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【バクー世界柔道選手権2018特集】昇るビロディドvs「アジア帝国」が大枠の構図、ニュースターの誕生なるか・女子48kg級概況×有力選手紹介

(2018年9月17日)

※ eJudoメルマガ版9月17日掲載記事より転載・編集しています。
【バクー世界柔道選手権2018特集】昇るビロディドvs「アジア帝国」が大枠の構図、ニュースターの誕生なるか
女子48kg級概況×有力選手紹介
→特設ページ・バクー世界選手権2018完全ガイド

文責:林さとる/古田英毅

■ 階級概況
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昨年までアジア地域の強豪によって優勝争いが行われていた本階級だが、17歳のスター候補ダリア・ビロディド(ウクライナ)の台頭によって様相が一変。東高西低の勢力図は崩れ去り、優勝候補ビロディドにその他の上位陣が挑むという構図が出来上がった。打倒ビロディドに挑む上位陣は勝利の可能性が高い順に渡名喜風南(パーク24)、ムンフバット・ウランツェツェグ(モンゴル)、パウラ・パレト(アルゼンチン)、ガルバドラフ・オトゴンツェツェグ(カザフスタン)。リオ五輪銀メダリストのジョン・ボキョン(韓国)はアジア大会を選んで欠場したが、みての通り歴戦の戦士を揃えたアジア勢が対抗勢力の中心。様相は「昇るビロディドvsアジア帝国」といったところか。

このなかでビロディドと対戦経験があるのは渡名喜とガルバドラフの2名のみ。戦績は渡名喜が2敗、ガルバドラフが1勝2敗である。渡名喜は直近の対戦となった7月のグランプリ・ザグレブ大会では敗れはしたものの五分以上に渡り合えており、リーチの差による不利はともかく地力では渡名喜が勝っている印象すらあった。公開合宿を見る限り調子は極めて良し、全日本強化チームも対ビロディドを想定して対策を進めており、今回対戦が実現した場合には十分勝利が期待出来るだろう。ポイントはいかに序盤線を凌いで渡名喜のスタミナが生きる延長戦に引きずり込めるかだ。一方のガルバドラフは対戦の度に少しずつ差を広げられており、今回も勝利は厳しいように思われる。ガルバドラフにチャンスがあるとすれば密着しての裏投一発だが、ビロディドはそのような状況を作るミスは犯さないだろう。遠間からの一撃によるビロディド勝利と予想する。

対してムンフバットとパレトはビロディドとは未対戦。ムンフバットはビロディドと同じく長身痩躯で寝技を得意とする選手。組み力と技の威力の差でビロディド優位と予想するが、ムンフバットも見かけによらず地力があり、そう簡単に飛ばされるようなことはないはずだ。しかし率直に言ってムンフバットがビロディドに投げ勝つ絵は想像できず、勝利するシナリオがあるとすればやはり寝技しかないだろう。ビロディドはその強さゆえ現状「横三角」で一気に攻め落とす場面ばかりが目立つが、必殺技複数種に加えて展開に応じた攻撃が出来て罠も張れるという真正の寝技師ムンフバットに対抗しうるだけの「寝勝負」のリテラシーがあるかどうか、これがひとつのみどころになるだろう。日本での合宿を観察する限りでは下から引きこんでの戦いもかなり出来る印象であったが、結局攻めの柱は「三角」であり、ムンフバットの展開力につきあってしまうと危ないのではないだろうか。一方パレトについてはそもそもどの程度の仕上がり具合で現れるのかが未知数。昨今の戦いぶりを見る限りリオデジャネイロ五輪で見せたようなパフォーマンスを望むことは難しいと思われる。最高到達点のパフォーマンスであれば十分打倒ビロディドが可能だが、今回はその存在自体を「足し算」要素くらいに捉えておくのが良いのではないだろうか。

ここまでビロディドとライバルたちの試合をざっくりシミュレートしてきたが、これはあくまでこれまでツアーで見せたビロディド像に基づいたものである。ビロディドはまだ17歳、今がまさに伸び盛り。この選手の特徴である技術習得への貪欲さも考慮すると、こちらの想像を超える成長を遂げてバクーの畳に現れる可能性も高いのではないだろうか。ビロディドが勢いのまま一気に王座まで駆け上がるのか、それとも渡名喜をはじめとした上位陣が勝負の厳しさを教えるのか。今から試合開始が待ち遠しい。

