルステニャク(スロベニア)に4連敗とこの選手を非常に苦手としていたが、昨年のブダペスト世界選手権でついに勝利。今年4月のヨーロッパ選手権でもトルステニャクを破って優勝を果たしている。得意技は左大外刈に左大腰とパワーを生かした大技ばかり。豪快な投げ技が注目されがちだが、柔道のベースは徹底した組み手管理。引き手で袖を持った形が全ての動作の起点となっており、ここから丁寧に手順を踏み、必殺の間合いで強烈な一撃を放つ。奇襲技として両手で引き手の袖口を持っての左一本背負投を用いることもあり、この技にも注意が必要だ。

【おもな戦績】
2017年 ブダペスト世界選手権 優勝
2016年 リオデジャネイロ五輪 2位
2015年 アスタナ世界選手権 2位
2014年 チェリャビンスク世界選手権 優勝

【最近の成績】
2018年4月 ヨーロッパ選手権 優勝
2018年3月 グランプリ・トビリシ 優勝
2018年2月 グランドスラム・パリ 優勝

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五輪を制したティナ・トルステニャク

ティナ・トルステニャク(スロベニア)
TRSTENJAK Tina
28歳 1990/8/24
WR:3位 組み手:両組み
得意技:左一本背負投
使用技:左袖釣込腰、左小内刈、右大内刈、左大外刈、右内股、左内股、隅返

リオデジャネイロ五輪金メダリスト。かつてはクラリス・アグベニュー(フランス)に対して無類の強さを誇っていたが、ブダペスト世界選手権の決勝で敗れて以来、現在2連敗中。また、日本選手を非常に苦手としており、7勝15敗と大きく負け越している。柔道のベースは体の強さと無尽蔵のスタミナ。基本戦法は右構えから左一本背負投を連発するという単純なものだが、常人離れした体力によってそれを「相手に攻めさせず一方的に威力のある技を打ち込み続ける」ステージにまで昇華させている。さらにこの一本背負投は切れ味こそないものの一発一発に相当な重さがあり、上位陣からもポイントを奪えるだけの破壊力を備えている。左右の組み手と技を使い分ける両組みの選手だが、勝負どころでは自身の最も信頼する「一本背負投連発スタイル」を用いる。立技から移行しての寝技も得意。

【おもな戦績】
2017年 ブダペスト世界選手権 2位
2016年 リオデジャネイロ五輪 優勝
2015年 アスタナ世界選手権 優勝
2014年 チェリャビンスク世界選手権 3位

【最近の成績】
2018年7月 グランプリ・ザグレブ 2位
2018年4月 ヨーロッパ選手権 2位
2018年2月 グランドスラム・デュッセルドルフ 2回戦敗退

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マルティナ・トライドス

マルティナ・トライドス(ドイツ)
TRAJDOS Martyna
29歳 1989/4/5
WR:6位 組み手:左組み
得意技:左小内刈、左大内刈、左小内巻込
使用技:左内股、左大外刈

ブダペスト世界選手権5位。横変形の組み手を基本としており、ケンカ四つの相手に対しても引き手を抱き込むことでこの形を作り出す。得意技は左小内刈。横変形から相手が上体を上げようとしたタイミングで仕掛ける形や、蟹挟風に相手の上に乗り上げて仕掛ける独特の形を得意としている。これ以外にもクロスグリップから相手の腕を抱き込むようにして仕掛ける左小内巻込やケンケンで追い込む左大内刈を良く用いるが、そのいずれもが一定以上の取り味あり。今シーズンは比較的好調であり、今大会で自身初となる世界大会の表彰台を目指す。

