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【バクー世界柔道選手権2018特集】ケルメンディ欠場でトーナメントは焼け野原、金メダル最有力は日本勢・女子52kg級概況×有力選手紹介

(2018年9月17日)

※ eJudoメルマガ版9月17日掲載記事より転載・編集しています。
【バクー世界柔道選手権2018特集】ケルメンディ欠場でトーナメントは焼け野原、金メダル最有力は日本勢
女子52kg級概況×有力選手紹介
→特設ページ・バクー世界選手権2018完全ガイド

文責:林さとる/eJudo編集部

■ 階級概況
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戦力推測マップ。ケリメンディが欠け、優勝候補は日本勢2名となった。

階級の絶対王者マイリンダ・ケルメンディ(コソボ)が欠場。昨年首を怪我して手術、復帰したものの本調子ではないという情報が入っており、どうやら今シーズンは「捨てる」選択をしたようだ。ケルメンディの実力と実績とコソボ国内での絶対的な立場を考えれば、五輪中間年におけるこの選択は一種論理的。

ケルメンディ欠場を受け、この階級はいよいよ志々目愛(了徳寺学園職)と阿部詩(夙川学院高3年)による一騎打ちの色合いが強まった。両者の直接対決とそれに至るまでの過程がトーナメントを貫く大きなテーマと規定してしまって良いだろう。実力的にここに割って入ることが出来るのはナタリア・クズティナ(ロシア)ぐらいだが、志々目と阿部の最近の充実具合を考慮すればアップセットの可能性は少ないと見るべきだろう。ただし、クズティナは4月以降大会に出場せずにこの大会にピークを合わせている模様、国際合宿では熱心に日本勢2人の研究を行う様子が見られた。なにがしかの対策を懐に呑んで挑んで来るものと思われる。29歳になったクズティナには志々目や阿部にはない経験値の高さがあり、日本勢2人の数少ない隙であるメンタル面でのタフさにも定評がある。試合が長引くような展開では、相手のペースに飲まれないよう注意が必要だ。

エリカ・ミランダ(ブラジル)も本来の力からすれば有資格者だが、近頃の冴えない戦いぶりを見る限り、志々目や阿部を破るような絵は到底思い浮かばない。アモンディーヌ・ブシャー(フランス)とシャーリン・ファンスニック(ベルギー)も表彰台争いには確実に絡んでくるだろうが、志々目や阿部を脅かす域ではないはず。

不確定要素として気に掛けておきたいのは今年4月に競技復帰を果たした30歳アンドレア・キトゥ(ルーマニア)。この選手のスタイルは相手の組み手をパワーで塗りつぶすもの。一方の阿部の柔道も組み勝つことが大前提、しかしおそらくキトゥほどのパワーの相手とはまだ対戦したことがないのではないだろうか。タイプだけを考えれば、どちらかが圧倒的に試合を支配する「100-0」「0-100」でしか試合が進まないことも想定され、もしパワー負けしてしまうと非常に厳しい展開もありえる。キトゥ、復帰後はまだ一度も全盛期のような強さは見せていないが、もともとこの選手は照準を合わせた大会で「のみ」実力を発揮するタイプ。要警戒である。

今大会は志々目と阿部にとっては来年の東京世界選手権、そして2020年の東京五輪に直結する非常に重要な戦い。ライバルの角田夏実(了徳寺学園職)は全日本選抜体重別選手権に続いてアジア大会でも優勝を収めており、ここでタイトル獲得に失敗すれば一気に3番手まで落ちる可能性すら考えられる。極めて圧の掛かる状況ではあるが、それに負けない強い気持ちを持って試合に臨んでもらいたい。

■ 有力選手
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連覇に挑む志々目愛

志々目愛(了徳寺学園職)
SHISHIME Ai
24歳 1994/1/25
WR:10位 組み手:左組み
得意技:左内股、左小外刈
使用技:左大内刈、左大外刈、左背負投(韓国背負い)