■ 有力選手
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連破に挑む渡名喜風南

渡名喜風南(パーク24)
TONAKI Funa
22歳 1995/8/1
WR:4位 組み手:左組み
得意技:左背負投、左小外刈
使用技:出足払、送足払、左小内刈、左大内刈、左一本背負投、右袖釣込腰、左内股、肩車

現役世界王者。昨年はワールドマスターズでも優勝を飾った。小柄な体格から生み出される小回りの良さと、それを生かした連続攻撃が最大の武器。スタミナも長所、延長戦でも運動性能を落とさずに戦い続けることが出来る最軽量級では珍しい骨の太いタイプだ。得意技は切れ味抜群の左小外刈。鋭く刈って、あるいは引っ掛けて追い込んでと複数のパターンを使い分ける。今年に入ってからは優勝から遠ざかっているが、直前の代表合宿では増地克之監督から「最も状態が良い」と太鼓判を押される好調さ。本番では好パフォーマンスが期待出来るだろう。

【おもな戦績】
2018年 ワールドマスターズ・サンクトペテルブルク 優勝
2018年 ブダペスト世界選手権 優勝
2016年 グランドスラム東京 優勝

【最近の成績】
2018年7月 グランプリ・ザグレブ 3位
2018年4月 全日本選抜体重別選手権 3位
2018年2月 グランドスラム・パリ 5位

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今季負けなしの最強選手、ダリア・ビロディド。

ダリア・ビロディド(ウクライナ)
BILODID Daria
16歳 2000/10/10
WR:3位 組み手:左組み
得意技:左大内刈、左内股、寝技
使用技:左小外刈、左払腰

弱冠17歳にして今大会の優勝候補一番手。現在ワールドツアー5連勝中、ブダペスト世界選手権で敗れてからはなんと「負けなし」である。トップ選手との対戦でも渡名喜風南(パーク24)への2連勝を始め、すべての試合が好内容での勝利。得意技は長いリーチを生かして遠間から引っ掛けるように仕掛ける右大内刈。寝技も非常に得意としており、足技で相手を伏せさせ「横三角」から崩上四方固で抑え込むパターンでの勝利が多い。美人柔道家としても有名であり、モデルの誘いが絶えないとのこと。

【おもな戦績】
2018年2月 グランドスラム・デュッセルドルフ 優勝
2018年2月 グランドスラム・パリ 優勝
2017年 ヨーロッパ選手権 優勝

【最近の成績】
2018年7月 グランプリ・ザグレブ 優勝
2018年6月 ヨーロッパカップ・ツェリェ 優勝

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ムンフバット・ウランツェツェグ

ムンフバット・ウランツェツェグ(モンゴル)
MUNKHBAT Urantsetseg
28歳 1990/3/14
WR:1位 組み手:右組み
得意技:寝技、隅返、右背負投(韓国背負い)
使用技:巴投、横落、右大内刈、右小内刈、横掛

リオデジャネイロ世界選手権の金メダリスト。寝技のスペシャリストであり、代名詞でもある「ホイジンガロール」のほか「横三角」からの崩上四方固や「シバロック」など数多くの高等テクニックを使いこなす。近年は立技も進境著しく、リーチの長さを生かして相手を抱き込む隅返や、組み際に仕掛ける右の「韓国背負い」はかなりの威力あり。過去、サンボの世界選手権での優勝歴あり。

【おもな戦績】
2017年 ブダペスト世界選手権 2位
2016年 リオデジャネイロ五輪 5位
2013年 リオデジャネイロ世界選手権 優勝

【最近の成績】
2018年8月 アジア大会 3位
2018年5月 グランプリ・フフホト 3位
2018年2月 グランドスラム・パリ 3位

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ガルバドラフ・オトゴンツェツェグ

ガルバドラフ・オトゴンツェツェグ(カザフスタン)
GALBADRAKH Otgontsetseg
26歳 1992/1/25
WR:7位 組み手:左組み
得意技:裏投
使用技:隅返、肩車、横落、巴投

2年連続で世界大会3位を獲得している強豪。2015年にモンゴルからカザフスタンへと国籍変更を行い、以降常に階級のトップクラスに位置している。得意技は階級屈指のパワーを存分に生かした裏投。自身の体を「てこ」のように使って相手を引っこ抜く様は迫力満点だ。寝技もトップ選手と戦える水準に達しており、大味な柔道スタイルに反して実は隙がない選手。今大会で初の世界王者と3年連続の表彰台を狙う。

