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【バクー世界柔道選手権2018特集】2番手以降は大混戦も「阿部一強」構図は揺るぎなし・男子66kg級概況×有力選手紹介

(2018年9月17日)

※ eJudoメルマガ版9月17日掲載記事より転載・編集しています。
【バクー世界柔道選手権2018特集】2番手以降は大混戦も「阿部一強」構図は揺るぎなし
男子66kg級概況×有力選手紹介
→特設ページ・バクー世界選手権2018完全ガイド

文責:林さとる/eJudo編集部

■ 階級概況
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66kg級戦力推測マップ。阿部一二三の絶対性に揺るぎなし。

現役世界王者の阿部一二三(日本体育大3年)が絶対の優勝候補。過去2敗のダヴァドルジ・ツムルフレグ(UAE)と直近の対戦で土をつけられたドフドン・アルタンスフ(モンゴル)は今大会にエントリーしておらず、何をしてくるかわからないという意味では最も危険なファビオ・バジーレ(イタリア)も73kg級に去り、率直に言って怖い選手がほとんどいない状況。

単に階級内の序列から考えればアン・バウル(韓国)が対抗馬ということになるのだろうが、実力的にも相性的にも、阿部を脅かす域には至らないと見る。かつて苦手であった密着パワーファイタータイプの系譜にあるゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)やヴァジャ・マルグヴェラシヴィリ(ジョージア)の名前を無理やり挙げることもできるが、現在の阿部は担ぎ技を主体とした前襟中心の柔道スタイルに羽化を遂げており、パワー差をまともに受ける脇を差しての組み手が主体であった高校生時代のような苦戦は想定し難い。自身のレベルアップと、ロンドン-リオ期中盤から続く人材の目減りがクロスした結果、阿部の強さはもはや「絶対的」。

万に一つでも敗れることがあるとすれば自身の慢心やミスが引き金になるかと思われるが、この点についても7月のグランプリ・ザグレブ大会でまさかの敗退を喫する(ドフトン・アルタンスフに横落「一本」で敗退)という「良薬」の処方を受けており、今大会は相当気を引き締めて試合に臨むものと思われる。こうなればもはや心配はいらないだろう。豪快な「一本」連発での2連覇に期待したい。

阿部の独走の一方で2位以下の上位争いは混沌。前述のアンも世界選手権の覇者という来歴ほどの絶対性はなく、下記「有力選手」欄に名前を挙げる選手全員にチャンスがある大混戦である。編集部としては世界選手権3大会連続で銀メダルを獲得しているミハイル・プルヤエフ(ロシア)の4大会連続となる決勝進出なるかに期待したい。確率としてはアン、ザンタライア、マルグヴェラシヴィリ、タル・フリッカー(イスラエル)を中心とした争いになる可能性が高いだろう。

■ 有力選手
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阿部一二三は絶対の優勝候補

阿部一二三(日本体育大3年)
ABE Hifumi
21歳 1997/8/9
WR:2位 組み手:右組み
得意技:右背負投、右袖釣込腰、右大外刈
使用技:右大腰、右大内刈、右小外刈、左一本背負投

現役世界王者。2014年に講道館杯を史上最年少となる17歳2ヶ月で制覇、以降次代のスターとして、柔道というジャンルを超えた注目を浴び続けてきた。最大の武器は相手を背中から畳に落とす非凡な投げのセンス。豪快な「一本」の影に隠れて目立ちにくいが、阿部はほとんどの投げで状況に即した的確なフォローを加えており、それによって技の威力を一段も二段も高めている。投げの入りが強引でも投げ切れてしまうのは、そのフォローの上手さゆえだ。作りよりも「決め」重視という珍しいタイプのテクニシャンでもあるわけだ。7月のグランプリ・ザグレブでは格下のドフドン・アルタンスフ(モンゴル)に遅れを取ったが、ゆえに今大会は心身ともに隙のない状態に仕上がるものと思われる。まずもって優勝は確実、注目すべきはその勝ちぶりだ。

【おもな戦績】
2017年 ブダペスト世界選手権 優勝
2014年 講道館杯 優勝 ※史上最年少
グランドスラム東京 優勝3回(2014年、2016年、2017年)

【最近の成績】
2018年7月 グランプリ・ザグレブ 3位
2018年3月 グランドスラム・エカテリンブルク 優勝

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アジア大会を制したばかりのアン・バウル。

アン・バウル(韓国)
AN Baul
24歳 1994/3/25
WR:6位 組み手:左組み
得意技:左背負投、左背負投(韓国背負い)
使用技:左袖釣込腰、左小内刈、左内巻込、左内股