現役世界王者。2015年のグランドスラム・パリ大会でディストリア・クラスニキ(コソボ)に敗れてから現在まで海外選手への連勝を続けている。4月の全日本選抜体重別選手権では同僚の角田夏実(了徳寺学園職)にGS延長戦での巴投「技有」で敗れたものの、実績と海外勢への強さが評価されて代表に選ばれた。得意技は切れ味鋭い左内股と左小外刈。内股を警戒して腰を引いてくる相手はこの小外刈で仕留める。寝技も得意としており、立って良し寝て良しのオールラウンダーだ。2連覇は十分に手の届く位置、最大の敵は阿部詩。

【おもな戦績】
2017年 ブダペスト世界選手権 優勝
2016年 グランプリ・デュッセルドルフ 優勝
アジア選手権 優勝2回(2016年、2017年)

【最近の成績】
2018年7月 グランプリ・ザグレブ 優勝
2018年4月 全日本選抜体重別選手権 2位
2018年2月 グランドスラム・デュッセルドルフ 優勝

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破竹の勢いの阿部詩

阿部詩(夙川学院高3年)
ABE Uta
18歳 2000/7/14
WR:5位 組み手:右組み
得意技:右内股、右袖釣込腰
使用技:右大外刈、右大内刈。右内巻込

弱冠18歳、東京五輪世代のニューヒロイン。4月の全日本選抜体重別選手権では準決勝で角田夏実(了徳寺学園職)に巴投で敗れたものの、国際大会での実績が評価される形で代表に選出された。得意技は右内股と右袖釣込腰。高く跳ね上げて、あるいは相手の両手をまとめて低空で回してと複数のタイプを使い分ける内股は取り味十分。近頃は寝技にも力を入れており、腕緘の形で引き込んでの縦四方固が得意パターンになりつつある模様。

66kg級現役世界王者の阿部一二三(日本体育大3年)と兄弟揃っての同日金メダルに期待が懸かる。

【おもな戦績】
2017年 グランドスラム東京 優勝
2017年 世界ジュニア選手権 優勝
2017年 グランプリ・デュッセルドルフ 優勝

【最近の成績】
2018年5月 グランプリ・フフホト 優勝
2018年4月 全日本選抜体重別選手権 3位
2018年2月 グランドスラム・パリ 優勝

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ナタリア・クズティナ

ナタリア・クズティナ(ロシア)
KUZIUTINA Natalia
29歳 1989/5/8
WR:3位 組み手: 右組み
得意技:寝技、左一本背負投、左大腰
使用技:左浮腰、左袖釣込腰

昨年の世界選手権銅メダリスト。10年近く階級の第一線で活躍し続けて来たベテラン選手だ。このところ試合の出場を絞っているが、昨年12月のワールドマスターズを制して以降、3月のグランドスラム・エカテリンブルク、4月のヨーロッパ選手権と3連勝を飾っている。右組みだが持ち技はほとんどが左技。釣り手のみを持った状態からの左一本背負投が組み立ての軸、この技で得意の寝技に持ち込みグラウンドで勝負をするのが必勝オアターン。4月以降は大会に出場を見合わせてこの世界選手権に照準を合わせており、ハイコンディションで畳に現れることは確実。若い日本勢2人にはない経験値の高さもあり、間違いなく最も怖い相手だ。

【おもな戦績】
2017年 ワールドマスターズ・サンクトペテルブルク 優勝
2016年 リオデジャネイロ五輪 3位
世界選手権 3位3回(2010年、2014年、2017年)

【最近の成績】
2018年4月 ヨーロッパ選手権 優勝
2018年3月 グランドスラム・エカテリンブルク 優勝

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エリカ・ミランダ

エリカ・ミランダ(ブラジル)
MIRANDA Erika
31歳 1987/6/4
WR:4位 組み手:左組み
得意技:左一本背負投、右一本背負投、寝技
使用技:出足払、左小内刈、左小外刈