【おもな戦績】
2017年 ブダペスト世界選手権 3位
2016年 リオデジャネイロ五輪 3位
2016年 アジア選手権 優勝

【最近の成績】
2018年8月 アジア大会 3位
2018年8月 ヨーロッパオープン・ミンスク 優勝
2018年7月 グランプリ・ザグレブ 3位

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五輪金メダリストのパウラ・パレト

パウラ・パレト(アルゼンチン)
PARETO Paula
32歳 1986/1/16
WR:11位 組み手:左組み
得意技:左背負投、右背負投、右一本背負投、右袖釣込腰
使用技:左小内刈、横車

リオデジャネイロ五輪の金メダリスト。昨年3月のパンナムオープン・リマで競技に復帰。ブダペスト世界選手権は欠場したものの、今年4月のパンナム選手権で優勝を飾るなど、32歳になった現在もコンスタントに結果を残し続けている。柔道スタイルは担ぎ技を連発するなかでリズムを作っていく古風なもの。背負投に一本背負投、袖釣込腰と技の左右、形を選ばず仕掛けることが出来る。技の切れ味で勝負するタイプではなく、どちらかというと鈍器で殴りつけるような力強い一撃が持ち味だ。医師であり、五輪金メダリストであり、女子柔道選手のロールモデルになり得る存在。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 優勝
2015年アスタナ世界選手権 優勝
2014年チェリャビンスク世界選手権 2位

【最近の成績】
2018年8月 グランプリ・ブダペスト 7位
2018年4月 パンナム選手権 優勝
2018年3月 グランドスラム・エカテリンブルク 2位

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イリーナ・ドルゴワ

イリーナ・ドルゴワ(ロシア)
DOLGOVA Irina
22歳 1995/9/26
WR:2位 組み手:左組み
得意技:出足払、左小内刈、左小外刈
使用技:右一本背負投、右袖釣込腰、右背負投、左大内刈

今年のヨーロッパ王者。昨年来大きく成績を伸ばしており、階級全体を覆う「東高西低」構図の打破にダリア・ビロディド(ウクライナ)とともに挑戦している一人と捉えられる。得意技は足技。小刻みに跳ねるようなリズムから出足払に左小内刈と切れ味鋭い一撃を叩き込む。体幹が強くバランスも良いため、際の攻防には特に注意が必要だ。寝技も得意としており、こちらでの得点も多い。

【おもな戦績】
2018年4月 ヨーロッパ選手権 優勝
2017年 ワールドマスターズ・サンクトペテルブルク 2位
2017年 ブダペスト世界選手権 5位

【最近の成績】
2018年7月 グランプリ・ザグレブ 2位
2018年3月 グランプリ・アガディール 優勝

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カン・ユジョン。写真はグランプリ・フフホトの近藤亜美戦。

カン・ユジョン(韓国)
KANG Yujeong
21歳 1996/8/2
WR:13位 組み手:右組み
得意技:横落、右背負投
使用技:横車、巴投、谷落、右内股

韓国の2番手選手。昨年のアジア選手権において渡名喜風南(パーク24)を破って3位入賞、一気に階級のメインシーンに躍り出た。ジョン・ボキョン(韓国)の本格復帰後はその影に隠れてしまっている感が否めないが、今年2月のグランドスラム・パリでは2位を獲得するなどキャリアの道程はおおむね順調。担ぎ技を仕掛け続けることでリズムを作る韓国型の担ぎ技選手であり、得意技はジョンと同様に釣り手のみの状態から仕掛ける横落。

【おもな戦績】
2017年 グランプリ・フフホト 優勝
2017年 アジア選手権 3位
2015年 アジア選手権 3位

【最近の成績】
2018年5月 グランプリ・フフホト 2位
2018年2月 グランドスラム・パリ 2位

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ディストリア・クラスニキ

ディストリア・クラスニキ(コソボ)
KRASNIQI Distria
22歳 1995/12/10
WR:55位 組み手:右組み
得意技:右内股
使用技:右大外刈、右膝車、右足車、右小外掛