リオデジャネイロ五輪の銀メダリスト。担ぎ技を仕掛け続けることで攻撃のリズムを作る、典型的な韓国型担ぎ技選手だ。最大の武器はケンカ四つから仕掛ける左の「韓国背負い」。多少不十分でも巻き込むようにして投げ切ってしまう威力がある。先日行われたアジア大会では丸山城志郎(ミキハウス)を内巻込「一本」で破り優勝を飾った。アジア大会で一度ピークに持って来たはずのコンディションをどの程度今大会にアジャストさせてこれるかは未知数だが、純戦闘力では阿部一二三(日本体育大3年)に次ぐ2番手と考えて良いだろう。ただし相性的にも阿部への苦戦は必至、あくまで「2番手グループの頭」というのが今大会の立ち位置だ。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 2位
2016年 ワールドマスターズ・グアダラハラ 優勝
2015年 アスタナ世界選手権 優勝

【最近の成績】
2018年8月 アジア大会 優勝
2018年5月 グランプリ・フフホト 3位
2018年2月 グランドスラム・パリ 優勝

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ミハイル・プルヤエフ

ミハイル・プルヤエフ(ロシア)
PULIAEV Mikhail
31歳 1987/6/22
WR:17位 組み手:左組み
得意技:左背負投
使用技:右一本背負投、浮落、左小外刈

世界選手権3大会連続2位のシルバーコレクター。2016年にはロシアのドーピング問題のメインキャストとして名前を挙げられながらも、リオデジャネイロ五輪出場を果たして話題になった選手でもある(ただしパフォーマンスは低空飛行だったが)。得意技は左背負投。低く潜り込む技法が主流となっている昨今の流行に反し、この選手は立ったまま相手を担ぎ上げる古風な形を主に用いている。試合でも姿勢良く堂々とした足取りで相手より先に開始位置に戻るなど、どこか昭和の日本柔道家の匂いを感じさせる選手だ。安定感はないものの、照準を合わせた大会での爆発力は階級随一。ことに世界選手権では例年抜群の強さを見せており、今大会でも表彰台以上の成績が期待される。

【おもな戦績】
2017年 ブダペスト世界選手権 2位
2015年 アスタナ世界選手権 2位
2014年 チェリャビンスク世界選手権 2位

【最近の成績】
2018年5月 グランプリ・フフホト 2位
2018年3月 グランプリ・アガディール 2回戦敗退
2017年 ワールドマスターズ・サンクトペテルブルク 5位

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ゲオルギー・ザンタライア

ゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)
ZANTARAIA Georgii
30歳 1987/10/21
WR:9位 組み手:左組み
得意技:左腰車、左小外掛、裏投
使用技:左釣込腰、左大腰、右小外掛、左大外刈

もと60kg級の世界王者。異次元級の発想力と「曲芸師」とも形容される身体能力の高さが武器。相手の技を自ら宙返りして無効化したり、ちょっと攻撃が考えられない無理な体勢から強引に相手を投げ切ってしまったり、とにかく一挙手一投足から目の離せない面白い選手だ。柔道の基本は長いリーチを生かしての密着。60kg級出身ながらパワーも十分で、得意技は左腰車に左小外掛と大技ばかり。非常に絵になる「役者」である。現在のルールは「ブリッジ反則(一本)」を厳しく取る傾向にあるが、実は「頭を利用した回転受け」の本家であるはずのザンタライア本人はほとんど「ブリッジ反則」で敗れたことはない。これに陥るのはロンドン-リオ期に「ザンタライア受け」の真似をしたフォロワーたち、あるいは影響を受けた選手たちのほう。このことがザンタライアの技術レベルの高さを証明していると言えよう。

【おもな戦績】
2015年 アスタナ世界選手権 3位
2014年 チェリャビンスク世界選手権 3位
2009年 ロッテルダム世界選手権 優勝 ※60kg級

【最近の成績】
2018年8月 グランプリ・ブダペスト 3回戦敗退
2018年7月 グランプリ・ザグレブ 2位
2018年4月 ヨーロッパ選手権 2回戦敗退

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ヴァジャ・マルグヴェラシヴィリ

ヴァジャ・マルグヴェラシヴィリ(ジョージア)
MARGVELASHVILI Vazha
24歳 1993/10/3
WR:3位 組み手:左組み
得意技:左内股、左払腰
使用技:左大外刈、左大内刈、裏投、左内股(やぐら投げ)、隅返、右内股、右浮腰