【おもな戦績】
2017年 ブダペスト世界選手権 5位
2015年 グランドスラム東京 優勝
2015年 ワールドマスターズ・ラバト 3位

【最近の成績】
2018年8月 グランプリ・ブダペスト 2位
2018年7月 グランプリ・ザグレブ 5位
2018年4月 ヨーロッパ選手権 3位

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カトリン・ウンターヴルツァハー

カトリン・ウンターヴルツァハー(オーストリア)
UNTERWURZACHER Kathrin
26歳 1992/6/5
WR:10位 組み手:左組み
得意技:左小外掛、左釣込腰、谷落、隅落、左大内刈
使用技:左大外刈、左内股、左小内刈、左小外掛、横掛、横落、裏投

階級屈指のパワーファイター。懐の深さを生かして相手を抱き込む、あるいは脇を差すといった密着が基本形。ここから抱きついての左小外掛や強引に腰を差し入れての豪快な左釣込腰を仕掛ける。圧を掛けながら相手の技を誘っての返し技も得意としており、こちらでの得点も多い。今年は一度も国際大会に現れておらず、今大会が初試合。

【おもな戦績】
2016年 グランドスラム東京 優勝
2016年 リオデジャネイロ五輪 7位
2015年 ワールドマスターズ・ラバト 2位

【最近の成績】
2017年 グランドスラム東京 7位
2017年 グランドスラム・アブダビ 3位
2017年 グランプリ・タシケント 優勝

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ヤン・ジュインシア

ヤン・ジュインシア(中国)
YANG Junxia
29歳 1989/3/2
WR:62位 組み手:右組み
得意技:寝技、左一本背負投、左大外刈(一本大外)
使用技:右大内刈、隅返、巴投

ブダペスト世界選手権5位。粘戦志向のパワーファイター。組んでは離し、組まれては切ってと組み手をリセットしながら前に出続け、この前進圧力によって試合のペースを掴む。組み力も強く、組み合っての攻防にも対応可能。この組み手自体が「指導」を奪うための攻撃手段となっている。組み際に仕掛ける逆技の左一本背負投の使用頻度が高めだが、最大の武器は寝技。「腹包み」からの「舟久保固め」を得意としている。

【おもな戦績】
2017年 ブダペスト世界選手権 5位
2016年 リオデジャネイロ五輪 7位
2014年 アジア大会 2位

【最近の成績】
2018年8月 グランプリ・ブダペスト 3回戦敗退

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アリス・シュレシンジャー

アリス・シュレシンジャー(イギリス)
SCHLESINGER Alice
30歳 1988/5/26
WR:13位 組み手:左組み
得意技:左内股、左釣込腰
使用技:左袖釣込腰、右背負投、右一本背負投

2015年にイスラエルからイギリスへと国籍変更。釣り手で相手の背中深くを持っての左内股が最大の武器であり、釣腰の要領で縦回転しながら相手を投げる。奇襲技として右一本背負投も持っており、使用頻度は低いものの一定の注意が必要。パワーで勝っていることがこの人の柔道の要件であり、これが満たせない相手には意外なほどにあっさり負けてしまうことがある。

【おもな戦績】
2012年 ロンドン五輪 7位
2010年 東京世界選手権 5位
2009年 ロッテルダム世界選手権 3位

【最近の成績】
2018年8月 グランプリ・ブダペスト 7位
2018年4月 ヨーロッパ選手権 5位
2017年 ワールドマスターズ・サンクトペテルブルク 7位

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アガタ・オズドバ=ブラフ

アガタ・オズドバ=ブラフ(ポーランド)
OZDOBA-BLACH Agata
30歳 1988/2/25
WR:16位 組み手:右組み
得意技:寝技、巴投、左腰車
使用技:左一本背負投、左内巻込、左小内巻込、右大内刈、右小外刈、隅落

昨年の世界選手権銅メダリスト。右組みだが使用する技はほぼ左技という難剣使い。釣り手のみを持った片手状態を基本としており、ここから左腰車や左一本背負投を狙う。最大の武器は寝技であり、得意技は腕挫十字固。巴投で引き込む形のほか、伏せた相手に背中側から仕掛ける「ヤスケビッチ式」も用いる。体の力が強く、相手の技を受け止めての返し技も得意としている。