今年のヨーロッパ選手権52kg級準優勝者。7月のグランプリ・ザグレブ大会から階級を下げ、そのまま今大会でも48kg級へのエントリーを敢行した。52kg級時代はパワーを前面に押し出した柔道スタイルだったが、48kg級では減量苦のためかかつてほどのパワーは発揮できていない印象。どの程度階級に順応できているかが今大会におけるポイントだ。得意技は奥襟を持って相手を引きつけての強引な右内股。

【おもな戦績】
2018年4月 ヨーロッパ選手権 2位 ※52kg級
2015年 世界ジュニア選手権 優勝 ※52kg級

【最近の成績】
2018年8月 グランプリ・ブダペスト 3位
2018年7月 グランプリ・ザグレブ 2回戦敗退

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エヴァ・チェルノヴィツキ

エヴァ・チェルノヴィツキ(ハンガリー)
CSERNOVICZKI Eva
31歳 1986/10/16
WR:9位 組み手:右組み
得意技:右袖釣込腰
使用技:右足車、右払腰、右小内巻込

長く第一線で活躍するベテランパワーファイター。31歳になった現在もそのパワーは衰えを見せず、依然としてヨーロッパ48kg級の主役の一人であり続けている。長身選手ながら得意技は相手を強引に釣り上げての右袖釣込腰。奥襟を持っての密着戦法も得意としており、近距離、遠距離どちらでも攻撃を仕掛けられる器用さもある。今年はここまで好調をキープしており、今大会でも好パフォーマンスを見せてくれるはずだ。

【おもな戦績】
2016年 リオデジャネイロ五輪 7位
2012年 ロンドン五輪 3位
2011年 パリ世界選手権 3位

【最近の成績】
2018年8月 グランプリ・ブダペスト 3回戦敗退
2018年4月 ヨーロッパ選手権 2位
2018年2月 グランドスラム・デュッセルドルフ 2位

その他有力選手

・メラニー・クレモン(フランス)
・マリーナ・チェルニアク(ウクライナ)
・モニカ・ウングレアヌ(ルーマニア)
・ガブリエラ・チバナ(ブラジル)
・ミリカ・ニコリッチ(セルビア)
・シラ・リショニー(イスラエル)
・ノア・ミンスカー(イスラエル)
・ジュリア・フィゲロア(スペイン)

■ シード予想
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48kg級シード予想。ビロディドと渡名喜は山が分かれるはず。

日本代表の渡名喜風南(パーク24)はダリア・ビロディド(ウクライナ)とは反対の山に配され、対戦が実現するのは決勝。準々決勝のミリカ・ニコリッチ(セルビア)に遅れを取ることはないと思うが、準決勝で当たるムンフバット・ウランツェツェグ(モンゴル)は一筋縄ではいなかい強敵。まずはここを勝ち上がり、なんとしてもビロディドへの挑戦権を手に入れたい。

一方のビロディドはプールDに配され、準々決勝で早くもガルバドラフ・オトゴンツェツェグ(カザフスタン)と対戦する。両者の相性と直近の対戦内容から鑑みるにビロディドの勝利自体は揺るがないと思われるが、五輪、世界選手権と2年続けて銅メダルを獲得しているガルバドラフはやはり強敵。この大舞台でガルバドラフを相手にどのような戦いを披露するのか、ここでビロディドの真価が問われることになるだろう。

ほか、パウラ・パレト(アルゼンチン)、カン・ユジョン(韓国)、ディストリア・クラスニキ(コソボ)と表彰台クラスの強豪3名がシードから漏れており、これらの選手がどこに配置されるかでトーナメントのバランスが大きく変わることとなる。なかでもパレトの配置はそのコンディションと合わせて本階級における最大の不確定要素。いったい誰がこの選手を引くのか、まずはドローに注目だ。

【プールA】
第1シード:ムンフバット・ウランツェツェグ(モンゴル)
第8シード:エヴァ・チェルノヴィツキ(ハンガリー)

【プールB】
第4シード:渡名喜風南(パーク24)
第5シード:ミリカ・ニコリッチ(セルビア)

【プールC】
第2シード:イリーナ・ドルゴワ(ロシア)
第7シード:メラニー・クレモン(フランス)

【プールD】
第3シード:ダリア・ビロディド(ウクライナ)
第6シード:ガルバドラフ・オトゴンツェツェグ(カザフスタン)

※ eJudoメルマガ版9月17日掲載記事より転載・編集しています。

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