昨年の世界選手権銅メダリスト。階級屈指のパワーファイターであり、背中を抱いて、脇を差してとあらゆる形から得意の左内股を仕掛けることが出来る。現在の66kg級における「密着系」の代表はもはやこの人となった感あり。特定の技にこだわるのではなく、左右に揺さぶりながらパワーをベースとした様々な技で相手をねじ伏せる。もつれ合った状態から用いる足技には意外な切れ味があり、注意が必要。

【おもな戦績】
2017年 ワールドマスターズ・サンクトペテルブルク 3位
2017年 ブダペスト世界選手権 3位
2016年 ヨーロッパ選手権 優勝

【最近の成績】
2018年4月 ヨーロッパ選手権 1回戦敗退
2018年3月 グランプリ・トビリシ 優勝
2018年 グランドスラム・パリ 2回戦敗退

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タル・フリッカー

タル・フリッカー(イスラエル)
FLICKER Tal
26歳 1992/5/28
WR:1位 組み手:左組み
得意技:左背負投、左袖釣込腰、肩車
使用技:右一本背負投、隅返、浮腰、大腰、左小内刈、左内股

昨年の世界選手権銅メダリスト。昨シーズンに階級内の序列を一気に駆け上がり、現在では完全にトップ層の一角に定着した。得意技は鋭く潜り込んで一気に担ぎ上げる左背負投。組み手管理が生命線であり、相手を組み手争いに引きずり込み、それに混ぜ込む形で切れ味のある技を仕掛けて来る。組み手で相手を封殺する戦法も得意としており、組み手の攻防に付き合いすぎると非常に危険だ。

【おもな戦績】
2017年 グランドスラム・アブダビ 優勝
2017年 ブダペスト世界選手権 3位
2017年 グランドスラム・バクー 優勝

【最近の成績】
2018年7月 グランプリ・ザグレブ 優勝
2018年4月 ヨーロッパ選手権 3位
2018年2月 グランドスラム・デュッセルドルフ 7位

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ジャット・シハリザダ

ニジャット・シハリザダ(アゼルバイジャン)
SHIKHALIZADA Nijat
29歳 1988/10/12
WR:21位 組み手:左組み
得意技:左小外掛、右小外掛、左内股、裏投
使用技:左袖釣込腰、左払腰、巴投、隅返、左一本背負投、支釣込足、肩車

2005年カイロ世界選手権60kg級に出場、弱冠16歳で銅メダルを獲得した選手。ついに来月30歳となるが、以降世界大会での表彰台はなし。
現在のこの人は、曲者タイプのパワーファイターと規定される。小柄な選手だが、相手の懐に潜り込んでは密着、左右の小外掛や内股、裏投といった体格に似合わぬ大技を仕掛ける厄介な選手である。基本は密着柔道だが、時折華麗な足技のコンビネーションを見せることもあり、このあたりがこの選手の一筋縄ではいかない「曲者」たる所以。組み際に両手で袖を持って仕掛ける左一本背負投や肩車、「横巴」など技のバリエーションも豊かだ。ただし集中力が途切れる悪癖があり、意外なところで敗れることも多々。地元開催で普段よりも気合が入っているようであれば、上位戦に絡んでくる可能性大だ。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 3回戦敗退
2016年 ワールドマスターズ・グアダラハラ 3位
2015年 グランドスラム・バクー 優勝

【最近の成績】
2018年7月 グランプリ・ザグレブ 1回戦敗退
2018年4月 ヨーロッパ選手権 7位
2018年2月 グランドスラム・デュッセルドルフ 3回戦敗退

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ガンボルド・ヘルレン

ガンボルド・ヘルレン(モンゴル)
GANBOLD Kherlen
26歳 1992/2/24
WR:5位 組み手:右組み
得意技:釣込腰、右内股(やぐら投げ)
使用技:浮腰、釣腰、右内股、右釣込腰、大外落、小内刈、巴投

昨年のワールドマスターズ覇者。もともとはモンゴル60kg級の3番手選手であったが、2016年のグランドスラム東京から階級を変更、以降は一定の成績をキープし続けついに昨年ビッグタイトルを得るに至った。基本の戦法は圧を掛けて前に出続け、相手が押し返してきたところに腰技を狙うというもの。前進圧力が生命線であり、相手が苦し紛れに仕掛けた技にカウンターを狙う場面も多い。モンゴル選手らしく「やぐら投げ」も得意としている。