【おもな戦績】
2017年 グランドスラム・アブダビ 3位
2017年 ブダペスト世界選手権 3位
2014年 グランドスラム・アブダビ 3位

【最近の成績】
2018年8月 グランプリ・ブダペスト 3位
2018年4月 ヨーロッパ選手権 1回戦敗退
2018年3月 グランドスラム・エカテリンブルグ 5位

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バルドルジ・ムングンチメグ

バルドルジ・ムングンチメグ(モンゴル)
BALDORJ Mungunchimeg
24歳 1994/6/11
WR:18位 組み手:組み手:左組み
得意技:左払腰、右大外刈(一本大外)
使用技:右一本背負投、左内股、左大外刈、左小外刈

昨年の世界選手権銅メダリスト。モンゴル選手ながら密着した形ではなく、襟と袖の二本を持って柔道を行う。得意技は体を捨てながら仕掛ける左払腰と左内股。技の作りなどお構いなしにとにかく思い切り良く飛び込む。組み際には逆技の右一本背負投や右「一本大外」を用いることもあり、むしろこちらの方に注意が必要。今年に入ってからはあまり成績を残せていない。

【おもな戦績】
2017年 ワールドマスターズ・サンクトペテルブルク 5位
2017年 ブダペスト世界選手権 3位
2017年 アジア選手権 2位

【最近の成績】
2018年5月 グランプリ・フフホト 2回戦敗退
2018年3月 グランドスラム・エカテリンブルグ 2回戦敗退
2018年2月 グランドスラム・パリ 7位

その他有力選手

・エドウィッジ・グウェン(イタリア)
・ケトレン・クアドロス(ブラジル)
・ユール・フランセン(オランダ)
・キヨミ・ワタナベ(フィリピン)
・アンドレイヤ・レスキ(スロベニア)
・ダリア・ダヴィドワ(ロシア)
・エカテリーナ・ヴァルコワ(ロシア)
・キャサリン・ブーシェミン=ピナード
・マグダレナ・クルサコワ(オーストリア)
・エイミー・リヴェシー(イギリス)
・カタリナ・ヘッカー(オーストラリア)

■ シード予想
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三強はきれいにプールが分かれた。

三強はそれぞれプールが分かれ、クラリス・アグベニュー(フランス)がプールA、ティナ・トルステニャク(スロベニア)がプールC、田代未来(コマツ)がプールDにそれぞれ配された。トルステニャクに対して分の良い田代からすると良い組み合わせであり、自身初となる世界大会の決勝進出がかなり現実的なレベルで見えている。田代直下のシード選手ユール・フランセン(オランダ)はレベルとしては数段落ちる相手であり、不覚を取ることはまず考えられないだろう。シード外の選手に関してもヤン・ジュインシア(中国)が多少怖いくらいで、そのヤンにしても勝敗が揺れるほどの驚異ではない。まずは準決勝、世界大会で本気モードのトルステニャクに「一本」で決着を付け、勢いに乗ってアグベニューの待つ決勝へと臨みたい。

ほか、マルティナ・トライドス(ドイツ)とカトリン・ウンターヴルツァハー(オーストリア)が好配置を引いており、3位決定戦でぶつかることが濃厚。どちらも世界大会の表彰台にはまだ登ったことがなく、今回勝利すれば初のメダル獲得となる。表彰台の残り1枠をどちらが手に入れるのか、これもなかなかに面白い観戦ポイントだ。

【プールA】
第1シード:クラリス・アグベニュー(フランス)
第8シード:カタリナ・ヘッカー(オーストラリア)

【プールB】
第4シード:アンドレヤ・レスキ(スロベニア)
第5シード:マルティナ・トライドス(ドイツ)

【プールC】
第2シード:ティナ・トルステニャク(スロベニア)
第7シード:カトリン・ウンターヴルツァハー(オーストリア)

【プールD】
第3シード:田代未来(コマツ)
第6シード:ユール・フランセン(オランダ)


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