昨年の世界選手権銅メダリスト。常に階級のトップクラスに位置し続けている強豪。近年は成績にムラがあるものの、ここぞという大会では必ず好パフォーマンスを見せている。柔道の基本は足技を絡めながらの組み手管理。片手状態から左右の一本背負投を仕掛け続け、手数攻勢で相手を追い詰める展開が必勝パターンだ。最も取り味があるのは寝技であり、立技からの移行の早さには特筆すべきものあり。相手の伏せ際に「ボーアンドアローチョーク」や「腰絞め」を決めての勝利が非常に多い。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 5位
2013年 リオデジャネイロ世界選手権 2位
世界選手権 3位3回(2014年、2015年、2017年)

【最近の成績】
2018年5月 グランプリ・フフホト 2回戦敗退
2018年3月 グランドスラム・エカテリンブルク 2位
2018年2月 グランドスラム・デュッセルドルフ 5位

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アモンディーヌ・ブシャー

アモンディーヌ・ブシャー(フランス)
BUCHARD Amandine
23歳 1995/7/12
WR:1位 組み手:右組み
得意技:肩車、横落、右小内巻込、寝技
使用技:右大外刈、左袖釣込腰、右背負投、右一本背負投

昨年のワールドマスターズ準優勝者。昨年来じわじわ力をつけてきており、成績も向上。ついに世界ランク1位で今大会を迎えるに至った。利かん気の選手であるがいかにもこの世代のフランス女子選手らしく、柔道の生命線は組み手管理。組み手争いから肩車や右小内巻込を仕掛けるヒットアンドアウェイがベースであり、組み合って相手と渡り合うのは100対0で一方的な形を作った場合のみ。つまるところ「組み手争い」自体がこの選手の形と言い切ってしまって差し支えないだろう。寝技も得意としており「横返し」を中心に複数の必勝パターンを持っている。

【おもな戦績】
2017年 ワールドマスターズ・サンクトペテルブルク 優勝
2017年 ブダペスト世界選手権 7位
2014年 チェリャビンスク世界選手権 3位 ※48kg級

【最近の成績】
2018年7月 グランプリ・ザグレブ 2位
2018年4月 ヨーロッパ選手権 2回戦敗退
2018年3月 グランプリ・トビリシ 優勝

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シャーリン・ファンスニック

シャーリン・ファンスニック(ベルギー)
VAN SNICK Charline
28歳 1990/9/2
WR:9位 組み手:左組み
得意技:左袖釣込腰、寝技
使用技:右一本背負投、隅返、巴投、浮技、左大腰

もと48kg級のトップ選手の一人。リオデジャネイロ五輪後に階級変更を行った。基本的にはパワーファイターだが、最も取り味があるのは順方向に仕掛ける左袖釣込腰。近年はより寝技を前面に押し出したスタイルへと変わってきており、隅返や巴投で引き込んでは寝技で仕留めるという勝利パターンが増えている。立技から寝技への移行が早く、伏せ際の「ボーアンドアローチョーク」や腕挫十字固には特に注意が必要。最近は後ろ帯を持っての浮技も効果的に用いている。
【おもな戦績】
2018年2月 グランドスラム・デュッセルドルフ 3位
2017年 グランプリ・ハーグ 3位
2017年 グランドスラム・アブダビ 優勝

【最近の成績】
2018年8月 グランプリ・ブダペスト 2位
2018年7月 グランプリ・トビリシ 3位
2018年4月 ヨーロッパ選手権 3回戦敗退

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アンドレア・キトゥ

アンドレア・キトゥ(ルーマニア)
CHITU Andreea
30歳 1988/5/7
WR:1位 組み手:右組み
得意技:右腰車、右内股
使用技:右大腰、右大内刈、右小外掛、右一本背負投

ロンドン−リオ期に52kg級を牽引したパワーファイター。階級屈指の膂力に加え、状況に即して戦術を選択する頭脳派としての側面も強い。2017年4月のヨーロッパ選手権以降は長く大会出場を控えていたが、今年4月のヨーロッパ選手権で1年ぶりに競技復帰。まだ全盛期ほどの強さは見せてはいないが、今大会における最大の不確定要素と考えておくべきだろう。得意技は奥を叩いて、あるいは脇を差した状態から仕掛ける豪快な腰技。組み手の攻防も得意であり、先に引き手を持って絞る、いきなり奥を叩くなど複数のパターンを使い分ける。