【おもな戦績】
2017年 ワールドマスターズ 優勝
2017年 グランプリ・タシケント 2位
2017年 アジア選手権 3位

【最近の成績】
2018年4月 グランプリ・アンタルヤ 3位
2018年2月 グランドスラム・パリ 3回戦敗退

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チャールズ・チバナ

チャールズ・チバナ(ブラジル)
CHIBANA Charles
29歳 1989/9/12
WR:18位 組み手:右組み
得意技:右背負投、裏投、抱分
使用技:右袖釣込腰、右小外刈、右内股、右内股(やぐら投げ)

パンナム地域のこの階級を代表する強豪。潜在能力極めて高く、選手間での評価も一貫して高い。2013年リオデジャネイロ世界選手権では準決勝で海老沼匡と激しい投げの打ち合いを演じた。得意技は鋭く潜り込む担ぎ技と相手を高く抱え上げて宙返りの要領で畳に叩きつける裏投。2014年以降はあまり良いパフォーマンスを見せていないが、最高到達点は十分表彰台に手が届くレベルにある

【おもな戦績】
2017年 ワールドマスターズ・サンクトペテルブルク 5位
2013年 リオデジャネイロ世界選手権 5位
パンナム選手権 優勝2回(2014年、2016年)

【最近の成績】
2018年5月 グランプリ・フフホト 3回戦敗退
2018年3月 グランドスラム・エカテリンブルク 7位
2018年2月 グランドスラム・パリ 3回戦敗退

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バルチ・シュマイロフ

バルチ・シュマイロフ(イスラエル)
SHMAILOV Baruch
24歳 1994/2/9
WR:4位 組み手:左組み
得意技:肩車
使用技:浮落、隅落、右袖釣込腰、左小外掛、左内股、左払腰、左大外刈

イスラエルの2番手。パワーファイターである。基本戦法は奥襟を持っての圧殺だが、最も取り味のある技は組み際に仕掛ける肩車。組み合うことを嫌って距離を取っている相手を、この技であっさり転がす場面非常に多し。圧を掛けて相手のミスを誘ってのカウンター攻撃も得意としており、浴びせ倒す隅落には注意が必要。

【おもな戦績】
2017年 ワールドマスターズ・サンクトペテルブルク 3位
2014年 世界ジュニア選手権 3位

【最近の成績】
2018年7月 グランプリ・ザグレブ 3位
2018年4月 ヨーロッパ選手権 3回戦敗退
2018年2月 グランドスラム・デュッセルドルフ

その他有力選手

・アドリアン・ゴンボッチ(スロベニア)
・ズミトリー・ミンコウ(ベラルーシ)
・ズミトリー・シェルシャン(ベラルーシ)
・ダニエル・カルグニン(ブラジル)
・マッテオ・メドヴェス(イタリア)

■ シード予想
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シード予想。準々決勝以降は有力選手と次々対戦、引き自体は結構な厳しさだ。

極端に下側に偏った組み合わせ。阿部一二三(日本体育大3年)とゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)、アン・バウル(韓国)とヴァジャ・マルグヴェラシヴィリ(ジョージア)がそれぞれ準々決勝で潰し合い、その勝者が準決勝で決勝進出を賭けて対戦することになる。勝ち抜き候補はあくまで阿部だが、楽な戦いは一つもない。準々決勝以降は全試合が決勝と言っても良い過酷な組み合わせだ。上側の山からタル・フリッカー(イスラエル)の決勝進出を推したい。

シードから漏れた強豪でトーナメントのバランスに大きな影響を与えうるのは世界選手権にめっぽう強いミハイル・プルヤエフ(ロシア)と地元選手のニジャット・シハリザダ(アゼルバイジャン)。この2人が下側の山を引くような事があれば全階級を通じても屈指の激戦ブロックが形成されることになる。それでも阿部の勝ち上がりは揺るがないはずだが、トーナメントの見どころ、面白さという観点からも、是非分散して配置されて欲しいところである。

【プールA】
第1シード:タル・フリッカー(イスラエル)
第8シード:ダニエル・カルグニン(ブラジル)

【プールB】
第4シード:バルチ・シュマイロフ(イスラエル)
第5シード:ガンボルド・ヘルレン(モンゴル)

【プールC】
第2シード:阿部一二三(日本体育大3年)
第7シード:ゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)

【プールD】
第3シード:ヴァジャ・マルグヴェラシヴィリ(ジョージア)
第6シード:アン・バウル(韓国)

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