【おもな戦績】
2015年 アスタナ世界選手権 2位
2014年 チェリャビンスク世界選手権 2位
2011年 パリ世界選手権 3位

【最近の成績】
2018年8月 グランプリ・ブダペスト 5位
2018年7月 グランプリ・ザグレブ 2回戦敗退
2018年4月 ヨーロッパ選手権 7位

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オデッテ・ジュッフリダ

オデッテ・ジュッフリダ(イタリア)
GIUFFRIDA Odette
23歳 1994/10/12
WR:50位 組み手:左組み
得意技:右背負投、右一本背負投、左一本背負投、右袖釣込腰
使用技:右大内刈、出足払、送足払、内股透

リオデジャネイロ五輪の銀メダリスト。階級を代表する粘戦タイプ、袖を絞って腰を引いた形から偽装攻撃すれすれの担ぎ技を連発する。獲得ポイントのほとんどは「指導」累積で後のなくなった相手が出てきたところに技を合わせたものだ。担ぎ技から振り向きつつ仕掛ける右大内刈や出足払、送足払など取り味のある足技も持っており、最近はこちらでの得点も増えてきている。内股透も得意であるため、不十分な崩しから不用意に仕掛けることは避けたい。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 2位
2016年 ワールドマスターズ・グアダラハラ 3位
2015年 ワールドマスターズ・ラバト 3位

【最近の成績】
2018年8月 グランプリ・ブダペスト 2回戦敗退

その他有力選手

・エヴェリン・チョップ(スイス)
・ジェシカ・ペレイラ(ブラジル)
・アンジェリカ・デルガド(アメリカ)
・エカテリーナ・グイカ(カナダ)
・ユリア・カザリナ(ロシア)
・レカ・プップ(ハンガリー)
・パク・ダソル(韓国)
・ベティーナ・テメルコワ(イスラエル)
・ディララ・ロクマンヘキム(トルコ)

■ シード予想
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シード予想。阿部詩と志々目愛は山が分かれることになるはず。

阿部詩(夙川学院高3年)と志々目愛(了徳寺学園職)はきれいにトーナメントの上下に分かれ、直接対決が実現するのは決勝だ。ただし、両者が辿るであろう道筋は両極端。アモンディーヌ・ブシャー(フランス)以外にこれといった強豪との対戦がない阿部に対して、志々目は準々決勝でナタリア・クズティナ(ロシア)、準決勝でエリカ・ミランダ(ブラジル)と対戦する非常に過酷な組み合わせとなっている。どのようなシナリオであっても、決勝までの消耗は間違いなく志々目の方が大きいはず。まずはベスト8のクズティナ戦、ここがトーナメント全体を通した最大の山場だ。

シードから漏れた有力選手でトーナメントの様相を揺らし得る駒はオデッテ・ジュッフリダ(イタリア)とアンドレア・キトゥ(ルーマニア)。どちらも上位対戦まで勝ち上がる「大会を通じての一貫した強さ」の発揮には疑問符がつくものの、1試合限定で考えるならメダリストクラスの打倒は十分に可能。パワーファイターのキトゥに粘戦タイプのジュッフリダとどちらもざっくり言って非常に「疲れる」相手であり、仮に勝利したとしても大きく体力を消耗することになってしまうはず。阿部の側か、それとも志々目が引くのか。ドローはここに注目である。

【プールA】
第1シード:アモンディーヌ・ブシャー(フランス)
第8シード:アンジェリカ・デルガド(アメリカ)

【プールB】
第4シード:阿部詩(夙川学院高3年)
第5シード:ジェシカ・ペレイラ(ブラジル)

【プールC】
第2シード:ナタリア・クズティナ(ロシア)
第7シード:志々目愛(了徳寺学園職)

【プールD】
第3シード:エリカ・ミランダ(ブラジル)
第6シード:シャーリン・ファンスニック(ベルギー)

※ eJudoメルマガ版9月17日掲載記事より転載・編集しています。

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